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特開2024-75126コイル基板、モータ用コイル基板及びモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075126
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】コイル基板、モータ用コイル基板及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
H02K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186334
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】平澤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】古野 貴之
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB13
5H603CD11
5H603CD12
(57)【要約】
【課題】性能の高いモータの提供。
【解決手段】実施形態のコイル基板は、第1面と第1面と反対側の第2面とを有するフレキシブル基板と、第1面上及び第2面上に設けられるコイル配線によって形成される複数個のコイル、とを有する。フレキシブル基板は第1端近傍の第1領域と、第1領域の隣の第2領域とを有している。複数個のコイルはそれぞれ、コイル配線が取り囲むように形成されることで1ターンを構成し、第1面上に形成されているコイル配線は、半ターンを構成し、第2面上に形成されているコイル配線は、半ターンを構成することを含む。複数個のコイルは、第1領域に形成される第1コイルと、第2領域に形成される第2コイルとを含む。コイル配線は、第1コイルを形成する第1コイル配線と第2コイルを形成する第2コイル配線とを含む。第2コイルのターン数は、第1コイルのターン数より多い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有するフレキシブル基板と、
前記第1面上及び前記第2面上に設けられるコイル配線によって形成される複数個のコイル、とを有するコイル基板であって、
前記コイル基板は、前記フレキシブル基板の長手方向の第1端を起点として、前記長手方向と直交する直交方向に延びる軸を中心として周方向に巻かれることによって円筒状に形成可能であり、
前記フレキシブル基板は前記第1端近傍の第1領域と、前記第1領域の隣の第2領域とを有しており、
前記複数個のコイルはそれぞれ、前記コイル配線が取り囲むように形成されることで1ターンを構成し、
前記第1面上に形成されている前記コイル配線は、半ターンを構成し、
前記第2面上に形成されている前記コイル配線は、半ターンを構成することを含み、
前記複数個のコイルは、前記第1領域に形成される第1コイルと、前記第2領域に形成される第2コイルとを含み、
前記コイル配線は、前記第1コイルを形成する第1コイル配線と前記第2コイルを形成する第2コイル配線とを含み、
前記第2コイルのターン数は、前記第1コイルのターン数より多い。
【請求項2】
請求項1のコイル基板であって、前記複数個のコイルはそれぞれ2ターン以上である。
【請求項3】
請求項1のコイル基板であって、前記第2コイル配線の幅は前記第1コイル配線の幅以上である。
【請求項4】
請求項1のコイル基板を周方向に複数周回巻くことによって形成されるモータ用コイル基板であって、前記コイル基板は前記第1端を起点として前記軸を中心として巻かれており、前記第1面が内面側に配置されており、前記第2面が外面側に配置されており、前記第1コイル配線は最内周の第1層に配置されており、前記第2コイル配線は前記第1層よりも外側の第2層に配置されている。
【請求項5】
請求項4のモータ用コイル基板であって、断面の外径の直径が50mm以下である。
【請求項6】
