(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075101
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】植栽地盤及び雨水貯留浸透型植栽地盤施設
(51)【国際特許分類】
A01G 20/00 20180101AFI20240527BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20240527BHJP
A01G 24/10 20180101ALI20240527BHJP
A01G 24/30 20180101ALI20240527BHJP
A01G 24/46 20180101ALI20240527BHJP
【FI】
A01G20/00
C09K17/02 H
A01G24/10
A01G24/30
A01G24/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186298
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】堀田 紀子
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】童 阿瑪
(72)【発明者】
【氏名】織邊 尚子
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎
(72)【発明者】
【氏名】袋 昭太
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
【Fターム(参考)】
2B022AB03
2B022BA07
2B022BA25
2B022BB03
4H026AA01
4H026AB01
4H026AB03
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】炭素を含有する成形体を土壌改質材として土壌内に貯留させることができ、さらに多量の雨水を貯留でき植物に与える影響が少ない雨水貯留浸透型植栽施設を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、地表面を含む上層と、上層の下方に配置される下層と、を有し、上層と下層とは重なる部分を有し、下層は、土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第1成形体と、を含み、第1成形体は、体積比として、炭を50%以上95%以下、前記バインダを5%以上50%以下含有し、第1成形体は、30mm
3以上60mm
3以下であり、下層の飽和透水係数は、上層の飽和透水係数よりも大きく、下層の飽和透水係数は1.0×10
-5m/s以上であり、下層において、土壌構成資材と複数の第1成形体との混合物に対して、複数の第1成形体は体積比10%以上90%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面を含む上層と、前記上層の下方に配置される下層と、を有し
前記上層と前記下層とは重なる部分を有し、
前記下層は、土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第1成形体と、を含み、
前記第1成形体は、体積比として、前記炭を50%以上95%以下、前記バインダを5%以上50%以下含有し、
前記第1成形体は、30mm3以上60mm3以下の大きさを有し、
前記下層の飽和透水係数は、前記上層の飽和透水係数よりも大きく、
前記下層の飽和透水係数は1.0×10-5m/s以上であり、
前記下層において、前記土壌構成資材と複数の前記第1成形体との混合物に対して、複数の前記第1成形体は体積比10%以上90%以下であることを特徴とする植栽地盤。
【請求項2】
地表面を含む上層と、前記上層の下方に配置される下層と、を有し、
前記上層と前記下層とは重なる部分を有し、
前記下層は、土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第1成形体と、を含み、
前記上層は、前記土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第2成形体と、を含み、
前記第1成形体及び前記第2成形体は、それぞれ、体積比として、前記炭を50%以上95%以下、前記バインダを5%以上50%以下含有し、
前記第1成形体及び前記第2成形体は、それぞれ、30mm3以上60mm3以下の大きさを有し、
前記下層の飽和透水係数は、前記上層の飽和透水係数よりも大きく、
前記下層の飽和透水係数は1.0×10-5m/s以上であり、
前記下層において、前記土壌構成資材と複数の前記第1成形体との混合物に対して、複数の前記第1成形体は体積比10%以上90%以下であり、
前記上層において、前記土壌構成資材と複数の前記第2成形体との混合物に対して、複数の前記第2成形体は体積比0%より大きく40%以下であることを特徴とする植栽地盤。
【請求項3】
前記下層において、前記土壌構成資材と複数の前記第1成形体との混合物に対して、複数の前記第1成形体は体積比60%以上90%以下である、請求項1または2に記載の植栽地盤。
【請求項4】
前記上層において、前記土壌構成資材と複数の前記第2成形体との混合物に対して、複数の前記第2成形体は体積比0%より大きく20%以下である、請求項1または2に記載の植栽地盤。
【請求項5】
前記上層において、複数の前記第2成形体と、前記土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第3成形体と、を含み、
