(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075164
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】遮水シート用吸水性樹脂粉体およびこれを用いた遮水シート
(51)【国際特許分類】
E02D 31/04 20060101AFI20240527BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240527BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240527BHJP
C08F 20/04 20060101ALI20240527BHJP
B09B 1/00 20060101ALI20240527BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E02D31/04
B01J20/28 Z ZAB
B01J20/26 D
C08F20/04
B09B1/00 F
E02D17/20 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186397
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】太田 義久
【テーマコード(参考)】
2D044
4D004
4G066
4J100
【Fターム(参考)】
2D044DB07
4D004AA46
4D004BB05
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA20
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066AB07A
4G066AB10D
4G066AC17B
4G066AC35B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA07
4G066FA37
4J100AG64Q
4J100AJ02P
4J100CA04
4J100EA03
4J100JA19
(57)【要約】
【課題】遮水シートの漏水をより防止することができ、かつ、汽水に対する吸収性能にも優れた吸水性樹脂粉体を提供する。
【解決手段】遮水シート用吸水性樹脂粉体は、遮水シートに使用される吸水性樹脂粉体であって、下記(a)~(f)の要件を満足することを特徴とする。
(a)純水吸収量:450g/g~1200g/g
(b)ボルテックス法による純水吸収速度:10秒~100秒
(c)純水通液速度:0.33mL/min以下
(d)1.0%塩水吸収量:30g/g~100g/g
(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度:10秒~100秒
(f)1.0%塩水通液速度:2.0mL/min以下
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水シートに使用される吸水性樹脂粉体であって、下記(a)~(f)の要件を満足することを特徴とする遮水シート用吸水性樹脂粉体。
(a)純水吸収量:450g/g~1200g/g
(b)ボルテックス法による純水吸収速度:10秒~100秒
(c)純水通液速度:0.33mL/min以下
(d)1.0%塩水吸収量:30g/g~100g/g
(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度:10秒~100秒
(f)1.0%塩水通液速度:2.0mL/min以下
【請求項2】
前記吸水性樹脂粉体を構成する吸水性樹脂が、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または加水分解により(a1)水溶性エチレン性モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーと、(b)内部架橋剤とを含有する単量体組成物を重合して得られたものである請求項1に記載の遮水シート用吸水性樹脂粉体。
【請求項3】
粒子径が4000μm以下の粒子の含有率が90質量%~100質量%である請求項1または2に記載の吸水性樹脂粉体。
【請求項4】
第1シートと、前記第1シートに積層された第2シートと、前記第1シートと第2シートとの間に配置された吸水層とを有し、
前記吸水層が請求項1に記載の吸水性樹脂粉体を含有し、
前記吸水層の単位面積当たりの前記吸水性樹脂粉体の含有量が、350g/m2~700g/m2であることを特徴とする遮水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粉体に関し、特に遮水シートに用いられる吸水性樹脂粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
海岸や河川等の護岸工事、貯水池等における漏水防止、廃棄物処分場における汚水の地中への漏水防止のために、遮水シートが使用されている。このような遮水シートには、基材シートの外面側に吸水性樹脂粉体を配置したものが提案されている。このような遮水シートは、基材シートに孔が開いた場合でも、吸水性樹脂粉体が膨張することで、漏水が防止できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材と、該基材上に間欠的に固着された略球形の吸水性樹脂粒子とを有することを特徴とする遮水シート用吸水性複合シートが記載されている(特許文献1(請求項1、段落0065~0079)参照)。また、特許文献2には、ゲル化物質の吸水膨潤性ポリマーシートの上下に吸水性シートを重ね合わせてキルテイング加工し、キルテイングされた前記吸水性シートの下面に遮水性シートをラミネートして一体のシートにしたことを特徴とする遮水シートが記載されている(特許文献2(請求項1、段落0008~0010)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-056160号公報
【特許文献2】特開平8-074223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、吸水性樹脂粉体を用いた遮水シートが提案されているが、吸水性樹脂粉体については使い捨ておむつ等に使用される吸水性樹脂粉体が転用されており、遮水シートに適した吸水性樹脂粉体の物性については検討が不十分であった。また、特許文献1のように、吸水性樹脂粉体に表面架橋処理を行うと、ゲルブロッキングを抑制できるが、漏水を防止する機能が低下する傾向があった。さらに、特に河川の河口付近での護岸工事に使用される遮水シートでは、吸水性樹脂が汽水を吸収する必要があるが、このような汽水に対する吸収性能は考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、遮水シートに用いられる吸水性樹脂粉体であって、遮水シートの漏水をより防止することができ、かつ、汽水に対する吸収性能にも優れた吸水性樹脂粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の遮水シート用吸水性樹脂粉体は、遮水シートに使用される吸水性樹脂粉体であって、下記(a)~(f)の要件を満足することを特徴とする。
(a)純水吸収量:450g/g~1200g/g
(b)ボルテックス法による純水吸収速度:10秒~100秒
(c)純水通液速度:0.33mL/min以下
(d)1.0%塩水吸収量:30g/g~100g/g
(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度:10秒~100秒
(f)1.0%塩水通液速度:2.0mL/min以下
【0008】
