(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075151
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】培地
(51)【国際特許分類】
A01G 18/20 20180101AFI20240527BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20240527BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240527BHJP
B32B 23/02 20060101ALI20240527BHJP
B32B 23/10 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A01G18/20
D04H1/425
B32B5/26
B32B23/02
B32B23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186372
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小池 尚志
(72)【発明者】
【氏名】宮川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】関 俊一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 佐登美
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 俊明
【テーマコード(参考)】
2B011
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
2B011AA07
2B011BA16
4F100AJ04B
4F100AJ07B
4F100AK41B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA12B
4F100DB14
4F100DG01B
4F100DG02B
4F100DG15A
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB01
4F100GB23
4F100GB66
4F100JC00
4L047AA08
4L047AB02
4L047CA02
4L047CA05
4L047CC15
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易であり、栄養剤の保持性が高い培地を提供する。
【解決手段】培地は、複数のレイヤーからなるキノコ栽培用の培地であって、各前記レイヤーは、不織布を含む不織布層と、前記不織布層上に堆積されたセルロース繊維を含むセルロース繊維層と、から成り、前記セルロース繊維層に栄養剤が含有されている。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレイヤーからなるキノコ栽培用の培地であって、
各前記レイヤーは、不織布を含む不織布層と、前記不織布層上に堆積されたセルロース繊維を含むセルロース繊維層と、から成り、
前記セルロース繊維層に栄養剤が含有されていることを特徴とする培地。
【請求項2】
前記複数のレイヤーの積層面に平行な前記セルロース繊維層の上面にキノコの菌糸が散布される請求項1に記載の培地。
【請求項3】
前記複数のレイヤーの積層面に交差する面にキノコの菌糸が散布される請求項1に記載の培地。
【請求項4】
積層された各前記レイヤーの側面に溝が形成されている請求項1に記載の培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地に関する。詳しくは、キノコ栽培用の培地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、バカマツタケの菌床栽培に用いる菌床培地が開示されている。当該菌床培地は、その主要構造が培地構成物と空隙とからなる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記菌床培地を成形して用いる場合に、形状を維持することが困難である、という課題があった。具体的には、上記菌床培地は、大鋸屑等の粉粒体から構成されるため、互いの結び付きが弱くなりやすい。そのため、シート状や塊状の成形体とした場合に形状が崩れやすくなり、取り扱いが困難になる場合があった。すなわち、形状が維持され易く取り扱いが容易なキノコ栽培用培地が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
培地は、複数のレイヤーからなるキノコ栽培用の培地であって、各前記レイヤーは、不織布を含む不織布層と、前記不織布層上に堆積されたセルロース繊維を含むセルロース繊維層と、から成り、前記セルロース繊維層に栄養剤が含有されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】第1実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図1B】第1実施形態にかかるシート部材の構成を示す模式図。
【
図1C】第1実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図1D】第1実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図2】第1実施形態にかかるシート製造装置の構成を示す模式図。
【
図3】第2実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図4】第3実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図5A】第4実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図5B】第4実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図6】第5実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図7】第6実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図8】第7実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【
