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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075139
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】物体検知装置及び物体検知方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/162 20170101AFI20240527BHJP
   G06T 7/521 20170101ALI20240527BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240527BHJP
   G01S 17/04 20200101ALI20240527BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G06T7/162
G06T7/521
G06T7/00 650A
G01S17/04
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186354
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】高岡 直実
【テーマコード(参考)】
5H181
5J084
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL04
5J084AA02
5J084AA03
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA13
5J084AA14
5J084AB01
5J084AB07
5J084BA03
5J084BA48
5J084CA45
5J084CA53
5J084CA70
5J084EA02
5L096BA02
5L096BA04
5L096CA27
5L096FA19
5L096FA66
5L096FA74
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】複雑な構造物に対応できるようにするとともに、自動的に背景領域を検出し、物体を検知することができる物体検知装置及び物体検知方法を提供する。
【解決手段】物体検知装置10は、地上に設置され、光を間欠的に照射して走査範囲を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するLiDAR2から点群情報が入力され、所定時間の間に複数回入力された点群情報に基づいて所定の空間S内で静止物の領域である背景領域を検出する立方体処理部11aと、立方体処理部11aが検出した背景領域以外の領域に含まれる点群情報に基づいて所定の空間Sにおける物体の検知を行う検知部11bと、を備えている。そして、立方体処理部11aは、所定の空間Sを八分木により分割された複数の立方体領域のそれぞれにおける点群の検出状態に基づいて背景領域を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサから前記点群情報が入力される入力部と、
所定時間の間に前記入力部に複数回入力された前記点群情報に基づいて前記所定の空間内で静止物の領域である背景領域を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記背景領域以外の領域に含まれる前記点群情報に基づいて前記所定の空間における物体の検知を行う物体検知部と、を備え、
前記検出部は、前記所定の空間を八分木により分割された複数の立方体状の領域のそれぞれにおける点群の検出状態に基づいて前記背景領域を検出する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記立方体状の領域における前記所定時間内の前記点群の検出回数が所定閾値以上である場合に、当該立方体状の領域を前記背景領域と判定することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記検出部は、八分木構造の親ノードに連なる子ノードのうち所定数以上が前記背景領域と検出された場合は、前記親ノードの示す領域すべてを前記背景領域とすることを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記立方体状の領域について前記背景領域として検出された回数をカウントするカウンタを備え、