請求項4のモータ用コイル基板を円筒状のヨークの内側に配置し、前記モータ用コイル基板の内側に回転軸と磁石を配置することによって形成されるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コイル基板と、コイル基板を用いて形成されるモータ用コイル基板と、モータ用コイル基板を用いて形成されるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フレキシブル基板と、フレキシブル基板上に形成されていて、フレキシブル基板の一端から他端に向かって並んでいる複数の渦巻状のコイルとを有するコイル基板を開示する。コイル基板が円筒状に巻かれることでモータ用コイル基板が形成される。形成されたモータ用コイル基板を円筒状のヨークの内側に配置し、モータ用コイル基板の内側に回転軸と磁石を配置することによってモータが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-145779号公報
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
モータの性能において、トルクを向上させることが求められている。さらに、小型モータでのトルクを向上させることが求められている。しかしながら、特許文献1の技術では、フレキシブル基板に形成される各コイルの配線のターン数(巻き数)は一定である。また、フレキシブル基板の他端近傍にはコイルが形成されない非形成領域も存在する。
【0005】
そのため、特許文献1の技術では、コイル基板における導体の割合を高められないと考えられる。高いモータ性能が発揮できないことが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル基板は、第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有するフレキシブル基板と、前記第1面上及び前記第2面上に設けられるコイル配線によって形成される複数個のコイル、とを有する。前記コイル基板は、前記フレキシブル基板の長手方向の第1端を起点として、前記長手方向と直交する直交方向に延びる軸を中心として周方向に巻かれることによって円筒状に形成可能である。前記フレキシブル基板は前記第1端近傍の第1領域と、前記第1領域の隣の第2領域とを有している。前記複数個のコイルはそれぞれ、前記コイル配線が取り囲むように形成されることで1ターンを構成し、前記第1面上に形成されている前記コイル配線は、半ターンを構成し、前記第2面上に形成されている前記コイル配線は、半ターンを構成することを含む。前記複数個のコイルは、前記第1領域に形成される第1コイルと、前記第2領域に形成される第2コイルとを含む。前記コイル配線は、前記第1コイルを形成する第1コイル配線と前記第2コイルを形成する第2コイル配線とを含む。前記第2コイルのターン数は、前記第1コイルのターン数より多い。
【0007】
本発明の実施形態のコイル基板では、第2コイルのターン数は第1コイルのターン数より多い。即ち、コイル基板における導体の割合を高くすることができる。また、上記のコイル基板が円筒状に巻かれる場合の配線同士の位置合わせも適切に行われ得る。上記のコイル基板が円筒状に巻かれてモータ用コイル基板が形成される場合に、モータ用コイル基板が高い性能を発揮し得る。モータ用コイル基板を用いるモータのトルクが向上し得る。性能の高いモータが得られる。
【0008】
本発明のモータ用コイル基板は、上記の本発明のコイル基板を複数周回巻くことによって形成される。前記コイル基板は前記第1端を起点として前記軸を中心として巻かれており、前記第1面が内面側に配置されており、前記第2面が外面側に配置されており、前記第1コイル配線は最内周の第1層に配置されており、前記第2コイル配線は前記第1層よりも外側の第2層に配置されている。
【0009】
上記の通り、本発明の実施形態のモータ用コイル基板では、第2コイルのターン数は第1コイルのターン数より多い。即ち導体の割合を高くすることができる。また、配線同士の位置合わせも適切に行われる。モータ用コイル基板が高い性能を発揮し得る。モータ用コイル基板を用いるモータのトルクが向上し得る。性能の高いモータが得られる。
【0010】
本発明のモータは、上記の本発明のモータ用コイル基板を円筒状のヨークの内側に配置し、前記モータ用コイル基板の内側に回転軸と磁石を配置することによって形成される。
【0011】