図9】第8実施形態にかかるキノコ栽培用の培地の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.第1実施形態
まず、キノコ栽培用の培地ST1の構成について説明する。
図1A及び
図1Bに示すように、培地ST1は、複数のレイヤーによって構成される。培地ST1の各レイヤーは、シート部材Sで構成される。すなわち、本実施形態の培地ST1は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。各シート部材Sは、シート状を成し、外形寸法はほぼ同じである。培地ST1では、各シート部材Sが接触する積層面が水平面に対してほぼ平行となるように構成される。すなわち、培地ST1は、横置きのシート部材Sを高さ方向に積層した構成である。
図1Aの例では、培地ST1は、6層のシート部材Sによって構成される。なお、培地ST1におけるシート部材Sの積層数(レイヤー数)は、栽培するキノコ種等に対応して適宜設定可能である。また、シート部材Sは、単体でも培地として利用可能である。
【0008】
シート部材Sは、略直方体を成す。実施形態におけるシート部材Sの厚み寸法は、およそ20mmである。シート部材Sは、不織布を含む不織布層L1と、不織布層L1上に堆積されたセルロース繊維層L2と、から構成される。このようなシート部材Sを積層することで略直方体の培地ST1が形成される。
【0009】
セルロース繊維層L2は、セルロース繊維F、結合材B、および栄養剤Gを含む。
セルロース繊維Fは、セルロース繊維層L2の主成分の一つである。セルロース繊維Fは、植物由来であって、比較的に豊富な天然素材である。セルロース繊維Fは、紙、段ボール、パルプ、パルプシート、大鋸屑、鉋屑、および木材などの原料に解繊処理を施すことによって得られる。
【0010】
セルロース繊維Fは、主としてセルロースで形成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでもよい。セルロース以外の成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニンなどが挙げられる。
【0011】
セルロース繊維Fの平均繊維長は、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。これによれば、セルロース繊維F同士が適度に絡み合って、シート部材Sの形状がさらに維持され易くなる。セルロース繊維Fの平均繊維長は、ステープルダイヤグラム法により測定される。
【0012】
セルロース繊維Fを用いることにより、環境問題や埋蔵資源の節約などへの対応が促進される。セルロース繊維Fは、原材料の調達やコストの点でも優位である。また、セルロース繊維Fは、各種繊維の中でも、理論上の強度が高く、シート部材Sの強度向上にも寄与する。
【0013】
結合材Bは、複数のセルロース繊維F同士を結合させる。これにより、シート部材Sにおいて、セルロース繊維F同士の結び付きが強まり、シート部材Sの形状が維持され易くなる。
【0014】
結合材Bとしては、環境負荷低減の観点から天然物由来であることが好ましく、例えば、澱粉、たんぱく質系接着剤、木材成分系接着剤、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。たんぱく質系接着剤は、膠、カゼイングルー、および大豆グルーなどである。木材成分系接着剤は、漆、セルロース系接着剤、およびリグニン系接着剤などである。
【0015】
上述した化合物の中でも、澱粉が結合材Bに適している。澱粉は、水分および熱が付与されると糊化して結合力が発現する。澱粉は、天然物由来であるため環境負荷の低減に有利であることに加えて、キノコの栄養源やシート部材Sの保水剤としても機能する。
【0016】
栄養剤Gは、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの窒素肥料、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥などのリン酸肥料、および塩化カリウム、硝酸カリウムなどのカリ肥料、大豆かす、鶏糞や馬糞などが挙げられる。また、チキン質(エビ、カニなどの甲殻類の殻、昆虫等の節足動物の外骨格)、特定保健用食品に含まれる栄養分(例えば、DHA、EPA)などが挙げられる。
【0017】
セルロース繊維層L2は、セルロース繊維F、結合材B、および栄養剤Gの他に、各種添加剤を含んでもよい。各種添加剤としては、土質改良剤、害虫忌避剤や殺虫剤、保水剤、乳酸菌や発酵促進剤、灰などが挙げられる。
【0018】
土質改良剤としては、例えば、有機石灰、草木灰、生石灰、および消石灰などのpH調整剤が挙げられる。
【0019】
害虫忌避剤や殺虫剤としては、例えば、樟脳、ナフタレンなどの化学的に合成された公知の薬剤、およびクスノキの木粉やヒノキの木粉などの天然材料が挙げられる。これらの薬剤や天然材料は、単独または複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
保水剤としては、アクリル酸-ビニルアルコール共重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体のアルカリ加水分解物、アクリル酸ナトリウムの重合体、複数種類の吸水性ポリマーの混合物などが挙げられる。
【0021】
乳酸菌は、腐敗の原因となるカビや好気性菌類の活動を抑制する。発酵促進剤は、シート部材Sにて乳酸菌などの微生物の働きを促進させる。
【0022】
灰としては、例えば、木炭、竹炭、ヤジガラ炭などが挙げられる。灰は、シート部材Sにて雑菌や虫の発生を抑制する。
【0023】
不織布層L1は、セルロース繊維や結合材を含む。これらのセルロース繊維や結合材は天然材料であり、セルロース繊維層L2に含まれるセルロース繊維Fや結合材Bと同様である。
