(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075125
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】有形成分検出方法、有形成分検出装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/493 20060101AFI20240527BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240527BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20240527BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G01N33/493 A
G01N33/53 K
G01N33/536 D
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186333
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】眞砂 明典
(72)【発明者】
【氏名】坪井 一哉
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA02
2G043NA01
2G045AA16
2G045BB24
2G045CA02
2G045CB03
2G045DA13
2G045FA19
2G045FB03
2G045FB12
2G045JA07
(57)【要約】
【課題】マルベリー小体をより正確に抽出できる有形成分検出方法、有形成分検出装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】ステップS1において、被検者から採取した尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、赤血球に特異的に結合する抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料を調製する。ステップS3において、試料中の複数の有形成分を撮像して蛍光画像を取得する。ステップS5において、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分を抽出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者から採取した尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、前記抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料を調製し、
前記試料中の複数の有形成分を撮像して蛍光画像を取得し、
前記蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分を抽出する、
有形成分検出方法。
【請求項2】
前記蛍光画像から得られた前記情報は、有形成分から前記第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値および有形成分から前記第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値を含む、
請求項1に記載の有形成分検出方法。
【請求項3】
前記蛍光画像は、前記第1蛍光色素により生じた蛍光を撮像した第1蛍光画像および前記第2蛍光色素により生じた蛍光を撮像した第2蛍光画像を含む、
請求項2に記載の有形成分検出方法。
【請求項4】
前記有形成分を抽出する工程は、前記第1蛍光量に関する値および前記第2蛍光量に関する値が所定の条件に合致する有形成分を抽出する工程を含む、
請求項2に記載の有形成分検出方法。
【請求項5】
前記試料中の前記複数の有形成分を撮像して明視野画像を取得する工程をさらに含み、
前記有形成分を抽出する工程は、前記蛍光画像から得られた前記情報および前記明視野画像から得られた情報が前記マルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分を抽出する工程を含む、
請求項1に記載の有形成分検出方法。
【請求項6】
前記明視野画像から得られた前記情報は、前記明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値および有形成分のフォーカス状態に関する値の少なくとも一方を含む、
請求項5に記載の有形成分検出方法。
【請求項7】
前記明視野画像から得られた前記情報は、前記明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値および有形成分の輝度のばらつきに関する値の少なくとも一方を含む、
請求項5または6に記載の有形成分検出方法。
【請求項8】
前記蛍光画像は、前記第1蛍光色素により生じた蛍光を撮像した第1蛍光画像および前記第2蛍光色素により生じた蛍光を撮像した第2蛍光画像を含み、
前記有形成分を抽出する工程は、
前記明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値および有形成分のフォーカス状態に関する値の少なくとも一方が第1条件に合致する有形成分を抽出する第1抽出工程と、
有形成分から前記第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値を前記第1蛍光画像から取得し、有形成分から前記第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値を前記第2蛍光画像から取得し、前記第1蛍光量に関する値および前記第2蛍光量に関する値が第2条件に合致する有形成分を抽出する第2抽出工程と、
前記明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値および有形成分の輝度のばらつきに関する値の少なくとも一方が第3条件に合致する有形成分を抽出する第3抽出工程と、を含む、
請求項5に記載の有形成分検出方法。
【請求項9】
前記第1抽出工程、前記第2抽出工程および前記第3抽出工程は、先に実行された抽出工程によって抽出された有形成分群に対して抽出を実行する、
請求項8に記載の有形成分検出方法。
【請求項10】
前記第1抽出工程は、少なくとも前記有形成分の大きさに関する値が前記第1条件に合致する有形成分を抽出する工程を含み、
前記第1抽出工程は、前記第2抽出工程および前記第3抽出工程に先立って実行される、
請求項9に記載の有形成分検出方法。
【請求項11】
前記マルベリー小体に対応する範囲は、赤血球に対応する範囲および真菌に対応する範囲と重ならない範囲である、
請求項1に記載の有形成分検出方法。
【請求項12】
抽出した前記マルベリー小体に対応する範囲に含まれる前記有形成分の画像を表示する工程をさらに含む、
請求項1に記載の有形成分検出方法。
【請求項13】
前記試料中の前記複数の有形成分を撮像して明視野画像を取得する工程をさらに含み、
前記有形成分の画像を表示する工程は、前記抽出した有形成分の前記明視野画像を表示する、
請求項12に記載の有形成分検出方法。
【請求項14】
前記有形成分の画像を表示する工程は、前記抽出した有形成分の画像を一覧表示する、
請求項12に記載の有形成分検出方法。
【請求項15】
前記有形成分の画像を表示する工程は、前記抽出した有形成分の画像を、有形成分の大きさ順に一覧表示する、
請求項14に記載の有形成分検出方法。
【請求項16】
前記有形成分の画像を表示する工程は、前記抽出した有形成分の画像を、有形成分の大きさ順に並べる指示入力を受け付け、受け付けた指示入力に応じて、一覧表示した前記有形成分の画像を並べ替える、
請求項14に記載の有形成分検出方法。
【請求項17】
前記有形成分の画像を表示する工程は、一覧表示した前記有形成分の画像の任意の1つを特定する指示入力を受け付け、前記指示入力で特定された前記有形成分の画像を拡大表示する、
請求項14に記載の有形成分検出方法。
【請求項18】
前記有形成分の画像を表示する工程は、一覧表示した前記有形成分の画像のうち前記マルベリー小体の画像を特定する指示入力を受け付け、前記指示入力で特定された前記有形成分の画像を計数した計数結果をさらに表示する、
請求項14に記載の有形成分検出方法。
【請求項19】
同一被検者に対する前記計数結果の履歴を記憶する、
請求項18に記載の有形成分検出方法。
【請求項20】
前記履歴に基づいて、前記計数結果の変化に基づく情報を表示する、
請求項19に記載の有形成分検出方法。
【請求項21】
前記有形成分の画像の一覧とともに、前記計数結果の変化に基づく情報を表示する、
請求項20に記載の有形成分検出方法。
【請求項22】
前記有形成分の画像を表示する工程は、一覧表示した前記有形成分の画像のうち前記マルベリー小体の画像を特定する指示入力を受け付け、前記指示入力で特定された前記有形成分の画像にフラグを紐づけて記憶する、
請求項14に記載の有形成分検出方法。
【請求項23】
被検者から採取した尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、前記抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料を調製する試料調製部と、
前記試料中の複数の有形成分を撮像して蛍光画像を取得する撮像部と、
前記蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分を抽出する処理部と、を備える、
有形成分検出装置。
【請求項24】
前記撮像部は、前記試料が流されるフローセルを備え、前記フローセルを流れる前記試料中の前記複数の有形成分を撮像する、
請求項23に記載の有形成分検出装置。
【請求項25】
被検者から採取した尿検体中の有形成分を検出する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、前記抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料中の複数の有形成分が撮像された蛍光画像から得られた情報が、マルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分を抽出する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有形成分検出方法、有形成分検出装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ファブリー病は、遺伝病の一種であり、細胞内消化の場であるライソゾームにグロボトリアオシルセラミド(Gb3)と呼ばれる脂質が蓄積することにより発症する。ファブリー病が発症すると、ライソゾームの機能が障害され、様々な臓器に障害が起こる。従来、ファブリー病の発症と尿中マルベリー小体との因果関係は知られているものの、尿沈渣に含まれる尿中マルベリー小体はごく少量であるため、尿沈渣検査によりマルベリー小体を検出することは難しい。
