(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075102
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】身体冷温装置
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186299
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】522457760
【氏名又は名称】株式会社エイ・エム・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】大濱 博之
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA03
4C099CA03
4C099EA08
4C099GA08
4C099JA02
4C099LA21
4C099NA02
4C099PA04
(57)【要約】
【課題】長時間使用しても冷え過ぎたり熱過ぎることがなく、冷たさや熱さに慣れにくい軽量、コンパクトで簡単な構造の身体冷温装置を提供する。
【解決手段】皮膚に触れて冷却ないし加温する熱伝導性の身体装着具3と、身体装着具3に対して面接触するペルチェ素子5と、ペルチェ素子5に対して面接触する温度調節ブロック7と、温度調節ブロック7に冷却ないし加熱用の媒体Wを供給するポンプPと、ペルチェ素子5とポンプPに電力を供給する電源21と、媒体Wを冷却ないし加温する温度調節材17及び熱交換ブロック19と、媒体Wの循環経路を形成する循環経路部材11と、を備え、身体装着具3は、使用者Aの身体の一部に部分的に接触し、接触する位置が使用者Aの体の動きに応じて随時変化すると共に、剛性を有する形状と構造の熱伝導性部材を適用することによって構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を使用して身体の一部を冷却ないし加温する装着使用タイプの身体冷温装置において、
皮膚に触れて冷却ないし加温する熱伝導性の身体装着具と、
前記身体装着具の背面中央部に面接触するように設けられるペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子背面の発熱面ないし冷却面に面接触するように設けられる温度調節ブロックと、
前記温度調節ブロックに冷却ないし加熱用の媒体を供給する駆動源となるポンプと、
前記ペルチェ素子とポンプに電力を供給する電源と、
前記温度調節ブロックから流出された媒体を冷却ないし加熱する温度調節材及び熱交換ブロックと、
前記温度調節ブロック、前記熱交換ブロック及び前記ポンプ間に媒体の循環経路を形成する循環経路部材と、を備え、
前記身体装着具は、使用者の身体の一部に部分的に接触し、接触する位置が使用者の体の動きに応じて随時変化すると共に、剛性を有する形状と構造の熱伝導性部材を適用したものであることを特徴とする身体冷温装置。
【請求項2】
前記身体装着具は、使用者の頸部に装着するものであり、平面形状が頸部の形状に合わせた略U字状の板材であって、周方向に適宜の間隔で屈曲部が形成されるとともに頸部に接触する内面の少なくとも一部が湾曲したものであることを特徴とする請求項1記載の身体冷温装置。
【請求項3】
前記身体装着具は、周方向に厚さ方向に貫通する複数の孔部が形成されたものであることを特徴とする請求項2記載の身体冷温装置。
【請求項4】
