IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイセル・エボニック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱硬化性樹脂組成物、及び、硬化物 図1
  • 特開-熱硬化性樹脂組成物、及び、硬化物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075154
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240527BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240527BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L77/00
C08L63/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186375
(22)【出願日】2022-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000108982
【氏名又は名称】ポリプラ・エボニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中家 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】藤木 大輔
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CD001
4J002CD011
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002CL002
4J002CM042
4J002GC00
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】本開示は、硬化物の靭性がより一層高い熱硬化性樹脂組成物などを提供する。
【解決手段】本開示は、熱硬化性樹脂たる第1の樹脂と、アミド結合を有する第2の樹脂を含む樹脂粒子とを有する、熱硬化性樹脂組成物であって、前記第2の樹脂は、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及び、カルボン酸無水物基からなる群より選ばれた1種以上の第2の官能基を含み、前記第1の樹脂は、前記第2の官能基と反応できる第1の官能基を含み、前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を25~190mmol/kg含み、前記第2の樹脂の相対粘度が、1.50~2.50である、熱硬化性樹脂組成物などである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂たる第1の樹脂と、アミド結合を有する第2の樹脂を含む樹脂粒子とを有する、熱硬化性樹脂組成物であって、
前記第2の樹脂は、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及び、カルボン酸無水物基からなる群より選ばれた1種以上の第2の官能基を含み、
前記第1の樹脂は、前記第2の官能基と反応できる第1の官能基を含み、
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を25~190mmol/kg含み、
前記第2の樹脂の相対粘度が、1.50~2.50である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2の樹脂が、ポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂が、脂肪族ポリアミド樹脂、及び/又は、脂環族ポリアミド樹脂を含む、請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂粒子のメジアン径が、50μm以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂粒子の真球度が、75%以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2の樹脂のガラス転移温度が、30~160℃である、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を29~120mmol/kg含む、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記第1の樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記第1の樹脂100重量部に対して、前記樹脂粒子を1~20重量部有する、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された、硬化物。
【請求項11】
請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物が、強化繊維の集合体に含侵又は注入された、プリプレグ。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化物から形成された、成形品。
【請求項13】
請求項10に記載の硬化物と強化繊維とからなる、繊維強化プラスチック。
【請求項14】
前記強化繊維を含む層を2層以上有する、請求項13に記載の繊維強化プラスチック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物、及び、硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物が硬化された硬化物は、航空機のボディー、ゴルフクラブのシャフト、釣竿等の材料として用いられている(例えば、特許文献1)。
また、エポキシ樹脂組成物が硬化された硬化物の靭性を高めるという観点等から、エポキシ樹脂と、ポリアミド樹脂を含む樹脂粒子とを有するエポキシ樹脂組成物が用いられている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-103922号公報
【特許文献2】国際公開第2015/019965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、靭性がより一層高い硬化物が求められ得る。
しかし、硬化物の靭性がより一層高い熱硬化性樹脂組成物については、これまで十分に検討がなされていない。
【0005】
そこで、本開示は、硬化物の靭性がより一層高い熱硬化性樹脂組成物、及び、該熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された硬化物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一は、熱硬化性樹脂たる第1の樹脂と、アミド結合を有する第2の樹脂を含む樹脂粒子とを有する、熱硬化性樹脂組成物であって、
前記第2の樹脂は、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及び、カルボン酸無水物基からなる群より選ばれた1種以上の第2の官能基を含み、
前記第1の樹脂は、前記第2の官能基と反応できる第1の官能基を含み、
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を25~190mmol/kg含み、
前記第2の樹脂の相対粘度が、1.50~2.50である、熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0007】
本開示の第二は、前記熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された、硬化物に関する。
【0008】
本開示の第三は、前記熱硬化性樹脂組成物が、強化繊維の集合体に含侵又は注入された、プリプレグに関する。
【0009】
本開示の第四は、前記硬化物から形成された、成形品に関する。
【0010】
本開示の第五は、前記硬化物と強化繊維とからなる、繊維強化プラスチックに関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、硬化物の靭性がより一層高い熱硬化性樹脂組成物を提供し得る。また、本開示によれば、該熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された硬化物を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例3で用いた樹脂粒子のSEM画像。
図2】実施例3の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された硬化物の断面のSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態について説明する。
【0014】
なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0015】
<熱硬化性樹脂組成物>
まず、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂たる第1の樹脂と、アミド結合を有する第2の樹脂を含む樹脂粒子とを有する。
前記第2の樹脂は、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及び、カルボン酸無水物基からなる群より選ばれた1種以上の第2の官能基を含む。
前記第1の樹脂は、前記第2の官能基と反応できる第1の官能基を含む。
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を25~190mmol/kg含む。
前記第2の樹脂の相対粘度が、1.50~2.50である。
【0016】
前記第2の樹脂が前記第2の官能基を25mmol/kg以上含むことにより、硬化物の靭性がより一層高くなる。
この理由は、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、前記第2の樹脂が前記第2の官能基を25mmol/kg以上含むことにより、硬化物において前記樹脂粒子と前記第1の樹脂との親和性が高くなり、前記樹脂粒子と前記第1の樹脂と境界における硬化物の靭性が高くなったことによるものと考えられる。
