(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075105
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ノートブック
(51)【国際特許分類】
B42D 15/00 20060101AFI20240527BHJP
B42D 3/14 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B42D15/00 301A
B42D3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186304
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】722013438
【氏名又は名称】株式会社喜喜
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 智敬
(57)【要約】
【課題】ページフリッピングをした際、飛ばしページ部の紙片が違和感なく無意識的に飛ばされるノートブックを提供する。
【解決手段】側縁端部11に所定幅が切り欠かれた切欠部2aを有する紙片をm枚積層させて構成した飛ばしページ部100を備え、飛ばしページ部が、切欠部と重なり合う位置に非切欠部3aを有する紙片によってその前後を挟み込まれて綴じられ、厚みtを有する紙片からなるノートブックを、中心角90°の円弧状に湾曲し、最も内周側の0枚目の紙片の外周側に切欠部を有する紙片が1からm枚目まで積層され、m+1枚目に非切欠部を有する紙片が積層され、0枚目の側縁端部と1枚目の側縁端部とのズレ量d
1、0枚目の側縁端部と、m+1枚の側縁端部とのズレ量d
m+1、側縁端部から切欠部までの幅をYとしたとき、[数1]d
1=2tπ/4、[数2]d
m+1=2tπ(m+1)/4、[数3](d
m+1)-(d
1+Y)<0が成り立つ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノートブックの小口側となる側縁端部に所定幅が切り欠かれた切欠部を有する紙片をm枚積層させて構成した飛ばしページ部を備え、
前記飛ばしページ部が、前記切欠部と重なり合う位置に該切欠部が設けられていない非切欠部を有する紙片によってその前後を挟み込まれて綴じられ、
厚みtを有する紙片からなる前記ノートブックの背から小口を、中心角90°の円弧状に湾曲した際に、前記円弧の最も内周側に、前記非切欠部を有する紙片が位置し、該紙片を0枚目として、その外周側に前記切欠部を有する紙片が1枚目からm枚目まで積層され、さらにm+1枚目に前記非切欠部を有する紙片が積層されると仮定し、
円弧の内周側から数えて0枚目の前記非切欠部を有する紙片の前記側縁端部と、前記切欠部を有する1枚目の紙片の前記側縁端部とのズレ量である1層目のズレ量をd1、
円弧の内周側から数えて0枚目の前記非切欠部を有する紙片の前記側縁端部と、m+1枚目の前記非切欠部を有する紙片の前記側縁端部とのズレ量であるm+1層目のズレ量をdm+1、
前記側縁端部から前記切欠部までの幅をYとしたとき、
下記式(1)から(3)が成り立つことを特徴とするノートブック。
[数1]d1=2tπ/4 ・・・(1)
[数2]dm+1=2tπ(m+1)/4 ・・・(2)
[数3](dm+1)-(d1+Y)<0 ・・・(3)
【請求項2】
mは2以上の整数であることを特徴とする請求項1に記載のノートブック。
【請求項3】
前記飛ばしページ部は、幅Y1の前記切欠部である第1切欠部を有する紙片を、m枚積層させて構成した第1飛ばしページ部と、幅Y2の前記切欠部である第2切欠部を有する紙片を、n枚積層させて構成した第2飛ばしページ部を、含み、
前記第1切欠部と前記第2切欠部は、前記側縁端部において異なる位置に形成され、
前記第1切欠部又は前記第2切欠部のいずれかが一方が形成された紙片を有し、