前記検出部は、前記カウンタのカウント回数に応じて前記背景領域を分類する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記所定の空間内であって、水平面及び高さ方向の範囲が限定された領域を設定し、前記限定された領域内で前記背景領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記所定の空間内における前記センサからの距離が遠くなるにしたがって前記立方体状の領域の大きさが大きくなるように分割することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記八分木による分割の回数の上限は、前記センサによる観測点の幅方向の間隔に基づいて定められていることを特徴とする請求項6に記載の物体検知装置。
【請求項8】
地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサを備える物体検知装置で実行される物体検知方法であって、
前記センサから前記点群情報が入力される入力工程と、
所定時間の間に前記入力工程に複数回入力された前記点群情報に基づいて前記所定の空間内で静止物の領域である背景領域を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記背景領域以外の領域に含まれる前記点群情報に基づいて前記所定の空間における物体の検知を行う物体検知工程と、を備え、
前記検出工程は、前記所定の空間を八分木により分割された複数の立方体状の領域のそれぞれにおける点群の検出状態に基づいて前記背景領域を検出する、
ことを特徴とする物体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路上の物体を検知する物体検知装置及び物体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路上の物体を検知する物体検知装置として、LiDAR(Light Detection And Ranging)により検出された点群をクラスタリングすることにより生成されたクラスタを用いて物体を検出する方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、環境光画像から検出された画像物標と、点群をクラスタリングしたクラスタに基づいて、クラスタが過結合していると判定した場合過結合クラスタを分割し、クラスタが過分割していると判定した場合画像物標に対応する点群における部分に存在する2以上のクラスタを結合することで、高精度に物体を正しい単位で検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-131385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法のように、過結合を検出することで、家屋や壁等の静止物(背景領域)による影響を除去することは可能であるが、処理が複雑化してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、予め背景領域を検出し、その背景領域に含まれる点群は除外することで動く物体のみを検知する方法がある。しかし、例えば樹木のある領域を背景領域として平面的に定義してしまうと、樹木の枝の下を通行する歩行者等が検出されなくなってしまう場合がある。
【0007】
また、背景領域となる静止物等は、壁等の比較的単純な形状に限られない。例えば植生は、元々複雑な形状であるのに加えて、成長や季節による葉の有無など形状が変化する。また、道路工事や雪の吹き溜まりなどの環境の変化もある。このような環境の変化は、従来は人手で確認や背景領域の再測定等を行っていたが、非常に手間がかかることから自動化が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、複雑な構造物に対応できるようにするとともに、自動的に背景領域を検出し、物体を検知することができる物体検知装置及び物体検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載された発明は、地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサから前記点群情報が入力される入力部と、所定時間の間に前記入力部に複数回入力された前記点群情報に基づいて前記所定の空間内で静止物の領域である背景領域を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記背景領域以外の領域に含まれる前記点群情報に基づいて前記所定の空間における物体の検知を行う物体検知部と、を備え、前記検出部は、前記所定の空間を八分木により分割された複数の立方体状の領域のそれぞれにおける点群の検出状態に基づいて前記背景領域を検出する、ことを特徴とする物体検知装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の空間を八分木により分割された複数の立方体状の空間のそれぞれにおける点群の検出状態に基づいて背景領域を検出するので、背景領域の形状が複雑であっても立方体の組み合わせにより近似させることができる。また、点群情報を入力することで、背景領域を自動的に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる物体検知装置の設置例である。
