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特開2024-75080レモン風味飲料およびレモン風味飲料の劣化抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075080
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】レモン風味飲料およびレモン風味飲料の劣化抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20240527BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186254
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC15
4B117LE10
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK08
4B117LL01
4B117LL02
(57)【要約】
【課題】レモン風味飲料の劣化が抑制できる技術を提供する。
【解決手段】レモン風味飲料は、pH(20℃)が3.6以下であり、甘味度が5以上12以下であり、クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH(20℃)が3.6以下であり、
甘味度が5以上12以下であり、
クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下である、レモン風味飲料。
【請求項2】
甘味度が8以上11以下である、請求項1に記載のレモン風味飲料。
【請求項3】
レモン果汁の果汁率(ストレート果汁換算)が1.0w/w%以上10w/w%以下である、請求項1または2に記載のレモン風味飲料。
【請求項4】
加温販売用である、請求項1または2に記載のレモン風味飲料。
【請求項5】
レモンフレーバーを含む、請求項1または2に記載のレモン風味飲料。
【請求項6】
ブリックス値が2以上11以下である、請求項1または2に記載のレモン風味飲料。
【請求項7】
高甘味度甘味料を含む、請求項1または2に記載のレモン風味飲料。
【請求項8】
非アルコール飲料である、請求項1または2に記載のレモン風味飲料。
【請求項9】
容器詰めされた、請求項1または2に記載のレモン風味飲料。
【請求項10】
レモン風味飲料の劣化抑制方法であって、
pH(20℃)が3.6以下、甘味度が5以上12以下、クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下となるように飲料を調製する工程を含む、レモン風味飲料の劣化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レモン風味飲料およびレモン風味飲料の劣化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柑橘風味を呈する加温販売用飲料のpHは、一般的に3.0以上3.5未満であることが知られており、これにより良好な果汁感を得ていた。しかしながら、pHの低い飲料は、加温保存時の劣化が促進しやすく、良好な果汁感を得つつ劣化を抑制する点で改善の余地があることが知られる。
そこで、特許文献1では、pH(20℃)を、好ましくは3.6以上4.0以下とし、かつ100mg/100ml以上のビタミンCを含むことで、良好な果汁感が得られる加温販売用飲料が開示されている。さらに、特許文献1には、ブリックス値を5以上15以下とし、クエン酸酸度を0.20g/100ml以上、0.40g/100ml以下とすることが開示されている。
また、特許文献2には、レモン風味飲料におけるレモンフレーバーの香気劣化を抑制する方法として、シトラールの分解そのものを阻止するためにクエン酸カリウムを添加して、飲料のpHをより好ましくは3.6以上、最も好ましくは3.8以上となるように調製する技術が開示されている。
【0003】
また、柑橘果汁入りの加温販売用容器詰め飲料として、例えば、特許文献3、4に記載のものが知られる。特許文献3、4には、柑橘果汁入りの加温販売用容器詰め飲料のクエン酸酸度、甘味度に関し、クエン酸酸度を0.4質量%以上0.7質量%以下とし、甘味度をショ糖換算で12以上21以下とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-25819号公報
【特許文献2】特開2007-39610号公報
【特許文献3】特開2016-86770号公報
【特許文献4】特開2016-86771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、レモン等の柑橘風味飲料の劣化抑制方法としては、特許文献1,2に開示されるようにpHを高くすることに着目し、pH3.6以上を好ましいとするものであった。
これに対し、本発明者は、pHを3.6以下とした場合であってもレモン風味飲料の劣化を抑制できる技術の開発に着目し検討を進めたところ、意外にもクエン酸酸度を高くすることが有効であることを新たに見出した。くわえて、特許文献3,4に開示される程度に甘味度を高くすると、クエン酸酸度を高くしても劣化抑制効果が十分に得られないことを見出し、レモン風味飲料の劣化が効果的に抑制できるpH、クエン酸酸度、および甘味度の範囲をそれぞれ特定した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、pHとクエン酸酸度と甘味度のバランスを従来技術とは異なる水準で制御することによってレモン風味飲料の劣化を抑制しつつ、後味を良好にできるものである。
