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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075086
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20240527BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B05D5/06 101A
B05D1/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186274
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕基
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政之
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AE06
4D075AE16
4D075BB26Z
4D075BB92Y
4D075CB13
4D075CB15
4D075DA06
4D075DA25
4D075DB02
4D075DB05
4D075DB07
4D075DB13
4D075DB31
4D075DC12
4D075DC18
4D075EA05
4D075EA43
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB38
4D075EB45
4D075EC02
4D075EC11
4D075EC23
(57)【要約】
【課題】無粒子感に優れ、且つ観察角度による輝度変化が大きく光輝性に優れた複層塗膜を形成する複層塗膜形成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】被塗物に、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、形成される着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成し、形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する複層塗膜形成方法であって、光輝性顔料分散体(Y)が、固形分含有率が0.1~5質量%で、且つ平均長径が5~40μmで、平均厚みが1~200nmである光干渉性顔料(A)を分散体の全固形分中に40~90質量%含有し、複層塗膜のSg(15°)値が2.0以下、FF値が45以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、形成される着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成し、形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する複層塗膜形成方法であって、
光輝性顔料分散体(Y)が、固形分含有率が0.1~5質量%で、且つ平均長径が5~40μmで、平均厚みが1~200nmである光干渉性顔料(A)を分散体の全固形分中に40~90質量%含有し、
複層塗膜のSg(15°)値が2.0以下、FF値が45以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
光干渉性顔料(A)が、平均長径が5~40μmで、平均厚みが1~200nmであるチタン酸薄片(A-1)である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
光輝性顔料分散体(Y)が、光干渉性顔料(A)以外の光輝性顔料を含有する請求項1または2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
着色塗膜が、L*a*b*表色系における明度L*値が20以下の範囲内である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
光輝性塗膜が、0.2~5μmの乾燥膜厚を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
クリヤー塗料(Z)が、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である請求項1~5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗装する目的は、主に素材の保護及び美観の付与である。工業製品においては、その商品力を高める点から、美観、なかでも特に「質感」が重要である。消費者が求める工業製品の質感は多様なものであるが、近年、自動車外板、自動車部品、家電製品等の分野において、真珠のような光沢感が求められている(以下、「真珠光沢感」と表記する。)。
【0003】
真珠光沢感としては、近年、照射された光の多重反射光が強く、観察角度による輝度変化が大きく、粒子感が低い質感が求められている。例えば本出願人は特許文献1において、粘性調整剤(A)及び鱗片状光輝性顔料(B)を含有する光輝性顔料分散体であって、鱗片状光輝性顔料(B)が、透明又は半透明な基材を金属酸化物で被覆した光干渉性顔料であり、且つ、固形分含有率が0.1~15質量%である光輝性顔料分散体を用いた複層塗膜形成方法を提案した。また特許文献2においては、チタン酸薄片、水性樹脂、界面活性剤、レオロジーコントロール剤、及び水を含有する水性光輝性塗料組成物を用いて、光輝性が高く且つ粒子感が低い光輝性樹脂塗膜が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表2018/012014号公報
【特許文献2】特開2022-80318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2で示された方法では、無粒子感や光輝性が不十分な場合があり、また塗色によって、特にグレー~黒色において無粒子感に優れ、且つ観察角度による輝度変化が大きく光輝性に優れた複層塗膜が得られない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、無粒子感に優れ、且つ観察角度による輝度変化が大きく光輝性に優れた複層塗膜を形成し得る複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
被塗物に、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、形成される着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成し、形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する複層塗膜形成方法であって、光輝性顔料分散体(Y)が、固形分含有率が0.1~5質量%で、且つ平均長径が5~40μmで、平均厚みが1~200nmである光干渉性顔料(A)を分散体の全固形分中に40~90質量%含有し、複層塗膜のSg(15°)値が2.0以下、FF値が45以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、無粒子感に優れ、且つ観察角度による輝度変化が大きく光輝性に優れた複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【0010】
