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特開2024-7512パルプモールド容器、その製造方法及びそのオーブン又は電子レンジで加熱可能なインスタント食品を盛るための用途
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  • 特開-パルプモールド容器、その製造方法及びそのオーブン又は電子レンジで加熱可能なインスタント食品を盛るための用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007512
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】パルプモールド容器、その製造方法及びそのオーブン又は電子レンジで加熱可能なインスタント食品を盛るための用途
(51)【国際特許分類】
   D21J 3/00 20060101AFI20240110BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20240110BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20240110BHJP
   D21J 5/00 20060101ALI20240110BHJP
   D21J 7/00 20060101ALI20240110BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D21J3/00
D21H11/18
D21H15/02
D21J5/00
D21J7/00
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108486
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】111124630
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523250957
【氏名又は名称】聯盟包裝企業股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】INTLPAK ENTERPRISES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No. 11, Gongye N. 5th Rd., Nantou City, Nantou County 54066, Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】莊素珠
【テーマコード(参考)】
3E086
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AD06
3E086BA02
3E086BA14
3E086BB01
3E086CA01
3E086DA08
4L055AF09
4L055AF15
4L055AF46
4L055AG04
4L055AG05
4L055AG10
4L055AG17
4L055AG19
4L055AG25
4L055AG26
4L055AG27
4L055AG40
4L055AG43
4L055AG44
4L055AG46
4L055AG47
4L055AG48
4L055AG51
4L055AG53
4L055AG54
4L055AG56
4L055AG64
4L055AG70
4L055AG71
4L055AG82
4L055AG85
4L055BA11
4L055BB03
4L055BE08
4L055BF06
4L055CA09
4L055CB11
4L055CJ06
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA10
4L055EA12
4L055EA14
4L055EA16
4L055EA20
4L055EA32
4L055EA40
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】熱油の浸透を防止し、低通気性となるように制御可能であるとともに異物による汚染を防止するように封止可能なパルプモールド容器、その製造方法及びその用途を提供する。
【解決手段】パルプモールド容器の製造方法は、長繊維パルプ及び短繊維パルプを含む主材を提供する工程と、パルプ離解工程と、パルプ化工程と、添加物添加工程と、熱圧縮成形工程と、を含むことで、主材がフィブリル化されて十分なデンプン糊化程度に達するようにし、パルプモールド容器の熱圧縮成形に役立ち、添加物は、ナノセルロース及び/又はデンプンの特殊加工プロセスを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主材100重量百分率に基づいて1重量百分率~99重量百分率である長繊維パルプ、及び短繊維パルプを含む主材を提供する工程と、
前記主材を水中に均一に分散させ、パルプ水溶液を形成するパルプ離解工程と、
前記パルプ水溶液を機械的にフィブリル化し、フィブリル化パルプを形成するパルプ化工程と、
前記主材100重量百分率に基づいて添加量が0.1重量百分率~30重量百分率であるナノセルロース及び/又は添加量が1重量百分率~50重量百分率であるデンプンを含む添加物を、前記フィブリル化パルプに添加して混合し、パルプモールド用パルプを形成する添加物添加工程と、
前記パルプモールド用パルプを熱圧縮によって成形し、パルプモールド容器を形成する熱圧縮成形工程と、
を含むパルプモールド容器の製造方法。