本発明の実施形態のモータでは、モータ用コイル基板における導体の割合を高くすることができる。配線同士の位置合わせも適切に行われる。モータのトルクが向上し得る。性能の高いモータが得られる。さらに、小型モータのトルクが向上し得る。性能の高い小型モータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のコイル基板を模式的に示す平面図。
図2】実施形態のコイル基板を模式的に示す断面図。
図3A】実施形態のコイル基板におけるU相コイルを模式的に示す平面図。
図3B】実施形態のコイル基板におけるV相コイルを模式的に示す平面図。
図3C】実施形態のコイル基板におけるW相コイルを模式的に示す平面図。
図4】実施形態のコイル基板のU相、V相、W相を対比した平面図。
図5】実施形態のコイル基板を簡略化して示す説明図。
図6】実施形態のモータ用コイル基板を模式的に示す斜視図。
図7】実施形態のモータ用コイル基板における各端子の位置を模式的に示す説明図。
図8】実施形態のモータを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
図1は実施形態のコイル基板2を示す平面図である。図2は、図1のII-II間の断面図である。図3A図3Cは、それぞれ、U相コイル20U、V相コイル20V、W相コイル20Wを示す平面図である。図4はコイル基板2のU相、V相、W相を対比した平面図である。図5図1のコイル基板2を簡略化して示す平面図である。
【0014】
図1に示されるように、コイル基板2は、フレキシブル基板10と、U相コイル20Uと、V相コイル20Vと、W相コイル20Wと、U相端子40Uと、V相端子40Vと、W相端子40Wと、複数のコイル間接続線50U、50V、50Wと、複数の相間接続線60U、60Vと、戻り線70Wとを有する。
【0015】
フレキシブル基板10は、第1面10Fと、第1面10Fと反対側の第2面10Bとを有する樹脂基板である。フレキシブル基板10は、ポリイミド、ポリアミド等の絶縁性を有する樹脂を用いて形成される。フレキシブル基板10は可撓性を有する。フレキシブル基板10は第1辺E1~第4辺E4の四辺を有する矩形状に形成されている。第1辺E1はフレキシブル基板10の長手方向(図1の矢印LD方向)の一端側の短辺である。第2辺E2は長手方向の他端側の短辺である。第1辺E1と第2辺E2はともに長手方向と直交する直交方向(図1の矢印OD方向)に沿って延びる短辺である。第3辺E3と第4辺E4はともに長手方向に沿って延びる長辺である。後で詳しく説明されるように、コイル基板2が円筒状に巻かれてモータ用コイル基板550(図6参照)が形成される場合、第1面10Fは内周側に配置され、第2面10Bは外周側に配置される。
【0016】
フレキシブル基板10は、長手方向の一端側(第1辺E1側)の第1領域R1と、第1領域R1の隣の第2領域R2とを有する。第2領域R2は第2辺E2を含む。
【0017】
U相端子40U、V相端子40V、W相端子40Wは、いずれも、フレキシブル基板10の第3辺E3に形成されている。実施形態では、U相端子40UとW相端子40Wは第1領域R1内に配置されている。V相端子40Vは第2領域R2内に配置されている。図1に示されるように、U相端子40UはU相コイル20Uの始端20USに接続されている。同時に、U相端子40Uは戻り線70Wを介してW相コイル20Wの終端20WEに接続されている。V相端子40VはV相コイル20Vの始端20VSに接続されている。同時に、V相端子40Vは相間接続線60Uを介してU相コイル20Uの終端20UEに接続されている。W相端子40WはW相コイル20Wの始端20WSに接続されている。同時に、W相端子40Wは相間接続線60Vを介してV相コイル20Vの終端20VEに接続されている。すなわち実施形態では、U相コイル20U、V相コイル20V、W相コイル20WはΔ結線されている(図5参照)。なお、他の例では、U相コイル20U、V相コイル20V、W相コイル20WはY結線されていてもよい。
【0018】
U相コイル20U、V相コイル20V、W相コイル20Wは、それぞれ、三相モータのU相、V相、W相を構成する。
【0019】