被塗物
本発明の複層塗膜形成方法を適用し得る被塗物としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらを含む合金などの金属材、及びこれらの金属による成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。該表面処理としては例えばリン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等が挙げられる。さらに、上記被塗物の素材が金属であれば、表面処理された金属素材の上にカチオン電着塗料等によって下塗り塗膜が形成されていることが好ましい。また下塗り塗膜の上に中塗り塗膜を形成してもよい。被塗物の素材がプラスチックである場合には、脱脂処理されたプラスチック素材の上にプライマー塗料によってプライマー塗膜が形成されていることが好ましい。
【0011】
着色塗料(X)
本発明の複層塗膜形成方法では上述の被塗物に着色塗料(X)を塗装して、着色塗膜を形成することができる。着色塗料(X)としては、具体的には、ビヒクル形成樹脂、顔料ならびに有機溶剤及び/又は水等の溶媒を主成分として含有するそれ自体既知の熱硬化性塗料を使用することができる。上記熱硬化性塗料としては、例えば中塗り塗料及びベース塗料等が挙げられる。着色塗料(X)としてベース塗料を用いる場合には被塗物面が電着塗膜面だけでなく中塗り塗膜面であっても良い。
着色塗料(X)に使用されるビヒクル形成樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等が挙げられるが、耐水性、耐薬品性、耐候性等の観点から、熱硬化性樹脂であることが望ましい。ビヒクル形成樹脂としては基体樹脂と架橋剤を併用していることが好ましい。
【0012】
基体樹脂は、耐候性及び透明性等が良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0013】
ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸成分との縮合反応によって得られるポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0014】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造される、いわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0015】
ウレタン樹脂としては、例えば、上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したものを挙げることができる。
【0016】
着色塗料(X)は、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。着色塗料(X)が水性塗料である場合、上記基体樹脂は、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等、最も一般的にはカルボキシル基を含有する樹脂を使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより基体樹脂を水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて好ましくは約10mgKOH/g以上、より好ましくは30~200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物等を挙げることができる。
【0017】
また、上記樹脂の水分散化は、上記モノマー成分を界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0018】
前記架橋剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるための成分であり、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック化していないポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物を含む)、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、及びカルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素等とホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化する等によって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
【0020】
着色塗料(X)における上記各成分の比率は、任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性等の観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、前者を好ましくは60~90質量%、より好ましくは70~85質量%の範囲内とし、後者を好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~30質量%の範囲内とするのが適当である。
【0021】
前記顔料は、着色塗料(X)により形成される着色塗膜の色相や明度を決定し、下地隠蔽性を与えるものである。該顔料としては例えば、光輝性顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができ、目的とする複層塗膜の塗色が、特にグレー~黒色の場合には、着色塗料(X)を塗装して得られた塗膜がL*a*b*表色系における明度L*値が20以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下の範囲内となるものであることが好適であり、適宜顔料の種類や配合量を調整することができる。なかでも黒色顔料を使用することが好ましい。黒色顔料としては例えば、インク用、塗料用及びプラスチック着色用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて含有することができる。例えば、複合金属酸化物顔料、黒色酸化鉄顔料、黒色酸化チタン顔料、ペリレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができるが、複層塗膜の色調の点から、カーボンブラックが好ましい。
【0022】
着色塗料(X)において黒色顔料を用いる場合には、隠蔽性、漆黒性等の観点から前記ビヒクル形成樹脂100質量部(固形分)を基準として黒色顔料を好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部、特に好ましくは1~4質量部含有することができる。
【0023】