【0017】
一般に、樹脂の相対粘度は樹脂の平均分子量の指標として用いられている。樹脂の相対粘度が高いほど樹脂の平均分子量も高くなる。
前記第2の樹脂の相対粘度が2.50以下であることにより、前記第2の樹脂の平均分子量が低くなり、前記第2の樹脂における前記第2の官能基の含有割合を高めやすくなる。
【0018】
前記第2の樹脂の相対粘度が1.50以上であることにより、硬化物の靭性がより一層高くなる。
この理由は、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、前記第2の樹脂の相対粘度が1.50以上であることにより、前記第2の樹脂の平均分子量が高くなり、樹脂粒子の靭性が高くなったことによるものと考えられる。
【0019】
前記第2の樹脂が前記第2の官能基を190mmol/kg以下含むことにより、前記第2の樹脂の分子量を高めやすくなる。
【0020】
従って、本実施形態によれば、硬化物の靭性がより一層高い熱硬化性樹脂組成物を提供し得る。
【0021】
(熱硬化性樹脂たる第1の樹脂)
前記熱硬化性樹脂たる第1の樹脂は、前記第2の官能基と反応できる第1の官能基を含む。
前記第1の官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、イソシアネート基、オキサゾリン基、酸無水物、カルボン酸、アミノ基、エステル基、チオール基などが挙げられる。
などが挙げられる。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0022】
前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
前記ポリアミド樹脂を含む樹脂粒子はエポキシ樹脂中に分散されやすいため、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含むことにより、前記樹脂粒子による靭性の向上の効果が発揮されやすくなる。
【0023】
エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アルケンオキシド類(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシドなど)、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0024】
前記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル)、アルカンジオールジグリシジルエーテル、ポリアルカンジオールジグリシジルエーテル、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0025】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール類とエピクロロヒドリンとの反応物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加体とエピクロロヒドリンとの反応物等が挙げられる。
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加体においては、ビスフェノール類のヒドロキシル基1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、例えば1モル以上(例えば1~20モル)、好ましくは1~15モル、さらに好ましくは1~10モルである。
【0026】
前記フェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂などが挙げられる。
【0027】
前記芳香族骨格を有するエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル)としては、例えば、ナフタレン骨格を有するグリシジルエーテル等が挙げられる。
前記ナフタレン骨格を有するグリシジルエーテルとしては、例えば、ジ(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス[2,7-ジ(グリシジルオキシ)ナフチル]メタン等が挙げられる。
前記ジ(グリシジルオキシ)ナフタレンとしては、例えば、1,5-ジ(グリシジルオキシ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0028】
前記アルカンジオールジグリシジルエーテルとしては、例えば、C2-10アルカンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
前記C2-10アルカンジオールジグリシジルエーテルとしては、例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0029】
前記ポリアルカンジオールジグリシジルエーテルとしては、例えば、ポリC2-4アルカンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
前記ポリC2-4アルカンジオールジグリシジルエーテルとしては、例えば、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0030】
前記脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル)としては、ポリオールのグリシジルポリエーテル等が挙げられる。
前記ポリオールとしては、例えば、アルカントリオール、アルカンテトラオール、アルカンペンタオール、アルカンヘキサオール等が挙げられる。前記アルカントリオールとしては、C3-10アルカントリオール等が挙げられる。前記アルカンテトラオールとしては、C3-10アルカンテトラオール等が挙げられる。
前記グリシジルポリエーテルとしては、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテル、ペンタグリシジルエーテル、ヘキサグリシジルエーテル等が挙げられる。
前記ポリオールのグリシジルポリエーテルとしては、例えば、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0031】
前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン等が挙げられる。
【0032】
前記グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、ジカルボン酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の水添物等が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0033】
これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのエポキシ樹脂のうち、強度などの点で、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0034】
前記フェノール樹脂としては、例えば、1分子中にフェノール性水酸基を、1個以上、好ましくは2個以上有する樹脂が挙げられる。
前記フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリオキシスチレン樹脂などが挙げられる。
【0035】
前記ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類と縮合物である。前記ノボラック型フェノール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒の存在下で縮合重合させることで得られる。
前記レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類と縮合物である。前記レゾール型フェノール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ性触媒の存在下で縮合重合させることで得られる。
【0036】
前記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、トリメチルフェノール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ナフトール等が挙げられる。
前記クレゾールとしては、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾールが挙げられる。
前記トリメチルフェノールとしては、2,3,5-トリメチルフェノール等が挙げられる。
前記キシレノールとしては、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
【0037】
前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、3-メチルブチルアルデヒド、p-トリルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド等が挙げられる。
前記ヒドロキシベンズアルデヒドとしては、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられる。
【0038】
前記ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂(フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物)、クレゾールノボラック樹脂(クレゾールとホルムアルデヒドとの縮合物)等が挙げられる。
【0039】
前記フェノール樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
前記フェノール樹脂の水酸基当量は、好ましくは50~500g/eq.より好ましくは100~350g/eq.である。
【0041】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を、好ましくは40~99重量%、より好ましくは80~97重量%有する。
【0042】
(樹脂粒子)
前記樹脂粒子は、アミド結合及び第2の官能基を有する第2の樹脂を含む樹脂粒子用樹脂組成物で形成されている。
【0043】
前記第2の官能基は、前記第1の官能基と反応できる官能基である。