前記身体装着具は、厚さが3mm以上5mm以下のアルミニウム材によって形成されたものであることを特徴とする請求項2又は3記載の身体冷温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子を使用して身体の一部を冷却ないし加温する装着使用タイプの身体冷温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の気候変動等の影響もあって、冷暖房設備のない工場内での長時間の作業や屋外での土木、建築、農業関連の長時間の作業は、年々過酷になってきている。このような折、最近ではペルチェ素子を使用して身体の一部を冷却したり、加温する体温調節用の装置が提案されている(特許文献1等参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている装置は、頸部への密着性を重視し、頸部に装着する装着具として、厚さが0.3mm程度と極めて薄く、柔軟に変形する熱伝導性金属シートを採用している。そして、ペルチェ素子は、熱伝導性金属シートの両端部の2ヶ所に設けられている。また、この装置には、発熱したペルチェ素子を冷却する冷媒として冷却水ないしクーラントを使用しており、これらの冷媒の冷却手段として、フィンの付いたラジエターとファンを使用している。さらに、この装置には、冷媒をペルチェ素子と冷却手段との間に循環させる循環経路部材として弾性を有するプラスチック製のパイプ、冷媒の循環駆動手段としてのポンプ、及びペルチェ素子とポンプに電力を供給する電源部と、が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す装置は、頸部への密着性を重視し、身体装着具として厚さが極めて薄く変形し易い熱伝導性金属シートを使用している。このように、装着部位となる頸部に熱伝導性金属シートが密着しやすくなればなるほど、冷え過ぎの問題が生じる虞がある。また、熱伝導性金属シートが使用者の皮膚に接触(密着)している時間が長くなると慣れてしまって、冷感を得にくくなってしまうという問題もある。さらに、冷却手段として用いていたラジエターは重量が重く、高温環境下での長時間の使用には不向きであり、使用しているうちに冷却能力が鈍ってしまうという問題もある。またさらに、ファンは粉塵が舞う環境では使用することが困難である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、身体装着具の形状と構造を鋭意検討し、使用中、体を動かすことで身体装着具に触れる身体の個所を変化させ、冷え過ぎたり温め過ぎたりせず、冷たさや温かさに慣れることを抑える工夫がなされた身体冷温装置を提供することを目的とする。また、身体冷温装置の全体構成を見直し、長時間使用しても使用者に与える負担の少ない、軽量、コンパクトで所望の冷却・加温能力が長時間得られる、構造が簡単で安価な身体冷温装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明における身体冷温装置は、ペルチェ素子を使用して身体の一部を冷却ないし加温する装着使用タイプの身体冷温装置において、
皮膚に触れて冷却ないし加温する熱伝導性の身体装着具と、
前記身体装着具の背面中央部に面接触するように設けられるペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子背面の発熱面ないし冷却面に面接触するように設けられる温度調節ブロックと、
前記温度調節ブロックに冷却ないし加熱用の媒体を供給する駆動源となるポンプと、
前記ペルチェ素子とポンプに電力を供給する電源と、
前記温度調節ブロックから流出された媒体を冷却ないし加熱する温度調節材及び熱交換ブロックと、
前記温度調節ブロック、前記熱交換ブロック及び前記ポンプ間に媒体の循環経路を形成する循環経路部材と、を備え、
前記身体装着具は、使用者の身体の一部に部分的に接触し、接触する位置が使用者の体の動きに応じて随時変化すると共に、剛性を有する形状と構造の熱伝導性部材を適用したものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の身体冷温装置によれば、身体装着具が、使用者の身体の一部に部分的に接触し、接触する位置が使用者の体の動きに応じて随時変化する。このため、冷え過ぎたり温め過ぎず、さらに冷たさや温かさに慣れて冷感や温感を得にくくなってしまうという不具合を抑えた身体冷温装置を提供することが可能になる。