本発明によれば、以下のレモン風味飲料、およびこれに関する技術が提供される。
【0007】
[1] pH(20℃)が3.6以下であり、
甘味度が5以上12以下であり、
クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下である、レモン風味飲料。
[2] 甘味度が8以上11以下である、[1]に記載のレモン風味飲料。
[3] レモン果汁の果汁率(ストレート果汁換算)が1.0w/w%以上10w/w%以下である、[1]または[2]に記載のレモン風味飲料。
[4] 加温販売用である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載のレモン風味飲料。
[5] レモンフレーバーを含む、[1]乃至[4]いずれか一つに記載のレモン風味飲料。
[6] ブリックス値が2以上11以下である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載のレモン風味飲料。
[7] 高甘味度甘味料を含む、[1]乃至[6]いずれか一つに記載のレモン風味飲料。
[8] 非アルコール飲料である、[1]乃至[7]いずれか一つに記載のレモン風味飲料。
[9] 容器詰めされた、[1]乃至[8]いずれか一つに記載のレモン風味飲料。
[10] レモン風味飲料の劣化抑制方法であって、
pH(20℃)が3.6以下、甘味度が5以上12以下、クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下となるように飲料を調製する工程を含む、レモン風味飲料の劣化抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レモン風味飲料の劣化を抑制しつつ、後味を良好にできる技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0010】
本実施形態において、レモン風味飲料の劣化とは、レモンらしい香味が低下し、異味および劣化臭が感じられることを意図する。後味の良さとは、レモン風味飲料を飲用した後に、さっぱり、すっきり感じられることを意図する。
【0011】
<レモン風味飲料>
本実施形態のレモン風味飲料は、pH(20℃)が3.6以下であり、
甘味度が5以上12以下であり、
クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下である。
これにより、レモン風味飲料の香味劣化抑制でき、また、劣化臭が感じられにくくなり、後味を良好にできる。
すなわち、従来は、pHを低くすると劣化しやすくなることが知られており、pHを比較的高めに設定したり、甘味度を高くすることで香味劣化を感じにくくすることが知られていた。これに対し、本実施形態のレモン風味飲料は、pHを3.6以下としたときに、クエン酸酸度を比較的高くしつつ、甘味度を所定の数値範囲に設定することで、香味劣化を効果的に抑制できるものである。
【0012】
[レモン風味]
本実施形態の飲料は、飲用した際にレモン果汁の風味が感じられるものである。レモン風味は、後述のレモン果汁を用いたり、レモンフレーバーを用いる等して得ることができる。
【0013】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、3.6以下であり、好ましくは3.3未満である。一方、pHの下限値は、好ましくは3.0以上である。
pHを上記数値範囲とすることで、飲料の劣化を抑制しつつ、後味を良好に保持しやすくなる。
【0014】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、クエン酸三ナトリウム等のpH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0015】
[酸度]
本実施形態の飲料は、クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下であり、クエン酸酸度の下限は0.45g/100mlであることが好ましく、0.48g/100mlであることがより好ましく、また、クエン酸酸度の上限は0.60g/100ml以下であることが好ましく、0.55g/100mlであることがより好ましく、0.53g/100mlであることがさらに好ましい。
酸度を上記数値範囲とすることで、飲料の劣化を抑制しつつ、後味を良好に保持しやすくなる。
【0016】
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができ、「Ac」とも表記される。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0017】
[甘味度]
本実施形態の飲料は、甘味度が5以上12以下であり、6以上11以下であることが好ましく、8以上11以下であることがより好ましく、9以上11以下であることがさらに好ましい。
甘味度を上記下限値以上とすることで、飲料の香味劣化を抑制するとともに劣化臭が強くなることを抑制でき、後味を良好に保持しやすくなる。一方、甘味度を上記上限値以下とすることで、より効果的に飲料の香味劣化を抑制するとともに劣化臭が強くなることを抑制でき、後味を一層良好にできる。
【0018】