前記第2の官能基は、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボン酸、エステル基、チオール基、及び、カルボン酸無水物基からなる群より選ばれた1種以上の官能基であることが好ましい。
【0044】
前記アミノ基としては、「-NH」、「-NHR」が挙げられる。
Rは、アルキル基である。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0045】
前記第2の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。
【0046】
前記ポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環式ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。
前記ポリアミド樹脂は、ホモポリアミド樹脂又はコポリアミド樹脂であってもよい。
【0047】
前記脂肪族ポリアミド樹脂としては、脂肪族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸成分とのポリアミド樹脂、ラクタムのポリアミド樹脂、アミノカルボン酸のポリアミド樹脂、脂肪族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸成分とラクタム及び/又はアミノカルボン酸とのポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0048】
前記脂肪族ジアミン成分としては、例えば、C4-16アルキレンジアミン(例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミン等)等が挙げられる。前記脂肪族ジアミン成分は、好ましくはC6-14アルキレンジアミン、さらに好ましくはC6-12アルキレンジアミンである。
【0049】
前記脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、C4-20アルカンジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等)等が挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸成分は、好ましくはC5-16アルカンジカルボン酸、さらに好ましくはC6-14アルカンジカルボン酸である。
【0050】
前記ラクタムとしては、例えば、炭素数4~20のラクタム(例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム等)等が挙げられる。前記ラクタムは、好ましくは炭素数4~16のラクタムである。
【0051】
前記アミノカルボン酸としては、例えば、C4-20アミノカルボン酸(例えば、ω-アミノウンデカン酸等)等が挙げられる。前記アミノカルボン酸は、好ましくはC4-16アミノカルボン酸、さらに好ましくはC6-14アミノカルボン酸である。
【0052】
前記脂肪族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド611(PA611)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド613(PA613)、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド66/11(PA66/11)、ポリアミド66/12(PA66/12)、ポリアミド6/12/612(PA6/12/612)などが挙げられる。
【0053】
前記脂環式ポリアミド樹脂としては、少なくとも脂環式ジアミン成分及び脂環式ジカルボン酸成分から選択された少なくとも一種を構成成分とするポリアミド樹脂などが挙げられる。
前記脂環式ポリアミド樹脂としては、ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環式ジアミン成分及び/又は脂環式ジカルボン酸成分と共に、前記例示の脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分を含む脂環式ポリアミド樹脂が好ましい。このような脂環式ポリアミド樹脂は、透明性が高く、いわゆる透明ポリアミド樹脂として知られている。
【0054】
前記脂環式ジアミン成分としては、例えば、ジアミノシクロアルカン、ビス(アミノシクロアルキル)アルカン、水添キシリレンジアミン等が挙げられる。
前記ジアミノシクロアルカンとしては、例えば、ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。前記ジアミノシクロアルカンは、ジアミノC5-10シクロアルカンが好ましい。
前記ビス(アミノシクロアルキル)アルカンとしては、例えば、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4’-アミノシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。前記ビス(アミノシクロアルキル)アルカンは、ビス(アミノC5-8シクロアルキル)C1-3アルカンが好ましい。
前記脂環式ジアミン成分は、例えば、アルキル基などの置換基を有していてもよい。
該アルキル基は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-4アルキル基、さらに好ましくはC1-2アルキル基(メチル基、エチル基等)である。
【0055】
前記脂環式ジカルボン酸としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸等)等が挙げられる。
【0056】
代表的な脂環式ポリアミド樹脂としては、例えば、脂環式ジアミン成分[例えば、ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンなど]と脂肪族ジカルボン酸成分[例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、C4-20アルカンジカルボン酸成分など)など]との縮合物などが挙げられる。
【0057】
前記芳香族ポリアミド樹脂は、構成単位として、芳香族ジアミン成分及び芳香族ジカルボン酸成分の少なくとも何れか一方を含むポリアミド樹脂を含む概念である。
前記芳香族ポリアミド樹脂としては、構成単位のジアミン成分及び構成単位のジカルボン酸成分の両方が芳香族成分であるポリアミド樹脂(「全芳香族ポリアミド樹脂」や「アラミド」等とも呼ばれる。)等が挙げられる。
前記芳香族ポリアミド樹脂は、変性ポリアミド樹脂であってもよい。変性ポリアミド樹脂としては、分岐鎖構造を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。
前記芳香族ジアミン成分としては、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。また、前記芳香族ジカルボン酸成分は、ダイマー酸等であってもよい。
【0058】
前記ポリイミド樹脂としては、例えば、脂肪族ポリイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0059】
また、前記ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。
【0060】
前記テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0061】
前記ポリイミド樹脂の原料となるジアミン化合物の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ビス(β-アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p-β-アミノ-第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノフェニル)ベンゼン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジ(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、1,2-ビス-3-アミノプロボキシエタン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,17-ジアミノエイコサデカン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、12-ジアミノオクタデカン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0062】
前記ポリアミドイミド樹脂としては、例えば、繰り返し単位にイミド結合とアミド結合とを有する樹脂が挙げられる。
より具体的には、前記ポリアミドイミド樹脂としては、酸無水物基を有する3価のカルボン酸化合物(トリカルボン酸ともいう)と、ジイソシアネート化合物又はジアミン化合物との重合体が挙げられる。
【0063】
前記トリカルボン酸としては、トリメリット酸無水物、その誘導体が好ましい。
【0064】
前記ジイソシアネート化合物としては、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリアミドイミド樹脂の原料となるジアミン化合物としては、前記ポリイミド樹脂の原料となるジアミン化合物として列記されたものなどが挙げられる。
【0065】
前記第2の樹脂は、ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。
前記ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂、及び/又は、脂環族ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。
【0066】
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を、25~190mmol/kg、好ましくは29~175mmol/kg、より好ましくは29~120mmol/kg含む。
前記第2の樹脂における前記第2の官能基の濃度は、前記第2の樹脂における、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及び、カルボン酸無水物基の濃度の合計を意味する。