図2図1に示された物体検知装置のブロック図である。
図3図2に示された物体検知装置の動作のフローチャートである。
図4】多角形閉領域の説明図である。
図5】所定の空間の分割の例の説明図である。
図6】八分木構造の説明図である。
図7】x-y平面におけるセンサの設置位置と観測点との関係を示した図である。
図8】最短距離となる頂点がセンサの基準点から立方体領域への最短距離とならないケースの説明図である。
図9】センサからの距離に応じた立方体領域サイズの変化の説明図である。
図10】背景判定しきい値の説明図である。
図11】子ノードの統合についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図1図11を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる物体検知装置の設置例である。
【0013】
図1に示した物体検知装置10は、例えば交差点の近傍等に固定された支柱Pに設置される。そして、物体検知装置10は交差点を通行する歩行者や車両等の移動体を検知する。即ち、物体検知装置10は、地上に設置されている。この地上に設置されているとは、直接的又は間接的を問わずに地上に固定されていること、つまり、車両等の移動体ではなく建造物等の地上に固定的に設置されている物体へ設置されることを意味している。
【0014】
物体検知装置10は、本体部1と、LiDAR2と、を備えている。本体部1は、支柱Pの下部に制御ボックス等として設けられる。本体部1は、図2のブロック図に示すように、制御部11と、通信部12と、を備えている。
【0015】
制御部11は、例えばコンピュータ等で構成されている。制御部11は、物体検知装置10の全体制御を司る。図1では、制御部11は、立方体処理部11aと、検知部11bと、を機能的に備えている。
【0016】
立方体処理部11aは、LiDAR2が取得した点群情報について、後述するように、所定の空間を複数の立方体領域に分割して、各立方体領域について背景領域とするか検知対象領域とするか判別する。背景領域とは、車両や歩行者等の移動体以外の静止物であって、検知部11bによる物体の検知対象外とする領域である。検知部11bは、立方体処理部11aにより定義された背景領域に基づいて物体の検知をする。
【0017】
通信部12は、制御部11で検知された物体に関する情報を外部へ出力する。通信部12は、例えば無線通信装置として構成すればよい(有線通信装置でもよい)。物体に関する情報としては、物体の種別や移動方向、移動速度などが挙げられる。また、出力先の具体例としては、支柱Pの近隣を通行する車両等の移動体や、交通管制センター等が挙げられる。
【0018】
LiDAR2は、レーザ光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報(3次元点群情報)を取得するセンサである。LiDAR2は、照射したレーザ光の反射光により、照射範囲の空間に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置や形状を3次元の点群として認識する。LiDAR2は、本実施形態では、図1に示したように、支柱Pの上部に設置され、所定の空間として路面R上(路面R及びその上方の空間)を走査する。
【0019】
次に、上述した構成の物体検知装置の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。まず、制御部11は、LiDAR2から観測点を取得する(ステップS1)。つまり、制御部11は、LiDAR2が取得した点群情報を取得する。即ち、制御部11は、LiDAR2から点群情報が入力される入力部として機能する。
【0020】
次に、立方体処理部11aは、観測点が多角形閉領域内か判断する(ステップS2)。多角形閉領域について図4を参照して説明する。図4左側は多角形閉領域CLを含む所定の空間Sを示す図である。本実施形態では、後述するように、LiDAR2が走査可能な空間を含む立方体形状の所定の空間Sを定義し、その所定の空間Sを八分木により複数の立方体領域に分割し、それを再帰的に繰り返す。しかしながら、LiDAR2の現実的な使用環境においては、特に道路を想定して遠方の車両等を検知対象とする場合、奥行き方向に対して幅・高さ方向に余剰な空間を広く有することになる。この余剰な空間をあらかじめ背景領域として定義し、後述する背景領域を検出する処理の対象外とする。
【0021】