Y1及びY2は同じ又は異なる整数であり、m及びnは同じ又は異なる整数であり、nは2以上の整数であること特徴とする請求項2に記載のノートブック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートブックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の紙片群を積層させたノートブックにおいて、紙片群毎に捲りやすいように、連続して積層された紙片群の端部に切り欠きが設けられたものがある。例えば、手帳の月毎に又は電話帳の五十音の文字毎に、紙片の小口側に切欠部が設けられたものが一般的である。このように設けられた切欠部に指を合わせると、一の紙片群から他の紙片群へ、素早く捲ることが可能となる。このように、切欠部を設けることでインデックス機能を備えたノートブックは公知である。
【0003】
また、特許文献1には、一冊に複数の作品を含む多作品収集絵本において、複数の作品がそれぞれ一定ページ毎に現れるように切り欠きを設けた紙片を含み、パラパラと捲ることにより、一定ページ毎にとばして関連性の有する絵などが記されたページが開かれることで、動的な作品が現れるように構成した絵本が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特定のページを開くために切欠部を設ける技術は公知であるが、所定のページを開かないよう構成し、所定のページ群の間に書かれたものや挟まれたものを隠蔽するという技術的思想はこれまでにない。
【0006】
開くのではなく、開かないようにするという着眼点に基づいた構成とすることで、ノートブックの新たな使用方法や使用用途を提案することが可能となる。
【0007】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パラパラとページを捲った際、切欠部を有する飛ばしページ部が違和感なく無意識的に飛ばされることで、飛ばしページ内の記載を隠蔽可能なノートブックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るノートブックでは、ページフリッピングすると、飛ばしページ部の紙片を違和感なく無意識的に飛ばすことのできる所定の幅の切欠部を設けることとした。なお、ページフリッピングとは、ノートブックの背から小口を中心角90°又はそれより小さい角度で円弧状に湾曲させ、紙片の側縁端部が順次ずれて位置する小口部分に指を当て、指の位置をずらしながらパラパラとページを捲る行為を指す。
【0009】
具体的に、第1の発明は、
ノートブックの小口側となる側縁端部に所定幅が切り欠かれた切欠部を有する紙片をm枚積層させて構成した飛ばしページ部を備え、
前記飛ばしページ部が、前記切欠部と重なり合う位置に該切欠部が設けられていない非切欠部を有する紙片によってその前後を挟み込まれて綴じられ、
厚みaを有する紙片からなる前記ノートブックの背から小口を、中心角90°の円弧状に湾曲した際に、前記円弧の最も内周側に、前記非切欠部を有する紙片が位置し、該紙片を0枚目として、その外周側に前記切欠部を有する紙片が1枚目からm枚目まで積層され、さらにm+1枚目に前記非切欠部を有する紙片が積層されると仮定し、
円弧の内周側から数えて0枚目の前記非切欠部を有する紙片の前記側縁端部と、前記切欠部を有する1枚目の紙片の前記側縁端部とのズレ量である1層目のズレ量をd1、
円弧の内周側から数えて0枚目の前記非切欠部を有する紙片の前記側縁端部と、m+1枚目の前記非切欠部を有する紙片の前記側縁端部とのズレ量であるm+1層目のズレ量をdm+1、
前記側縁端部から前記切欠部までの幅をYとしたとき、
下記式(1)から(3)
[数1]d1=2aπ/4 ・・・(1)
[数2]dm+1=2aπ(m+1)/4 ・・・(2)
[数3](dm+1)-(d1+Y)<0 ・・・(3)
が成り立つことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、ノートブックを構成する紙片の厚みに応じて所定の幅の切欠部を設定することで、ページフリッピングした際に、飛ばしページ部を違和感なく無意識的に飛ばすことが可能となる。飛ばしページ部が違和感なく無意識的に飛ばされることで、飛ばしページ部に記載された文章や絵を隠蔽することができる。また、このように構成された切欠部を有する飛ばしページ部は、ノートブックの外観において目立たないため、飛ばしページ部が設けられていることにも気付き難くすることが可能となり、より効果的に隠蔽可能である。