要件(a)~(f)を満たす吸水性樹脂粉体は、純水および汽水に対する吸収性能が優れており、かつ、膨潤した際に純水や汽水の通液を抑制する性能にも優れている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸水性樹脂粉体を遮水シートに使用することで、汽水に晒される護岸にも使用でき、かつ、基材シートに穴が開いた場合でも漏水をより防止できる遮水シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】釘穴遮水試験のサンプルの穴あけ部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[遮水シート用吸水性樹脂粉体]
本発明の遮水シート用吸水性樹脂粉体(以下、単に「吸水性樹脂粉体」と称する場合がある。)は、遮水シートに使用される吸水性樹脂粉体である。
【0012】
〔物性〕
前記吸水性樹脂粉体は、下記(a)~(f)の要件を満足することを特徴とする。
(a)純水吸収量:450g/g~1200g/g
(b)ボルテックス法による純水吸収速度:10秒~100秒
(c)純水通液速度:0.33mL/min以下
(d)1.0%塩水吸収量:30g/g~100g/g
(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度:10秒~100秒
(f)1.0%塩水通液速度:2.0mL/min以下
【0013】
前記吸水性樹脂粉体は、吸水性樹脂の粒子の集合体である。前記吸水性樹脂粉体を構成する粒子の形状は特に限定されず、例えば、不定形破砕状、リン片状、パール状、米粒状等が挙げられる。
【0014】
前記吸水性樹脂粉体の(a)純水吸収量は、450g/g以上が好ましく、より好ましくは470/g以上、さらに好ましくは500g/g以上であり、1200g/g以下が好ましく、より好ましくは1100g/g以下、さらに好ましくは1000g/g以下である。前記(a)純水吸収量は、吸水性樹脂粉体が単位質量当たりにどの程度の純水を吸収できるかを示す尺度である。前記(a)純水吸収量が450g/g以上であれば遮水性に優れ、1200g/g以下であれば膨潤時のゲル強度が確保できる。
【0015】
前記吸水性樹脂粉体の(b)ボルテックス法による純水吸収速度は、10秒以上が好ましく、より好ましくは15秒以上、さらに好ましくは20秒以上であり、100秒以下が好ましく、より好ましくは90秒以下、さらに好ましくは80秒以下である。前記(b)ボルテックス法による純水吸収速度が10秒以上であれば膨潤の際に継粉を生じにくく、100秒以下であれば遮水性に優れる。
【0016】
前記吸水性樹脂粉体の(c)純水通液速度は、0.33mL/min以下が好ましく、より好ましくは0.28mL/min以下、さらに好ましくは0.22mL/min以下、特に好ましくは0.11mL/min以下である。前記(c)純水通液速度が、0.33mL/min以下であれば十分な遮水性を確保できる。前記(c)純水通液速度の下限は0mL/minである。
【0017】
前記吸水性樹脂粉体の(d)1.0%塩水吸収量は、30g/g以上が好ましく、より好ましくは35g/g以上、さらに好ましくは40g/g以上であり、100g/g以下が好ましく、より好ましくは95g/g以下、さらに好ましくは90g/g以下である。前記(d)1.0%塩水吸収量は、吸水性樹脂粉体が単位質量当たりにどの程度の1.0%塩水を吸収できるかを示す尺度である。前記(d)1.0%塩水吸収量が30g/g以上であれば遮水性に優れ、100g/g以下であれば膨潤時のゲル強度が確保できる。
【0018】
前記吸水性樹脂粉体の(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度は、10秒以上が好ましく、より好ましくは15秒以上、さらに好ましくは20秒以上であり、100秒以下が好ましく、より好ましくは90秒以下、さらに好ましくは80秒以下である。前記(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度が10秒以上であれば膨潤の際に継粉を生じにくく、100秒以下であれば遮水性に優れる。
【0019】
前記吸水性樹脂粉体の(f)1.0%塩水通液速度は、2.0mL/min以下が好ましく、より好ましくは1.3mL/min以下、さらに好ましくは1.0mL/min以下、特に好ましくは0.67mL/min以下である。前記(f)1.0%塩水通液速度が2.0mL/min以下であれば優れた遮水性を示す。前記(f)1.0%塩水通液速度の下限は0mL/minである。
【0020】
前記吸水性樹脂粉体の(a)純水吸収量、(b)ボルテックス法による純水吸収速度、(c)純水通液速度、(d)1.0%塩水吸収量、(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度、(f)1.0%塩水通液速度は、樹脂の組成や粒度分布等を適宜選択することで調節できる。
【0021】
前記吸水性樹脂粉体の質量平均粒子径(μm)は、35μm以上が好ましく、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、4,000μm以下が好ましく、より好ましくは3,500μm以下、さらに好ましくは3,000μm以下である。前記質量平均粒子径が35μm以上あれば膨潤の際に継粉を生じにくく、4,000μm以下であれば優れた遮水性を示す。
【0022】
なお、質量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2019)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定する。具体的には、JIS標準ふるいを、上から公称目開き4000μm、1000μm、500μm、250μm、105μm、74μm及び34μm並びに受け皿の順に積み重ねる。最上段のふるいに測定粉体50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の粉体の質量を秤量し、その合計を100質量%として各ふるい上の粒子の質量分率を求める。この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が質量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50質量%に対応する粒子径を求め、これを質量平均粒子径とする。
【0023】
前記吸水性樹脂粉体は、粒子径が4000μm以下である粒子の含有率が90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。粒子径が4000μm以下である粒子の含有率が90質量%以上であれば優れた遮水性を示す。
【0024】
前記吸水性樹脂粉体の嵩密度は、0.25g/ml以上が好ましく、より好ましくは0.30g/ml以上、さらに好ましくは0.35g/ml以上であり、1.00g/ml以下が好ましく、より好ましくは0.95g/ml以下、さらに好ましくは0.90g/ml以下である。嵩密度が0.25g/ml以上であれば膨潤の際に継粉を生じにくく、1.00g/ml以下であれば優れた遮水性を示す。嵩密度は、JIS K6219-2(2005)に準じて測定する。なお、測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後に測定する。
【0025】
前記吸水性樹脂粉体の粒度分布、嵩密度は、吸水性樹脂を粉砕したり、粉体を分級したりすることで調節できる。粉砕方法は、特に限定されず、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機、気流式粉砕機等の粉砕装置を採用すればよい。分級方法は、特に限定されず、ふるい分け、気流分級等が挙げられる。
【0026】
〔組成〕
前記吸水性樹脂粉体を構成する吸水性樹脂としては、特に限定されず、従来公知の吸水性樹脂が使用できる。前記吸水性樹脂としては、合成吸水性樹脂が好ましい。