【0067】
なお、第2の樹脂等の樹脂におけるアミノ基の濃度は、以下のようにして求めることができる。
まず、フェノールとエタノールとを体積比10:1の割合で混合することにより、フェノール/エタノール溶媒を用意する。
次に、秤量した樹脂をフェノール/エタノール溶媒40mLで溶解して第1の溶液を得る。
そして、該第1の溶液にエタノール10mLを加えて第2の溶液を得る。
次に、該第2の溶液をN/100の塩酸水溶液で滴定し、樹脂におけるアミノ基の濃度を求める。
【0068】
また、樹脂におけるカルボキシ基及びカルボン酸無水物基の濃度の合計は、以下のようにして求めることができる。
まず、秤量した樹脂を180℃のオイルバス中でベンジルアルコール50mLに溶解させて溶液を得る。
次に、指示薬としてフェノールフタレインを用い、前記溶液をN/100の水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定し、樹脂におけるカルボキシ基及びカルボン酸無水物基の濃度の合計を求める。
なお、樹脂にカルボン酸無水物基が含まれていない場合には、この滴定で求めた濃度は、樹脂におけるカルボキシ基の濃度を意味する。
【0069】
さらに、樹脂におけるイソシアネート基の濃度は、JIS K1603-1:2007に基づき求めることができる。
【0070】
なお、第2の官能基を有する樹脂に含まれる第2の官能基の濃度は、例えば、カルボジイミド化合物によって低下させることができる。
具体的には、シリンダーを有する押出機を用いて、第2の官能基を有する樹脂と、カルボジイミド化合物とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:例えば、190~320℃、より具体的には210~290℃)により溶融混錬物を得る。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却する。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得る。次に、該ペレットを除湿乾燥機(例えば、70~90℃)で乾燥させることにより、第2の官能基の濃度が低下したペレット状の樹脂を得ることができる。
【0071】
前記カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物である。前記カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(-N=C=N-)を1分子に1つのみ有する単官能のカルボジイミド化合物、カルボジイミド基(-N=C=N-)を1分子に2以上有する多官能のカルボジイミド化合物が挙げられる。
前記カルボジイミド化合物としては、主鎖が脂肪族である脂肪族カルボジイミド化合物、主鎖が脂環族である脂環族カルボジイミド化合物、主鎖が芳香族である芳香族カルボジイミド化合物などが挙げられる。
前記脂肪族カルボジイミド化合物としては、例えば、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ-tert-ブチルカルボジイミド、1-エチル-3-tert-ブチルカルボジイミド、1-(2-ブチル)-3-エチルカルボジイミド、1,3-ジ-(2-ブチル)カルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等が挙げられる。
前記脂環族カルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等が挙げられる。
前記芳香族カルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジエチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジtert-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N-(2,6-ジイソプロピル-4-フェノキシフェニル)-N-tert-ブチルカルボジイミド、N,N-ビス[3-イソシアナト-2,4,6-トリス(1-メチルエチル)フェニルアミノ]カルボジイミド、N-シクロヘキシル-N-(4-(ジメチルアミノ)ナフチル)カルボジイミド、ジ-o-トリルカルボジイミド、ジ-p-トリルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,4,6-トリメチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,4,6-トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ-2,4,6-トリイソブチルフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等が挙げられる。
上記のカルボジイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0072】
前記第2の樹脂の相対粘度は、1.50~2.50、好ましくは1.58~2.16である。
前記第2の樹脂等の樹脂の相対粘度は、JIS K6933:2013に従って測定することができる。相対粘度の測定条件は、以下のようにすることができる。
溶媒:m-クレゾール
温度:25℃
試験溶液における第2の樹脂の濃度:0.005g/mL
【0073】
前記第2の樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは30℃~160℃である。
【0074】
なお、本実施形態において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した中間点ガラス転移温度を意味する。
中間点ガラス転移温度は、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法に基づいて求めることができる。
すなわち、まず、中間点ガラス転移温度を測定するための試料を約5mg用意するとともに、同じ形状で同じ重量の金属(例えば、アルミニウム)製の容器を2つ用意する。
次に、2つの前記容器のうち一方の容器に試料を入れ、他方の容器を空のままとする。
そして、試料を入れた容器と、リファレンスとしての空の容器とをDSCにセットし、窒素ガスを流しながら10℃/minの昇温速度で前記試料を昇温させた際に得られるDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求めることができる。
【0075】
前記樹脂粒子は、前記第2の樹脂を、好ましくは80~100重量%、より好ましくは90~100重量%、更に好ましくは95~100重量%含有する。
【0076】
また、前記樹脂粒子は、添加剤を更に含んでもよい。言い換えれば、前記樹脂粒子用樹脂組成物は、添加剤を更に含んでもよい。
前記添加剤としては、例えば、安定剤、着色剤、分散剤、防腐剤、抗酸化剤、消泡剤などが挙げられる。
前記添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
前記添加剤の含有割合の合計は、前記第2の樹脂との合計100重量部に対して、例えば10重量部以下(例えば0.01~10重量部)である。
【0077】
前記樹脂粒子のメジアン径(D50)は、好ましくは50μm以下、より好ましくは4~40μm、更に好ましくは8~32μmである。
前記樹脂粒子のメジアン径は、樹脂粒子を水に分散させて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定した値を意味する。また、前記樹脂粒子のメジアン径は、樹脂粒子の体積基準のメジアン径を意味する。
さらに、前記樹脂粒子のメジアン径は、1次粒子の樹脂粒子のメジアン径を意味する。
【0078】
前記樹脂粒子の真球度は、好ましくは75%以上100%以下、より好ましくは85%以上100%以下、更に好ましくは95%以上100%以下、特に好ましくは97%以上100%以下、最も好ましくは99%以上100%以下である。
前記樹脂粒子の真球度が75%以上であることにより、硬化物の靭性がより一層高くなる。
なお、本実施形態において、粒子の真球度は、次の方法により測定できる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子を観察し、無作為に選択した30個の粒子の長径と短径を測定し、各粒子の短径/長径比を求める。そして、短径/長径比の算術平均値を求め、この算術平均値を粒子の真球度とする。なお、粒子の真球度が100%に近いほど、粒子が真球であると判断できる。
【0079】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂及び前記樹脂粒子を合計で、好ましくは50~99重量%、より好ましくは80~97重量%有する。
【0080】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記樹脂粒子を、好ましくは1~20重量部、より好ましくは3~18重量部、より好ましくは5~15重量部含む。
【0081】
(樹脂粒子の製造方法)
樹脂粒子の製造方法としては、強制乳化法、冷凍粉砕法、化学粉砕法、重合法、レーザー法等が挙げられる。
樹脂粒子の製造方法としては、強制乳化法が好ましい。
【0082】
前記強制乳化法では、前記アミド結合を有する第2の樹脂と、前記アミド結合を有する第2の樹脂に非相溶な水性媒体(以下、「水溶性マトリクス」ともいう。)とを押出機で加熱により溶融混練することにより、溶融混練物を得る工程(A)と、該溶融混練物を押出機から吐出することにより棒状の溶融混錬物を得、該棒状の溶融混錬物を冷却し、冷却した棒状の溶融混錬物を切断することによりペレット状の予備成形体を得る工程(B)と、ペレット状の予備成形体から親水性溶媒又は水で前記水性媒体を除去する工程(C)とを実施することにより、前記樹脂粒子を得る。
前記強制乳化法では、必要に応じて、前記工程(C)後に、前記予備成形体を除湿乾燥機等で乾燥させる工程(D)を実施することにより、前記樹脂粒子を得てもよい。
また、所望の粒径の樹脂粒子を得るために、前記強制乳化法では、前記工程(C)後に(前記工程(D)を実施する場合には、前記工程(D)後又は前記工程(D)前に)、前記予備成形体を分級する工程(E)を実施することにより、前記樹脂粒子を得てもよい。
