(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075085
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】熱交換素子用シート、その製造方法、熱交換素子および熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
F28F3/08 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186273
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西岡 和也
(72)【発明者】
【氏名】新崎 盛昭
(57)【要約】
【課題】
本発明によれば、気体遮蔽性および透湿度に優れるとともに、さらに、保管や輸送に適し、加工工程での工程通過性に優れた熱交換素子用シートを提供することができる。
【解決手段】
多孔質基材および樹脂層の積層構造を有する熱交換素子用シートであって、前記熱交換素子用シートは、第1の面および第2の面を備えており、前記熱交換素子用シートの前記第1の面側の最表層は、樹脂層であり、前記樹脂層は、ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含有し、前記第1の面に、断面の真円度が0~0.3の粒子が付着しており、前記第1の面の摩擦係数が0.3~1.0である熱交換素子用シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材および樹脂層の積層構造を有する熱交換素子用シートであって、
前記熱交換素子用シートは、第1の面および第2の面を備えており、
前記熱交換素子用シートの前記第1の面側の最表層は、樹脂層であり、
前記樹脂層は、ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含有し、
前記第1の面に、断面の真円度が0~0.3の粒子が付着しており、
前記第1の面の摩擦係数が0.3~1.0である熱交換素子用シート。
【請求項2】
前記粒子の直径と、前記粒子と前記樹脂層の付着面の直径の比率(粒子の直径/付着面の直径)が1.2より大きく、3.0より小さい請求項1記載の熱交換素子用シート。
【請求項3】
前記粒子の直径が1μm以上、10μm未満である請求項1または2に記載の熱交換素子用シート。
【請求項4】
前記樹脂層の厚みが0.05~1μmである請求項1または2に記載の熱交換素子用シート。
【請求項5】
前記粒子の直径と前記樹脂層の厚みの比率(粒子の直径/樹脂層の厚み)が10より大きく、30より小さい請求項1または2に記載の熱交換素子用シート。
【請求項6】
前記粒子の主成分がアクリル樹脂である請求項1または2に記載の熱交換素子用シート。
【請求項7】
前記粒子の付着量と前記樹脂層の目付の比率(粒子の付着量/樹脂層の目付)が0.01~0.2である、請求項1または2に記載の熱交換素子用シート。
【請求項8】
請求項1または2に記載の熱交換素子用シートの製造方法であって、
塗液を前記多孔質基材の一方の面に塗布し塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥させる工程とを、この順に有し、
前記塗液が、ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含有し、
前記塗液が、粒子を含有する、熱交換素子用シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の熱交換素子用シートを用いた、熱交換素子。
【請求項10】
請求項9に記載の熱交換素子を用いた、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換素子用シート、その製造方法、熱交換素子および熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、住宅・建築物の換気設備の省エネルギー部材として注目されている。熱交換器は、室内と室外からの空気流路、熱交換素子、送風機からなる。この熱交換素子内にて、室内から室外へ排気される空気の「温度」と「湿度」を、室外から室内へ供給される空気に移行させ、室内に戻す構造となっている。熱交換素子の構成は、ライナーシートとコルゲートシートの2種類の熱交換素子用シートから形成される。その中でもライナーシートは、熱交換素子の温度交換効率、湿度交換効率、有効換気量率を高めるために熱伝達性、透湿度、気体遮蔽性が求められており、その性能を高める検討が行われている。
【0003】
気体遮蔽性と熱伝達性、透湿度に優れた熱交換素子用シートとして、多孔性フィルムの片面に、親水性樹脂膜を形成したもの(特許文献1)が知られている。上記の親水性樹脂膜は、熱交換素子用シートに気体遮蔽性を付与し、水蒸気を透過させる性質を有するものであり、上記の熱交換素子用シートは気体遮蔽性および透湿度に優れたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された熱交換素子用シートは、樹脂製の多孔性フィルムを基材として採用しており、基材である多孔性フィルムの細孔を、親水性樹脂膜で閉塞しているため、高い気体遮蔽性を備えている。また、上記のとおり、上記の親水性樹脂膜は水蒸気を透過させる性質を有するため、この熱交換素子用シートは透湿性にも優れている。一方で、特許文献1に記載の熱交換素子用シートに用いられている親水性樹脂膜は、空気中の水分を吸湿しやすく、吸湿した親水性樹脂膜は表面がべたつき、滑り性が悪化することがあり、熱交換素子用シートをロール状に巻いて保管したり輸送した際に、熱交換素子用シート同士が貼り付いてしまったり、熱交換素子用シートを熱交換素子へ加工する際に設備の搬送ロールなどに熱交換素子用シートが貼り付いて加工性が悪化する、すなわち、工程通過性が悪化するといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、気体遮蔽性および透湿度に優れるとともに、さらに、保管や輸送に適し、加工工程での工程通過性に優れた熱交換素子用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決する為に、次のような特徴を有する。すなわち、
(1)多孔質基材および樹脂層の積層構造を有する熱交換素子用シートであって、前記熱交換素子用シートは、第1の面および第2の面を備えており、前記熱交換素子用シートの前記第1の面側の最表層は、樹脂層であり、前記樹脂層は、ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含有し、前記第1の面に、断面の真円度が0~0.3の粒子が付着しており、前記第1の面の摩擦係数が0.3~1.0である熱交換素子用シート、
(2)前記粒子の直径と、前記粒子と前記樹脂層の付着面の直径の比率(粒子の直径/付着面の直径)が1.2より大きく、3.0より小さい(1)記載の熱交換素子用シート、
(3)前記粒子の直径が1μm以上、10μm未満である(1)または(2)に記載の熱交換素子用シート、
(4)前記樹脂層の厚みが0.05~1μmである(1)から(3)のいずれかに記載の熱交換素子用シート、
(5)前記粒子の直径と前記樹脂層の厚みの比率(粒子の直径/樹脂層の厚み)が10より大きく、30より小さい(1)から(4)のいずれかに記載の熱交換素子用シート、
