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特開2024-75153フェルール、光コネクタおよび光コネクタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075153
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】フェルール、光コネクタおよび光コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/40 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G02B6/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186374
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000153720
【氏名又は名称】株式会社白山
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 護章
(72)【発明者】
【氏名】上野 翔平
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA01
2H036QA03
2H036QA12
2H036QA14
2H036QA18
2H036QA23
2H036QA43
2H036QA49
2H036QA56
(57)【要約】
【課題】高速大容量通信に対応可能なフェルールであって、繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルール、光コネクタおよび光コネクタの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の光ファイバを接続するためのフェルール10であって、接続端面11aに設けられ、光ファイバを挿入するためのファイバ孔100と、後端面11bに設けられ、複数の光ファイバを挿通可能なブーツ60を挿入するためのブーツ挿入孔300と、複数のファイバ孔100とブーツ挿入孔300とを連通する内部空間400と、後端面11bの側に設けられ、後端面11bに隣接する面から突出する鍔部600と、を備え、ブーツ挿入孔300の深さTは、鍔部600の接続方向の長さLより短いものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバを接続するためのフェルールであって、
接続端面に設けられ、前記光ファイバを挿入するためのファイバ孔と、
後端面に設けられ、複数の前記光ファイバを挿通可能なブーツを挿入するためのブーツ挿入孔と、
複数の前記ファイバ孔と前記ブーツ挿入孔とを連通する内部空間と、
後端面の側に設けられ、後端面に隣接する面から突出する鍔部と、を備え、
前記ブーツ挿入孔の深さTは、前記鍔部の接続方向の長さLより短い、フェルール。
【請求項2】
前記ブーツ挿入孔の最深部と、前記鍔部の前端部との間に補強部を有する、請求項1に記載のフェルール。
【請求項3】
前記鍔部は、前記ブーツ挿入孔の周囲を覆うように形成され、
前記ファイバ孔の後端面側には、前記光ファイバを誘導するための誘導溝が形成され、
前記内部空間を構成する壁の底面は、前記誘導溝の後端部と、前記鍔部の前端部との間に段差が設けられた、請求項1に記載のフェルール。
【請求項4】
前記鍔部の前端面側における前記内部空間の壁厚Mは、前記ブーツ挿入孔の壁厚Nの0.8倍以上1.5倍以下である、請求項1に記載のフェルール。
【請求項5】
前記ブーツ挿入孔を形成する内壁の角辺部および/または前記鍔部を形成する外面の角辺部に、曲率が設けられた、請求項1に記載のフェルール。
【請求項6】
一対のガイドピンを挿入するための一対のガイドピン孔をさらに備え、
前記ガイドピン孔と、前記ブーツ挿入孔との間の距離が0.1mm以上0.2mm以下設けられた、請求項1に記載のフェルール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のフェルールが組み込まれた、光コネクタ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載のフェルールが組み込まれた光コネクタの製造方法であって、
前記光ファイバ挿通孔に、複数の前記光ファイバをそれぞれ挿通する光ファイバ挿通工程と、
前記ブーツ挿入孔に、光ファイバ用のブーツを挿入するブーツ挿入工程と、
コネクタハウジング内に前記フェルールを組み込む組込工程と、を有する、光コネクタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝達するの光ファイバ同士を光学的に接続するフェルールと、フェルールが組み込まれる光コネクタ、および光コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光ケーブルは、多量の情報の高速通信が可能であることから、家庭用、産業用の情報通信に広く利用されている。
例えば、特許文献1(特開2004-020962号公報)には、光コネクタのフェルールに光ファイバテープを固定する際に、接着用の樹脂を、気泡を生成せず満遍なくフェルールの光ファイバテープ挿入孔に流し込むことのできる光コネクタが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の光コネクタは、複数の光ファイバを被覆してなる光ファイバテープを保護するための筒状のブーツと、ブーツを取り付けるブーツ挿着孔と、ブーツ挿着孔に連通して設けられた光ファイバテープ挿入孔と、光ファイバテープ挿入孔に連通して設けられた複数の光ファイバ用の複数の光ファイバ孔と、を有するフェルールと、を備え、複数の光ファイバを光ファイバ孔に挿着し、且つ光ファイバテープを挿着したブーツをブーツ挿着孔に挿入した状態で、光ファイバテープ挿入孔の上部に設けられた窓穴から接着用の樹脂を充填して形成され、ファイバテープ挿入孔の光ファイバテープ収納部に傾斜部が設けられている。