【0083】
前記工程(A)で用いる前記水性媒体は、前記アミド結合を有する第2の樹脂の種類に応じて選択する。
前記水性媒体としては、例えば、熱溶融性の糖類、水溶性高分子などが挙げられる。
前記熱溶融性の糖類としては、例えば、オリゴ糖(例えば、スクロース、マルトトリオースなど)、糖アルコール(例えば、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトールなど)などが挙げられる。
前記水溶性高分子としては、例えば、水溶性合成高分子(例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール系樹脂(変性PVA系樹脂)、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドなど)、多糖類(例えば、デンプン、メチルセルロースなど)などが挙げられる。
前記変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、少なくとも1つのヒドロキシル基有するアルキル基を側鎖に有する変性ポリビニルアルコール、少なくとも1つのヒドロキシル基有するアルキル鎖を側鎖に有する変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
これらの水性媒体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0084】
前記第2の樹脂と前記水性媒体との混合割合については、前記水性媒体100重量部に対して、前記第2の樹脂が、例えば、10~200重量部、好ましくは30~150重量部、より好ましくは50~100重量部である。
【0085】
前記工程(A)で溶融混練する際の温度は、前記第2の樹脂の融点又は軟化点以上の温度であればよく、例えば190℃以上(例えば190~350℃)、好ましくは200~320℃、さらに好ましくは210~300℃である。
【0086】
前記工程(B)では、溶融混錬物を自然冷却してもよく、溶融混練物を強制冷却してもよいが、生産性の観点から、溶融混練物を強制冷却することが好ましい。
溶融混練物の冷却速度は、例えば、1℃/分以上(例えば1~30℃/分)が好ましい。
【0087】
前記工程(C)で用いる親水性溶媒としては、例えば、アルコール(エタノールなど)、水溶性ケトン(アセトンなど)などが挙げられる。
【0088】
(単官能性のエポキシ化合物)
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合には、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、単官能性のエポキシ化合物を含んでもよい。
前記単官能性のエポキシ化合物としては、モノグリシジルエーテル、アルケンオキシド(例えば、オクチレンオキシド、スチレンオキシドなど)等が挙げられる。
前記モノグリシジルエーテルとしては、例えば、アルキルグリシジルエーテル(例えば、2-エチルへキシルグリシジルエーテルなど)、アルケニルグリシジルエーテル(例えば、アリルグリシジルエーテルなど)、アリールグリシジルエーテル(例えば、フェニルグリシジルエーテルなど)等が挙げられる。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物において、前記単官能性のエポキシ化合物の重量に対する前記エポキシ樹脂の重量の比は、例えば99/1~50/50、好ましくは97/3~60/40、さらに好ましくは95/5~70/30である。
【0089】
(硬化剤)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含んでもよい。
前記硬化剤としては、前記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択できる。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合の硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、潜在性硬化剤などが挙げられる。
【0090】
前記アミン系硬化剤としては、例えば、芳香族アミン系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、イミダゾール類、イミダゾール類の塩、脂環式アミン系硬化剤などが挙げられる。
【0091】
前記芳香族アミン系硬化剤としては、例えば、ポリアミノアレーン、ポリアミノ-アルキルアレーン、ポリ(アミノアルキル)アレーン、ポリ(アミノアリール)アルカン、ポリ(アミノ-アルキルアリール)アルカン、ビス(アミノアリールアルキル)アレーン、ジ(アミノアリール)エーテル(例えば、ジアミノジフェニルエーテルなど)、ジ(アミノアリールオキシ)アレーン(例えば、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなど)、ジ(アミノアリール)スルホン(例えば、ジアミノジフェニルスルホンなど)等が挙げられる。
前記ポリアミノアレーンとしては、例えば、ジアミノアレーン(例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等)等が挙げられる。
前記ポリアミノ-アルキルアレーンとしては、例えば、ジアミノ-アルキルアレーン(例えば、ジエチルトルエンジアミン等)等が挙げられる。
前記ポリ(アミノアルキル)アレーンとしては、例えば、ジ(アミノアルキル)アレーン(例えば、キシリレンジアミン等)等が挙げられる。
前記ポリ(アミノアリール)アルカンとしては、例えば、ジ(アミノアリール)アルカン(例えば、ジアミノジフェニルメタン等)等が挙げられる。
前記ポリ(アミノ-アルキルアリール)アルカンとしては、例えば、ジ(アミノ-アルキルアリール)アルカン(例えば、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)等)等が挙げられる。
前記ビス(アミノアリールアルキル)アレーンとしては、例えば、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0092】
前記脂肪族アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0093】
前記脂環式アミン系硬化剤としては、例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ノルボルナンジアミン等が挙げられる。
【0094】
前記イミダゾール類としては、例えば、アルキルイミダゾール、アリールイミダゾール等が挙げられる。
前記アルキルイミダゾールとしては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。
前記アリールイミダゾールとしては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0095】
前記イミダゾール類の塩としては、例えば、イミダゾール類とギ酸との塩、イミダゾール類とフェノールとの塩、イミダゾール類とフェノールノボラックとの塩、イミダゾール類と炭酸との塩などが挙げられる。
【0096】
前記フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、ノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0097】
前記酸無水物系硬化剤としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環式ジカルボン酸無水物、芳香族ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸無水物としては、例えば、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
前記脂環式ジカルボン酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0098】
前記潜在性硬化剤としては、例えば、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0099】
硬化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、硬化剤は、硬化促進剤として作用する場合もある。
前記硬化剤としては、アミン系硬化剤(例えば、芳香族アミン系硬化剤)が好ましい。
【0100】
前記硬化剤の含有割合は、熱硬化性樹脂の種類(エポキシ当量など)や硬化剤の種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.1~300重量部、好ましくは1~250重量部、さらに好ましくは3~200重量部(例えば、4~150重量部)、特に好ましくは5~100重量部である。
【0101】
(硬化促進剤)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。
前記硬化促進剤としては、前記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択できる。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合の硬化促進剤としては、例えば、ホスフィン類、アミン類、アミン類の塩などが挙げられる。
前記ホスフィン類としては、例えば、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、トリアルキルホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、第2~3級アミン類等が挙げられる。
第2~3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ピペリジン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルピペラジン等が挙げられる。
硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0102】
前記硬化促進剤の含有割合は、例えば、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.01~100重量部、好ましくは0.05~50重量部、さらに好ましくは1~30重量部である。