【請求項2】
前記ナノセルロースは、ナノ繊維セルロース、ナノセルロース結晶又はバクテリアナノセルロースであり、前記デンプンは、天然デンプン又は加工デンプンである請求項1に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項3】
前記添加物は、無機物及び/又はポリマーを更に含み、前記ポリマーは、前記ナノセルロース及び前記デンプンを含まない請求項1に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項4】
前記無機物は、炭酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、貝殻粉末、ケイ酸カルシウム、カオリン、雲母、ホウ砂、ケイ藻土、リン灰石、タルク、二酸化チタン、アルミニウム化合物及びそれらの混合物を含み、前記ポリマーは、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシオクタノエート、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、キサンタンガム、セルロース誘導体、動物性膠、植物性膠、キチン質、タンパク質、ポリオレフィン繊維、無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、ワックススラリー、ポリ(エチレン-2,5-フラノエート)、水性アクリル、アルキルケテンダイマー、ポリ塩化アルミニウム又はそれらの混合物を含む請求項3に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項5】
前記主材100重量百分率に基づいて、前記無機物の添加量は1重量百分率~10重量百分率であり、前記ポリマーの添加量は0.1重量百分率~20重量百分率である請求項4に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項6】
第1塗布剤及び/又は第2塗布剤を前記パルプモールド容器の表面に塗布する塗布工程を更に含む請求項1に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項7】
前記第1塗布剤及び前記第2塗布剤は、それぞれ炭酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、貝殻粉末、ケイ酸カルシウム、カオリン、雲母、ホウ砂、ケイ藻土、リン灰石、タルク、二酸化チタン、アルミニウム化合物、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシオクタノエート、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、キサンタンガム、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、動物性膠、植物性膠、キチン質、タンパク質、ポリオレフィン繊維、無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、ワックススラリー、ポリ(エチレン-2,5-フラノエート)、水性アクリル、アルキルケテンダイマー、ポリ塩化アルミニウム又はそれらの混合物を含み、前記第1塗布剤と前記第2塗布剤は同じ又は異なる請求項6に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項8】
前記主材100重量百分率に基づいて、前記第1塗布剤の塗布量は0.1重量百分率~40重量百分率であり、前記第2塗布剤の塗布量は0.1重量百分率~40重量百分率である請求項6に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項9】
前記熱圧縮成形工程の前に、前記パルプモールド用パルプを100℃超で1秒間以上予熱して、プレデンプン糊化パルプモールド用パルプを得るプレデンプン糊化工程を更に含む請求項1に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項10】
前記熱圧縮成形工程において、前記プレデンプン糊化パルプモールド用パルプを100℃以上で10秒間以上熱圧縮して糊化反応させて賦型し、前記パルプモールド容器を得る請求項9に記載のパルプモールド容器の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のパルプモールド容器の製造方法により製造され、定量ガス通気性試験の秒数が20%超向上したパルプモールド容器。
【請求項12】
前記パルプモールド容器は、封止可能性及び易開封性を有し、易開封引張力値が50グラム~1200グラムである請求項11に記載のパルプモールド容器。
【請求項13】
前記パルプモールド容器は、高温耐油性を有する請求項11に記載のパルプモールド容器。
【請求項14】