【0004】
特許文献2(特開2009-23015号公報)には、光フェルールの外形サイズを変えずに結線可能な光ファイバ数を増やすことができる光フェルールが開示されている。
【0005】
特許文献2に記載の光フェルールは、光ファイバとして、例えばクラッド径が100μm以下の光ファイバに樹脂被覆をコーティングして外径を125μmにした光ファイバを用いる。光ファイバは、光フェルールの光ファイバ挿入用開口部に嵌合させた保護ブーツ内に細く束ねた状態で挿通されており、かつ、光フェルール内部で湾曲してそれぞれの光ファイバ穴に導かれていることを特徴とする。
【0006】
特許文献3(特開2021-101254号公報)には、フェルールの後退時にはフェルールとハウジングとの間にあそびを設けつつ、コネクタ接続前には、フェルールをハウジングに対して所定位置に配置させることのできる光コネクタ及びフェルールが開示されている。
【0007】
特許文献3に記載の光コネクタは、光ファイバの端部を保持するフェルールと、フェルールを後退可能に収容するハウジングとを備える。フェルールの上面には、一対の上側傾斜面が形成されており、フェルールの下面には、一対の下側傾斜面が形成されている。一対の上側傾斜面は、どちらも前方向及び上方向を向いているとともに、幅方向には互いに逆方向を向いている。一対の下側傾斜面は、どちらも前方向及び下方向を向いているとともに、幅方向には互いに逆方向を向いていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-020962号公報
【特許文献2】特開2009-23015号公報
【特許文献3】特開2021-101254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光ファイバを高密度で通信可能なMTフェルールは、一般にMPOコネクタなど所定の光コネクタを用いて接続される。この場合、光コネクタの内部には、コネクタスプリングが設けられており、コネクタスプリングの弾性力によりMTフェルールに強い押圧力を付与することで、接続損失の低減が図られている。
近年、情報通信の高速大容量化が求められており、1つのフェルールに挿入される光ファイバの本数が多くなっている。その結果、各光ファイバに十分な押圧力を与える必要性から、フェルールに与えられる押圧力も大きくなっている。例えば、PC接続を前提としたMPOコネクタの場合、10Nまたは20N以上の押圧力がMTフェルールに与えられている。
フェルールは、光ファイバの接続端面の位置決めをする部品であるため、光コネクタの中でも極めて精密に設計されており、その精度はサブミクロン単位で設計されている。
ここで、光コネクタを接続している状態においては、2つのフェルールはガイドピン等によって精密に位置決めされているので、コネクタスプリングの押圧力は2つのフェルールの接続端面に正確に付与されている。
一方で、光コネクタの接続を解除した状態においては、1つのフェルールは、コネクタハウジングと係合することでコイルスプリングの押圧力を受けとめることになる。したがって、特に光コネクタの脱着時には、フェルールに大きな力学的負荷が与えられることになる。
【0010】
従来、光ケーブルは、距離の離れた情報通信機器同士を接続するためのケーブルであったため、光ケーブルを敷設して光コネクタを接続した後は、異常または再敷設など特別な事情がない限り、光コネクタが脱着されることはなかった。
しかしながら、近年、情報通信機器の高速化高密度化に伴い、長距離通信だけでなく、様々な情報処理装置の配線にも光ケーブルを用いる機会が多くなってきた。例えば、同じ建物内にあるサーバまたは端末同士の通信を行うのに光ケーブルが用いられたり、サーバ内の基板同士の通信にも光ケーブルを用いることが検討されている。
【0011】
このような場合、光コネクタは従来と比べて頻繁に脱着されることになり、脱着のたびに大きな力学的負荷がフェルールに与えられる。その結果、従来では想定されていなかった頻度でフェルールに負荷が加わり、光コネクタ内でフェルールが破損するという問題が生じるようになった。
【0012】
上記特許文献1に記載の光コネクタでは、ブーツ挿入孔の部分のフェルールが鍔の形状を備えており、その結果、ブーツ挿入孔において、フェルールの高さが高くなっている(図1および図6参照)。そして、ブーツ挿入孔の部分のフェルールが鍔の形状を備えることによってフェルールのブーツ挿入孔の部分の肉厚を厚くし、この部分でのフェルールのクラックの発生、クラックによるカケ破損を防止している。
しかしながら、MPOコネクタなど一般の光コネクタは、フェルールの鍔部がコネクタハウジングの凸部と係合することで、フェルールがコネクタから前抜けしないよう構成されている。したがって、光コネクタの脱着を幾度も行うと、フェルールの鍔部と窓部との間付近に力学的負荷が集中し、クラックが生じてフェルールが破損するという問題が発生する。
【0013】
特許文献2の光フェルールでは、外径の小さな光ファイバを使用し、フェルール内部で特別な配線構造を構成することにより、高密度かつ機械的強度に優れた光フェルールを実現しようとするものである。しかしながら、この場合は窓部および配線構造を形成する内部空間の大きさが大きく、ファイバをブーツで保護したとしても、光コネクタの脱着を幾度も行うと光フェルール本体が破損するという問題が生じる。
【0014】
特許文献3の光コネクタは、フェルールの上面に上側凹部が設けられ、これに上側凸部が係合するため、規格化されたMPOコネクタのように鍔部と窓部との間付近に力学的負荷が集中するという問題は発生しない。しかしながら、この場合は、特殊なフェルールおよび光コネクタを使用する必要があるため汎用性がなく、フェルール本体に上側凹部を設ける必要があるため、光ファイバを複数段で設けるなど高密度化が困難になるという問題がある。