(6)前記粒子の主成分がアクリル樹脂である(1)から(5)のいずれかに記載の熱交換素子用シート、
(7)前記粒子の付着量と前記樹脂層の目付の比率(粒子の付着量/樹脂層の目付)が0.01~0.2である、(1)から(6)のいずれかに記載の熱交換素子用シートであり、
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の熱交換素子用シートの製造方法であって、
塗液を前記多孔質基材の一方の面に塗布し塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥させる工程とを、この順に有し、
前記塗液が、ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含有し、
前記塗液が、粒子を含有する、熱交換素子用シートの製造方法であって、
(9)(1)から(7)のいずれかに記載の熱交換素子用シートを用いた、熱交換素子であり、
(10)(9)に記載の熱交換素子を用いた、熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気体遮蔽性および透湿度に優れるとともに、さらに、保管や輸送に適し、加工工程での工程通過性に優れた熱交換素子用シートを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の熱交換素子用シートの実施形態例の断面の概略図である。
【
図2】
図2は、粒子と樹脂層の付着面の直径の測定方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の熱交換素子用シートについて詳細な説明を行う。
【0011】
[熱交換素子用シート]
本発明の熱交換素子用シートは、多孔質基材および樹脂層の積層構造を有している。また、この熱交換素子用シートは、第1の面および第2の面を備えており、上記の第1の面側の熱交換素子用シートの最表層は、樹脂層である。また、上記の樹脂層は、ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含有している。なお、以下、「ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体」を「ポリビニルピロリドン等」と称することがある。
【0012】
ここで、本発明の熱交換素子用シートにおいては、多孔質基材に存在する細孔が樹脂層により閉塞されているため、この熱交換素子用シートの気体遮蔽性は優れたものとなる。よって、この熱交換素子用シートを用いた熱交換素子においては給気と排気は確実に隔離されることになる。
【0013】
また、本発明の熱交換素子用シートにおいては、多孔質基材の細孔を閉塞している樹脂層が、吸湿性高分子であるポリビニルピロリドン等を含むことで、この樹脂層の一方の面側から他方の面側への水蒸気の移行が担保される。このことにより、本発明の熱交換素子用シートの透湿度は優れたものとなる。
【0014】
また、熱交換素子用シートの第1の面側の最表層が樹脂層であり、さらに、この樹脂層の表面に断面の真円度が0~0.3の粒子が付着しており、前記第1の面の摩擦係数が0.3~1.0である。このことにより、熱交換素子用シートをロール状に巻いた際に前記樹脂層の表面に付着した粒子が物理的な障害となって樹脂層表面と熱交換素子用シートの第二の面が直接接触する面積が小さくなるため、ロール状で保管や輸送をした際の前記樹脂層の表面と第二の面の貼り付きを抑制できる。(以下、「熱交換素子用シートをロール状に巻いた状態での樹脂層の表面と第二の面の貼り付き」を「ブロッキング」と称することがある。)同様に、熱交換素子用シートを熱交換素子に加工する際に、前記樹脂層の表面と設備の搬送ロールなどが接触する場合においても、前記樹脂層の表面と設備の搬送ロールなどが直接接触する面積が小さくなり、熱交換素子用シートが搬送ロールなどに貼り付くことによる工程通過性の悪化を抑制することができる。
【0015】
本発明の熱交換素子用シートの第1の面の摩擦係数は0.3~1.0であり、好ましくは0.3~0.7であり、より好ましくは0.3~0.5である。摩擦係数が前記好ましい範囲の上限値以下である場合、熱交換素子用シートをロール状に巻いた際に熱交換素子用シートの樹脂層の表面と接触した第二の面や設備の搬送ロールなどとの滑り性が良く、ブロッキングや工程通過性が良好となることがある。一方、摩擦係数が前記好ましい範囲の下限値以上である場合、熱交換素子用シートをロール状に巻いた際に巻きズレを抑制できたり、設備の搬送ロールで搬送した際のスリップや横滑りなどの発生を抑制して加工性が良好となることがある。
【0016】
ここで、図を用いて本発明の構成を説明する。
図1に本発明の熱交換素子用シートの実施形態例の断面の概略図を示す。この熱交換素子用シート101においては、多孔質基材102に樹脂層103が積層されており、この樹脂層103の表面に粒子104が付着している。このとき、粒子と樹脂層の付着面105における樹脂層は断面方向から見ると窪んだ形状となり、第1の面に対して垂直方向から見ると円形となる。樹脂層103は親水性樹脂であるため大気中などから水分を吸湿して表面がべたついたり、滑り性が悪化することがある。そのため、樹脂層103の表面と、ロール状に巻いた際などに接する熱交換素子用シートの第二の面や、設備の搬送ロールなどが接触すると、ブロッキングや前記搬送ロールへの貼り付きが起こることがある。ここで、粒子104が存在することで、物理的な障害となり樹脂層103の表面と熱交換素子用シートの第二の面や、設備の搬送ロールなどの接触面積を小さくすることができ、結果的にブロッキングや前記搬送ロールなどへの貼り付きを抑制することができる。
【0017】
本発明における粒子の直径と、粒子と樹脂層の付着面の直径の比率(以下「粒子の直径と樹脂層の付着面の直径の比率」と称する場合もある)(粒子の直径/付着面の直径)は1.2より大きく、3.0より小さいことが好ましく、1.5より大きく、2.5より小さいことがより好ましく、1.7より大きく、2.3より小さいことが最も好ましい。前記好ましい範囲上限より小さい場合、粒子と樹脂層が付着している面積が十分大きく、粒子と樹脂層の接着力が十分大きくなり、粒子の脱落を抑制することができる。一方、前記好ましい範囲下限より大きい場合、樹脂層の表面と熱交換素子用シートの第二の面や、設備の搬送ロールなどが接触した際に、粒子が十分な物理的障害となり、ブロッキングや搬送ロールへの貼り付きを抑制できる。
【0018】
また、前述の通り本発明の樹脂層は吸湿性樹脂であるため、大気中などの水分を吸湿して膨潤して体積が増加することがある。樹脂層の体積が増加した場合、前記粒子の直径と樹脂層の付着面の直径の比率(粒子の直径/付着面の直径)が小さくなり、樹脂層の表面と熱交換素子用シートの第二の面や、設備の搬送ロールなどが接触した際に、粒子が十分な物理的障害とならず、ブロッキングや搬送ロールへの貼り付きを抑制できないことがある。このような事情からも、前記好ましい範囲の下限値以上であることが好ましい。
【0019】
本発明における前記粒子の直径と前記樹脂層の厚みの比率(粒子の直径/樹脂層の厚み)は10より大きく、30より小さいことが好ましく、12より大きく、25より小さいことがより好ましく、14より大きく、20より小さいことが最も好ましい。前記好ましい範囲上限より小さい場合、粒子と樹脂層との接着力が十分となり、粒子が脱落を抑制することができる。一方、前記好ましい範囲下限より大きい場合、樹脂層の表面と熱交換素子用シートの第二の面や、設備の搬送ロールなどが接触した際に、粒子が十分な物理的障害とり、ブロッキングや搬送ロールへの貼り付きを抑制できる。なお、上記粒子の直径と前記樹脂層の厚みの比率は、後述する方法で決定される粒子の直径を後述する方法で決定される樹脂層の厚みで除した値である。