また、温度調節手段として従来設けていたラジエターとファンを廃し、温度調節材と、その近傍に設けられる熱交換ブロックを採用したため、長時間使用しても使用者に与える負担の少ない軽量、コンパクトで温度調節能力が長時間に亘って得られる、構造が簡単で安価な身体冷温装置を提供することが可能になる。さらに、ファンを廃したことでファンの騒音も回避され、静粛性に優れた身体冷温装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明の身体冷温装置において、前記身体装着具は、使用者の頸部に装着するものであり、平面形状が頸部の形状に合わせた略U字状の板材であって、周方向に適宜の間隔で屈曲部が形成されるとともに頸部に接触する内面の少なくとも一部が湾曲したものであることが好ましい。
【0010】
このような態様の身体冷温装置を採用すれば、前記湾曲した内面や前記屈曲部の個所で頸部と前記頸部装着具との間に隙間が形成され、この隙間の位置が、使用者の体の動きに応じて随時変化する。これにより、前記頸部装着具の過度な密着がより防止され、適度な冷たさないし温かさが長時間に亘って得られるようになる。
【0011】
さらに、本発明の身体冷温装置において、前記身体装着具は、周方向に厚さ方向に貫通する複数の孔部が形成されたものであってもよい。
【0012】
このような態様の身体冷温装置を採用すれば、前記孔部が形成されている部位で非接触となり、該孔部が形成されていない部位で接触するようになって、前記頸部装着具の過度な密着をさらに抑えることができる。また、前記孔部を設けることで前記頸部装着具の軽量化を図ることもできる。
【0013】
また、本発明の身体冷温装置において、厚さが3mm以上5mm以下のアルミニウム材によって形成されたものであることも好ましい態様の一つである。
【0014】
この態様を採用すれば、使用中の前記頸部装着具の変形(弾性変形)が抑制され、該頸部装着具の本来の形状が保たれる。これにより、前記頸部装着具の変形によって生じる、該頸部装着具の密着し過ぎ等の不具合をより抑えることができる。また、前記頸部装着具に厚みを持たせることで熱容量を高め、熱平衡点を低くすることも可能になる。
【0015】
さらに、本発明の身体冷温装置において、前記温度調節ブロックと前記熱交換ブロックの内部には、媒体の滞留時間を長くするための仕切り壁が複数形成されているものであってもよい。
【0016】
このような態様の身体冷温装置を採用すれば、前記温度調節ブロック内と前記熱交換ブロック内で行っている熱交換作用が促進され、媒体の一層の冷却ないし加熱作用が得られるようになる。
【0017】
また、本発明の身体冷温装置において、前記温度調節材として、内部に液体が収容されたペットボトルを冷却ないし加熱したものを使用したものであってもよい。ここで、冷却したペットボトルは、冷凍したものであってもよい。
【0018】
このような態様の身体冷温装置を採用すれば、ラジエターやファンを使用しなくても媒体を冷却ないし加熱することが可能になる。さらに、前記温度調節材の交換が容易になり、また、ペットボトル飲料は外出先でも容易に入手することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来の身体冷温装置における熱伝導性金属シートの変形等によって生じていた冷え過ぎや温め過ぎと、冷感や温感を得にくくなってしまうとった不具合を解消するとともに、高温ないし低温下での過酷な環境での作業の負担を軽減することが可能な身体冷温装置を提供することができる。また、軽量、コンパクトで、かつ粉塵の舞う環境下においても使用できる身体冷温装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】身体冷温装置をネッククーラーとして使用した場合を示す斜視図である。
【
図2】頸部装着具とペルチェ素子と温度調節ブロックを示す平面図(a)、側面図(b)、背面図(c)、斜視図(d)(e)である。
【
図3】温度調節ブロック、熱交換ブロック、ポンプ及びこれらの間に形成される媒体の循環経路を示す断面図である。
【
図4】バッグ内に収容される温度調節材、熱交換ブロック、ポンプ、電源及び電源とポンプを接続しペルチェ素子に向けて延びる配線を示す断面図である。