冷蔵又は冷凍保存されるか及び/又は電子レンジ又はオーブンで加熱されてから食べられるインスタント食品を盛るための請求項11に記載のパルプモールド容器の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールド容器、その製造方法及びその用途に関し、特に、熱油の浸透を防止し、低通気性となるように制御可能であるとともに封止可能なパルプモールド容器及びその製造方法、並びにそのオーブン又は電子レンジで加熱可能なインスタント食品を盛るための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の概念が各国に重視されつつあるにつれて、全世界でバイオマス再生エネルギーの使用を唱え、材料を分解・回収可能にし、プラスチック製品の使用を減少することは、既に多くの国の共通の目標となっている。しかしながら、食品関連分野において、プラスチック容器は依然として食べ物を盛るためによく用いられる材料であり、プラスチックが良好なガスバリア性、高温耐油性、加熱・封止可能性及び防水性を有し、且つ価格が低く、現段階でプラスチック以外に上記要求を満たすことができる他の材料がないため、現在、市販のマイクロウェーブオーブン用のインスタント食品の包装容器は、プラスチック容器しかない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、食べ物を短時間だけ盛るためのパルプモールド容器が多く市販されているが、よく見られるパルプモールド容器のガスバリア性及び油バリア性が比較的低く、オーブン又は電子レンジによる加熱時にその耐油性を維持することも困難であるため、パルプモールド容器は、食品を盛る点でまだ制限されている。ファストフード店及びスーパーのインスタント食品の包装容器は、多く必要とされ、使い捨てであり、性能要求が複雑であるため、パルプモールド製品を使用することはない。なお、従来のパルプモールド容器は、全て汚染を防止するようにヒートシールにより密閉することができず、市販のインスタント食品を長時間盛る用途として用いられることができない。現在の改良手法としては、パルプモールド容器にプラスチック膜を貼り付けることであるが、この手法ではプラスチックの含有量が依然として高く且つ材料が高価であり、回収しにくい問題も引き起こされる。
【0004】
インスタント食品に対して新鮮性が要求されるため、その保存可能期間(shelf life)は、通常、2~10日間であるため、インスタント食品の包装設計は、金属、ガラス、プラスチック及び紙類で複合されたバリア性を有する包材容器を使用する必要がなくなり、コストを余りにも多く増加させない前提で、直接パルプのプロセスで少量の添加剤を添加するパルプモールド容器を開発し、耐油、低通気性の特性に達することができ、このように、環境保護の持続可能性の要件に合致することもでき、現在、インスタント食品を盛る容器を製造するための、環境保護の要件を満たす材料がまだないという技術課題を解決する。
【0005】
以上を纏めると、生産可能で、良好なガスバリア性能及び耐油性能を有し、且つ高温で使用可能で環境保護の要件に合致するパルプモールド容器及びその製造方法の開発は、非常に肝心になっている。
【0006】
本発明は、分解可能で、紙類として回収可能であり、プラスチックを置き換え可能であるか又はプラスチックの量を削減可能である環境保護材料又は再生材料で製造された、電子レンジ又はオーブン用のインスタント食品のパルプモールド容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、主材100重量百分率に基づいて1重量百分率~99重量百分率である長繊維パルプ、及び短繊維パルプを含む主材を提供する工程と、主材を水中に均一に分散させ、パルプ水溶液を形成するパルプ離解工程と、パルプ水溶液を機械的にフィブリル化し、フィブリル化パルプを形成するパルプ化工程と、主材100重量百分率に基づいて添加量が0.1重量百分率~30重量百分率であるナノセルロース及び/又は添加量が1重量百分率~50重量百分率であるデンプンを含む添加物を、フィブリル化パルプに添加して混合し、パルプモールド用パルプを形成する添加物添加工程と、パルプモールド用パルプを熱圧縮によって成形し、パルプモールド容器を形成する熱圧縮成形工程と、を含むパルプモールド容器の製造方法を提供する。
【0008】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、前記ナノセルロースは、ナノ繊維セルロース、ナノセルロース結晶又はバクテリアナノセルロースであってよく、前記デンプンは、天然デンプン又は加工デンプンであってよい。
【0009】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、添加物は、少なくとも1つの無機物及び/又はポリマーを更に含んでよく、前記ポリマーは、ナノセルロース及びデンプンを含まない。
【0010】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、無機物は、炭酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、貝殻粉末、ケイ酸カルシウム、カオリン、雲母、ホウ砂、ケイ藻土、リン灰石、タルク、二酸化チタン、アルミニウム化合物及びそれらの混合物を含んでよく、ポリマーは、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシオクタノエート、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、キサンタンガム、セルロース誘導体、動物性膠、植物性膠、キチン質、タンパク質、ポリオレフィン繊維、無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、ワックススラリー、ポリ(エチレン-2,5-フラノエート)、水性アクリル、アルキルケテンダイマー、ポリ塩化アルミニウム又はそれらの混合物を含んでよい。
【0011】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、主材100重量百分率に基づいて、無機物の添加量は1重量百分率~10重量百分率であってよく、ポリマーの添加量は0.1重量百分率~20重量百分率である。