図1図3A図4に示されるように、U相コイル20Uの始端20USは第1領域R1内に配置されている。U相コイル20Uの終端20UEは第2領域R2内に配置されている。図3Aに示されるように、U相コイル20Uは、6個のコイル31U、32U、33U、34U、35U、36Uを含んでいる。6個のコイル31U~36Uは、U相コイル20Uの始端20USから終端20UEに向かって(第1領域R1から第2領域R2に向かって)この順で並んでいる。6個のコイル31U~36Uはコイル間接続線50Uによって相互に接続されている。
【0020】
6個のコイル31U~36Uは、いずれも、1ターン中の半ターンを構成する第1配線が第1面10F側に形成され、残り半ターンを構成する第2配線が第2面10B側に形成され、隣接する各ターンがずらされながら配置されることによって形成されている。第1配線と第2配線は、フレキシブル基板10を貫通するビア導体を介して電気的に接続されている。
【0021】
U相コイル20Uの始端20USから1番目のコイル31Uと3番目のコイル33Uと5番目のコイル35Uの巻き始め位置(始端)は第1面10Fに配置され、巻き終わり位置(終端)は第2面10Bに配置されている。フレキシブル基板10を第1面10F側から見る場合に、コイル31U、33U、35Uは反時計回りに巻かれている。
【0022】
一方、U相コイル20Uの始端20USから2番目のコイル32Uと4番目のコイル34Uと6番目のコイル36Uの巻き始め位置(始端)は第2面10Bに配置され、巻き終わり位置(終端)は第1面10Fに配置されている。フレキシブル基板10を第1面10F側から見る場合に、コイル32U、34U、36Uは時計回りに巻かれている。
【0023】
6個のコイル31U~36Uのうち、4個のコイル31U~34Uは第1領域R1に設けられている。残り2個のコイル35U、36Uは第2領域R2に設けられている。以下、第1領域R1内のコイル31U~34Uのことを「第1コイル31U~34U」、第2領域R2内のコイル35U、36Uのことを「第2コイル35U、36U」と呼ぶ場合がある。第1コイル31U~34Uを形成するコイル配線を「第1コイル配線」、第2コイル35U、36Uを形成するコイル配線を「第2コイル配線」と呼ぶ場合がある。
【0024】
図1図2図3A図4に示されるように、第1コイル31U~34Uを形成する第1コイル配線のターン数(巻き数)は3である。第2コイル35U、36Uを形成する第2コイル配線のターン数は4であり、第1コイル31U~34Uのターン数より多い。なお、図示されている第1コイル配線のターン数および第2コイル配線のターン数には限定されない。第1コイル31U~34Uのターン数は2以上の任意の数であってもよいし、その一例としてターン数を2~7にしてもよい。その場合も第2コイル35U、36Uのターン数は第1コイル31U~34Uのターン数より多い。
【0025】
また、第2コイル配線の幅は第1コイル配線の幅より大きい。他の例では、第2コイル配線の幅と第1コイル配線の幅は同じでもよい。
【0026】
図2図3A図1に示されるように、コイル31Uのコイル配線の一部は隣のコイル32Uのコイル配線の一部とフレキシブル基板10を介して重なっている。同様に、コイル32Uのコイル配線の一部は隣のコイル33Uのコイル配線の一部と重なる。コイル33Uのコイル配線の一部は隣のコイル34Uのコイル配線の一部と重なる。コイル34Uのコイル配線の一部は隣のコイル35Uのコイル配線の一部と重なる。コイル35Uのコイル配線の一部は隣のコイル36Uのコイル配線の一部と重なる。
【0027】
図3A図1に示されるように、コイル31Uとコイル32Uを接続するコイル間接続線50Uと、コイル33Uとコイル34Uを接続するコイル間接続線50Uと、コイル35Uとコイル36Uを接続するコイル間接続線50Uは第2面10Bに配置されている。一方、コイル32Uとコイル33Uを接続するコイル間接続線50Uと、コイル34Uとコイル35Uを接続するコイル間接続線50Uは第1面10Fに配置されている。U相端子40Uと相間接続線60Uは第1面10Fに配置されている。
【0028】