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、mは2以上の整数であることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、飛ばしページ部が複数枚の紙片から構成されるため、ノートブックの前後どちらからページフリッピングしても、飛ばしページ部の途中で開かれることがなく、飛ばしページ部の内側に記載された文章や絵が隠蔽される。また、飛ばしページ部の紙片よりも小さい大きさの紙片であって、ノートブックを構成する紙片と厚みが同じ又は薄い紙片を、飛ばしページ部の途中に挟み込んだ場合、ノートブックの前後どちらからページフリッピングしても、その挟み込んだ紙片を含めて飛ばしページ部が飛ばされるため、挟み込んだ紙片を隠蔽することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、
前記飛ばしページ部は、幅Y1の前記切欠部である第1切欠部を有する紙片を、m枚積層させて構成した第1飛ばしページ部と、幅Y2の前記切欠部である第2切欠部を有する紙片を、n枚積層させて構成した第2飛ばしページ部を、含み、
前記第1切欠部と前記第2切欠部は、前記側縁端部において異なる位置に形成され、
前記第1切欠部又は前記第2切欠部のいずれかが一方が形成された紙片を有し、
Y1及びY2は同じ又は異なる整数であり、m及びnは同じ又は異なる整数であり、nは2以上の整数であることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、第1切欠部の位置に指をかけてページフリッピングした場合と、第2切欠部の位置に指をかけてページフリッピングした場合とで、隠蔽される飛ばしページ部が異なるため、ページフリッピングする際の指をかける位置を利用してノートブックの使用用途を広げることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ページフリッピングをした際に、飛ばしページ部の紙片が違和感なく無意識的に飛ばされることで飛ばしページ内の記載を隠蔽可能であり、従来にはない使い方を提案可能なノートブックを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るノートブックを底面側から見た概略斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るノートブックの小口部分を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るノートブックをページフリッピングした際のイメージ図である。
【
図4】ページフリッピングの実験用治具の概略図である。
【
図5】ページフリッピングの実験方法を示す概略図である。
【
図6】切欠部を設けないノートブックを湾曲させた際に生じる紙片のズレを示す模式図である。
【
図8】切欠部を設けたノートブックを湾曲させた際に生じる紙片のズレを示す
図7相当図である。
【
図9】第2実施形態に係るノートブックを小口側から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係るノートブックについて、図面を参照しながら説明する。なお、本発明においてノートブックとは、複数の紙片を積層して綴じたものを指す広義の意味で用いており、書き込み可能な紙片からなるノート、手帳、日記帳等に限らず、絵本、書籍等、様々な印刷物を含む。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るノートブックを底面側から見た概略斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係るノートブックの小口部分を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明のノートブック1は、全て同じ厚みの紙片を複数枚積層させ、その紙片群の一方の側縁端部が綴じられて形成される。その綴じられた一方の側縁端部10を「背」という。背10の反対側に位置する他方の側縁端部11を「小口」という。なお、表紙及び裏表紙となる紙片は、他の紙片と同じ厚みでなくてもよい。
【0019】
ノートブック1は、所定幅が切り欠かれた切欠部2aを有する紙片2と、切欠部2aと重なり合う位置に切欠部2aが設けられていない非切欠部3aを有する紙片3とを備える。第1実施形態のノートブック1において、切欠部2aを有する紙片2は、2枚連続して積層させてあり、この2枚の紙片2が飛ばしページ部100を構成する。