不織布層L1に含まれる複数のセルロース繊維は、一方向に配向した構成であってもよいし、ランダムに折り重なった構成であってもよい。不織布層L1に含まれる複数のセルロース繊維は、互いに絡み合っていることが好ましい。これによれば、不織布層L1の強度を高めることができる。
【0024】
シート部材Sは、不織布層L1によってセルロース繊維層L2が保持されるので、シート部材Sの形状が維持され、取り扱いが容易となる。従って、複数のシート部材Sを積層しやすく、容易に培地ST1を形成することができる。
さらに、不織布層L1によってセルロース繊維層L2に含まれる栄養剤Gや水分の保持性が向上し、培地ST1における保湿性が向上する。これにより、シート部材Sに散布した菌糸K(
図1C)の成長を促進させることができる。
【0025】
図1Cに示すように、培地ST1を用いてキノコを栽培する場合には、培地ST1を培養袋Q中に収容し、培地ST1における最上層のシート部材Sのセルロース繊維層L2上面にキノコの菌糸Kを散布する。その後、培養袋Qを閉じ、所定の環境下に放置する。なお、培地ST1の最下層のシート部材Sにおける不織布層L1のセルロース繊維層L2とは反対の面に柿渋等の撥水機能液を塗布してよい。これにより、培地ST1内の栄養分や水分の保持性を高めることができる。
【0026】
培養袋Qは、例えば、HEPAフィルターHfを備えたポリエチレン製の容器である。HEPAフィルターHfによって、培地ST1に含まれる各種菌やキノコの菌糸Kの呼吸が確保される。また、培養袋Q中へのカビ菌の侵入を抑制することができる。
なお、キノコの菌糸Kを散布する前に、培地ST1が収容された培養袋Q内部を高温高圧で殺菌することが好ましい。
【0027】
キノコ栽培では、培養袋Q内において菌糸Kを培地ST1全体に成長させ、培地ST1の表面を褐変させる培養工程の後、培地ST1を培養袋Qから取り出した状態で子実体(キノコ)を発生させる発生工程に移行することになる。ここで、培養工程において培地ST1の表面全面に菌糸Kの成長及び褐変が発生していることが好ましい。菌糸Kの成長や褐変が不十分である場合、培地ST1が外気中のカビや細菌に侵されやすくなり、子実体の育成の妨げとなる。なお、キノコ種によっては褐変しない場合もあり、例えば、マッシュルームでは、培地ST1の表面が白色化する。
また、培地ST1の上部表面に比べ、培地ST1の側面の下部へ行くほど菌糸Kの成長が遅い。従って、培地ST1の側面下部に対する菌糸Kの成長促進が求められている。
【0028】
そこで、本実施形態の培地ST1では、シート部材Sの積層によって培地ST1表面全面への菌糸Kの成長、及び褐変の促進が図られている。以下、具体的に説明する。
【0029】
図1Dでは、培地ST1における菌糸Kの成長の流れを矢印で示している。なお、
図1Dでは、培養袋Qを省略している。
図1Dに示すように、培地ST1における最上層のシート部材Sのセルロース繊維層L2上面に散布されたキノコの菌糸Kは、セルロース繊維層L2の表面及び内部の各方向に成長していく。セルロース繊維層L2に含まれる栄養剤Gや水分は、各シート部材Sの不織布層L1によって保持されるので、菌糸Kの成長が促進される。
【0030】
また、各シート部材Sの不織布層L1は、水分を保持するため、セルロース繊維層L2の内部に成長した菌糸Kは、不織布層L1に到達すると、不織布層L1の下方とともに不織布層L1に沿って培地ST1の表面側にも成長する。すなわち、不織布層L1は、菌糸Kの成長方向を培地ST1の表面に向けて誘導する誘導路としても機能する。培地ST1の表面に達した菌糸Kは、培地ST1の表面に沿って下方に成長していく。このような菌糸Kの成長が各層のシート部材S内で発生する。これにより、菌糸Kの成長、及び褐変の促進を図ることができる。特に、培地ST1の下部表面における菌糸Kの成長、及び褐変の促進を図ることができる。また、培地ST1の表面全面に菌糸Kの成長や褐変を早く均一に行うことができる。
これにより、子実体の収穫量の安定化を図ることができる。また、培養工程の期間が短縮され、培養工程において温湿度管理等にかかる電気代等の費用を低減することができる。
【0031】
なお、培地ST1の形状は直方体に限定されず、任意の形状であってもよい。例えば、円柱状であってもよい。このようにしても上記同様の効果を得ることができる。
【0032】
次に、シート部材Sを製造するシート製造装置1の構成について説明する。
シート製造装置1では、セルロース繊維Fの原料を乾式にて解繊して繊維化した後、結合材Bや栄養剤Gなどを混合してから加圧、加熱、切断することにより、シート部材Sを製造する。なお、乾式とは、水などの液体の中ではなく、大気などの気中で処理を行うことをいう。
以下の説明では、セルロース繊維Fを単に繊維ともいい、セルロース繊維Fの原料を単に原料ともいう。
【0033】
図2に示すように、シート製造装置1は、原料供給部10、粗砕部12、解繊部20、選別部40、第1ウェブ形成部45、回転体49、搬送部50、篩部60、第2ウェブ形成部70、栄養剤供給部100、添加剤供給部110、移送部79、成形体形成部80、切断部90、および受け部96を備える。
【0034】
シート製造装置1は、原料や第2ウェブW2などを加湿する加湿機構を備える。加湿機構は、第1加湿部31、第2加湿部32、第3加湿部33、第4加湿部34、第5加湿部35、および第6加湿部36を含む。加湿機構は、加湿によって上記原料や第2ウェブW2などの帯電を抑える。これにより、上記原料などのシート製造装置1内への付着が抑制される。第1加湿部31、第2加湿部32、第3加湿部33、および第4加湿部34は、例えば、気化式または温風気化式の加湿器を含む。第5加湿部35、および第6加湿部36は、例えば、超音波式加湿器を含む。
【0035】
シート製造装置1は、制御部450を備える。制御部450は、プロセッサーであり、シート製造装置1に備わる各部を総合的に制御する。
【0036】
原料供給部10は、粗砕部12に上記原料を供給する。粗砕部12に供給される上記原料は、セルロース繊維Fを含むものであればよい。原料供給部10は、一例として、古紙などの紙を重ねて蓄積するスタッカーと、スタッカーから紙を粗砕部12に送り出す自動投入装置と、を有する。