具体的には、幅(x)-奥行き(y)平面において複数の頂点座標(x, y)により平面多角形を定義する(図4右上)。次に、平面多角形を高さ(z)方向にzmin~zmaxの範囲で拡張し、3次元閉領域を定義する(図4右下)。観測点について、閉領域の内部であれば後述する立方体領域分割および同領域を用いた背景領域内外判定の対象とし、閉領域の外部であれば背景領域として以後の処理から除外する。図4に示した多角形閉領域CLは図3のフローチャート実行前にあらかじめ制御部11に設定する。
【0022】
なお、図3では多角形として四角形としているが四角形に限らない。ただし、立方体領域に分割する都合上四角形状である方が好ましい。また、上記した平面多角形やzmin~zmaxについては、物体検知装置10の設置位置において人手等で測定した結果に基づいて決定すればよい。即ち、立方体処理部11aは、所定の空間S内であって、水平面及び高さ方向の範囲が限定された領域を設定し、その限定された領域内で背景領域を検出している。
【0023】
次に、立方体処理部11aは、立方体領域が未生成か判定する(ステップS3)。立方体領域が未生成である場合は(ステップS3;YES)、立方体領域のサイズを決定する(ステップS4)。一方、立方体領域が未生成でない場合は(ステップS3;NO)、後述するステップS6に進む。
【0024】
ここで、本実施形態における空間分割について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5では、説明を簡単にするために、ステップS2の処理を行っていない立方体状の所定の空間Sで説明するが、実際は、上記した多角形閉領域内について以下の処理を行うものである。
【0025】
図5は、本実施形態における所定の空間Sの分割の例の説明図である。図5に示した所定の空間Sは、LiDAR2が走査可能な空間を含むものである。そして、本実施形態では、所定の空間Sを立方体状に定義し、その立方体を八分木により分割する。八分木によって再帰的に分割することで、所定の空間Sは例えば10cm四方等の微小な立方体領域に分割することが可能となる。
【0026】
図6は、八分木構造を示す図である。八分木は、周知のように1つの親ノードが8つの子ノードを有する木構造である。そして、八分木構造は、モートン順序(モートンオーダー)といった周知の方法により任意のノード(立方体領域)を高速に参照することができる。この八分木構造は制御部11のメモリ等に形成され、各ノードには、そのノード(立方体領域)が背景領域か否かを示す情報や後述する各種カウンタの値等が保存される。
【0027】
ステップS3においては、ステップS4、S5で実行される処理により立方体領域が既に生成されているか判定する。
【0028】
次に、ステップS4の処理について図7及び図8を参照して説明する。LiDAR2の空間分解能は距離の増加に応じて減少するため、図7に示したようにLiDAR2の近傍に適した立方体領域のサイズをLiDAR2の遠方において適用すると過剰な領域分割となる。
【0029】
図7は、x-y平面におけるLiDAR2の設置位置と観測点との関係を示した図である。図7において、符号LはLiDARの設置位置、符号P11、P12はLiDAR2の設置位置Lからの距離l1における観測点、符号P21、P22は、LiDAR2の設置位置Lからの距離l2(l1<l2)における観測点をそれぞれ示す。そして、観測点P11、P12と観測点P21、P22はそれぞれ互いに隣接する観測点(連続するパルス光)とする。ここで、立方体領域として符号Ca1やCb1に示したサイズで分割したとすると、距離l1では立方体領域Ca1、Cb1に観測点P11、P12が観測される場合があるが、距離l2では同じサイズの立方体領域Ca2、Cb2に観測点P21、P22が観測されることはない。つまり、距離l2では立方体領域が過剰に分割されることになる。
【0030】
そこで、本実施形態ではLiDAR2から立方体領域までの距離により八分木による再帰的な分割の回数を変更する。具体的には、対象とする立方体領域ついて、LiDAR2の基準点(設置位置)から最短距離となる頂点までの距離を計算し、その位置における幅方向の観測点間距離を算出する。観測点間距離は、例えばレーザ光の照射間隔やミラー等の走査手段の動作速度(周波数)等から算出可能である。
【0031】
図7の場合、基準点はLiDAR2の設置位置L、最短距離となる頂点は立方体領域Ca1、Cb1の境界となる頂点のうち設置位置Lに近い頂点Pv、幅方向の観測点間距離は、頂点Pvにおけるx方向の観測点の間隔lxがそれぞれ該当する。
【0032】
なお、図7の場合は、設置位置Lと頂点Pvとを結ぶ直線とx軸とがなす角度がほぼ直角である(ほぼ最短距離である)ため、設置位置Lと頂点Pvとの距離をそのまま利用できるが、図8に示したように、最短距離となる頂点がセンサの基準点から立方体領域への最短距離とならないケースもある。この場合は、最短距離となる頂点およびセンサの基準点から立方体領域への最短距離となる交点P3を求め、観測点間距離の算出に用いればよい。
【0033】