なお、本発明において、着色塗料(X)のL*値は、多角度分光測色計を用いて、測定対象面に垂直な軸に対し45度の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光から45度の偏角を有する光)についてL*、a*、b*(JIS Z 8729(2004))を測定したときの値である。上記多角度分光測色計としては、例えば、「CM-512m3」(商品名、コニカミノルタ社製)、「MA-68II」(商品名、X-Rite社製)などを使用することができる。
【0024】
具体的には着色塗料(X)の上記L*値は以下の方法により測定することができる:まず、硬化電着塗膜上に着色塗料(X)を塗装する際に、ポリテトラフルオロエチレン板上にも、同様に、着色塗料(X)を塗装する。次いで、該ポリテトラフルオロエチレン板を、光輝性顔料分散体(Y)が塗装される前に回収し、該ポリテトラフルオロエチレン板上の着色塗膜を硬化せしめる。次いで、硬化した着色塗膜を剥離して回収し、予めグレー(マンセルチャートでN-6)の硬化塗膜を形成した塗板上に乗せる。次いで、「MA-68II」(商品名、X-Rite社製、多角度分光測色計)等を使用し、塗膜について、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光に対して45°の角度で受光した光)についてL*値を測定する。
【0025】
上記光輝性顔料としては、例えばアルミニウムフレーク、雲母フレーク等が挙げられる。さらに後述する光輝性顔料分散体(Y)で用いられる光干渉性顔料(A)を必要に応じて配合しても良い。
【0026】
また黒色顔料以外の着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられる。
【0027】
体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましい。なかでも、平滑性に優れた外観を有する複層塗膜を得るため、上記体質顔料として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、特に平均一次粒子径が0.01~0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが好適である。
【0028】
着色塗料(X)には、任意選択で、有機溶剤を使用することもできる。具体的には、通常塗料に用いられているものを使用することができ、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル;ブタノール、プロパノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトンの有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記のうち、エステル、エーテル、アルコール、ケトンの有機溶剤が溶解性の観点から好ましい。
着色塗料(X)により得られる着色塗膜の硬化膜厚は、光線透過抑制及び下地の隠蔽性等の観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは8~40μm、さらに好ましくは10~35μmである。
【0030】
着色塗料(X)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、着色塗料(X)が水性塗料である場合には例えば、着色塗料(X)に脱イオン水、任意選択で増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を10~60質量%程度、粘度をB6値で200~5000mPa・sに調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、任意選択で静電印加を行うこともできる。
【0031】
着色塗料(X)は、色安定性等の観点から、白黒隠蔽膜厚が好ましくは20μm以下、より好ましくは5~20μm、さらに好ましくは10~20μmである。本明細書において、「白黒隠蔽膜厚」とは、JIS K5600-4-1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を、鋼板に貼り付けた後、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りし、乾燥又は硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察し、隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚を電磁式膜厚計で測定した値である。
【0032】
本発明では、必要に応じて上記着色塗膜上に透明または半透明のエナメル塗料(XI)によるエナメル層を設けても良い。エナメル塗料(XI)としては、具体的には、ビヒクル形成樹脂ならびに有機溶剤及び/又は水等の溶媒を主成分として含有するそれ自体既知の熱硬化性塗料を使用することができる。上記熱硬化性塗料としては、着色塗料(X)が中塗り塗料である場合にベース塗料等が適用でき、ビヒクル形成樹脂や溶媒、顔料等の成分は上述の着色塗料(X)の説明で列記したものが適宜使用できる。
【0033】
本発明の複層塗膜形成方法では、上記で形成される着色塗膜やエナメル塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する。
【0034】
上記着色塗膜やエナメル塗膜は硬化塗膜であっても未硬化塗膜であってもよい。本明細書において、硬化塗膜とは、JIS K 5600-1-1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600-1-1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
上記着色塗膜やエナメル塗膜を硬化させる場合には、通常の加熱(焼付け)手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により硬化させることができる。
【0035】
上記加熱は、好ましくは80~180℃、より好ましくは100~170℃、そしてさらに好ましくは120~160℃の温度で、好ましくは10~60分間、そしてより好ましくは15~40分間実施される。
【0036】
上記着色塗膜やエナメル塗膜を未硬化塗膜とする場合には、光輝性顔料分散体(Y)を塗装する前に、着色塗膜やエナメル塗膜を塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことができる。
【0037】
上記プレヒートは、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃、そしてさらに好ましくは60~80℃の温度で、好ましくは30秒間~15分間、より好ましくは1分間~10分間、そしてさらに好ましくは2分間~5分間加熱することにより実施される。また、上記エアブローは、被塗物の塗装面に、通常常温(ambient temperature)の空気又は25~80℃の温度に加熱された空気を、30秒間~15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0038】
光輝性顔料分散体(Y)