前記第3成形体は、体積比として、前記炭を50%以上95%以下、前記バインダを5%以上50%以下含有し、
複数の前記第3成形体の平均体積は、複数の前記第2成形体の平均体積よりも小さい、請求項2に記載の植栽地盤。
【請求項6】
複数の前記第1成形体と前記土壌構成資材との混合物のpHは、9.5以下であることを特徴とする、請求項1または2の植栽地盤。
【請求項7】
前記上層と前記下層との間に、直径が10μm以上の粒子を補足でき、且つ透水性を有する中間層を配置した、請求項1または2の植栽地盤。
【請求項8】
請求項1または2に記載の植栽地盤と、
植栽地盤の周囲に配置された周辺土壌と、
を含む雨水貯留浸透型植栽地盤施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植栽地盤に関し、特に植栽地盤内に炭を含有する成形体を所定量含有させた層を有する雨水貯留浸透型植栽地盤施設に関する。
【背景技術】
【0002】
降雨時において、下水道や河川などに雨水が急激に流入しないようにするため、雨水貯留型地盤施設や雨水浸透施設が知られている。また、雨水を一時的に貯留できる雨水貯留型植栽地盤施設として雨庭(レインガーデン)などが知られている。特許文献1~5には雨水の貯留施設の例が記載されている。
【0003】
しかし、雨水貯留型植栽地盤施設として機能し得る緑地ではあっても土壌表面環境、土質、締固め土などにより水の浸透速度は変動し、降雨量が増加すると一部は浸透せずに流出してしまう。さらに微細粒子が流入する雨水及び表面排水において、かかる施設の長期間良好な地中浸透機能を維持することに課題がある。また、水を一時貯留することが可能な施設では、植栽ができないか又は限られた植物のみしか植栽できないことがあり、ランドスケープデザインには制限がかかる。同時に、生物多様性の面からも周囲と連続性のある緑地創出に制限がかかる場合がある。
【0004】
近年、地球温暖化抑制の観点から、空気中の二酸化炭素を吸収し、土壌中に貯留させる土壌炭素貯留技術が注目されている。旧来より、家畜糞尿、もみ殻などが由来の原料を350度程度の燃焼しない温度にて加熱して作製されるバイオ炭は低比重かつ多孔質性であり、植栽地盤の透水性、保水性、通気性などを改善させるために土壌改質材として使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-20213号公報
【特許文献2】特開2002-70126号公報
【特許文献3】特開平11-152785号公報
【特許文献4】特開平6-319378号公報
【特許文献5】特開平9-111814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、土壌改質材として炭を用いた場合、炭は細粒化しやすく土壌の透水性を低下させることがある。またアルカリ性のpHを有するため、植栽地盤の土壌として使用するには制約があった。すなわち、雨水貯留浸透型植栽地盤施設としての機能と土壌炭素貯留機能とを両立させる施設を構築することは困難であった。
【0007】
本発明は、炭を含有する成形体を土壌改質材として土壌内に貯留させることができ、さらに多量の雨水を貯留でき植物に与える影響が少ない雨水貯留浸透型植栽地盤施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、地表面を含む上層と、上層の下方に配置される下層と、を有し、上層と下層とは重なる部分を有し、下層は、土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第1成形体と、を含み、第1成形体は、体積比として、炭を50%以上95%以下、バインダを5%以上50%以下含有し、第1成形体は、30mm3以上60mm3以下の大きさを有し、下層の飽和透水係数は、上層の飽和透水係数よりも大きく、下層の飽和透水係数は1.0×10-5m/s以上であり、下層において、土壌構成資材と複数の第1成形体との混合物に対して、複数の第1成形体は体積比10%以上90%以下である。
【0009】
本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、地表面を含む上層と、上層の下方に配置される下層と、を有し、上層と下層とは重なる部分を有し、下層は、土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第1成形体と、を含み、上層は、土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第2成形体と、を含み、第1成形体及び第2成形体は、それぞれ、体積比として、炭を50%以上95%以下、バインダを5%以上50%以下含有し、第1成形体及び第2成形体は、それぞれ、30mm3以上60mm3以下の大きさを有し、下層の飽和透水係数は、上層の飽和透水係数よりも大きく、下層の飽和透水係数は1.0×10-5m/s以上であり、下層において、土壌構成資材と複数の第1成形体との混合物に対して、複数の第1成形体は体積比10%以上90%以下であり、上層において、土壌構成資材と複数の第2成形体との混合物に対して、複数の第2成形体は体積比0%より大きく40%以下である。
【0010】
本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、下層において、土壌構成資材と複数の第1成形体との混合物に対して、複数の第1成形体は体積比60%以上90%以下である。
【0011】
