(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075120
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】発泡壁紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20240527BHJP
B32B 5/20 20060101ALI20240527BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240527BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B5/20
B32B27/00 E
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186327
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA17
4F055BA10
4F055BA13
4F055CA05
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4F055FA15
4F055GA26
4F055HA06
4F100AA20D
4F100AK15B
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4F100AK25E
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4F100JK13
4F100JL11
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】絵柄層に硬化不良が発生する可能性を低減させることの可能な発泡壁紙の製造方法を提供する。
【解決手段】基材層2の上に発泡剤含有樹脂層3を形成し、発泡剤含有樹脂層3の上に水性インクジェットインクを用いて絵柄層5を形成する。そして、絵柄層5を形成した後に、発泡剤含有樹脂層3に含まれる発泡剤を発泡させ、これによって発泡壁紙1を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の上に発泡剤含有樹脂層を形成する工程と、
前記発泡剤含有樹脂層の上に水性インクを用いて絵柄層を形成する工程と、
前記絵柄層を形成した後に、前記発泡剤含有樹脂層に含まれる発泡剤を発泡させる工程と、
を備えることを特徴とする発泡壁紙の製造方法。
【請求項2】
前記発泡剤含有樹脂層を形成した後、前記絵柄層を形成する前に、前記発泡剤含有樹脂層の上にプライマー層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項3】
前記プライマー層を、厚さが1[μm]以上30[μm]以下の範囲内となるように形成することを特徴とする請求項2に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項4】
前記プライマー層を、シリカを含んだポリウレタン系樹脂及びビニール系樹脂、又はシリカを含んだアクリル酸・エステル系共重合体樹脂を用いて形成することを特徴とする請求項2に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項5】
前記絵柄層を形成した後、前記発泡剤を発泡させる前に、前記絵柄層の上に表面保護層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項6】
前記発泡剤を発泡させる工程の後に、前記表面保護層にエンボス加工を行う工程を、さらに備えることを特徴とする請求項5に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項7】
前記表面保護層を、厚さが1[μm]以上50[μm]以下の範囲内となるように形成することを特徴とする請求項5に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項8】
前記表面保護層を、アクリル系樹脂又は塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂を用いて形成することを特徴とする請求項5に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項9】
前記基材層及び前記発泡剤含有樹脂層を、前記基材層の厚さと前記発泡剤含有樹脂層の発泡後の厚さとの合計値が、110[μm]以上520[μm]以下となるように形成することを特徴とする請求項1に記載の発泡壁紙の製造方法。
【請求項10】