【0003】
さらに、尿中のマルベリー小体は、顕微鏡を用いて目視で確認されてきたが、その形態が赤血球や真菌と類似しているため、この方法による判別は難易度が高い。このため、この判別には、検査者に高度なスキルが要求される。
【0004】
以下の非特許文献1には、尿沈渣を染色することで、尿中マルベリー小体がポドサイトの細胞質内にある、Gb3が蓄積したライゾームに由来することを明らかにしたことが記載されている。
【0005】
また、以下の特許文献1には、尿沈渣画像をニューラルネットワークに適用して、被検者の尿検体にマルベリー小体が含まれているか否かを判別する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】難波倫子、"尿検査で希少疾患の早期診断が可能に"、[online]、令和3年1月8日、リソウ、[令和4年10月14日検索]、インターネット〈URL:https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210108_4〉
【特許文献1】特開2022-59094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Gb3は、マルベリー小体だけでなく尿細管細胞にも発現する。このため、上記非特許文献1により、尿中マルベリー小体がGb3が蓄積したライゾームに由来することが明らかになってはいるが、Gb3を利用してマルベリー小体と尿細管細胞とを正確に弁別することは困難である。
【0008】
また、ファブリー病の患者数は極めて少なく、さらに、これらの患者の尿検体に含まれるマルベリー小体の数も極めて少ない。このため、上記特許文献1の方法では、ニューラルネットワークを学習させるために、十分な数の教師データを用いることができず、実用化することが難しい。
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、マルベリー小体をより正確に抽出できる有形成分検出方法、有形成分検出装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有形成分検出方法において、
図3、6、26に示すように、被検者から採取した尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、赤血球に特異的に結合する抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料を調製し(S1)、試料中の複数の有形成分を撮像して蛍光画像を取得し(S3)、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲(R2)に含まれる有形成分を抽出する(S5)。
【0011】
本発明の有形成分検出方法によれば、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分が抽出されるため、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0012】
本発明の有形成分検出装置(1)は、
図1、6に示すように、被検者から採取した尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、赤血球に特異的に結合する抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料を調製する試料調製部(18)と、試料中の複数の有形成分を撮像して蛍光画像を取得する撮像部(19)と、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲(R2)に含まれる有形成分を抽出する処理部(11)と、を備える。
【0013】
本発明の有形成分検出装置によれば、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分が抽出されるため、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0014】
本発明のプログラム(12a)は、
図1、6に示すように、被検者から採取した尿検体中の有形成分を検出する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、赤血球に特異的に結合する抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料中の複数の有形成分が撮像された蛍光画像から得られた情報が、マルベリー小体に対応する範囲(R2)に含まれる有形成分を抽出する。
【0015】
本発明のプログラムによれば、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分が抽出されるため、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、有形成分検出装置の機能を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る、撮像部の構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、処理部による有形成分検出方法に関する処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る、第1抽出工程で生成されるスキャッタグラムを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る、第1抽出工程のスキャッタグラムにおいて抽出の範囲以外の他の範囲にプロットされた有形成分の明視野画像を例示する図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る、第2抽出工程で生成されるスキャッタグラムを示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、第2抽出工程のスキャッタグラムにおいて抽出の範囲以外の他の範囲にプロットされた赤血球、尿路上皮細胞および尿細管上皮細胞の明視野画像、第1蛍光画像および第2蛍光画像を例示する図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る、第2抽出工程のスキャッタグラムにおいて抽出の範囲以外の他の位置付近にプロットされた白血球および真菌の明視野画像、第1蛍光画像および第2蛍光画像を例示する図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る、第3抽出工程で生成されるスキャッタグラムを示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る、第3抽出工程のスキャッタグラムにおいて抽出の範囲以外の他の位置付近にプロットされた有形成分の明視野画像を例示する図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る、第3抽出工程のスキャッタグラムにおいて抽出の範囲にプロットされた有形成分の明視野画像、第1蛍光画像、第2蛍光画像および第3蛍光画像を例示する図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る、第1~第3抽出工程において、各範囲に含まれる有形成分の数を示す表である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る、
図12に示した尿検体に対して第1~第3抽出工程において得られたスキャッタグラムである。
【
図14】
図14は、実施形態に係る、
図12に示した尿検体に対して第1~第3抽出工程において得られたスキャッタグラムである。
【
図15】
図15は、実施形態に係る、
図12に示した尿検体に対して第1~第3抽出工程において得られたスキャッタグラムである。
【
図16】
図16は、実施形態に係る、
図12に示した尿検体に対して第1~第3抽出工程において得られたスキャッタグラムである。
【
図17】
図17は、実施形態に係る、
図12に示した尿検体に対して第1~第3抽出工程において得られたスキャッタグラムである。
【
図18】
図18は、実施形態に係る、
図12に示した尿検体に対して第1~第3抽出工程において得られたスキャッタグラムである。
【
図19】
図19は、実施形態に係る、有形成分画像を表示する画面の構成を模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る、有形成分画像を表示する画面の構成を模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る、拡大画像領域が表示された画面の構成を模式的に示す図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る、オペレータによりマルベリー小体と判断された有形成分の明視野画像を例示する図である。
【
図23】
図23は、実施形態の変更例に係る、拡大画像領域の構成を模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、実施形態に係る、同一被検者に対するマルベリー小体の計数結果の履歴および変化を表示する画面の構成を模式的に示す図である。
【
図25】
図25は、実施形態の変更例に係る、有形成分画像を表示する画面の構成を模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、実施形態の有形成分検出装置、方法およびプログラムの第1変更例に係る、抽出工程として第2抽出工程のみが行われる場合の、処理部による有形成分検出方法に関する処理を示すフローチャートである。
【
図27】
図27は、実施形態の有形成分検出装置、方法およびプログラムの第2変更例に係る、明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値のみを用いて第1抽出工程が行われる例を示す図である。
【
図28】
図28は、実施形態の有形成分検出装置、方法およびプログラムの第2変更例に係る、明視野画像に基づく有形成分のフォーカス状態に関する値のみを用いて第1抽出工程が行われる例を示す図である。