本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、上層において、土壌構成資材と複数の第2成形体との混合物に対して、複数の第2成形体は体積比0%より大きく20%以下である。
【0012】
本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、上層において、複数の第2成形体と、土壌構成資材と、炭とバインダとを含有する複数の第3成形体と、を含み、第3成形体は、体積比として、前記炭を50%以上95%以下、前記バインダを5%以上50%以下含有し、複数の第3成形体の平均体積は、複数の第2成形体の平均体積よりも小さい。
【0013】
本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、複数の第1成形体と土壌構成資材との混合物のpHが9.5以下である。
【0014】
本発明の実施形態の一態様における植栽地盤は、上層と下層との間に、直径が10μm以上の粒子を補足でき、且つ透水性を有する中間層を配置する。
【0015】
本発明の実施形態の一態様における雨水貯留浸透型植栽地盤施設は、植栽地盤と、植栽地盤の周囲に配置された周辺土壌とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の一態様に係る植栽地盤施設である。
【
図2】本発明の実施形態の一態様に係る植栽地盤施設である。
【
図3】本発明の実施形態の一態様に係る植栽地盤施設である。
【
図4】実施例に用いた炭粉末の粒径分布のグラフである。
【
図5】実施例における飽和透水係数の測定値を表すグラフである。
【
図6】実施例における飽和透水係数の測定値を表すグラフである。
【
図7】実施例における最大圃場容水量の測定値を表すグラフである。
【
図8】実施例における最大圃場容水量の測定値を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
(植栽地盤の全体構造)
図1は本発明の実施形態における一態様の植栽地盤施設の全体構成を示す図であり、植栽地盤施設の地中部分の断面図である。本発明の実施形態における一態様の植栽地盤施設は、植栽地盤100及び周辺土壌130により構成され、植栽地盤100は、保水層としての機能を有する上層110及び排水層としての機能を有する下層120を含む構成となる。下層120の底部は周辺土壌130の上側に位置し、上層110及び下層120下層共に周囲を周辺土壌130に囲まれていてもよい。植栽地盤100の側部の少なくとも一部は、周辺土壌の側部140と直接的に接してもよく、周辺土壌130の側部140の上部は、植栽地盤100に雨水を貯留できるように、上層110における上面よりも上方に位置することができる。また、周辺土壌の側部140は傾斜があってもよい。つまり、周辺土壌130の最上面よりも低い位置に上層110の上面を設け、雨水の貯留または雨水の流入を促進してもよい。
【0019】
図1では、上層110と下層120の幅が同一であり、各層の側面が一致しているが、これに限定されず、本形態としては上層110と下層120の側面がずれていても良い。また、上層110の底面が全て下層120と重なっていなくても良い。好ましい形態としては、上層110の底面積に対し、5割以上の面積が下層120と重なっていれば良い。
【0020】
植栽地盤100は降雨時に周辺土壌130からの雨水の流入を許容するために、全体としての透水性が周辺土壌130よりも大きくなるように調整することができる。植栽地盤100の透水性を上げるためには、周辺土壌130よりも水はけのよい土壌構成資材を使用し、及び後述の炭を含有する成形体を土壌に含有させることにより調整できる。
【0021】
上層110は保水層として機能し、下層120は排水層として機能するため、下層120の透水性は上層110よりも高くすることができる。また、上層110は下層120よりも、保水性を高くすることができる。各層の透水性及び保水性の調整は、各層に混合される後述の炭を含有する成形体の体積、形状又は含有量を選択することにより行うことができる。
【0022】
上層110及び下層120の透水性の大きさは、飽和透水係数を指標として確認することができる。下層120は排水層として機能させるため、下層120には、上層110の飽和透水係数よりも高い飽和透水係数を持たせる。
【0023】
上層110の保水性の評価指標として、最大圃場容水量を使用することができる。最大圃場容水量が小さすぎると保水能力が足りず、植物を十分に生育させる土壌としては適さない。また最大圃場容水量が大きすぎると保水能力過剰であり、雨水を下層へ十分浸透させることができず、雨水貯留浸透型植栽地盤としての要求を満たすことができない。したがって上層110の最大圃場容水量は、好ましくは21~35(ml/100ml-乾燥土)の範囲であり、より好ましくは23~35(ml/100ml-乾燥土)である。最大圃場容水量は、土壌に水分を十分に添加し、24時間静置することで重力水を除去し、乾燥土の体積当たりの水分保持量により測定する。
【0024】
上層110は植栽地盤として植物が植えられてもよく、植えられる植物は特に制限されるものではない。例えば、地被植物、低木、中木、高木等を植えることができる。
【0025】
上層110に植物が植えられる場合は、植物が生育できる範囲のpHに調整される必要がある。pHの調整は、後述の炭を含有する成形体自体のpHの調整、pHが調整された成形体の土壌における含有量、pH調整剤の添加等により調整できる。
【0026】