【0020】
本発明における前記粒子の付着量と前記樹脂層の目付の比率(粒子の付着量/樹脂層の目付)は0.01~0.2であることが好ましく、0.03~0.15がより好ましく、0.05~0.1が最も好ましい。粒子の付着量が前記好ましい範囲の上限値以下である場合、樹脂層は基材の空孔を十分に閉塞することができ、熱交換素子用シートは十分な気体遮蔽性を得ることができる。一方、粒子の付着量が前記好ましい範囲の下限値以上である場合、樹脂層の表面と熱交換素子用シートの第二の面や、設備の搬送ロールなどが接触した際に、粒子付着量が十分にあるため、十分な物理的障害となり、ブロッキングや搬送ロールへの貼り付きを抑制できる。なお、上記粒子の付着量と前記樹脂層の目付の比率は、後述する方法で決定される粒子の付着量を後述する方法で決定される樹脂層の目付で除した値である。
【0021】
熱交換素子用シートの厚みは温度交換効率および熱交換素子にした際の圧力損失の観点から薄い方が好ましい。一方で、熱交換素子の強度や熱交換素子を作製する際のハンドリング性が向上するとの理由からは熱交換素子用シートはある程度以上、厚い方が好ましい。以上のことから、熱交換素子用シートの厚みは5μm以上が好ましく、9μm以上がより好ましい。また、熱交換素子用シートの厚みは40μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。
【0022】
熱交換素子用シートの目付は4g/m2以上が好ましく、6g/m2以上がより好ましい。また、熱交換素子用シートの目付は16g/m2以下が好ましく、11g/m2以下がより好ましい。熱交換素子用シートの目付を上述した上限値以下とすることで、熱交換素子用シートの厚みを低減することができ、熱および湿度の交換効率を向上させることができる。また、熱交換素子用シートの目付を上述した下限値以上とすることにより、熱交換素子用シートを熱交換素子に成型する工程におけるコルゲート加工等の際の熱と張力に耐えうる強度を保持するものとすることができる。
【0023】
ここで、本発明の熱交換素子用シートの第2の面側の最表層も樹脂層であってもよく、この場合には、熱交換素子用シートの第2の面側の最表層の樹脂層は、熱交換素子用シートの第1の面側の最表層の樹脂層と同一のものを採用することができる。また、熱交換素子用シートの生産性に優れるとともに熱交換素子用シートの透湿性にも優れるとの理由から、本発明の熱交換素子用シートは、熱交換素子用シートの第1の面側の最表層のみが樹脂層であることが好ましく、樹脂層および多孔質基材の2層構成であることがより好ましい。
【0024】
[多孔質基材]
本発明に用いられる多孔質基材は透気度および透湿度を有し、微細な貫通孔を多数有している。高湿度環境での強度低下が少ないことや薄膜化しやすいことから高分子樹脂を原料とする多孔質基材が好適に用いられる。多孔質基材を構成する高分子樹脂としてはポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、フッ素系樹脂などいずれでも構わないが、生産コスト、入手し易さなどの観点からポリオレフィン樹脂が好ましい。上記ポリオレフィン樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルペンテン-1、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、5-エチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネンなどが挙げられ、これらの単独重合体や、これらの単量体成分からなる群から選ばれる少なくとも2種の共重合体、これら単独重合体や共重合体のブレンドなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記の単量体成分以外にも、例えば、ビニルアルコール、無水マレイン酸などを共重合しても構わない。特に多孔性基材において、空孔率や細孔径など調整や製膜性、生産コストの低減などの観点から、上記の樹脂を構成する単量体成分は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選ばれる1以上であることがより好ましい。
【0025】
多孔質基材の目付は、好ましくは15g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下、更に好ましくは7g/m2以下であり、一方、好ましくは1g/m2以上、より好ましくは3g/m2以上、更に好ましくは5g/m2以上である。多孔質基材の目付を上述した上限値以下とすることで、多孔質基材の厚みを低減することができ、それを用いた熱交換素子用シートの熱および湿度の交換効率を向上させることができる。また、多孔質基材の目付を上述した下限値以上とすることにより、塗液の塗工工程や、熱交換素子用シートを熱交換素子に成型する工程におけるコルゲート加工等の際の熱と張力に耐えうる強度を保持するものとすることができる。
【0026】
多孔質基材の厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下であり、一方、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。多孔質基材の厚みを上述した上限値以下とすることで熱交換素子用シートの熱および湿度の交換効率を向上させることができる。また、多孔質基材の厚みを上述した下限値以上とすることにより、多孔質基材の第1の面への塗液の塗工や、その多孔質基材を用いた熱交換素子用シートを熱交換素子に成型する過程におけるコルゲート加工等の際の熱と張力に耐えうる強度を保持するものとすることができる。
【0027】
多孔質基材の密度は、好ましくは0.2g/cm3以上、より好ましくは0.3g/cm3以上、更に好ましくは0.4g/cm3以上である。一方、好ましくは8.0g/cm3以下、より好ましくは7.0g/cm3以下、更に好ましくは6.0g/cm3以下である。多孔質基材の密度は、熱交換素子用シートの透湿度に大きく影響し、その密度を上述の上限値以下とすることにより、熱交換素子用シートの透湿度が高くなる。一方で、その密度を上述した下限値以上とすることにより、塗液の塗工工程や、熱交換素子用シートを熱交換素子に成型する工程におけるコルゲート加工等の際の熱と張力に耐えうる強度を保持するものとすることができる。
【0028】
多孔質基材の空孔率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。多孔質基材の空孔率は透湿度と相関があると考えられており、空孔率が高くなればなるほど、多孔質基材の透湿度は向上し、それを用いた熱交換素子用シートの透湿度も向上する。
【0029】
多孔質基材の細孔径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは40nm以上である。一方、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下である。多孔質基材の細孔径は、多孔質基材の透湿度と相関があると考えられており、その細孔径を上述の下限値以上とすることにより、多孔質基材の透湿度は向上し、熱交換素子用シートの透湿度も向上する。一方で、その細孔径を上述した上限値以下とすることにより、塗液の塗工工程や、熱交換素子用シートを熱交換素子に成型する工程におけるコルゲート加工等の際の熱と張力に耐えうる強度を保持するものとすることができる。