甘味度は、例えば、上述の甘味料、果汁、その他の各種成分などにより調整することができる。
【0019】
なお、甘味度は、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータであり、例えば「甘味料の総覧」(精糖工業会1990年5月発行)、「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(株式会社光琳2003年5月発行)、「飲料用語事典」(株式会社ビバリッジジャパン平成11年6月25日発行)等に記載されている値を採用することができる。なお、記載された甘味度の値に幅がある場合には、その中央値を採用する。例えば、代表的な甘味料の甘味度は、ショ糖1、ブドウ糖0.65、果糖1.5、スクラロース600、アセスルファムカリウム200、アスパルテーム200である。
【0020】
本実施形態の飲料の好ましい形態を以下に例示する。
(i)pHが3.0以上3.3未満の時、クエン酸酸度が好ましくは0.45g/100ml以上0.55g/100ml以下であり、より好ましくは0.48g/100ml以上0.53g/100ml以下であり、甘味度が5以上12以下であり、好ましくは6以上11以下であり、より好ましくは8以上11以下である。
(ii)pHが3.3以上3.6以下の時、クエン酸酸度が好ましくは0.45g/100ml以上0.55g/100ml以下であり、より好ましくは0.45g/100ml以上0.50g/100ml以下であり、甘味度が5以上12以下であり、好ましくは6以上11以下であり、より好ましくは8以上11以下である。
【0021】
[ブリックス値]
本実施形態の飲料のブリックス値(Bx)は、おいしさ、および果汁感が得られる観点から、好ましくは2以上11以下であり、より好ましくは3.5以上5.0以下である。
ブリックス値を上記数値範囲とすることで、飲料の劣化を抑制しつつ、後味を良好に保持しやすくなる。
【0022】
ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
ブリックス値は、例えば、後述の甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0023】
[レモン果汁]
本実施形態の加温販売用飲料は、レモン果汁を含むことが好ましい。
レモン果汁の果汁率(ストレート果汁換算)は、好ましくは1.0w/w%以上10w/w%以下であり、より好ましくは2.0w/w%以上6.0w/w%以下である。
当該果汁率を、上記下限値以上とすることにより、香味劣化抑制と良好な後味を得つつ、レモン風味を高めることができる。一方、果汁率を、上記上限値以下とすることにより、香味劣化をより効果的に得られる。
【0024】
なお、果汁率とは、レモンを搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていないレモンの搾汁(ストレート果汁)の酸度を100%としたときの相対濃度である。
【0025】
果汁とは、果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりするなどして得られる液体成分をいう。また、柑橘類の果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれてもよく、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したものあってもよい。
また、果汁としては、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁などを用いてもよい。
【0026】
本実施形態に係る果汁の調製に用いることのできるレモンについては、その品種、産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0027】
また、果汁として市販のジュースや濃縮ジュース、ペーストなどを用い、本実施形態の飲料を調製するようにしてもよい。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種または2種以上を本実施形態の飲料の調製に用いることができる。
【0028】
[その他成分]
本実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の種々の成分を含んでもよい。例えば、甘味料、酸味料、香料、pH調整剤、上記以外の果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0029】
上記の甘味料としては、公知のものを使用することができ、たとえば、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、糖アルコール、ならびに、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム、およびステビア等の高甘味度甘味料などが挙げられる。甘味料は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なかでも、レモン風味を得つつ、香味劣化抑制効果を得る点から、高甘味度甘味料を含むことが好ましい。
【0030】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。なかでも、レモンらしい風味を得る観点から、無水クエン酸およびその塩が好ましい。
【0031】