【0103】
(他の成分)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分として、熱可塑性樹脂及び添加剤の少なくとも何れか一をさらに含んでいてもよい。
【0104】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレンなど)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)などが挙げられる。
【0105】
前記添加剤としては、例えば、非繊維状充填剤、安定剤、着色剤、分散剤、防腐剤、抗酸化剤、消泡剤などが挙げられる。
【0106】
他の成分の含有割合は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、例えば10重量部以下(例えば0.01~10重量部)である。
【0107】
<硬化物>
本実施形態に係る硬化物は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された硬化物である。
本実施形態に係る硬化物の形状は、一次元的形状(棒状など)、二次元的形状(シート状など)、又は、三次元的形状であってもよい。
【0108】
<プリプレグ>
本実施形態に係るプリプレグは、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物が、強化繊維の集合体に含侵又は注入された、プリプレグである。
すなわち、本実施形態に係るプリプレグは、熱硬化性樹脂組成物と強化繊維とからなる。
本実施形態に係るプリプレグを熱硬化することにより(具体的には、プリプレグに含まれる熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することにより)、繊維強化プラスチックを得ることができる。
【0109】
前記強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維、ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられる。
前記強化繊維としては、炭素繊維が好ましい。
【0110】
前記強化繊維は、モノフィラメントであってもよく、マルチフィラメントであってもよい。
前記強化繊維の単繊維の繊度は、好ましくは0.2~2.0dtex、より好ましくは0.4~1.8dtexである。
【0111】
前記強化繊維がマルチフィラメントである場合、前記繊維におけるフィラメント数は、2500~50000本であることが好ましい。
【0112】
前記強化繊維は、連続繊維となっていてもよく、また、不連続の形態となっていてもよい。
より高い力学特性が硬化物に求められる場合には、前記強化繊維としては、連続繊維が好ましい。
連続繊維は、例えば、一方向基材、編み物、織物、トウ、又は、ロービング等となって、本実施形態に係るプリプレグに含まれていてもよい。
不連続の形態の強化繊維は、例えば、不織布、又は、チョップド糸等となって、本実施形態に係るプリプレグに含まれていてもよい。
【0113】
前記熱硬化性樹脂組成物は、液状でプリプレグに含まれていてもよく、また、固体状でプリプレグに含まれていてもよい。
本実施形態に係るプリプレグは、トウプリプレグも含む概念である。トウプリプレグは、トウ(強化繊維の束)と固体状の熱硬化性樹脂組成物とからなるプリプレグである。
【0114】
本実施形態に係るプリプレグは、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記強化繊維を、好ましくは1~50重量部、より好ましくは5~30重量部含む。
【0115】
(繊維強化プラスチック)
本実施形態に係る繊維強化プラスチックは、本実施形態に係る硬化物と前記強化繊維とからなる。
本実施形態に係る繊維強化プラスチックは、「繊維強化高分子複合材料」や「FRP」とも呼ばれている。
本実施形態に係る繊維強化プラスチックでは、前記強化繊維が炭素繊維であることが好ましい。言い換えれば、本実施形態に係る繊維強化プラスチックは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)であることが好ましい。
【0116】
本実施形態に係る繊維強化プラスチックは、本実施形態に係るプリプレグが熱硬化されてなる。
すなわち、本実施形態に係る繊維強化プラスチックは、本実施形態に係るプリプレグを熱硬化させることで作製することができる。
例えば、本実施形態に係る繊維強化プラスチックは、フィラメントワインディング法によって得てもよい。
フィラメントワインディング法では、トウ(強化繊維の束)と熱硬化性樹脂組成物とからなる糸状のプリプレグをマンドレルで巻き上げ、所望の形状(例えば、筒形状、タンク形状)のプリプレグを得、該プリプレグを熱硬化させること(プリプレグに含まれる熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させること)により、所望の形状の繊維強化プラスチックを得ることができる。
フィラメントワインディング法としては、Wet法、Dry法などが挙げられる。
Wet法では、トウ(強化繊維の束)を液状の熱硬化性樹脂組成物に入れてプリプレグを得、液状の熱硬化性樹脂組成物を含むプリプレグをマンドリルで巻き上げる。
Dry法では、トウプリプレグをマンドリルで巻き上げる。Dry法では、あらかじめ作製したトウプリプレグを用いることにより、簡便に所望の形状の繊維強化プラスチックを作製することができる。
【0117】
本実施形態に係る繊維強化プラスチックは、力学的効率を高めるという観点から、前記強化繊維を含む層を2層以上有することが好ましい。
前記強化繊維を含む層を2層以上有する繊維強化プラスチックとしては、例えば、強化繊維の集合体を有する層を2層以上有する繊維強化プラスチックが挙げられる。
【0118】
前記強化繊維を含む層を2層以上有する繊維強化プラスチックは、例えば、以下のようにして作製することができる。
複数のプリプレグの層を重ね合わせ、重ね合わせた複数のプリプレグの層を熱硬化させることにより、前記強化繊維を含む層を2層以上有する繊維強化プラスチックを得ることができる。
また、強化繊維の集合体を2層以上重ね合わせて積層物を得、該積層物に前記熱硬化性樹脂組成物を含侵し又は注入することにより、前記強化繊維を含む層を2層以上有する繊維強化プラスチックを得ることができる。
【0119】
(成形品)
本実施形態に係る成形品は、本実施形態に係る硬化物から形成された成形品である。
本実施形態に係る成形品は、本実施形態に係る繊維強化プラスチックから形成された、成形品も含む概念である。
本実施形態に係る成形品としては、例えば、航空機のボディー、ゴルフクラブのシャフト、釣竿、タンク(具体的には、高圧タンク)などが挙げられる。
【0120】
〔開示項目〕
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0121】
〔項目1〕
熱硬化性樹脂たる第1の樹脂と、アミド結合を有する第2の樹脂を含む樹脂粒子とを有する、熱硬化性樹脂組成物であって、
前記第2の樹脂は、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及び、カルボン酸無水物基からなる群より選ばれた1種以上の第2の官能基を含み、
前記第1の樹脂は、前記第2の官能基と反応できる第1の官能基を含み、
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を25~190mmol/kg含み、
前記第2の樹脂の相対粘度が、1.50~2.50である、熱硬化性樹脂組成物。
【0122】
〔項目2〕
前記第2の樹脂が、ポリアミド樹脂を含む、項目1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0123】
〔項目3〕
前記ポリアミド樹脂が、脂肪族ポリアミド樹脂、及び/又は、脂環族ポリアミド樹脂を含む、項目2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0124】
〔項目4〕
前記樹脂粒子のメジアン径が、50μm以下である、項目1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0125】
〔項目5〕
前記樹脂粒子の真球度が、75%以上である、項目1~4の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0126】
〔項目6〕
前記第2の樹脂のガラス転移点が、30~160℃である、項目1~5の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0127】
〔項目7〕
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を29~120mmol/kg含む、項目1~6の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0128】
〔項目8〕
前記第1の樹脂が、エポキシ樹脂を含む、項目1~7の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0129】
〔項目9〕
前記第1の樹脂100重量部に対して、前記樹脂粒子を1~20重量部有する、項目1~8の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0130】
〔項目10〕
項目1~9の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された、硬化物。
【0131】
〔項目11〕
項目1~9の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物が、強化繊維の集合体に含侵又は注入された、プリプレグ。
【0132】
〔項目12〕
項目10に記載の硬化物から形成された、成形品。
【0133】
〔項目13〕
項目10に記載の硬化物と強化繊維とからなる、繊維強化プラスチック。
【0134】
〔項目14〕
前記強化繊維を含む層を2層以上有する、項目13に記載の繊維強化プラスチック。
【実施例0135】
次に、実施例および比較例を挙げて本開示についてさらに具体的に説明する。なお、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0136】
