(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075140
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/06 20060101AFI20240527BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B60J5/06 G
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186355
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
(72)【発明者】
【氏名】門田 豪郎
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA03
3D203BB12
3D203CA25
3D203CA62
3D203CB19
3D203DA26
3D203DA35
(57)【要約】
【課題】専用の緩衝部材を用いることなく、ロッカー下に配設されたスライドレールが床下側の内部部材に強く当てられないようにすることにある。
【解決手段】ロッカー30の車両下側には、スライドドア20を開閉方向にスライド移動可能に支持するスライドレール(ロアスライドレール19)が連結部材(第二連結部材52)を介して配設されており、連結部材(52)は、その車両内側の部分がロッカー30に固定された状態で、ロッカー30の車両下側位置で車両内外方向に延びるように設けられていると共に、ロッカー30との固定箇所よりも連結部材(52)の車両外側の部分にスライドレール(19)が固定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディのドア開口部を開閉するスライドドアと、前記ドア開口部の下縁部を形成する筒状のロッカーを備えた車両の下部構造において、
前記ロッカーの車両下側には、前記スライドドアを開閉方向にスライド移動可能に支持するスライドレールが連結部材を介して配設されており、
車両上下方向における平面視を基準として前記開閉方向と直交する方向を車両内外方向とした場合に、前記連結部材は、その車両内側の部分が前記ロッカーに固定された状態で、前記ロッカーの車両下側位置で車両内外方向に延びるように設けられていると共に、前記ロッカーとの固定箇所よりも前記連結部材の車両外側の部分に前記スライドレールが固定されている車両の下部構造。
【請求項2】
前記連結部材は、車両内外方向に延びる第一の補強部と、前記連結部材の車両外側の端部で前記開閉方向に延びる第二の補強部との少なくとも一つを有している請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項3】
前記連結部材は、車両上下方向に突出する前記第一の補強部を有している請求項2に記載の車両の下部構造。
【請求項4】
前記連結部材は、車両上下方向に突出する前記第二の補強部を有している請求項2又は3に記載の車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドア用のスライドレールが、ドア開口部の下縁部を形成するロッカー下に備えられている車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1の車両は、車両ボディに設けられたドア開口部が、スライドドアによって車両前後方向に開閉可能に構成されている。このドア開口部の下縁部には、本願のロッカーに相当する筒状のサイドシルが車両前後方向に延びるように設けられている。そしてサイドシル下には、スライドドアをスライド移動可能に支持するスライドレールが車両前後方向に延びるように設けられている。またスライドドアの下端部には、車幅方向内側に張り出すブラケットが設けられており、このブラケットに軸支されたローラが、スライドレールに摺動可能に嵌められている。これにより、スライドドアは、スライドレールに沿ってローラを摺動させることで車両前後方向にスライド移動できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記した車両では、その床下側にバッテリなどの各種の内部部材が配設されていることがある。そしてロッカー下にスライドレールを配設した場合、このスライドレールが、内部部材の車幅方向外側に配置されるようになる。上記した構成では、車両衝突時などにおいて、衝撃荷重の加えられたスライドレールが、車幅方向内側に移動して内部部材に強く当たらないように配慮する必要がある。このとき内部部材専用の緩衝部材を設け、この緩衝部材でスライドレールを受けることも考えられるが、コストアップになる。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、専用の緩衝部材を用いることなく、ロッカー下に配設されたスライドレールが床下側の内部部材に強く当てられないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両の下部構造は、車両ボディのドア開口部を開閉するスライドドアと、ドア開口部の下縁部を形成する筒状のロッカーを備えている。そしてロッカーの車両下側には、スライドドアを開閉方向にスライド移動可能に支持するスライドレールが連結部材を介して配設されている。この種の構成では、車両衝突時等において、専用の緩衝部材を用いることなく、ロッカー下に配設されたスライドレールが床下側の内部部材に強く当てられないようにすることが望ましい。
【0006】
そこで本発明では、車両上下方向における平面視を基準として開閉方向と直交する方向を車両内外方向とした場合に、連結部材は、その車両内側の部分がロッカーに固定された状態で、ロッカーの車両下側位置で車両内外方向に延びるように設けられていると共に、ロッカーとの固定箇所よりも連結部材の車両外側の部分にスライドレールが固定されている。本発明では、スライドレールの固定された連結部材が、車両内外方向に延びるように設けられることで、スライドレールと内部部材間に配置されるようになる。上記した構成によれば、車両衝突時等に加えられる衝撃荷重を、スライドレールと連結部材とで受けられるようになる。そして衝撃荷重の加えられたスライドレールは、その車両内側への移動が連結部材にて抑制されるため、内部部材に強く当てられ難くなる。
【0007】
第2発明の車両の下部構造は、第1発明の車両の下部構造において、連結部材は、車両内外方向に延びる第一の補強部と、連結部材の車両外側の端部で開閉方向に延びる第二の補強部との少なくとも一つを有している。本発明では、第一の補強部と第二の補強部の少なくとも一つを連結部材に設けて補強しておくことで、車両衝突時等におけるスライドレールの車両内側への移動をより確実に抑制できるようになる。
【0008】
