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特開2024-75096使用済み高炉樋耐火物の処理方法および設備並びに高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075096
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】使用済み高炉樋耐火物の処理方法および設備並びに高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20240527BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20240527BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240527BHJP
   B07B 4/08 20060101ALI20240527BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20240527BHJP
   B03B 4/06 20060101ALI20240527BHJP
   B03B 9/06 20060101ALI20240527BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20240527BHJP
   B07B 1/00 20060101ALI20240527BHJP
   B09B 101/60 20220101ALN20240527BHJP
【FI】
B09B3/30
B09B3/35 ZAB
B03C1/00 B
B07B4/08 Z
B07B9/00 A
B03B4/06 065
B03B9/06
B03C1/02 A
B07B1/00 B
B09B101:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186293
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 達宏
(72)【発明者】
【氏名】西名 慶晃
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
【テーマコード(参考)】
4D004
4D021
4D071
【Fターム(参考)】
4D004AA16
4D004BA02
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA08
4D004CA09
4D004CB13
4D004DA03
4D004DA20
4D021AA01
4D021AB02
4D021FA09
4D021GA02
4D021GA08
4D021GB01
4D021GB03
4D021HA01
4D021HA10
4D071AA81
4D071AB02
4D071AB14
4D071AB62
4D071CA05
4D071DA15
(57)【要約】
【課題】高炉樋の使用済み耐火物をSL材、ML材、スラグなどに精度良く且つ効率的に分離することができ、使用済み高炉樋耐火物から高純度のSL材、ML材を効率的に回収する。
【解決手段】高炉樋の使用済み耐火物を破砕する破砕工程Aと、破砕された使用済み耐火物を磁力選別して金属鉄分を回収する磁選工程Bと、磁選後の使用済み耐火物を粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級工程Cと、分級されて粗粒材xと中粒材xを、それぞれ別々にエアテーブル式密度分離装置で高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離する密度分離工程D1,D2とを備え、この密度分離工程D1,D2でそれぞれ分離された高密度材yHDをML材として回収し、同じく中密度材yMDをSL材として回収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み高炉樋耐火物を破砕する破砕工程(A)と、
該破砕工程(A)で破砕された使用済み高炉樋耐火物を磁力選別し、磁着物である金属鉄分を回収する磁力選別工程(B)と、
該磁力選別工程(B)を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級工程(C)と、
該分級工程(C)で得られた粗粒材xと中粒材xを、それぞれエアテーブル式密度分離装置を用いて高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離する密度分離工程(D1),(D2)を備え、
該密度分離工程(D1),(D2)でそれぞれ分離された高密度材yHDをAlを主成分とするメタルライン材として回収し、同じく中密度材yMDをSiCを主成分とするスラグライン材として回収することを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
【請求項2】
密度分離工程(D1),(D2)で用いられるエアテーブル式密度分離装置は、密度分離される材料が投入されるデッキ(5)を有し、
該デッキ(5)は、デッキ長手方向の一端側が材料投入部(11)、他端側が材料払出し部(12)を構成し、デッキ面(50)の両側にデッキ長手方向に沿った側壁部(51),(52)を有し、
デッキ面(50)は、材料投入部(11)から材料払出し部(12)に向かって下向きに傾斜するとともに、デッキ幅方向で傾斜し、