(水溶性マトリクス)
以下の水溶性マトリクスを用意した。
変性PVA系樹脂1(以下、「変性PVA1」ともいう。):特開2019-1942の段落0119~0121に記載の方法で用意した変性PVA系樹脂(該特開2019-1942に記載の“変性PVA系樹脂2”)
変性PVA系樹脂2(以下、「変性PVA2」ともいう。):特開2019-1942の段落0112~0115に記載の方法で用意した変性PVA系樹脂(該特開2019-1942に記載の“変性PVA系樹脂1”)
糖アルコール:三菱商事フードテック(株)製、D-ソルビトール LTSパウダー20M
【0137】
(押出機)
以下の押出機(シリンダーを有する押出機)を用意した。
日本製鋼(株)社製の「TEX30XSST」(以下、単に「TEX30」ともいう。)
株式会社東洋精機製作所社製の「ラボプラストミル」(以下、単に「プラストミル」ともいう。)
【0138】
(実施例1~3、5~8、11~16、比較例12)
下記表1に示す条件で、押出機を用いて、水溶性マトリクスと原料樹脂とを溶融混錬し、溶融混錬物を吐出した。
なお、原料樹脂は、ポリプラ・エボニック社製のポリアミド樹脂である。
吐出した溶融混錬物を冷却してカッティングし、ペレット状の予備成形体を得た。この予備成形体を水に投入して撹拌し、水溶性マトリクスを溶出させてスラリーを得た。このスラリーをメッシュ(目開き:250μm)を通させ、メッシュを通過したスラリーをろ紙でろ過することにより、メッシュを通過し且つろ紙に留まった前躯体粒子を回収した。該前躯体粒子を温度23℃湿度50%RHの下で自然乾燥させ、樹脂粒子(パウダー)を得た。
【0139】
次に、ホットスターラーを用いて、80℃、300rpmの条件下で、前記樹脂粒子、及び、熱硬化性樹脂たるエポキシ樹脂(三菱化学社製の「jER828」)を6時間撹拌することにより混合物を得た。
そして、該混合物を真空容器中で1時間放置することにより、該混合物を脱泡させた。
次に、脱泡した混合物にアミン系硬化剤(三菱化学社製の「jERキュアW」)を加えて撹拌および脱泡を行うことにより、熱硬化性樹脂組成物(樹脂粒子:14.4重量%)を得た。
【0140】
(実施例4)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、実施例2の原料樹脂100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)1.5重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:220℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0141】
(実施例9)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、実施例5の原料樹脂90重量部と、ポリプラ・エボニック製のPA12(カルボキシ基の濃度:5mmol/kg、アミノ基の濃度:400mmol/kg。相対粘度:1.33)10重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:220℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0142】
(実施例10)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、実施例5の原料樹脂85重量部と、ポリプラ・エボニック製のPA12(カルボキシ基の濃度:5mmol/kg、アミノ基の濃度:400mmol/kg、相対粘度:1.33)15重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:220℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0143】
(比較例1)
樹脂粒子を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0144】
(比較例2)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、実施例2の原料樹脂100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)2.5重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:220℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0145】
(比較例3)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、ポリプラ・エボニック社製の非晶性脂環式ポリアミド100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)4重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:280℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0146】
(比較例4)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、ポリプラ・エボニック社製の非晶性脂環式ポリアミド100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)4重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:280℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0147】
(比較例5)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、PA12(ポリプラ・エボニック社製)100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)4重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:280℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0148】
(比較例6)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、ポリプラ・エボニック社製の微結晶性脂環式ポリアミド100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)4重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:280℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0149】
(比較例7)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、ポリプラ・エボニック社製の非晶性脂環式ポリアミド100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)4重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:280℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0150】
(比較例8)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、PA1010(ポリプラ・エボニック社製)100重量部と、カルボジイミド化合物(Stabaxol I Powder、LANXESS社製)3重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:280℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0151】
(比較例9)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、実施例5の原料樹脂65重量部と、ポリプラ・エボニック製のPA12(カルボキシ基の濃度:5mmol/kg、アミノ基の濃度:400mmol/kg、相対粘度:1.33)35重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:220℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0152】
(比較例10)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、ポリプラ・エボニック社製の非晶性脂環式ポリアミド樹脂55重量部と、ポリプラ・エボニック製のPA12(カルボキシ基の濃度:5mmol/kg、アミノ基の濃度:400mmol/kg、相対粘度:1.33)45重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:220℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0153】
(比較例11)
押出機(日本製鋼(株)製の「TEX30」)を用いて、ポリプラ・エボニック社製の微結晶性脂環式ポリアミド樹脂55重量部と、ポリプラ・エボニック製のPA12(カルボキシ基の濃度:5mmol/kg、アミノ端基濃度:400mmol/kg、相対粘度:1.33)45重量部とを溶融混錬すること(シリンダーの温度:220℃)により、溶融混錬物を得た。次に、該溶融混錬物を押出機から吐出させ、吐出した棒状の溶融混錬物を冷却した。そして、棒状の溶融混錬物をカッティングすることにより、ペレットを得た。次に、除湿乾燥機を用いて該ペレットを80℃で4時間乾燥させることにより、乾燥したペレット(原料樹脂)を得た。
該原料樹脂を用い、且つ、下記表1に示す条件にしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得、そして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0154】
下記表1に示す原料樹脂における相対粘度、カルボキシ基の濃度、及び、アミノ基の濃度の濃度は、上述した方法で測定した。