第3発明の車両の下部構造は、第2発明の車両の下部構造において、連結部材は、車両上下方向に突出する第一の補強部を有している。本発明の連結部材は、第一の補強部が車両上下方向に突出しつつ、車両内外方向、即ち、衝撃荷重の加えられる方向に延びているため、衝撃荷重に対する剛性がより確実に高められている。
【0009】
第4発明の車両の下部構造は、第2発明又は第3発明の車両の下部構造において、連結部材は、車両上下方向に突出する第二の補強部を有している。本発明の連結部材は、車両上下方向に突出する第二の補強部が、連結部材の車両外側の端部、即ち、衝撃荷重の加えられる箇所に配置されているため、衝撃荷重をより確実に受けられるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、専用の緩衝部材を用いることなく、ロッカー下に配設されたスライドレールが床下側の内部部材に強く当てられないようにすることができる。また第2発明によれば、スライドレールの車両内側への移動をより確実に抑制することができる。また第3発明によれば、スライドレールの車両内側への移動を更に確実に抑制することができる。そして第4発明によれば、スライドレールに加えられる荷重を連結部材でより確実に受けられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ステップ装置を示す車両の下部の拡大斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線断面に相当する車両の断面図である。
【
図4】スライドドアを全開した場合の車両を車両下側から見た平面図である。
【
図5】スライドドアを全閉した場合の車両の断面図である。
【
図6】スライドドアを全閉した場合の車両を車両下側から見た平面図である。
【
図8】ガイドローラユニットを示す車両の拡大斜視図である。
【
図9】スライドドアのブラケット部の動きを示す車両の側面図である。
【
図10】スライドドアの移動軌跡と四節リンク機構の回動軌跡を示す車両の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図10を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また
図4及び
図6(車両上下方向における平面視)を基準として、前後方向がスライドドアの開閉方向に相当し、開閉方向と直交する車幅方向が車両内外方向に相当する。そして各図では、車幅方向外側となる左側が車両外側に相当し、車幅方向内側となる左側が車両内側に相当する。なお
図1では、車両の左側のみ図示すると共に、開き状態のスライドドアを図示する。
【0013】
[車両の概要]
車両の下部構造について説明する前に、まず
図1に示す車両2の概要について説明する。この車両2の車両ボディ10には、前部座席に対応するフロントドア開口部11と、後部座席に対応するリヤドア開口部12とが形成されている。フロントドア開口部11は、ドアヒンジ(図示省略)を中心に回動可能なフロントドア15により開閉可能に構成されている。またリヤドア開口部12は、車両前後方向にスライド移動するスライドドア20により開閉可能に構成されている。そしてリヤドア開口部12の下縁部には、
図2に示すように、筒状のフレームであるロッカー30が車両前後方向に延びるように設けられていると共に、このロッカー30には、固定ステップ板33が車幅方向外側に張り出すように設けられている。
【0014】
ここで
図1に示す車両2には、スライドドア20を車両前後方向(開閉方向)にスライド移動可能に支持する複数のスライドレール17,18,19が設けられている。例えば
図1に示す車両2には、アッパースライドレール17がリヤドア開口部12の車両上側に設けられている。また、センタースライドレール18がリヤドア開口部12の後側の高さ方向中央位置に設けられている。そして、ロアスライドレール19がリヤドア開口部12の車両下側、即ち、ロッカー30及び固定ステップ板33の車両下側に設けられている。
【0015】
また
図1及び
図2を参照して、スライドドア20には、その上端位置と下端位置と中間位置とにそれぞれガイドローラユニット25等が設けられている(各図では、便宜上、最も下側のガイドローラユニットの配設位置にのみ対応する符号25を付す)。そしてスライドドア20は、対応するガイドローラユニット25等が各スライドレール17~19に沿って移動(摺動等)することで、これらスライドレール17~19に沿うようにスライド移動できるように構成されている。なおスライドドア20は、全開位置と全閉位置間で概ね車両前後方向に移動するが、その全閉位置の近傍においては車幅方向内側に向かって斜めに移動するようになる(
図10に示すスライドドアの移動軌跡Doを参照)。
【0016】
そしてロッカー30の車両下側には、
図2及び
図3に示すように、踏み面となるステップ板41を備えたステップ装置40が配設されている。また、
図3に示すロッカー30の車幅方向内側(右側)には、車両2の床下側に設置されたバッテリ等の内部部材3が配置されている。そしてロッカー30は、内部部材3の高さ位置Hよりも高い高さ位置に設けられることで、地上からの高さ方向の距離(地上高)を取りやすい構成とされている。
【0017】
[車両の下部構造]
本実施例の車両の下部構造では、
図3に示すように、ロアスライドレール19とステップ装置40とをロッカー30の車両下側(ロッカー下)に配設している。これにより、ロッカー30の形状選択の自由度が高まるなどして剛性の確保が容易となる。またスライドドア20の車両下側のスペースを利用等して、ロアスライドレール19を車幅方向外側(左側)の位置に配置することで、このロアスライドレール19と内部部材3との干渉が回避される。そして上記した構成では、ロアスライドレール19の車幅方向内側(右側)に内部部材3が配置されるようになる。この種の構成では、車両衝突時の衝撃荷重を受けたスライドレール19が車幅方向内側に移動して内部部材3に強く当たらないように配慮する必要があるが、その際に専用の緩衝部材の使用はコストアップ抑制の観点から避けるべきである。そこで本実施例では、後述する構成によって、専用の緩衝部材を用いることなく、ロッカー下に配設されたロアスライドレール19が床下側の内部部材3に強く当てられないようにした。以下、車両の下部構造を、ロッカー30、ステップ装置40、ロアスライドレール19、スライドドア20の順に詳述する。
【0018】
[ロッカー]
先ず、