【0027】
前記吸水性樹脂粉体を構成する吸水性樹脂は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または加水分解により(a1)水溶性エチレン性モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーと、(b)内部架橋剤とを含有する単量体組成物を重合して得られたものが好ましい。
【0028】
((a1)水溶性エチレン性不飽和モノマー)
前記(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーは、分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する水溶性モノマーである。水溶性モノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つモノマーを意味する。
前記(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーは、少なくとも1個の水溶性置換基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーが好ましい。
【0029】
前記水溶性置換基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アミノ基、または、これらの塩、並びに、アンモニウム塩が挙げられる。前記水溶性置換基は、1種のみを有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。前記水溶性置換基としては、カルボキシ基の塩(カルボキシレート)、スルホ基の塩(スルホネート)、アンモニウム塩が好ましい。
【0030】
前記塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アンモニウム塩は、第1級~第3級アミンの塩または第4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。これらの塩のうち、吸収特性の観点から、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0031】
前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数3~30の不飽和カルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボキシ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステル等が挙げられる。なお、本発明の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。
【0032】
前記スルホ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α-メチルスチレンスルホン酸等の脂肪族又は芳香族ビニルスルホン酸;(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2-ジメチルエタンスルホン酸、3-(メタ)アクリロキシエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-(メタ)アクリルアミド-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリロイル含有アルキルスルホン酸;アルキル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等が挙げられる。
【0033】
前記スルホオキシ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの硫酸エステル;ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル等が挙げられる。
【0034】
前記ホスホノ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸モノエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸アルキルホスホン酸等が挙げられる。
【0035】
前記ヒドロキシ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アリルアルコール、(メタ)プロペニルアルコール等の炭素数3~15のモノエチレン性不飽和アルコール;炭素数2~20のアルキレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリアルキレン(炭素数2~4)グリコール(重量平均分子量100~2000)等の2~6価のポリオールのモノエチレン性不飽和カルボン酸エステル、モノエチレン性不飽和エーテル等が挙げられる。これらの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ-オキシエチレン-オキシプロピレンモノ(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0036】
前記カルバモイル基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;N-メチルアクリルアミド等のN-アルキル(炭素数1~8)(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-又はi-プロピルアクリルアミド等のN,N-ジアルキル(アルキルの炭素数1~8)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(炭素数1~8)(メタ)アクリルアミド;N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジヒドロキシアルキル(炭素数1~8)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0037】
アミノ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、モノエチレン性不飽和モノ-又はジ-カルボン酸のアミノ基含有エステル、モノエチレン性不飽和モノ-又はジ-カルボン酸のアミノ基含有アミドなどが挙げられる。モノエチレン性不飽和モノ-又はジ-カルボン酸のアミノ基含有エステルとしては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジ(ヒドロキシアルキル)アミノアルキルエステル、モルホリノアルキルエステル等が使用でき、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルフマレート、ジメチルアミノエチルマレート等が挙げられる。モノエチレン性不飽和モノ-又はジ-カルボン酸のアミノ基含有アミドとしては、モノアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、これらの他に、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン等のビニルピリジンも使用できる。
【0038】
((a2)加水分解性モノマー)
前記(a2)加水分解性モノマーは、50℃の水、必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により、加水分解されて、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成できるモノマーである。なお、(a2)加水分解性モノマーの加水分解は、重合中、重合後のいずれでもよいが、得られる吸水性樹脂の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0039】