また、原料樹脂の作製に用いたポリアミド樹脂における相対粘度、カルボキシ基の濃度、及び、アミノ基の濃度の濃度も、上述した方法で測定した。
【0155】
【表1】
【0156】
(第2の樹脂における相対粘度、カルボキシ基の濃度、アミノ基の濃度、及び、第2の官能基の濃度)
樹脂粒子に含まれる第2の樹脂における相対粘度、カルボキシ基の濃度、アミノ基の濃度、及び、第2の官能基の濃度は、上述した方法で測定した。測定値を下記表2に示す。
なお、実施例及び比較例では、第2の官能基の濃度は、アミノ基及びカルボキシ基の濃度の合計を意味する。
【0157】
(樹脂粒子のメジアン径及び真球度、並びに、第2の樹脂のガラス転移温度(Tg))
樹脂粒子のメジアン径(D50)及び真球度、並びに、第2の樹脂のガラス転移温度(Tg)は、上述した方法で測定した。測定値を下記表2に示す。
【0158】
(硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC))
まず、熱硬化性樹脂組成物を金型(47mm(長さ)×12mm(幅)×4mm(厚み))に流し込んだ。
次に、熱硬化性樹脂組成物が十分に熱硬化するまで熱硬化性樹脂組成物を175℃で加熱し、予亀裂を有する硬化物を得た。なお、該硬化物に予亀裂を設けるべく、前記金型の内面には、前記予亀裂に対応する凸部が形成されていた。
そして、予亀裂を有する硬化物を用いて、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)をASTM D5045に準拠して求めた。
下記表2に結果を示す。
【0159】
【表2】
【0160】
図1には、実施例3で用いた樹脂粒子のSEM画像を示す。
【0161】
図2には、実施例3の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された硬化物の断面のSEM画像を示す。
該硬化物は、平面ひずみ破壊靭性(KIC)の試験方法と同じようにして熱硬化性樹脂組成物から作製した。次に、該硬化物をIZOD衝撃試験機で破断させることにより、破断面を得た。そして、該破断面をSEMで撮影した。
図2の円形状のものが樹脂粒子である。樹脂粒子は、硬化後も粒子状のままとなっていることがわかる。
【0162】
表2に示すように、本開示の範囲内である実施例1~16では、熱硬化性樹脂組成物が樹脂粒子を含まない比較例1、第2樹脂における第2の官能基の濃度が小さい比較例2~8、第2樹脂の相対粘度が小さく、且つ、第2樹脂における第2の官能基の濃度が大きい比較例9、10、第2樹脂における第2の官能基の濃度が大きい比較例11、及び、第2樹脂の相対粘度が小さい比較例12に比べて、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)が高かった。
従って、本開示によれば、硬化物の靭性がより一層高い熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
【0163】
なお、実施例どうしの対比では以下の傾向にあった。
すなわち、相対粘度が高いほど、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)が高い傾向にあった。また、メジアン径が高いほど、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)が高い傾向にあった。さらに、第2樹脂における第2の官能基の濃度が所定以上であれば、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)は大きく変わることはなかった。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂たる第1の樹脂と、アミド結合を有する第2の樹脂を含む樹脂粒子とを有する、熱硬化性樹脂組成物であって、
前記第2の樹脂は、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及び、カルボン酸無水物基からなる群より選ばれた1種以上の第2の官能基を含み、
前記第1の樹脂は、前記第2の官能基と反応できる第1の官能基を含み、
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を25~190mmol/kg含み、
前記第2の樹脂の相対粘度が、1.50~2.50であり、
前記第2の樹脂のガラス転移温度が、30~48℃である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2の樹脂が、ポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂が、脂肪族ポリアミド樹脂、及び/又は、脂環族ポリアミド樹脂を含む、請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂粒子のメジアン径が、50μm以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂粒子の真球度が、75%以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2の樹脂は、前記第2の官能基を29~120mmol/kg含む、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1の樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記第1の樹脂100重量部に対して、前記樹脂粒子を1~20重量部有する、請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物が熱硬化された、硬化物。
【請求項10】
請求項1~3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物が、強化繊維の集合体に含侵又は注入された、プリプレグ。
【請求項11】
請求項に記載の硬化物から形成された、成形品。
【請求項12】
請求項に記載の硬化物と強化繊維とからなる、繊維強化プラスチック。
【請求項13】
前記強化繊維を含む層を2層以上有する、請求項12に記載の繊維強化プラスチック。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
次に、実施例、参考例および比較例を挙げて本開示についてさらに具体的に説明する。なお、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0138
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0138】
(実施例1~3、5~8、11~12、15、参考例13~14、16、比較例12)
下記表1に示す条件で、押出機を用いて、水溶性マトリクスと原料樹脂とを溶融混錬し、溶融混錬物を吐出した。
なお、原料樹脂は、ポリプラ・エボニック社製のポリアミド樹脂である。
吐出した溶融混錬物を冷却してカッティングし、ペレット状の予備成形体を得た。この予備成形体を水に投入して撹拌し、水溶性マトリクスを溶出させてスラリーを得た。このスラリーをメッシュ(目開き:250μm)を通させ、メッシュを通過したスラリーをろ紙でろ過することにより、メッシュを通過し且つろ紙に留まった前躯体粒子を回収した。該前躯体粒子を温度23℃湿度50%RHの下で自然乾燥させ、樹脂粒子(パウダー)を得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0155
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0155】
【表1】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0156
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0156】
(第2の樹脂における相対粘度、カルボキシ基の濃度、アミノ基の濃度、及び、第2の官能基の濃度)
樹脂粒子に含まれる第2の樹脂における相対粘度、カルボキシ基の濃度、アミノ基の濃度、及び、第2の官能基の濃度は、上述した方法で測定した。測定値を下記表2に示す。
なお、実施例、参考例及び比較例では、第2の官能基の濃度は、アミノ基及びカルボキシ基の濃度の合計を意味する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0159
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0159】
【表2】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0162
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0162】
表2に示すように、本開示の範囲内である実施例1~12、15、参考例13~14、16では、熱硬化性樹脂組成物が樹脂粒子を含まない比較例1、第2樹脂における第2の官能基の濃度が小さい比較例2~8、第2樹脂の相対粘度が小さく、且つ、第2樹脂における第2の官能基の濃度が大きい比較例9、10、第2樹脂における第2の官能基の濃度が大きい比較例11、及び、第2樹脂の相対粘度が小さい比較例12に比べて、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)が高かった。
従って、本開示によれば、硬化物の靭性がより一層高い熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0163
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0163】
なお、実施例及び参考例どうしの対比では以下の傾向にあった。
すなわち、相対粘度が高いほど、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)が高い傾向にあった。また、メジアン径が高いほど、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)が高い傾向にあった。さらに、第2樹脂における第2の官能基の濃度が所定以上であれば、硬化物の平面ひずみ破壊靭性(KIC)は大きく変わることはなかった。