図3に示すロッカー30は、ロッカーアウター31とロッカーインナー32とから筒状に形成されており、リヤドア開口部12の下縁部に沿うように設けられている。ロッカーアウター31は、その上板面311と下板面312と左側板面313とから断面略横向きU字形に形成され、その車幅方向内側(右側)が解放されている。このロッカーアウター31は、その上板面311と下板面312とが車幅方向内側に延びていると共に、その下板面312が相対的に内側に大きく張り出している。また上板面311の上端位置には、車両上側に曲げられた上側のフランジ部31aが形成され、下板面312の下端位置には、車両下側に曲げられた下側のフランジ部31bが形成されている。そして上板面311と下板面312とは、ロッカーアウター31の車幅方向外側(左側)で車両上下方向に延びる左側板面313に連続している。またロッカーインナー32は、その上板面321と下板面322と右側板面323とから断面略横向きU字形に形成され、車幅方向外側が解放されている。またロッカーインナー32では、その上板面321が相対的に外側に大きく張り出している。そしてロッカーインナー32の上端位置と下端位置にも、車両上下方向に曲げられた上下のフランジ部32a,32bが形成されている。
【0019】
そして
図3に示すロッカー30は、ロッカーアウター31とロッカーインナー32とが車幅方向から合わせられて接合されることで、断面略角筒状に形成されている。即ち、ロッカー30では、その上側のフランジ部同士31a、32aと下側のフランジ部同士31b、32bとがそれぞれ溶接等で接合されている。こうしてロッカー30は、スライドレール用の凹部が省略された略角筒状に形成されることから、剛性の確保に資する断面形状を有している。また、ロッカー30は、剛性に優れる断面形状を備えることで、その車両上下方向の寸法を小さくするなどしてコンパクト化することができる。これにより、ロッカー30は、内部部材3の高さ位置Hよりも高い高さ位置に設けられるようになり、地上高)の確保に資する構成となる。そしてロッカー30では、上側の各フランジ部31a、32aが車幅方向外側(左側)の端部付近に配置されていると共に、下側の各フランジ部31b、32bが車幅方向内側(右側)の端部付近に配置されている。またロッカーアウター31の左側板面313が、ロッカー30の車幅方向外側の面を構成している。
【0020】
[固定ステップ板]
ここで
図2及び
図3に示すロッカー30には、その車幅方向外側(左側)の面に、乗員の踏み面となる固定ステップ板33が固定されている。この固定ステップ板33は、
図2に示すようにロッカー30に沿って車両前後方向に延びるように形成されている。また固定ステップ板33は、
図3に示すように断面視略L字状に形成されており、車両上下方向に延びる縦壁部位34でロッカーアウター31の左側板面313に固定されている。また固定ステップ板33には、縦壁部位34の下端部に、車幅方向外側に張り出す横壁部位35が設けられており、この横壁部位35が乗員の踏み面となる。そして固定ステップ板33は、その裏側に断面視略L字状の補強材36が一体化されることで補強されている。即ち、固定ステップ板33は、その縦壁部位34と横壁部位35の後部とが補強材36で補強されることで、車両上下方向から加わる力に対する剛性が高められている。
【0021】
[ステップ装置(ステップ板)]
次に、
図2及び
図3に示すステップ装置40は、ステップ板41と、このステップ板41を支持する四節リンク機構43(詳細後述)とを有している。そしてステップ装置40では、そのステップ板41と四節リンク機構43とがロッカー下に配設されている。また、ステップ板41の車両上側位置には、上記したロッカー30の固定ステップ板33が配置されている。そしてステップ板41は、乗員の踏み面となる部材であり、四節リンク機構43にて、ロッカー下で概ね水平に支持されている。このステップ板41は、
図4に示すように前後に長尺な板状に形成されていると共に、その前部側が後部側に比して幅狭となっている。そしてステップ板41は、後述するように、
図3及び
図4に示す車幅方向外側(左側)の展開位置と、
図5及び
図6に示すロッカー下の格納位置間を変位できるように構成されている。
【0022】
また
図3に示すステップ板41は、その車幅方向外側(左側)の先端部410が略L字形に曲げられて、車両下側に略直角に延びたのちに車幅方向内側(右側)に延びている。この先端部410には、その車幅方向外側を覆うように固定板部411が固定されて一体化されている。そしてステップ板41の先端部410の下端部に、レール部42が車幅方向内側に張り出すように固定されて支持されている。このレール部42は、断面形状が逆U字形に形成されることで、後述するガイドローラユニット25の転動ローラ28を車両下方から嵌合できるようになっている。そしてレール部42は、ステップ板41の車両外側の端部、即ち、車幅方向内側に突出する凸状の端部を構成している。また後述するように、レール部42に転動ローラ28が嵌められることで、このレール部42の設けられたステップ板41がスライドドア20の開閉動作に連動できるようになる。
【0023】
そしてレール部42は、
図4に示すように、ステップ板41の車幅方向外側(左側)の縁に沿って車両前後方向に延びている。このレール部42は、前側直線部420と折曲部421と後側直線部422とから構成されている。前側直線部420は、ステップ板41の前部位置で車両前後方向に直線的に延びるように形成されている。また折曲部421は、前側直線部420の後端から車幅方向外側に所定角度で折り曲げられ、後側直線部422は、折曲部421の後端から車両前後方向に直線的に延びるように形成されている。そして
図4及び
図10を参照して、前側直線部420は、後述するスライドドア20が開方向を開始する際の軌跡、即ち、全閉位置の近傍における移動軌跡Doとは交差するように形成されている。また折曲部421と後側直線部422とは、スライドドア20が開方向に移動するときの移動軌跡Doに沿うように形成されている。
【0024】
[四節リンク機構(リンク)]
また
図3及び
図4を参照して、四節リンク機構43は、ステップ板41を格納位置と展開位置間で移動可能に支持する機構である。この四節リンク機構43は、
図4に示すように、等しい長さで形成された前支持リンク43fと後支持リンク43bとを有している。そして前支持リンク43fと後支持リンク43bとは、後述するようにステップ板41とロッカー30とにそれぞれ軸連結されている。ここで各支持リンク43f,43bの連結態様は概ね同一であるため、以下に、専ら前支持リンク43fを一例に詳細を説明する。
【0025】
図4を参照して、前支持リンク43fの車幅方向内側(右側)の基端部は、ロッカー30の車幅方向内側に固定された基端用ブラケット37に軸連結されている。ここで基端用ブラケット37は、車両前後方向に延びるように形成されていると共に、その基端用ブラケット37の前部に前側支持部37sfが設けられている。この前側支持部37sfは、