【0012】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、第1塗布剤及び/又は第2塗布剤をパルプモールド容器の表面に塗布する塗布工程を更に含んでよい。
【0013】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、第1塗布剤及び第2塗布剤は、それぞれ炭酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、貝殻粉末、ケイ酸カルシウム、カオリン、雲母、ホウ砂、ケイ藻土、リン灰石、タルク、二酸化チタン、アルミニウム化合物、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシオクタノエート、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、キサンタンガム、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、動物性膠、植物性膠、キチン質、タンパク質、ポリオレフィン繊維、無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、ワックススラリー、ポリ(エチレン-2,5-フラノエート)、水性アクリル、アルキルケテンダイマー、ポリ塩化アルミニウム又はそれらの混合物を含んでよく、第1塗布剤と第2塗布剤は同じ又は異なってもよい。
【0014】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、主材100重量百分率に基づいて、第1塗布剤の塗布量は0.1重量百分率~40重量百分率であってよく、第2塗布剤の塗布量は0.1重量百分率~40重量百分率であってよい。
【0015】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、熱圧縮成形工程の前に、パルプモールド用パルプを100℃以上で1秒間以上予熱して、プレデンプン糊化パルプモールド用パルプを得るプレデンプン糊化工程を更に含んでよい。
【0016】
前述した実施形態のパルプモールド容器の製造方法によれば、熱圧縮成形工程において、プレデンプン糊化パルプモールド用パルプを100℃以上で10秒間以上熱圧縮して糊化反応させて賦型し、パルプモールド容器を得てよい。
【0017】
それにより、本発明のパルプモールド容器の製造方法は、ナノセルロース及び/又はデンプンを主な添加物とし、高温耐油性、低通気性、封止可能性及び易開封特性を有するパルプモールド容器を製造することができる。
【0018】
本発明の別の態様は、前述したパルプモールド容器の製造方法により製造され、定量ガス通気性試験の秒数が20%超向上したパルプモールド容器を提供する。
【0019】
前述した実施形態のパルプモールド容器によれば、前記パルプモールド容器は、封止可能性及び易開封性を有してよく、易開封引張力値が50グラム~1200グラムである。
【0020】
前述した実施形態のパルプモールド容器によれば、前記パルプモールド容器は、高温耐油性を有してよい。
【0021】
それにより、本発明のパルプモールド容器は、冷蔵又は冷凍保存されるか及び/又は電子レンジ又はオーブンで加熱されてよいインスタント食品を盛るために適用可能である。
【0022】
本発明の更なる態様は、冷蔵又は冷凍保存されるか及び/又は電子レンジ又はオーブンで加熱されてから食べられるインスタント食品を盛るためのパルプモールド容器の用途を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パルプモールド容器の製造方法において、フィブリル化パルプにナノセルロース及び/又はデンプンなどの添加物を添加することで、パルプモールド容器が高温耐油性及び低通気性の効果を有し、現在のパルプモールド容器の高熱油浸透耐性を向上させることができ、且つインスタント食品の包装が備える必要のある機能に合致し、更にパルプモールド容器を食品又は液体の盛り、保存及び加熱に適用し、同時にプラスチック包装容器が高温時に手に火傷をするほど熱くなる問題を解決することができ、現在のインスタント食品用のプラスチック容器を置き換えることができるため、使い捨てプラスチック容器のプラスチック削減対策とされてよい。
【0024】
下記の添付図面についての説明は、本発明の上記と他の目的、特徴、メリットと実施例をより明らかで分かりやすくするためのである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態の一実施例によるパルプモールド容器の製造方法を示す工程フローチャートである。
図2】本発明の一実施形態の別の実施例によるパルプモールド容器の製造方法を示す工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の複数の実施例を説明する。明確に説明するために、多くの実際的な細部を下記叙述で合わせて説明する。しかしながら、理解すべきなのは、これらの実際的な細部が、本発明を制限するように適用されるものではない。つまり、本発明の一部の実施例において、これらの実際的な細部は必要なものではない。また、図面を簡略化するために、一部の従来慣用の構造及び素子は、図面において簡単で模式的に示され、重複する素子は、同じ符号で表される場合がある。
【0027】
