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特開2024-75145ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075145
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/01 20060101AFI20240527BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20240527BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240527BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240527BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240527BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240527BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K31/01
A61K8/31
A61K31/015
A61P43/00 111
A61K36/81
A61K36/28
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K8/9789
A61Q19/00
A23L33/10
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186362
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】597040784
【氏名又は名称】オルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白土 直
(72)【発明者】
【氏名】諸富 勝成
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD53
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AD531
4C083CC02
4C083EE12
4C088AB26
4C088AB48
4C088AC03
4C088AC04
4C088BA18
4C088BA23
4C088CA09
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA02
4C206BA04
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】光曝露などの皮膚中のヒアルロン酸含有量が減少する条件下において、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進作用を有する成分を含有する組成物を提供すること。
【解決手段】リコピンを含有するヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用医薬組成物又はヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用食品組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコピンを含有するヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用医薬組成物又はヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用食品組成物。
【請求項2】
さらに、ルテインを含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進が、光曝露によるヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現低下を抑制するものである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
リコピンが、トマト由来である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ルテインが、マリーゴールド由来である請求項2記載の組成物。
【請求項6】
ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用食品組成物である、請求項1~5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
リコピン及びルテインを含有する、光曝露によって生じる皮膚トラブルの防止又は軽減用組成物。
【請求項8】
リコピンが、トマト由来である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
ルテインが、マリーゴールド由来である請求項7記載の組成物。
【請求項10】
光曝露によって生じる皮膚トラブルの防止又は軽減用食品組成物である請求項7~9のいずれか1項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、直鎖状のグリコサミノグリカンの一種であり、保水性が高く水分保持により粘性を有する。皮膚、軟骨、眼球などに多く含まれており、これらの組織で水分保持に基づく種々の機能を発揮している。
皮膚のヒアルロン酸は生体内ヒアルロン酸の50%を占めるが、加齢により減少し、このことが皮膚の乾燥、弾力の低下、シワの発生につながるといわれている。皮膚のヒアルロン酸を補う目的で、ヒアルロン酸の外用や経口投与がなされているが、高分子量のヒアルロン酸はほとんど経皮吸収されず、消化管で分解されてしまうため、十分な効果は期待できない。従って、ヒアルロン酸を増やすためには、生体内でヒアルロン酸を作らせることが必要である。
【0003】