【
図29】
図29は、実施形態の有形成分検出装置、方法およびプログラムの第3変更例に係る、明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値のみを用いて第3抽出工程が行われる例を示す図である。
【
図30】
図30は、実施形態の有形成分検出装置、方法およびプログラムの第3変更例に係る、有形成分の輝度のばらつきに関する値のみを用いて第3抽出工程が行われる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、有形成分検出装置1の機能を示すブロック図である。
【0019】
有形成分検出装置1は、被検者から採取した尿検体に含まれる有形成分を検出する装置である。有形成分検出装置1は、処理部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、入力部15と、読取部16と、吸引部17と、試料調製部18と、撮像部19と、を備える。
【0020】
処理部11は、例えば、FPGAまたはCPUにより構成される。処理部11は、有形成分検出装置1の各部が出力する信号を受信し、有形成分検出装置1の各部を制御する。記憶部12は、例えば、HDDやSSDにより構成される。記憶部12は、
図3を参照して後述する処理を処理部11に実行させるプログラム12aを記憶している。処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを読み出し、プログラム12aに従って
図3に示す処理を実行する。プログラム12aは、記憶媒体を介して記憶部12に記憶されてもよく、通信部13を介して他のコンピュータから受信することにより記憶部12に記憶されてもよい。
【0021】
通信部13は、例えば、イーサネット規格に基づく通信インターフェースである。処理部11は、通信部13を介して、検体IDに対応する被検者情報などをホストコンピュータから受信し、有形成分の計数結果などをホストコンピュータに送信する。
【0022】
表示部14は、例えば、液晶ディスプレイにより構成される。入力部15は、例えば、キーボード、マウス、またはタッチパネルを含むポインティングデバイスなどにより構成される。オペレータは、入力部15を操作することにより、表示部14に表示された画面内のボタン等の操作部を操作する。なお、表示部14および入力部15が一体的に構成されてもよい。例えば、有形成分検出装置1は、表示部14および入力部15として、タッチパネル式のディスプレイを備えてもよい。
【0023】
読取部16は、例えば、バーコードリーダにより構成される。読取部16は、尿検体が収容された容器に付されたバーコードラベルからバーコードを読み取り、検体IDを取得する。検体IDを読み取られた容器は、有形成分検出装置1にセットされる。
【0024】
吸引部17は、有形成分検出装置1にセットされた容器から、ノズルを介して尿検体を吸引する。試料調製部18は、尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、赤血球に特異的に結合する抗体に結合する第2蛍光色素と、第3蛍光色素で標識されたグロボトリアオシルセラミド(Gb3)抗体を含む試料を調製する。これにより、尿検体内の有形成分の核酸が第1蛍光色素により染色され、尿検体内の赤血球が抗体を介して第2蛍光色素により染色され、尿検体内のGb3が第3蛍光色素により染色される。
【0025】
第1蛍光色素は、波長λ11の光が照射されると波長λ21の蛍光を生じるよう構成されており、第2蛍光色素は、波長λ12の光が照射されると波長λ22の蛍光を生じるよう構成されており、第3蛍光色素は、波長λ13の光が照射されると波長λ23の蛍光を生じるよう構成されている。本実施形態において、波長λ11、λ12、λ13は、互いに異なる波長帯域であるが、互いに同一の波長帯域であってもよい。
【0026】
なお、ここでは試料調製部18において、第3蛍光色素で標識されたGb3抗体が試料に含まれるよう試料の調製が行われたが、後述するマルベリー小体の抽出工程においては特に第3蛍光色素により生じた蛍光は用いられないため、試料調製において、第3蛍光色素で標識されたGb3抗体が混合されなくてもよい。
【0027】
【0028】
撮像部19は、フローセル110と、光源121~124と、集光レンズ131~134と、ダイクロイックミラー141、142と、集光レンズ151と、光学ユニット152と、集光レンズ153と、カメラ154と、を備える。フローセル110の流路111には、試料調製部18で調製された試料が流される。
【0029】
光源121~124は、フローセル110を流れる試料に光を照射する。光源121~124は、半導体レーザ光源である。光源121~124から出射される光は、それぞれ、波長λ11~λ14のレーザ光である。集光レンズ131~134は、それぞれ、光源121~124から出射された光を集光する。ダイクロイックミラー141は、波長λ11の光を透過し、波長λ12の光を反射する。ダイクロイックミラー142は、波長λ11、λ12の光を透過し、波長λ13の光を反射する。こうして、波長λ11~λ14の光が、フローセル110の流路111を流れる試料に照射される。
【0030】
フローセル110を流れる試料に波長λ11~λ13の光が照射されると、有形成分を染色している蛍光色素から蛍光が生じる。具体的には、核酸を染色する第1蛍光色素に波長λ11の光が照射されると、第1蛍光色素から波長λ21の蛍光が生じる。赤血球に結合した第2蛍光色素に波長λ12の光が照射されると、第2蛍光色素から波長λ22の蛍光が生じる。Gb3抗体を標識する第3蛍光色素に波長λ13の光が照射されると、第3蛍光色素から波長λ23の蛍光を生じる。波長λ21、λ22、λ23は、例えば、それぞれ、緑色、赤色および黄色の光の波長帯域である。フローセル110を流れる試料に波長λ14の光が照射されると、この光は試料中の有形成分を透過する。波長λ14は明視野画像に適した波長帯域であり、波長λ11~λ13よりも波長帯域が広い。
【0031】
集光レンズ151は、フローセル110の流路111を流れる試料から生じた波長λ21~λ23の蛍光と、フローセル110の流路111を流れる試料を透過した波長λ14の光とを集光する。光学ユニット152は、4枚のダイクロイックミラーが組み合わせられた構成を有する。光学ユニット152の4枚のダイクロイックミラーは、波長λ21~λ23の蛍光と波長λ14の光とを、互いに僅かに異なる角度で反射し、カメラ154の受光面上において分離させる。集光レンズ153は、波長λ21~λ23の蛍光と波長λ14の光とを集光する。
【0032】
カメラ154は、例えば、TDI(Time Delay Integration)カメラである。カメラ154は、波長λ21~λ23の蛍光と波長λ14の光とを撮像して、波長λ21~λ23の蛍光にそれぞれ対応した第1蛍光画像、第2蛍光画像および第3蛍光画像と、波長λ14の光に対応した明視野画像とを、撮像信号として出力する。
図1の処理部11は、カメラ154により撮像された第1蛍光画像、第2蛍光画像および明視野画像を用いて、尿検体に含まれるマルベリー小体を抽出する。
【0033】
なお、第3蛍光画像は、後述するように有形成分がどの程度Gb3を含んでいるかを知る指標となるが、本実施形態においてはマルベリー小体の抽出に用いない。したがって、
図2の撮像部19において、光源123、集光レンズ133およびダイクロイックミラー142は、省略されてもよい。
【0034】
図3は、処理部11による有形成分検出方法に関する処理を示すフローチャートである。
【0035】
処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを実行することにより、
図3に示す処理を行う。
【0036】
ステップS1において、処理部11は、尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、この抗体に結合する第2蛍光色素と、第3蛍光色素で標識されたGb3抗体と、を含む試料を調製するよう試料調製部18を制御する。
【0037】
ステップS2において、処理部11は、ステップS1で調製した試料をフローセル110の流路111に流すよう試料調製部18を制御する。ステップS3において、処理部11は、流路111を流れる試料に対して光が照射されるよう光源121~124を制御し、試料中の複数の有形成分を撮像するよう、すなわち、試料から生じた波長λ21~λ23の蛍光と、試料を透過した波長λ14の光とを撮像するようカメラ154を制御する。これにより、処理部11は、試料中の有形成分ごとに、第1~第3蛍光画像および明視野画像を取得する。なお、第1蛍光画像は緑色帯域以外の波長帯域を除外して撮像したカラー画像であり、第2蛍光画像は赤色帯域以外の波長帯域を除外して撮像したカラー画像であり、第3蛍光画像は黄色帯域以外の波長帯域を除外して撮像したカラー画像であり、明視野画像はグレースケール画像である。
【0038】
ステップS4において、処理部11は、ステップS3で取得した全有形成分の明視野画像に基づいて、マルベリー小体に関する第1抽出工程を行う。ステップS5において、処理部11は、ステップS4の第1抽出工程で抽出した有形成分の第1蛍光画像および第2蛍光画像に基づいて、マルベリー小体に関する第2抽出工程を行う。ステップS6において、処理部11は、ステップS5の第2抽出工程で抽出した有形成分の明視野画像に基づいて、マルベリー小体に関する第3抽出工程を行う。第1~第3抽出工程の詳細については、追って
図4~
図11を参照して説明する。
【0039】
ステップS7において、処理部11は、ステップS6の第3抽出工程で抽出した有形成分の画像を、表示部14に表示する。有形成分の画像の表示については、追って
図19~
図25を参照して説明する。なお、ステップS1において調製される試料には、第3蛍光色素で標識されたGb3抗体が含まれなくてもよい。ステップS3において、第3蛍光画像は取得されなくてもよい。ステップS6の処理は省略されてもよい。
【0040】
次に、
図4~
図11を参照して、マルベリー小体に関する第1~第3抽出工程について説明する。
【0041】
以下では、
図4、6、9に示すように、処理部11が抽出の際にスキャッタグラム210、220、230を生成するものとして抽出工程を説明しているが、スキャッタグラムの生成は必ずしも行われなくてもよい。すなわち、処理部11は、スキャッタグラムを生成し所定の範囲の有形成分を抽出する処理を、同様の手順に沿ったデータ処理によって行ってもよい。
【0042】