図1図3B図4に示されるように、V相コイル20Vの始端20VSは第2領域R2内に配置されている。V相コイル20Vの終端20VEは第1領域R1内に配置されている。図3Bに示されるように、V相コイル20Vは、6個のコイル31V、32V、33V、34V、35V、36Vを含んでいる。6個のコイル31V~36Vは、V相コイル20Vの始端20VSから終端20VEに向かって(第2領域R2から第1領域R1に向かって)この順で並んでいる。6個のコイル31V~36Vはコイル間接続線50Vによって相互に接続されている。
【0029】
6個のコイル31V~36Vは、いずれも、1ターン中の半ターンを構成する第1配線が第1面10F側に形成され、残り半ターンを構成する第2配線が第2面10B側に形成され、隣接する各ターンがずらされながら配置されることによって形成されている。第1配線と第2配線は、フレキシブル基板10を貫通するビア導体を介して電気的に接続されている。
【0030】
V相コイル20Vの始端20VSから1番目のコイル31Vと3番目のコイル33Vと5番目のコイル35Vの巻き始め位置(始端)は第1面10Fに配置され、巻き終わり位置(終端)は第2面10Bに配置されている。フレキシブル基板10を第1面10F側から見る場合に、コイル31V、33V、35Vは反時計回りに巻かれている。
【0031】
一方、V相コイル20Vの始端20VSから2番目のコイル32Vと4番目のコイル34Vと6番目のコイル36Vの巻き始め位置(始端)は第2面10Bに配置され、巻き終わり位置(終端)は第1面10Fに配置されている。フレキシブル基板10を第1面10F側から見る場合に、コイル32V、34V、36Vは時計回りに巻かれている。
【0032】
6個のコイル31V~36Vのうち、4個のコイル33V~36Vは第1領域R1に設けられている。残り2個のコイル31V、32Vは第2領域R2に設けられている。以下、第1領域R1内のコイル33V~36Vのことを「第1コイル33V~36V」、第2領域R2内のコイル31V、32Vのことを「第2コイル31V、32V」と呼ぶ場合がある。第1コイル33V~36Vを形成するコイル配線を「第1コイル配線」、第2コイル31V、32Vを形成するコイル配線を「第2コイル配線」と呼ぶ場合がある。
【0033】
図1図2図3B図4に示されるように、第1コイル33V~36Vを形成する第1コイル配線のターン数(巻き数)は3である。第2コイル31V、32Vを形成する第2コイル配線のターン数は4であり、第1コイル33V~36Vのターン数より多い。なお、図示されている第1コイル配線のターン数および第2コイル配線のターン数には限定されない。第1コイル33V~36Vのターン数は2以上の任意の数であってもよいし、その一例としてターン数を2~7にしてもよい。その場合も第2コイル31V、32Vのターン数は第1コイル33V~36Vのターン数より多い。
【0034】
また、第2コイル配線の幅は第1コイル配線の幅より大きい。他の例では、第2コイル配線の幅と第1コイル配線の幅は同じでもよい。
【0035】
図2図3B図1に示されるように、コイル31Vのコイル配線の一部は隣のコイル32Vのコイル配線の一部とフレキシブル基板10を介して重なっている。同様に、コイル32Vのコイル配線の一部は隣のコイル33Vのコイル配線の一部と重なる。コイル33Vのコイル配線の一部は隣のコイル34Vのコイル配線の一部と重なる。コイル34Vのコイル配線の一部は隣のコイル35Vのコイル配線の一部と重なる。コイル35Vのコイル配線の一部は隣のコイル36Vのコイル配線の一部と重なる。
【0036】
図3B図1に示されるように、コイル31Vとコイル32Vを接続するコイル間接続線50Vと、コイル33Vとコイル34Vを接続するコイル間接続線50Vと、コイル35Vとコイル36Vを接続するコイル間接続線50Vは第2面10Bに配置されている。一方、コイル32Vとコイル33Vを接続するコイル間接続線50Vと、コイル34Vとコイル35Vを接続するコイル間接続線50Vは第1面10Fに配置されている。V相端子40Vと相間接続線60Vは第1面10Fに配置されている。
【0037】
図1図3C図4に示されるように、W相コイル20Wの始端20WSは第1領域R1内に配置されている。W相コイル20Wの終端20WEは第2領域R2内に配置されている。図3Cに示されるように、W相コイル20Wは、6個のコイル31W、32W、33W、34W、35W、36Wを含んでいる。6個のコイル31W~36Wは、W相コイル20Wの始端20WSから終端20WEに向かって(第1領域R1から第2領域R2に向かって)この順で並んでいる。6個のコイル31W~36Wはコイル間接続線50Wによって相互に接続されている。