【0037】
粗砕部12は、一対の粗砕刃14と、図示しない粗砕刃駆動部を有する。粗砕部12は、原料供給部10から供給された上記原料を一対の粗砕刃14で裁断して粗砕片にする。一対の粗砕刃14は、大気などの気中にて上記原料を挟んで裁断する。粗砕片の形状や大きさは、特に限定されず、解繊部20での解繊処理に適していればよい。粗砕部12は、上記原料を、例えば1cmから数cm四方、またはそれ以下のサイズの紙片に裁断する。粗砕部12にて裁断された粗砕片は、シュート9を介して第1管2を通り、解繊部20に搬送される。
【0038】
解繊部20は、粗砕部12にて裁断された粗砕片を解繊する。解繊部20は、粗砕片を解繊処理することにより解繊物を生成する。ここで、解繊とは、複数の繊維が結着されている粗砕片を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、粗砕片に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤などの樹脂粒を、繊維から分離する機能も備える。
【0039】
解繊部20で生成された解繊物は、解きほぐされた繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂粒を含む場合がある。解きほぐされた解繊の形状は、ひも状や平ひも状である。解繊物には、複数の繊維が絡み合っていない、つまり独立した繊維の繊維群が含まれていてもよく、複数の解繊が絡み合って塊状となった、つまりダマを形成した繊維群が含まれていてもよい。
【0040】
解繊部20では、乾式にて解繊が行われる。解繊部20は、例えば、インペラーミルを有する。図示を省略するが、インペラーミルは、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーと、を備える。粗砕部12で裁断された粗砕片は、解繊部20のローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0041】
解繊部20では、上記ローターの回転により気流が発生する。該気流によって、解繊部20では、粗砕片が第1管2から粗砕片導入口22を介して吸引され、解繊物が解繊物排出口24から排出される。解繊物は、解繊物排出口24から第2管3に送り出され、第2管3を介して選別部40に搬送される。また、シート製造装置1は、気流発生装置である解繊ブロアー26を有する。解繊ブロアー26が発生させる気流により、解繊物の選別部40への搬送が促進される。
【0042】
選別部40には解繊物導入口42が設けられる。解繊物導入口42には、第2管3から解繊物が流入する。選別部40は、解繊物導入口42から流入した解繊物を、解繊物の大きさに応じて選別する。
【0043】
詳しくは、選別部40は、解繊物のうち、予め定められた大きさ以下の解繊物を第1選別物とし、第1選別物より大きい解繊物を第2選別物として、各々選別する。第1選別物は、所定の長さよりも短い繊維または粒子などを含む。第2選別物は、所定の長さよりも大きい繊維、未解繊片、十分に解繊されていない粗砕片、解繊された繊維の再凝集物、複数の繊維が絡まったダマなどのいずれか1つ以上を含む。
【0044】
選別部40は、第1ドラム部41と、第1ドラム部41を収容する第1ハウジング43と、を有する。第1ドラム部41は、図示しない網を有し、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。第1ドラム部41では、解繊物が、網の目開きより小さい第1選別物と、網の目開きより大きい第2選別物と、に選別される。
【0045】
解繊物導入口42から流入した解繊物は、第1ドラム部41の内部に送り込まれる。第1ドラム部41の回転によって第1選別物が第1ドラム部41の網の目から下方に落下する。第1ドラム部41の網目を通過できない第2選別物は、解繊物導入口42から第1ドラム部41に流入する気流により流されて選別物排出口44に導かれ、第3管4に送り出される。第3管4は、第1ドラム部41の内部と第1管2とを連結する。第3管4に送り出された第2選別物は、解繊部20に戻されて、再度、解繊処理が施される。
【0046】
第1ドラム部41にて選別された第1選別物は、第1ドラム部41の網目を通過して空気中に分散される。分散された第1選別物は、第1ドラム部41の下方に位置する第1ウェブ形成部45の第1メッシュベルト46に向けて重力によって降下する。
【0047】
第1ウェブ形成部45は、第1メッシュベルト46、複数のベルト搬送ローラー47、および第1吸引部48を有する。第1メッシュベルト46は無端ベルトである。第1メッシュベルト46は、3つのベルト搬送ローラー47によって懸架される。第1メッシュベルト46は、ベルト搬送ローラー47の回転により、第1矢印A1で示す方向に回動される。
【0048】
第1メッシュベルト46の表面は、所定のサイズの開口が並ぶ網で構成される。選別部40から降下する第1選別物のうち、開口を通過する大きさの解繊物は、第1メッシュベルト46の下方に落下する。開口を通過しない大きさの解繊物は、第1メッシュベルト46上に堆積する。これにより、第1メッシュベルト46上に第1ウェブW1が形成される。
【0049】
第1ウェブW1は、第1メッシュベルト46の回動に伴って、第1矢印A1で示す方向に搬送される。第1メッシュベルト46から落下する微粒子は、解繊物に含まれる所定の大きさよりも小さい粒子などである。上記粒子は、繊維と繊維との間に残留した樹脂粒などであって、シート部材Sの製造には不要な除去物となる。
【0050】
第1メッシュベルト46は、シート部材Sを製造する通常動作中には、所定の第1速度V1で回動する。通常動作とは、シート製造装置1の始動制御および停止制御を除く動作を指す。
【0051】
第1吸引部48は、第1メッシュベルト46の下方から空気を吸引する。第1吸引部48は、吸引管23を介して集塵部27に連結される。集塵部27は、フィルター式あるいはサイクロン式の集塵ユニットである。集塵部27は、気流から微粒子を分離して集める。集塵部27の下流には捕集ブロアー28が設置される。捕集ブロアー28は、集塵部27から空気を吸引する集塵用吸引機構として機能する。捕集ブロアー28が排出する空気は、排出管29を経てシート製造装置1の外に排出される。