ヒアルロン酸は細胞膜の内側の面で、ヒアルロン酸合成酵素の作用により合成される。ヒアルロン酸合成酵素(HAS)には、HAS1、HAS2、HAS3の3種が知られている。加齢により皮膚のヒアルロン酸含有量が減少する原因は、紫外線や乾燥などが挙げられており、紫外線照射により減少するHAS2などのヒアルロン酸合成酵素遺伝子の減少を抑制できる成分の開発が望まれている。
ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現を促進する成分としては、イチゴ種子から抽出されたチロリサイド(特許文献1)、ラベンダーオイル、ユーカリオイル(特許文献2)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-298765号公報
【特許文献2】特開2016-180007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2記載の成分は、通常の培養細胞におけるヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現を促進することを確認しているが、紫外線照射などの皮膚中のヒアルロン酸含有量が低下する条件におけるヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現に対する作用は検討されていない。
従って、本発明の課題は、光曝露などの皮膚中のヒアルロン酸含有量が減少する条件下において、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進作用を有する成分を含有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、ヒト皮膚線維芽細胞に紫外線を照射することによりヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現量が減少する条件下において、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現の低下を抑制できる成分を探索したところ、リコピンがこの条件でヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進作用を有し、また、ルテインにも同様の作用があり、これらを含有する組成物がヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物として有用であることを見出した。
さらに、ヒト皮膚線維芽細胞に紫外線を照射することにより増強されるマトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)遺伝子の発現をルテインが抑制することを見出した。これらのことから、リコピンとルテインを併用すれば、光曝露によって生じる種々の皮膚トラブルを防止又は軽減できる組成物が得られることも見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[10]を提供するものである。
[1]リコピンを含有するヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物。
[2]さらに、ルテインを含有する[1]記載の組成物。
[3]ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進が、光曝露によるヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現低下を抑制するものである[1]又は[2]記載の組成物。
[4]リコピンが、トマト由来である[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]ルテインが、マリーゴールド由来である[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用食品組成物である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]リコピン及びルテインを含有する、光曝露によって生じる皮膚トラブルの防止又は軽減用組成物。
[8]リコピンが、トマト由来である[7]記載の組成物。
[9]ルテインが、マリーゴールド由来である[7]記載の組成物。
[10]光曝露によって生じる皮膚トラブルの防止又は軽減用食品組成物である[7]~[9]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物の有効成分であるリコピン及びルテインは、いずれも経口摂取により吸収されることが知られており、安全性も高いことが知られているから、長期摂取によりヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進作用、特に光曝露により低下するヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現低下を抑制することができる。
また、リコピン及びルテインを含有する組成物は、経口摂取により、光曝露によって生じる種々の皮膚トラブル、例えば乾燥、ハリの低下、しわなどを防止又は軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】トマト抽出物(リコピン)の添加が、UVB照射によるHAS2発現の低下を抑制することを示す図である。
図2】トマト抽出物(リコピン)の添加が、UVA照射によるHAS2発現の低下を抑制することを示す図である。
図3】マリーゴールド抽出物(ルテイン)の添加が、UVA照射により減少したHAS2発現を回復させることを示す図である。
図4】マリーゴールド抽出物(ルテイン)の添加が、MMP-1の発現を抑制することを示す図である。