デッキ幅方向で傾斜した材料払出し部(12)のうち、傾斜方向で高い側が高密度材払出し部(120)を、傾斜方向で低い側が低密度材払出し部(122)を、傾斜方向でそれらの中間が中密度材払出し部(121)をそれぞれ構成し、
デッキ面(50)上に、デッキ長手方向での材料流れを一時的に滞留させるための邪魔板(6)がデッキ幅方向に沿って設けられ、
該邪魔板(6)の両端部(61),(62)のうち、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の高い側の端部(61)と、一方の側壁部(51)との間には、材料が通過できる隙間(13)が形成され、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の低い側の端部(62)は、他方の側壁部(52)に接し若しくは近接するとともに、デッキ面(50)からの高さが他の邪魔板部分よりも低くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
【請求項3】
邪魔板(6)は、端部(62)以外の邪魔板部分のデッキ面(50)からの高さが10~20mmであり、
邪魔板(6)の端部(62)は、側壁部(52)に近いほど高さが低くなるような傾斜状に構成され、その傾斜角度が15~45°であることを特徴とする請求項2に記載の使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
【請求項4】
破砕工程(A)では、使用済み高炉樋耐火物を目開きが10~12mmの篩を通過する粒径に破砕し、
分級工程(C)では、目開きが4~7mmの篩のフルイ上を粗粒材xとし、その篩のフルイ下であって、且つ目開きが1~3mmの篩のフルイ上を中粒材xとし、その篩のフルイ下を細粒材xとすることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
【請求項5】
使用済み高炉樋耐火物を破砕する破砕装置(1)と、
該破砕装置(1)で破砕された使用済み高炉樋耐火物を磁力選別し、磁着物である金属鉄分を回収する磁力選別装置(2)と、
該磁力選別装置(2)による磁力選別を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級装置(3)と、
該分級装置(3)で得られた粗粒材xと中粒材xを、それぞれ高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離するエアテーブル式密度分離装置(4D1),(4D2)を備え、
該エアテーブル式密度分離装置(4D1),(4D2)でそれぞれ分離された高密度材yHDをAlを主成分とするメタルライン材として回収し、同じく中密度材yMDをSiCを主成分とするスラグライン材として回収するようにしたことを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
【請求項6】
エアテーブル式密度分離装置(4D1),(4D2)は、密度分離される材料が投入されるデッキ(5)を有し、
該デッキ(5)は、デッキ長手方向の一端側が材料投入部(11)、他端側が材料払出し部(12)を構成し、デッキ面(50)の両側にデッキ長手方向に沿った側壁部(51),(52)を有し、
デッキ面(50)は、材料投入部(11)から材料払出し部(12)に向かって下向きに傾斜するとともに、デッキ幅方向で傾斜し、
デッキ幅方向で傾斜した材料払出し部(12)のうち、傾斜方向で高い側が高密度材払出し部(120)を、傾斜方向で低い側が低密度材払出し部(122)を、傾斜方向でそれらの中間が中密度材払出し部(121)をそれぞれ構成し、
デッキ面(50)上に、デッキ長手方向での材料流れを一時的に滞留させるための邪魔板(6)がデッキ幅方向に沿って設けられ、
該邪魔板(6)の両端部(61),(62)のうち、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の高い側の端部(61)と、一方の側壁部(51)との間には、材料が通過できる隙間(13)が形成され、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の低い側の端部(62)は、他方の側壁部(52)に接し若しくは近接するとともに、デッキ面(50)からの高さが他の邪魔板部分よりも低くなるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
【請求項7】
邪魔板(6)は、端部(62)以外の邪魔板部分のデッキ面(50)からの高さが10~20mmであり、
邪魔板(6)の端部(62)は、側壁部(52)に近いほど高さが低くなるような傾斜状に構成され、その傾斜角度が15~45°であることを特徴とする請求項6に記載の使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
【請求項8】
破砕装置(1)は、使用済み高炉樋耐火物を目開きが10~12mmの篩を通過する粒径に破砕する破砕手段を有し、
分級装置(3)は、目開きが4~7mmの篩と目開きが1~3mmの篩を備え、目開きが4~7mmの篩のフルイ上が粗粒材xとなり、その篩のフルイ下であって、且つ目開きが1~3mmの篩のフルイ上が中粒材xとなり、その篩のフルイ下が細粒材xとなることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
【請求項9】
使用済み高炉樋耐火物を破砕する破砕工程(A)と、
該破砕工程(A)で破砕された使用済み高炉樋耐火物を磁力選別し、磁着物である金属鉄分を回収する磁力選別工程(B)と、