次に、幅方向の観測点間距離の半分の値を立方体領域のサイズのしきい値として設定する。このしきい値は、立方体領域のサイズ変更による観測点と立方体の中心の位置ずれを抑制するため、本実施形態では幅方向の観測点間距離の半分の値としている。
【0034】
次に、立方体領域のサイズがしきい値以下で最も大きなサイズとなるように立方体領域の分割回数を決定する。このように立方体領域の分割回数を決定することで、図9に示したように、センサ(LiDAR2)から離れる(遠くなる)にしたがって立方体領域のサイズが大きくなる。即ち、八分木による分割の回数の上限は、センサによる観測点の幅方向の間隔に基づいて定められている。
【0035】
図9は、横軸にセンサと立方体領域との間の距離、縦軸に立方体領域のサイズを示したグラフである。破線は幅方向における最短観測点間距離×1/2の変化を示している。また、実線は立方体領域の一辺の長さを示している。dは最小立方体領域サイズを示すものである。dは、後述するように立方体領域のサイズが微小になり過ぎないようにするために定めた値であり図9に示したように立方体領域の一辺の長さで定義される。
【0036】
立方体領域のサイズのしきい値があらかじめ定めた立方体領域の最小サイズより小さくなった場合、あらかじめ定めた最小サイズとなる分割回数を用いる。これは、あらかじめ立方体領域の最小サイズを設定しておき、そのサイズ以下には分割しないようにするものである。上記した分割方法の場合、LiDAR2に近づくほど立方体領域が微小になるが、検知対象となる物体に対して微小になりすぎるのも過剰な領域分割である。そこで最小サイズをあらかじめ設定することで過剰な領域分割を抑制する。
【0037】
図3の説明に戻り、立方体処理部11aは、立方体領域を生成する(ステップS5)。ステップS5では、上記した方法により立方体領域を生成する。
【0038】
次に、立方体処理部11aは、該当する立方体領域を特定する(ステップS6)。ステップS6においては、ステップS1で取得した点群情報に含まれる各点が、図5のように再帰的に分割された末端のノードとなる立方体領域のうちのどれに含まれるか特定する。つまり、点の示す座標をその範囲に含む末端ノードの立方体領域を特定する。
【0039】
次に、立方体処理部11aは、ステップS2で特定された立方体領域(末端ノード)の観測回数を加算(+1)する(ステップS7)。加算した結果は、例えば制御部11のメモリ等に保存される。
【0040】
次に、立方体処理部11aは、所定時間が経過したか判定する(ステップS8)。所定時間が経過しない場合は(ステップS8;NO)、ステップS1に戻る。ステップS8は、観測回数の加算期間を判定するものであり、所定時間としては、点群取得間隔等に応じて複数回観測点(点群情報)が取得できるような期間を適宜設定すればよい。
【0041】
一方、所定時間が経過した場合は(ステップS8;YES)、立方体処理部11aは、ステップS3で加算した観測回数がしきい値以上か判定する(ステップS9)。観測回数がしきい値(観測回数しきい値)以上である場合は(ステップS9;YES)、立方体処理部11aは、現在注目している立方体領域を背景領域として定義(検出)する(ステップS10)。
【0042】
次に、立方体処理部11aは、背景判定回数を加算する(ステップS11)。背景判定回数とは、ステップS10で背景領域として定義された回数をカウントするものである。
【0043】
次に、立方体処理部11aは、背景判定回数がしきい値以上か判定する(ステップS12)。背景判定回数がしきい値(背景判定しきい値)以上である場合は(ステップS12;YES)、立方体処理部11aは、ステップS10で背景領域と定義された立方体領域の分類を更新する(ステップS13)。一方、背景判定回数がしきい値未満である場合は(ステップS12;NO)、ステップS13を実行せずに後述するステップS14に進む。
【0044】
即ち、立方体処理部11aは、所定時間の間に入力部に複数回入力された点群情報に基づいて所定の空間内で静止物の領域である背景領域を検出する検出部として機能し、所定の空間を八分木により分割された複数の立方体状の領域のそれぞれにおける点群の検出状態に基づいて背景領域を検出している。さらに、立方体処理部11aは、立方体状の領域における所定時間内の点群の検出回数が所定閾値以上である場合に、当該立方体状の領域を背景領域と判定している。
【0045】
ステップS11~S13について説明する。ステップS9のような判定基準で背景領域を判定すると、例えば駐車車両や道路工事のように、一時的に背景領域として判定される物体がある一方で、建造物のように、常時背景領域として判定される物体も存在する。そこで、ステップS13により背景領域として判定された物体の分類を行う。
【0046】