図4は、第1抽出工程で生成されるスキャッタグラム210を示す図である。
【0043】
処理部11は、カメラ154により取得した全有形成分の明視野画像から、明視野画像ごとに、明視野サイズおよび明視野フォーカスを取得する。
【0044】
明視野サイズは、明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値の一例であり、有形成分の形態情報である。明視野サイズは、例えば、明視野画像において有形成分の領域であると特定された画素の数である。明視野フォーカスは、明視野画像に基づく有形成分のフォーカス状態に関する値の一例である。明視野フォーカスは、例えば、明視野画像において有形成分の領域であると特定された画素において、画素値を正規化し、隣接する画素間の画素値の勾配を合計した値を画素数で除算した値(平均勾配)である。明視野フォーカスの値が大きいほど、明視野画像において有形成分にフォーカス(ピント)が合った状態となる。
【0045】
処理部11は、明視野画像から取得した明視野サイズおよび明視野フォーカスを用いて、全有形成分をスキャッタグラム210にプロットする。スキャッタグラム210の横軸は明視野サイズであり、縦軸は明視野フォーカスである。
【0046】
処理部11は、スキャッタグラム210において、マルベリー小体に対応する範囲R1に含まれる有形成分を抽出する。範囲R1は、あらかじめ記憶部12に記憶された固定の範囲である。範囲R1の横軸方向の範囲は、マルベリー小体が含まれる可能性が高く、単一の細菌、サイズの大きい尿路上皮細胞、および扁平上皮細胞などを除外できる明視野サイズの範囲に設定される。範囲R1の縦軸方向の範囲は、明視野画像においてフォーカスが合っていない有形成分を除外できる明視野フォーカスの範囲に設定される。なお、範囲R1の縦軸方向の上限は、設定されなくてもよい。範囲R1内の有形成分が抽出されることにより、第1抽出工程が終了する。
【0047】
図5の上段には、
図4のスキャッタグラム210において範囲R1以外の他の範囲にプロットされた有形成分の明視野画像が例示されている。
【0048】
図5の上段の左側に示す3つの明視野画像に示すように、有形成分にフォーカスが合っていないと、明視野画像に写った有形成分が不鮮明となるため、当該明視野画像を以降の抽出に用いることができない。このようにフォーカスが合っていない有形成分は、範囲R1の外側に分布するため、第1抽出工程によって除外される。また、
図5の上段の右側に示す明視野画像には、マルベリー小体よりもサイズが数段大きい扁平上皮細胞が写っている。
図5の上段の右側に示す明視野画像に示すように、有形成分のサイズが通常のマルベリー小体のサイズよりも数段大きいと、この有形成分がマルベリー小体である可能性は低い。このようにサイズが数段大きい有形成分は、範囲R1の外側に分布するため、第1抽出工程によって除外される。
【0049】
なお、
図5の下段には、大きさが5μmであり、マルベリー小体と同等の大きさであるビーズを、有形成分検出装置1で撮像して得られた明視野画像が示されている。範囲R1をあらかじめ設定する際には、例えば、このように所定の大きさのビーズを撮像して得られた明視野画像を用いて、範囲R1の明視野フォーカスおよび明視野サイズの範囲を設定できる。
【0050】
図6は、第2抽出工程で生成されるスキャッタグラム220を示す図である。
【0051】
処理部11は、第1抽出工程で抽出した範囲R1内の各有形成分の第1蛍光画像および第2蛍光画像から、それぞれ、核酸に関する平均輝度および赤血球に関する平均輝度を取得する。
【0052】
核酸に関する平均輝度は、有形成分から第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値の一例である。核酸に関する平均輝度は、例えば、第1蛍光画像において有形成分の領域であると特定された画素の緑色成分の輝度値の平均である。赤血球に関する平均輝度は、有形成分から第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値の一例である。赤血球に関する平均輝度は、例えば、第2蛍光画像において有形成分の領域であると特定された画素の赤色成分の輝度値の平均である。
【0053】
なお、本実施形態では、有形成分から第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値は、核酸に関する平均輝度であるが、これには限定されず、例えば、第1蛍光画像において有形成分の領域であると特定された画素の緑色成分の輝度値の合計値、最大値、または中間値などであってもよい。同様に本実施形態では、有形成分から第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値は、赤血球に関する平均輝度であるが、これには限定されず、例えば、第2蛍光画像において有形成分の領域であると特定された画素の赤色成分の輝度値の合計値、最大値、または中間値などであってもよい。
【0054】
処理部11は、第1蛍光画像および第2蛍光画像からそれぞれ取得した核酸に関する平均輝度および赤血球に関する平均輝度を用いて、第1抽出工程で抽出した範囲R1内の全有形成分をスキャッタグラム220にプロットする。スキャッタグラム220の横軸は核酸に関する平均輝度であり、縦軸は赤血球に関する平均輝度である。
【0055】
処理部11は、スキャッタグラム220において、マルベリー小体に対応する範囲R2に含まれる有形成分を抽出する。範囲R2は、あらかじめ記憶部12に記憶された固定の範囲である。
図6において、範囲R41は赤血球に対応する範囲である。範囲R42は、真菌に対応する範囲である。範囲R42には、真菌に加え、尿路上皮細胞、尿細管上皮細胞、および白血球も含まれる。範囲R2は、赤血球に対応する範囲である範囲R41および真菌に対応する範囲である範囲R42と重ならない範囲である。すなわち、範囲R2は、範囲R41に分布する赤血球と、範囲R42に分布する尿路上皮細胞、尿細管上皮細胞、白血球および真菌とを除外できる範囲に設定される。範囲R2内の有形成分が抽出されることにより、第2抽出工程が終了する。
【0056】
図7の上段には、
図6のスキャッタグラム220において範囲R41にプロットされた赤血球の明視野画像、第1蛍光画像および第2蛍光画像が例示されている。
【0057】
赤血球は、明視野画像において円形に写り、形態的にマルベリー小体と類似している。このため、明視野画像を目視することにより、マルベリー小体(
図11参照)と赤血球とを区別するのは困難である。しかしながら、赤血球は核を有しないため、第1蛍光画像には第1蛍光色素からの蛍光がほぼ写らない。また、赤血球は第2蛍光色素により標識されるため、第2蛍光画像には第2蛍光色素からの蛍光が明瞭に写る。したがって、赤血球は、
図6の範囲R2と重ならない範囲R41に分布するため、第2抽出工程によって除外される。
【0058】
図7の下段および
図8には、
図6のスキャッタグラム220において範囲R42にプロットされた尿路上皮細胞、尿細管上皮細胞、白血球および真菌の明視野画像、第1蛍光画像および第2蛍光画像が例示されている。
【0059】
これらの細胞は、いずれも明視野画像において円形に写るものが多いため、明視野画像を目視することにより、マルベリー小体(
図11参照)とこれらの細胞とを区別することは困難である。特に、真菌は形態的にマルベリー小体と類似しているため、目視によりマルベリー小体と真菌とを区別することは困難である。しかしながら、これらの細胞は核を有するため、第1蛍光画像には第1蛍光色素からの蛍光が明瞭に写る。また、これらの細胞は第2蛍光色素によってほぼ標識されないため、第2蛍光画像には第2蛍光色素からの蛍光がほぼ写らない。したがって、これらの細胞は、
図6の範囲R2と重ならない範囲R42付近に分布するため、第2抽出工程によって除外される。
【0060】
マルベリー小体は核を有しないため、第1蛍光画像には第1蛍光色素からの蛍光がほぼ写らない。また、マルベリー小体は第2蛍光色素によってほぼ標識されないため、第2蛍光画像には第2蛍光色素からの蛍光がほぼ写らない。したがって、範囲R2は、範囲R41よりも第2蛍光量に関する値が小さく、範囲R42よりも第1蛍光量に関する値が小さい領域に設定される。
【0061】
図9は、第3抽出工程で生成されるスキャッタグラム230を示す図である。
【0062】
処理部11は、第2抽出工程で抽出した範囲R2内の各有形成分の明視野画像から、それぞれ、明視野のコントラストおよび明視野の輝度のばらつきを取得する。
【0063】
明視野のコントラストは、明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値の一例であり、有形成分の形態情報である。明視野のコントラストは、例えば、明視野画像において有形成分の領域であると特定された画素において、3×3の画素範囲内で画素値の勾配を加算し、画素範囲をずらして画素範囲ごとに画素値の勾配を計算し、全画素範囲の画素値の勾配を有形成分の領域の画素数で除算した値である。明視野の輝度のばらつきは、明視野画像に基づく有形成分の輝度のばらつきに関する値の一例であり、有形成分の形態情報である。明視野の輝度のばらつきは、例えば、明視野画像において有形成分の領域であると特定された画素の値の標準偏差である。
【0064】
明視野のコントラストは、明視野画像における画素値の変化量を示している。例えば、明視野画像において有形成分の縁と内部との濃淡の差が大きいほど、明視野のコントラストが大きくなる。明視野のコントラストは、集塊面と内部との濃淡の差や、マルベリー小体の渦巻き形状による濃淡の差などにより変化する。明視野の輝度のばらつきは、明視野画像における画素値の分布状態を示している。例えば、明視野画像において有形成分の画素値のばらつきが大きく、画素値が不均一であるものほど、明視野の輝度のばらつきは大きくなる。マルベリー小体は渦巻状の形状を有しているものが多いため、マルベリー小体に対応する有形成分の明視野のコントラストおよび輝度のばらつきは、比較的大きくなる。
【0065】
処理部11は、明視野画像から取得した明視野のコントラストおよび明視野の輝度のばらつきを用いて、第2抽出工程で抽出した範囲R2内の全有形成分をスキャッタグラム230にプロットする。スキャッタグラム230の横軸は明視野のコントラストであり、縦軸は明視野の輝度のばらつきである。
【0066】