上層110に使用される土壌構成資材は、クリンカアッシュ、砂、砕石、木材チップ、もみ殻、堆肥、バーク、ピート、ヤシガラ、ココナッツ殻、肥料、鉱物、自然土壌、人工土壌、石炭灰又はそれらの混合物を使用することができる。また、上層110に使用される土壌構成資材には植物が風等で倒れないように固定する機能、及び、植物の生育に必要な水や肥料を保持でき、温度、乾燥、化学物質等の影響を緩和する、あるいは急激な環境変化を緩和する等の特性を満たすことが必要である。
【0027】
前述のように下層120は排水層として機能するため、飽和透水係数は上層110よりも大きい値とすることができる。飽和透水係数の調整は、上層110と同様に後述の炭を含有する成形体の体積、形状或いは含有量を選択することにより行うことができる。
【0028】
下層120において飽和透水係数が低すぎると、浸透しきれなかった雨水が上層からあふれ出し、土壌表面に表面排水を発生させてしまったり、上層の土壌水分を増加させ植物の生育へ影響を与えてしまったりする。したがって、下層における土壌全体の飽和透水係数として、好ましくは1.0×10-5m/s以上であり、より好ましくは1.4×10-4m/s以上、さらに好ましくは7.0×10-4m/s以上である。
【0029】
下層120は植物を植える層ではないため、上層110よりも広範囲のpHに調整されることができる。もっとも、下層120を通過した雨水のpHが高すぎると、周辺土壌130の土質に浸透した際に周辺環境に悪影響を及ぼすことがある。したがって、下層120についても、後述の炭を含有する改質材自体のpHの調整、pHが調整された改質材の土壌における含有量、pH調整剤の添加等により調整できる。下層120のpHは土壌環境分析法で測定した際に、9.5以下であることが好ましい。
【0030】
下層120の底部の少なくとも一部は、周辺土壌130と直接接し、下層120を通過した雨水は周辺土壌130へと自然に浸透することにより排出されてもよい。
【0031】
図2は上層110と下層120との間に中間層210を設けた例を示す。本発明の実施形態の一態様において、多量の降雨により冠水した場合に上層110と下層120の資材が混合しないように、或いは下層120が粒径により分離しないように、上層110と下層120との間に中間層210を設けることができる。例えば、中間層210は直径が10μm以上の粒子を捕捉できる層とする。
【0032】
また、中間層210と同様の層を、周辺土壌130と本発明の植栽地盤100との間に設けても良い。つまり、植栽地盤100が周辺土壌130と接する面に、中間層210と同様の層を設けても良い。大雨により多量の雨水が植栽地盤100に流れ込んだ際に、周辺土壌130と植栽地盤100の土壌が混合されないようにすることができる。
【0033】
中間層210は上層110から下層120へ流入する雨水の通過を阻害しないよう、飽和透水係数は1.0×10-4m/s以上であることが好ましい。
【0034】
中間層210としては、直径が10μm以上の粒子を補足できる材料、例えば砂、砕石、木材チップ、もみ殻、わら、不織布、透水シート、ガラスビーズ、パーライトなど又はそれらの組み合わせを用いることが好ましい。
【0035】
上層110、下層120、中間層210の厚みについては特に制限されるものではない。しかし、雨水を速やかに貯留するために、透水性の最も高い下層120の深さ(厚み)が20cm以上となることが好ましい。
【0036】
図3は本発明の実施形態の別の態様であり、例えば住宅地などの道路脇に設けられた植栽スペースを想定した例を示す。植栽地盤100は側部及び底部と周辺土壌130との接面の一部又は全部が、分離壁310により隔離されてもよい。分離壁は例えばコンクリート、木材、金属などの建築材料にて構成されてもよい。
【0037】
本発明の実施形態における一態様の植栽地盤100は、上層110又は下層120と外部とを連結する配管330を設け、貯留した雨水の一部を外部に排出する構造としてもよい。
図3に雨水を排出する構造の例を示す。
図3では、植栽地盤100の下層120の下方に設置された収集部320でいったん収集され、その後、配管330を通って植栽地盤100の外部へと流出し、植栽地盤100の外部に設けられた貯留部340にて貯留されてもよい。
【0038】
貯留部340は、植栽地盤100の設けられた地域の雨水をまとめて貯留するタンクなどである。貯留部340は、所望の容積及び形状を有することができる。貯留部340に貯溜された雨水は、図示しないポンプなどによって外部へと取り出すことができ、種々の用途に利用することもできる。
【0039】
また、貯留部340を設置せず、配管330が下水道と直接連結し、雨水を河川などに逃がす構造であってもよい。
【0040】
(炭を含む改質材)
本発明の実施形態における一態様に係る植栽地盤100において、土壌改質材として所定の粒径を有する炭含有成形体を土壌に混合させる。本発明において土壌改質材として使用される炭は、木材、パーティクルボード、おがくず、農業廃棄物、汚水、サイレージ、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル麻、アバカ、稲わら、麦わら、トウモロコシ軸、トウモロコシストーバ、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、ヤシの毛、海藻、藻類、家畜糞尿、草本、くんたん、木の実、製紙汚泥、下水汚泥由来及びそれらの混合物からなる群より選択される一つ以上の材料由来の所謂バイオマスを利用したバイオ炭であることが好ましい。バイオマスを燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350度超の温度で加熱することにより、バイオ炭からなる固形物が生成する。こうして生成したバイオ炭から炭含有成形体(例えばバイオ炭ペレット)を形成し、土壌改質材として土壌構成資材に混合させて地中に埋めることにより、大気中の二酸化炭素を貯留するためのシステムを構築することができる。