前記発泡剤含有樹脂層の主成分は、塩化ビニル系樹脂又はエチレン酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の発泡壁紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡壁紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷を用いて形成する壁紙としては、例えば、特許文献1に開示されている壁紙が提案されている。特許文献1に開示されている壁紙は、基材層(支持補強部材)と、発泡剤含有樹脂層(加熱発泡剤を分散させた材料から作成した熱可塑性樹脂層)と、絵柄層(インクジェットインク受容層)とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている壁紙を含め、従来、インクジェット印刷を用いて形成する壁紙では、絵柄層を、紫外線硬化型のインクジェットインクを用いて形成する場合がある。例えば、発泡剤含有樹脂層が含有する発泡剤を発泡させた後、エンボス加工を行い、紫外線硬化型のインクジェットインクを塗布して絵柄層を形成し、塗布した紫外線硬化型のインクジェットインクへ紫外線を照射して硬化させている。しかしながら、紫外線硬化型のインクジェットインクを用いて絵柄層を形成する構成では、発泡剤含有樹脂層が含有する発泡剤を発泡させた後に絵柄層を形成する際に、紫外線が絵柄層へ均一に照射されず、硬化不良が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑み、絵柄層に硬化不良が発生する可能性を低減させることが可能な発泡壁紙の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基材層の上に発泡剤含有樹脂層を形成する工程と、発泡剤含有樹脂層の上に水性インクを用いて絵柄層を形成する工程と、絵柄層を形成した後に、発泡剤含有樹脂層に含まれる発泡剤を発泡させる工程と、を備える、発泡壁紙の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、絵柄層に硬化不良が発生する可能性を低減させることの可能な発泡壁紙の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発泡壁紙の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明に係る発泡壁紙の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る発泡壁紙の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
以下、図面を参照して、本実施形態における発泡壁紙1の構成について説明する。
発泡壁紙1は、
図1に示すように、基材層2と、発泡剤含有樹脂層3と、プライマー層4と、絵柄層5と、表面保護層6と、を備える。
発泡壁紙1の厚さは、例えば、100[μm]以上710[μm]以下の範囲内である。
【0011】
<基材層>
基材層2は、非発泡の層であり、壁紙用の裏打紙等、基材層として通常使用されている材料を用いて形成されている。
本実施形態では、基材層2が、一例として、坪量が50[g/m2]以上100[g/m2]以下の範囲内であり、厚さが70[μm]以上100[μm]以下の範囲内である紙(普通紙)を用いて形成されている場合について説明する。
【0012】
<発泡剤含有樹脂層>
発泡剤含有樹脂層3は、基材層2の一方の面(
図1では、基材層2の上側の面)に積層されている。
また、発泡剤含有樹脂層3は、主成分が塩化ビニル系樹脂又はエチレン酢酸ビニル共重合体からなる樹脂を用いて形成された樹脂層であり、発泡剤を含有している。
発泡剤含有樹脂層3は、可塑剤、減粘剤、安定剤、発泡剤、充填剤、酸化チタンのうちの一種又は複数種を含んでいてよい。
【0013】
基材層2の厚さと発泡剤含有樹脂層3の発泡後の厚さとの合計値は、110[μm]以上520[μm]以下の範囲内、より好ましくは220[μm]以上450[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは250[μm]以上300[μm]以下の範囲内である。基材層2の厚さと発泡剤含有樹脂層3の発泡後の厚さとの合計値が110[μm]未満となると、薄すぎてエンボス加工が難しくなり、抑揚のない壁紙、すなわち意匠性が低い発泡壁紙1になる。一方、基材層2の厚さと発泡剤含有樹脂層3の発泡後の厚さとの合計値が520[μm]よりも大きくなると、発泡剤含有樹脂層3に含まれる発泡剤がさらに膨らみ、発泡剤のセル壁が薄くなり、発泡壁紙1に求められる耐傷性が弱くなる。
【0014】
発泡剤含有樹脂層3が含有する発泡剤としては、例えば、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤、アゾ系、ヒドラジッド系、ニトロソ系、ADCA(アゾジカルボンアミド発泡剤)、炭酸水素ナトリウム等を用いることが可能である。