処理部11は、スキャッタグラム230において、マルベリー小体に対応する範囲R3に含まれる有形成分を抽出する。範囲R3は、あらかじめ記憶部12に記憶された固定の範囲である。範囲R3は、位置R43付近に分布する明暗のみで示される有形成分と、位置R44付近に分布するディブリスと、位置R45付近に分布するフォーカスが合っていない有形成分と、位置R46付近に分布する小さい有形成分の集塊とを除外できる範囲に設定される。具体的には、範囲R3は、ディブリスが出現する位置R44よりもコントラストに関する値が大きく、小さい有形成分の集塊が出現する位置R46よりも輝度のばらつきに関する値が大きい領域に設定される。範囲R3内の有形成分が抽出されることにより、第3抽出工程が終了する。
【0067】
図10には、
図9のスキャッタグラム230において位置R43、R44、R45、R46付近にプロットされた有形成分の明視野画像が例示されている。
【0068】
図10の一段目に示すように、位置R43付近の有形成分の明視野画像には、明暗のみを示す有形成分が写っている。明暗のみで示される有形成分は、範囲R3の外側の位置R43付近に分布するため、第3抽出工程によって除外される。
【0069】
図10の二段目に示すように、位置R44付近の有形成分の明視野画像には、ディブリスが写っている。ディブリスとは、例えば壊死組織片である。ディブリスは、範囲R3の外側の位置R44付近に分布するため、第3抽出工程によって除外される。
【0070】
図10の三段目に示すように、位置R45付近の有形成分の明視野画像には、フォーカスが合っていない有形成分が写っている。フォーカスが合っていない有形成分は、範囲R3の外側の位置R45付近に分布するため、第3抽出工程によって除外される。
【0071】
図10の四段目に示すように、位置R46付近の有形成分の明視野画像には、小さい有形成分の集塊が写っている。小さい有形成分の集塊は、範囲R3の外側の位置R46付近に分布するため、第3抽出工程によって除外される。
【0072】
図11には、
図9のスキャッタグラム230において範囲R3にプロットされた有形成分の明視野画像、第1蛍光画像、第2蛍光画像および第3蛍光画像が例示されている。
【0073】
範囲R3には、マルベリー小体、尿細管上皮細胞および塩類などが分布する。
【0074】
範囲R3の明視野画像には、内部に、渦巻き形状、二重円および白抜けなどが形成されたマルベリー小体が含まれる。マルベリー小体は、マルベリー小体の最下段の明視野画像に示すように、集塊状(桑の実状)の形状を含むこともある。マルベリー小体は、第2蛍光色素によってほぼ染色されないため、第2蛍光画像には第2蛍光色素からの蛍光がほぼ写らない。また、多くのマルベリー小体は、集塊状となったマルベリー小体を除き、第1蛍光色素によってほぼ染色されないため、第1蛍光画像には第1蛍光色素からの蛍光がほぼ写らない。
【0075】
本実施形態では、第3蛍光画像はマルベリー小体の抽出に用いられないが、有形成分中のGb3の有無を確認するために、尿検体中のGb3が第3蛍光色素で標識され、第3蛍光画像が取得されている。
【0076】
マルベリー小体の第3蛍光画像を参照すると、マルベリー小体にはGb3が発現することがあり、例えば、マルベリー小体が集塊状の形状である場合にGb3が発現することがある。しかしながら、尿細管上皮細胞の第3蛍光画像を参照すると、尿細管上皮細胞にもGb3が発現することがある。したがって、Gb3の発現の有無によってマルベリー小体と尿細管上皮細胞とを分類するのは困難であることが分かる。これに対し、実施形態によるマルベリー小体の抽出工程では、範囲R3に一部の尿細管上皮細胞が残るものの、
図6のスキャッタグラム220において、尿細管上皮細胞の多くは範囲R42に分布し、範囲R42は、マルベリー小体に対応する範囲R2とは重なっていないため、特に第2抽出工程において、多くの尿細管上皮細胞を除外できる。
【0077】
なお、
図11の上段に示すマルベリー小体のうち、上から2番目と3番目の画像のマルベリー小体は、第3蛍光色素によってほぼ染色されていない。このように、Gb3を特異的に染色する抗体染色色素を用いてマルベリー小体の視認性を向上させる従来の方法では、十分な視認性が得られないことがある。
【0078】
また、範囲R3には、
図11の中段に示す尿細管上皮細胞や、
図11の下段に示す塩類などが残るが、範囲R3に含まれるマルベリー小体は、オペレータにより、表示部14に表示される画面300を用いて目視により特定される。画面300については、追って
図19以降を参照して説明する。第1~第3抽出工程によれば、尿検体中に含まれるマルベリー小体以外の多くの有形成分が除外されるため、すなわち、マルベリー小体に対応する範囲R1、R2、R3に含まれる有形成分が抽出されるため、オペレータは、後述する画面300に表示される画像を参照して、効率よくマルベリー小体を特定できる。
【0079】
次に、
図12~
図18を参照して、12人の被検者に対して第1~第3抽出工程を行って、マルベリー小体を抽出した実験について説明する。
【0080】
本実験において、核酸を染色する第1蛍光色素として、UF-フルオロセルCR(シスメックス株式会社製)を使用し、赤血球に特異的に結合する抗体として、Glycophorin A抗体:SC―53295(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY, INC.製)を使用し、当該抗体に結合する第2蛍光色素として、MIX―n-STAIN CF594 Antibody Labeling Kits:92256(Biotium社製)を使用した。また、第1蛍光色素を励起する波長λ11は、488nmであり、第2蛍光色素を励起する波長λ12は、592nmであった。
【0081】
図12は、第1~第3抽出工程において、各範囲に含まれる有形成分の数を示す表である。
【0082】
この実験では、12人の被検者からそれぞれ尿検体を採取し、採取した尿検体の一部に対して熟練の検査技師による顕微鏡検査を行い、他の一部に対して
図3のステップS1~S6の処理を行った。
【0083】
検査技師は、尿検体の一部に対して顕微鏡検査を行い、マルベリー小体が含まれると判断した場合に当該尿検体を陽性とし、マルベリー小体が含まれないと判断した場合に当該尿検体を陰性とした。検体IDがF005、F006、F032、F035、F047、F049、F060、F083、F084、F095の尿検体は、顕微鏡検査の結果、陽性と判断された。検体IDがN007、N008の尿検体は、顕微鏡結果の結果、陰性と判断された。
【0084】
一方、同一の尿検体の他の一部については、
図3のステップS1~S6の処理を行い、ステップS4で得られたスキャッタグラム210、ステップS5で得られたスキャッタグラム220、ステップS6で得られたスキャッタグラム230の有形成分の数、マルベリー小体の数、およびマルベリー小体の比率を計数および算出した。マルベリー小体であるか否かは、ステップS3で撮像部19により撮像された画像を熟練の検査技師が目視することによって判定された。表の「All」は、ステップS4で得られたスキャッタグラム210に含まれる有形成分の数である。表の「R1」は、ステップS4で得られたスキャッタグラム210の範囲R1に含まれる有形成分の数である。表の「R2」は、ステップS5で得られたスキャッタグラム220の範囲R2に含まれる有形成分の数である。表の「R3」は、ステップS6で得られたスキャッタグラム230の範囲R3に含まれる有形成分の数である。マルベリー小体の割合は、同じ範囲において、マルベリー小体の数を有形成分の数で除算したものである。
【0085】
図12に示すように、撮像部19で撮像された全ての有形成分に対して、第1~第3抽出工程を行うことにより、いずれの尿検体においても有形成分の数は顕著に減少している。一方、いずれの尿検体においても、マルベリー小体の数は、第1~第3抽出工程によってほぼ減少しなかった。言い換えれば、最終的に範囲R3により抽出されたマルベリー小体の数は、撮像部19で撮像された全てのマルベリー小体から僅かに減少するのみであった。これにより、マルベリー小体の割合は、抽出を行う度に上昇し、最終的に1%~5%程度まで大きく上昇した。よって、撮像部19で撮像された全ての有形成分から、マルベリー小体をより正確に抽出できたことが分かる。
【0086】
図13~
図18は、
図12に示した尿検体に対して第1~第3抽出工程において得られたスキャッタグラム210、220、230である。
【0087】
図13~
図18において、グレーのプロットは、ステップS3で撮像部19により撮像された画像を熟練の検査技師が目視することによってマルベリー小体であると判定された有形成分に対応し、白のプロットは、マルベリー小体であると判定された有形成分以外の有形成分に対応する。
【0088】
なお、
図4、6、および9のスキャッタグラム210、220、230におけるグレーのプロットも同様に、ステップS3で撮像部19により撮像された画像を熟練の検査技師が目視することによってマルベリー小体であると判定された有形成分に対応する。但し、熟練の検査技師が目視によりマルベリー小体であるか否かを判定すること、および、判定結果によってプロットを色分けすることは、本実験の効果を確認することを目的とするものであり、省略可能である。
【0089】
また、検体IDがF005の尿検体は、
図4~
図11の説明で例示した尿検体と同一である。したがって、
図13の上段に示すスキャッタグラム210、220、230は、
図4、6、9に示したスキャッタグラムと同一であるが、便宜上、再掲した。
【0090】
図13~
図18の各尿検体のスキャッタグラム210、220、230を参照して分かるように、グレーで示すマルベリー小体のプロットは、第1~第3抽出工程による範囲R1、R2、R3の抽出範囲にほぼ入っている。このように、あらかじめ記憶部12に記憶された範囲R1、R2、R3を用いることで、どの尿検体に対しても、適正にマルベリー小体を抽出できることが分かる。
【0091】
次に、
図3のステップS7で行われる有形成分の画像を表示する処理について、
図19~
図25を参照して説明する。
図3のステップS7では、第1~第3抽出工程により抽出された有形成分(
図9のスキャッタグラム230の範囲R3に含まれる有形成分)の画像が、以下に示す画面300に表示され、マルベリー小体の計数結果の履歴および計数結果の変化に基づく情報が、以下に示す画面400に表示される。
【0092】
図19は、有形成分画像を表示する画面300の構成を模式的に示す図である。
【0093】
画面300は、検体ID表示領域301と、被検者ID表示領域302と、有形成分の画像を表示する画像表示領域310と、を備える。また、画面300は、画像表示領域310に表示する画像の種類を選択するための、明視野画像表示ボタン321と、第1蛍光画像表示ボタン322と、第2蛍光画像表示ボタン323と、第3蛍光画像表示ボタン324と、を備える。また、画面300は、画像表示領域310に表示する画像の並び順を設定するための、番号順ボタン331と、大きさ順ボタン332と、を備える。また、画面300は、画像表示領域310で選択されたマルベリー小体の数を表示する計数結果表示領域341と、計数結果を確定するための確定ボタン342と、を備える。