前記(a2)加水分解性モノマーとしては、特に限定されないが、加水分解により水溶性置換基となる加水分解性置換基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和モノマーが好ましい。加水分解性置換基としては、酸無水物を含む基、エステル結合を含む基、シアノ基等が挙げられる。
【0040】
酸無水物を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数4~20の不飽和ジカルボン酸無水物等が用いられ、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
エステル結合を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のモノエチレン性不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル;酢酸ビニル、酢酸(メタ)アリル等のモノエチレン性不飽和アルコールのエステルが挙げられる。
シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、5-ヘキセンニトリル等の炭素数3~6のビニル基含有のニトリル化合物が挙げられる。
【0041】
前記(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0042】
前記(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーはそれぞれ、単独で、または、2種以上の混合物として使用してもよい。前記(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーと(a2)加水分解性モノマーとを併用する場合も同様である。また、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーと(a2)加水分解性モノマーを併用する場合、これらのモル比(a1/a2)は、75/25以上が好ましく、より好ましくは85/15以上、さらに好ましくは90/10以上、特に好ましくは91/9以上であり、99/1以下が好ましく、より好ましくは95/5以下、さらに好ましくは93/7以下、特に好ましくは92/8以下である。前記モル比(a1/a2)が、前記範囲内であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0043】
((a3)その他のビニルモノマー)
前記単量体組成物は、前記(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーの他に、これらと共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーを含有してもよい。前記(a3)その他のビニルモノマーとしては、疎水性ビニルモノマー等が使用できるが、これらに限定されるわけではない。
【0044】
前記(a3)その他のビニルモノマーとしては、(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマー、(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレンモノマー、(iii)炭素数5~15の脂環式エチレンモノマー等が挙げられる。
【0045】
前記(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン等のスチレン、ビニルナフタレン、ジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等が挙げられる。
前記(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセンおよびオクタデセン等のアルケン、ブタジエン、イソプレン等のアルカジエン等が挙げられる。
前記(iii)炭素数5~15の脂環式エチレンモノマーとしては、ピネン、リモネン、インデン等のモノエチレン性不飽和モノマー;シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等のポリエチレン性ビニル重合性モノマー等が挙げられる。
【0046】
前記(a3)その他のビニルモノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0047】
前記(a3)その他のビニルモノマーを用いる場合、(a3)その他のビニルモノマーの含有量(モル%)は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーの合計量(100モル%)に対して、0.01モル%~5モル%が好ましく、より好ましくは0.05モル%~3モル%、さらに好ましくは0.08モル%~2モル%、最も好ましくは0.1モル%~1.5モル%である。なお、吸収特性の観点から、(a3)その他のビニルモノマーの含有量は、0モル%であることが最も好ましい。
【0048】
((b)内部架橋剤)
前記(b)内部架橋剤としては、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤、(b2)水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、且つ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤、(b3)水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤等が挙げられる。
【0049】
前記(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤としては、炭素数8~12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレート、炭素数2~10のポリアリルアミン、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。これらの具体例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(重合度2~5)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
前記(b2)水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、且つ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤としては、炭素数6~8のエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、炭素数4~8の水酸基を有するエチレン性不飽和化合物、炭素数4~8のイソシアナト基を有するエチレン性不飽和化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