該磁力選別工程(B)を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級工程(C)と、
該分級工程(C)で得られた粗粒材xと中粒材xを、それぞれエアテーブル式密度分離装置を用いて高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離する密度分離工程(D1),(D2)を備え、
該密度分離工程(D1),(D2)でそれぞれ分離された高密度材yHDをAlを主成分とするメタルライン材のリサイクル材として回収し、同じく中密度材yMDをSiCを主成分とするスラグライン材のリサイクル材として回収することを特徴とする高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
【請求項10】
密度分離工程(D1),(D2)で用いられるエアテーブル式密度分離装置は、密度分離される材料が投入されるデッキ(5)を有し、
該デッキ(5)は、デッキ長手方向の一端側が材料投入部(11)、他端側が材料払出し部(12)を構成し、デッキ面(50)の両側にデッキ長手方向に沿った側壁部(51),(52)を有し、
デッキ面(50)は、材料投入部(11)から材料払出し部(12)に向かって下向きに傾斜するとともに、デッキ幅方向で傾斜し、
デッキ幅方向で傾斜した材料払出し部(12)のうち、傾斜方向で高い側が高密度材払出し部(120)を、傾斜方向で低い側が低密度材払出し部(122)を、傾斜方向でそれらの中間が中密度材払出し部(121)をそれぞれ構成し、
デッキ面(50)上に、デッキ長手方向での材料流れを一時的に滞留させるための邪魔板(6)がデッキ幅方向に沿って設けられ、
該邪魔板(6)の両端部(61),(62)のうち、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の高い側の端部(61)と、一方の側壁部(51)との間には、材料が通過できる隙間(13)が形成され、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の低い側の端部(62)は、他方の側壁部(52)に接し若しくは近接するとともに、デッキ面(50)からの高さが他の邪魔板部分よりも低くなるように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
【請求項11】
邪魔板(6)は、端部(62)以外の邪魔板部分のデッキ面(50)からの高さが10~20mmであり、
邪魔板(6)の端部(62)は、側壁部(52)に近いほど高さが低くなるような傾斜状に構成され、その傾斜角度が15~45°であることを特徴とする請求項10に記載の高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
【請求項12】
破砕工程(A)では、使用済み高炉樋耐火物を目開きが10~12mmの篩を通過する粒径に破砕し、
分級工程(C)では、目開きが4~7mmの篩のフルイ上を粗粒材xとし、その篩のフルイ下であって、且つ目開きが1~3mmの篩のフルイ上を中粒材xとし、その篩のフルイ下を細粒材xとすることを特徴とする請求項9~11のいずれかに記載の高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉樋の使用済み耐火物からリサイクル可能な耐火物成分を分離回収するための処理方法および設備、並びにその処理技術を利用した高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製銑工程では溶銑を流すための耐火物製の樋(高炉樋)が用いられており、この高炉樋は溶損による損耗が進むと解体され、使用済み耐火物となる。この使用済み高炉樋耐火物は、いわゆるスラグライン材(SiCを主成分とする耐火物。以下、説明の便宜上「SL材」という。)、メタルライン材(Alを主成分とする耐火物。以下、説明の便宜上「ML材」という。)、スラグ(樋に付着していたスラグ)および金属鉄(樋に付着していた溶銑)が混在したものである。
【0003】
この使用済み高炉樋耐火物のうち、SL材とML材は耐火物としての能力を有する成分に富んだ材料であるため、安定した状態で分離回収し、耐火物原料としてリサイクルすることが望ましい。しかし、分離回収したSL材やML材にスラグや金属鉄が混入すると耐火物原料としての品位が安定しないため、リサイクル原料として使用することは難しい。したがって、使用済み高炉樋耐火物のリサイクルを行うためには、使用済み高炉樋耐火物をSL材、ML材、スラグなどに精度良く分離する必要がある。
【0004】
従来、使用済み耐火物を選別するための様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1、2には、使用済み耐火物を破砕および粒度調整したうえで、磁力選別を複数回繰り返す方法や耐火物の色彩の違いによって選別する方法が記載されている。また、特許文献3には、粉体を流動媒体とした固気流動層を用いて、使用済み耐火物を比重差を利用して選別する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-83683号公報
【特許文献2】特開2003-88845号公報
【特許文献3】特開2016-77956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、使用済み高炉樋耐火物は、物性が近い材料(成分)が混在することから、特許文献1、2に記載されるような機械的な乾式分離手法では材料毎に分離することは難しい。また、分離しようとする材料は色合いが酷似しているため、色彩の違いによって選別する方法を適用することは困難である。また、特許文献3の密度分離手法は、粒径10mm以下程度となった耐火物の選別には不向きであり、発生品の8割程を分離できないという問題点がある。