【0094】
オペレータが、検体IDおよび被検者IDを入力した上で、画面300を表示させる指示を入力すると、処理部11は、
図19に示す画面300を表示部14に表示する。
【0095】
オペレータが、明視野画像表示ボタン321、第1蛍光画像表示ボタン322、第2蛍光画像表示ボタン323および第3蛍光画像表示ボタン324のいずれかを操作すると、処理部11は、操作されたボタンに対応する種類の画像を、画像表示領域310に表示する。画像表示領域310には、検体ID表示領域301で示された尿検体から得られた、範囲R3に含まれる有形成分の画像が表示される。
図19に示す例は、画像の種類を選択する4つのボタンのうち明視野画像表示ボタン321が操作された状態を示している。この結果、画像表示領域310には、明視野画像が表示されている。
【0096】
オペレータが、番号順ボタン331および大きさ順ボタン332のいずれかを操作すると、処理部11は、画像表示領域310に表示される画像の順序を入れ替える。各画像には有形成分の通し番号が付されており、番号順ボタン331が操作されると、この通し番号の順に画像が並べ替えられる。大きさ順ボタン332が操作されると、ステップS4で取得された明視野サイズに基づき、画像上の有形成分の大きさの順に画像が並べ替えられる。
図19に示す例は、並び順を設定する2つのボタンのうち番号順ボタン331が操作された状態を示している。番号順ボタン331および大きさ順ボタン332のいずれも、続けて操作されることにより、表示順が昇順と降順との間で入れ替えられる。
【0097】
図20に示す例は、並び順を設定する2つのボタンのうち大きさ順ボタン332が操作された状態を示している。
図20には、
図21を参照して後述するように、マルベリー小体として選択された有形成分の画像に、太い枠線312が付与されている。マルベリー小体は互いに同等の大きさを有するため、各画像を大きさ順に並べることにより、マルベリー小体に対応する画像が近接して並ぶことになる。これにより、オペレータは、マルベリー小体の選択をより正確に行うことができる。
【0098】
なお、画面300が表示される際に、処理部11は、画像表示領域310に表示される画像を、番号順に表示してもよく、大きさ順に表示してもよい。また、画面300には、明視野サイズの順で画像を並べ替えるためのボタン、明視野フォーカスの順で画像を並べ替えるためのボタン、核酸に関する平均輝度の順で画像を並べ替えるためのボタン、赤血球に関する平均輝度の順で画像を並べ替えるためのボタン、明視野のコントラストの順で画像を並べ替えるためのボタンおよび明視野の輝度のばらつきの順で画像を並べ替えるためのボタンの少なくとも一つが配置されてもよい。
【0099】
オペレータは、画像表示領域310内の画像を参照し、画像に写っている有形成分がマルベリー小体である可能性があると判断すると、当該画像に対して操作(例えば、クリック)を行う。処理部11は、画像表示領域310内の画像が操作されると、画面300上に拡大画像領域311を重ねて表示する。
【0100】
図21は、拡大画像領域311が表示された画面300の構成を模式的に示す図である。
【0101】
拡大画像領域311は、画像表示領域310で操作された画像を拡大して表示する。拡大画像領域311は、チェックボックス311aを備える。オペレータは、拡大された画像をさらに観察し、当該画像に写っている有形成分がマルベリー小体であると判断すると、チェックボックス311aにチェックを入れる。
【0102】
図22には、オペレータによりマルベリー小体と判断された有形成分の明視野画像が例示されている。
【0103】
マルベリー小体は、一段目に示すように黒い渦巻状を有する場合、二段目に示すように白い渦巻状を有する場合、三段目に示すように二重円を有する場合、四段目に示すように白抜けを有する場合がある。オペレータは、このようなマルベリー小体の形状を把握した上で、
図19~21に示す画像表示領域310および拡大画像領域311を参照して、画像に写っている有形成分がマルベリー小体か否かを判断する。このとき、上述したように、第1~第3抽出工程によりマルベリー小体以外の有形成分が大幅に除外されているため、オペレータは、
図19~21に示すような画像を参照してマルベリー小体か否かを連続的に判定する作業を、より正確に行うことができる。
【0104】
図21に戻り、処理部11は、チェックボックス311aにチェックが入れられた画像にフラグを紐付けて記憶部12(
図1参照)に記憶し、画像表示領域310の当該画像に太い枠線312を付与する。このように、画像に太い枠線312が付与されると、画像表示領域310の複数の画像のうち、マルベリー小体と判断された有形成分の画像を把握しやすくなる。また、チェックが入れられた画像にフラグが紐付けられると、マルベリー小体と判断された画像を、後日、再度確認することもできる。
【0105】
なお、画像に対する指示入力は、チェックボックス311aを介して行われることに限らず、画像に対して他の操作(例えば、右クリックやダブルクリックなど)を介して行われてもよい。
【0106】
また、処理部11は、チェックボックス311aにチェックが入れられた有形成分の数を、計数結果表示領域341に表示する。これにより、オペレータは、マルベリー小体と判断した有形成分の数(太い枠線312が付与された有形成分の数)を円滑に把握できる。
【0107】
さらに、オペレータが確定ボタン342を操作すると、処理部11は、チェックボックス341aを介してマルベリー小体であると判断された有形成分の数と、範囲R3内の有形成分の数に対するマルベリー小体と判断された有形成分の数の割合と、検体IDと、被検者IDと、現在の日時とを含む計数結果を、外部のホストコンピュータ(
図1参照)に送信する。計数結果は、ホストコンピュータに送信されることに代えて、または加えて、記憶部12に記憶されてもよい。
【0108】
なお、
図21では、拡大画像領域311に、画像表示領域310内で操作された画像の拡大画像のみが表示されたが、これに限らず、
図23に示すように、画像表示領域310内で操作された画像中の有形成分について、対応する全ての画像(明視野画像、第1蛍光画像、第2蛍光画像および第3蛍光画像)が表示されてもよい。この場合、オペレータは、全ての画像を参照しながら、対象の有形成分がマルベリー小体であるか否かを円滑に判断できる。なお、この場合も第3蛍光画像の表示は省略可能である。
【0109】
また、拡大画像領域311に、マルベリー小体の形状(渦巻状、二重円および白抜けなど)に対するチェックボックスが配置されてもよい。この場合、オペレータは、画像を参照してマルベリー小体の形状を判断し、マルベリー小体の形状に応じてチェックボックスにチェックを入れる。そして、画面300には、マルベリー小体の形状ごとの計数結果が表示され、マルベリー小体の形状ごとに画像を並べ替えるためのボタンが配置される。これにより、典型的な形状(渦巻状や二重円)のマルベリー小体と、非典型な形状(それ以外の形状)のマルベリー小体とを、画像表示領域310において確認しやすくなるため、例えば、ファブリー病の患者に対して行われた酵素補充療法の効果を確認できる。
【0110】
また、画面300に、
図4、6、9に示したスキャッタグラム210、220、230が表示されてもよい。この場合、オペレータが画像表示領域310内の画像を操作すると、スキャッタグラム上の対応する有形成分のプロットにマークが付されてもよく、オペレータがスキャッタグラム上の有形成分のプロットを操作すると、画像表示領域310内の対応する画像にマークが付されてもよい。
【0111】
図24は、同一被検者に対するマルベリー小体の計数結果の履歴および変化を表示する画面400の構成を模式的に示す図である。
【0112】
画面400は、被検者ID表示領域401と、リスト表示領域411と、グラフ表示領域412と、を備える。
【0113】
オペレータが、被検者IDを入力した上で、画面400を表示させる指示を入力すると、処理部11は、
図24に示す画面400を表示部14に表示する。このとき、処理部11は、被検者IDに基づいてホストコンピュータ(
図1参照)に問い合わせを行い、ホストコンピュータから被検者IDに対応する計数結果を受信する。1つの被検者IDに対応する計数結果が複数ある場合、処理部11は、ホストコンピュータから、複数の計数結果を計数結果の履歴として受信する。処理部11は、受信した計数結果に基づいて、リスト表示領域411およびグラフ表示領域412を表示する。
【0114】
リスト表示領域411の各行は、1つの計数結果に対応する。リスト表示領域411は、マルベリー小体であると判断された有形成分の数と、範囲R3内の有形成分の数に対するマルベリー小体と判断された有形成分の数の割合とを表示する。グラフ表示領域412は、リスト表示領域411のデータに基づくグラフである。グラフ表示領域412のグラフは、計数結果の変化に基づく情報である。
【0115】
なお、
図24に示すリスト表示領域411およびグラフ表示領域412は、
図19~21に示した画面300とは別の画面400に表示されたが、
図25に示すように、画面300に合わせて表示されてもよい。
【0116】
<実施形態による有形成分検出方法、有形成分検出装置およびプログラムの効果>
図3のステップS1において、処理部11は、被検者から採取した尿検体と、核酸を染色する第1蛍光色素と、赤血球に特異的に結合する抗体と、赤血球に特異的に結合する抗体に結合する第2蛍光色素とを含む試料を調製するよう、試料調製部18を駆動する。ステップS3において、処理部11は、試料中の複数の有形成分を撮像して蛍光画像を取得する。ステップS5において、処理部11は、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲R2(
図6参照)に含まれる有形成分を抽出する。
【0117】
この処理によれば、蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲R2に含まれる有形成分が抽出されるため、マルベリー小体をより正確に抽出できる。特に、マルベリー小体と形態的に類似する赤血球および真菌を除外して、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0118】
蛍光画像から得られた情報は、有形成分から第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値および当該有形成分から第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値を含む。