なお、発泡剤としては、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤が、性能(発泡倍率、強度)の観点から好ましい。
【0015】
また、発泡剤として、ADCAと炭酸水素ナトリウムとを用いる場合、例えば、ADCAと炭酸水素ナトリウムとの混合比を3:1~1:3の割合とするとともに、二種類の合計が塩化ビニル系樹脂100部に対して1部以上4部以下の範囲内となるように混合する。これにより、発泡倍率の確保と、発泡表面の荒れ防止が可能となる。
発泡剤の添加量としては、発泡剤含有樹脂層3の厚さと発泡倍率にもよるが、樹脂100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下の範囲内、特に、5重量部以上15重量部以下の範囲内程度が好適である。
【0016】
<プライマー層>
プライマー層4は、発泡剤含有樹脂層3の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されている。これにより、プライマー層4は、発泡剤含有樹脂層3と絵柄層5との間に配置されている。
また、プライマー層4は、シリカを含んだポリウレタン系樹脂及びビニール系樹脂、又はシリカを含んだアクリル酸・エステル系共重合体樹脂を用いて形成されている。
プライマー層4の厚さは、1[μm]以上30[μm]以下の範囲内である。これは、プライマー層4の厚さが1[μm]未満である場合、水性インクジェットインクの密着性が低下することに起因する。また、プライマー層4の厚さが30[μm]を超えている場合、不燃性が低下することに起因する。
プライマー層4は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、プレキソ印刷等の、既知の印刷方法を用いて形成することができる。
【0017】
<絵柄層>
絵柄層5は、プライマー層4の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。すなわち、絵柄層5は、発泡剤含有樹脂層3の基材層2と対向する面とは反対側の面に積層した層である。
また、絵柄層5は、水性インクジェットインクを用いて形成されている。
絵柄層5を形成する水性インクジェットインクは、インクジェット印刷を用いて塗布される。すなわち、絵柄層5は、インクジェット印刷により形成されている。
【0018】
絵柄層5の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いることが可能である。また、発泡壁紙1の隠蔽性を向上するために、絵柄層5と発泡剤含有樹脂層3との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インクや塗料を用いて形成する。
また、絵柄層5は、例えば、発泡壁紙1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0019】
絵柄層5の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは0.7[μm]以上3[μm]以下の範囲内に設定する。これは、絵柄層5の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層5の厚さが10[μm]以下である場合、発泡壁紙1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層5には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0020】
<表面保護層>
表面保護層6は、絵柄層5の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、発泡壁紙1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。すなわち、表面保護層6は、絵柄層5の発泡剤含有樹脂層3と対向する面と反対側の面に積層した層である。
表面保護層6は、アクリル系樹脂又は塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂を用いて形成されている。
表面保護層6の厚さは、1[μm]以上50[μm]以下の範囲内である。これは、表面保護層6の厚さが1[μm]未満である場合、表面保護層6に割れが発生する可能性が増大するためと、表面保護層6の耐傷性が低下することとに起因する。また、表面保護層6の厚さが50[μm]を超えている場合、不燃性が低下することに起因する。
【0021】
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
表面保護層6は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、プレキソ印刷等の、既知の印刷方法を用いて形成することができる。