【
図5】ペルチェ素子とポンプと電源を結ぶ電気回路の一例を示す説明図である。
【
図6】本発明の他の実施の形態に係る身体冷温装置の使用状態を示す身体装着具周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。最初に、
図1に基づいて本発明の身体冷温装置の全体構成の概略を簡単に説明する。
【0022】
図1は、身体冷温装置1としてネッククーラー1Nを用いた場合の使用状態、すなわち、ネッククーラー1Nを装着した使用者Aの後ろ姿が図示されている。具体的には、使用者Aの頸部には、身体装着具3の一例である頸部装着具3Nが使用者Aの背面側から装着されており、頸部装着具3Nの背面にはペルチェ素子5を挟んで温度調節ブロック7の一例である冷却ブロック7Aが取り付けられている。
【0023】
ペルチェ素子5から延びる配線9(9a,9b)と、冷却ブロック7Aから延びる2本のホース13が使用者Aの背中の中心を通って下方に延びている。2本のホース13は、冷媒(媒体W)の循環経路を形成する循環経路部材11に相当するものである。また、配線9と2本のホース13の端部が使用者Aの腰に取り付けられたバッグ15内に収容されている。
図4を用いて後述するように、バッグ15内には、冷却材17A(温度調節材17)、熱交換ブロック19及びポンプPと、電源21とが仕切り壁23を隔てた状態で収容されている。
【0024】
図1に示すように、ネッククーラー1N(身体冷温装置1)は、身体の一部である頸部を冷却することで、使用者Aの体温上昇を抑制する装着使用タイプのものである。ネッククーラー1Nは、皮膚に触れて冷たさを感じさせる熱伝導性の頸部装着具3N(身体装着具3)と、頸部装着具3Nの背面中央部3aに面接触するように設けられるペルチェ素子5と、ペルチェ素子5背面の発熱面5aに面接触するように設けられる冷却ブロック7A(温度調節ブロック7)と、冷却ブロック7Aに冷却水(媒体W)を供給する駆動源となるポンプPと、ペルチェ素子5とポンプPに電力を供給する電源21と、冷却ブロック7Aから流出された温められた冷却水を冷却する冷却材17A(温度調節材17)とその近傍に設けられる熱交換ブロック19と、冷却ブロック7A、熱交換ブロック19及びポンプP間に冷却水の循環経路を形成するホース13(循環経路部材11)と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0025】
本発明の特徴的構成として、頸部装着具3Nは、使用者Aの頸部に対して部分的に接触し、接触する位置が使用者Aの体の動きに応じて随時変化する剛性を有する形状と構造の熱伝導性部材を適用したことを特徴としている。
【0026】
次に、
図2~
図5に基づいてネッククーラー1Nの構成部材について具体的に説明する。
図2(a)は、身体装着具3とペルチェ素子5と冷却ブロック7Aを示す平面図であり、同図(b)は側面図であり、同図(c)は背面図である。また、
図2(d)は、冷却ブロック7Aの斜視図であり、同図(e)は、ペルチェ素子5の斜視図である。
【0027】
図2(a)~(c)に示すように、本実施形態の頸部装着具3Nは、平面形状が頸部の形状に合わせた略U字状で、周方向に適宜の間隔で屈曲部25が形成されている。具体的には、平板状の背面中央部3aを挟んで、頸部側に延びる左アーム27Lと右アーム27Rが左右対称に設けられている。左アーム27Lと右アーム27Rには、3ヶ所ずつ屈曲部25が形成され、各屈曲部25を繋ぐように湾曲した板状の4枚のアーム要素27aがそれぞれ配置される構成になっている。ここで、図面では明らかではないが、4枚のアーム要素27aそれぞれの内面は、外側に凸となるようにわずかに湾曲した形状に形成されている。すなわち、4枚のアーム要素27aそれぞれの内面は、頸部に沿うようにわずかに外側に膨らんだ湾曲形状に形成されている。なお、4枚のアーム要素27aのうちの一部の内面を湾曲した形状にしてもよい。また、本実施形態では、左アーム27Lと右アーム27Rには、3ヶ所ずつ屈曲部25が形成された態様を採用しているが、屈曲部25は、1ヶ所ずつでもよいし、2ヶ所ずつでもよいし、4ヶ所以上ずつ形成してもよい。