【0041】
炭含有成形体は、混合される土壌に求められる特性に応じて、形状、表面積、化学的性質など物性値を適宜調整することができる。
【0042】
バイオ炭などの炭は、炭化されたままの状態であると細粒化しやすく、これを土壌に混合させると土壌の透水性を低下させることがある。したがって、本発明の植栽地盤100における下層120などの高い透水性が要求される土壌においては、炭化生成した炭をそのまま混合させることは好ましくない。したがって、高い透水性が要求される土壌に使用する場合には、細粒化しにくく、一定以上の粒径を有するペレットなどの成形体としてもよい。
【0043】
炭をペレットなどの炭含有成形体にする場合は、炭にバインダと水を添加し、それらを混合する。その後、造粒機を用いて炭を一定の形状に成形(造粒)する。造粒機としては公知の造粒機を使用することができ、例えば圧縮型造粒機、押出型造粒機、ロール型造粒機、ブレード型造粒機、溶融型造粒機、及び噴霧型造粒機などが例示される。
【0044】
成形(造粒)後は、硬化させ、炭含有成形体(ペレット)を形成する。バインダは炭と効率よく混合して一体化させるとともに、得られる混合物を造粒して種々の形状に成形するために用いることができる。バインダの種類に制約はないが、有機系バインダ及び/又は無機系バインダを用いることができる。有機系バインダとしては、例えば糖蜜、廃糖蜜、澱粉、デキストリン、コーンスターチ、米糠などの多糖類、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルとエチレンの共重合体若しくはそのケン化体、パルプ廃液、リグニンスルホン酸塩などの有機酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、フェノール樹脂、及びタールピッチなどから選択される一つ又は複数が挙げられる。有機系バインダとして、おがくずも挙げられる。無機系バインダとしては、例えばセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石膏(硫酸カルシウム)、石膏を加熱・脱水して得られる焼石膏、ケイ酸ナトリウムなどが例示される。
【0045】
粉末状の炭とバインダとの混合比はバインダの種類によっても変動するが、混合時の体積比で概ね、炭:バインダ=50:50~95:5、より好ましくは、炭:バインダ=60:40~90:10とする。
【0046】
バインダと混合成形され、その後、硬化された炭含有成形体は、土壌構成資材と混合させた際に、長期間細粒化しないように一定の強度を有していることが好ましい。炭含有成形体の乾燥密度は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上である。また、炭含有成形体の含水率は好ましくは20%以上50%以下、より好ましくは30%以上40%以下である。
【0047】
炭含有成形体はその大きさ又は形状により、土壌構成資材と混合させた状態での飽和透水係数が調整できる。特に本発明の植栽地盤100における下層120にて使用される場合など、土壌構成資材そのものよりも飽和透水係数を増加させたい場合には、炭含有成形体の大きさ、形状などを適宜調整することができる。炭含有成形体の形状は球状、楕円球、円柱、楕円柱又は多角柱などの形状を単一或いは混合したものを使用でき、例えば円柱形上の場合は、直径が1mm~10mm、好ましくは4mm~7mmであり、高さ0.1mm~20mm、好ましくは1mm~10mmであり、1mm以上の高さを有するものが全炭含有成形体の全体積の99%以上存在することが好ましい。
【0048】
なお、後述のとおり、上層110と下層120において使用するバイオ炭ペレットなどの炭含有成形体は、混合される層により異なるサイズであってよい。その場合、例えば下層に使用される炭含有成形体を第1成形体、上層に使用される炭含有成形体を第2成形体、第3成形体などと区別してもよい。
【0049】
第1成形体及び第2成形体の各々の体積は、30mm3以上60mm3以下が好ましい。上層または下層として、土壌構成資材と複数の炭含有成形体を混合する場合は、混合される複数の炭含有成形体の各炭含有成形体の体積が30mm3以上60mm3以下であると良い。
なお、本明細書中で炭含有成形体の大きさを所定の体積範囲で表す場合、全成形体の合計体積のうち80%以上が前記所定の範囲内であることを意味する。
【0050】
植栽地盤100に植えられる植物の生育を促進するため、バイオ炭ペレットなどの炭含有成形体を作製する工程では、炭含有成形体には、炭粉末とバインダ以外の成分として鉄、リン、カリウム、窒素化合物などの肥料成分を含有させることができる。
【0051】
バイオ炭などの炭は、通常、アルカリ性を示し、例えばpHは10~13程度であるため、そのまま植栽地盤内の土壌に混合すると、植物の生育に好ましくない。そこで本発明において使用されるバイオ炭などの炭を、炭酸化処理することによりpHを下げることができる。すなわち、バイオ炭などの炭を炭酸化することで、アルカリ性環境の原因となるアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩(例えば水酸化カルシウム)を炭酸塩に変化させ、その結果、植物の生育環境として適したpH7~pH10に調整することが可能となる。
【0052】