【0015】
本発明の目的は、高速大容量通信に対応可能なフェルールであって、繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルール、光コネクタおよび光コネクタの製造方法を提供ことにある。
本発明の他の目的は、耐久性に優れ、光コネクタの脱着を頻繁に行うことができるフェルール、光コネクタおよび光コネクタの製造方法を提供ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)
一局面に従うフェルールは、複数の光ファイバを接続するためのフェルールであって、接続端面に設けられ、光ファイバを挿入するためのファイバ孔と、後端面に設けられ、複数の光ファイバを挿通可能なブーツを挿入するためのブーツ挿入孔と、複数のファイバ孔とブーツ挿入孔とを連通する内部空間と、後端面の側に設けられ、後端面に隣接する面から突出する鍔部と、を備え、ブーツ挿入孔の深さTは、鍔部の接続方向の長さLより短いものである。
【0017】
光コネクタを接続している状態においては、コネクタスプリングの押圧力がフェルールの接続端面全体に付与される。一方、光コネクタの接続を解除した状態においては、コネクタハウジングの凸部とフェルールの鍔部とが係合することで、コイルスプリングの押圧力を受けとめてフェルールの前抜けが防止される。
したがって、光コネクタの脱着を行った場合、特に光コネクタの接続を解除した時に、フェルールの鍔部とコネクタハウジングの凸部とが衝突して、フェルールに大きな衝撃応力が加わる。また、フェルールと比較するとコネクタの設計精度は低い場合が多く、フェルール同士が接続端面11aで当接していた場合に比べて、コネクタハウジングの凸部とフェルールの鍔部とが係合している場合は、平坦性等の影響からフェルールに変形応力が加わる場合がある。
【0018】
フェルールは、通常PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの機械的特性に優れた樹脂で形成されている。しかしながら、近年の光通信の高密度化に伴い、コネクタスプリングから与えられる押圧力は、10N、20Nまたはそれ以上が求められており、大きな力が付与されている。
また、近年は光通信の多様化に伴い、光コネクタを頻繁に脱着するニーズが増えている。しかしながら、脱着回数の増加によってフェルールに繰返し応力が付与されることで、光コネクタ内でフェルールが破損するなど耐久性の問題が生じている。
【0019】
一局面に従うフェルールは、鍔部の接続方向の長さLがブーツ挿入孔の深さTより長いので、鍔部の前端部側の壁厚P、および/または、内部空間の鍔部側の壁厚Mを十分に確保することができ、光コネクタの脱着に伴うフェルールに対する繰返し応力に耐える強度を確保することができる。また、光コネクタの脱着時に負荷がかかりやすい鍔部の前端部付近の肉厚が連続的に厚く構成されるので、単位面積当たりの樹脂が受ける応力が減り、繰返し応力に対する疲労を最小限に抑えることができる。
したがって、光コネクタの脱着を頻繁に行った場合も、破損せず耐久性に優れたフェルールにすることができる。
【0020】
(2)
第2の発明にかかるフェルールは、一局面に係るフェルールであって、ブーツ挿入孔の最深部と、前記鍔部の前端部との間に補強部を有してもよい。
【0021】
フェルールを組み込んだ光コネクタを頻回に脱着すると、光コネクタ内でフェルールが破損する。この場合、一般的にフェルールの鍔部とフェルール本体との境界部分(角部分)から亀裂が入り、鍔部の中のブーツ挿入孔に向けて亀裂が進行して、最終的にはフェルールが寸断されることがある(図7参照)。これは、光コネクタの接続を解除したときに、フェルールの鍔部の前端面側に大きな応力がかかるためと考えられる。
そこで、鍔部の前端面とブーツ挿入孔の底面との間に所定の肉厚を有する補強部を備えることにより、亀裂の入りやすい部分を補強することで、脱着に伴う応力に耐える強度を得ることができる。したがって、繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルールとすることができる。
【0022】
(3)
第3の発明にかかるフェルールは、一局面から第2のいずれかの発明に係るフェルールであって、鍔部は、ブーツ挿入孔の周囲を覆うように形成され、ファイバ孔の後端面側には、光ファイバを誘導するための誘導溝が形成され、内部空間を構成する壁の底面は、誘導溝の後端部と、鍔部の前端部との間に段差が設けられてもよい。
【0023】
近年の高密度化に伴い光ファイバは細径化が進み、光ファイバをファイバ孔に確実に挿入するためには誘導溝が必要とされる。また、ファイバ孔を多段で設ける場合は、誘導溝を複数段設ける必要があるため、接着剤充填窓の大きさが大きくなり、フェルールの強度としては不利になる。
このような場合も、誘導溝の後端部と、鍔部の前端部との間に所定の距離Qを設けることによって、接着剤充填窓の後端部と鍔部の前端部との間にも、所定の壁厚Mを有する内部空間を形成することができる。したがって、高密度接続および高強度を両立したフェルールとすることができ、繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルールとすることができる。
【0024】
(4)
第4の発明にかかるフェルールは、一局面から第3のいずれかの発明に係るフェルールであって、鍔部の前端面側における内部空間の壁厚Mは、ブーツ挿入孔の壁厚Nの0.8倍以上1.5倍以下であってもよい。
【0025】
フェルールの内部空間には接着剤が充填されて、ブーツ挿入孔にはブーツが挿入される。しかしながら、接着剤およびブーツの強度はフェルール本体の強度よりも脆弱であるため、光コネクタの脱着が繰り返されると、フェルール本体の肉厚が薄い部分に負担がかかる。