図5】トマト抽出物(リコピン)の添加が、LED照射によるHAS2発現の低下を抑制することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明はヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物であり、その一態様は、リコピンを含有するヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物である。
また、本発明は、皮膚トラブルの防止又は軽減用組成物であり、その一態様は、リコピン及びルテインを含有する、光曝露によって生じる皮膚トラブルの防止又は軽減用組成物である。
【0011】
リコピン(リコペンともいう)は、カロテンの一種で、鮮やかな赤色を示す有機化合物であり、抗酸化作用を有し、LDLコレステロールの酸化を抑制し、血流を改善することが知られているが、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現を促進する効果があることは知られていない。
リコピンは、トマト、すいか、ピンクグアバ、ピンクグレープフルーツ、杏子などに含まれていることが知られているので、これらの野菜や果物から抽出したものを用いることができ、トマト由来のリコピンが好ましい。トマト由来のリコピンは、単離することなく、トマト抽出物を用いることができる。
【0012】
トマト抽出物としては、リコピンの他に、β-カロテン、トコフェロール、フィトステロール、フォスフォリピッド、フィトエン、フィトフルエンなどの天然化合物を含んでいることが好ましい。トマト抽出物中のリコピンの含有量(HPLC法)は、1%~50%が好ましく、10%~30%がより好ましい。また、トマト抽出物中の天然トコフェロールの含有量(乾燥重量として)は0.5%以上、β-カロテンの含有量が0.1%以上、フィトエン・フィトフルエンの含有量は0.5%以上であることがさらに好ましい。特に好ましいトマト抽出物中のリコピンの含有量は15%~30%(HPLC法)、天然トコフェロールの含有量は1.5%以上、フィトエン・フィトフルエンの含有量は1.0%以上、β-カロテンの含有量が0.2%以上である。
【0013】
トマト抽出物の製造方法としては、例えば、粉砕されたトマトを遠心分離や静置などの方法で液体成分と繊維成分とに分離し、繊維成分を酢酸エチルやエタノールなどの各種有機溶剤で抽出し、必要に応じて乾燥する方法が挙げられる。繊維成分にはリコピンやポリフェノールなどの成分が豊富であるため、効果的に有効成分を抽出可能である。トマトは、粉砕の前後に適宜加熱処理やフィルター処理などが行われても良い。
【0014】
ルテインは、キサントフィル(黄色の色素)であり、カロテノイドの一種である。体内ではゼアキサンチンと共に眼球内の黄斑部や水晶体、皮膚などに多く存在する。ルテインの黄斑での役割は、青色光を吸収することで光によるストレスを軽減することや、酸化ストレスから防御することであるとされている。しかし、ルテインが、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現を促進する効果があること、MMP-1遺伝子の発現を抑制することは知られていない。
ルテインは、紫蘇などのシソ科植物、モロヘイヤ、ホウレンソウ、パセリなどの色の濃い葉物野菜、黄色の花に多く含まれており、これらの植物、特にマリーゴールド由来のルテインが好ましい。マリーゴールド由来のルテインは、単離することなく、マリーゴールド抽出物を用いることができる。
【0015】
マリーゴールド抽出物としては、ルテインの他にゼアキサンチン、フィトエン、フィトフルエン、リコピン、αカロテン、βカロテン、アスタキサンチン、オレオレジン、カプサンチン、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、 没食子酸、ケルセチン、バツレチンを含んでいてもよい。ルテインの含有量は、1質量%以上が好ましく、ゼアキサンチンの含有量は、1質量%以上が好ましい。特に、ルテインを20質量%以上、ゼアキサンチンを5質量%以上を含有するマリーゴールド抽出物を用いるのが好ましい。
【0016】
マリーゴールド抽出物の製造法としては、収穫したマリーゴールドの花弁を乾燥させた後、ヘキサンなどの有機溶媒で成分を抽出した後、鹸化処理し、精製して結晶化する操作が挙げられる。
【0017】
後記実施例に示すように、リコピンは、ヒト皮膚線維芽細胞に紫外線を照射することによりヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現量が減少する条件下において、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現の低下を抑制する。また、ルテインも、ヒト皮膚線維芽細胞に紫外線を照射することによりヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現量が減少する条件下において、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現の低下を抑制する。
従って、リコピンを含有する組成物は、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子発現促進用組成物として有用である。そして、この組成物には、ルテインを含有することが好ましい。
また、ルテインは、ヒト皮膚線維芽細胞に紫外線を照射することにより増強されるマトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)遺伝子の発現を抑制する。
従って、リコピンとルテインを含有する組成物は、光曝露によって生じる皮膚トラブルを防止又は軽減用組成物として有用である。
ここで、光曝露によって生じる皮膚トラブルとしては、皮膚の乾燥、皮膚のハリの減少、しわの発生などが挙げられる。これらの皮膚トラブルは、皮膚の光曝露により生じることが知られており、ヒアルロン酸の減少、MMP-1活性の増強によるコラーゲンの減少が原因とされるからである。また、光には、紫外線を含む太陽光だけでなく青色光が挙げられる。
皮膚トラブルの防止又は軽減としては、皮膚トラブルの症状の発生の防止、皮膚トラブルの症状の軽減、皮膚トラブルの症状の改善が挙げられる。