【0052】
第1メッシュベルト46上の第1ウェブW1には、第5加湿部35から水のミストを含む空気が供給される。第5加湿部35が生成したミストは、第1ウェブW1に向けて降下して、第1ウェブW1を加湿する。第5加湿部35にて第1ウェブW1が含む水分量を調整することにより、第1メッシュベルト46への静電気による繊維や微粒子などの付着が抑制される。
【0053】
シート製造装置1は、第1ウェブW1を分断する回転体49を有する。第1ウェブW1は、第1メッシュベルト46がベルト搬送ローラー47により折り返す位置にて、第1メッシュベルト46から剥離される。剥離された第1ウェブW1は、回転体49によって分断される。
【0054】
回転体49は、板状の羽根を有する回転部材を含む。該回転部材では、上記羽根が、第1メッシュベルト46から剥離した第1ウェブW1と接触する位置に設けられる。回転体49は、回転方向Rへの回転により、第1ウェブW1に羽根を衝突させて分断する。第1ウェブW1が分断されて細分体Pが生成される。細分体Pは、後述する第2ウェブW2、つまりシート部材Sのセルロース繊維層L2の主原料である繊維の一例である。細分体Pは、第4管7の内部を流れる気流によって搬送部50へ搬送される。
【0055】
搬送部50は、結合材供給部52、第1搬送管54、および混合ブロアー53を有する。結合材供給部52は、細分体Pに結合材Bを供給する。第1搬送管54は第4管7と連通する。第1搬送管54の内側には細分体Pを含む気流が流れる。混合ブロアー53は第1搬送管54に設けられる。
【0056】
結合材供給部52には、結合材Bを収容する図示しないカートリッジが接続される。結合材供給部52は、カートリッジ内の結合材Bを第1搬送管54に供給する。結合材供給部52は、カートリッジから供給される結合材Bを貯留する。結合材供給部52は、貯留した結合材Bを第1搬送管54に送り出す排出部52aを有する。
【0057】
混合ブロアー53は、図示しない羽根等の回転部を有する。混合ブロアー53は、第4管7内、および搬送部50内に気流を発生させる。混合ブロアー53は、回転部の回転によって、細分体Pと結合材Bとを混合する。また、混合ブロアー53が発生させる気流により、第4管7内を降下する細分体Pおよび結合材Bが第1搬送管54内に吸引される。
【0058】
搬送部50は、さらに栄養剤供給部100、添加剤供給部110、及び混合ブロアー57を有する。
栄養剤供給部100は、カートリッジから供給される栄養剤Gを貯留する。栄養剤供給部100は、貯留した栄養剤Gを第1搬送管54に送り出す排出部を有する。栄養剤供給部100は、各種栄養剤G毎に貯留された複数のカートリッジを備え、各シート部材S(培地ST1)に対応して所望の栄養剤Gを供給することが可能である。また、各カートリッジから供給される栄養剤Gの供給量が制御される。これにより、シート部材Sに含まれる栄養剤Gの濃度を任意に設定することができる。
【0059】
添加剤供給部110は、カートリッジから供給される添加剤を貯留する。添加剤供給部110は、貯留した添加剤を第1搬送管54に送り出す排出部を有する。
混合ブロアー57は、図示しない羽根等の回転部を有する。混合ブロアー57は、第1搬送管54内に気流を発生させる。混合ブロアー57は、回転部の回転によって、細分体Pと結合材Bと栄養剤Gと添加剤とを混合して篩部60に向けて搬送する。
【0060】
篩部60は、第2ドラム部62と、第2ドラム部62を収容する第2ハウジング61とを有する。
第2ドラム部62は、図示しないモーターによって回転駆動される円筒形状の篩である。第2ドラム部62は、篩の中心軸を回転中心として、第2ハウジング61に回転可能に保持される。篩の中心軸はX軸に沿う仮想軸である。
【0061】
第2ドラム部62は、篩として機能する網を有する。第2ドラム部62は、網の網目によって、網目の目開きより小さい繊維や粒子を通過させる。通過した繊維や粒子は、第2ドラム部62から下方に落ちる。第2ドラム部62の構成は、第1ドラム部41の構成と同じであってもよい。第2ドラム部62の網には、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機で貫通孔を形成したパンチングメタルなどが適用される。
【0062】
篩部60は、絡み合った繊維などをほぐして、空気中で分散させる。分散された繊維などは、第2メッシュベルト72へ向かって降下する。そして、第2ウェブ形成部70の第2メッシュベルト72上にて、細分体P、結合材B、栄養剤G、および添加剤の混合物が篩部60によって篩われる。
【0063】
第2ドラム部62の下方には、第2ウェブ形成部70が配置される。第2ウェブ形成部70は、不織布供給機構150、第2メッシュベルト72、複数の張架ローラー74、および第1サクション機構76を有する。
【0064】
第2ウェブ形成部70は、篩部60を通過した細分体P、結合材B、栄養剤G等の混合物を堆積させる。これにより、第2ウェブW2が形成される。第2ウェブW2は、シート部材Sにおいてセルロース繊維層L2に形成される。
【0065】
不織布供給機構150は、第2メッシュベルト72上に不織布Mを供給する。不織布Mは、シート部材Sにおいて不織布層L1となる。
不織布供給機構150は、支持ローラー152を有する。支持ローラー152は、ロール状の不織布Mを支持する。支持ローラー152は、図示しない駆動機構によって回転駆動されて、不織布Mを第2メッシュベルト72上に供給する。
【0066】
第2メッシュベルト72は、無端ベルトであって、複数の張架ローラー74に張架される。第2メッシュベルト72は、張架ローラー74の回転により、
図2の第2矢印A2で示す方向に搬送される。
【0067】
第2メッシュベルト72は、所定のサイズの開口が並ぶ網などで構成される。第2メッシュベルト72は、例えば、金属、樹脂、布、あるいは不織布で構成される。第2メッシュベルト72の網目は、第2ドラム部62から落下する混合物を通過させないサイズに構成される。第2メッシュベルト72は、シート部材Sを製造する通常動作中には、第2速度V2で移動する。第2ウェブ形成部70において、第2ウェブW2は不織布M上に形成される。