特に、光コネクタの脱着に伴って、内部空間を形成する壁とブーツ挿入孔を形成する壁との間に応力が集中する傾向があり、特にフェルール本体の肉厚が薄い部分があるとその部分が繰返し応力に耐え切れなくなる。
そこで、内部空間の壁厚M(厚みが薄くなる鍔部の前端面側)と、ブーツ挿入孔の壁厚Nとが、互いに所定の厚み範囲を有するよう構成することによって、フェルールの内壁が一連かつ一体的になる。したがって、繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルールとすることができる。
【0026】
(5)
第5の発明にかかるフェルールは、一局面から第4のいずれかの発明に係るフェルールであって、ブーツ挿入孔を形成する内壁の角辺部および/または鍔部を形成する外壁の角辺部に、曲率が設けられてもよい。
【0027】
ブーツ挿入孔を形成する内壁の角となる角辺部、および、鍔部を形成する外壁の角となる角辺部は、それぞれ部品形状が変化する部分であるため、応力が集中しやすく、他の部分に比べて最大応力が大きくなる。
そこで、それぞれの角辺部に応力を緩和するための曲率を設けることにより、最大応力の集中を防止することができる。したがって、繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルールとすることができる。
【0028】
(6)
第6の発明にかかるフェルールは、一局面から第5のいずれかの発明に係るフェルールであって、一対のガイドピンを挿入するための一対のガイドピン孔をさらに備え、ガイドピン孔と、ブーツ挿入孔との間の距離が0.1mm以上0.2mm以下設けられてもよい。
【0029】
近年の高速大容量化に伴い、フェルールの多心化が進んでいる。しかしながら、フェルール内に多数の光ファイバを挿入すると、内部空間およびブーツ挿入孔の大きさが大きくなり、その結果、フェルールの内壁の厚みが薄くなるという問題が生じる。
そして、一対のガイドピンのピッチは規格によって制限を受けるので、多数の光ファイバを配列すると、ガイドピン挿通孔とブーツ挿入孔との間の樹脂厚が薄くなりやすく、この部分が破損の原因となる場合がある。
そこで、ガイドピン孔と、ブーツ挿入孔との間の距離を所定距離設けることで、高密度の場合も厚みを確保することができるので、繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルールとすることができる。
【0030】
(7)
他の局面に従う光コネクタは、一局面から第6のいずれかの発明に係るフェルールが組み込まれた、光コネクタである。
【0031】
これにより、耐久性に優れ、光コネクタの脱着を頻繁に行うことができる光コネクタとすることができる。
【0032】
(8)
さらに他の局面に従う光コネクタの製造方法は、一局面から第6のいずれかの発明に係るフェルールが組み込まれた光コネクタの製造方法であって、光ファイバ挿通孔に、複数の光ファイバをそれぞれ挿通する光ファイバ挿通工程と、ブーツ挿入孔に、光ファイバ用のブーツを挿入するブーツ挿入工程と、コネクタハウジング内にフェルールを組み込む組込工程と、を有するものである。
【0033】
これにより、耐久性に優れ、光コネクタの脱着を頻繁に行うことができる光コネクタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1の実施形態のフェルールの模式的斜視図である。
図2】第1の実施形態のフェルールの模式的断面図である。
図3図3(a)は第1の実施形態のフェルールの模式的正面図、図3(b)は模式的上面図、図3(d)は左側から見た模式的左側面図、図3(c)模式的底面図、図3(e)は右側から見た模式的右側面図である。
図4図4はブーツが挿入された第1の実施形態のフェルールであって、図4(a)は模式的断面図、図4(b)は模式的左側面図である。
図5図2に示す第1の実施形態の光コネクタの模式的拡大図である。
図6】光コネクタの内部構造を説明するための模式的斜視図である。
図7】通常のMTフェルールを用いて脱着試験を行った結果を撮影した写真である。
図8】第2の実施形態のフェルールの模式的断面図である。
図9図9(a)は第2の実施形態のフェルールの模式的正面図、図9(b)は模式的上面図、図9(d)は左側から見た模式的左側面図、図9(c)模式的底面図、図9(e)は右側から見た模式的右側面図である。
図10】従来例のフェルールの模式的断面図である。
図11図11(a)は第3の実施形態のフェルールの模式的正面図、図11(b)は模式的上面図、図11(d)は左側から見た模式的左側面図、図11(c)模式的底面図、図11(e)は右側から見た模式的右側面図である。
図12図12(a)は図11(b)のa-a’線断面図、図12(b)は図11(b)のb-b’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0036】
<第1の実施形態>
(フェルール10)
図1は第1の実施形態のフェルール10を示す模式的斜視図である。また、図2は、第1の実施形態のフェルール10の模式的断面図であり、図3(b)のA-A’線断面図である。図3(a)は第1の実施形態のフェルール10の模式的正面図、図3(b)は模式的上面図、図3(d)は左側から見た模式的左側面図、図3(c)模式的底面図、図3(e)は右側から見た模式的右側面図である。
【0037】
図1乃至図3に示すように、本実施形態のフェルール10の本体は、接続端面11a(本体先端面)に開口し、被覆を除去した光ファイバ(図示しない)が挿入されて位置決めをするための複数のファイバ孔100と、複数のファイバ誘導孔の後端に連通し互いに平行な半円状、U字状又はV字状の複数の誘導溝110と、を備えている。ファイバ孔100は、複数のファイバ孔100の後端に連通し互いに平行な複数のファイバ誘導孔からなり、内部に縮径部101が設けられている。