バイオ炭などの炭の炭酸化は、炭を二酸化炭素含有ガスと接触させることにより行われる。二酸化炭素含有ガスには、二酸化炭素とともに空気、窒素、酸素、アルゴンなどの希ガス又は水(水蒸気)などの他のガスが含まれていてもよい。二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の濃度は適宜調製すればよく、好ましくは1体積%以上100体積%以下、より好ましくは1体積%以上50体積%以下、最も好ましくは1体積%以上20体積%以下に設定できる。
【0053】
バイオ炭などの炭中に含まれるアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の効率の良い炭酸化を行うため、二酸化炭素含有ガス若しくは炭のいずれか一方又は両方に水(水蒸気)が含まれていることが好ましい。炭に水を含ませる場合には、例えば重量として10%以上20%以下とすることが好ましい。二酸化炭素含有ガスに水を含ませる場合には、相対湿度を20%以上95%以下、好ましくは50%以上90%以下に設定する。
【0054】
炭酸化の際に水(水蒸気)が存在すると、炭に含まれる酸化物が酸化カルシウムの場合、酸化カルシウムは水と反応して速やかに水酸化カルシウムへ変化するので、室温又は室温近辺の温度(例えば、15℃以上35℃以下)でも炭酸化が進行する。また、炭の細孔内に存在する溶液中の水酸化カルシウム又は塩化カルシウムなどのカルシウムイオンと二酸化炭素との反応も可能となるため、固体状態の塩と二酸化炭素との反応とは異なり、炭酸化が温和な条件で速やかに進行し、その結果、炭酸化に要するエネルギーを低減することができる。
【0055】
バイオ炭などの炭生成時の電気伝導度(S/m)は1.1程度のため、生成したままの炭を土壌に用いると、土壌と植物間での浸透圧が低くなり植物の水分吸収に支障が出る可能性がある。したがって、炭に炭酸化処理を行うことで、炭の電気伝導度を下げることができる。バイオ炭の電気伝導度は0.01~1S/mの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.1S/mである。後述する実施例1では、炭酸化により電気伝導度を0.5S/mへ低下させることができた。したがって、炭酸化処理を行った炭含有成形体と土壌構成資材とを混合しても、両者を混合した土壌層の電気伝導度を1.0S/m以下とすることができる。土壌層の電気伝導度を1.0S/m以下とすることで、植物の水分吸収をスムーズに行うことができるため、上層110としては、電気伝導度を1.0S/m以下にするのが好ましい。植栽土壌の上層110としては、より好ましくは、0.01以上0.1S/m未満の範囲であることが好ましい。
【0056】
バイオ炭ペレットなどの炭含有成形体は土壌構成資材と混合させた際に、植栽地盤100に植えられる植物の生育に対する影響、及び周辺土壌への影響の観点から、バイオ炭ペレットなどの炭含有成形体自体のpHが7~10であることが好ましく。さらに好ましくは、炭含有成形体自体のpHが6~9であることがより好ましい。
【0057】
バイオ炭などの炭のpHまたは電気伝導度を下げるために炭酸化する際、炭をできるだけ多くの二酸化炭素と接触させるために、表面積が大きい粉末形状で炭酸化させることが好ましいが、これに限定されない。すなわち、所定の形状である炭含有成形体に炭酸化処理を施してもよい。
【0058】
本発明の植栽地盤100における上層110など一定の保水性が要求される土壌においては、上述の炭を成形せず、粉末のまま土壌構成資材に一定量加えてもよい(以下、本明細書中において「炭粉末」とする)。炭粉末を土壌に加える場合には、炭粉末のみを土壌構成資材と混合させてもよく、成形されたバイオ炭ペレットなどの炭含有成形体と混合して使用してもよい。
【0059】
炭粉末を使用する場合は、その平均粒径が0.5mm以下であることが好ましく、0.06mm以下であることがより好ましい。
【0060】
また、保水性が要求される上層110を、下層120よりも飽和透水係数を小さくするために、上層110には炭含有成形体(第2成形体)、さらに第2成形体に加え第2成形体よりサイズの小さい成形体(第3成形体)を混ぜても良い。サイズの異なる炭含有成形体を上層側に混ぜることで、上層の飽和透水係数を下層の飽和透水係数よりも小さくすることができる。例えば、上層110において、体積が30mm3以上60mm3以下(平均体積45mm3)である炭含有成形体(第2成形体)と、体積が5mm3以上25mm3(平均体積15mm3)以下である炭含有成形体(第3成形体)を用いる。サイズの異なる炭含有成形体を混合させることで、単一サイズの炭含有成形体を用いるよりも、上層の保水性を向上させることができ、上層と下層において飽和透水係数に差をつけることができる。
【0061】
第3成形体を土壌構成資材及び複数の第2成形体と混合する場合は、混合される複数の第3成形体の各々の体積が5mm3以上25mm3以下であると良い。
【0062】
次に炭を植栽地盤100の下層120において使用する場合について説明する。前述のとおり本発明の実施形態において、バイオ炭ペレットなどの炭含有成形体は所定量の土壌構成資材と混合され、下層における土壌全体の飽和透水係数が1.0×10-5m/s以上となるように調整される。より好ましくは1.4×10-4m/s以上、さらに好ましくは7.0×10-4m/s以上に調整される。
【0063】
炭を下層120に使用する場合、炭は炭含有成形体の状態で使用されることが好ましい。その際、下層120に混合される複数の炭含有成形体の全体積の80%以上において、炭含有成形体の各々の体積が30mm3以上60mm3以下、平均体積が45mm3であることが好ましい。炭含有成形体をふるい分けした場合、目が2.5mmのふるいに99%以上とどまるような炭含有成形体が好ましい。