例えば、図10に示したように、背景判定しきい値を複数設定し、それらのしきい値に応じてどのような物体か分類する。図10では、0.背景外、1.移動物、2.静止物(駐停車車両などの短時間残留物)、3.静止物(工事現場における器具や車両などの中時間残留物)、4.静止物(建造物など長時間残留物)といった分類をし、各分類の境界となるしきい値として、しきい値1、しきい値T12、しきい値T23、しきい値T34を設定する。なお、背景判定しきい値の説明では駐車車両等と記載したが、あくまで背景領域の分類例を示したものであり、車両等の物体の特定を行うものではない。したがって、ステップS11~S13は、後述するクラスタリング等の物体検知処理とは異なるものである。
【0047】
判定対象の立方体領域についての背景判定回数カウンタが0の場合は分類を0(背景外)とし、カウンタが1となると分類が1(移動物)となる。以降、カウンタがしきい値T12,T23,T34以上になると、分類がそれぞれ1→2,2→3,3→4と遷移する。しきい値T12,T23,T34は変数であり物体検知装置10の設置環境に応じて適宜設定すればよい。即ち、立方体処理部11aは、立方体状領域について背景領域として検出された回数をカウントするカウンタを備え、そのカウンタのカウント回数に応じて背景領域を分類している。
【0048】
次に、立方体処理部11aは、観測回数、経過時間をリセットする(ステップS14)。立方体処理部11aは、ステップS9でカウントしている観測回数及びステップS8で判定する経過時間をリセットする。
【0049】
一方、ステップS9の判定において、観測回数がしきい値以上でない場合は(ステップS9;NO)、立方体処理部11aは、現在注目している立方体領域を検知対象領域として定義する(ステップS15)。検知対象領域とは、後述するように点群をクラスタリングして物体検知する対象の領域とするものである。
【0050】
次に、立方体処理部11aは、現在注目している立方体領域の分類が“0”以外か判定する(ステップS16)。ステップS16では、図10に示した0~4の分類のうち“0”以外、すなわち背景外でないか判定する。分類が“0”以外であった場合は、立方体処理部11aは、保持回数より長く検知対象領域と判定されたか判定する(ステップS17)。保持回数より長く検知対象領域と判定された場合は(ステップS17;YES)、背景判定回数カウンタをリセットする(ステップS18)。保持回数より長く検知対象領域と判定されない場合は(ステップS17;NO)、ステップS18を実行せずにステップS14へ進む。
【0051】
ステップS16~S18について説明する。ある立方体領域の背景判定回数カウンタが1以上の場合に当該立方体領域が検知対象領域と判定されると、基本的に背景判定回数カウンタは0にリセットする。ただし、分類ごとにカウンタの保持回数を設定し、その保持回数までは検知対象領域と判定されても背景判定回数カウンタや分類をリセットしない。例えば、パーキングメータなどで、駐車車両が頻繁に入れ替わる場合は、短期的には分類“2”の短時間残留物となるが、長期的に見れば分類“3”の中期間残留物として扱うのが適切な場合もある。そこで、保持回数を設定することで、車両が移動した際などにより分類が“0”にリセットされることを防止できる。
【0052】
ステップS9~S18は、全ての立方体領域について個々に実行される。つまり、立方体領域の数分繰り返す。例えば、立方体領域が4096個ある場合は4096回繰り返す。
【0053】
次に、立方体処理部11aは、子ノードのうち一定数が背景領域となっている親ノードがあるか判定する(ステップS19)。ステップS19における一定数は、例えば過半数が挙げられる。
【0054】
子ノードのうち一定数が背景領域となっている親ノードがある場合は(ステップS19;YES)、立方体処理部11aは、当該親ノードを有する子ノードを統合する(ステップS20)。ステップS19及びステップS20について図11を参照して説明する。図11左側は、所定の空間Sにおいて、背景領域と判定された立方体領域cを示した図である。また、図11左側において、複数の立方体領域c1が同じ親ノードを有する子ノードであり、複数の立方体領域c2が同じ親ノードを有する子ノードであるとする。
【0055】
この場合に、一定数以上の子ノードが背景領域となっているとして親ノードの立方体領域全体を背景領域とする。つまり、背景領域と判定された子ノード以外の子ノードも背景領域とする。図11右側は、立方体領域c1、c2の親ノードを背景領域としたものである。図11右側の符号cb1が立方体領域c1の親ノードを示す領域、符号cb2が立方体領域c2の親ノードを示す領域である。即ち、立方体処理部11aは、八分木構造の親ノードに連なる子ノードのうち所定数以上が背景領域と判定された場合は、親ノードの示す領域すべてを前記背景領域とする。
【0056】
図3の説明に戻って、検知部11bは、ステップS5において特定された立方体領域は検知対象領域か判定する(ステップS21)。このステップS21は、ステップS20までを実行して所定の空間Sにおける背景領域の定義が少なくとも1回は完了した後に実行される。つまり、ステップS1で取得した観測点(点群情報)は、ステップS7~S20の処理と別処理としてステップS21以降の処理も実行される。