図7に示すようにハット断面形状を有して、ロッカー30の下面(下板面312)から車両下側に突出するように設けられている。そして前支持リンク43fの基端部は、前側支持部37sfに上から重ねられた状態とされて、前側の回転中心軸43cにより前側支持部37sfに水平回動可能な状態で軸連結されている。また
図4に示す前支持リンク43fの車幅方向外側(左側)の先端部は、ステップ板41に固定された先端用ブラケット38に軸連結されている。この先端用ブラケット38は、車両前後方向に延びるように形成されていると共に、その前部と後部とがステップ板41よりも一段低くなるように形成されている。そして前支持リンク43fの先端部は、前側の先端連結軸43xにより先端用ブラケット38の前部に水平回動可能な状態で軸連結されている。
【0026】
[基端支持部]
更に、
図3及び
図4に示す前支持リンク43fの基端部は、ロッカー30の車幅方向内側(右側)に設けられた支持板部44により支持されている。この支持板部44は、
図4に示すように、前支持リンク43fの回動軌跡に沿うように車両前後方向に延びている。そして支持板部44は、
図3に示すように、前支持リンク43fの基端部の直上に配置されるようにロッカー30の下面側に固定されている。これにより、格納位置と展開位置間を移動する前支持リンク43fの基端部を、前側支持部37sf(基端用ブラケット37)と支持板部44とで挟み付けるように支持することが可能となる。これにより、ロッカー30には、その支持板部44の配置位置に、前支持リンク43fの基端部を支持する基端支持部45が形成されるようになる。
【0027】
また
図4に示す後支持リンク43bの基端部は、基端用ブラケット37の後側支持部37sbに、後側の回転中心軸43eによって軸連結されている。また後支持リンク43bの先端部は、先端用ブラケット38の後部に、後側の先端連結軸43yによって軸連結されている。そして後支持リンク43bの基端部も、別の支持板部44aにて支持されており、この別の支持板部44aの配置位置に、後支持リンク43bの基端部を支持する別の基端支持部45aが形成されている。
【0028】
[四節リンク機構の働き]
ここで
図10を参照して、四節リンク機構43によるステップ板41の位置変位の態様について説明する(スライドドアとの連動については後述)。先ず、ステップ板41側に連結された前後の先端連結軸43x,43y間の距離は、ロッカー30側に連結された回転中心軸43c,43e間の距離と等しい値に設定されている。また前支持リンク43fと後支持リンク43bとは等しい寸法で形成されている。このため四節リンク機構43の前支持リンク43fと後支持リンク43bとが水平回動することで、ステップ板41は、平面視においてロッカー30と平行に保持された状態で円弧軌跡Sに沿って移動するようになる。そして両支持リンク43f,43bの先端部が、回転中心軸43c,43eを中心にロッカー30に対して所定角度だけ左回動した左回動限位置まで水平回動する(
図10の実線部分を参照)。このように両支持リンク43f,43bの先端部が、回転中心軸43c,43eを中心に左回動することで、ステップ板41は、ロッカー下から車幅方向外側(左側)に突出して展開位置に保持される(
図3、
図4参照)。また両支持リンク43f,43bの先端部が、回転中心軸43c,43eを中心にロッカー30に対して所定角度だけ右回動した右回動限位置まで水平回動する(
図10の二点破線部分を参照)。このように両支持リンク43f,43bの先端部が、回転中心軸43c,43eを中心に右回動することで、ステップ板41は、ロッカー下に位置する格納位置に保持される(
図5、
図6参照)。
【0029】
[スライドレール]
次に、
図4に示すロアスライドレール19は、後述する連結部材51,52,53を介してロッカー下に配設されている。このロアスライドレール19は、スライドドア20の移動軌跡(
図10の移動軌跡Do参照)に沿うように形成されており、曲げ部190と、直線部191とを有している。そして曲げ部190は、ロアスライドレール19の前部に形成されていると共に、車両前側に向かうにつれて次第に車幅方向内側(右側)に曲げられている。また直線部191は、曲げ部190の後端に連続していると共に、スライドドア20の開閉方向(車両前後方向)に沿うように直線的に延びている。
【0030】
またロアスライドレール19は、
図3に示す断面視において、車幅方向外側(左側)が解放された中空柱状に形成されている。このロアスライドレール19は、上壁部192と、下壁部193と、上下の壁部をつなぐ縦壁部194とから形成されている。上壁部192は、下側が解放された断面逆U字形に形成されることで、後述するガイドローラユニット25のガイドローラ26が摺動可能に嵌められるようになっている。そして上壁部192の上面には、上記したステップ板41と常に接する帯板状の支持部位196が一体的に設けられており、この支持部位196上でステップ板41をスムーズに摺動させられるようになっている。また下壁部193は、上壁部192の車両下側に配置された平板状の部位であり、後述するガイドローラユニット25の荷重ローラ27を摺動可能に支持できるようになっている。
【0031】
[収容部]
そして上壁部192と下壁部193とは、
図3に示すように、その車幅方向内側(右側)で車両上下方向に延びる縦壁部194に連続している。これにより、ロアスライドレール19は、車幅方向外側(左側)が解放された中空柱状に形成されると共に、その車幅方向外側で外部に連通する開口部195が、上記したステップ板41のレール部42と同じ高さ位置に形成される。そして、後述するようにステップ板41が車幅方向内側に移動することで、このステップ板41に設けられたレール部42が、開口部195を通じてロアスライドレール19内に導き入れられるようになる(
図5参照)。またステップ板41が車幅方向外側に移動することで、レール部42が、開口部195を通じてロアスライドレール19から車幅方向外側に引き出されるようになる(
図3参照)。こうして
図3に示すロアスライドレール19は、上記した構成によって、ステップ板41のレール部42(車両外側の端部)を車幅方向に引出し可能な状態で収容する収容部100を構成している。
【0032】
ここでロアスライドレール19は、
図4及び
図6を参照して、車両前後方向におけるステップ板41の一部、即ち、ステップ板41の幅広な後部側を収容するように構成されている。そしてステップ板41の後部側には、
図4に示すレール部42の折曲部421と後側直線部422とが設けられている。この折曲部421と後側直線部422とは、上記したようにスライドドア20が開方向に移動するときの移動軌跡に沿うように形成されている(
図10の移動軌跡Do参照)。これにより、レール部42の折曲部421と後側直線部422とは、ロアスライドレール19の曲げ部190の後部から直線部191にかけての部分と同じ形に形成されている。このためロアスライドレール19(収容部100)は、