図1を参照されたく、図1は、本発明の一実施形態の一実施例によるパルプモールド容器の製造方法100を示す工程フローチャートである。パルプモールド容器の製造方法100は、工程110、工程120、工程130、工程140及び工程150を含む。
【0028】
工程110は、主材を提供する工程であり、詳しくは、主材は、長繊維パルプ及び短繊維パルプを含み、主材100重量百分率に基づいて、長繊維パルプは1重量百分率~99重量百分率であり、好ましくは、長繊維パルプは10重量百分率~50重量百分率であってよい。一般的には、長繊維パルプは主に製品の引張耐性に影響を与え、短繊維パルプは主に製品の均一性に影響を与えるため、主材における長繊維パルプと短繊維パルプの割合を制御することで必要とされる製品性質を得ることができる。
【0029】
工程120は、主材を水中に均一に分散させ、パルプ水溶液を形成するパルプ離解工程である。
【0030】
工程130は、パルプ水溶液を機械的にフィブリル化し、フィブリル化パルプを形成するパルプ化工程である。詳しくは、フィブリル化とは、パルプ水溶液に含まれる繊維の細胞壁に毛羽立ち、引き裂き、糸分けなどの現象が発生することを指し、それによりパルプ水溶液が柔軟性及び可塑性を有するようになり、繊維間の結合力を高めることができる。具体的には、工程130において、フィブリル化パルプの濾水度が300~600の間に達するように、パルプ水溶液にパルプ化を複数回行ってよいが、本発明はこれに限定されない。
【0031】
より詳しくは、濾水度は、パルプの濾水性能を測定するために用いることができ、濾水度がパルプのパルプ化程度に関連するため、本発明のパルプモールド容器の製造方法100は、パルプ水溶液にパルプ化を複数回行うことで濾水度を所望の範囲に高め、フィブリル化パルプの濾水性能を調整することができる。
【0032】
工程140は、添加物をフィブリル化パルプに少量で直接添加して混合し、パルプモールド用パルプを形成する添加物添加工程であり、上記パルプモールド用パルプは、コストが低く、大量生産の要件を満たす。添加物は、ナノセルロース及び/又はデンプンを含み、主材100重量百分率に基づいて、ナノセルロースの添加量は0.1重量百分率~30重量百分率であり、デンプンの添加量は1重量百分率~50重量百分率である。詳しくは、ナノセルロースは、高い機械的強度、調整可能な表面化学性質、結晶化度、バリア性及び生分解性を有し、ナノ繊維セルロース(nano cellulose fibril;NCF)、ナノセルロース結晶(cellulose nanocrystal;CNC)又はバクテリアナノセルロース(bacterial nanocellulose;BNC)であってよい。上記デンプンは、天然デンプン又は加工デンプンであってよく、加工デンプンは、変性デンプン、カチオン化デンプン又は両性デンプンであってよく、後でデンプン糊化程度を制御することで高温耐油特性及びガスバリア特性の目的を達成することができる。
【0033】
また、デンプンの糊化度及びデンプンとナノ炭素繊維の添加量には、全て限界があり、過剰に添加してはならないため、通気性を低下させ、封止可能性及び易開封性又は高温耐油性を向上させるような、所望のパルプモールド容器の効能強度の異なりに応じて、添加物に無機物又は/及びポリマーを更に含んでよく、添加物にはMF300などの耐油剤を添加してもよい。上記無機物は、炭酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、貝殻粉末(例えば抗菌性貝殻粉末であってよい)、ケイ酸カルシウム、カオリン、雲母、ホウ砂、ケイ藻土、リン灰石、タルク、二酸化チタン、アルミニウム化合物(例えば硫酸アルミニウム、酸化アルミニウムなど)及びそれらの混合物を含んでよい。上記ポリマーは、ナノセルロース及びデンプンを含まず、生分解性ポリマーであってもよく、又は非生分解性ポリマーであってもよく、生分解性ポリマーは、石油ベース(oil-base)合成ポリマー、バイオマスベース(biomass-based)合成ポリマー、微生物発酵ポリマー、天然物ポリマーを含み、更に、上記ポリマーは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(poly-butyleneadipate-co-terephthalate;PBAT)、ポリブチレンサクシネート(polybutylene-succinate;PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(polybutylene succinate adipate;PBSA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone;PCL)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、ポリ乳酸(polylactide;PLA)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid;PGA)、ポリヒドロキシオクタノエート(poly-hydroxyoctanoate;PHO)、ポリヒドロキシアルカノエート(poly-hydroxyalkanoates;PHA)、ポリヒドロキシブチレート(poly-hydroxybutyrate;PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)[poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate);PHBV]、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド(p-hydroxybenzoic