【0057】
特定された立方体領域が検知対象領域である場合は(ステップS21;YES)、検知部11bは、観測点を物体検知処理対象に追加する(ステップS22)。
【0058】
ステップS22で物体検知対象になった観測点は、検知部11bにより、例えばクラスタリング処理を行い、生成されたクラスタについて検知ターゲットの判別処理を行う。検知ターゲットとは、クラスタの形状や大きさ等から歩行者や車両などの移動体の種別を判別する処理である。検知ターゲットが判別されると、検知部11bは、例えば、当該ターゲットについて追跡処理等を行い、所定の空間S内における移動等を監視する。即ち、検知部11bは、検出部が検出した背景領域以外の領域に含まれる点群情報に基づいて所定の空間における物体の検知を行う物体検知部として機能する。
【0059】
以上の説明から明らかなように、ステップS1が入力工程、ステップS2~S20が検出工程、ステップS21、S22が物体検知工程としてそれぞれ機能する。
【0060】
本実施形態によれば、物体検知装置10は、地上に設置され、光を間欠的に照射して走査範囲を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するLiDAR2から点群情報が入力され、所定時間の間に複数回入力された点群情報に基づいて所定の空間S内で静止物の領域である背景領域を検出する立方体処理部11aと、立方体処理部11aが検出した背景領域以外の領域に含まれる点群情報に基づいて所定の空間Sにおける物体の検知を行う検知部11bと、を備えている。そして、立方体処理部11aは、所定の空間Sを八分木により分割された複数の立方体領域のそれぞれにおける点群の検出状態に基づいて背景領域を検出する。
【0061】
物体検知装置10が上記のように構成されることにより、背景領域の形状が複雑であっても立方体の組み合わせにより近似させることができる。また、点群情報を入力することで、背景領域を自動的に検出することが可能となり、手動で設定する必要が無くなる。さらに、背景領域を一定時間毎に自動で更新することが可能となり、植生や道路工事、雪の吹き溜まりといった周囲環境の変化に対応することが可能となる。
【0062】
また、立方体処理部11aは、立方体領域における所定時間内の点群の検出回数が所定閾値以上である場合に、当該立方体領域を背景領域と判定する。このようにすることにより、点群がある程度の期間連続して検出されていることによって、静止物があると見做すことができる。
【0063】
また、立方体処理部11aは、八分木構造の親ノードに連なる子ノードのうち所定数以上が背景領域と検出された場合は、当該親ノードの示す領域すべてを背景領域としている。このようにすることにより、例えば子ノードの大半が背景領域と判定された場合は親ノードの領域を背景領域と見なすことで、背景領域を特定する際に、子ノードまで辿る必要が無い。そのため、背景領域を高速に参照することが可能となる。
【0064】
また、立方体処理部11aは、立方体領域について背景判定回数をカウントするカウンタを備え、当該カウンタのカウント回数に応じて背景領域を分類している。このようにすることにより、静止物が取り除かれた際の応答を分類ごとに変更することが可能となる。例えば、短期的に観測された静止物であれば環境変化に早く応答し、長期的に観測された静止物であれば確認のため応答を遅くすることが可能となる。
【0065】
また、立方体処理部11aは、所定の空間S内の領域であって、水平面及び高さ方向の範囲が限定された多角形閉領域を設定し、前記多角形閉領域内で背景領域を検出している。このようにすることにより、LiDAR2の現実的な使用環境において、奥行き方向に対して幅・高さ方向に余剰な空間をあらかじめ背景として定義することができる。したがって、立方体領域の生成数を削減できる。
【0066】
また、立方体処理部11aは、所定の空間S内におけるセンサからの距離が遠くなるにしたがって立方体領域の大きさが大きくなるように分割している。このようにすることにより、過剰な領域分割を防止し、LiDAR2の空間分解能に応じて適切な分割とすることができる。
【0067】
また、八分木による分割の回数の上限は、LiDAR2による観測点の幅方向の間隔に基づいて定められているので、過剰な領域分割を抑制することができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の物体検知装置及び物体検知方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 本体部
2 LiDAR(センサ)
10 物体検知装置
11 制御部
11a 立方体処理部
11b 検知部
S 所定の領域
C 立方体領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11