【0038】
6個のコイル31W~36Wは、いずれも、1ターン中の半ターンを構成する第1配線が第1面10F側に形成され、残り半ターンを構成する第2配線が第2面10B側に形成され、隣接する各ターンがずらされながら配置されることによって形成されている。第1配線と第2配線は、フレキシブル基板10を貫通するビア導体を介して電気的に接続されている。
【0039】
W相コイル20Wの始端20WSから1番目のコイル31Wと3番目のコイル33Wと5番目のコイル35Wの巻き始め位置(始端)は第1面10Fに配置され、巻き終わり位置(終端)は第2面10Bに配置されている。フレキシブル基板10を第1面10F側から見る場合に、コイル31W、33W、35Wは反時計回りに巻かれている。
【0040】
一方、W相コイル20Wの始端20WSから2番目のコイル32Wと4番目のコイル34Wと6番目のコイル36Wの巻き始め位置(始端)は第2面10Bに配置され、巻き終わり位置(終端)は第1面10Fに配置されている。フレキシブル基板10を第1面10F側から見る場合に、コイル32W、34W、36Wは時計回りに巻かれている。
【0041】
6個のコイル31W~36Wのうち、4個のコイル31W~34Wは第1領域R1に設けられている。残り2個のコイル35W、36Wは第2領域R2に設けられている。以下、第1領域R1内のコイル31W~34Wのことを「第1コイル31W~34W」、第2領域R2内のコイル35W、36Wのことを「第2コイル35W、36W」と呼ぶ場合がある。第1コイル31W~34Wを形成するコイル配線を「第1コイル配線」、第2コイル35W、36Wを形成するコイル配線を「第2コイル配線」と呼ぶ場合がある。
【0042】
図1図2図3C図4に示されるように、第1コイル31W~34Wを形成する第1コイル配線のターン数(巻き数)は3である。第2コイル35W、36Wを形成する第2コイル配線のターン数は4であり、第1コイル31W~34Wのターン数より多い。なお、図示されている第1コイル配線のターン数および第2コイル配線のターン数には限定されない。第1コイル31W~34Wのターン数は2以上の任意の数であってもよいし、その一例としてターン数を2~7にしてもよい。その場合も第2コイル35W、36Wのターン数は第1コイル31W~34Wのターン数より多い。
【0043】
また、第2コイル配線の幅は第1コイル配線の幅より大きい。他の例では、第2コイル配線の幅と第1コイル配線の幅は同じでもよい。
【0044】
図2図3C図1に示されるように、コイル31Wのコイル配線の一部は隣のコイル32Wのコイル配線の一部とフレキシブル基板10を介して重なっている。同様に、コイル32Wのコイル配線の一部は隣のコイル33Wのコイル配線の一部と重なる。コイル33Wのコイル配線の一部は隣のコイル34Wのコイル配線の一部と重なる。コイル34Wのコイル配線の一部は隣のコイル35Wのコイル配線の一部と重なる。コイル35Wのコイル配線の一部は隣のコイル36Wのコイル配線の一部と重なる。
【0045】
図3C図1に示されるように、コイル31Wとコイル32Wを接続するコイル間接続線50Wと、コイル33Wとコイル34Wを接続するコイル間接続線50Wと、コイル35Wとコイル36Wを接続するコイル間接続線50Wは第2面10Bに配置されている。一方、コイル32Wとコイル33Wを接続するコイル間接続線50Wと、コイル34Wとコイル35Wを接続するコイル間接続線50Wは第1面10Fに配置されている。W相端子40Wと戻り線70Wは第1面10Fに配置されている。
【0046】
図3C図5図1に示されるように、戻り線70Wは、W相コイル20Wの終端20WEとU相端子40Uの間を接続している。戻り線70Wは、第2領域R2から第1領域R1に亘って伸びている。
【0047】
図示は省略されるが、第1面10Fと第1面10F上に形成されている各コイル20U、20V、20Wの配線、コイル間接続線50U、50V、50W、相間接続線60U、60V、および戻り線70W上は樹脂絶縁層で覆われている。同様に、第2面10Bと第2面10B上に形成されている各コイル20U、20V、20Wの配線、コイル間接続線50U、50V、50W上は樹脂絶縁層で覆われている。