【0020】
図1から
図3においては、説明の便宜上、切欠部2aを有する紙片2を着色して示した。紙片2と紙片3は異なる色の紙片で構成されていてもよいが、同じ色の紙片で構成すれば、飛ばしページ部100が外観において目立たず、飛ばしページ部100が設けられていることにも気付き難くすることが可能となる。
【0021】
本実施形態において、切欠部2aは、紙片2の小口側となる側縁端部11に亘って形成される。切欠部2aは、切欠部2aを有しない紙片3の小口側の側縁端部11から背に向かって所定幅Yが切り欠かれて形成される。
【0022】
飛ばしページ部100は、切欠部2aと重なり合う位置に切欠部2aが設けられていない非切欠部3aを有する紙片3によってその前後を挟み込まれて綴じられる。本実施形態では、飛ばしページ部100と非切欠部3aとが交互に連続するように紙片2,3が綴じられる。
【0023】
所定幅Yは、本発明のノートブック1を、ノートブック1の背から小口を90°より小さい中心角の円弧状に湾曲させ、紙片の小口側の側縁端部11を順次ずれて位置させ、小口部分の切欠部2aに指を当ててページフリッピングをした際に、飛ばしページ部100の紙片群が開かれることなく、違和感なく無意識的に飛ばすことのできる所定の幅である。例えば、
図3のイメージ図に示すように、ページフリッピングをすると、飛ばしページ部100の紙片2,2は、開かれることなくひと纏まりに捲られる。
【0024】
<ページフリッピング可能な厚みと幅について>
次に、ページフリッピングが可能となる紙片厚みと背から小口までの幅との関係を調査した結果について説明する。
図4は、ページフリッピングの実験用治具の概略図であり、
図5は、ページフリッピングの実験方法を示す概略図である。なお、下記実験では、紙片の大きさはA4サイズが最大であるが、この実験はページフリッピング可能な厚みと幅の一例を挙げるものであり、本発明のノートブックを構成する紙片のサイズと厚みを制限するものではない。本発明のノートブックは、下記実験によるページフリッピング可能な紙片を一例とし、様々な大きさ及び厚みの紙片を使用して構成することが可能である。
【0025】
図4に示すように、A4サイズ(210mm×297mm)の紙片100枚からなる束を、短辺が背又は小口となるように立て、実験用治具によって固定する。実験用治具は、背側となる側縁端部10を挟み込むように固定するクリップ等の背固定治具4と、小口側の側縁端部11までのページ幅Zを任意に設定できるように、紙片を固定する幅固定治具5とを有する。幅固定治具5は、紙片の表裏に配置する板状部材5aと、板状部材5aの長手方向両端部を締付けるボルト及びネジ等の固定部材5bとを備える。幅固定治具5は、紙片の束の長手方向において任意の位置で固定可能であり、幅固定治具5から小口までのページ幅Zを任意の値に設定することができる。
【0026】
図5に示すように、幅固定治具5を紙片の束の長手方向に移動させて任意のページ幅Zで固定し、背固定治具4で固定した背側の側縁端部10を片手で把持して支え、片手で小口側の側縁端部11を持ち、幅固定治具5から小口11までを中心角が約90°の円弧状に湾曲させた。そして、小口側の側縁端部11の指を円弧の外周側から内周側へ摺動させることにより、円弧の外周側の紙片から順に、円弧の反対側(
図5中矢印の方向)へ移動させた。
【0027】
厚みが0.08mm、0.09mm、0.11mm、0.15mm、0.25mmの紙片をそれぞれ100枚用意し、それぞれ幅固定治具5から小口側の側縁端部11までのページ幅Zを変化させ、滑らかにページフリッピング可能な紙片厚みと紙片幅について検討を行った。その結果を表1に示す。
【0028】
表1において、紙片が反発力により円弧の反対側へ捲れ、外周側の面と内周側の面とが両方視認可能となる場合は、ページフリッピングが可能「◎」と判断した。紙片が柔らかく反対側へ捲りにくい場合は「△」、捲り後の紙片が垂直となるが実施者の見る角度を変更すれば外周側の面と内周側の面とが両方視認可能である場合は「〇」、紙片が硬く中心角約90°まで湾曲できない場合は「×」とした。なお、この実験においては、中心角を約90°としたが、90°よりも小さい角度で湾曲させた場合も同様の結果が得られる。
【0029】