光輝性顔料分散体(Y)は、固形分含有率が0.1~5質量%で、且つ平均長径が5~40μmで平均厚みが1~200nmである光干渉性顔料(A)を分散体の全固形分中に40~90質量%含有するものである。
【0039】
本発明においては特に複層塗膜の無粒子感や光輝感の観点から、光干渉性顔料(A)が、平均長径が5~40μmで、平均厚みが1~200nmであるチタン酸薄片(A-1)であることが好適である。チタン酸薄片(A-1)は、粒子形状が薄片状、鱗片状、雲母状、板状といわれる形状を包含するものである。チタン酸薄片(A-1)の平均長径は5~40μ、好ましくは10~35μmで、平均厚みが1~200nm、好ましくは10~150nmであることが複層塗膜の無粒子感や光輝感の点から好適である。ここでいう平均長径は、マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。平均厚さは、水面拡散面積法(水面拡散面積=Scm/gとすると、平均厚さ=4000/Sμm)により測定することができる。
【0040】
チタン酸薄片(A-1)を構成する酸化チタンとしては、二酸化チタン、低次酸化チタンのほか、それらの含水物、水和物、水酸化物をも包含し、特にレピドクロサイト構造などの層状の結晶構造を有するチタン酸が好適であり、単層のナノシートや積層体であってよく、またその結晶型はアナタース型、ルチル型、ブルッカイト型など種々の結晶型をもとり得、また無定型であってもよい。
【0041】
上記チタン酸薄片(A-1)は、その表面および/または内部に、種々の物質を存在させることができる。たとえば、銅、銀、金、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ケイ素、スズ、鉛、バナジウム、ニオブ、リン、アンチモン、ビスマス、モリブデン、タングステン、セレン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、セシウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、ロジウム、パラジウム、白金などの金属またはそれらの酸化物、水酸化物などの化合物を存在させたり、あるいは、有機物成分を存在させることができる。
【0042】
本発明では、光干渉性顔料(A)を光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中に40~90質量%、好ましくは50~80質量%含有することが形成される複層塗膜のハイライトの光輝感の点から好適である。
【0043】
光輝性顔料分散体(Y)は、光干渉性顔料(A)を含有する分散体であれば、それ自体既知の他の成分、具体的には水、粘性調整剤、表面調整剤、光干渉性顔料(A)以外の光輝性顔料、着色顔料、樹脂成分等を含有することができる。
【0044】
光輝性顔料分散体(Y)に使用される粘性調整剤は既知のものであることができ、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤等を挙げることができる。なかでも真珠光沢感に優れた塗膜を得る観点から特に、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤を使用することが好ましく、特にセルロース系粘性調整剤を使用することが好ましい。これらの粘性調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0045】
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物及びバーミキュライト、又はこれらの置換体や誘導体、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0047】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE-60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の固形分酸価は、30~300mgKOH/g、好ましくは80~280mgKOH/gの範囲内である。
【0048】
セルロース系粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタル等を挙げることができ、なかでも、真珠光沢感に優れた塗膜を得る観点から、セルロースナノファイバーを使用することが好ましい。
【0049】
上記セルロースナノファイバーは、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロース、ナノセルロースクリスタルと称されることもある。
【0050】
上記セルロースナノファイバーは、真珠光沢感に優れた塗膜を得る観点から、数平均繊維径が、好ましくは1~500nm、より好ましくは1~250nm、さらに好ましくは1~150nmの範囲内である。また、数平均繊維長が、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.1~15μm、さらに好ましくは0.1~10μmの範囲内である。
【0051】
上記数平均繊維径及び数平均繊維長は、例えば、セルロースナノファイバーを水で希釈した試料を分散処理し、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像から測定算出される。
【0052】
上記セルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊し、水中で安定化させたものを使用することができる。ここでセルロース原料は、セルロースを主体とした様々な形態の材料を意味し、具体的には例えば、パルプ(木材パルプ、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど);微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース;セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース;及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重
合した微細セルロース;などが挙げられる。
【0053】
上記セルロース原料の解繊方法としては、セルロース原料が繊維状態を保持している限り特に制限はないが、例えば、ホモジナイザーやグラインダー等を用いた機械的解繊処理、酸化触媒等を用いた化学的処理、微生物等を用いた生物的処理といった方法が挙げられる。
【0054】
また、上記セルロースナノファイバーとしては、アニオン変性セルロースナノファイバーを使用することもできる。アニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシルメチル化セルロースナノファイバー、リン酸基含有セルロースナノファイバー等が挙げられる。上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、例えば、セルロース原料に、カルボキシル基、カルボキシルメチル基、リン酸基等の官能基を公知の方法により導入し、得られた変性セルロースを洗浄して変性セルロースの分散液を調製し、この分散液を解繊して得ることができる。上記カルボキシル化セルロースは酸化セルロースとも呼ばれる。