図6に示すようにレール部42が車幅方向内側(右側)に移動することで、そのレール部42の折曲部421と後側直線部422とを収容できるようになる。なおレール部42の前側直線部420は、スライドドア20の移動軌跡と交差するように直線的に延びている。このためステップ板41が格納位置にある場合、レール部42の前側直線部420は、ロアスライドレール19(曲げ部190)の車幅方向外側に配置されるようになる。
【0033】
[連結部材]
そして
図4に示すロアスライドレール19には、その車両前後方向における前部位置と中間位置と後端位置とに、それぞれ連結部材51,52,53が配設されている。即ち、ロアスライドレール19の曲げ部190(前部位置)には第一連結部材51が配設されている。またロアスライドレール19の直線部191の前後端(中間位置と後端位置)には、第二連結部材52と第三連結部材53とが配設されている。そして各連結部材51~53は略同一の基本構成を有するため、以下に第二連結部材52を一例に詳細を説明する。
【0034】
図3及び
図4に示す第二連結部材52は、車幅方向に延びる板状に形成されており、ロアスライドレール19の直線部191とロッカー30の前側支持部37sf間に配置されている。この第二連結部材52は、
図3に示す断面視においてクランク状に曲げられており、その車幅方向内側(右側)の基端部位520が一段高くなっている。この基端部位520は、上記したロッカー30の下端位置のフランジ部31b,32b付近に配設されている。そして基端部位520(車両内側の部分)は、
図7に示す前側支持部37sfに締め付けられた状態で、ロッカー30の下板面312に固定されている。
【0035】
また
図3に示す第二連結部材52は、その基端部位520よりも一段低い本体部位521が車幅方向外側(左側)に延びるように形成されている。さらに第二連結部材52では、その本体部位521の先端部位522が車両下側に略直角に曲げられており、この曲げられた先端部位522が、基端部位520(ロッカーとの固定箇所)よりも第二連結部材52の車両外側の部分を構成している。そして本体部位521が、上記した支持板部44(基端支持部45)よりも車幅方向外側の位置まで延びていると共に、その先端部位522が、ロッカー30よりも車幅方向外側に配置されている。こうして第二連結部材52は、下端位置のフランジ部31b,32b、即ち、ロッカー30の車幅方向内側の端部位置からロッカー30を横断しつつその車幅方向外側まで延びている。
【0036】
そして
図3に示す第二連結部材52には、その車幅方向外側(左側)の先端部位522に、ロアスライドレール19の縦壁部194が固定されている。これにより、ロアスライドレール19は、第二連結部材52を介してロッカー下に配設されると共に、上記した支持板部44(基端支持部45)よりも車幅方向外側の位置に配置されるようになる。さらにロアスライドレール19は、第二連結部材52の先端部位522に固定されることで、ロッカー30の車幅方向外側に張り出して固定ステップ板33の車両下側に配置される。これにより、ロアスライドレール19の車両上側を固定ステップ板33で覆うことができ、このロアスライドレール19の外部露出を極力抑制できるようになる。またロアスライドレール19は、上記した内部部材3の高さ位置Hとほぼ同じ高さ位置又はそれよりも高い高さ位置に配置されることで、地上高の確保に資する構成となっている。
【0037】
[補強部]
ここで
図3及び
図4を参照して、第二連結部材52は、その適所が補強部(50A,50B)で補強されている。即ち、第二連結部材52の一段低い本体部位521には、車幅方向に延びる前後の補強ビード部523が、車両前後方向に適宜の間隔をあけて設けられている(
図4では、便宜上、前後の補強ビード部に共通の符号523を付す)。この前後の補強ビード部523は、第一の補強部50Aに相当し、第二連結部材52を局部的に盛り上がらせる方向に変形させることで形成されている。そして前後の補強ビード部523が本体部位521を車幅方向に横断するように設けられることで、車幅方向外側から加わる荷重に対する第二連結部材52の剛性が高められる。また第二連結部材52は、その先端部位522(車幅方向外側の端部)に、第二の補強部50Bとしての中空柱状のロアスライドレール19が固定されて補強されている。このロアスライドレール19は、第二連結部材52の本体部位521に対して車両下側に突出するように配設されている。そしてロアスライドレール19が第二連結部材52を車両前後方向に縦断するように設けられることで、車幅方向外側から加わる荷重を第二連結部材52で適切に受けられるようになる。なお第一連結部材51と第三連結部材53にも、第二連結部材52と同様に各補強部50A,50Bが設けられている(
図4では、便宜上、各連結部材の第一の補強部に共通の符号50Aを付す)。
【0038】
[スライドドア]
次に、
図1~
図3に示すスライドドア20は、図示しないドアアウタパネルとドアインナパネルとが互いの周縁部分で接合されることで形成されている。そしてスライドドア20のドアインナパネル側には、その下端位置に、ガイドローラユニット用のブラケット部23が固定されている。このブラケット部23は、
図3に示すように断面略L字形に形成されており、車両上下方向に延びる縦壁状の固定部位23aでスライドドア20の下端部に固定されている。またブラケット部23は、その固定部位23aの下端部から略水平に車両内側に延びる横壁状の配設部位23bを有している。そして配設部位23bは、
図4に示すように、後述するガイドローラユニット25が配設された状態で、上面視で車両前側且つ車幅方向内側(右側)に延びるように形成されている。
【0039】
先ず、
図4に示すガイドローラユニット25は、スライドレール用の前後のガイドローラ26及び荷重ローラ27を有している(
図4では、便宜上、前後のガイドローラに共通の符号26を付す)。ここで
図8を参照して、ブラケット部23の配設部位23bには、その車幅方向内側(右側)の先端部に、ガイドローラ用の上側支持部261と、荷重ローラ用の下側支持部271とが設けられている。上側支持部261は、平面視で略U字形に形成されており、その二股に分かれた自由端側に、縦向きの第一軸材260が設けられている。そして各第一軸材260に対応する横向きのガイドローラ26が回転可能に軸支されていると共に、各ガイドローラ26が、
図3及び
図8に示すように、ロアスライドレール19の上壁部192に摺動可能に嵌められている。
【0040】
また
図3及び