【0007】
一方、密度が異なる材料粒子の混合物(粒状混合物)を対象とする材料分離手段として、材料粒子の密度差を利用したエアテーブル式密度分離装置が使用されており、主にリサイクル廃棄物(廃プラなど)の選別技術として広く用いられている。しかし、従来のエアテーブル型密度分離装置を使用して単に使用済み高炉樋耐火物を密度分離するだけでは、使用済み高炉樋耐火物をSL材、ML材、スラグなどに精度良く分離することができず、高純度のSL材、ML材を回収することはできない。
【0008】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、使用済み高炉樋耐火物をSL材、ML材、スラグなどに精度良く且つ効率的に分離することができ、使用済み高炉樋耐火物から高純度のSL材、ML材を効率的に回収することができる処理方法および設備を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような処理技術を利用した高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]使用済み高炉樋耐火物を破砕する破砕工程(A)と、
該破砕工程(A)で破砕された使用済み高炉樋耐火物を磁力選別し、磁着物である金属鉄分を回収する磁力選別工程(B)と、
該磁力選別工程(B)を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級工程(C)と、
該分級工程(C)で得られた粗粒材xと中粒材xを、それぞれエアテーブル式密度分離装置を用いて高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離する密度分離工程(D1),(D2)を備え、
該密度分離工程(D1),(D2)でそれぞれ分離された高密度材yHDをAlを主成分とするメタルライン材として回収し、同じく中密度材yMDをSiCを主成分とするスラグライン材として回収することを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
【0010】
[2]上記[1]の処理方法において、密度分離工程(D1),(D2)で用いられるエアテーブル式密度分離装置は、密度分離される材料が投入されるデッキ(5)を有し、
該デッキ(5)は、デッキ長手方向の一端側が材料投入部(11)、他端側が材料払出し部(12)を構成し、デッキ面(50)の両側にデッキ長手方向に沿った側壁部(51),(52)を有し、
デッキ面(50)は、材料投入部(11)から材料払出し部(12)に向かって下向きに傾斜するとともに、デッキ幅方向で傾斜し、
デッキ幅方向で傾斜した材料払出し部(12)のうち、傾斜方向で高い側が高密度材払出し部(120)を、傾斜方向で低い側が低密度材払出し部(122)を、傾斜方向でそれらの中間が中密度材払出し部(121)をそれぞれ構成し、
デッキ面(50)上に、デッキ長手方向での材料流れを一時的に滞留させるための邪魔板(6)がデッキ幅方向に沿って設けられ、
該邪魔板(6)の両端部(61),(62)のうち、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の高い側の端部(61)と、一方の側壁部(51)との間には、材料が通過できる隙間(13)が形成され、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の低い側の端部(62)は、他方の側壁部(52)に接し若しくは近接するとともに、デッキ面(50)からの高さが他の邪魔板部分よりも低くなるように構成されていることを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
【0011】
[3]上記[2]の処理方法において、邪魔板(6)は、端部(62)以外の邪魔板部分のデッキ面(50)からの高さが10~20mmであり、
邪魔板(6)の端部(62)は、側壁部(52)に近いほど高さが低くなるような傾斜状に構成され、その傾斜角度が15~45°であることを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの処理方法において、破砕工程(A)では、使用済み高炉樋耐火物を目開きが10~12mmの篩を通過する粒径に破砕し、
分級工程(C)では、目開きが4~7mmの篩のフルイ上を粗粒材xとし、その篩のフルイ下であって、且つ目開きが1~3mmの篩のフルイ上を中粒材xとし、その篩のフルイ下を細粒材xとすることを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理方法。
【0012】
[5]使用済み高炉樋耐火物を破砕する破砕装置(1)と、
該破砕装置(1)で破砕された使用済み高炉樋耐火物を磁力選別し、磁着物である金属鉄分を回収する磁力選別装置(2)と、
該磁力選別装置(2)による磁力選別を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級装置(3)と、
該分級装置(3)で得られた粗粒材xと中粒材xを、それぞれ高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離するエアテーブル式密度分離装置(4D1),(4D2)を備え、