(b3)水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤としては、多価アルコール、多価グリシジル、多価アミン、多価アジリジン、多価イソシアネート等を挙げることができる。多価グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。多価アジリジン化合物としては、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス(3-(1-アジリジニル)プロピネート)、1,6-ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン-ビス-4、4’-N、N’-ジエチレンウレア等が挙げられる。多価イソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの内部架橋剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記(b)内部架橋剤としては、吸収性能等の観点から、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤が好ましく、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルがより好ましく、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタンまたはペンタエリスリトールトリアリルエーテルがさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが最も好ましい。
【0053】
前記(b)内部架橋剤としては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0054】
前記(b)内部架橋剤の含有量(モル%)は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーの合計量(100モル%)に対して、0.001モル%以上が好ましく、より好ましくは0.005モル%以上、さらに好ましくは0.01モル%以上であり、5モル%以下が好ましく、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。この範囲であると、吸収性能(特に吸収量及び吸収速度等)がさらに良好となる。
【0055】
前記単量体組成物を重合する方法としては、従来公知の方法が使用でき、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法が適応できる。また、重合時の重合液の形状として、薄膜状、噴霧状等であってもよい。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法等が適用できる。
【0056】
重合方法として懸濁重合法又は逆相懸濁重合法を適用する場合、必要に応じて、ショ糖エステル、リン酸エステル、ソルビタンエステル等の従来公知の分散剤、および、ポバール、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体、酸化ポリエチレン等の保護コロイド等を使用できる。また、逆相懸濁重合法の場合、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、トルエン、キシレン等の溶媒を使用して重合を行うことができる。重合方法としては、溶液重合法が好ましく、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、水溶液重合法がより好ましい。
【0057】
重合によって得られる含水ゲル(架橋重合体と水とからなる)は、必要に応じて細断することができる。細断後のゲルの大きさ(最長径)は、50μm~10cmが好ましく、100μm~2cmがより好ましく、1mm~1cmがさらに好ましい。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性がさらに良好となる。細断は、公知の方法で行うことができ、例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機等の従来の細断装置を使用して細断できる。
【0058】
重合に溶媒(有機溶媒、水等)を使用する場合、重合後に溶媒を留去することが好ましい。溶媒に有機溶媒を含む場合、留去後の有機溶媒の含有率(質量%)は、架橋重合体の質量(100質量%)に対して、0質量%~10質量%が好ましく、より好ましくは0質量%~5質量%、さらに好ましくは0質量%~3質量%、最も好ましくは0質量%~1質量%である。有機溶媒の含有率が、前記範囲内であると、吸水性樹脂粉体の吸収性能(特に保水量)がさらに良好となる。
【0059】
溶媒に水を含む場合、留去後の水分(質量%)は、架橋重合体(吸水性樹脂粉体)の質量(100質量%)に対して、0質量%~20質量%が好ましく、より好ましくは1質量%~10質量%、さらに好ましくは2質量%~9質量%、最も好ましくは3質量%~8質量%である。水分(質量%)が、前記範囲内であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0060】
なお、有機溶媒の含有率及び水分は、赤外水分測定器(KETT製、「JE400」等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W)により加熱したときの加熱前後の測定試料の質量減量から求められる。
【0061】
溶媒(水を含む。)を留去する方法としては、80℃~230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100℃~230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション、濾過等が適用できる。
【0062】
重合によって得られる含水ゲルを乾燥することで吸水性樹脂粉体(架橋重合体)が得られる。なお、吸水性樹脂粉体は、一般的に表面架橋処理が施されるが、本発明の吸水性樹脂粉体は表面架橋処理が施されていない。表面架橋処理を施さないことで、(a)純水吸収量および(d)1.0%塩水吸収量が向上し、また、(c)純水通液速度および(f)1.0%塩水通液速度が大きく低下する。
【0063】
[遮水シート]
本発明の遮水シートは、第1シートと、前記第1シートに積層された第2シートと、前記第1シートと第2シートとの間に配置された吸水層とを有する。
【0064】
(吸水性樹脂粉体)
前記遮水シートは、吸水層が、上述した(a)~(f)の要件を満足する吸水性樹脂粉体を含有することを特徴とする。上述した(a)~(f)の要件を満足する吸水性樹脂粉体を含有することで、汽水に晒される護岸にも使用でき、かつ、基材シートに穴が開いた場合でも漏水をより防止できる遮水シートが得られる。
【0065】
前記遮水シートは、吸水層の単位面積当たりの前記吸水性樹脂粉体の含有量が、350g/m2以上が好ましく、より好ましくは375g/m2以上、さらに好ましくは400g/m2以上であり、700g/m2以下が好ましく、より好ましくは675g/m2以下、さらに好ましくは650g/m2以下である。前記含有量が350g/m2以上であれば遮水性が良好となり、700g/m2以下であればシート施工時の作業性に優れる。
【0066】
前記吸水層は、前記吸水性樹脂粉体に加えて、他の吸水性繊維を含有してもよい。前記他の吸水性繊維としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ等のセルロース繊維、レーヨン繊維等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維が挙げられ、セルロース繊維が好ましい。吸水層が他の吸水性繊維を含有する場合、他の吸水性繊維の含有量は、吸水性樹脂粉体100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、12質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下である。他の吸水性繊維の含有量が0.5質量部以上であればシート施工時の作業性に優れ、12質量部以下であれば遮水性が良好となる。
【0067】
(第1シート、第2シート)