図8に示すブラケット部23の配設部位23bには、その先端部に縦向きの第二軸材270が設けられており、この縦向きの第二軸材270に、断面略横U字形の下側支持部271が回転可能に軸支されている。また下側支持部271は、車幅方向内側(右側)に突出する横向きの第三軸材272を支持しており、この第三軸材272に縦向きの荷重ローラ27が回転可能に軸支されている。そして荷重ローラ27は、ロアスライドレール19の下壁部193に対して摺動可能に支持されている。また、下側支持部271に軸支された荷重ローラ27は、この下側支持部271が縦向き第二軸材270を中心に回転することで、ロアスライドレール19に沿うように向きを変えられるようになる。
【0041】
更に、
図3及び
図4に示すガイドローラユニット25は、ステップ板用の転動ローラ28を有している。即ち、
図3に示すブラケット部23の配設部位23bには、その車幅方向外側(左側)寄りに縦向きの第四軸材280が設けられ、この第四軸材280に、横向きの転動ローラ28が回転可能に軸支されている。そして転動ローラ28が、上記したステップ板41のレール部42に摺動可能に嵌められることで、この転動ローラ28の設けられたスライドドア20がステップ板41に連動可能に連結される。そして転動ローラ28を嵌めることのできるレール部42は、スライドドア20とステップ板41とを連動させる機構部を構成している。
【0042】
[格納位置のステップ装置]
図5及び
図6を参照して、スライドドア20が全閉位置にある状態では、この閉め状態のスライドドア20の車幅方向内側(右側)に、格納位置のステップ装置40が配置されている。このとき四節リンク機構43の前支持リンク43fと後支持リンク43bとは、
図6に示すように回転中心軸43c,43eを中心に右回動限位置まで水平回動している。これにより、ステップ板41は、
図5に示すようにロッカー30と固定ステップ板33の車両下側に配置されて格納位置に保持される。
【0043】
そして
図5に示す車両の下部構造では、ステップ装置40と共に、ロアスライドレール19がロッカー下に配置されている。また、ロアスライドレール19の車幅方向内側(右側)には内部部材3が配設されている。この種の構成では、上記したようにコストアップを抑制しつつ、車両衝突時の衝撃荷重を受けたスライドレール19が車幅方向内側に移動して内部部材3に強く当たらないように配慮する必要がある。そこで車両の下部構造では、
図6に示す連結部材51,52,53が、その車幅方向内側の部分でロッカー30に固定された状態で、ロッカー30の車両下側位置で車幅方向に延びるように設けられている。そして
図5を参照して、連結部材52等には、そのロッカー30との固定箇所よりも車幅方向外側(左側)の部分、即ち、基端部位520よりも車幅方向外側に設けられた先端部位522にスライドレール19が固定されている。上記した構成では、
図5に示すように、連結部材52等がロアスライドレール19と内部部材3間に配置されることで、衝撃荷重Fの加えられたロアスライドレール19が内部部材3に強く当てられ難くなる。そこで以下に、第二連結部材52を一例にその働きを具体的に説明する。
【0044】
先ず、車両の下部構造では、
図5に示すようにロアスライドレール19の固定された第二連結部材52が、車幅方向に延びるようにロッカー下に設けられている。これにより、第二連結部材52は、ロアスライドレール19と内部部材3間の隙を埋めるように、これらの間に配置される。そして第二連結部材52の先端部位522にロアスライドレール19を固定したことで、車両側突時にスライドレール19に加わる衝撃荷重Fを、このスライドレール19と第二連結部材52とで受けられるようになる。特に第二の補強部50Bとしてのロアスライドレール19が、車両下側に突出しつつ第二連結部材52を車両前後方向に縦断することで、車幅方向外側(左側)から加わる衝撃荷重Fをロアスライドレール19と第二連結部材52とで適切に受けられるようになる。さらにロアスライドレール19は、その内部にレール部42が収容されて剛性が一層高められている。これにより、衝撃荷重Fを受けたロアスライドレール19が過度に変形することを極力回避できる。
【0045】
そして車幅方向外側(左側)から加わる衝撃荷重Fを、
図5に示す第二連結部材52が変形して吸収することで、ロアスライドレール19の車幅方向内側(右側)への移動を抑制する。この第二連結部材52は、上記したように、下端位置のフランジ部31b,32bから車幅方向外側に延び、さらにロッカー30の車幅方向外側に張り出している。このため第二連結部材52は、その変形ストローク(車幅方向の長さ)が確保されることで衝撃荷重Fをより確実に吸収できるようになる。こうして衝撃荷重Fの加えられたロアスライドレール19は、その車幅方向内側への移動が第二連結部材52にて抑制されるため、内部部材3に強く当てられ難くなる。特に第二連結部材52は、前後の補強ビード部523(第一の補強部50A)の働きで、車幅方向外側から加わる衝撃荷重Fに対する剛性が高められているため、ロアスライドレール19の移動をより確実に抑制できるようになる。そして車両の下部構造では、
図6に示すロアスライドレール19の前部位置と中間位置と後端位置とに、それぞれ連結部材51,52,53が配設されている。このため連結部材51,52,53の働きで、ロアスライドレール19の車両前後方向における略全長において、その車幅方向内側(右側)への移動が抑制されるようになる。
【0046】
[車両の下部構造の利点]
こうして本実施例では、ロアスライドレール19の固定された連結部材52等が、車幅方向に延びるように設けられることで、ロアスライドレール19と内部部材3間に配置されるようになる。上記した構成によれば、車両衝突時等に加えられる衝撃荷重を、ロアスライドレール19と連結部材52等とで受けられるようになる。そして衝撃荷重の加えられたロアスライドレール19は、その車幅方向内側への移動が連結部材52等にて抑制されるため、内部部材3に強く当てられ難くなる。このため本実施例によれば、専用の緩衝部材を用いることなく、ロッカー下に配設されたロアスライドレール19が床下側の内部部材3に強く当てられないようにすることができる。
【0047】
更に本実施例では、第一の補強部50Aと第二の補強部50Bを連結部材52等に設けて補強しておくことで、車両衝突時等におけるロアスライドレール19の車幅方向内側への移動をより確実に抑制できるようになる。特に連結部材52等は、第一の補強部50Aが車両上下方向に突出しつつ、車幅方向、即ち、衝撃荷重の加えられる方向に延びているため、衝撃荷重に対する剛性がより確実に高められている。また連結部材52等は、車両下側に突出する第二の補強部50Bが車両外側の端部、即ち、衝撃荷重の加えられる箇所に配置されているため、衝撃荷重をより確実に受けられるようになる。
【0048】
[ステップ板の位置変位]
次にステップ装置40を格納位置から展開位置に移動させる際の挙動を説明する。
図9を参照して、スライドドア20が、その全閉位置から開方向に移動を開始することで、このスライドドア20に設けられたブラケット部23が車両後側に移動する。このときスライドドア20は、