【0028】
頸部装着具3Nには、厚さ方向に貫通する複数の孔部29が周方向に間隔をあけて複数形成されている。本実施形態では、左アーム27Lと右アーム27Rの高さが背面中央部3aと接続される基部側で高く、先端側で低くなる形状が一例として採用されている。これにより、孔部29の径は基部側で大きく先端に行くに従って徐々に小さくなるように形成されている。
【0029】
また、本実施形態では、頸部装着具3Nの厚さを3mm以上5mm以下とし、頸部装着具3Nの材料として熱伝導性に優れ、軽量なアルミニウム材が一例として採用されている。ここで、頸部装着具3Nの厚さを3mm未満とすると、使用中、弾性変形によって頸部装着具3Nが頸部に追従して不必要に密着してしまい、冷やし過ぎてしまう虞がある。一方、頸部装着具3Nを5mmを超える厚さにすると、剛性が向上する反面、加工しにくくなるとともに、重量が重くなってしまうことになる。また、頸部装着具3Nは、アルミニウム等の金属が使用者Aの頸部に直接接触する態様としてもよいし、金属が直接皮膚に接触することを避けたい場合などは、頸部装着具3Nの内側に、例えば薄いメッシュ状布テープ等のカバー材を貼り、使用者Aの頸部に直接接触する部分がカバー材となる態様を採用してもよい。
【0030】
図2(e)に示すように、本実施形態のペルチェ素子5は、頸部装着具3Nの背面中央部3aに面接触する側の面を冷却面5b、反対側の冷却ブロック7Aと面接触する側の面を発熱面5aとしている。ペルチェ素子5の+極からは配線9a、-極からは配線9bが引き出されている。
【0031】
図2(d)に示すように、冷却ブロック7Aは、隙間が上下互い違いに配置されるように設けられた複数の仕切り壁31を有している。冷却ブロック7Aの内部に流入された冷媒Wの一例である冷却水は、仕切り壁31によって滞留時間が長くなり、ペルチェ素子5の発熱面5aから発せられた熱を奪って冷却する熱交換作用を効率的に行うことができる。なお、本実施形態では、冷却ブロック7Aは、一例としてアルミニウム製の筐体によって構成されており、その内部には、仕切り壁31が上下互い違いになるように3枚設けられている。
【0032】
図3は、冷却ブロック7A、熱交換ブロック19、ポンプP及びこれらの間に形成される媒体の循環経路を示す断面図である。
図4は、バッグ15内に収容される冷却材17A、熱交換ブロック19、ポンプP、電源21及び電源21とポンプPを接続しペルチェ素子5に向けて延びる配線を示す断面図である。
図5は、ペルチェ素子5とポンプPと電源21を結ぶ電気回路の一例を示す説明図である。
【0033】
図3及び
図4に示すように、ポンプPは、バッグ15内に収容されている。このため、持ち運びに適するように軽量、コンパクトであることが求められ、さらに、冷却水の送りに支障のない吐出能力を有することが求められる。なお、ポンプPの吸入口33には後述する熱交換ブロック19の流出口39が接続され、ポンプPの吐出口35には、上述した冷却ブロック7Aの流入口41が循環経路部材11となるホース13を介して接続されている。
【0034】
電源21としては、一例として5Vのモバイルバッテリーを用いることができる。
図4に示すように、電源21は、同一のバッグ15内に冷却材17Aと共に収容することによってモバイルバッテリーの給電効率を長く維持することができるようになっている。また、バッグ15内に設ける仕切り23によって冷却材17A、ポンプP及び熱交換ブロック19と電源21とを区画することで、冷却材17A表面の結露水等の影響からモバイルバッテリーを保護することができる。
【0035】
図4及び
図5に示すように、電源21には、+極と-極の二つの端子が設けられている。これら二つの端子に接続される+極側の配線9aと-極側の配線9bが、途中、並列回路を構成してポンプPとペルチェ素子5の+極側の端子と-極側の端子にそれぞれ接続されている。
【0036】