前記第1シートおよび第2シートは、漏水を防止するものであり、不透液性シートが使用される。また、前記第1シートおよび第2シートは、吸水性樹脂粉体が外部に漏れださないように、遮水シートの周縁部で互いに接合されている。前記第1シートおよび第2シートは、接着剤を用いて接合してもよいし、熱融着によって接合してもよい。
【0068】
前記不透液性シートは、遮水シートとして十分な強度を有し、かつ、液体の透過を防止できるものであれば特に限定されない。前記不透液性シートは柔軟性を有することが好ましく、材質としては、樹脂、エラストマー、ゴムが好ましい。前記樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。前記エラストマーとしては、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0069】
前記第1シートおよび第2シートの厚さは、遮水シートとして十分な強度を有し、かつ、液体の透過を防止できれば、特に限定されない。前記第1シートおよび第2シートの厚さは、10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、2000μm以下が好ましく、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは500μm以下が好ましい。
【0070】
(不織布)
前記遮水シートは、第1シートと吸水性樹脂粉体との間、および/または、第2シートと吸水性樹脂粉体との間に、不織布を配置してもよい。不織布を配置することで、第1シートまたは第2シートに破れが生じた場合でも、吸水性樹脂粉体が外部に漏れ出すことを抑制できる。前記不織布は、吸水層全面を覆うように配置されていることが好ましい。なお、前記不織布は、前記第1シートおよび第2シートの接合部には、配置しないことが好ましい。
【0071】
前記不織布の種類は特に限定されず、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布等を使用できる。前記不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリオレフィン樹脂繊維等が好ましい。
【0072】
前記不織布の目付は、50g/m2以上が好ましく、より好ましくは75g/m2以上、さらに好ましくは100g/m2以上であり、500g/m2以下が好ましく、より好ましくは400g/m2以下、さらに好ましくは300g/m2以下である。前記不織布の目付が50g/m2以上であれば吸水性樹脂粉体の漏出をより抑制でき、500g/m2以下であれば遮水シートの柔軟性が高くなり、取り扱い性が良好となる。
【0073】
前記遮水シートは、第1シートと吸水性樹脂粉体との間、および、第2シートと吸水性樹脂粉体との間に、不織布を配置する場合、これらの不織布をニードルパンチによって接合してもよい。これらの1対の不織布を接合することで、遮水シート内部で吸水性樹脂粉体が移行し、偏ることが抑制できる。
【0074】
(接着剤層)
前記遮水シートは、第1シートと吸水性樹脂粉体との間、および/または、第2シートと吸水性樹脂粉体との間に、不織布を配置する場合、不織布と第1シートとの間、および/または、不織布と第2シートとの間に、接着剤層を配置してもよい。接着剤層を配置することで、第1シートまたは第2シートに破れが生じた場合でも、吸水性樹脂粉体が外部に漏れ出すことが一層抑制できる。前記接着剤層は、吸水層全面を覆うように配置されていることが好ましい。前記接着剤層は、前記第1シートおよび第2シートの接合部にも配置し、接着剤層によって前記第1シートおよび第2シートを接合してもよい。
【0075】
前記接着剤層を構成する接着剤としては、ホットメルト接着剤が好ましい。前記ホットメルト接着剤としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66)、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂が使用できる。
【0076】
前記接着剤層の目付は、10g/m2以上が好ましく、より好ましくは20g/m2以上、さらに好ましくは30g/m2以上であり、100g/m2以下が好ましく、より好ましくは80g/m2以下、さらに好ましくは70g/m2以下である。前記接着剤層の目付が10g/m2以上であれば吸水性樹脂粉体の漏出をより抑制でき、100g/m2以下であれば遮水シートの柔軟性が高くなり、取り扱い性が良好となる。
【0077】
(表面不織布)
前記遮水シートは、第1シート、および/または、第2シートの外面側に表面不織布を配置してもよい。表面不織布を配置することで、第1シートや第2シートの破損を予防することができる。
【0078】
(遮水シート)
前記遮水シートの厚さは特に限定されず、1mm以上が好ましく、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上であり、10mm以下が好ましく、より好ましくは8mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。
【0079】
前記遮水シートの幅は、用途に応じて適宜調節すればよく、例えば、1m~3mが好ましい。また、吸水層の幅は、遮水シートの幅を100%としたとき、95%~98%が好ましい。前記遮水シートの長さは、特に限定されない。
【0080】
前記遮水シートの単位面積当たりの質量は、500g/m2以上が好ましく、より好ましくは750g/m2以上、さらに好ましくは1000g/m2以上であり、2000g/m2以下が好ましく、より好ましくは1750g/m2以下、さらに好ましくは1500g/m2以下である。なお、遮水シートの単位面積当たりの質量は、吸水層が配置されている部分の質量である。
【0081】
(実施態様)
以下、本発明の遮水シートについて、
図1を参照して説明する。
図1は、遮水シートの模式的断面図である。
【0082】
遮水シート1は、第1シート11と、前記第1シートに積層された第2シート12と、前記第1シート11と第2シート12との間に配置された吸水層20とを有する。前記第1シート11と第2シート12とは、平面視形状は同一に形成されており、遮水シートの周縁部において互いに接合されている。
【0083】
前記吸水層20には、前記吸水性樹脂粉体が配置されている。前記吸水層20の幅は、前記第1シート11および第2シート12の幅よりも狭く形成されており、第1シート11と第2シート12との接合部には配置されていない。
【0084】
前記第1シート11と吸水層20との間には、第1不織布31が配置されている。また、前記第2シート12と吸水層20との間には、第2不織布32が配置されている。前記第1不織布31および第2不織布32の平面視形状は、前記吸水層20の平面視形状と略同一に形成されており、吸水層20の全面を覆うように配置されている。
【0085】
前記第1シート11と第1不織布31との間には、第1接着剤層41が配置されている。また、前記第2シート12と第2不織布32との間には、第2接着剤層42が配置されている。前記第1接着剤層41および第2接着剤層42の平面視形状は、前記第1シート11および第2シート12の平面視形状と略同一に形成されている。前記第1シート11と第2シート12は、周縁部において、第1接着剤層41および第2接着剤層42により接合されている。
【0086】
前記遮水シート1は、第1シート11および第2シート12に孔が生じた場合でも、孔から侵入した水分によって吸水層20に配置されている吸水性樹脂粉体が膨張することで、漏水が防止される。
【実施例0087】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0088】
[評価方法]
(a)純水吸収量