図10に示すようにガイドローラユニット25のガイドローラ26及び荷重ローラ27をスライドレール19に対して摺動させることで、このスライドレール19に沿って車両後側にスライド移動するようになる(
図10に示すスライドドアの移動軌跡Doを参照)。
【0049】
また
図10を参照して、スライドドア20が移動を開始することで、上記したガイドローラユニット25のガイドローラ26及び荷重ローラ27が、ロアスライドレール19の曲げ部190に沿って車両後側に移動する(
図10中、二点破線で示す各ローラを参照)。また、ガイドローラユニット25の転動ローラ28も、ステップ板41のレール部42の前側直線部420(二点破線で示した部分を参照)に沿って車両後側に移動する。そしてレール部42の前側直線部420は、上記したようにスライドドア20が全閉位置から開方向に移動を開始するときの移動軌跡Doとは交差している。このため転動ローラ28が前側直線部420に沿って移動する間(
図10の矢印A1参照)、スライドドア20の車幅方向外向きの移動力が転動ローラ28を介してレール部42に加わり、ステップ板41が車幅方向外側(左側)に押圧される。これにより、四節リンク機構43の前支持リンク43fと後支持リンク43bとが、対応する回転中心軸43c,43eを中心に左回動し、ステップ板41が車幅方向外側に水平移動する。そして転動ローラ28が前側直線部420の後端まで移動する迄に、ステップ板41が、上記した移動力を受けることで格納位置から展開位置に変位するようになる。
【0050】
ここで
図6及び
図10を参照して、スライドドア20が移動を開始する際、上記したように曲げ部190の前部には、レール部42の前側直線部420が格納されていない。このため、ガイドローラ26及び荷重ローラ27は、ロアスライドレール19の曲げ部190に沿ってその後端位置まで移動できるようになる。また
図10の実線で示すようにステップ板41が展開位置に変位することで、このステップ板41に設けられたレール部42が、ロアスライドレール19から車幅方向外側(左側)に引き出される。こうしてロアスライドレール19からレール部42が引き出されることで、曲げ部190の後部側にガイドローラ26及び荷重ローラ27が進入できるようになる。
【0051】
つづいて
図10を参照して、スライドドア20が全開位置まで更にスライド移動する。このときガイドローラ26及び荷重ローラ27は、ロアスライドレール19の曲げ部190の後部と直線部191とに沿うように移動する。また転動ローラ28は、レール部42の前側直線部420から折曲部421に侵入したのち、この折曲部421と後側直線部422とに沿うように移動する(
図10の矢印A2参照)。そしてレール部42の折曲部421と後側直線部422とは、上記したようにスライドドア20の移動軌跡Doに沿うように形成されている。このため転動ローラ28が折曲部421と後側直線部422とを転動する間、スライドドア20の移動力がステップ板41のレール部42に加わらない。このため、スライドドア20が全開位置に移動する迄の間、ステップ板41は格納位置に保持されるようになる。なおスライドドア20が全開位置から全閉位置まで閉じられる際には、上記した動作と反対の動作で、ステップ板41が格納位置まで戻される。
【0052】
[車両の下部構造の別の利点(1)]
また車両の下部構造では、ロアスライドレール19とステップ装置40の収容スペースの増加を極力抑制することができる。即ち、
図5に示すロアスライドレール19は、上記したようにロッカー30に対する位置が不変とされて、固定ステップ板33の車両下側に配置されている。そしてロアスライドレール19は、中空柱状の収容部100を構成すると共に、その車幅方向外側(左側)に開口部195が形成されている。次に、ステップ板41では、その車幅方向外側の端部に、レール部42が車幅方向内側(右側)に突出するように設けられている。そしてレール部42とロアスライドレール19(開口部195)とは概ね同じ高さ位置に設けられている。上記した構成によれば、ステップ板41が格納位置に変位して、固定ステップ板33の車両下側にレール部42が配置されることにより、このレール部42が、開口部195を通じてロアスライドレール19内に収容されるようになる。これにより、ステップ板41のレール部42とロアスライドレール19とを車幅方向から重複させて配置できるようになり、各部材を個別に配置する場合に比して車幅方向の収容スペースを確保し易くなる。特に上記した構成では、車幅方向内側に突出するレール部42(凸状の端部)と、断面略横U字形のロアスライドレール19(凹状の収容部100)とを、車幅方向から嵌め合わせられるようになる。さらに、ロアスライドレール19内にレール部42を収容することで、このレール部42がロアスライドレール19から車両下側に突出し難くなる。これにより、ロアスライドレール19とステップ装置40とは、その地上高が確保されることで、地上(路面)に干渉し難くなる。
【0053】
[車両の下部構造の別の利点(2)]
また車両の下部構造によれば、
図3に示すステップ板41の支持性をより確実に確保できる。即ち、
図5に示す格納位置のステップ板41は、上記したようにロッカー30と固定ステップ板33の車両下側に配置されている。またロアスライドレール19は、第二連結部材52等によって支持された状態で、固定ステップ板33の車両下側に配置されている。そしてステップ板41の直下にロアスライドレール19が配置されることで、このロアスライドレール19(支持部位196)がステップ板41に接して下支えできるようになる。そして支持部位196は、ステップ板41が格納位置から展開位置に変位する間、このステップ板41に常に接するように構成されている。
【0054】
そしてステップ板41は、格納位置から展開位置に変位することで、
図3に示すように格納位置よりも車幅方向外側(左側)に配置されるようになる。またロアスライドレール19は、その支持部位196がステップ板41に常に接することで、この展開位置のステップ板41を下支えしている。そしてロアスライドレール19は、上記したようにロッカー30よりも車幅方向外側の位置に配置されることで、ロッカー側の支持板部44(基端支持部45)よりもステップ板41の車幅方向外側の縁部に近い位置を支持している。これにより、展開位置のステップ板41に車両上側から荷重Fu(踏み荷重等)が加えられた場合、この展開位置のステップ板41をロアスライドレール19によってより安定的に支持できるようになる。また荷重Fuの加えられたステップ板41は、その車幅方向内側(右側)が車両上側に動こうとするが、このステップ板41の上方移動は、剛性の高められた固定ステップ板33によって抑えることができる。
【0055】
更に上記した構成では、