該エアテーブル式密度分離装置(4D1),(4D2)でそれぞれ分離された高密度材yHDをAlを主成分とするメタルライン材として回収し、同じく中密度材yMDをSiCを主成分とするスラグライン材として回収するようにしたことを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
【0013】
[6]上記[5]の処理設備において、エアテーブル式密度分離装置(4D1),(4D2)は、密度分離される材料が投入されるデッキ(5)を有し、
該デッキ(5)は、デッキ長手方向の一端側が材料投入部(11)、他端側が材料払出し部(12)を構成し、デッキ面(50)の両側にデッキ長手方向に沿った側壁部(51),(52)を有し、
デッキ面(50)は、材料投入部(11)から材料払出し部(12)に向かって下向きに傾斜するとともに、デッキ幅方向で傾斜し、
デッキ幅方向で傾斜した材料払出し部(12)のうち、傾斜方向で高い側が高密度材払出し部(120)を、傾斜方向で低い側が低密度材払出し部(122)を、傾斜方向でそれらの中間が中密度材払出し部(121)をそれぞれ構成し、
デッキ面(50)上に、デッキ長手方向での材料流れを一時的に滞留させるための邪魔板(6)がデッキ幅方向に沿って設けられ、
該邪魔板(6)の両端部(61),(62)のうち、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の高い側の端部(61)と、一方の側壁部(51)との間には、材料が通過できる隙間(13)が形成され、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の低い側の端部(62)は、他方の側壁部(52)に接し若しくは近接するとともに、デッキ面(50)からの高さが他の邪魔板部分よりも低くなるように構成されていることを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
【0014】
[7]上記[6]の処理設備において、邪魔板(6)は、端部(62)以外の邪魔板部分のデッキ面(50)からの高さが10~20mmであり、
邪魔板(6)の端部(62)は、側壁部(52)に近いほど高さが低くなるような傾斜状に構成され、その傾斜角度が15~45°であることを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
[8]上記[5]~[7]のいずれかの処理設備において、破砕装置(1)は、使用済み高炉樋耐火物を目開きが10~12mmの篩を通過する粒径に破砕する破砕手段を有し、
分級装置(3)は、目開きが4~7mmの篩と目開きが1~3mmの篩を備え、目開きが4~7mmの篩のフルイ上が粗粒材xとなり、その篩のフルイ下であって、且つ目開きが1~3mmの篩のフルイ上が中粒材xとなり、その篩のフルイ下が細粒材xとなることを特徴とする使用済み高炉樋耐火物の処理設備。
【0015】
[9]使用済み高炉樋耐火物を破砕する破砕工程(A)と、
該破砕工程(A)で破砕された使用済み高炉樋耐火物を磁力選別し、磁着物である金属鉄分を回収する磁力選別工程(B)と、
該磁力選別工程(B)を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級工程(C)と、
該分級工程(C)で得られた粗粒材xと中粒材xを、それぞれエアテーブル式密度分離装置を用いて高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離する密度分離工程(D1),(D2)を備え、
該密度分離工程(D1),(D2)でそれぞれ分離された高密度材yHDをAlを主成分とするメタルライン材のリサイクル材として回収し、同じく中密度材yMDをSiCを主成分とするスラグライン材のリサイクル材として回収することを特徴とする高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
【0016】
[10]上記[9]の製造方法において、密度分離工程(D1),(D2)で用いられるエアテーブル式密度分離装置は、密度分離される材料が投入されるデッキ(5)を有し、
該デッキ(5)は、デッキ長手方向の一端側が材料投入部(11)、他端側が材料払出し部(12)を構成し、デッキ面(50)の両側にデッキ長手方向に沿った側壁部(51),(52)を有し、
デッキ面(50)は、材料投入部(11)から材料払出し部(12)に向かって下向きに傾斜するとともに、デッキ幅方向で傾斜し、
デッキ幅方向で傾斜した材料払出し部(12)のうち、傾斜方向で高い側が高密度材払出し部(120)を、傾斜方向で低い側が低密度材払出し部(122)を、傾斜方向でそれらの中間が中密度材払出し部(121)をそれぞれ構成し、
デッキ面(50)上に、デッキ長手方向での材料流れを一時的に滞留させるための邪魔板(6)がデッキ幅方向に沿って設けられ、
該邪魔板(6)の両端部(61),(62)のうち、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の高い側の端部(61)と、一方の側壁部(51)との間には、材料が通過できる隙間(13)が形成され、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面(50)の低い側の端部(62)は、他方の側壁部(52)に接し若しくは近接するとともに、デッキ面(50)からの高さが他の邪魔板部分よりも低くなるように構成されていることを特徴とする高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
【0017】