また、本実施形態のフェルール10の本体は、光ファイバを挿通させたフェルール用のブーツ60を装着するためのブーツ挿入孔300と、複数の光ファイバをフェルール10に固定するための接着剤を注入する接着剤充填窓500と、複数のファイバ孔100と平行に横幅方向の両端部近傍に形成され、ガイドピン50を挿入するため2つのガイド孔200と、を備えている。
【0038】
ブーツ挿入孔300は、フェルール10の後端面11bに開口を有しており、接着剤充填窓500は、フェルール10の上面に開口している。また、フェルール10の本体には、ファイバ孔100とブーツ挿入孔300と接着剤充填窓500とを連通する内部空間400が設けられており、接着剤充填窓500から接着剤が充填されると、この内部空間400が接着剤で満たされる。
そのほか、フェルール10の本体には、製品メーカ名または型番の刻印、製造時のイジェクトピン跡などが適宜形成されていてもよい。
なお、本明細書の説明においては、接続端面11aと後端面11bとを結ぶ方向(図3(a)の左右方向)を接続方向または前後方向、図3(e)の左右方向を幅方向、図3(a)の上下方向(接続方向に直行する方向)を上下方向と言う場合がある。
【0039】
本実施形態のフェルール10は、一般に図6に示すような光コネクタ1の内部に格納され、2つの光コネクタ1を接続することによって、フェルール10の接続端面11a同士が当接し、複数の光ファイバを光学的に接続するものである。
本実施形態のフェルール10の外形は、一般にMTフェルールと呼ばれる形状のフェルール10と同様である。MTフェルールは、IEC、JISおよびJPCAなどにより規格化されたものが一般に広く使用されている。本実施形態では、図3に示すように、典型的な12心のMTフェルールの外形状を有するフェルール10の例として説明する。
また、このようなMTフェルールを接続する光コネクタ1として、規格化されたMPOコネクタが広く使用されている。本実施形態では、図6に示すように典型的なMPOコネクタを例として説明する。
なお、本発明は、規格化されたMTフェルールおよびMPOコネクタのみに適用されるものではなく、接続の目的等に応じてサイズなどを適宜変更された各種フェルール10および光コネクタ1に対して適用することもできる。
【0040】
2本の光ファイバを接続して光通信を行う場合、光ファイバの端面同士を強く押し当てるフィジカルコンタクト(PC)接続を採用するのが一般的である。これは、光ファイバの端面を僅かに凸形状に湾曲するように研磨し、このような凸形状の端面同士を強く押し当てることで、エアギャップを無くして低損失での光通信を可能とするものである。このようなPC接続を行う場合、光ファイバごとに所定の押圧力を付与する必要があるため、1つのフェルール10に対する光ファイバの本数が多くなると、光コネクタ1がMTフェルールに付与すべき押圧力も大きくなる。
また、接続面で発生するフレネル反射が光通信に悪影響を与える場合があるため、フェルール10の接続端面11aを接続方向に対して斜めに8°程度傾斜して研磨する場合がある。この場合、光ファイバの端面は、押圧力が与えられる方向(接続方向)に対して傾斜することになる。よって、斜め研磨が行われる場合を想定して、光コネクタ1のコネクタスプリング30の押圧力は、予め大きめに設計される。
このような観点から、例えば規格化された12心MTフェルールを接続する場合、MPOコネクタのコネクタスプリング30は、MTフェルールに対して9.8N±2Nの押圧力を与えることが規格化されている。また、24心MTフェルールを接続する場合は、20N±2Nの押圧力が与えられるのが一般的である。
【0041】
ここで、光コネクタ1を接続している場合は、2つのフェルール10はガイドピン50によって精密に位置決めされており、コネクタスプリング30の押圧力はフェルール10の接続端面11aに正確に付与される。一方で、光コネクタ1の接続を解除すると、図6に示すように、コネクタハウジング20の凸部21とフェルール10の鍔部600とが係合して、フェルール10の前抜けを防止する。このとき、コネクタスプリング30の押圧力をフェルール10の鍔部600が受け止めることになり、光コネクタ1の接続を解除した時には、フェルール10に大きな衝撃応力が加わる場合がある。
また、フェルール10は極めて精密に設計されているのに対して、コネクタハウジング20の設計精度はそれほど高くないので、光コネクタ1の接続を解除している際に、鍔部600の一部に大きな押圧力が加わることでフェルール10に変形応力が加わる場合がある。
更に、光通信が様々な情報処理装置で用いられるようになり、光コネクタ1が脱着される頻度が近年多くなっている。その結果、脱着のたびに大きな力学的負荷がフェルール10に与えられることになるため、光コネクタ1内でフェルール10が破損するという問題が生じるようになった。
そのほか、フェルール10は、光ファイバを固定した後に、接続端面11aを光学研磨し、光コネクタ1に組み込まれる。接続端面11aの研磨にあたっては、フェルール10の鍔部600を治具を用いて固定して、高速に動作する研磨台の上に押し付けられる。このとき、治具の固定方法または接続端面11aの研磨方法(例えば斜め研磨など)によっては、治具に固定された鍔部600に大きな負荷がかかる場合がある。このように、フェルール10の接続端面11aを研磨する際にも、フェルール10の鍔部600付近に負荷がかかり破損する場合がある。
【0042】
(フェルール10)
本実施形態のフェルール10は、図1~4に示すように、外形としては規格化された12心のMTフェルールと同様のものを例示する。
すなわち、MTフェルール本体の接続方向の全長は8.0mmであり、鍔部600を含めた横幅は7.0mmであり、鍔部600を含めた縦幅は3.0mmであり、鍔部600を除いた本体の横幅は6.4mmであり、鍔部600を除いた本体の縦幅は2.5mmである。また、鍔部600の突出高さは全周において0.25mmであり、接続方向の長さLは2.0mmである。