上記の香料としては、天然香料および合成香料が挙げられる。なかでも、効果的にレモン風味を得る点から、レモンフレーバーを含むことが好ましい。
【0032】
[加温販売用]
加温販売用とは、飲料の液温を40~80℃、好ましくは45~70℃、より好ましくは50~60℃に加温保持した状態で、消費者に販売される用途に供されるものを意図する。液温を80℃以下とすることでやけどを防ぎ、40℃以上とすることで、体温よりも高くなり、飲料の温かみを感じやすくなる。
加温販売用飲料は、一般的に、冷やして飲用されるコールド飲料よりも香味劣化を感じやすくなる傾向がある。これに対し、本実施形態の飲料は、特定のpH、甘味度、クエン酸酸度に制御されているため、加温販売用としても効果的に香味劣化を抑制でき、また、良好な後味が得られる。
【0033】
[飲料の種類]
本実施形態の飲料は、希釈されずにそのまま飲用される飲料であることが好ましい。
【0034】
本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0035】
本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有してもよく、炭酸ガスを含まないものとしてもよい。飲料の炭酸ガス圧は1.5~3.5ガスボリュームであることが好ましく、2.0~3.0ガスボリュームであることがより好ましい。
炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0036】
[容器]
本実施形態の飲料は、加熱殺菌され、容器に詰められた状態の容器詰め飲料としてもよい。このときの容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
さらに飲料を外観から観察し、透明性、色などを確認できる観点から、容器は透明であることが好ましく、具体的にはペットボトルまたは無着色の瓶が好ましい。また、取扱性、流通性、携帯性等の観点から、容器はペットボトルであることが好ましい。
【0037】
<レモン風味飲料の劣化抑制方法>
本実施形態の加温販売用飲料の製造方法はpH(20℃)が3.6以下、甘味度が5以上12以下、クエン酸酸度が0.41g/100ml以上0.70g/100ml以下となるように飲料を調製する工程を含む。
これにより、香味劣化を効果的に抑制できる。
調製手段は特に限定されず公知の方法を用いることができる。なお、飲料に含まれる各成分およびその含有量等は上記飲料と同様である。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(1)測定
・pH;pH測定器(東亜ディーケーケー社製)を用いて、20℃におけるpHを測定した。
・ブリックス;デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定した。
【0041】
(2)官能評価
容器詰め飲料を60℃2週間保管し、熟練した7名([実験2]は6名)の開発者が開封後直ちに試飲し、以下の評価基準(7段階;1~7点)従い、「香味劣化」、「劣化臭の強さ」、「後味の良さ」それぞれについて評価を実施し、その平均値を求めた。
なお、対照は、容器詰め飲料を4℃で2週間保管した未劣化品とし、「香味劣化」を7点、「劣化臭の強さ」を1点、「後味の良さ」を4点とした。
【0042】
・評価基準
「香味劣化」
7点・・・加温による劣化がない。
6点・・・加温による劣化がわずかに認められる(ほとんど感じられない)。
5点・・・加温による劣化が少し認められる。
4点・・・加温による劣化が比較的認められる。
3点・・・加温による劣化がかなり認められる。
2点・・・加温による劣化がとても認められる。
1点・・・加温による劣化が非常に認められる。
【0043】
「劣化臭の強さ」
7点・・・加温による劣化臭が非常に認められる。
6点・・・加温による劣化臭がとても認められる。
5点・・・加温による劣化臭がかなり認められる。
4点・・・加温による劣化臭が比較的認められる。
3点・・・加温による劣化臭が少し認められる。
2点・・・加温による劣化臭がわずかに認められる。
1点・・・加温による劣化臭が全く認められない。
【0044】
「後味の良さ」
7点・・・基準と比較して、非常に良く感じる。
6点・・・基準と比較して、良く感じる。
5点・・・基準と比較して、やや良く感じる。
4点・・・基準と同程度に感じる。
3点・・・基準と比較して、やや劣るように感じる。
2点・・・基準と比較して、劣るように感じる。
1点・・・基準と比較して、非常に劣るように感じる。
【0045】
(3)実施例および比較例
[実験1]酸度の違いの検証
レモン透明濃縮果汁5g/L(ストレート換算:34.4g/L)、砂糖(甘味度1)36g/L、L-アスコルビン酸1g/L、アセスルファムカリウム(甘味度200)0.045g/L、スクラロース(甘味度600)0.09g/L、香料(レモンフレーバー)0.8g/L、マリーゴールド色素0.37g/Lを配合した飲料(甘味度10)に、表1の含有量となるようにクエン酸とクエン酸ナトリウムを添加し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器詰飲料を得た。得られた飲料はいずれもレモン風味が感じられた。