熱交換ブロック19は、前述した冷却ブロック7Aの流出口43から流出した温められた冷却水を流入口37から取り込んで、内部に形成されている仕切り壁45(
図3参照)によって滞留させ熱を奪って冷却する熱交換作用を行っている部材である。熱交換ブロック19には、冷却水を注入する際に使用する注入口19aが設けられており、作業中は注入口19aに止栓19bが取り付けられて閉塞されている。また、
図4に示すように、熱交換ブロック19の近傍には、後述する冷却材17Aが設けられており、常時、その筐体は冷やされている。その他、熱交換ブロック19は、冷却水のリザーブタンクとしても機能している。
【0037】
図4に示すように、本実施形態では、冷却材17Aとして内部に液体が収容されたペットボトルを凍らせたものが使用されている。このペットボトルは、熱交換ブロック19を挟むように2本配置されており、熱交換ブロック19内での冷却水の滞留作用と、冷却材17Aによる冷却作用とによって冷却水の温度を下げて所望の冷却作用を発揮できるようになっている。
【0038】
なお、本実施形態では、熱交換ブロック19は、冷却ブロック7Aと同様、例えばアルミニウム製の筐体によって構成されており、
図3に示すように、その内部には仕切り壁45が上下互い違いになるように3枚設けられている。
【0039】
循環経路部材11は、ねじれや折れが生じにくいホース13が使用でき、本実施形態では、市販の燃料用のホースを使用している。
【0040】
続いて、
図1~
図5に基づいて、ネッククーラー1Nの使用方法と作動態様について説明する。
【0041】
図1に示すように、ネッククーラー1Nは、頸部装着具3Nを使用者Aの頸部に背面側から取り付け、冷却材17A、ポンプP、熱交換ブロック19及び電源21が収容されたバッグ15を使用者Aの腰部にベルト等を使用して取り付けて使用する。
【0042】
電源21を入れると、ペルチェ素子5の冷却面5b(
図2(e)参照)が冷却され、熱伝導した頸部装着具3Nによって使用者Aの頸部を冷却することができる。ここで、頸部装着具3Nが、使用者Aの頸部に部分的に接触し、さらに接触する位置が使用者Aの頭(体)の動きに応じて随時変化する。このため、冷え過ぎず、かつ、冷たさに慣れにくい冷却が可能になる。特に、本実施形態では、頸部装着具3Nにおける、湾曲した内面や屈曲部25の個所で、使用者Aの頸部と頸部装着具3Nとの間に隙間が生じ、さらに、この隙間が生じる位置が使用者Aの頭の動きに応じて随時変化する。これによって、頸部装着具3Nの使用者Aの頸部への過度な(長時間の)密着が防止され、使用者Aが、適度な冷たさを感じる状態を維持することが可能となる。また、本実施形態では、4枚のアーム要素27aそれぞれの内面が湾曲した形状に形成されている。これにより、頸部装着具3Nが使用者Aの頸部に接触する部分の面積が拡大する。すなわち、本実施形態の頸部装着具3Nは、使用者Aの頸部に接触する面積をかせぎつつ、なおかつ、その接触する位置が変化しやすい工夫が施されている。
【0043】
また、ポンプPを起動すると、
図3に示すように、ホース13内を冷却水が流れて循環する。ポンプPの吐出口35から吐出された冷却水は、ホース13を通って冷却ブロック7Aの流入口41から冷却ブロック7A内に流入して仕切り壁31によって滞留する。これにより、ペルチェ素子5の発熱面5a(
図2(e)参照)からの放射熱と冷却ブロック7Aとの間で効率的に熱交換が実施される。
【0044】
図3に示すように、冷却ブロック7Aの流出口43から流出した温められた冷却水は、ホース13を通って、熱交換ブロック19の流入口37から熱交換ブロック19内に流入する。熱交換ブロック19内に流入した冷却水は、筐体内部の仕切り壁45によって滞留し、近傍に設けられる冷却材17Aによって冷却されて熱交換ブロック19の流出口39から流出する。
【0045】
熱交換ブロック19の流出口39から流出した冷却された冷却水は、ポンプPの吸入口33からポンプP内に入り、所定の吐出圧力が付与されてポンプPの吐出口35から吐出される。吐出された冷却水は、ホース13を通って、再び冷却ブロック7Aの流入口41から冷却ブロック7A内に流入し、以下同様の熱交換作用を繰り返しながら循環経路内を循環する。