また、ファイバの心数、クラッド径、ピッチなどは、接続の目的に応じて適宜選択されるものであるが、本実施形態の例示の場合、ファイバ孔100の直径が125μmであり、そのピッチが125μmである。また、ガイド孔200の直径が0.7mmであり、そのピッチが4.6mmである。また、接着剤充填窓500の開口は接続方向が2.4mmで横幅方向が3.0mmである。なお、鍔部600は、MTフェルールの後端面11bから全周(左右側面および上下側面)に渡り設けられたものを例示したが、側面の一部に設けられていてもよい。
【0043】
本実施形態のフェルール10は、例えば、無機充填物が充填された樹脂材料を成型して構成される。樹脂材料は、熱硬化性エポキシ樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などである。このうち、位置精度、寸法精度、成形収縮率および熱安定性の観点からポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を用いることが好ましい。これにより小型かつ高密度の実装を行っても接続損失の少ないフェルール10にすることができる。また、無機充填物には、例えば粒状シリカを用いることができる。
無機充填物を充填することで、フェルール10の強度を向上させることはできるが、近年のように高密度化が必要になると内部空間400およびブーツ挿入孔300の大きさが大きくなる傾向にあり、また、光コネクタ1の脱着頻度が高くなることによってフェルール10に与えられる衝撃回数が多くなるため、クラックの問題が顕著になる。
【0044】
図4に示すように、通常のMTフェルールには、光ファイバを保持し保護するためのブーツ60が挿入される。図5に示すように、本実施形態のフェルール10は、ブーツ挿入孔300の深さT(接続方向の奥行き)が、鍔部600の接続方向の長さLよりも短くなるように設計されている。
ブーツ挿入孔300の深さTは、鍔部600の長さLに対して0.1mm以上短いことが好ましく、0.2mm以上短いことがより好ましく、0.4mm以上短いことが更に好ましい。これにより、後述の補強部610を確保することができ、十分な強度を得ることができる。また、ブーツ挿入孔300の深さTは、鍔部600の接続方向の長さLの1/2以上の深さを有することが好ましい。これにより、ブーツ60を確実にブーツ挿入孔300で保持することができる。
本実施形態のブーツ挿入孔300の深さTは、1.9mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下が更により好ましい。また、ブーツ挿入孔300の深さTは、1.0mm以上であることが好ましい。これにより、強度を維持しつつ確実にブーツ60を保持することができる。
【0045】
本実施形態のフェルール10は、ブーツ挿入孔300の深さTが鍔部600の長さLよりも短くなるように設計されているので、ブーツ挿入孔300の最深部301(ブーツ挿入孔300の底面)と鍔部600の前端部601(接続方向側の面)との間に、内部空間400を構成する壁となる補強部610を有している。
図5に示すように、補強部610は、内部空間400を外周するフェルール10の本体の壁であり、鍔部600の一部でもある。補強部610は、接続方向の断面視において、壁厚Pが0.8mm以上が好ましく、0.9mm以上がより好ましく、0.95mm以上が更に好ましい。また、補強部610の接続方向の長さRは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.4mm以上が更に好ましい。
また、補強部610の壁厚Pは、接続方向の長さRの1.5倍以上2.5倍以下であることが好ましく、1.7倍以上2.3倍以下であることがより好ましく、1.8倍以上2.2倍以下であることが更に好ましい。
これにより、十分な強度を得ることができる。
【0046】
本実施形態のフェルール10は、図5に示すように、補強部610を除いた内部空間400を構成する壁のうち、鍔部600の前端面より前方側の壁(内部空間400を構成する底面のうち最も薄い部分)が、所定の壁厚Mを有する。
鍔部600の前端面より前方側の壁の壁厚Mは、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることが更に好ましい。
また、鍔部600の前端面より前方側の壁の壁厚Mは、ブーツ挿入孔300の壁厚Nの0.8倍以上1.5倍以下であることが好ましく、0.9倍以上0.3倍以下であることがより好ましく、0.95倍以上0.2倍以下であることが更に好ましい。
この内部空間400の壁は、内部空間400の周囲を覆うように形成されており、フェルール10の本体の上面(接着剤充填窓500の枠を構成する面)の壁厚Mも上記と同様の厚みとすることが好ましい。
【0047】
誘導溝110の後端部111と鍔部600の前端部601との間の距離Qは、0.6mm以上2.4mm以下とすることが好ましく、1.5mm以上2.0mm以下とすることがより好ましい。これにより、壁厚Mを有する内部空間を十分に確保することができるので、高密度接続および高強度のフェルール10とすることができる。
本実施形態のフェルール10は、図2および図5で例示するように、内部空間400を構成する壁の底面が、壁厚が厚い誘導溝110側の底面M’と、壁厚が薄い鍔部600の前端面側の底面Mとの2段で構成される。これにより、所定の距離Qを確保した場合も、射出成型時の金型への負荷を抑えることができる。したがって、量産性に優れるとともに繰り返し応力が与えられた場合も破損しにくいフェルールとすることができる。
また、誘導溝110の底面と、内部空間400を構成する壁の底面M’との間に所定の段差があることにより、光ファイバテープの被覆の厚みを吸収することができるので、光ファイバの心線を直線的に保持しやすくできる。
【0048】
本実施形態のフェルール10は、ブーツ挿入孔300の内壁の角辺部302a,302bおよび鍔部600の外面の角辺部602a,602bからなる群より選ばれる角辺部に曲率を形成することができる。