[11]上記[10]の製造方法において、邪魔板(6)は、端部(62)以外の邪魔板部分のデッキ面(50)からの高さが10~20mmであり、
邪魔板(6)の端部(62)は、側壁部(52)に近いほど高さが低くなるような傾斜状に構成され、その傾斜角度が15~45°であることを特徴とする高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
[12]上記[9]~[11]のいずれかの製造方法において、破砕工程(A)では、使用済み高炉樋耐火物を目開きが10~12mmの篩を通過する粒径に破砕し、
分級工程(C)では、目開きが4~7mmの篩のフルイ上を粗粒材xとし、その篩のフルイ下であって、且つ目開きが1~3mmの篩のフルイ上を中粒材xとし、その篩のフルイ下を細粒材xとすることを特徴とする高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用済み高炉樋耐火物をSL材、ML材、スラグなどに精度良く且つ効率的に分離することができ、使用済み高炉樋耐火物から高純度のSL材、ML材を効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の処理方法の工程を示すフロー図
図2】本発明の処理方法の実施に供される処理設備の一実施形態を示す説明図
図3】本発明法の密度分離工程(D1),(D2)で使用するエアテーブル式密度分離装置の一実施形態を模式的に示す斜視図
図4図3のエアテーブル式密度分離装置の邪魔板を、デッキを幅方向で断面した状態で示す正面図
図5】本発明法の密度分離工程(D1),(D2)で使用するエアテーブル式密度分離装置の他の実施形態について、その邪魔板の構成と機能を示す説明図
図6】本発明法の密度分離工程(D1),(D2)に対応する密度分離試験において使用したエアテーブル式密度分離装置について、その邪魔板の形状・サイズを示す説明図
図7図6(A),(B)に示す邪魔板をそれぞれ備えたエアテーブル式密度分離装置を用いて実施した密度分離試験において、中粒材を密度分離した場合のSL材、ML材の合計回収率と高密度材のスラグ含有率を示すグラフ
図8図6(A),(B)に示す邪魔板をそれぞれ備えたエアテーブル式密度分離装置を用いて実施した密度分離試験において、粗粒材を密度分離した場合のSL材、ML材の合計回収率と高密度材のスラグ含有率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、使用済み高炉樋耐火物から高純度のSL材、ML材を分離回収するために、使用済み高炉樋耐火物の破砕物を、磁力選別により金属鉄分を分離回収した後、粗粒材・中粒材・細粒材という3つの粒度に分級する。そして、そのうちの粗粒材と中粒材を別々にエアテーブル式密度分離装置を用いて密度分離することで、高密度材・中密度材・低密度材という3段階の密度の材料に分離し、そのうちの高密度材をML材として、中密度材をSL材としてそれぞれ回収する。これにより使用済み高炉樋耐火物から高純度のSL材、ML材を効率的に分離回収することができる。また、特に好ましい実施形態では、粗粒材と中粒材を別々にエアテーブル式密度分離装置で密度分離する際に、粗粒材と中粒材をそれぞれ高密度材・中密度材・低密度材に高精度に密度分離するため、特定の邪魔板を備えたエアテーブル式密度分離装置を用いる。
【0021】
図1は本発明の処理方法の工程を示すフロー図、図2は本発明の処理方法の実施に供される処理設備の一実施形態を示す説明図である。
図1に示すように、本発明の処理方法は、使用済み高炉樋耐火物を破砕する破砕工程(A)と、この該破砕工程(A)で破砕された使用済み高炉樋耐火物を磁力選別し、磁着物である金属鉄分を回収する磁力選別工程(B)と、この磁力選別工程(B)を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級する分級工程(C)と、この分級工程(C)で得られた粗粒材xと中粒材xを、それぞれエアテーブル式密度分離装置を用いて高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDに分離する密度分離工程(D1),(D2)を備える。
【0022】
破砕工程(A)では、破砕装置1により使用済み高炉樋耐火物を破砕し、次の磁力選別工程(B)で磁力選別装置2に投入可能な粒径とする。使用済み高炉桶耐火物の破砕物の粒径が大き過ぎると、磁力選別工程(B)での金属鉄の分離性が低下するため金属鉄の回収率が低下する。一方、破砕物の粒径が小さ過ぎると後続の分級工程(C)で細粒材xに混入するSL材やML材の割合が多くなり、SL材やML材の回収率が低下してしまう。このため、破砕工程(A)では、使用済み高炉樋耐火物を目開きが10~12mmの篩を通過する粒径に破砕することが好ましい。
磁力選別工程(B)で使用する磁力選別装置2の種類に制限はなく、例えば、ドラム型磁選機、コンベア磁選機、吊下磁選機等が挙げられる。この磁力選別工程(B)において、高炉樋に付着した溶銑に由来する金属鉄分が磁着物として分離回収される。
【0023】
この磁力選別工程(B)を経た非磁着物である使用済み高炉樋耐火物を、続く分級工程(C)と密度分離工程(D1),(D2)を経ることでSL材、ML材、スラグに分離する。SL材、ML材、スラグは色、磁性共にほとんど違いがなく、従来の一般的な方法では分離が困難である。このような課題に対して、本発明者らは、使用済み高炉樋耐火物を分級して粒度を揃えたうえで、各粒度の材料をそれぞれ別々に乾式密度分離することにより、SL材、ML材、スラグの密度差による分離精度を高めるという方法を創案した。また、乾式密度分離手段として、特定の構造の邪魔板を備えたエアテーブル式密度分離装置を用いることにより、SL材、ML材、スラグの密度差による分離精度がより高まることを見出した。