【0046】
本発明によるネッククーラー1Nによれば、冷え過ぎや、冷たさに慣れて冷感を得にくくなってしまうといった不具合を抑えて、高温下で過酷な作業を行っている使用者の負担を軽減することができる。また、重量の重いラジエターと、粉塵が舞う環境下では使用できなかったファンを廃することによって、軽量、コンパクトで使用環境を選ばないネッククーラー1Nを提供することが可能になる。さらに、ファンを廃したことでファンの騒音も回避され、静粛性に優れたネッククーラー1Nを提供することができる。
【0047】
本発明の身体冷温装置1は、前述した実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【0048】
例えば、前述した実施形態では、頸部装着具3Nを単に背面から頸部に挿し込んで支持させるだけであったが、
図6に示すように、使用者Aが被っている帽子47の後部の縁等に取り付けた吊下げ紐49等により頸部装着具3Nを吊り下げて支持させてもよい。この態様を採用すれば、重量のある背面中央部3aを吊り下げて支持することによって、頸部への負担を軽減させつつ装着状態を安定させることができる。さらに、使用者Aの頭の動き等に追従して、使用者Aの頸部に頸部装着具3Nが接触する位置が変化しやすくなる。なお、帽子47に代えてヘルメット等から頸部装着具3Nを吊り下げる態様としてもよい。この他、図示は省略するが温度調節ブロック7から延びる2本のホース13の付け根付近をベルト等によって使用者Aの体に固定しておくことも可能である。
【0049】
また、高所作業者が本発明の身体冷温装置1を使用するような場合には、頸部装着具3Nが頸部から不用意に外れて落下しないように、左右のアーム27L、27Rのそれぞれの先端部を連結する連結紐や連結するためのベルト等を設けることも可能である。
【0050】
さらに、ペルチェ素子5の+極と-極を入れ替えれば、身体冷温装置1は、暖房用のネックウォーマー等としても使用できるようになる。そして、この場合には冷却ブロック7Aを加熱ブロックとして使用し、冷却水を温水等、加熱された媒体Wに替え、また冷却材17Aの代わりに温水の入ったペットボトルやカイロ等の加温材を使用すれば実施可能になる。なお、熱くなり過ぎる虞がある場合には、出力を抑える回路を適宜設ければよい。また、熱交換ブロック19の内部の壁面をブラスト加工等により細かな凹凸を付けて熱交換ブロック19の内壁面の表面積を拡大させて熱交換能力を高めるようにすることも可能である。
【0051】
さらに、冷却材17Aとしては、凍らせたペットボトル飲料のほか、市販の保冷剤や氷を入れた袋ないしプラスチック製のボトル等を使用することも可能である。また、バッグ15としては腰に付けるバッグ15に限らず、ウェストポーチや肩にかけるショルダーバッグや両肩にかけて背負うリュック等であっても構わない。なお、それほど温度環境が過酷でない場所で使用する場合には、バッグ15の開口を開放させて作業する、あるいは、メッシュ素材のバッグ15を使用することで対応することも可能である。この場合には、バッグ15から冷却材17Aを取り出して外気を取り込んで熱交換ブロック19を冷却するようにする。この他、冷却材17Aに代えて水に湿らせたタオル等の布をバッグ15内に収容するようにすることも可能である。
【0052】
なお、以上説明した各実施形態の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 身体冷温装置
1N ネッククーラー
3 身体装着具
3N 頸部装着具
3a 背面中央部
5 ペルチェ素子
5a 発熱面
5b 冷却面
7 温度調節ブロック
7A 冷却ブロック
9 配線
11 循環経路部材
13 ホース
15 バッグ
17 温度調節材
17A 冷却材
19 熱交換ブロック
21 電源
25 屈曲部
27 アーム
27a アーム要素
29 孔部
47 帽子
49 吊下げ紐
A 使用者
W 媒体
P ポンプ