【0022】
<発泡壁紙の製造方法>
以下、
図2を参照して、発泡壁紙1の製造方法について説明する。
まず、基材層2の上に発泡剤含有樹脂を塗工し、発泡剤含有樹脂層3を形成する(
図2(a))。
次に、発泡剤含有樹脂層3の上にアクリル酸・エステル系共重合体樹脂を塗工した後、乾燥させてプライマー層4を形成し、さらに、プライマー層4の上に、インクジェット印刷により、水性インクジェットインクを用いて絵柄を形成し、乾燥させて絵柄層5を形成する(
図2(b))。
続いて、絵柄層5の上にアクリル系樹脂を塗工し、乾燥させて表面保護層6を形成する(
図2(c))。
その後、加熱することにより、発泡剤含有樹脂層3に含有される発泡剤を発泡させる(
図2(d))。そして、表面保護層6に対して例えば、エンボス版を用いたメカニカルエンボス加工等によりエンボスを形成する。これにより、エンボス加工が施された発泡壁紙1が形成される。
【0023】
このとき、プライマー層4は、厚さが1[μm]以上30[μm]以下の範囲内となるように形成する。
また、表面保護層6は、厚さが1[μm]以上50[μm]以下の範囲内となるように形成する。
なお、上述した実施形態は、本実施形態の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0024】
また、発泡剤含有樹脂層3又は絵柄層5にプライマー層としての機能があれば、別途プライマー層4を設けなくてもよい。
また、表面保護層6は、耐磨耗性、耐水性及び耐候性などの表面物性を付与する目的で設けているため、発泡壁紙1の設置場所等に応じて必要に応じて設ければよく、必ずしも設けなくてもよい。
また、エンボス加工を行うことにより意匠性を高めることができるが、エンボス加工は必ずしも行わなくてもよい。
【0025】
(本実施形態の効果)
本実施形態の発泡壁紙1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)基材層2の上に、発泡剤含有樹脂層3とプライマー層4とを形成し、このプライマー層4の上に水性インクジェットインクを用いて絵柄層5を形成し、さらに表面保護層6を形成した後、発泡剤含有樹脂層3に含まれる発泡剤を発泡させて発泡壁紙1を形成している。
絵柄層5及び表面保護層6を形成した後、発泡剤含有樹脂層3に含まれる発泡剤を発泡させているため、水性インクジェットインクを用いて絵柄を形成した後に水性インクジェットインクを乾燥させる時点では、絵柄が形成された面は、発泡剤を発泡させた後の表面の状態よりも比較的平坦な面である。そのため、絵柄が形成された面の水性インクジェットインクを乾燥させる際に、水性インクジェットインクの硬化不良が発生する可能性を低減することができる。
また、水性インクジェットインクを用いることにより絵柄層5に硬化不良が発生する可能性を低減することができるため、紫外線硬化型のインクを用いて絵柄層を形成する構成と比較して、発泡壁紙1の表面性状が悪化することを抑制することができる。
【0026】
(2)絵柄層5を、水性インクジェットインクを用いて形成することによって、溶剤インクを用いて絵柄層を形成した構成と比較して、揮発性有機化合物(VOC)の使用量を低減させることが可能となる。特に、塩化ビニル系樹脂を用いた発泡壁紙では、溶剤インクにより絵柄層が形成されることが多いが、水性インクジェットインクを用いることによって、環境負荷を低減させることができる。
【0027】
(3)また、絵柄層5を、例えば紫外線硬化型のインクを用いて絵柄層を形成した構成と比較して、表面保護層6の密着性を向上させることができる。つまり紫外線硬化型のインク等、溶剤インクを用いて絵柄層を形成した場合、溶剤からなる層(例えば紫外線硬化型のインクを用いた場合にはUV樹脂層)が形成されることになるため、表面保護層が絵柄層に密着しづらい場合がある。本実施形態では、溶媒が残らない水性インクジェットインクを用いているため溶剤からなる層が形成されることを回避することができ、その結果、表面保護層の密着性の低下を抑制することができる。
【0028】
(4)絵柄層5が、インクジェット印刷により形成されている。
その結果、例えば、有版印刷に特有のリピート柄と比較して、インクジェット印刷により柄の制限が緩和されるため、意匠性を向上させることができる。
【0029】
(5)絵柄層5を、発泡剤含有樹脂層3が含有している発泡剤を発泡させる前に形成している。その結果、鮮明な絵柄且つはっきりとした凹凸表現により、高意匠な発泡壁紙1を形成することができる。
ここで、例えば発泡剤含有樹脂層を発泡させ且つエンボス加工を行った後の時点で絵柄層を形成する構成とした場合、絵柄層を形成するための水性インクジェットインクを乾燥させる目的で、表面に絵柄が形成された発泡後の発泡剤含有樹脂層を加熱すると、その熱によってエンボス加工が施された発泡剤含有樹脂層の凹部と凸部との厚みの差が減少するエンボス戻りという現象が生じ、凹凸表現が劣ってしまう可能性がある。加えて、発泡剤含有樹脂に含有している発泡剤や安定剤が熱により発煙してしまうため、この発煙対策のための排気設備を設置する必要があり、製造コストが増加する可能性がある。