【0119】
この構成によれば、赤血球、尿細管上皮細胞、尿路上皮細胞、白血球および真菌などを除外できる。
【0120】
蛍光画像は、第1蛍光色素により生じた蛍光を撮像した第1蛍光画像および第2蛍光色素により生じた蛍光を撮像した第2蛍光画像を含む。
【0121】
この構成によれば、第1蛍光色素により生じた蛍光および第2蛍光色素により生じた蛍光をそれぞれ個別に撮像することにより、第1蛍光量に関する値および第2蛍光量に関する値を円滑に取得できる。
【0122】
有形成分を抽出する工程は、第1蛍光量に関する値および第2蛍光量に関する値が範囲R2に含まれる(すなわち、所定の条件に合致する)有形成分を抽出する、
図3のステップS5の第2抽出工程を含む。
【0123】
この構成によれば、所定の条件を用いることでマルベリー小体を抽出できるため、抽出を円滑に行うことができる。
【0124】
図3のステップS3において、処理部11は、試料中の複数の有形成分を撮像して明視野画像をさらに取得する。有形成分を抽出する工程は、蛍光画像から得られた情報および明視野画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲R1、R2、R3(
図4、6、9参照)に含まれる有形成分を抽出する、ステップS4の第1抽出工程、ステップS5の第2抽出工程およびステップS6の第3抽出工程を含む。
【0125】
この構成によれば、明視野画像を用いることで、マルベリー小体をさらに正確に抽出できる。
【0126】
明視野画像から得られた情報は、明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値および明視野画像に基づく有形成分のフォーカス状態に関する値を含む。
【0127】
この構成によれば、有形成分の大きさに関する値により、マルベリー小体以外の尿検体の有形成分(単一の細菌、サイズの大きい尿路上皮細胞、および扁平上皮細胞など)を除外できる。また、フォーカス状態に関する値により、目視確認に適さない有形成分の画像を除外できる。
【0128】
明視野画像から得られた情報は、明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値および明視野画像に基づく有形成分の輝度のばらつきに関する値を含む。
【0129】
この構成によれば、明暗のみで示される有形成分、ディブリス、フォーカスが合っていない有形成分、および小さい有形成分の集塊などを除外できる。
【0130】
有形成分を抽出する工程は、
図3に示したように、ステップS4の第1抽出工程と、ステップS5の第2抽出工程と、ステップS6の第3抽出工程と、を含む。第1抽出工程において、処理部11は、明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値および明視野画像に基づく有形成分のフォーカス状態に関する値が
図4の範囲R1に含まれる(すなわち、第1条件に合致する)有形成分を抽出する。第2抽出工程において、処理部11は、有形成分から第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値を第1蛍光画像から取得し、有形成分から第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値を第2蛍光画像から取得し、第1蛍光量に関する値および第2蛍光量に関する値が
図6の範囲R2に含まれる(すなわち、第2条件に合致する)有形成分を抽出する。第3抽出工程において、処理部11は、明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値および有形成分の輝度のばらつきに関する値が
図9の範囲R3に含まれる(すなわち、第3条件に合致する)有形成分を抽出する。
【0131】
第1~第3抽出工程によれば、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0132】
蛍光画像から得られた情報がマルベリー小体に対応する範囲R2は、赤血球に対応する範囲R41および真菌に対応する範囲R42と重ならない範囲である。
【0133】
この構成によれば、マルベリー小体と形態的に類似する赤血球および真菌を除外して、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0134】
図3のステップS7において、処理部11は、抽出したマルベリー小体に対応する範囲(例えば、
図9の範囲R3)に含まれる有形成分の画像を、
図19~21に示した画面300に表示する。
【0135】
この工程によれば、オペレータは、マルベリー小体に対応する範囲に含まれる有形成分の画像を参照して、マルベリー小体である可能性が高い有形成分を円滑に確認できる。
【0136】
処理部11は、
図3のステップS3において、試料中の複数の有形成分を撮像して明視野画像を取得し、ステップS7において、抽出した有形成分の明視野画像を、
図19~21に示した画像表示領域310に表示する。
【0137】
マルベリー小体は、明視野画像において特徴が現れやすい。したがって、この工程によれば、オペレータは、明視野画像を参照して、マルベリー小体である可能性が高い有形成分を円滑に確認できる。
【0138】
図3のステップS7において、処理部11は、抽出した有形成分の画像を、
図19~21に示した画像表示領域310に一覧表示する。
【0139】
この工程によれば、有形成分の画像が一覧表示されるため、オペレータは、複数の有形成分の画像を順に確認しやすい。
【0140】
図3のステップS7において、処理部11は、抽出した有形成分の画像を、
図20に示したように、画像表示領域310において、有形成分画像の大きさ順に一覧表示する。
【0141】
有形成分の大きさ順に並べ替えられると、画像表示領域310において、マルベリー小体と他の有形成分とが分かれて表示されやすくなる。このため、オペレータは、より正確にマルベリー小体を確認できる。
【0142】
図3のステップS7において、処理部11は、
図19~21の大きさ順ボタン332を介して、抽出した有形成分の画像を有形成分の大きさ順に並べる指示入力を受け付け、受け付けた指示入力に応じて、一覧表示した有形成分の画像を並べ替える。
【0143】
この工程によれば、オペレータは、一覧表示された有形成分を円滑に並べ替えることができる。
【0144】
図3のステップS7において、処理部11は、一覧表示した有形成分の画像の任意の1つを特定する指示入力を受け付け、
図21の拡大画像領域311に示したように、指示入力で特定された有形成分の画像を拡大表示する。
【0145】
この工程によれば、オペレータは、細部まで有形成分を見やすくなるため、対象の有形成分がマルベリー小体であるか否かをより正確に確認できる。
【0146】
図3のステップS7において、処理部11は、
図21のチェックボックス311aを介して、一覧表示した有形成分の画像のうちマルベリー小体の画像を特定する指示入力を受け付け、指示入力で特定された有形成分の画像を計数した計数結果を、
図21に示したように、計数結果表示領域341に表示する。
【0147】
この工程によれば、オペレータがマルベリー小体として特定した有形成分の数を、被検者がファブリー病に罹患しているか否かの判断などの病理診断に有効な情報として利用できる。
【0148】
処理部11は、
図24のリスト表示領域411に示したような、同一被検者に対する計数結果の履歴を記憶する。
【0149】
このような計数結果の履歴が表示されることにより、オペレータは、対象の被検者におけるマルベリー小体の状態の変遷を、適宜、確認できる。
【0150】
処理部11は、
図24のグラフ表示領域412に示したように、計数結果の履歴に基づいて、計数結果の変化に基づく情報を表示する。
【0151】
この工程によれば、オペレータは、対象の被検者におけるマルベリー小体数の変化を円滑に確認できる。したがって、被検者がファブリー病に罹患しているか否かの判断や被検者に対する投薬の効果の判断などの病理診断をより正確に進めることができる。
【0152】
図25の画面300に示したように、処理部11は、画像表示領域310に示す有形成分の画像の一覧とともに、グラフ表示領域412に示す計数結果の変化に基づく情報を表示する。
【0153】
この工程によれば、画像の一覧と計数結果の変化とを同時に参照できる。例えば、被検者に対する投薬等が効果的であったかを確認できる。
【0154】
図3のステップS7において、処理部11は、
図21のチェックボックス311aを介して、一覧表示した有形成分の画像のうちマルベリー小体の画像を特定する指示入力を受け付け、指示入力で特定された有形成分の画像にフラグを紐づけて記憶する。
【0155】
この工程によれば、オペレータがマルベリー小体と判定した有形成分画像を、その後にマーキングとともに表示できる。これにより、例えば、オペレータによる判定結果を、後日、医師が円滑に確認できる。よって、診断をより正確に進めることができる。
【0156】
図2に示したように、撮像部19は、試料が流されるフローセル110を備え、フローセル110を流れる試料中の複数の有形成分を撮像する。
【0157】
この構成によれば、多数の有形成分の画像を効率的に取得できる。
【0158】
<有形成分検出装置、方法およびプログラムの第1変更例>
上記実施形態では、第1抽出工程および第3抽出工程の両方が実行されたが、第1抽出工程および第3抽出工程のいずれか一方が省略されてもよく、第1抽出工程および第3抽出工程の両方が省略されてもよい。
【0159】
図26は、ステップS1において調製される試料に、第3蛍光色素で標識されたGb3抗体が含まれず、抽出工程として第2抽出工程のみが行われる場合の、処理部11による有形成分検出方法に関する処理を示すフローチャートである。
【0160】
図26の処理は、
図3の実施形態の処理と比較して、ステップS4の第1抽出工程およびステップS6の第3抽出工程が省略されている。
【0161】
この場合、ステップS5の第2抽出工程において、処理部11は、明視野画像、第1蛍光画像、および第2蛍光画像を取得する。また、処理部11は、撮像部19で撮像された全ての有形成分を、
図6のスキャッタグラム220にプロットし、スキャッタグラム220の範囲R2の有形成分を抽出する。そして、ステップS7において、処理部11は、ステップS5の第2抽出工程により抽出した有形成分の画像を画面300に表示する。
【0162】