【0030】
多孔質基材の透気度は、好ましくは透気度2500秒/100ml以下、より好ましくは300秒/100ml以下、更に好ましくは200秒/100ml以下である。透気度は透湿度と相関があると考えられており、多孔質基材の透気度が低くなればなるほど、熱交換素子用シートの透湿度は向上する。
【0031】
多孔質基材の透湿度は、好ましくは透湿度80g/m2/hr以上、より好ましくは90g/m2/hr以上、更に好ましくは100g/m2/hr以上である。多孔質基材の透湿度は、熱交換素子用シートの透湿度を高めることに繋がり、その熱交換素子用シートを熱交換素子に用いたときに、湿度交換効率が高くなるため好ましい。
【0032】
多孔質基材を製膜する方法としては、公知の湿式法や公知の乾式法を採用することができる。
【0033】
多孔質基材を構成する樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、帯電防止剤や有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレンなどの高分子樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。また、必要に応じて、さらに、コロナ処理、プラズマ処理、界面活性剤含浸、表面グラフト等の親水化処理などの表面修飾を施してもよい。
【0034】
[樹脂層]
本発明の熱交換素子用シートが備える樹脂層はポリビニルピロリドン等を含む。本発明の熱交換素子用シートが備える樹脂層におけるポリビニルピロリドン等の含有量は、樹脂層全体に対し50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましく、上限としては100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましい。ポリビニルピロリドン等の含有量が上記の下限値以上であることで、熱交換素子用シートの透湿度が優れたものとなる。ポリビニルピロリドン等の含有量が上記の上限値以下であることで、樹脂層の耐水性が優れたものとなる。なお、樹脂層がポリビニルピロリドンとビニルピロリドン共重合体の両方を含有する場合には、上記の含有量はポリビニルピロリドンとビニルピロリドン共重合体の合計の含有量を指す。
【0035】
(1)ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体
本発明の熱交換素子用シートが備える樹脂層はポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含む。ポリビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン共重合体を含むことで樹脂層は高い吸湿性を得ることができ、上記樹脂層が積層された熱交換素子用シートは高い透湿度を得ることができる。ポリビニルピロリドン等の吸湿性は、23℃の温度かつ75%RHの湿度のときの水分吸収率が10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上48質量%以下がより好ましく、25質量%以上45質量%以下が特に好ましい。水分吸収率が上記の下限値以上にあるとき前記樹脂層は高い吸湿性を得ることができ、熱交換素子用シートは高い透湿度を得ることができる。水分吸収率が上記の上限値以下にあるとき、樹脂層の吸湿による膨潤を抑制でき、熱交換素子用シートは高い耐水性を得ることができる。
【0036】
本発明におけるポリビニルピロリドンとはN-ビニルピロリドンのみが重合したポリマーの事を言い、ビニルピロリドン共重合体とは主のモノマーがN-ビニルピロリドンで、コモノマーとしてビニルアセテートやビニルカプロラクタム等が共重合したポリマーのことを言う。ビニルピロリドン共重合体における、前記コモノマーの種類および含有比(コモノマー/主のモノマー)は、本発明の効果が害されない範囲であれば特に限定されず、使用する溶媒への溶解性や塗液の物性に応じて適宜選択することができる。ポリビニルピロリドンまたはビニルピロリドン共重合体の分子量は特に限定されないが塗液として前記多孔質基材へ塗布したときに均一な厚みの塗膜が形成できる粘度としやすいことから、ポリビニルピロリドンまたはビニルピロリドン共重合体の重量平均分子量は1000以上、600000以下が好ましく、60000以上、500000以下がより好ましく、150000以上、400000以下が特に好ましい。上記のようなポリビニルピロリドンとしてはBASF社製“LuvitecK”(登録商標)シリーズなどが挙げられる。ビニルピロリドン共重合体としては“LuvitecVA”(登録商標)シリーズ、“Luvicap” (登録商標)シリーズなどが挙げられる。
【0037】
また、樹脂層に含まれるポリビニルピロリドン等の少なくとも一部は架橋しているものであることが好ましい。上記のような構成とすることで、熱交換素子用シートが高湿度条件下で使用された場合や、熱交換素子用シートを水で洗浄した場合など、水と接触したときに、ポリビニルピロリドン等が水に溶け出すことが抑制される。よって、水と接触した後の熱交換素子用シートが備える樹脂層に含まれるポリビニルピロリドン等の含有量は、水と接触する前の熱交換素子の熱交換素子用シートが備える樹脂層に含まれるポリビニルピロリドン等の含有量と比較して、ほとんど低下しない。結果として、水と接触した後の熱交換素子用シートの透湿度は、水と接触する前の熱交換素子用シートの透湿度と比較して、ほとんど低下せずに、熱交換素子用シートの耐水性は、優れたものとなる。架橋構造を有することで、ポリビニルピロリドン等が水に溶け出すことが抑制されるメカニズムとしては、ポリビニルピロリドン等の水溶性を向上させるカルボニル基が架橋により減少するからであると考える。
【0038】
(2)添加剤
本発明の熱交換素子用シートが備える樹脂層は必要に応じて添加剤を含んでも良い。添加剤としてはウレタン樹脂、アクリル樹脂、UV開始剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、防腐剤、難燃剤、染料、顔料などを含んでもよい。
【0039】
ウレタン樹脂やアクリル樹脂を添加することで、熱交換素子用シートの気体遮蔽性や耐水性をより優れたものにできることがある。ウレタン樹脂は水に不溶であり、ポリビニルピロリドン等の水溶性の樹脂のみで樹脂層を構成した場合と比べて高い耐水性を得ることができる。また、ウレタン樹脂は強靱で柔軟な物性を持っているため、ウレタン樹脂を含有する樹脂層は、薄くても強靱であり、多孔質基材に存在する細孔の閉塞性に優れる樹脂層となり、結果として、熱交換素子用シートの気体遮蔽性は優れたものとなる。アクリル樹脂は水に対する耐久性に優れるため、アクリル樹脂を含むことにより樹脂層全体の耐水性が向上する。また、アクリル樹脂は、炭素-炭素二重結合を2つ以上持つアクリレートが架橋されてなるアクリル樹脂を含むことが好ましい。これらのようなアクリル樹脂は、三次元的架橋構造を有するため、樹脂層の耐水性をより向上させることができる。
【0040】