得られた容器詰め飲料について、上記(1)~(2)の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より、甘味度が10、pHが2.99~3.11のほぼ一定に制御された飲料において、クエン酸酸度が0.30(g/100ml)の比較例1、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例2、クエン酸酸度が0.40(g/100ml)の比較例3は、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の実施例1、クエン酸酸度が0.50(g/100ml)の実施例2、クエン酸酸度が0.55(g/100ml)の実施例3よりも、「香味劣化」「劣化臭の強さ」「後味の良さ」の評価が劣っていた。
また、表1のいずれの実施例も、「香味劣化」が4.0超であり、「劣化臭の強さ」が4.0未満であり、「後味の良さ」が2.5以上であり、劣化抑制効果が確認できた。
これにより、所定のpH、甘味度において、クエン酸酸度を高くすることで香味劣化を抑制しつつ、後味を良好にできる傾向が把握された。
【0048】
[実験2]甘味度の違い
レモン透明濃縮果汁5g/L(ストレート換算:34.4g/L)、L-アスコルビン酸1g/L、香料(レモンフレーバー)0.8g/L、マリーゴールド色素0.37g/Lを配合した飲料に、表2記載の含有量となるように、砂糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、クエン酸とクエン酸ナトリウムを添加し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器詰飲料を得た。得られた飲料はいずれもレモン風味が感じられた。
得られた容器詰め飲料について、上記(1)~(2)の測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2より、甘味度6とし、pHがほぼ同じ比較例6と実施例4を対比すると、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例6よりも、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の実施例4のほうが「香味劣化」「劣化臭の強さ」「後味の良さ」の評価が良好であることが分かった。
甘味度8とし、pHがほぼ同じ比較例7と実施例5を対比すると、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例7よりも、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の実施例5のほうが「香味劣化」「劣化臭の強さ」「後味の良さ」の評価が良好であることが分かった。
甘味度11とし、pHがほぼ同じ比較例8と実施例6を対比すると、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例8よりも、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の実施例6のほうが「香味劣化」「劣化臭の強さ」「後味の良さ」の評価が良好であることが分かった。
一方、甘味度4とすると、pHがほぼ同じ比較例4と比較例5において、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例4と、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の比較例5とでは、比較例5は「劣化臭の強さ」の評点が、比較例4よりも高くなった。また、甘味度13とすると、pHがほぼ同じ比較例9と比較例10において、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例9と、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の比較例10とでは、「香味劣化」「劣化臭の強さ」「後味の良さ」の評価が同じであった。
【0051】
[実験3]pHの違い
レモン透明濃縮果汁5g/L(ストレート換算:34.4g/L)、砂糖(甘味度1)36g/L、L-アスコルビン酸1g/L、アセスルファムカリウム(甘味度200)0.045g/L、スクラロース(甘味度600)0.09g/L、香料(レモンフレーバー)0.8g/L、マリーゴールド色素0.37g/Lを配合した飲料(甘味度10)に表3~4に記載の含有量となるように、クエン酸とクエン酸ナトリウムを添加し、95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器詰飲料を得た。得られた飲料はいずれもレモン風味が感じられた。
得られた容器詰め飲料について、上記(1)~(2)の測定および評価を行った。結果を表3~4に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
表3より、pHを約3.4とし、甘味度10とした比較例11と実施例7を対比すると、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例11よりも、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の実施例7のほうが「香味劣化」「劣化臭の強さ」「後味の良さ」の評価が良好であることが分かった。
表4より、pHを約3.6とし、甘味度10とした比較例12と実施例8を対比すると、クエン酸酸度が0.35(g/100ml)の比較例12よりも、クエン酸酸度が0.45(g/100ml)の実施例8のほうが「香味劣化」「劣化臭の強さ」「後味の良さ」の評価が良好であることが分かった。