図5に示すように、角辺部302aは、ブーツ挿入孔300のブーツ60挿入方向の壁と、最深部301との間に形成される隅部であり、周回する幅方向の2辺および縦方向の2辺で構成される。角辺部302bは、内部空間400とブーツ挿入孔300との境界部分であり、周回する幅方向の2辺および縦方向の2辺で構成される。また、角辺部602aは、鍔部600の前端部601側に形成された2面の角であり、周回する幅方向の2辺および縦方向の2辺で構成される。角辺部602bは、鍔部600の前面側の面と内部空間400を構成する壁の外面との間に形成される隅部であり、周回する幅方向の2辺および縦方向の2辺で構成される。
この場合の角辺部302a,302b,602a,602bの曲率は、曲率半径が0.05mm以上0.5mm以下が好ましく、0.08mm以上0.2mm以下がより好ましい。
これにより、光コネクタ1の脱着時に鍔部600に押圧力が加えられた場合も、角辺部302a,302b,602a,602bに集中しやすい応力を緩和することができるので、クラックの発生を防止することができる。
図5の例示では、角辺部302aおよび角辺部602bのみに曲率が形成された例を示している。これにより、接続端面の研磨をする場合の位置決めへの影響を最小限にすることができる。なお、これに限らず、少なくとも角辺部302aおよび角辺部602aに曲率が形成されていてもよい。
【0049】
(光コネクタ1)
図6は、本実施形態の光コネクタ1の内部構造を説明するための模式的斜視図であり、コネクタハウジング20の1/4を除去して内部構造が見えるように示した図である。
光コネクタ1は、コネクタハウジング20で覆われており、必要に応じて内部の部品がコネクタハウジング20の後方から取り出せるように構成されている。光コネクタ1の最も接続面側(先端)には、フェルール10が挿入されて組み込まれ、コネクタハウジング20の凸部21と係合可能に構成される。光コネクタ1が他の光コネクタ1と接続している場合は、フェルール10は接続端面11aが当接して後方側に移動しているが、光コネクタ1の接続が解除されている場合は、フェルール10はコネクタハウジング20の凸部21と係合して、フェルール10が光コネクタ1から前抜けしないように構成されている。
【0050】
また、フェルール10の後方には、ピンホルダ40が配置されている。ピンホルダ40は一対のガイドピン50を保持しており、ガイドピン50はフェルール10のガイド孔200を貫通して、光コネクタ1の接続面側に突出している。なお、図6では、ガイドピン50を備える光コネクタ1を例示したが(オス側又はプラグ側ともいう)、この場合、接続される他方の光コネクタ1は、通常はガイドピン50を備えない(メス側又はレセプタクル側ともいう)。
また、ピンホルダ40の後方には、コネクタスプリング30が配置されている。コネクタスプリング30は、強力なバネ力によってフェルール10に対して押圧力を与えている。この場合、フェルール10から延出する光ファイバは、ピンホルダ40およびコネクタスプリング30の内部を貫通して、光コネクタ1の後方から外部に延出する。
なお、図6では、一例としてMPOコネクタの内部構造を例示したが、そのほかMTPコネクタ(登録商標)、SNコネクタ(登録商標)、MMCCコネクタ(登録商標)など、光接続の目的に応じて適宜他のコネクタを使用してもよい。
また、フェルール10に挿入されるブーツ60についても、光コネクタ1の種類、光ファイバの配線方法、光接続の目的などに応じて適宜設計することができる。
【0051】
(第2の実施形態のフェルール10)
図8は、第2の実施形態のフェルール10の模式的断面図であり、図9(b)のB-B’線断面図である。図9(a)は第2の実施形態のフェルール10の模式的正面図、図9(b)は模式的上面図、図9(d)は左側から見た模式的左側面図、図9(c)模式的底面図、図9(e)は右側から見た模式的右側面図である。
第2の実施形態のフェルール10は、36心のMTフェルールの例であり、横一列12心のファイバ孔100が、三列にわたって配置されている。これにより、第1の実施形態のフェルール10と比べて3倍の情報を通信することができる。
一方で、本実施形態の場合、ファイバ孔100が上下方向に三列配置されるので、図8に示すように、光ファイバを挿入するための誘導溝110が3段に渡って配置される。そして、光ファイバを各ファイバ孔100に確実に挿入することができるよう、接着剤充填窓500の開口は大きくする必要がある。また、36心のMTフェルールをPC接続するためには、コネクタスプリング30の押圧力は20N±2N必要とされており、MTフェルールに対して非常に大きな力が加えられる。
このように、光ファイバを高密度化すると、従来よりも内部空間400、ブーツ挿入孔300および接着剤充填窓500の開口が大きくなり、更にフェルール10に大きな押圧力が与えられるので、光コネクタ1の脱着に伴う破損の問題がより顕著にあらわれるようになる。
なお、この場合、誘導溝110の後端部111は、後端面11b側の誘導溝110aの端部をいう。
【0052】
(第3の実施形態のフェルール10)
図11(a)は第3の実施形態のフェルール10の模式的正面図、図11(b)は模式的上面図、図11(d)は左側から見た模式的左側面図、図11(c)模式的底面図、図11(e)は右側から見た模式的右側面図である。また、図12は、第3の実施形態のフェルール10の模式的断面図であり、図12(a)は図11(b)のa-a’線断面図、図12(b)は図11(b)のb-b’線断面図である。
第3の実施形態のフェルール10は、図12(a)に示すように、内部空間400を構成する壁の底面が平坦に形成されており、壁厚M’と壁厚Mは同じ壁厚となるよう構成されている。
すなわち、第1の実施形態のフェルール10は、図2および図5で例示するように、内部空間400を構成する壁の底面が、誘導溝110側の厚い壁厚M’と、鍔部600の前端面側の薄い壁厚Mとの2段で構成されていた。一方で、第3の実施形態のフェルール10は、誘導溝110の後端部111と鍔部600の前端部601との間において、内部空間400を構成する壁の底面に段差がなく、平坦になっている。