UV開始剤を添加することで、樹脂層に紫外線を照射することで樹脂層中に含まれるポリビニルピロリドン等を架橋することができ、熱交換素子用シートの耐水性をより優れたものにできることがある。
【0041】
抗菌剤や防カビ剤を添加することで、熱交換素子用シートの表面での菌やカビの増殖を抑制できることがある。
【0042】
防腐剤を添加することで、本発明の熱交換素子用シートが高湿環境下や結露して濡れた状態での使用される場合に腐食を抑制できることがある。
【0043】
難燃剤を添加することで、本発明の熱交換素子用シートの難燃性を向上させることができる。
【0044】
染料あるいは顔料を添加することで熱交換素子用シートを好みの色調に着色することができる。また、樹脂層が着色されているため、樹脂層が容易に目視できることから、熱交換素子用シート作製工程中の欠点検査や品質管理が容易になる可能性がある。
【0045】
(3)樹脂層の目付および厚み
樹脂層の目付は少なすぎると多孔質基材に存在する細孔を十分に閉塞できないことがあり、熱交換素子用シートの気体遮蔽性を損なうことがある。一方、多すぎると熱交換素子用シートの透湿度を損なうことがある。上記の点より樹脂層の目付は0.1g/m2以上であることが好ましく、0.2g/m2以上であることがより好ましく、0.4g/m2以上であることが特に好ましい。一方で、樹脂層の目付は、3.0g/m2以下であることが好ましく、1.0g/m2以下であることがより好ましく、0.8g/m2以下であることが特に好ましい。樹脂層の目付が上記好ましい範囲にある場合、本発明の熱交換素子用シートは高い気体遮蔽性と高い透湿性を得ることができる。樹脂層の目付は後述の方法で測定された熱交換素子用シートの目付から多孔質基材の目付および粒子の付着量を差し引いて決定されるものである。
【0046】
樹脂層の厚みは0.05~1μmであることが高い気体遮蔽性と高い透湿度を両立できるという点から好ましく、0.1~0.5μmであることがより好ましい。なお、ここでいう樹脂層の厚みは、後述の方法で測定される厚みであり、樹脂層の樹脂上面から多孔質基材の界面までの長さとし、多孔質基材の細孔の中に存在する樹脂層成分および樹脂から突出した粒子は、樹脂層の厚みには含めないものとする。
【0047】
(4)樹脂層の形成方法
前述したポリビニルピロリドン等、必要に応じて、添加剤や溶媒を含有する樹脂層形成用の溶液を作製し、前述の粒子を前記溶液に分散した塗液とし、前記多孔質基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、溶媒を乾燥させる工程とをこの順に行うことによって、基材上に樹脂層を形成することができる。このとき、塗液に分散した粒子は溶媒が乾燥する過程において樹脂層表面に表出し、樹脂層表面に付着した形態とできる。また、塗液の溶媒として水、或いは水系溶媒を用いることが好ましい。塗液の溶媒に水、或いは水系溶媒、またはこれらの混合物を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な膜厚の樹脂層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
【0048】
ここで、水系溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびプロピレングリコール等のグリコール類からなる群より選ばれる一種以上からなる水に可溶である溶媒を例示することができる。
【0049】
塗液の多孔質基材上への塗布方法は、既知のウェットコーティング方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。好ましい塗布方法は、ウェットコーティングであるグラビアコーティング、バーコーティング、スロットダイコーティングである。
【0050】
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された塗液から溶媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を多孔質基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。乾燥温度は、多孔質基材に用いられる樹脂の融点以下で加工することが必要であり、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下であり、乾燥温度を上記の範囲とすることにより多孔質基材の熱による収縮率が5%以下となるため好ましい。
【0051】
さらに、前記樹脂層が形成された熱交換素子用シートに紫外線を照射して、ポリビニルピロリドン等を架橋させることができる。紫外線照射は、1回のみ行ってもあるいは2回以上繰り返して行ってもよい。紫外線照射を行う際、酸素による反応阻害を抑制するために酸素濃度を低下させても良い。酸素濃度を低下させて処理を行う場合、系内のガス全体を100体積%としたとき、酸素ガスは1.0体積%以下が好ましく、0.5体積%以下がより好ましい。相対湿度は任意でよい。また、前記紫外線照射においては、窒素ガスを用いて酸素濃度を低下させることがより好ましい。
【0052】
紫外線発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができる。
【0053】
紫外線照射の積算光量は、50~2,000mJ/cm2であることが好ましく、100~1,000mJ/cm2がより好ましく、150~500mJ/cm2が特に好ましい。前記積算光量が50mJ/cm2以上であれば樹脂層の耐水性が向上するため好ましい。また、前記積算光量が2,000mJ/cm2以下であれば基材へのダメージを少なくすることができるため好ましい。
【0054】
[粒子]
本発明の熱交換素子用シートは第1の面の表層に粒子が付着しており、粒子の断面の真円度0~0.3であり、好ましくは0~0.2であり、さらに好ましくは0~0.1である。粒子の断面の真円度は、少量の粒子付着量で効果的に熱交換素子用シートの第1の面の摩擦係数を低くできることと、面内の摩擦係数の均一性を向上させる観点から、0に近い方が好ましい。
【0055】
本発明に用いられる粒子は直径1μm以上、10μm未満であることが好ましく、1.5~7μmの範囲がより好ましく、2~5μmの範囲が特に好ましい。粒子の直径が前記好ましい範囲の下限値以上である場合、樹脂層の表面と熱交換素子用シートの第二の面や、設備の搬送ロールなどが接触した際に、粒子が十分な物理的障害となり、ブロッキングや搬送ロールへの貼り付きを抑制できる。一方、前記好ましい範囲上限よりも粒子の直径が小さい場合、熱交換素子用シートの表面の平坦性が良くなり、熱交換素子として使用した際に圧力損失が低減したり、熱交換素子用シートをロール状に巻いた際に重なった熱交換素子用シートに凹凸が転写することによる熱交換素子用シートの平坦性悪化を抑制できる。
【0056】
本発明に用いられる粒子の成分は特に限定されないが、安価で入手が容易なアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリカ、炭酸カルシウム、チタン酸バリウムなどが好適に使用できる。中でも前記樹脂層との密着性が良好なアクリル樹脂が特に好ましい。アクリル樹脂製の粒子は前記樹脂層とも密着性が良好なため、物理的な外力などで樹脂層から粒子の脱落を抑制することができる。
【0057】
上記のようなアクリル樹脂製の粒子としては、綜研化学株式会社製“MX”シリーズや日本エクスラン工業株式会社製“タフチック(登録商標)”シリーズなどが挙げられる。