吸収量の測定は、JIS K7223(1996)に準拠して行った。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801-1:2019)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製した。測定試料0.05gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れた。試料の入ったナイロン袋を、純水に浸漬させた。浸漬開始から60分後にナイロン袋を純水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、試料の質量(F1)を測定した。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量F0(g)を測定した。そして、これら質量F1、F0および試料の質量から、次式に従って、目的とする吸収量を算出した。
吸収量(g/g)=(F1-F0)/試料の質量
【0089】
(b)ボルテックス法による純水吸収速度
100mLのガラスビーカーに、純水50mLとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラーに載せた。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、純水を撹拌させる。試料2.0gを、撹拌中の純水の渦の中心部で液中に投入し、JIS K7224(1996)に準拠して該吸水性樹脂粉体の吸水速度(秒)を測定した。
具体的には、試料である吸水性樹脂粉体のビーカーへの投入が完了した時点でストップウォッチをスタートさせ、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)でストップウォッチを止め、その時間(秒)を吸水速度として記録した。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後に測定した。
【0090】
(c)純水通液速度
100mLのガラスビーカーに、試料である吸水性樹脂粉体0.02gと純水100mLを投入して60分間放置することで吸水性樹脂粉体を膨潤させた。別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、三商製、焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で円筒管内に、膨潤した測定試料を含む前記ビーカーの内容物全てを投入した。
次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、金網と測定試料とが接するようにし、更に測定試料に1.0kPaの荷重が加わるようおもりを載せた。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(つまり20mLの液が通過する)までに要する時間(T1)(秒)を計測し、通液速度を算出した。
純水通液速度(mL/min)=(T1)/20
測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後で測定した。純水通液速度は、0.11mL/min以下を「◎」、0.11mL/min超、0.33mL/min以下を「〇」、0.33mL/min超を「×」と評価した。
【0091】
(d)1.0%塩水吸収量
吸収量の測定は、JIS K7223(1996)に準拠して行った。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801-1:2019)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製した。測定試料1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を、塩水(濃度1.0質量%)に浸漬させる。浸漬開始から60分後にナイロン袋を塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、試料の質量(F1)を測定した。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量F0(g)を測定した。そして、これら質量F1、F0および試料の質量から、次式に従って、目的とする吸収量を算出した。
吸収量(g/g)=(F1-F0)/試料の質量
【0092】
(e)ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度
100mLのガラスビーカーに、塩水(濃度1.0質量%)50mLとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラーに載せた。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、塩水を撹拌させる。試料2.0gを、撹拌中の塩水の渦の中心部で液中に投入し、JIS K 7224(1996)に準拠して該吸水性樹脂粉体の吸水速度(秒)を測定した。具体的には、試料である吸水性樹脂粉体のビーカーへの投入が完了した時点でストップウォッチをスタートさせ、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)でストップウォッチを止め、その時間(秒)を吸水速度として記録した。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後に測定した
【0093】
(f)1.0%塩水通液速度
100mLのガラスビーカーに、試料である吸水性樹脂粉末0.32gと1.0%塩水100mLを投入して60分間放置することで吸水性樹脂粉体を膨潤させた。別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、三商製、焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で円筒管内に、膨潤した測定試料を含む前記ビーカーの内容物全てを投入した。
次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、金網と測定試料とが接するようにし、さらに測定試料に1.0kPaの荷重が加わるようおもりを載せた。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(つまり20mLの液が通過する)までに要する時間(T1)(秒)を計測し、通液速度を算出した。
1.0%塩水通液速度(mL/min)=(T1)/20
測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後で測定した。1.0%塩水通液速度は、0.67mL/min以下を「◎」、0.67mL/min超、2.0mL/min以下を「〇」、2.0mL/min超を「×」と評価した。
【0094】
[吸水性樹脂粉体の合成]
(合成例1)
アクリル酸(水溶性エチレン性不飽和モノマー(a1-1))155質量部、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(内部架橋剤(b1))0.698質量部、及び、脱イオン水350質量部を撹拌・混合しながら1℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を0.1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.310質量部、1%アスコルビン酸水溶液1.16質量部、及び、0.5%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]水溶液2.33質量部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が80℃に達した後、80±5℃で約10時間重合することにより含水ゲル(1)を得た。
【0095】