【0030】
本実施形態では、発泡剤含有樹脂層3の上に絵柄層5及び表面保護層6を形成し、エンボス加工を行った後の時点で、発泡剤含有樹脂層3が含有している発泡剤を発泡させているため、発泡後に加熱することはないため、エンボス戻りが生じることを回避することができ、鮮明な絵柄であり且つはっきりとした凹凸表現により、高意匠な壁紙を形成することができる。また、発煙対策に伴う製造コストの増加も回避することができる。
【0031】
<変形例>
上記実施形態では、発泡壁紙1の構成を、基材層2と、発泡剤含有樹脂層3と、プライマー層4と、絵柄層5と、表面保護層6とを備える構成としたが、これに限定するものではない。発泡壁紙1の構成を、
図3に示すように、基材層2と、発泡剤含有樹脂層3と、プライマー層4と、絵柄層5を備える構成、すなわち、
図1において、表面保護層6を備えていない構成としてもよい。
【実施例0032】
次に、実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から4の発泡壁紙と、比較例1の発泡壁紙について説明する。
(実施例1)
基材層として、坪量が65[g/cm2]であり、厚さが110[μm]である普通紙(日本製紙株式会社製)を用いた。
この基材層の上に、塩化ビニル系樹脂(東ソー株式会社製)を用いて樹脂層を形成し、発泡剤含有樹脂層を形成した。
次に、発泡剤含有樹脂層の上に、アクリル酸・エステル系共重合体樹脂(日信化学工業株式会社製)を、厚さ5[μm]で塗工した後、熱風オーブンに入れて、140[℃]の温度で10分間乾燥させることで、厚さが5[μm]のプライマー層を形成した。
【0033】
次に、プライマー層の上に、水性インクジェットインクである「LIOJET」(東洋インキ株式会社製)を、インクジェット印刷により塗布した後、熱風オーブンに入れて、180[℃]の温度で30秒間乾燥させて、絵柄層を形成した。
その後、絵柄層の上に、アクリル系樹脂(東洋インキ株式会社製)を用いて、厚さ10[μm]で塗工した後、熱風オーブンに入れて、140[℃]の温度で10分間乾燥させることで、厚さが10[μm]の表面保護層を形成した。
【0034】
次に、基材層、発泡剤含有樹脂層、プライマー層、絵柄層、及び表面保護層からなる積層体を熱風オーブンに入れて、210[℃]の温度で25秒間加熱することで発泡剤含有樹脂層に含まれる発泡剤を発泡させた。
最後に、木目のエンボス版を用いて表面保護層に対してメカニカルエンボス加工を行った。
以上により、発泡壁紙全体の厚みが250[μm]である実施例1の発泡壁紙を形成した。
【0035】
(実施例2)
発泡剤含有樹脂層の厚みのみを変更したこと以外は、実施例1と同様の手順で、発泡壁紙全体の厚みが350[μm]である実施例2の発泡壁紙を形成した。
(実施例3)
プライマー層の厚みを30[μm]とし、表面保護層の厚みを50[μm]としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、発泡壁紙全体の厚みが600[μm]である実施例3の発泡壁紙を形成した。
(実施例4)
プライマー層の厚みを1[μm]とし、表面保護層の厚みを1[μm]としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、発泡壁紙全体の厚みが210[μm]である実施例4の発泡壁紙を形成した。
【0036】
(比較例1)
基材層として、坪量が65[g/cm2]であり、厚さが110[μm]である普通紙(日本製紙株式会社製)を用いた。
この基材層の上に、塩化ビニル系樹脂(東ソー株式会社製)を用いて樹脂層を形成し、発泡剤含有樹脂層を形成した。
この基材層と発泡剤含有樹脂層との積層体を、熱風オーブンに入れて、210[℃]の温度で25秒間加熱することで発泡剤含有樹脂層に含まれる発泡剤を発泡させた。
そして、エンボス版を用いて発泡させた後の発泡剤含有樹脂層に対してメカニカルエンボス加工を行った。
次に、エンボス加工が行われた発泡剤含有樹脂層の上に、アクリル酸・エステル系共重合体樹脂(日信化学工業株式会社製)を、厚さ5[μm]で塗工した後、熱風オーブンに入れて、140[℃]の温度で10分間乾燥させることで、厚さが5[μm]のプライマー層を形成した。
【0037】
次に、プライマー層の上に、水性インクジェットインクである「LIOJET」(東洋インキ株式会社製)を、インクジェット印刷により塗布した後、熱風オーブンに入れて、180[℃]の温度で30秒間乾燥させて、絵柄層を形成した。
最後に、絵柄層の上に、アクリル系樹脂(東洋インキ株式会社製)を、厚さ10[μm]で塗工した後、熱風オーブンに入れて、140[℃]の温度で10分間乾燥させることで、厚さが10[μm]の表面保護層を形成した。