【0064】
下層120に使用されるバイオ炭ペレットなどの炭含有成形体と土壌構成資材との混合比は、炭含有成形体の割合が低すぎると飽和透水係数が所望の値に設定しにくくなり、高すぎるとpHが高くなり、周辺土壌への影響が懸念される。炭含有成形体と土壌構成資材との混合物に対して、炭含有成形体は体積比が10%以上90%以下であることが好ましく、60%以上90%以下であることがより好ましい。なお、炭含有成形体と土壌構成資材との体積混合比は、所定の容器に自然充填して測定しても、所定の圧力をかけて締め固めた状態で測定してもよい。
【0065】
下層120に使用される土壌形成資材は、クリンカアッシュ、砂、砕石、軽石、パーライト、浄土発生土、真砂土、荒木田土、日向土、桐生砂、鹿沼土、石灰灰及びこれらを焼成した材料が使用できる。
【0066】
下層120は、炭含有成形体と土壌構成資材とからなる混合物を90体積%以上含む。
【0067】
上層110に植物が植えられる場合など、上層110には一定の保水性も求められる場合もある。従って、上層110は、炭粉末と土壌構成資材との混合物、炭粉末と炭含有成形体と土壌構成資材との混合物、または炭含有成形体と土壌構成資材との混合物を使用することができる。炭含有成形体を用いる場合は、サイズの異なる炭含有成形体同士を混合させることで、保水性を向上させることができる。
【0068】
上層110において炭粉末と炭含有成形体とを所定量混合させる場合には、炭粉末と炭含有成形体の混合物全体に対し、体積比で炭粉末:炭含有成形体=1:99~50:50であることが好ましく、5:95~10:90であることがより好ましい。
【0069】
上層110において、炭含有成形体と上記土壌構成資材との混合比は、炭含有成形体の比率が低すぎると飽和透水係数が所望の値に設定しにくくなり、高すぎるとpHが高くなり、周辺土壌への影響が懸念される。
したがって、炭混合物(成形体及び粉末)と土壌構成資材との混合物の合計に対し、炭混合物の体積が0体積%を超え、40体積%以下であることが好ましく、0体積%を超え、20体積%以下であることがより好ましい。
【0070】
前記上層110は、炭含有成形体、炭粉末、及び土壌構成資材とからなる混合物を体積比70%以上含む。その他、上層110に使用する炭含有成形体を土壌構成資材と混合する過程において、肥料、堆肥、pH調整材などを、体積比30%以下含有させることができる。
【実施例0071】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
<炭含有成形体のpH調整>
炭酸化処理前のバイオ炭からなる炭粉末として、重量含水率0.6%であり、
図4に示す粒径分布の炭粉末15kgを準備した。
図4において、炭粉末は、ふるい目が50μm~60μmの範囲内で質量の約30%程度がふるいを通り、ふるい目が100~200μmの範囲内で質量の約50%程度がふるいを通った。ふるい目が800μm以上では、質量の90%以上がふるいを通った。
【0073】
図4の粒径分布を有する上記炭粉末15kgと、水を12.9kgと、バインダとしてスラグを3.8kgとを混合し、混合機で30分攪拌後、押出型造粒機を用いて造粒した。その後、造粒した炭混合物を養生し、炭含有成形体(ペレット)を作製した。作製した炭含有成形体をふるいにかけると、ふるい目が2.5mmで99%以上がふるいを通らず、ふるい目が4.7mmでは90%以上がふるいを通った。作製した炭含有成形体は、平均直径4mm、平均高さ3.5mmの円筒型であり、全炭素含有成形体の体積の80%以上が30mm
3以上60mm
3以下であり、平均体積値は45mm
3、平均乾燥密度は0.7g/cm
3であり、重量含水率は33.7%であった。
【0074】
作製した炭含有成形体のpH及び電気伝導度(EC)を測定した。炭含有成形体のpHは、土壌環境分析法を参考にし、炭含有成形体を5g-乾燥物と水25mlを混合し、1時間浸透した後の溶液のpH測定を行った。炭含有成形体のECは、土壌環境分析法を参考にして、炭含有成形体5g-乾燥物と水25mlを混合し、1時間浸透した後の溶液のEC測定を行った。
【0075】
結果を表1に示す。炭酸化前の炭含有成形体のpHは12.7、電気伝導度(EC)は1.14S/mであった。
【0076】
<炭含有成形体の炭酸化>
上記のように作成した炭含有成形体15kgに対し、濃度99.9%以上の二酸化炭素ガスを室温で72時間、接触混合することで炭酸化を行った。炭酸化された炭含有成形体のpH及び電気伝導度(EC)を上述の炭酸化前の炭含有成形体と同じ方法で測定した。結果を表1に示す。炭酸化後の炭含有成形体のpHは8.7、電気伝導度(EC)は0.53S/mであり、pH及び電気伝導度のどちらも低下した。
【0077】
【0078】
表1より、炭含有成形体は炭酸化処理を行うことにより、植栽地盤として使用しうるpH値に調整できたことが分かった。また、ECについても植栽地盤として使用しうるEC値に調整できたことが分かった。
【0079】
(実施例2)
<土壌の特性測定>
炭酸化処理を行った炭含有成形体とライトサンドからなる混合物を体積100%とした際の炭含有成形体の混合割合を振った試料1~5を作製した。また炭含有成形体とマサ土からなる混合物を体積100%とした際の、炭含有成形体の混合割合を振った試料6~10を作製した(下表2)。試料1~10の土壌を作製し、飽和透水係数、最大圃場容水量、pH及びECを測定した。また比較例A及びBとして、炭含有成形体を含まない土壌、つまりライトサンド100%及びマサ土100%の土壌についても、同様に飽和透水係数、最大圃場容水量、pH及びECを測定した。