【0058】
[熱交換素子]
次に熱交換素子の製造方法の一例を説明する。熱交換素子用シートと、間隔保持部材であるコルゲートシートを接着剤等で貼り合わせ、片面段ボールを得る。接着剤は、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル系を用いることで、本発明の熱交換素子用シートが備える樹脂層との接着力が向上するため好ましい。また、必要に応じてコルゲートシートに、難燃剤加工を施しておいてもよい。コルゲート加工は、コルゲートシートを形成する互いに噛み合って回転する一対の歯車状のコルゲーターにより行われ、熱交換素子用シートとコルゲートシートとの貼り合わせは、熱交換素子用シートをコルゲート加工されたコルゲートシートに押し付けるプレスロールからなる装置により行われる。コルゲートシートと熱交換素子用シートの接着には、コルゲートシートの段加工された頂点部に接着剤を塗布し、熱交換素子用シートを押圧し接着する工程等を採用することもできる。またコルゲートシートと熱交換素子用シートとの少なくともいずれか一方に接着剤を塗布し、コルゲートシートと熱交換素子用シートを加熱しながら押圧することで接着させることもできる。
【0059】
熱交換素子は、片面段ボールを積層することで製造される。具体的には、片面段ボールの山の頂点に接着剤を塗布し、複数の片面コルゲートを、一枚ずつ交互に交差させて積層させ製造する。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。特に断らない限り、測定値から数値を求めるときは、測定の数を2回とし、その平均値を数値として採用した。
【0061】
<測定法>
(1)熱交換素子用シートの目付
100mm角の熱交換素子用シートの試験片を5枚用意し、それらを温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中にて24hr静置し、その後に、5枚の試験片それぞれの質量(g)を測定し、その平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表し、熱交換素子用シートの目付(g/m2)とした。
【0062】
(2)多孔質基材の目付
300ml容量の容器に充填された200mlの溶媒(酢酸エチル)に5枚の(1)の試験片を2分間含浸させ、5枚の試験片の表面および裏面を5回ずつ拭き取った。次に、再度、5枚の試験片を300ml容量の容器に充填された200mlの溶媒(酢酸エチル)に2分間浸漬させた。続いて、5枚の試験片を温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中にて24hr静置し、熱交換素子用シートから粒子および樹脂層を除去した多孔質基材の試験片を得た。その後に、5枚の試験片それぞれの質量(g)を測定し、その平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表し、多孔質基材の目付(g/m2)とした。
【0063】
(3)樹脂層の目付
次に、(1)と(2)で求めた熱交換素子用シートの目付および、多孔質基材の目付および後述する粒子の付着量から下記式より樹脂層の目付(g/m2)を計算した。
樹脂層の目付(g/m2)=熱交換素子用シートの目付(g/m2)-多孔質基材の目付(g/m2)-粒子の付着量(g/m2)。
【0064】
(4)樹脂層の厚み
熱交換素子用シートの断面SEM画像或いは断面TEM画像から、樹脂層の厚みを計測した。樹脂層の厚みは、多孔質基材の中に浸透した熱交換素子用シートの第1の面側を観察し、樹脂層の樹脂上面から多孔質基材の界面までの長さとし、多孔質基材の細孔の中に存在する樹脂層成分および樹脂から突出した粒子は、樹脂層の厚みの計測からは無視した。測定は断面に粒子を含まない部分を選定して行い、同様の測定を10点で行った平均値を樹脂層の厚みとした。
【0065】
(5)樹脂層に含有される成分の特定と含有量
熱交換素子用シートの第1の面から樹脂層を刃物で削り取り、合わせて5gの試験片を採取した。前記試験片を、熱分解ガスクロマトグラフィー(熱分解GC-MS)で測定し、樹脂層に含まれている成分を特定し、さらに、樹脂層に含まれる成分の含有量を求めた。
【0066】
(6)粒子の直径
熱交換素子用シートの第1の面を面に対して垂直方向からSEMで表面を観察し、粒子のサイズを画像から計測した。視野100μm×100μmの画像に映った各粒子の面積を画像解析により計測し、前記面積と同面積の真円の直径を算出し、その平均値を粒子の直径とした。
【0067】
(7)粒子の断面の真円度
熱交換素子用シートの第1の面を面に対して垂直方向からSEMで表面を観察し、画像に映った粒子の長径(Dl)と短径(Dm)を画像処理により計測し、真円度=Dl-Dm/2の計算式より粒子の断面の真円度を求めた。視野100μm×100μmの画像に映った粒子10個分について同様の方法で真円度を求め、その平均値を粒子の断面の真円度とした。ひとつの視野100μm×100μmの画像に粒子が10個存在しない場合は、粒子10個分の測定ができるまで追加で別の視野100μm×100μmの画像を撮影した。
【0068】
(8)粒子と樹脂層の付着面の直径
図2を用いて説明する。
図2は粒子と樹脂層の付着面の直径の測定方法を説明するための概略図である。
【0069】
熱交換素子用シートの第1の面を斜め30度からSEM観察し、画像に映った粒子(104)と樹脂層(103)の付着面(105)の直径(106)を画像より計測した。1つの水準につき粒子10個分で同様の計測を行い、その平均値を粒子と樹脂層の付着面の直径とした。
【0070】
(9)粒子の成分の特定
顕微赤外分光光度計を用いて、粒子を含む視野10μm×10μmの範囲のIRスペクトルを取得し、次いで粒子を含まない視野10μm×10μmの範囲のIRスペクトルとのピークの差異から、粒子の成分を特定した。
【0071】
(10)粒子の付着量
熱交換素子用シートの第1の面をSEMで観察し、視野100μm×100μmに映った各粒子の直径を(6)の方法で計測した。次いで、各粒子の直径から各粒子の真球換算での体積を算出し、(9)で特定した成分の比重を乗じて各粒子の質量を算出した。算出した質量を100μm×100μmの範囲での粒子の付着量とした。得られた値を108して、1m2の範囲での粒子の付着量とした。
【0072】
(11)熱交換素子用シートの摩擦係数
熱交換素子用シートの第1の面をカトーテック株式会社製粗さ/摩擦感テスターKES-SESRUを用いて測定した。測定条件は感度:High、走査速度:1.0mm/sec、摩擦静荷重:245mN、粗さ静荷重:98mNとした。
【0073】
(12)熱交換素子用シートの厚み
厚みは、試料(熱交換素子用シート)の異なる箇所から200mm角の試験片を3枚採取し、温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中にて24hr静置し、その後、3枚の試験片それぞれの中央と4隅の5点の厚み(μm)を測定器(型式ID-112、(株)ミツトヨ製)を用いて測定し、15個の測定値の平均値を値とした。
【0074】
(13)熱交換素子用シートの透湿度