【0024】
分級工程(C)では、使用済み高炉樋耐火物を粗粒材xと中粒材xと細粒材xに分級するが、この使用済み高炉樋耐火物の分級は、通常、目開きが異なる複数の篩を備えた分級装置3を用いて行われる。この場合、目開きが4~7mmの篩30のフルイ上を粗粒材xとし、その篩30のフルイ下であって、且つ目開きが1~3mmの篩31のフルイ上を中粒材xとし、その篩31のフルイ下を細粒材xとすることが好ましい。このような篩分けにより得られる粗粒材xと中粒材xは、それぞれ粒度が適度に揃い、後続の密度分離工程(D1),(D2)において特に高精度の密度分離を行うことができる。一方、細粒材xは殆どがスラグ分であるので、本プロセスでは廃材(有価物として回収しない材料)となる。
【0025】
具体的な破砕・分級形態としては、例えば、破砕工程(A)で使用済み高炉樋耐火物を目開きが10mmの篩を通過する粒径(粒径10mm以下)に破砕し、この粒径10mm以下の使用済み高炉樋耐火物を、分級工程(C)において、目開きが5mmの篩と目開きが2mmの篩を順次用いて分級する。これにより、粒径5mm超-10mmの粗粒材xと、粒径2mm超-5mmの中粒材xと、粒径0-2mmの細粒材xが得られる。
【0026】
密度分離工程(D1),(D2)では、粗粒材xと中粒材xをエアテーブル式密度分離装置4(4D1,4D2)で別々に密度分離し、それぞれにおいて高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDを得る。このように使用済み高炉樋耐火物を粗粒材xと中粒材xに分けてから、それぞれを別々に密度分離するのは、エアテーブル式密度分離装置による密度分離では、材料の粒度を揃えた方が分離精度が高まるからである。
図3および図4は、本発明で使用するエアテーブル式密度分離装置4(4D1,4D2)の一実施形態を模式的に示すものであり、図3は密度分離装置全体の斜視図、図4は装置が備える邪魔板を、デッキを幅方向で断面した状態で示す正面図(なお、紙面の手前側が材料払出し部12側である)である。
このエアテーブル式密度分離装置4は、密度分離される材料が投入されるデッキ5を備えている。このデッキ5は、デッキ長手方向の一端側が材料投入部11、他端側が材料払出し部12を構成し、デッキ面50の両側にデッキ長手方向に沿った側壁部51,52(側板)を有している。
【0027】
デッキ5は、幅方向に振動可能であり、装置の使用中、図中矢印で示す幅方向に振動する。そのデッキ面50は、材料投入部11から材料払出し部12に向かって下向きに傾斜(高低差hの傾斜であり、サイドスロープという。)するとともに、デッキ幅方向で傾斜(高低差hの傾斜であり、エンドスロープという。)している。そして、デッキ幅方向で傾斜した材料払出し部12のうち、傾斜方向で高い側が高密度材払出し部120を、傾斜方向で低い側が低密度材払出し部122を、傾斜方向でそれらの中間が中密度材払出し部121をそれぞれ構成している。デッキ面50の全面に複数の空気穴(図示せず)が形成されており、この複数の空気穴からデッキ面50上に空気を噴出させることができる。この複数の空気穴からデッキ面50上に空気を噴出させつつ、デッキ5を幅方向で振動させることにより、材料投入部11からデッキ面50上に投入された粒状の被処理材料(粒状混合物)が材料払出し部12に流れる過程で、密度差による材料粒子の分離がなされる。
【0028】
すなわち、このエアテーブル式密度分離装置4では、被処理材料に含まれる材料粒子のうち、低密度材yLDはデッキ面50から噴出する空気流によって浮上するため、振動するデッキ面50との摩擦の影響が少なく、このため幅方向で傾斜したデッキ面50の低い側に移動する。一方、高密度材yHDは、振動するデッキ面50との摩擦の影響を大きく受けるので、幅方向で傾斜したデッキ面50の高い側に移動する。このようにして分離された低密度材yLDと高密度材yHDが、材料払出し部12の幅方向の異なる位置、すなわち低密度材払出し部122と高密度材払出し部120からそれぞれ払い出される。また、中密度材yMDは、幅方向で傾斜したデッキ面50の高い側と低い側の中間位置に移動し、中密度材払出し部121から払い出される。
【0029】
また、本実施形態の装置では、デッキ面50上に、デッキ長手方向での材料流れを一時的に滞留させて密度分離に要する時間を稼ぎ、材料の分離精度を高めるための邪魔板6が、デッキ幅方向(材料流れ方向と直交する方向)に沿って設けられている。図4に示すように、この邪魔板6の両端部63,64とデッキ5の両側壁部51,52との間には、それぞれ材料が通過できる隙間14,15が形成されている。
邪魔板6は、デッキ長手方向の1箇所以上に設けられるが、特に2箇所以上に設けることが好ましい。
【0030】
このような邪魔板6が設けられている場合、低密度材yLDは隙間15を通過してデッキ面50上を材料払出し部12方向に移動し、低密度材払出し部122に至る。高密度材yHDと中密度材yMDは邪魔板6にせき止められて邪魔板6に沿って移動し、その過程で上下に分離して中密度材yMDが上層側、高密度材yHDが下層側にそれぞれ堆積した状態になる。そして、中密度材yMDは邪魔板6を乗り越えてデッキ面50上を材料払出し部12方向に移動し、中密度材払出し部121に至る。高密度材yHDは隙間14まで移動してこれを通過した後、デッキ面50上を材料払出し部12方向に移動し、高密度材払出し部120に至る。
【0031】