なお、上記実験において、紙片が柔らかく捲りにくいため「△」と判断したもののうち、実験用治具を用いないノートブック状に綴じた形態でページフリッピング可能であるものについては「△(△~〇)」や「△(〇)」と表記した。実際のノートブックの形態でページフリッピングを行うとき、幅固定治具5がノートブックの背となり、背を片手で把持して支える。このとき、背から約30~100mmが手で固定されることになる。そのため、「△」と判断したもののうち、ページ幅Zの小さいものから+10mm~+30mmの範囲については、ノートブックの形態で問題なくページフリッピング可能と考えられるため、「△(〇)」とした。また、「△」と判断したもののうち、ページ幅Zの小さいものから+40mm~+100mmの範囲については、ノートブック形態で、その持ち方によっては問題なくページフリッピング可能な場合もあると考えられるため「△(△~〇)」とした。
【0030】
【0031】
以上の結果から、滑らかにページフリッピング可能な背から小口までのページ幅は、厚み0.08mmの薄口の紙片の場合、40mm~270mmが好ましく、より好ましくは40mm~220mm、さらに好ましくは40mm~150mm、最も好ましくは90mm~120mmである。厚み0.09mmの中厚口の紙片の場合、40mm~270mmが好ましく、より好ましくは40mm~240mm、さらに好ましくは40mm~160mm、最も好ましくは110mm~130mmである。厚み0.11mmの厚口の紙片の場合、60mm~270mmが好ましく、より好ましくは60mm~250mm、さらに好ましくは60mm~180mm、最も好ましくは120mm~150mmである。厚み0.15の特厚口の紙片の場合、80mm~270mmが好ましく、より好ましくは80mm~230mm、さらに好ましくは150mm~200mmである。厚み0.25の超厚口の紙片の場合、140mm~270mmが好ましく、より好ましくは190mm~270mmである。
【0032】
<切欠部の幅>
次に、このようなページフリッピングにおいて、飛ばしページ部100の紙片群が開かれることなく、違和感なく無意識的に飛ばすことのできる切欠部2aの幅Yの求め方について説明する。
【0033】
まず、切り欠きを設けない場合について、
図6及び
図7に基づいて、同一の大きさ且つ同一の厚みの紙片を複数枚積層させたノートブックを湾曲させた際に紙片の端部に生じるズレ量について説明する。
図6は、ノートブックを湾曲させた際に生じる紙片のズレを示す模式図である。
図6に示すように、厚みtを有する複数の紙片からなるノートブックの背から小口を、中心角90°の円弧状に湾曲し、ノートブックの上端部側又は下端部側からその円弧の中心線に沿って見た際に、該中心角90°の円弧と、円弧の内周側から数えて1層目の紙片の前記側縁端部とのズレ量をd
1、該中心角90°の円弧と、円弧の内周側から数えてn層目の紙片の前記側縁端部とのズレ量をd
nとする。1層目とは、
図6及び
図7において、湾曲させたノートブックの内周側から数えて1枚目の紙片と2枚目の紙片の間の層である。ズレ量d
1は、内周側から数えて2枚目の紙片の内周側の円弧長と1枚目の紙片の外周側の円弧長との差、と考えても良い。そして、その中心角90°の円弧の半径r、円弧長をLrとすると、Lrについて次式が成り立つ。なお、
図6において、Lrは紙片のうち最も内周側に位置する1枚目の紙片の外周側の円弧長である。
【0034】
[数1]Lr=2rπ/4
各紙片の側縁端部のズレ量は、該中心角90°の円弧長Lrと比較した際の円弧長の差であり、d1及びdnについて下記式が成り立つ。
【0035】
[数2] d1=2(r+t)π/4-Lr=2tπ/4 ・・・(1)
[数3] dn=2(r+tn)π/4-Lr=2tnπ/4
ページフリッピングの際、上記のような紙片のズレが生じることを考慮すると、間に挟まれた紙片群を引っ掛かりなく飛ばすためには、その間に挟まれた紙片群のズレ量以上の幅の切り欠きを設ける必要がある。すなわち、1層目からn層目までの紙片を飛ばしページ部100として飛ばすために必要なページ幅Xは、1層目とn層目のズレ量の差(円弧長の差)であり、下記式が成り立つ。
【0036】
[数4] X=dn-d1
上記の計算方法より、紙片の各種厚みに対応する、飛ばしページ部100を構成できる積層枚数n、及び、飛ばしページ群100を飛ばすために必要なn層目の1層目とのページ幅の差Xは、表2に示す結果となる。
【0037】