透湿度は、JIS Z0208(1976)透湿度(カップ法)の方法により測定した。使用したカップは、直径60mmで深さ25mmである。試験片は、直径70mmの円形の熱交換素子用シートを5枚用意した。試験片を、温度20℃、湿度65%RHで24hr放置した。次に、その試験片を、水分測定用塩化カルシウム(和光純薬工業製)の入ったカップに設置し、試験片、塩化カルシウム、カップを併せた初期質量(T0)を測定し、次いで、温度20℃、湿度65%RHに設定した恒温恒湿槽内に試験片を静置し、静置を開始して5時間後の時点における試験片、塩化カルシウム、カップを併せた質量(T5)を測定した。下記式により透湿度を求め、5枚の平均値を透湿度(g/m2/hr)とした。
透湿度(g/m2/hr)=[(T5-T0)/0.002827]/5。
【0075】
(14)熱交換素子用シートの透気度
透気度は、JIS P8117(2009)透気度(ガーレ試験機法)の方法により測定した。長さ100mm、幅100mmの試験片(熱交換素子用シート)を5枚用意した。試験片は温度20℃、湿度65%RHで24hr放置後、同温湿度の環境下で、ガーレ式デンソメータ(型式G-B3C、(株)東洋精機製作所)に試験片を設置し、空気100mlが通過する時間を測定し、5枚の平均値を透気度(秒/100ml)とした。なお、透気度の値が大きいほど、熱交換素子用シートの気体遮蔽性は優れたものとなる。
【0076】
(15)耐ブロッキング性
熱交換素子用シートを5cm×5cmのサイズで15枚切り出した。切り出した15枚のサンプルを平らなガラス板の上に積層し、最上部に平らなガラス板を乗せた。さらに最上部のガラス板の上に1kgの錘を乗せ、ブロッキング評価セットとした。1水準につき前記ブロッキング評価セットを3セット作製し、温度50℃、湿度80%RHに保った恒温恒湿槽の中に投入し、8時間後、24時間後、100時間後に1セットずつ取り出し、ブロッキングの有無を確認した。
【0077】
積層した熱交換素子用シートを剥離した際、樹脂層の破壊なく剥離できたものをOK判定とし、熱交換素子用シート同士が貼り付き、剥離した際に樹脂層が破壊されたものをNG判定とした。
【0078】
(実施例1)
多孔質基材として、目付6.7g/m2、厚さ12μm、空孔率43%、細孔径33nmのポリエチレン多孔性フィルムを用意した。物性は、透湿度101g/m2/hr、透気度120秒/100mlであった。
次いで、以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0079】
樹脂層の材料としてポリビニルピロリドン(BASF社製“LuvitecK85”(登録商標))を用意した。次いで、粒子として(綜研化学(株)製“MX-300”)を用意した。溶媒としてエタノールと水の混合液を用いた。前記“LuvitecK85”(登録商標)と”MX-300”とエタノールと水を質量比で4.0:0.1:31.97:63.93の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して樹脂層の塗料組成物とした。
次いで、以下の手順で多孔質基材の表面に樹脂層を形成した。
【0080】
前記多孔質基材の表面にバーコーター番手8番を用いて前記樹脂層の塗料組成物を塗布した。塗布後、60℃設定の熱風オーブン内で1分間乾燥させた。以上の手順で樹脂層にポリビニルピロリドンを含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0081】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0082】
(実施例2)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0083】
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-300”と水とエタノールを質量比で4.0:0.2:31.93:63.87の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0084】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0085】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0086】
(実施例3)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0087】
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-300”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0088】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0089】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0090】
(実施例4)
使用するバーコーター番手を#6とした以外は、実施例1と同様の方法で熱交換素子用シートを得た。
【0091】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0092】
(実施例5)
使用するバーコーター番手を#10とした以外は、実施例1と同様の方法で熱交換素子用シートを得た。
【0093】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0094】
(実施例6)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0095】
使用する粒子を綜研化学(株)製“MX-150”とし、
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-150”と水とエタノールを質量比で4.0:0.1:31.97:63.93の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0096】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0097】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0098】
(実施例7)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0099】
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-150”と水とエタノールを質量比で4.0:0.2:31.93:63.87の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0100】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0101】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0102】
(実施例8)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0103】
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-150”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0104】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0105】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0106】