【0048】
図1図3A図3Cに示されるように、実施形態では各コイル20U、20V、20Wの配線は六角形状に配置されている。他の例では、各コイル20U、20V、20Wの配線は円形(真円形、楕円形)、三角形、四角形(正方形、長方形、ひし形)、五角形、七角形以上の多角形等、任意の形状に配置されていてもよい。また、すべてのコイルの配線の配置形状が同一であることに限られず、コイル間で配線の配置形状が異なっていてもよい。
【0049】
実施形態のコイル基板2は任意の方法で製造される。例えば、コイル基板2は、導体層(金属箔)を有するフレキシブル基板を出発材料として、テンティング法によって形成されてもよい。他の例では、コイル基板2は、フレキシブル基板上に印刷やディスペンス法で金属層を形成することによって得られてもよい。さらに他の例では、コイル基板2は、3Dプリンタで可撓性材料と金属層を形成することによって得られてもよい。
【0050】
図1図3A図3Cに示されるように、実施形態では、コイル20U、20V、20Wは、それぞれ、コイル配線が取り囲むように形成されることで1ターンを構成し、第1面10F上に形成されているコイル配線が半ターンを構成し、第2面10B上に形成されているコイル配線が残り半ターンを構成している。第1面10F上に形成されているコイル配線と第2面10B上に形成されているコイル配線はフレキシブル基板10を貫通する少なくとも1以上のビア導体で接続されている。この構造にすることで、フレキシブル基板10上において、コイル配線が形成されていないデッドスペースを少なくし、コイル基板2におけるコイル配線の占積率を向上させることができる。さらに、コイル配線の大きさや配線幅等を設計することにより、コイル基板2を巻いたときにモータ用コイル基板550(図6)を円筒形状に形成し易くなる。
【0051】
それに踏まえて、第2コイル(35U、36U、31V、32V、35W、36W)のターン数は、第1コイル(31U~34U、33V~36V、31W~34W)のターン数より多い。そのため、コイル基板2における導体の割合を高くすることができる。モータのトルクを向上させることができる。また、コイル基板2が円筒状に巻かれる場合の配線同士の位置合わせも適切に行われ得る。コイル基板2が円筒状に巻かれてモータ用コイル基板550が形成される場合に、モータ用コイル基板550が高い性能を発揮し得る。モータのトルクを向上させ得る。性能の高いモータが得られる。
【0052】
なお、仮に、第1面もしくは第2面上でコイル配線が1ターンを形成する構成を採用すると、フレキシブル基板上にコイル配線が形成されないデッドスペースが形成される。その場合、コイル基板におけるコイル配線の占積率が低くなる。
【0053】
図6は、実施形態のコイル基板2(図1図5)を用いたモータ用コイル基板550を模式的に示す斜視図である。図6に示されるように、実施形態のコイル基板2(図1図5)が円筒状に巻かれることによって、モータのためのモータ用コイル基板550が形成される。コイル基板2が円筒状に巻かれる場合、第1辺E1(図1)を起点として、直交方向に延びる軸(第1辺E1と平行に延びる軸)を中心に複数周回巻かれる。また、コイル基板の巻かれる回数は特に限定されない。コイル基板2が円筒状に巻かれる際、フレキシブル基板10の第1面10Fが内周側に配置され、第2面10Bが外周側に配置される。
【0054】
図7は、モータ用コイル基板550を軸方向に沿って見た場合の各端子の位置を模式的に示す。図7に示されるように、第1コイル31U~34U、33V~36V、31W~34Wを形成する第1コイル配線は、最内周の第1層551に配置されている。一方、第2コイル35U、36U、31V、32V、35W、36Wを形成する第2コイル配線は、第1層よりも外側の第2層552に配置されている。
【0055】
モータ用コイル基板550は、外周側であるほど、巻く長さが増すのである。そのため、コイル配線の大きさや配線幅などの所定の設計が決められたときに、第2コイルのターン数を前記第1コイルのターン数より多くすることで、内周とのコイル配線の占積率との差を小さくでき、モータ用コイル基板550のコイル配線の占積率を高めることができる。その結果、トルクを向上させることができる。