【0080】
飽和透水係数は、直径5cm、高さ25cmの円筒状のカラム内に各土壌を15cm厚で充填し、カラム内の土壌表面が一定水深となるよう上部から通水し冠水を維持した状況下でカラムからの排水速度を測定し、飽和透水係数を求めた。
【0081】
最大圃場容水量は、上記の飽和透水係数の測定方法で使用した各土壌が充填されたカラムにおいて、24時間静置して重力水を除去した後に乾燥土の体積当たりの水分保持量を測定した。pH及びECの測定方法は実施例1と同様である。測定結果を表2に示す。
【0082】
【0083】
表2の結果より、土壌構成資材がライトサンド又はマサ土のいずれにおいても、炭含有成形体を体積比10%以上混合した例では、混合しない例(比較例A及びB)の飽和透水係数と同程度、もしくは比較例A及びBよりも飽和透水係数が大きかった。したがって、植栽地盤の下層120として炭含有成形体を使用する場合、炭含有成形体が体積比として10%以上混合させても元の土壌構成資材の透水性と同程度の能力を維持できた。もしくは元の土壌構成資材以上の透水性能力を発揮することができた。つまり、土壌構成資材の代替材として、一部を炭含有成形体に置き換えて使用することができ、使用する土壌構成資材を減少させることができるとともに、炭含有成形体を利用することで地中に炭素を固定化することができた。
【0084】
図5に比較例Aと試料1~5、炭含有成形体100%の各飽和透水係数を示す。ライトサンドと炭含有成形体を混合した試料1~5及び比較例Aをみると、炭含有成形体の体積比が60%以上(試料1~2)において、飽和透水係数が格段に向上した。したがって、ライトサンドと混合する場合は、炭含有成形体を体積比として60%以上混合させることにより、排水性に優れた下層に適した土壌となり得ることが分かった。
【0085】
図6に比較例Bと試料6~10、炭含有成形体100%の各飽和透水係数を示す。マサ土と混合した試料6~10及び比較例Bをみると、炭含有成形体の体積比が40%以上(試料6~8)において、飽和透水係数が向上した。さらに、炭含有成形体の体積比が80%以上(試料6)において、また一段と飽和透水係数が向上した。したがって、マサ土と混合する場合は、炭含有成形体を体積率として40%以上混合させることにより、さらに好ましくは80%以上混合させることにより、排水性に優れた下層に適した土壌となり得ることが分かった。
【0086】
つまり、ライトサンドまたはマサ土と炭含有成形体を混合させた場合、炭含有成形体の体積率として60%以上であると、排水性の高い下層として利用できることが分かった。
【0087】
他方、表2より、pHについては、ライトサンド及びマサ土のいずれにおいても炭含有成形体を混合することでpHは高くなった。また、炭含有成形体の混合量の増加に伴い、pHもより高くなった。ただし、いずれの試料もpHは9.5以下であった。下層のpHは、前述したように9.5以下が好ましい。土壌構成資材と炭含有成形体の混合物のpHが9.5以下であれば、カラムから浸出される排水のpHは8.5以下であるため、下層として使用可能である。さらに、pH低下させる方法としては、水による洗い出し又は酸性材の添加がある。
【0088】
次に、保水層として機能する上層に重要な最大圃場用水量について考察する。
図7に比較例Aと試料1~5の最大圃場用水量を棒グラフで示し、
図8に比較例Bと試料6~10の最大圃場用水量を棒グラフで示す。
【0089】
土壌構成資材がライトサンド及びマサ土のいずれにおいても、炭含有成形体を体積比40%以下で混合した試料3~5及び試料8~10では、炭含有成形体を混合しない比較例AまたはBに対して最大圃場容水量の変動が小さい。一方で、体積比60%以上の試料1~2及び試料6~7では最大圃場容水量が一段と減少することが分かった。したがって、植栽地盤100の上層110としては、最大圃場容水量の観点より、炭含有成形体の混合割合が体積比40%以下であることが好ましいことが分かった。
【0090】
電気伝導度(EC)については、ライトサンド又はマサ土のいずれにおいても、炭含有成形体の混合により増加がみられたが、いずれの試料も植栽土壌として好ましい1.0S/m以下であった(表2)。また、炭含有成形体の混合割合が体積比として20%以下であれば、植栽土壌としてさらに好ましい0.1S/m未満にすることが可能であった。したがって、植栽土壌である上層としては、電気伝導度の観点からは、炭含有成形体の混合割合が体積比20%以下であることが好ましいことが分かった。
【0091】
(変形例1)
上述の本発明の実施形態においては、上層は植物を植えることを前提に保水性、pHなどの範囲が定められているが、降雨時の雨水貯留に特化し上層に植物を植えないものであってもよい。また、植物を植えない場合は上層の深さは下層に比べて著しく浅くともよく、炭含有成形体を多く含む下層が地表に露出しない程度の深さで構成されていればよい。また、上層の一部を歩道などにより一部覆う態様でもよい。植物を植えないことにより、雨水貯留浸透型土壌として許容できるpHの範囲が広くなり、より雨水の貯留に特化した土壌として利用できる。
【0092】
以上より、本発明における、バイオ炭などの炭を一定量混合させた土壌により構成される植栽地盤は、地球温暖化防止のための土壌炭素貯留技術と、降雨時の雨水貯留技術とを両立する植栽地盤として利用できる。
【0093】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0094】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される