【0038】
次に、切欠部を設けた場合の、ノートブックを湾曲させた際に生じる紙片のズレについて説明する。
図8は、切欠部を設けたノートブックを湾曲させた際の端部を示す
図7相当図である。側端部から幅Yを切り欠いて形成した切欠部2aを設けた紙片2をm枚積層させて構成した飛ばしページ部100の両側に、切欠部2aを設けない非切欠部3aを有する紙片3を積層し、0枚目とn枚目が非切欠部3aを有する紙片3であると仮定する。ノートブックを円弧状に湾曲させると、円弧の最も内周側に、非切欠部3aを有する紙片3が位置し、その紙片3を0枚目として、その外周側に切欠部2aを有する紙片2が1枚目からm枚目まで積層され、さらにm+1枚目に非切欠部3aを有する紙片3が積層される。円弧の内周側から数えて0枚目の紙片3の側縁端部と、1枚目の紙片2の側縁端部とのズレ量である1層目のズレ量がd
1となる。0枚目は考慮せず、1層目からn層目までの飛ばしページ部100のズレ量を考慮すると、d
n<(1層目のズレ量と切欠部の幅Yの和)を満たす場合に飛ばしページ部100を飛ばすことができるため、下記式が成り立つ。
【0039】
[数5] dn<d1+Y
n枚目の紙片3は、この場合、紙片2からの枚数を数えるとm+1枚目であるので、円弧の内周側から数えて0枚目の紙片3の側縁端部と、m+1枚目の紙片3の側縁端部とのズレ量であるm+1層目のズレ量はdm+1であり、上記[数2]においてn=m+1とすると、下記式(2)が成り立つ。
【0040】
[数6] dm+1=2tπ(m+1)/4 ・・・(2)
これを上記[数5]に当てはめると下記式(3)が成り立つ。
【0041】
[数7] (dm+1)-(d1+Y)<0 ・・・(3)
以上より、式(1)、式(2)及び(3)を満たすとき、ページフリッピングにおいて飛ばしページを開くことなく、違和感なく無意識的に飛ばすことが可能となる。
【0042】
上記計算式を用い、5種類の厚みの紙片について、それぞれ切欠部2aの幅Yを0.5mmから3.0mmとした場合に設定可能な紙片2の枚数を、表3から表8に示す。表3から表8において、紙片の厚みと枚数の組み合わせによって、0より小さい値となるとき、その枚数が積層された紙片2群を飛ばしページ部として、ページフリッピングすることが可能となる。なお、表3から表8は計算による結果であるが、実際に検証を行い、計算結果と同様に上記式(3)を満たす枚数及び切欠部幅のとき、ページフリッピングが可能であることを確認した。
【0043】
例えば、表3に示すように、厚み0.09mmの中厚口の紙片を用いてノートブックを作成した場合、紙片2に側縁端部から0.5mmの切欠部を設けると、紙片2を3枚まで積層してページ飛ばし部を構成可能であり、このように構成したノートブックにおいてページフリッピングをすると、ページ飛ばし部を違和感なく無意識的に飛ばすことができる。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
以上のように構成したノートブックによれば、紙片の厚みに応じて所定の幅の切欠部を設定することで、ページフリッピングした際に、飛ばしページ部を違和感なく無意識的に飛ばすことが可能となる。飛ばしページ部が違和感なく無意識的に飛ばされることで、飛ばしページ部に記載された文章や絵を隠蔽することができる。また、このように構成された切欠部を有する飛ばしページ部は、ノートブックの外観において目立たないため、飛ばしページ部が設けられていることにも気付き難くすることが可能となり、より効果的に隠蔽可能である。
【0051】
例えば、飛ばしページ部以外の紙片に物語の本編を印刷し、本編の間に飛ばしページ部を設け、飛ばしページ部には本編では語られなかったサイドストーリーや裏話、番外編などを印刷しておくことが可能である。本編を読む際には、飛ばしページ部が無意識的に飛ばされるため、そのサイドストーリー等の存在に気付き難いが、本編を読み終わった後に、飛ばしページ部となっていた箇所を見つけて読むことで、その物語の世界観が広がり、より奥深い作品になり得る。
【0052】
そして、飛ばしページ部を複数枚の紙片から構成すれば、ノートブックの前後どちらからページフリッピングしても、飛ばしページ部の途中で開かれることがなく、飛ばしページ部の内側に記載された文章や絵が隠蔽される。また、飛ばしページ部の紙片よりも小さい大きさの紙片であって、ノートブックを構成する紙片と厚みが同じ又は薄い紙片を、飛ばしページ部の途中に挟み込んだ場合、ノートブックの前後どちらからページフリッピングしても、その挟み込んだ紙片を含めて飛ばしページ部が飛ばされるため、挟み込んだ紙片を隠蔽することができる。