【0055】
上記酸化セルロースを塩基性の中和剤により中和したセルロースも、またセルロース系粘性調整剤として好適に使用することができる。かかる中和剤による中和は、セルロースナノファイバーをはじめとするセルロース系粘性調整剤の耐水付着性を向上させる。本明細書における酸化セルロースの中和剤は、水酸化ナトリウム等の無機金属塩基よりも嵩高い、有機塩基の中和剤である。好ましい中和剤の例としては、第四級アンモニウム塩、アミン(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン)等の有機塩基を挙げることができる。
【0056】
前記セルロースナノファイバーの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のレオクリスタ(登録商標)、王子ホールディングス株式会社製のアウロ・ヴィスコ(登録商標)などが挙げられる。
【0057】
光輝性顔料分散体(Y)における粘性調整剤の含有量は、ハイライトにおいて明るく、かつ観察方向による粒子感の変化が小さい真珠光沢感を有する複層塗膜を得る等の観点から、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中に、固形分で好ましくは0.1~90質量%、より好ましくは0.5~80質量%、さらに好ましくは1~60質量%が適当である。
【0058】
上記表面調整剤は、光輝性顔料分散体(Y)の塗装時に、水に分散された上記の光干渉性顔料(A)を対象物上に一様に配向するのを支援するために使用される。
【0059】
表面調整剤としては、既知のものを使用でき、例えばシリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレンジオール系表面調整剤などの表面調整剤が挙げることができ、なかでも、光干渉性顔料の配向性の観点から、アセチレンジオール系表面調整剤が好ましい。表面調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0060】
表面調整剤の市販品は例えば、エボニックインダストリーズ社製のDynolシリーズ、サーフィノールシリーズ、Tegoシリーズ、ビックケミー社製のBYKシリーズ、共栄社化学社製のグラノールシリーズ、ポリフローシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズなどが挙げられる。
【0061】
光輝性顔料分散体(Y)が表面調整剤を含有する場合、その表面調整剤の含有量は、ハイライトにおいて明るく、かつ観察方向による粒子感の変化が小さい真珠光沢感を有する複層塗膜を得る等の観点から、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中に、固形分で好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.2~35質量%、さらに好ましくは0.3~30質量%が適当である。
【0062】
上記光干渉性顔料(A)以外の光輝性顔料としては、複層塗膜に真珠光沢感を付与する点から、透明又は半透明な鱗片状基材を金属酸化物で被覆した光輝性顔料を含むことが好ましい。
【0063】
ここでいう透明または半透明な鱗片状基材とは、天然マイカ、人工マイカ、ガラス、酸化鉄、酸化アルミニウムや各種金属酸化物等の鱗片状基材のことである。光輝性顔料とは、該鱗片状基材とは屈折率が異なる金属酸化物が該鱗片状基材の表面に被覆された光輝性顔料である。上記金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄等を挙げることができ、該金属酸化物の厚さの違いによって、上記光輝性顔料は種々の異なる干渉色を発現することができる。
【0064】
特に本発明では鱗片状光輝性顔料として、黒色を呈する光輝性顔料を使用することができ、上記金属酸化物の例として、少なくとも一部に鉄(Fe)を含むものを好適に挙げることができ、さらに鉄(Fe)以外の金属の酸化物としてチタン、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、錫、クロム、ジルコニウム等から任意に選ばれる1または2種類以上の金属を含む金属酸化物を挙げることができる。
【0065】
またさらに、黒色を呈する光輝性顔料の例としては、酸化チタンおよび/または酸化鉄で表面を被覆したのち、さらに低酸素雰囲気下において、被覆された酸化チタンおよび/または酸化鉄の一部を還元することによって得られた、低明度光輝性顔料である低次酸化チタンおよび/または低次酸化鉄が挙げられる。還元工程において、還元剤の種類や焼成温度等を変動させることによって、茶褐色から黒色、青色の色域の低明度光輝性顔料を得ることができる。
【0066】
該光輝性顔料としては具体的には、下記に示す金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料等を挙げることができる。
【0067】
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、該基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材である。人工マイカとは、SiO、MgO、Al、KSiF、NaSiF等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。人工マイカの基材としては具体的には、フッ素金雲母(KMgAlSi10)、カリウム四ケイ素雲母(KMg2.5AlSi10)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5AlSi10)、Naテニオライト(NaMgLiSi10)、LiNaテニオライト(LiMgLiSi10)等が知られている。
【0068】
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。該アルミナフレークは酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。
【0069】
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料とは、鱗片状のガラスを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。該金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料は、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じる。
【0070】
金属酸化物被覆シリカフレーク顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを金属酸化物が被覆した顔料である。
【0071】
上記鱗片状光輝性顔料は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0072】
上記光干渉性顔料(A)以外の鱗片状光輝性顔料としては、またアルミニウム等の金属顔料を用いても良い。