acid;PHBH)、キサンタンガム、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、或いは、ビール残渣又はバガスに由来してよい)、動物性膠(例えばゼラチン)、植物性膠(例えばペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、海藻ゲル、ロジン)、キチン質(例えばキトサン)、タンパク質(例えばホエータンパク質、カゼイン、アルブミン、大豆タンパク質溶解物)、ポリオレフィン繊維、無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン(polyurethane;PU)、ワックススラリー、ポリ(エチレン-2,5-フラノエート)(poly(ethylene 2,5-furanoate);PEF)、水性アクリル、アルキルケテンダイマー(alkyl ketene dimer;AKD)、ポリ塩化アルミニウム(poly aluminium chlorohydrate;PAC)又はそれらの混合物を含んでよい。また、主材100重量百分率に基づいて、上記ポリマーの添加量は0.1重量百分率~20重量百分率であってよく、無機物の添加量は1重量百分率~10重量百分率であってよい。
【0034】
詳しくは、前述した添加物は、何れも組織が緻密であるか又は粒子が小さい材料であるため、前述した添加物を含有するパルプモールド用パルプで製造されたパルプモールド容器は、高温耐油性及び低い通気性を有し、これは、パルプモールド容器における元々ガス及び油が通過可能な隙間が前述した添加物の細い粒子により塞がれ、ガス又は油がパルプモールド容器を通過する時に「バイパス効果」が発生し、即ち、ガス又は油がパルプモールド容器を透過するためにより長い経路を経由する必要がある。なお、膠類は、強度を増やすためにパルプ繊維のバインダ(binder)としてもよく、パルプ原料の使用コストを削減することができる。従って、本発明のパルプモールド容器の製造方法100により製造されたパルプモールド容器は、優れたガスバリア効果と油バリア効果を有することができる。
【0035】
工程150は、パルプモールド用パルプを熱圧縮によって成形し、パルプモールド容器を形成する熱圧縮成形工程である。詳しくは、本発明は、パルプモールド容器の外観又は構造設計に限定されず、その構造がガスと油を効果的にバリアするように食品又は液体を盛ることができればよい。
【0036】
図2を参照されたく、図2は、本発明の一実施形態の別の実施例によるパルプモールド容器の製造方法200を示す工程フローチャートである。パルプモールド容器の製造方法200は、工程210、工程220、工程230、工程240、工程250、工程260及び工程270を含み、工程210、工程220、工程230及び工程240は、図1のパルプモールド容器の製造方法100の工程110、工程120、工程130及び工程140と同じであるため、ここで繰り返して説明しない。
【0037】
工程250は、工程210~工程240を経て得られたパルプモールド用パルプを100℃以上で1秒間以上予熱して、プレデンプン糊化パルプモールド用パルプを得るプレデンプン糊化工程であり、工程250により処理された後のプレデンプン糊化パルプモールド用パルプの含水率は約50%~90%であり、これは肝心な技術であり、デンプンの完全糊化度及び速度に影響を与えるが、大量生産のニーズに影響を与えず、その予熱時間及び温度が機械によって異なる。
【0038】
工程260は、プレデンプン糊化パルプモールド用パルプを100℃以上で10秒間以上熱圧縮して糊化反応させて賦型し、パルプモールド容器を得る熱圧縮成形工程であり、賦型後に更に乾燥されてもよく、工程260の処理を経て完全に糊化した後のパルプモールド容器の含水率は約5%~10%である。
【0039】
工程270は、第1塗布剤及び/又は第2塗布剤をパルプモールド容器の表面に塗布する塗布工程である。詳しくは、第1塗布剤及び第2塗布剤は、それぞれ炭酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、貝殻粉末(例えば抗菌性貝殻粉末)、ケイ酸カルシウム、カオリン、雲母、ホウ砂、ケイ藻土、リン灰石、タルク、二酸化チタン、アルミニウム化合物(例えば硫酸アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシオクタノエート、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、キサンタンガム、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、動物性膠、植物性膠、キチン質、タンパク質、ポリオレフィン繊維、無水マレイン酸ポリマー、ポリウレタン、ワックススラリー、ポリ(エチレン-2,5-フラノエート)、水性アクリル、アルキルケテンダイマー、ポリ塩化アルミニウム又はそれらの混合物を含み、第1塗布剤と第2塗布剤は同じ又は異なってもよい。主材100重量百分率に基づいて、第1塗布剤の塗布量は0.1重量百分率~40重量百分率であってよく、第2塗布剤の塗布量は0.1重量百分率~40重量百分率であってよい。
【0040】
具体的には、第1塗布剤及び第2塗布剤は、乾燥後に緻密な構造を有するため、ガス又は液体は、第1塗布剤及び/又は第2塗布剤で形成された塗布層を透過しにくく、それによりパルプモールド容器のガスバリア効果及び油バリア効果を更に補強することができる。