(実施例9)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0107】
使用する粒子を綜研化学(株)製“MX-500L”とし、
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-500L”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0108】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0109】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0110】
(実施例10)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0111】
使用する粒子を綜研化学(株)製“MX-80H3wT”とし、
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-80H3wT”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0112】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0113】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0114】
(実施例11)
使用するバーコーター番手を#10とした以外は、実施例10と同様の方法で熱交換素子用シートを得た。
【0115】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0116】
(実施例12)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0117】
使用する粒子を(株)日本触媒製“シーホスターKE-S150”(登録商標)とし、
“LuvitecK85”(登録商標)と” シーホスターKE-S150”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0118】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0119】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0120】
(比較例1)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0121】
“LuvitecK85”(登録商標)と水とエタノールを質量比で4.0:32:64の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0122】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含む熱交換素子用シートを得た。
【0123】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0124】
(比較例2)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0125】
使用する粒子を綜研化学(株)製“MX-1500H”とし、
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-1500H”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0126】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0127】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0128】
(比較例3)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0129】
使用する粒子を綜研化学(株)製“MX-1000”とし、
“LuvitecK85”(登録商標)と” MX-1000”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0130】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0131】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0132】
(比較例4)
以下の操作により樹脂層の塗料組成物を作製した。
【0133】
使用する粒子を市販のゼオライトである(株)シナネンゼオミック製“ゼオミックWHW10NS”(登録商標)とし、 “LuvitecK85”(登録商標)と”ゼオミックWHW10NS”と水とエタノールを質量比で4.0:0.4:31.87:63.73の割合で混合し、均一な液体となるまで撹拌して混合溶液とした。
【0134】
上記以外は実施例1と同様の手順で樹脂層にポリビニルピロリドン含み、樹脂層の表層に粒子が付着した熱交換素子用シートを得た。
【0135】
この熱交換素子用シートの構成を表1に示す。
【0136】
実施例1~12および比較例1~4の熱交換素子用シートについて行った評価の結果を、表2に示す。いずれの熱交換素子用シートも樹脂層にポリビニルピロリドンを含むため、高い透湿度を発現し、樹脂層により多孔質基材の細孔が閉塞されているため、高い透気度を発現する。
【0137】
実施例1~12の熱交換素子用シートは樹脂層表面に粒子が付着しているため、良好な耐ブロッキング性を有する。
【0138】
比較例1の熱交換素子用シートは樹脂層表面に粒子が付着していないため、耐ブロッキング性は劣ったものとなっている。
【0139】
実施例1、2、3それぞれの熱交換素子用シートを比較すると、粒子の付着量が多い方が耐ブロッキング性に優れることが分かる。
【0140】
実施例1~5の熱交換素子用シートと実施例6~8、10、11の熱交換素子用シートを比較すると、粒子の直径が大きい実施例1~5の熱交換素子用シートの方がより耐ブロッキング性が良好であることが分かる。
【0141】
一方で、実施例3の熱交換素子用シートと実施例9の熱交換素子用シートを比較すると、粒子の直径の大きい実施例9の熱交換素子用シートの方が耐ブロッキング性が劣る結果となっている。これは、実施例9の熱交換素子用シートの粒子の直径と粒子と樹脂層の付着面の直径の比が大きいため、物理的な外力によって粒子が脱落して減ってしまったためだと考えられる。
【0142】
さらに直径が大きい粒子を使用した比較例2と比較例3の熱交換素子用シートは、上記と同様の理由でより粒子が脱落しやすく、より耐ブロッキング性が劣ったものとなったと考えられる。
【0143】
実施例8と実施例12の熱交換素子用シートは、粒子の直径、粒子の付着量が同じになるように樹脂層の塗料組成物を塗布したが、実施例8の熱交換素子用シートの方が耐ブロッキング性が優れたものとなっている。これは、実施例8の熱交換素子用シートに使用した粒子がアクリル樹脂であるため、粒子と樹脂層の密着力が良好であり、粒子の脱落が抑制されたと考えられる。
【0144】
比較例4の熱交換素子用シートは、粒子の断面の真円度が悪く、耐ブロッキング性が劣ったものとなっている。
【0145】
【0146】