【0073】
上記光輝性顔料は、得られる塗膜の鮮映性及び真珠光沢感に優れる点から、平均粒子径が5~30μm、特に7~25μmの範囲内のものを使用することが好ましい。
【0074】
上記光干渉性顔料(A)以外の光輝性顔料を使用する場合、その含有量は、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中に0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%とすることが適当である。
【0075】
着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、例えばチタンイエローなどの複合金属酸化物顔料や透明性酸化鉄顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料及びカーボンブラック顔料などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特にグレー~黒色の複層と塗膜とする場合にはカーボンブラック等の黒色顔料を好適に使用できる。
【0076】
上記着色顔料を使用する場合、その含有量は、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中に0.5~8.0質量%、好ましくは2.0~4.0質量%とすることが適当である。
【0077】
前記樹脂成分は、当該分野で慣用されている公知の樹脂や化合物を使用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などを挙げることができる。
【0078】
上記樹脂成分は、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基など、最も好ましくはカルボキシル基を含有する樹脂を使用し、該親水性基を中和することにより基体樹脂を水溶性化もしくは水分散化することができる。
【0079】
上記樹脂成分を使用する場合、その含有量は、光輝性顔料分散体(Y)の全固形分中に5.0~15.0質量%、好ましくは7.0~13.0質量%とすることが適当である。
【0080】
光輝性顔料分散体(Y)には、さらに任意選択で、体質顔料、有機溶剤、顔料分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の塗料用添加剤を適宜配合しても良い。
【0081】
光輝性顔料分散体(Y)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。粒子感が低い真珠光沢感に優れる塗膜を得る観点から、塗装時の固形分含有率を、0.1~5質量%、好ましくは0.2~5質量%とするものである。
【0082】
光輝性顔料分散体(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。
【0083】
光輝性塗膜の乾燥膜厚は、真珠光沢感に優れる塗膜を得る観点から、好ましくは0.2~5μm、より好ましくは0.2~3μm、特に好ましくは0.2~2μmである。なお、本明細書において、「乾燥膜厚」は、熱硬化性の塗料または分散体を塗装して未硬化の塗膜を形成させた後、該未硬化の塗膜を焼付処理して形成される硬化した乾燥状態の塗膜の厚さを意味する。乾燥膜厚は、例えば、JIS K 5600-1-7(1999)にしたがって測定することができる。
【0084】
光輝性顔料分散体(Y)の塗装は、着色塗料を塗装後、乾燥または加熱硬化せしめた塗膜上に行うことができるが、複層塗膜の付着性や耐水性の観点から、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、形成される未硬化の塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成することが好ましい。
【0085】
また、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して形成される光輝性塗膜は、乾燥または加熱硬化させることができるが、複層塗膜の付着性や耐水性の観点から、未硬化の状態で後述するクリヤー塗料(Z)を塗装することが好ましい。
【0086】
光輝性顔料分散体(Y)によって形成された光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装する。
【0087】
クリヤー塗料(Z)は、基体樹脂と硬化剤とを含有する1液型クリヤー塗料であることもできるし、又は水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料であることもできる。
【0088】
クリヤー塗料(Z)は、得られる複層塗膜の付着性の観点から、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料であることが好ましい。
【0089】
水酸基含有樹脂としては、水酸基を含有するものであれば従来公知の樹脂が制限なく使用できる。該水酸基含有樹脂としては例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、好ましいものとして、水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂を挙げることができ、特に好ましいものとして水酸基含有アクリル樹脂を挙げることができる。
【0090】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は80~200mgKOH/gの範囲内であるのが好ましく、100~180mgKOH/gの範囲内であるのがさらに好ましい。水酸基価が80mgKOH/g以上であると、架橋密度が高いために耐擦り傷性が十分である。また、200mgKOH/g以下であると塗膜の耐水性が満足される。
【0091】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は2,500~40,000の範囲内であるのが好ましく、5,000~30,000の範囲内であるのがさらに好ましい。重量平均分子量が2,500以上であると耐酸性などの塗膜性能が満足され、また、40,000以下であると塗膜の平滑性が十分であるため、仕上り性が満足される。
【0092】
なお、本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0093】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は-20℃~70℃、特に-10℃~50℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が-20℃以上であると塗膜硬度が十分であり、また、70℃以下であると塗膜の塗面平滑性が満足される。
【0094】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、これらのいずれかのポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0095】