以上により、発泡壁紙全体の厚みが250[μm]である比較例1の発泡壁紙を形成した。
【0038】
(比較例2)
絵柄層を溶剤インクジェットインクを用いてインクジェット印刷により塗布したこと以外は、実施例1と同様の手順で、発泡壁紙全体の厚みが250[μm]である比較例2の発泡壁紙を形成した。
(比較例3)
絵柄層を、水性インクを用いてグラビア印刷により塗布したこと以外は、実施例1と同様の手順で、発泡壁紙全体の厚みが250[μm]である比較例3の発泡壁紙を形成した。
(性能評価、評価結果)
実施例1から4の発泡壁紙と、比較例1から3の発泡壁紙に対し、それぞれ、意匠性(エンボス戻り)及びインク密着性を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。評価結果を表1に示す。
【0039】
<意匠性>
柄の印刷を行い、絵柄層を形成した際の絵柄層の状態を目視で確認し、同じ長さを印刷した際の同じ柄の繰り返し頻度を相対的に評価した。繰り返しの少ない方が単調な繰り返しとならず意匠性が良いと判断し「〇」、繰り返しの多い方が「×」と評価した。
<手触り感>
被験者10名の手触り感にて評価した。木の板の表面に近く感じるものを「〇」、板ガラスのように平滑な表面に感じるものを「×」と評価した。「〇」と「×」との間の評価は「△」で表した。すなわち、手触り感は「〇」、「△」、「×」の3段階で評価した。そして最も多かった評価の平均を表1中に示した。
<揮発性有機化合物の使用>
揮発性有機化合物を含む材料の使用について「有」「無」で評価した。
【0040】
【0041】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から4の発泡壁紙は、全ての評価試験に対して、優れた性能を示すことが確認された。一方、比較例1の発泡壁紙は、手触り感については優れた性能を示さなかった。比較例2は揮発性有機化合物を含む材料を用いるため環境負荷に対する優れた評価を示さなかった。比較例3は有版印刷特有のリピート柄になってしまい意匠性について優れた評価を示さなかった。
【0042】
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
基材層の上に発泡剤含有樹脂層を形成する工程と、
前記発泡剤含有樹脂層の上に水性インクを用いて絵柄層を形成する工程と、
前記絵柄層を形成した後に、前記発泡剤含有樹脂層に含まれる発泡剤を発泡させる工程と、
を備えることを特徴とする発泡壁紙の製造方法。
(2)
前記発泡剤含有樹脂層を形成した後、前記絵柄層を形成する前に、前記発泡剤含有樹脂層の上にプライマー層を形成する工程を備えることを特徴とする上記(1)に記載の発泡壁紙の製造方法。
【0043】
(3)
前記プライマー層を、厚さが1[μm]以上30[μm]以下の範囲内となるように形成することを特徴とする上記(2)に記載の発泡壁紙の製造方法。
(4)
前記プライマー層を、シリカを含んだポリウレタン系樹脂及びビニール系樹脂、又はシリカを含んだアクリル酸・エステル系共重合体樹脂を用いて形成することを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の発泡壁紙の製造方法。
(5)
前記絵柄層を形成した後、前記発泡剤を発泡させる前に、前記絵柄層の上に表面保護層を形成する工程を備えることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の発泡壁紙の製造方法。
【0044】
(6)
前記発泡剤を発泡させる工程の後に、前記表面保護層にエンボス加工を行う工程を、さらに備えることを特徴とする上記(5)に記載の発泡壁紙の製造方法。
(7)
前記表面保護層を、厚さが1[μm]以上50[μm]以下の範囲内となるように形成することを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の発泡壁紙の製造方法。
(8)
前記表面保護層を、アクリル系樹脂又は塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂を用いて形成することを特徴とする上記(5)から(7)のいずれか一項に記載の発泡壁紙の製造方法。
【0045】
(9)
前記基材層及び前記発泡剤含有樹脂層を、前記基材層の厚さと前記発泡剤含有樹脂層の発泡後の厚さとの合計値が、110[μm]以上520[μm]以下となるように形成することを特徴とする上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の発泡壁紙の製造方法。
(10)
前記発泡剤含有樹脂層の主成分は、塩化ビニル系樹脂又はエチレン酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の発泡壁紙の製造方法。