このように、抽出工程として第2抽出工程のみが行われる場合も、有形成分から第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値と、当該有形成分から第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値とにより規定される範囲R2内の有形成分が抽出される。範囲R2には、上述したように、マルベリー小体が含まれており、赤血球、尿細管上皮細胞、尿路上皮細胞、白血球および真菌はほぼ含まれない。したがって、
図26に示す処理においても、これらのマルベリー小体以外の有形成分を除外して、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0163】
<有形成分検出装置、方法およびプログラムの第2変更例>
上記実施形態では、第1抽出工程において、
図4に示したように、明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値および明視野画像に基づく有形成分のフォーカス状態に関する値の両方が用いられたが、これに限らず、大きさに関する値のみが用いられてもよく、フォーカス状態に関する値のみが用いられてもよい。以下では、
図12に示した検体IDが「F005」の尿検体から得られた画像を例として用いて、本第2変更例の有形成分検出方法における第1抽出工程について説明する。
【0164】
図27は、明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値のみを用いて第1抽出工程が行われる例を示す図である。
【0165】
図27のグラフは、撮像部19で撮像された全ての有形成分に基づくグラフである。
図27のグラフにおいて、横軸は明視野サイズを示し、縦軸は頻度を示している。範囲R11は、
図4の範囲R1の明視野サイズにおける範囲(横軸方向の範囲)と同一である。
【0166】
この場合の第1抽出工程では、範囲R11(第1条件)に含まれる有形成分が抽出される。これにより、検体IDが「F005」の尿検体の場合、撮像部19で撮像された276928個の全有形成分から、範囲R11の84328個の有形成分が抽出される。すなわち、全有形成分のうち30.5%が抽出され、69.5%が除外される。
【0167】
図28は、明視野画像に基づく有形成分のフォーカス状態に関する値のみを用いて第1抽出工程が行われる例を示す図である。
【0168】
図28のグラフにおいて、横軸は明視野フォーカスを示し、縦軸は頻度を示している。
図28のグラフは、撮像部19で撮像された全ての有形成分に基づくグラフである。範囲R12は、
図4の範囲R1の明視野フォーカスにおける範囲(縦軸方向の範囲)と同一である。
【0169】
この場合の第1抽出工程では、範囲R12(第1条件)に含まれる有形成分が抽出される。これにより、検体IDが「F005」の尿検体の場合、撮像部19で撮像された276928個の全有形成分から、範囲R12の240649個の有形成分が抽出される。すなわち、全有形成分のうち86.9%が抽出され、13.1%が除外される。なお、範囲R11およびR12は、範囲R1内の有形成分を少なくとも含む範囲であるため、範囲R11およびR12には、範囲R1内と同数以上のマルベリー小体が含まれる。
【0170】
以上のように、第1抽出工程において、明視野画像に基づく有形成分の大きさに関する値および明視野画像に基づく有形成分のフォーカス状態に関する値のいずれか一方が用いられたとしても、マルベリー小体である可能性が低い有形成分を大幅に除外することができ、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0171】
また、上記の検体IDが「F005」の例からも分かるように、大きさに関する値のみを用いた第1抽出工程によって除外される有形成分の割合(69.5%)は、フォーカス状態に関する値のみを用いた第1抽出工程によって除外される有形成分の割合(13.1%)よりも大きい。したがって、第1抽出工程では、少なくとも明視野サイズ(有形成分の大きさに関する値)が用いられることが好ましい。
【0172】
また、第1抽出工程、第2抽出工程および第3抽出工程は、上記実施形態に示した順序で実行されることに限らないが、第1抽出工程において少なくとも大きさに関する値が用いられる場合、第1抽出工程は、第2抽出工程および第3抽出工程に先立って実行されることが好ましい。この場合、第1抽出工程において有形成分の数を大きく減らした状態でその後の処理を進めることができるため、後の工程における処理部11の演算量を減らすことができる。
【0173】
<有形成分検出装置、方法およびプログラムの第3変更例>
上記実施形態では、第3抽出工程において、
図9に示したように、明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値および有形成分の輝度のばらつきに関する値の両方が用いられたが、これに限らず、コントラストに関する値のみが用いられてもよく、輝度のばらつきに関する値のみが用いられてもよい。以下では、
図12に示した検体IDが「F005」の尿検体から得られた画像を例として用いて、本第3変更例の有形成分検出方法における第3抽出工程について説明する。
【0174】
図29は、明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値のみを用いて第3抽出工程が行われる例を示す図である。
【0175】
図29のグラフは、第2抽出工程により抽出された有形成分(
図6の範囲R2により抽出された有形成分)に基づくグラフである。
図29のグラフにおいて、横軸は明視野のコントラストを示し、縦軸は頻度を示している。範囲R31は、
図9の範囲R3の明視野のコントラストにおける範囲(横軸方向の範囲)と同一である。
【0176】
この場合の第3抽出工程では、範囲R31に含まれる有形成分が抽出される。これにより、検体IDが「F005」の尿検体の場合、範囲R2により抽出された42430個の有形成分から、範囲R31の14798個の有形成分が抽出される。すなわち、範囲R2の有形成分のうち34.9%が抽出され、65.1%が除外される。
【0177】
図30は、有形成分の輝度のばらつきに関する値のみを用いて第3抽出工程が行われる例を示す図である。
【0178】
図30のグラフは、第2抽出工程により抽出された有形成分(
図6の範囲R2により抽出された有形成分)に基づくグラフである。
図30のグラフにおいて、横軸は明視野の輝度のばらつきを示し、縦軸は頻度を示している。範囲R32は、
図9の範囲R3の明視野の輝度のばらつきにおける範囲(縦軸方向の範囲)と同一である。
【0179】
この場合の第3抽出工程では、範囲R32に含まれる有形成分が抽出される。これにより、検体IDが「F005」の尿検体の場合、範囲R2により抽出された42430個の有形成分から、範囲R32の14945個の有形成分が抽出される。すなわち、範囲R2の有形成分のうち35.2%が抽出され、64.8%が除外される。なお、範囲R31およびR32は、範囲R3内の有形成分を少なくとも含む範囲であるため、範囲R31およびR32には、範囲R3内と同数以上のマルベリー小体が含まれる。
【0180】
以上のように、第3抽出工程において、明視野画像に基づく有形成分のコントラストに関する値および有形成分の輝度のばらつきに関する値のいずれか一方が用いられたとしても、マルベリー小体である可能性が低い有形成分を大幅に除外することができ、マルベリー小体をより正確に抽出できる。
【0181】
<その他の変更例>
上記実施形態では、
図3に示したように、第1抽出工程、第2抽出工程および第3抽出工程は、この順序で実行された。しかしながら、第1抽出工程、第2抽出工程および第3抽出工程の実行順序は、これに限らない。例えば、第2抽出工程、第1抽出工程および第3抽出工程が、この順で実行されてもよい。3つの抽出工程の実行順序が入れ替えられる場合、第1抽出工程、第2抽出工程および第3抽出工程は、先に実行された抽出工程によって抽出された有形成分群に対して抽出を実行する。3つの抽出工程の実行順序が入れ替わったとしても、最終的に抽出される有形成分は、上記実施形態と同様である。
【0182】
ただし、
図12の有形成分数を参照して分かるように、第1抽出工程において除外できる有形成分の数は、他の抽出工程において除外できる有形成分の数に比べて数段多い。したがって、3つの抽出工程のうち第1抽出工程が最初に行われる方が、有形成分の数を減らした状態でその後の処理を進めることができるため、後の工程における処理部11の演算量を減らすことができる。
【0183】
上記実施形態では、
図3のステップS7において有形成分の画像の表示が行われたが、ステップS7の処理は省略されてもよい。この場合、例えば、第1~第3抽出工程によって抽出された有形成分が、処理部11または他の装置によって画像解析され、各有形成分がマルベリー小体である可能性が判定されてもよい。
【0184】
上記実施形態では、核酸に関する平均輝度(第1蛍光色素により生じた第1蛍光量に関する値)が第1蛍光画像から取得され、赤血球に関する平均輝度(第2蛍光色素により生じた第2蛍光量に関する値)が第2蛍光画像から取得された。しかしながら、これに限らず、第1蛍光色素により生じた蛍光および第2蛍光色素により生じた蛍光の両方が、カメラ154の同じ受光面上に導かれ、カメラ154は、これら2つの蛍光を撮像して、カラーで表現された1つの蛍光画像を生成してもよい。この場合、例えば、処理部11は、生成された1つの蛍光画像から、画像処理によって、核酸に関する平均輝度および赤血球に関する平均輝度の両方を抽出する。
【0185】
上記実施形態では、
図2に示したように、撮像部19は、フローセル110を備え、フローセル110を流れる試料中の複数の有形成分を撮像した。しかしながら、これに限らず、撮像部19は、顕微鏡により構成されてもよい。この場合、顕微鏡はスライドガラス上の試料中の複数の有形成分を撮像し、有形成分ごとに、少なくとも蛍光画像を、好ましくは、第1蛍光画像、第2蛍光画像および明視野画像を生成する。処理部11は、顕微鏡により取得された画像を用いて、上記実施形態と同様にマルベリー小体をより正確に抽出する。
上記実施形態では、範囲R1~R3は固定領域であったが、範囲R1~R3の少なくとも一つは可変領域であってもよい。例えば、範囲R1~R3の少なくとも一つは、スキャッタグラムにおける有形成分の分布状態に応じて変化する範囲であってもよい。
【0186】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0187】
1 有形成分検出装置
11 処理部
12a プログラム
18 試料調製部
19 撮像部
110 フローセル
R1、R2、R3 範囲