これにより、内部空間の鍔部側の壁厚Mを厚くすることができるので、より強度を高くすることができる。
【0053】
(フェルール10の実施例と比較例)
以下、フェルール10の実施例と比較例について説明する。
[実施例1]
図8および9に示す第2実施形態のフェルール10を実施例1として使用した。
すなわち、クラッド径φ125μmの石英ファイバ36心のフェルール10であって、フェルール10の本体の外形(全長、横幅、縦幅、鍔部等の大きさ)は第1の実施形態と同様である。そして、ファイバ孔100は直径が125μm、横方向のピッチが125μm、縦方向のピッチが0.25mmとし、ガイド孔200は直径が0.7mm、ピッチが4.6mmとした。また、接着剤充填窓500の開口は接続方向が2.4mmで横幅方向が3.0mmとした。
ブーツ挿入孔300は、深さTが1.5mmとし、横幅方向の開口が3.6mm、縦幅方向の開口が1.6mmとした。また、内部空間400の大きさは、横幅方向が3.24mm、縦幅方向が1.2mm、接続方向が1.2mmとした。また、誘導溝110a,110b,110cの接続方向の幅は、それぞれ0.6mmとし、合計1.8mm設けた。
【0054】
鍔部600は、長さLが2mm、突出高さが全周で0.25mmとし、ブーツ挿入孔300の壁厚Nが0.65mmとした。また、補強部610は、壁厚Pが1.0mmとし、接続方向の長さRが0.5mmとした。また、補強部610を除いた内部空間400を構成する壁は、壁厚Mが0.75mmとし、後端部111と前端部601との間の距離Qを1.8mmとした。
さらに、ブーツ挿入孔300の内壁の角辺部302a、および鍔部600の外面の角辺部602bに曲率半径0.1mmの曲率を形成した。
なお、本実施例では、ポリフェニレンサルファイド樹脂およびシランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子を2軸の押出機を用いて溶融混練し、射出成形によって上記形状のフェルール10を成形した。
【0055】
このようにして、得られた36心のフェルール10に対して石英製の光ファイバφ125μmを36本挿入してエポキシ樹脂で固定し、接続端面11aを斜め8°に研磨して、MTPコネクタ(USコネック社製)に組み込み、コネクタスプリング30により20Nの押圧力を付与した。
そして、1つのコネクタにつき500回の脱着試験(Telcrdia-GR-1435-CORE、JIS C61300-2-2)を行った。
さらに、上記の脱着試験を16回行って、各フェルール10の破損の状態を調べた。
その結果、実施例のフェルール10は、クラックの発生したものは1個もなかった。
【0056】
[比較例1]
規格化された汎用の36心のフェルール10(株式会社白山製36MT-PA-S)を用いた以外は、実施例1と同様にして、脱着試験を行った。
比較例1で使用したフェルール10の模式的断面図を図10に示す。比較例1で用いた36心のフェルール10のうち、実施例1と異なる点は、以下の通りであり、その他は実施例1と同様のフェルール10である。
すなわち、ブーツ挿入孔300は、深さTが3mmとし、横幅方向の開口が3.6mm、縦幅方向の開口が1.7mmとした。また、内部空間400の大きさは、横幅方向が3.24mm、縦幅方向が1.2mm、接続方向が3.5mmとした。
鍔部600は、長さLが2.0mm、突出高さが全周で0.25mmとし、ブーツ挿入孔300の壁厚Nが0.65とした。また、内部空間400を構成する壁は、壁厚Mが0.65mmとした。
また、ブーツ挿入孔300の内壁の角辺部302aには、曲率を形成しなかった。
【0057】
このようにして得られた比較例1のフェルール10に対して、実施例1と同様の脱着試験を行った結果、16個の光コネクタ1のうち、5つの光コネクタ1でフェルール10の破損があった(メス側の破損が3個、オス側の破損が2個)。
図7は、脱着試験後で破損したフェルール10の写真であって、図7(a)はメス側で破損したフェルール10の写真であり、図7(b)はオス側で破損したフェルール10の写真である。いずれの場合も、フェルール10の鍔部600からブーツ挿入孔300にかけて亀裂が発生して破損に至っていることが確認された。
一方で、実施例1のフェルール10は、鍔部600とブーツ挿入孔300にかけての壁厚が十分に確保されていることから、光コネクタ1の脱着が繰り返された場合も、亀裂および破損が生じにくいことが確認された。
【0058】
本発明においては、フェルール10が「フェルール」に相当し、接続端面11aが「接続端面」に相当し、ファイバ孔100が「ファイバ孔」に相当し、ブーツ60が「ブーツ」に相当し、ブーツ挿入孔300が「ブーツ挿入孔」に相当し、内部空間400が「内部空間」に相当し、後端面11bが「後端面」に相当し、鍔部600が「鍔部」に相当し、最深部301が「最深部」に相当し、補強部610が「補強部」に相当し、誘導溝110,110a,110b,110cが「誘導溝」に相当し、角辺部302a,302b,602a,602bが「角辺部」に相当し、ガイド孔200が「ガイドピン孔」に相当し、光コネクタ1が「光コネクタ」に相当する。
【0059】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 光コネクタ
10 フェルール
11a 接続端面
11b 後端面
20 コネクタハウジング
30 コネクタスプリング
50 ガイドピン
60 ブーツ
100 ファイバ孔
110,110a,110b,110c 誘導溝
200 ガイドピン孔
300 ブーツ挿入孔
301 最深部
302a,302b 角辺部
400 内部空間
600 鍔部
610 補強部
602a,602b 角辺部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12