【0053】
例えば、日記帳の中に飛ばしページを設け、その飛ばしページの中に他の人に読まれたくない内容や、隠しておきたい紙片を挟むことができる。飛ばしページの存在を知らない人が、ページフリッピングをした場合、その隠しておきたい内容や紙片が飛ばしページとともに飛ばされるため、気付かれ難い。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態のノートブックについて説明する。
図9は、第2実施形態に係るノートブックを小口側から見た概略斜視図である。以下の説明において、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。第2実施形態のノートブック1’は、全て同じ厚みの紙片を複数枚積層させ、その紙片群の一方の側縁端部が綴じられて形成される。なお、表紙及び裏表紙となる紙片は、他の紙片と同じ厚みでなくてもよい。
【0055】
第2実施形態のノートブック1’は、例えば、幅Y1の切欠部である第1切欠部2bを有する紙片を、m枚積層させて構成した第1飛ばしページ部101と、幅Y2の切欠部である第2切欠部2cを有する紙片を、n枚積層させて構成した第2飛ばしページ部102を、備えることも可能である。第1飛ばしぺージ部101及び第2飛ばしページ部102の両側には、切欠部2b,2cを設けない非切欠部3aを有する紙片が積層される。第1切欠部2bと第2切欠部2cは、小口側の側縁端部11における異なる位置に形成され、それぞれ所定の幅で形成される。Y1及びY2は同じ又は異なる整数であり、m及びnは同じ又は異なる整数であり、nは2以上の整数である。
【0056】
本実施形態のノートブック1’は、第1切欠部2b及び第2切欠部2cのいずれも形成されていない紙片20と、第1切欠部2b又は第2切欠部2cのいずれかが一方が形成された紙片21と、第1切欠部2b及び第2切欠部2cのいずれも形成されている紙片22を含む。
図9では、第1切欠部2bが設けられた紙片が4枚連続して積層されて第1飛ばしページ部101を構成し、非切欠部3aと第1飛ばしページ部101が交互に積層される。また、第2切欠部2cが設けられた紙片が3枚連続して積層されて第2飛ばしページ部102を構成し、非切欠部3aと第2飛ばしページ部102が交互に積層される。
【0057】
このように構成したノートブック1’によれば、第1切欠部2bの位置に指をかけてページフリッピングした場合と、第2切欠部2cの位置に指をかけてページフリッピングした場合とで、隠蔽される飛ばしページ部が異なるため、ページフリッピングする際の指をかける位置を利用してノートブックの使用用途を広げることが可能となる。
【0058】
本発明は、上記第1実施形態及び第2実施形態に限定されることなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、飛ばしページ部100,101,102と非切欠部3aは必ずしも規則的に連続して綴じられる必要はなく、飛ばしページ部100,101,102が設けられる箇所や数、非切欠部3aの数に制限はない。例えば、飛ばしページ部100、101,102は1箇所であってもよい。また、例えば、未加工の紙片50枚、飛ばしページ部を含む紙片50枚、未加工の紙片50枚の計150枚で構成されるノートブックのように、ノートブックの一部分に切り欠き部を備える飛ばしページ部を備えてもよい。上記実施形態のように、1冊のノートブックが全て同じ厚みの紙片から構成されることは限定事項ではない。例えば、種類や厚みの異なる紙片A,B,Cをそれぞれ50枚ずつ積層させ、計150枚の紙片から構成されるノートブックを作製した際、紙片A,B,Cからなる紙片群それぞれにおいて、読み飛ばし可能な飛ばしページ部を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,1’ ノートブック
2 紙片
2a,2b,2c 切欠部
3 紙片
3a 非切欠部
4 背固定治具
5 幅固定治具
5a 板状部材
5b 固定部材
10 側縁端部(背)
11 側縁端部(小口)
100,101,102 飛ばしページ部