図3に示すステップ板41の左縁部(荷重点、同図のレール部42の真上に位置する部分)とロアスライドレール19(支持点)間の距離を極力短縮できるため、ステップ板41の剛性を過度に高くする必要がない。また、
図4に示す前支持リンク43fと後支持リンク43bとで乗降時等のステップ板41を支持しなくともよいため、これら両リンク43f、43bの剛性を過度に高くする必要もない。このため車両の下部構造によれば、ロアスライドレール19の働きにより、ステップ装置40の構成の簡略化と軽量化が可能になる。
【0056】
本実施形態の車両の下部構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、スライドレールと連結部材の構成を例示したが、これらの構成を限定する趣旨ではない。例えば複数の連結部材でスライドレールを支持してもよく、単数の連結部材で(例えば
図4に示す複数の連結部材をつなげて一つにした状態で)スライドレールを支持できるように構成してもよい。また複数の連結部材を用いる場合、連結部材の個数やその配設位置も適宜変更可能であり、また連結部材毎に形状(外形形状や断面形状)を設定することができる。また連結部材には、第一の補強部と第二の補強部の少なくとも一方を設けることが好ましい。そして第一の補強部として、補強ビード部のほか、本体部位の面から起立する縦壁状の部位、本体部位の外縁を曲げたフランジ状の部位等を設けることができ、第一の補強部は車両上側と下側の少なくとも一方に突出させることができる。また第二の補強部として、スライドレールとは別体の部位を設けることもでき、この第二の補強部は車両上側と下側の少なくとも一方に突出させることができる。そしてスライドレールは、必ずしも連結部材の車両外側の端部に固定する必要はなく、当該端部よりも車両内側の部分に固定してもよい。また連結部材は、ロッカーの適宜の位置に固定することができる。なお内部部材として、バッテリのほか、液体又は気体等の燃料を収容する燃料収容部材等の各種の車両に搭載される部材を例示できる。なおスライドレールの開閉方向は、必ずしも車両前後方向に限られない。
【0057】
また本実施形態では、上記した別の利点(1)に関する構造等として、ステップ板とスライドレールの構成を例示したが、これらの構成を限定する趣旨ではない。例えばステップ板に収容部を設けると共に、この収容部に、スライドレールの車両外側の端部を収容することもできる。例えば
図3に示すスライドレールでは、荷重ローラを支持する下壁部を省略することができ、このような場合にはガイドローラ用の上壁部のみでスライドレールを形成することができる。この場合、スライドレールの車両外側の端部を構成する上壁部を、ステップ板の下面とローラ部間に形成された収容部に収容するように構成できる。上記した構成では、ステップ板が展開位置に変位することで、スライドレールの上壁部が収容部に対して車両内側に引き出されるようになる。またステップ板を電動で動かす場合、乗員検知用のセンサやスライドドア検知用のセンサ(機構部の一例)を、レール部の位置に配設することができる。この場合には、各種のセンサ類がステップ板の車両外側の端部(凸状の端部)を構成する。なお車両外側の端部と収容部は、必ずしも車両内外方向から嵌められるように構成される(凹凸嵌合される)必要はない。そして可能ならば、ステップ板の車両内側の端部を、スライドレールとしての収容部に収容してもよい。なお別の利点(1)に関する構造の少なくとも一部は必要に応じて省略できる。
【0058】
また本実施形態では、上記した別の利点(2)に関する構造等として、ステップ板とスライドレールの構成を例示したが、これらの構成を限定する趣旨ではない。例えばスライドレールは、車両上側から荷重の加えられたステップ板に当接可能に構成されておればよい。即ち、荷重の加えられたステップ板が車両下側に移動してスライドレールに直に当接すればよく、自由状態のステップ板とスライドレール間に若干の隙が設けられていてもよい。またスライドレールは、展開位置のステップ板だけを支持できるように構成することもできる。またスライドレールは、ロッカー下に隠れるように配設されていてもよく、この場合には、基端支持部よりも車両外側に配置されていることが望ましい。なお基端支持部は省略することもできる。そしてスライドレールがロッカーよりも車両外側に配置されている場合、このスライドレールは必ずしも固定ステップ板で覆われている必要はない。また支持部位は、ロアスライドレールに沿うように連続して設けてもよく断続的に設けてもよく、また支持部位の素材は一般的に樹脂であるがそれに限られず適宜変更可能である。またロアスライドレールから支持部位を省略することもでき、この場合には、ロアスライドレールが、ステップ板に直に接して下支えする。なお別の利点(2)に関する構造の少なくとも一部は必要に応じて省略できる。
【符号の説明】
【0059】
2 車両
3 内部部材
10 車両ボディ
11 フロントドア開口部
12 リヤドア開口部
15 フロントドア
17 アッパースライドレール
18 センタースライドレール
19 ロアスライドレール(本発明のスライドレール)
190 曲げ部
191 直線部
192 上壁部
193 下壁部
194 縦壁部
195 開口部
196 支持部位
20 スライドドア
23 ブラケット部
23a 固定部位
23b 配設部位
25 ガイドローラユニット
26 ガイドローラ
27 荷重ローラ
28 転動ローラ
30 ロッカー
31 ロッカーアウター
311 (ロッカーアウターの)上板面
312 (ロッカーアウターの)下板面
313 (ロッカーアウターの)左側板面
32 ロッカーインナー
321 (ロッカーインナーの)上板面
322 (ロッカーインナーの)下板面
323 (ロッカーインナーの)右側板面
31a,32a 上側のフランジ部
31b,32b 下側のフランジ部
33 固定ステップ板
34 縦壁部位
35 横壁部位
36 補強材
37 基端用ブラケット
37sb 後側支持部
37sf 前側支持部
38 先端用ブラケット
40 ステップ装置
41 ステップ板
410 先端部
411 固定板部
42 レール部
420 前側直線部
421 折曲部
422 後側直線部
43 四節リンク機構
43f 前支持リンク
43b 後支持リンク
43c,43e 回転中心軸
43x,43y 先端連結軸
44 支持板部
44a 別の支持板部
45 基端支持部
45a 別の基端支持部
51 第一連結部材
52 第二連結部材
520 基端部位(本発明の連結部材の車両内側の部分、ロッカーとの固定箇所)
521 本体部位
522 先端部位(本発明の連結部材の車両外側の部分)
523 補強ビード部
53 第三連結部材
50A 第一の補強部
50B 第二の補強部
100 収容部
260 第一軸材
261 上側支持部
270 第二軸材
271 下側支持部
272 第三軸材
280 第四軸材