【0068】
第1サクション機構76は、第2メッシュベルト72の下方に設けられる。第1サクション機構76は、吸引流路78にサクションブロアー77を備える。第1サクション機構76は、サクションブロアー77の吸引力によって、下方に向かう気流を発生させる。
【0069】
第2ウェブW2は空気を多く含む綿状体である。第2メッシュベルト72は、不織布Mと共に第2ウェブW2を成形体形成部80に向けて搬送する。
【0070】
第2メッシュベルト72の搬送経路上において、篩部60の+Y方向に第6加湿部36が設けられる。第6加湿部36は、ミストを含む空気を第2ウェブW2に供給する。ミストが第2ウェブW2に供給されることで、第2ウェブW2に含まれる水分量が調整される。
【0071】
移送部79は、第2メッシュベルト72上を搬送されてきた不織布M及び第2ウェブW2から成る複層体を、成形体形成部80に移送する。移送部79は、第3メッシュベルト79a、移送ローラー79b、および第2サクション機構79cを有する。
【0072】
第2サクション機構79cは、図示しない吸引ポンプを備える。第2サクション機構79cは、吸引ポンプの吸引力によって第3メッシュベルト79aに上方へ向かう気流を発生させる。これにより、第2サクション機構79cは、上記複層体を上方へ吸引する。そのため、上記複層体は、第2メッシュベルト72から離れて第3メッシュベルト79aに吸着される。第3メッシュベルト79aは、移送ローラー79bの回転によって回転駆動されて、上記複層体を成形体形成部80に移送する。
【0073】
成形体形成部80は、加圧部82および加熱部84を有する。成形体形成部80は、移送部79によって移送されてきた上記複層体を、加圧および加熱してシート部材Sを成形する。
【0074】
加圧部82は、一対のカレンダーローラー85を含む。一対のカレンダーローラー85は、上記複層体を所定のニップ圧で挟んで加圧する。上記複層体は、加圧されることにより、厚さが薄くなる。そのため、第2ウェブW2の密度が高くなる。上記複層体は、加圧部82から加熱部84に搬送されて熱が付与される。
【0075】
一対のカレンダーローラー85のうちの一方のローラーは、図示しないモーターにより駆動される駆動ローラーである。一対のカレンダーローラー85のうちの他方のローラーは従動ローラーである。カレンダーローラー85は、モーターの駆動により回転して、加圧された上記複層体を、加熱部84に向けて搬送する。
【0076】
加熱部84では、上記複層体に熱が付与されて、第2ウェブW2中の結合材Bが溶融する。溶融した結合材Bは、第2ウェブW2中の複数の繊維の間に濡れ広がる。上記複層体が加熱部84を通過して温度が低下すると、溶融していた結合材Bが固化して、結合材Bを介して複数の繊維同士が結合される。これにより、シート部材Sが成形される。
【0077】
加熱部84としては、例えば、加熱ローラー、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロアー、赤外線加熱器、およびフラッシュ定着器などが挙げられる。シート製造装置1は、加熱部84として加熱ローラー対86を備える。
【0078】
加熱ローラー対86のうちの一方のローラーは、図示しないモーターにより駆動される駆動ローラーである。加熱ローラー対86のうちの他方のローラーは従動ローラーである。加熱ローラー対86は、ローラーの内部または外部に設置されるヒーターによって、予め設定された温度に昇温される。これにより、加熱ローラー対86は、カレンダーローラー85によって加圧された上記複層体を挟んで加熱する。加熱ローラー対86は、モーターの駆動によって回転して、シート部材Sを切断部90に向けて搬送する。
【0079】
切断部90は、第1切断部92および第2切断部94を有する。切断部90は、成形体形成部80によって成形されたシート部材Sを切断する。第1切断部92は、Y軸と交差する方向にシート部材Sを切断する。第2切断部94は、第1切断部92を経たシート部材Sを、略Y軸に沿う方向に切断する。これにより、シート部材Sが単票状に加工される。そして、シート部材Sは受け部96へ排出される。図示を省略するが、受け部96は、所定サイズのシート部材Sを載せるトレイあるいはスタッカーを有する。
【0080】
以上のように形成されたシート部材Sを任意の枚数で積層することで培地ST1が形成される。
本実施形態のシート製造装置1では、シート部材Sが加圧部82を経て成形されるため、セルロース繊維層L2内の空隙が比較的に小さくなり、キノコの菌糸Kの増殖を促進させることができる。
【0081】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
本実施形態の培地ST2は、シート部材S毎に異なる機能を持たせた構成である。
以下、具体的に説明する。
【0082】
図3に示すように、培地ST2は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。
図3の例では、培地ST2は、6層のシート部材Sによって構成される。
シート部材Sは、不織布から成る不織布層L1と、不織布層L1上に堆積されたセルロース繊維層L2と、から構成される。セルロース繊維層L2は、セルロース繊維F、結合材B、および栄養剤G等を含む。
【0083】
培地ST2において、培地ST2の下部に積層されるシート部材Sは、培地ST2の上部に積層されるシート部材Sよりも栄養剤Gの濃度が高くなるように配置される。
一般的に、培地ST2の上部表面に比べ、培地ST2の下部表面へ行くほど菌糸Kの成長が遅い。本実施形態によれば、菌糸Kの成長が遅い培地ST2の下部に栄養剤Gの濃度が高いシート部材Sを配置することで、培地ST2の下部表面における菌糸Kの成長を促すことができる。一方、培地ST2の上部表面は、菌糸Kの成長が早いので、栄養剤Gの濃度が比較的低くてもよく、栄養剤Gの供給量を低減することができる。
シート製造装置1において、栄養剤供給部100による栄養剤Gの供給量を制御し、濃度が異なるシート部材Sを形成する。栄養剤Gの濃度が異なるシート部材Sを任意に組み合わせて積層することにより培地ST2が形成される。