【0018】
本発明の前記組成物の投与手段は、経口投与又は非経口投与のいずれであってもよい。
また、本発明の前記組成物は、医薬組成物、化粧料組成物、及び食品組成物のいずれでもよい。ここで食品組成物としては、サプリメント、機能性表示食品、特定保健用食品等が挙げられる。
【0019】
例えば、投与に際して、前記組成物を経口投与、経皮投与、直腸内投与、注射等の投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散在、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。
上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0020】
本発明の食品組成物は、上述した適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、即ち、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト、飲料、明らか食品、菓子等にすることができる。
【0021】
本発明の前記組成物に用いるリコピン及びルテインは、広い用量範囲に渡って有効であるため、当該リコピン及び/又はルテインを医薬組成物及び食品組成物に配合する場合の含有量は、約0.001~99質量%、好ましくは、約0.005~50質量%の範囲とすればよい。
【0022】
本発明の前記組成物の有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜決定されるが、例えば、経口投与の場合、一般に1日当たりリコピン及び/又はルテインとして1~200mg/kg体重程度で十分であり、1日に数回に分けて投与してもよい。
【実施例0023】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
製造例1(トマト抽出物の製造)
リコピンリッチトマトを洗浄、分別し、遠心分離した。その後、得られたトマト繊維をヘキサンなどの有機溶媒を使用して抽出し、濃縮した。得られたトマト抽出物は、リコピンを15質量%以上含有を規格値とした。
【0025】
製造例2(マリーゴールド抽出物の製造)
収穫したマリーゴールドの花弁を乾燥し、ヘキサンを使用して抽出、濃縮した。得られた抽出物は、ルテインフリー体として20質量%以上、ゼアキサンチンフリー体として5質量%以上含有を規格値とした。
【0026】
実施例1(HAS2遺伝子発現促進作用及びMMP-1遺伝子発現抑制作用)
(方法)
正常ヒト成人皮膚線維芽細胞NHDF(AD)はFibroLife S2 Comp kit培地を用いて37℃、5% CO2下にて培養を行った。
950μLのDMSOにトマト抽出物50μLを加え、Vortexミキサーにより攪拌後、20,000×gで5分間遠心、不溶性の画分を除いた上清を終濃度5質量%のトマト抽出物溶液とし、試験に用いた。5質量%トマト抽出物溶液は遮光し4℃で保存した。
975μLのDMSOにマリーゴールド抽出物25μLを加え、Vortexミキサーにより攪拌後、20,000×gで5分間遠心、不溶性の画分を除いた上清を終濃度2.5質量%のFloraGLO溶液とした。2.5質量%マリーゴールド抽出物溶液をDMSOで5倍に希釈して0.5質量%溶液とし、試験に用いた。0.5質量%マリーゴールド抽出物溶液は遮光し4℃で保存した。
被験物質の評価試験には、細胞を96-well plateに3.3×103cells/wellで播種し、37℃、5%CO2下にて24時間培養後、被験物質を添加して37℃、5%CO2下にて1時間培養した後、光照射を行った(照射前添加)。あるいは、光照射を行った後に、培地へ被験物質を添加した(照射後添加)。UVB及びUVA照射は、UVPクロスリンカーを用い、装置内に96-well plateを置き、plateの蓋を外した状態で照射を行った。波長470nmのLED照射は、CO2インキュベーター内に設置したLEDアレー下に96-well plateを置き(プレートまでの距離 7cm)、蓋をしたまま照射を行った。光照射後24時間の細胞を用いて遺伝子発現を評価した。
遺伝子発現の定量を、TaqMan probeを用いたqPCRで実施した。光照射24時間後の96-well plateから説明書に従ってRNA調製及びcDNA合成を行い、TaqMan probeを用いてHAS2遺伝子(TaqMan Probe Assay ID: Hs00193435)及びMMP-1遺伝子(Assay ID: Hs00899658)の発現量を測定した。内部標準としてGAPDH遺伝子(Assay ID:Hs99999905)を用いたΔΔCt法により、相対発現量を定量した。被験物質非添加、光照射なしを1として、相対的な発現量を算出した。
【0027】
(結果)
光照射に応答して発現量が変化することが知られているHAS2及びMMP-1のmRNA量の変動をqPCRによって検討した。
光照射により発現が抑制されることが知られているHAS2は、UVB及びUVA照射により発現の低下が見られ、トマト抽出物の添加は光照射によるHAS2発現の低下を抑制する傾向が見られた(図1及び図2)。マリーゴールド抽出物の添加はUVA照射により減少したHAS2発現を回復させる傾向を示した(図3)。
光照射により発現が亢進することが知られているMMP-1は、UVB照射により発現の亢進が見られ、ルテイン抽出物の添加はMMP-1の発現を抑制する傾向が見られた(図4)。
LED照射に応答して発現量が変化することが知られているHAS2は、トマト抽出物の添加量に依存したHAS2遺伝子発現の亢進が見られた(図5
【0028】
製剤例1
肌や目を光刺激から保護する製剤としてはマリーゴールド抽出物をルテインフリー体として1~30mg/日、ゼアキサンチンフリー体を0.5~10mg/日摂取できるように配合する。また、トマト抽出物をリコピンとして1~20mg/日摂取できるように配合する。
図1
図2
図3
図4
図5