上記2液型クリヤー塗料とする場合、塗膜の硬化性及び耐擦り傷性などの観点から、水酸基含有樹脂の水酸基に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は好ましくは0.5~2、さらに好ましくは0.8~1.5の範囲内である。
【0096】
1液型クリヤー塗料における基体樹脂/硬化剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0097】
クリヤー塗料(Z)は、必要に応じて、水及び有機溶剤などの溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、表面調整剤、顔料などの添加剤を適宜含有することができる。
【0098】
クリヤー塗料(Z)の形態は特に制限されないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用される。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤などが使用できる。使用する有機溶剤は、水酸基含有樹脂などの調製時に用いたものをそのまま用いても良いし、更に適宜加えても良い。
【0099】
クリヤー塗料(Z)の固形分濃度は、30~70質量%程度であるのが好ましく、40~60質量%程度の範囲内であるのがより好ましい。
【0100】
クリヤー塗料(Z)の塗装は、特に限定されず、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法により行なうことができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうち静電印加による回転霧化塗装が好ましい。クリヤー塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10~50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0101】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装にあたっては、クリヤー塗料(Z)の粘度を、塗装方法に適した範囲、例えば、静電印加による回転霧化塗装においては、20℃でフォードカップNo.4粘度計による測定で、15~60秒程度の範囲となるように、有機溶剤などの溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0102】
本発明においては、上記着色塗料(X)を塗装することにより形成される未硬化の着色塗膜、上記光輝性顔料分散体(Y)を塗装することにより形成される未硬化の光輝性塗膜及び上記クリヤー塗料(Z)を塗装することにより形成される未硬化のクリヤー塗膜の3つの塗膜を加熱することによって、別々に硬化することもできるし、同時に硬化させることもできる。複層塗膜の付着性や耐水性の観点からは、未硬化の着色塗膜、未硬化の光輝性塗膜、及び未硬化のクリヤー塗膜のこれら3つの未硬化の塗膜を加熱することによって、同時に硬化させることが好ましい。
【0103】
加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。加熱温度は、特に制限されるものではないが、好ましくは70~150℃、より好ましくは80~140℃の範囲内にある。加熱時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10~40分間、より好ましくは20~30分間の範囲内である。
【0104】
本発明の複層塗膜形成方法によって得られる複層塗膜は、塗膜に対する垂直方向に、該測定対象面を撮像する撮像手段を配置した場合の、該垂直方向に対し15°の角度から測定対象面に光を照射して該撮像手段で前記測定対象面を撮影して得られる画像から測定した光輝等級Sg(15°)が、2.0以下、好ましくは1.8以下である。
【0105】
光輝等級Sg(15°)値は、光輝面積Sa(15°)値と光輝輝度Si(15°)値の相関(Si値/Sa値)値であり、これらを多角度測色器BYK-mac i(商品名、BYK-Gardner社製)で測定し、ハイライトの粒子感(ミクロ光輝感)を示す指標とした。数値が小さいほど無粒子感に優れることを示す。
【0106】
また本発明の複層塗膜形成方法によって得られる複層塗膜は、FF値が45以上である。白色系では、特に着色塗膜が、L*a*b*表色系における明度L*値が80以上の白色塗膜の場合にはFF値が50以上が好適であり、黒色では、特に着色塗膜が、L*a*b*表色系における明度L*値が10以下の黒色塗膜の場合にはFF値が70以上、好ましくは80以上が好適である。ここでFF値は、多角度測色器BYK-mac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて、受光角-15度のL*値(L*-15値)及び受光角110度のL*値(L*110値)を測定し、下記式によって算出される。数値が大きいほど観察角度による輝度変化が大きく光輝感に優れることを示す。
FF値=受光角-15度のL値-受光角110度のL値。
【実施例0107】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0108】
光輝性顔料分散体の調整
製造例1
攪拌混合容器に、蒸留水68.9部、「Dynol-604」(商品名、エボニックインダストリーズ社製、アセチレンジオール系表面調整剤、固形分100%)0.2部(固形分0.2部)、チタン酸薄片(A-1)(注1)1.9部(固形分1.9部)、アクリル樹脂水分散体(R-1)(注7)1.9部(固形分0.6部)、「レオクリスタ」(商品名、第一工業製薬社製、セルロースナノファイバー、固形分2%)20.0部(固形分0.4部)、「TINUVIN 479-DW(N)」(商品名、BASF社製、紫外線吸収剤、固形分40%)0.3部(固形分0.12部)、「TINUVIN 123-DW(N)」(商品名、BASF社製、光安定剤、固形分50%)0.2部(固形分0.1部)、イソプロピルアルコール6.7部を添加して攪拌混合し、光輝性顔料分散体(Y-1)を調整した。
【0109】
製造例2~12
表1に示す配合割合とする以外は製造例1と同様にして、光輝性顔料分散体(Y-2)~(Y-12)を得た。
【0110】
表1中の注記は以下の通りである。
(注1)チタン酸薄片(A-1):平均長径が10~35μmで平均厚みが100nmの板状酸化チタンである光干渉性顔料、石原産業株式会社製、製品名:LPT-106。
(注2)チタン酸薄片(A-2):平均長径が5~20μmで平均厚みが100nm、層状チタン酸である光干渉性顔料分散液、固形分3.2%
(注3)鱗片状光輝性顔料 B:「メタシャインST1032」(商品名、ガラスフレーク顔料、日本板硝子社製)
(注4)鱗片状光輝性顔料 C:「Xirallic(登録商標)NXTM260-70SW AMUR BLACK」(商品名、メルク社製、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、黒色)
(注5)カーボンペースト:カーボンブラック(商品名、「RAVEN 5000」、BIRLA CARBON社製)を3級アミノ基含有顔料分散樹脂溶液で固形分30:70となるように配合し、中和剤、脱イオン水を加えて分散処理を行い、固形分15%のペーストとした。