【0084】
また、培地ST2において、培地ST2の上部に積層されるレイヤーは、セルロース繊維層L2のみでもよい。培地ST2の上部表面は、菌糸Kの成長が早いので、不織布層L1が省略された構成であっても菌糸Kの成長を妨げることがない。不織布層L1が省略されたことで、培地ST2の下部への菌糸Kの成長を促すことができる。
なお、このようなセルロース繊維層L2のみの構成は、シート部材Sを形成した後に、シート部材Sから不織布層L1を剥ぎ取ることで形成される。
【0085】
また、培地ST2において、各シート部材Sに含まれる栄養剤Gの種類を異ならせてもよい。例えば、培地ST2の上部に積層されるシート部材Sの含まれる栄養剤Gはチキン質(エビ、カニなどの甲殻類の殻)とし、培地ST2の下部に積層されるシート部材Sの含まれる栄養剤Gは大豆かすとしてもよい。菌糸Kの成長に応じて必要な栄養剤Gを含むシート部材Sを選択すればよい。これにより、培地ST2の下部に向けて菌糸Kの成長を促すことができる。
シート製造装置1において、栄養剤Gの種類毎にシート部材Sを形成する。そして、最適な栄養剤Gを含むシート部材Sを選択して積層することによって培地ST2が形成される。
【0086】
また、培地ST2の最上層のレイヤーの表面に凹部Saを複数形成してもよい。隣接する凹部Sa同士の距離寸法は、均一に形成する。そして、各凹部Saにキノコの菌糸Kを散布する。これにより、菌糸Kの成長の均一化が図れる。
このような凹部Saは、シート製造装置1に加工ユニットを付加することで形成可能である。加工ユニットは、例えば、プレス機などが適用される。加工ユニットは、成形体形成部80と切断部90との間に配置されてもよく、切断部90と受け部96との間に配置されてもよい。
【0087】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0088】
図4に示すように、培地ST3は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。
図4の例では、培地ST3は、6層のシート部材Sによって構成される。
シート部材Sは、不織布から成る不織布層L1と、不織布層L1上に堆積されたセルロース繊維層L2と、から構成される。セルロース繊維層L2は、セルロース繊維F、結合材B、および栄養剤G等を含む。
【0089】
本実施形態の培地ST3では、積層された各シート部材Sの側面に溝Sbaが形成される。各溝Sbaは、各シート部材Sの同じ位置に形成される。溝Sbaは、シート部材Sの厚み方向に沿って形成される。そして、培地ST3において1本の繋がった溝Sbが構成される。溝Sbは、培地ST3の内部に向けて湾曲状に凹む凹部である。溝Sbは、培地ST3の厚み方向に繋がって形成される。すなわち、溝Sbは、培地ST3の最上層のシート部材Sの表面から培地ST3の側面を通って、培地ST3の最下層のシート部材Sの裏面へと繋がる。培地ST3の各側面には、1本あるいは複数本の溝Sbが形成される。
【0090】
培地ST3における最上層のシート部材Sのセルロース繊維層L2上面に散布されたキノコの菌糸Kは、セルロース繊維層L2の表面及び内部の各方向に成長していく。セルロース繊維層L2に含まれる栄養剤Gや水分は、各シート部材Sの不織布層L1によって保持されるので、菌糸Kの成長が促進される。
また、溝Sbによって培地ST3の上部から下部に向かう空気の流れが形成される。これにより、溝Sbに沿って培地ST3の上部から下部に向かって菌糸Kの成長を促進させることができる。
【0091】
シート部材Sにおける溝Sbaは、シート製造装置1に加工ユニットを付加することで形成可能である。加工ユニットは、例えば、プレス機などが適用される。加工ユニットは、成形体形成部80と切断部90との間に配置されてもよく、切断部90と受け部96との間に配置されてもよい。
【0092】
溝Sbは、培地ST3の角部に近い位置に配置してもよい。培地ST3の側面角部は、他の部分に比べて菌糸Kの成長が遅い場合がある。培地ST3の角部近傍に溝Sbを設けることで、培地ST3の側面角部における菌糸Kの成長を促進できる。
また、培地ST3における最上層のシート部材Sのセルロース繊維層L2上面にも溝を形成してもよい。これにより、菌糸Kの成長を促進できる。
【0093】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0094】
図5Aに示すように、培地ST4は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。各シート部材Sの外形寸法はほぼ同じである。培地ST4では、各シート部材Sが接触する積層面が重力に沿った方向に対して平行となるように構成される。すなわち、培地ST4は、各シート部材Sを縦置きに並列させた構成である。
図5Aの例では、培地ST4は、6層のシート部材Sによって構成される。
シート部材Sは、不織布から成る不織布層L1と、不織布層L1上に堆積されたセルロース繊維層L2と、から構成される。セルロース繊維層L2は、セルロース繊維F、結合材B、および栄養剤G等を含む。
【0095】
図5Bに示すように、培地ST4を用いてキノコを栽培する場合には、培地ST4を培養袋Q中に収容し、複数のシート部材Sの積層面に交差する面にキノコの菌糸Kを散布する。すなわち、培地ST4における各シート部材Sの上面にキノコの菌糸Kを散布する。なお、
図5Bでは培養袋Qを省略している。
【0096】
各シート部材Sの上面に散布されたキノコの菌糸Kは、シート部材Sの表面及び内部の各方向に成長していく。不織布層L1はほぼ重力に沿って配置されるので、菌糸Kは不織布層L1に沿って成長しやすくなる。これにより、培地ST4の下部への菌糸Kの成長を促進できる。
【0097】
培地ST4において、積層方向における両端に配置されたシート部材Sは、他のシート部材Sよりも栄養剤Gの濃度が高くなるように配置してもよい。これにより、培地ST4の側面角部における菌糸Kの成長を促進できる。
【0098】
5.第5実施形態
次に、第5実施形態について説明する。なお、第1及び第4実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0099】