【0041】
本発明の別の態様は、前述したパルプモールド容器の製造方法100又はパルプモールド容器の製造方法200により製造され、添加物によりパルプモールド容器の微細孔を塞ぐことで定量ガス通気性試験の秒数が20%超向上したパルプモールド容器を提供する。好ましくは、添加物添加工程における添加物がポリマー及び/又は無機物を更に含む場合、バイパス効果によって添加物がパルプモールド容器の微細孔を塞ぎ、更にパルプモールド容器の定量ガス通気性試験の秒数が1.5倍超向上した。より好ましくは、パルプモールド容器の製造方法に塗布工程が含まれる場合、製造されたパルプモールド容器は、パルプモールド容器の微細孔を塞ぐことができる塗布層を含み、パルプモールド容器の定量ガス通気性試験の秒数が32倍超向上した。
【0042】
具体的には、下記表1を参照されたく、表1は、異なる配合及び/又はプロセスにより本発明のパルプモールド容器を製造する場合に達成できる異なる特性の要件である。◎は、結果が優れていることを表し、○は、結果が良好であることを表し、Δは、結果が普通であることを表し、×は、結果が悪いことを表す。また、比較例1は、添加物が添加されていないパルプモールド容器であり、比較例2は、非パルプモールドの板紙折り畳み容器であり、比較例3は、対照比較とされるプラスチック類容器である。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の比較結果から分かるように、本発明のパルプモールド容器の製造方法により製造されたパルプモールド容器は、高温耐油性、低通気性、封止可能性及び易開封性を有するため、インスタント食品を盛るために用いることができ、且つインスタント食品は、冷蔵又は冷凍保存されてよく、及び/又は更に電子レンジ又はオーブンで加熱されてから食べられてよい。本発明のパルプモールド容器の製造方法によれば、特別な添加物を添加することで、パルプモールド容器の強度と靱性を改善することができるため、紙コップ及び/又は紙コップの蓋の製造に用いることができ、紙コップ及び紙コップの蓋が使用中に開閉する時に変形しにくくし、漏れ問題を引き起こしにくくする。また、一般的な紙容器に熱いスープや油などの液体が盛られた場合に浸透や漏れの問題があるため、食品の配達には全てプラスチック袋を使用しているが、プラスチック袋の殆どには、熱い液体の盛りに適しない可塑剤が含有されている。本発明のパルプモールド容器は、特に熱いスープ、熱い油を含む食品の盛りに適し、プラスチック袋を使用する必要がなくなり、環境に優しく、安全で衛生的な解決方法である。
【0045】
[試験例]
異なる特性の要件を満たすために、下記試験例において、異なる配合及び/又はプロセスにより本発明のパルプモールド容器を製造し、且つ従来のパルプモールド容器を比較例とし、下記表2を参照されたく、表2は、本発明のパルプモールド容器の各試験例及び比較例の添加物の組成である。また、主材100重量百分率に基づいて、以下の各試験例に使用される主材に含まれる長繊維パルプは何れも30重量百分率であり、短繊維パルプは何れも70重量百分率であり、各試験例間で主材の組成の異なりによって試験結果に影響を与えることを回避する。
【0046】
【表2】
【0047】
試験に際して更に上記試験例及び比較例において耐油試験、定量ガス通気性試験及び易開封引張力試験を行い、耐油試験は、TAPPI557標準に従ってKit値を試験し、連盟会社の方法により耐油温度浸透度を試験した。定量ガス通気性試験は、ASTM D726及びGB/T458に従ってGurley通気性試験機により試験した。易開封引張力試験は、ASTM D882方法により測定した。また、下記表3を参照されたく、表3は、試験例及び比較例において上記試験を行った結果である。
【0048】
【表3】
【0049】
表3の高温耐油試験の試験結果から分かるように、油温が80℃を超えても本発明のパルプモールド容器を浸透することはない。本発明のパルプモールド容器の製造方法により製造されたパルプモールド容器は、全てより良い高温耐油効能を有し、且つ熱い食品を盛ったり、又は電子レンジ、オーブンで盛った食品を加熱したりすることに適用可能であることが示された。また、添加物が添加された各試験例のパルプモールド容器の定量ガス通気性試験の秒数は、全て比較例1のパルプモールド容器の定量ガス通気性試験の秒数より長く、本発明のパルプモールド容器の製造方法により製造されたパルプモールド容器は、より良いガスバリア効果を有し、更に包装内容物の風味を維持できることが証明された。なお、本発明のパルプモールド容器の製造方法により製造されたパルプモールド容器は、全て封止可能性及び易開封特性を有するため、異物や細菌などによって包装内容物が汚染されることを防止するように包装を封止することができる。
【0050】
以上を纏めると、本発明のパルプモールド容器の製造方法は、フィブリル化パルプにナノセルロース及び/又はデンプンを添加し、又は更に無機物及び/又はナノセルロース及びデンプンを含まないポリマーを添加することで、本発明のパルプモールド容器は、優れたガスバリア効果及び油バリア効果を有し、食品又は液体を盛って保存する容器とすることができ、且つ電子レンジ又はオーブンで加熱する場合に適用可能であり、現在既知のパルプモールド容器に比べ、より広く適用することができる。
【0051】
本発明は、実施形態により上記のように開示されたが、実施形態が本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0052】
100、200 パルプモールド容器の製造方法
図1
図2