(注6)微粒子酸化チタンペースト:微粒子酸化チタン顔料(商品名、「MT-500HD」、テイカ社製)を顔料分散樹脂溶液で固形分50:50となるように配合し、中和剤、脱イオン水を加えて分散処理を行い、固形分40%のペーストとした。
【0111】
(注7)アクリル樹脂水分散体(R-1):下記のとおり製造した。
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、及び「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0112】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂水分散体(R-1)を得た。得られたアクリル樹脂水分散体は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0113】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn-ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn-ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0114】
【表1】
【0115】
試験塗板の作成
実施例1
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT-10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめた。
【0116】
得られた上記鋼板の電着塗面に、「TP-65 No.8110」(商品名:関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系溶剤系中塗り塗料、得られる塗膜のL*値:20)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめ被塗物1を得た。
【0117】
被塗物1上に、着色塗料(X-1)として「WBC-713T #202」(商品名、関西ペイント社製、アクリル-メラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料、得られる塗膜のL*値:1.5に調整)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、3分間放置後、さらにその上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(Y-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、1.0μmとなるように塗装した。
【0118】
その後、室温にて3分間放置後に、熱風循環式乾燥炉にて80℃で3分間加熱し、ついで、クリヤー塗料(Z-1)「KINO6500」(商品名:関西ペイント株式会社、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥させて試験板とした。
【0119】
ここで、光輝性顔料分散体について、乾燥塗膜の膜厚は、下記式から算出した。以下の実施例についても同様である。
x=(sc*10000)/(S*sg)
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
S:塗着固形分の評価面積[cm
sg:塗膜比重[g/cm]。
【0120】
実施例2~3及び比較例1~2
実施例1において着色塗料種ならびに光輝性顔料分散体種及び膜厚を表2に記載の構成とする以外は全て実施例1と同様にして、実施例2~3及び比較例1~2の試験塗板を得た。
【0121】
実施例4~9及び比較例3~5
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT-10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめた。
得られた上記鋼板の電着塗面に、「TP-65」(商品名:関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系溶剤系中塗り塗料、酸化チタンの配合により得られる塗膜のL*値:90)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめ被塗物2を得た。
【0122】
上記被塗物2上に、着色塗料種ならびに光輝性顔料分散体種及び膜厚を表2に記載の構成とする以外は全て実施例1と同様にして、実施例4~9及び比較例3~5の試験塗板を得た。
【0123】
なお表2中の着色塗料/エナメル塗料(X-2)~(X-5)は下記の通りである。
(X-2):「WBC-713T」(商品名、関西ペイント社製、アクリル-メラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料)から着色顔料成分を除いたエナメル塗料
(X-3):「WBC-713T」(商品名、関西ペイント社製、アクリル-メラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料)から着色顔料成分を除き、全樹脂固形分に対しチタン酸薄片(A-1)(注1)を15質量%となるように配合した塗料
(X-4):「WBC-713T」(商品名、関西ペイント社製、水性ベースコート塗料、酸化チタンの配合により得られる塗膜のL*値:90)
(X-5):「WBC-713T」(商品名、関西ペイント社製、アクリル-メラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料)から着色顔料成分を除き、全樹脂固形分に対し鱗片状光輝性顔料B(注3)を15質量%となるように配合した塗料
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験塗板を下記の項目について評価した。表2にその結果を併せて示す。
【0124】
光輝等級Sg(15°)値:各試験塗板の測定対象面の平面方向に対する垂直方向に、該測定対象面を撮像するCCDチップを配置し、該垂直方向に対し15°の角度から測定対象面に照射した光で、該CCDチップにて、それぞれ前記測定対象面の画像を撮り、得られた画像を明るさレベルのヒストグラムを用いた画像解析アルゴリズムで解析することにより、光輝面積Sa(15°)及び光輝輝度Si(15°)値を算出し、その相関値である光輝等級Sg(15°)値を算出した。測定には、多角度測色器(BYK社製、商品名、BYK-mac i)を使用した。数値が小さい程、粒子感が無いことを示す。
【0125】
FF値:多角度測色器BYK-mac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて、受光角-15度のL*値(L*-15値)及び受光角110度のL*値(L*110値)を測定し、下記式によって算出される。数値が大きいほど観察角度による輝度変化が大きく光輝感に優れることを示す。また、表2中では「受光角-15度のL値」をLm15、「受光角110度のL値」をL110と示す。
FF値=受光角-15度のL値-受光角110度のL値。
【0126】
【表2】