【0056】
また、コイル基板2において、第2コイル(35U、36U、31V、32V、35W、36W)のターン数を、第1コイル(31U~34U、33V~36V、31W~34W)のターン数より多くすることで、モータ用コイル基板550を巻いたとき、配線同士の位置合わせも適切に行い得る。その一例としては、U相、V相、W相を一定間隔で配置させたときに、内周側と外周側とでの位置合わせをすることができるのである。
【0057】
コイル基板2において、第2コイルのターン数を第1コイルのターン数より多くすることで、モータ用コイル基板550を用いて性能の高いモータ600を得ることができる。
【0058】
図7の例では第2層552は最外周の層である。他の例では、最外周はコイル配線が形成されていない部分のフレキシブル基板10で覆われていてもよい。
【0059】
モータ用コイル基板550の外周面(断面の外径)の直径は特に限定されないが、50mm以下であることが好ましい。モータ用コイル基板550の外周面(断面の外径)の直径は30mm以下であることがさらに好ましい。直径は50mm以下のモータ用コイル基板550を用いて小型のモータを形成することで、モータ性能の低下を効果的に抑制することができる。モータ用コイル基板550の外周面の直径はノギスで測定される。
【0060】
また、U相端子40U、V相端子40V、W相端子40Wは、周方向に略120°間隔で配置されている。U相端子40UとW相端子40Wは内周面に配置される。V相端子40Vは外周面に配置される。図7では、巻いた状態での導体層とその外側の導体層が重なっていることが示されているが、導体層とその外側の導体層が一部重なっている、あるいは導体層とその外側の導体層が重ならないようにしてもよい。
【0061】
図8は、実施形態のモータ用コイル基板550(図6図7)を用いたモータ600を模式的に示す断面図である。モータ600は、モータ用コイル基板550をヨーク560の内側に配置し、モータ用コイル基板550の内側に回転軸580と回転軸580に固定された磁石570とを配置することによって形成される。実施形態のモータ600はスロットレスモータである。
【0062】
以上の通り、実施形態のコイル基板2(図1図5)、モータ用コイル基板550(図6図7)、モータ600(図8)の構成が説明された。上記の通り、実施形態のコイル基板2では、第2コイル35U、36U、31V、32V、35W、36Wのターン数は第1コイル31U~34U、33V~36V、31W~34Wのターン数より多い。即ち、コイル基板2における導体の割合を高くすることができる。また、コイル基板2が円筒状に巻かれる場合の配線同士の位置合わせも適切に行われ得る。コイル基板2が円筒状に巻かれてモータ用コイル基板550が形成される場合に、モータ用コイル基板550が高い性能を発揮し得る。モータ用コイル基板550を用いるモータ600のトルクが向上する。性能の高いモータ600が得られる。さらに、小型モータのトルクが向上し得る。なお、本明細書における小型モータとは、外径の直径が50mm以下のモータである。
【0063】
[実施形態の改変例]
実施形態の改変例では、フレキシブル基板10は第1領域、第2領域、第3領域を有し、それぞれに第1コイル配線、第2コイル配線、第3コイル配線が形成される。このとき、第2コイル配線のターン数は第1コイル配線のターン数よりも多く、第3コイル配線のターン数は第2コイル配線のターン数よりも多くてもよい。
【符号の説明】
【0064】
2:コイル基板
10:フレキシブル基板
10F:第1面
10B:第2面
20U:U相コイル
20V:V相コイル
20W:W相コイル
31U~34U:第1コイル
35U、36U:第2コイル
33V~36V:第1コイル
31V、32V:第2コイル
31W~34W:第1コイル
35W、36W:第2コイル
550:モータ用コイル基板
551:第1層
552:第2層
560:ヨーク
570:磁石
580:回転軸
600:モータ
R1:第1領域
R2:第2領域
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8