密度分離工程(D1),(D2)において、粗粒材xと中粒材xを別々にエアテーブル式密度分離装置4D1、4D2で密度分離することにより得られた高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLDのうち、高密度材yHDはAlを主成分とするML材として回収され、同じく中密度材yMDはSiCを主成分とするSL材として回収される。一方、低密度材yLDは殆どがスラグ分であるので、本プロセスでは廃材(有価物として回収しない材料)となる。
【0032】
また、本発明においてデッキ面50上に設ける邪魔板6としては、特に図5に示すような形態のものが好ましく、これによりML材とSL材の分離精度を高め、より高純度のML材とSL材を得ることができる。
図5は、邪魔板の構成と機能を示すものであり、図5(ア)はデッキを幅方向で断面した状態で示す邪魔板の正面図(なお、紙面の手前側が材料払出し部12側である)、図5(イ)は邪魔板の平面図であって、材料(高密度材yHDと中密度材yMDと低密度材yLD)の動きを示した図面である。
【0033】
邪魔板6の両端部61,62のうち、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面50の高い側の端部61と、一方の側壁部51との間には、材料が通過できる隙間13が形成されている。一方、デッキ幅方向で傾斜したデッキ面50の低い側の端部62は、他方の側壁部52に接し若しくは近接するとともに、上部に切欠き16が形成されることで、デッキ面50からの高さが他の邪魔板部分よりも低くなるように構成されている。図5の実施形態では、邪魔板6の端部62は、上部に楔状の切欠き16が形成されることで、側壁部52に近いほど高さが低くなる(すなわち側壁部52に向かって高さが低くなる)ような傾斜状に構成されている。
【0034】
デッキ面50を移動する材料は、デッキ5の振動とデッキ面50上に噴出する空気流の作用により、密度の高いものほど下層側になる。したがって、図5のような形態の邪魔板6では、邪魔板6の端部62が中・高密度材yHD,yMDの堰となってそれらの通過を防ぎつつ、低密度材yLDのみを通過させることになる。これにより、図4に示すような邪魔板6に較べて、低密度材yLDと中・高密度材yHD,yMDの分離精度を高めることができる。
ここで、邪魔板6は、上述した作用効果を奏するために、端部62以外の邪魔板部分のデッキ面50からの高さhを10~20mm程度とし、端部62の上縁部の傾斜角度θ(デッキ面50に対する傾斜角度)を15~45°程度とすることが好ましい。
なお、図5に示すような邪魔板6は、図3および図4に示す邪魔板6と同様、デッキ長手方向の1箇所以上に設けるが、特に2箇所以上に設けることが好ましい。
【0035】
また、本発明の高炉樋耐火物のリサイクル材の製造方法は、以上述べたような処理方法を利用して使用済み高炉樋耐火物から高純度のSL材、ML材を分離回収し、高炉樋耐火物のリサイクル材を製造するものであり、その詳細は上述した処理方法と同様である。
【実施例0036】
図1に示す本発明の処理フローにしたがって使用済み高炉樋耐火物の処理を行い、使用済み高炉樋耐火物からSL材、ML材を回収することを想定し、分級工程を経た粒径2.0mm超-4.5mmの中粒材xと、粒径4.5mm超-10.0mmの粗粒材xを、それぞれエアテーブル方式密度分離装置でML材(高密度材yHD),SL材(中密度材yMD),スラグ(低密度材yLD)に分離する密度分離試験を行った。この密度分離試験では、図6(A)に示す形状・サイズの邪魔板を設けたエアテーブル方式密度分離装置と、図6(B)に示す形状・サイズの邪魔板を設けたエアテーブル方式密度分離装置をそれぞれ用いて行った。
使用したエアテーブル方式密度分離装置の基本仕様と試験条件を表1、表2に示す。なお、使用済み高炉樋耐火物を構成するSL材、ML材、スラグの比重範囲は1.5~3.0である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
中粒材xと粗粒材xの各密度分離試験において、ML材として回収される高密度材yHDのスラグ含有率と、SL材およびML材の合計回収率を調べた。その結果を図7および図8に示す。なお、図7および図8に示してある目標値は、あくまで好ましい目標値であり、発明として必要な数値レベルではない。
図7および図8によれば、中粒材xの密度分離において、エアテーブル方式密度分離装置として図6(A)に示す邪魔板を設けたものを使用した場合、SL材およびML材の合計回収率は目標値を満足しているが、回収される高密度材yHDのスラグ含有率は目標値を満足しない場合がある。また、粗粒材xの密度分離において、エアテーブル方式密度分離装置として図6(A)に示す邪魔板を設けたものを使用した場合、SL材およびML材の合計回収率、回収される高密度材yHDのスラグ含有率ともに、目標値を満足しない場合がある。これに対して、エアテーブル方式密度分離装置として図6(B)に示す邪魔板を設けたものを使用した場合、SL材およびML材の合計回収率、回収される高密度材yHDのスラグ含有率ともに、目標値を満足している。
【符号の説明】
【0040】
1 破砕装置
2 磁力選別装置
3 分級装置
4,4D1,4D2 密度分離装置
5 デッキ
6 邪魔板
11 材料投入部
12 材料払出し部
13 隙間
14,15 隙間
16 切欠き
30,31 篩
50 デッキ面
51,52 側壁部
61,62 端部
63,64 端部
120 高密度材払出し部
121 中密度材払出し部
122 低密度材払出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8