図6に示すように、培地ST5は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。培地ST5は、各シート部材Sを縦置きに並列させた構成である。
図6の例では、培地ST5は、6層のシート部材Sによって構成される。
シート部材Sは、不織布から成る不織布層L1と、不織布層L1上に堆積されたセルロース繊維層L2と、から構成される。セルロース繊維層L2は、セルロース繊維F、結合材B、および栄養剤G等を含む。
【0100】
本実施形態では、培地ST5の側面に溝Sbが形成される。具体的には、培地ST5の積層方向における両端に配置されたシート部材Sの側面であって、互いに対向する面に溝Sbが形成される。各面には1本あるいは複数本の溝Sbが形成される。溝Sbは、重力に沿った方向に形成される。溝Sbは、培地ST5の上面から裏面に亘って繋がる。溝Sbは、培地ST5の内部に向けて湾曲状に凹む凹部である。
【0101】
各シート部材Sの上面に散布されたキノコの菌糸Kは、シート部材Sの表面及び内部の各方向に成長していく。不織布層L1はほぼ重力に沿って配置されるので、菌糸Kは不織布層L1に沿って成長しやすくなる。これにより、培地ST5の下部への菌糸Kの成長を促進できる。
また、溝Sbによって培地ST5の上部から下部に向かう空気の流れが形成される。これにより、溝Sbに沿って培地ST5の上部から下部に向かって菌糸Kの成長を促進させることができる。
【0102】
6.第6実施形態
次に、第6実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0103】
図7に示すように、培地ST6は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。培地ST6は、シート部材Sを横置きと縦置きとに混在させて積層した構成である。
培地ST6では、最下層には横置きシート部材Sが1枚配置され、当該シート部材S上には縦置きのシート部材Sが6枚配置される。さらに、縦置きに配置されたシート部材S上には横置きのシート部材Sが1枚配置される。なお、横置き及び縦置きのシート部材Sの数は任意に設定できる。
このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
なお、
図7に示す培地ST6を90度回転した構成で用いてもよい。すなわち、横置きに積層されたシート部材Sの両端を縦置きのシート部材Sで挟み込む構成でもよい。
【0104】
7.第7実施形態
次に、第7実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0105】
図8に示すように、培地ST7は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。培地ST7は、シート部材Sを横置きと縦置きとに混在させて積層した構成である。
培地ST7では、最下層には縦置きシート部材Sが6枚配置され、当該シート部材S上には横置きのシート部材Sが1枚配置される。さらに、横置きに配置されたシート部材S上には縦置きのシート部材Sが6枚配置される。なお、横置き及び縦置きのシート部材Sの数は任意に設定できる。
このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
なお、
図8に示す培地ST7を90度回転した構成で用いてもよい。すなわち、縦置きのシート部材Sの両端を横置きに積層されたシート部材Sで挟み込む構成でもよい。
【0106】
8.第8実施形態
次に、第8実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0107】
図9に示すように、培地ST8は、複数のシート部材Sによって積層された積層体である。培地ST8は、シート部材Sを横置きと縦置きとに混在させて積層した構成である。
培地ST8では、横置きシート部材Sが6枚積層され、当該シート部材Sを囲むように縦置きのシート部材Sが配置される。培地ST8は、6枚積層されたシート部材Sの四方を縦置きのシート部材Sで囲む構成である。
このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0108】
以上、第1実施形態から第8実施形態における培地ST1から培地ST8の構成について説明したが、各実施形態の一部構成を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…シート製造装置、2…第1管、3…第2管、4…第3管、7…第4管、9…シュート、10…原料供給部、12…粗砕部、14…粗砕刃、20…解繊部、22…粗砕片導入口、23…吸引管、24…解繊物排出口、26…解繊ブロアー、27…集塵部、28…捕集ブロアー、29…排出管、31…第1加湿部、32…第2加湿部、33…第3加湿部、34…第4加湿部、35…第5加湿部、36…第6加湿部、40…選別部、41…第1ドラム部、42…解繊物導入口、43…第1ハウジング、44…選別物排出口、45…第1ウェブ形成部、46…第1メッシュベルト、47…ベルト搬送ローラー、48…第1吸引部、49…回転体、50…搬送部、52…結合材供給部、52a…排出部、53…混合ブロアー、54…第1搬送管、57…混合ブロアー、60…篩部、61…第2ハウジング、62…第2ドラム部、70…第2ウェブ形成部、72…第2メッシュベルト、74…張架ローラー、76…第1サクション機構、77…サクションブロアー、78…吸引流路、79…移送部、79a…第3メッシュベルト、79b…移送ローラー、79c…第2サクション機構、80…成形体形成部、82…加圧部、84…加熱部、85…カレンダーローラー、86…加熱ローラー対、90…切断部、92…第1切断部、94…第2切断部、96…受け部、100…栄養剤供給部、110…添加剤供給部、150…不織布供給機構、152…支持ローラー、450…制御部、ST1,ST2,ST3,ST4,ST5,ST6,ST7,ST8…培地、S…シート部材、Sa…凹部、Sb…溝、Sba…溝、K…菌糸、L1…不織布層、L2…セルロース繊維層、F…セルロース繊維、B…結合材、G…栄養剤、Q…培養袋、M…不織布。