次に、この含水ゲル(1)500質量部をミンチ機(ROYAL製、「12VR-400K」)で細断しながら48.5%水酸化ナトリウム水溶液128質量部を添加して混合し、細断ゲル(2)を得た。さらに細断ゲル(2)を通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster製、「OSTERIZER BLENDER」)にて粉砕した後、目開き105μm及び1000μmのふるいを用いて105μm~1000μmの粒度に調整することにより、吸水樹脂粉末1を得た。
【0096】
(合成例2)
「目開き105μm及び1000μmのふるいを用いて105μm~1000μmの粒度に調整」を「目開き34μm及び105μmのふるいを用いて34μm~105μmの粒度に調整」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、吸水性樹脂粉末2を得た。
【0097】
(合成例3)
「目開き105μm及び1000μmのふるいを用いて105μm~1000μmの粒度に調整」を「目開き105μm及び4000μmのふるいを用いて105μm~4000mの粒度に調整に変更し、さらの4000μm以上の粒度のものを4質量%となる様に配合」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、吸水性樹脂粉末3を得た。
【0098】
(合成例4)
「ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(内部架橋剤(b1))0.698質量部」を「ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(内部架橋剤(b1))0.175質量部」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、吸水性樹脂粉末4を得た。
【0099】
(合成例5)
「目開き105μm及び1000μmのふるいを用いて105μm~1000μmの粒度に調整」を「目開き34μmのふるいを用いて34μm以下の粒度に調整」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、比較吸水性樹脂粉末1を得た。
【0100】
(合成例6)
「目開き105μm及び1000μmのふるいを用いて105μm~1000μmの粒度に調整」を「目開き105μm及び4000μmのふるいを用いて105μm~4000mの粒度に調整に変更し、さらの4000μm以上の粒度のものを7質量%となる様に配合」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、比較吸水性樹脂粉末2を得た。
【0101】
(合成例7)
「ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(内部架橋剤(b1))0.698質量部」を「ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(内部架橋剤(b1))0.0873質量部」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、比較吸水性樹脂粉末3を得た。
【0102】
(合成例8)
「ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(内部架橋剤(b1))0.698質量部」を「ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(内部架橋剤(b1))2.09質量部」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、比較吸水性樹脂粉末4を得た。
【0103】
(合成例9)
吸水樹脂粉末1の100質量部を高速撹拌(細川ミクロン製、高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)5質量部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、(A)架橋重合体を得た。この(A)架橋重合体100質量部に対し、(B)表面改質剤としてシリカ(東新化成製、アエロジル380)0.5質量部、及び、カルボキシ変性ポリシロキサン(信越化学工業製、X-22-3701E)0.02質量部を用いて、85℃で60分撹拌させた。得られた樹脂粉末を目開き105μm及び1000μmのふるいを用いて105μm~1000μmの粒度に調整することにより、比較吸水樹脂粉末5を得た。
【0104】
得られた吸水性樹脂粉末の物性を表1に示した。
【0105】
【0106】
[遮水シートの製造]
第1不織布(ポリエステル長繊維不織布(目付け量200g/m2))を長さ60cm、幅60cmに切り出し、この第1不織布の一方の面に合成ゴム系ホットメルト接着剤(モレスコ製、TN-202Z)を厚さが10μmとなる様に塗布した。
次に、前記第1不織布の接着剤を塗布した面において、第1不織布の周端から5cm内側の範囲(長さ50、幅50cm)に、上記で得た吸水性樹脂粉末のいずれか1種を目付け量500g/m2となるように均一に散布し、吸水層を形成した。
第2不織布(ポリエステル長繊維不織布(目付け量200g/m2))を長さ60cm、幅60cmに切り出し、この第2不織布の一方の面に合成ゴム系ホットメルト接着剤(モレスコ製、TN-202Z)を厚さが10μmとなる様に塗布した。前記第1不織布の吸水性樹脂粉末が散布された面に、接着剤が内側となるように第2不織布を積層し、得られた積層体をプレスして、吸収体を得た。
得られた吸水体の両面に、合成ゴム系ホットメルト接着剤(モレスコ製、TN-202Z)を厚さが80μmとなる様に塗布した後、両面に長さ60cm、幅60cmの不透液シート(ポリエチレンシート、厚さ50μm)を貼り合わせた。不透液シートの周縁を内側に折り返して接着、融着し遮水シートを得た。
【0107】
得られた遮水シートについて、釘穴遮水試験を行い、結果を表2に示した。
【0108】
(釘穴遮水試験)
図2に釘穴遮水試験機の構成を示し、
図3に釘穴遮水試験のサンプルの穴あけ部を示した。釘穴遮水試験機は、2つのフランジ付きアクリル製パイプ(内径R=20cm)91、92と、前記パイプの開口部に設けられた蓋93、94と、前記パイプ91、92の間に配置された金網(8メッシュ)95を有する。
試験片(遮水シート)96は、金網95上に載置し、スレート瓦用釘(長さ30mm、最大直径3.3mm、最小直径2.9mm、最大直径(最小直径)と最大直径(最小直径)との間隔1.3mm)を用いて5か所に貫通孔95aを開けた。貫通孔は、
図3に示すように、貫通孔の間隔dが5cmとなるように形成した。
金網95と試験片96を、パイプ91、92で上下から挟み、フランジ91a、92aをボルト97で固定した。上側のパイプ91内に、試験水98として純水又は1%食塩水1000gを入れた。その後、パイプ91、92の開口部はそれぞれ蓋93、94により密閉し、24時間後の液漏洩(下側パイプ92への液移動)の有無を確認した。
試験は、各遮水シート10個の試験片について、液温25℃と70℃で行い、下記の基準で評価した。
〇:液漏洩を生じた個数が0個
×:液漏洩を生じた個数が1~3個
××:液漏洩を生じた個数が4~6個
×××:液漏洩を生じた個数が7~9個
××××:液漏洩を生じた個数が10個
【0109】
【0110】
吸水性樹脂粉末1~4は、要件(a)~(f)を満たす吸水性樹脂粉体である。これらの吸水性樹脂粉末1~4を用いた遮水シートは、純水および1%食塩水に対して、液温25℃、70℃のいずれにおいても液漏洩を生じることがなく、遮水性に優れていた。
【0111】
比較吸水性樹脂粉末1はボルテックス法による純水吸収速度が10秒未満であり、粒子表面でのみ吸水し、継子状態となりやすい。この比較吸水性樹脂粉末1を用いた遮水シートでは、液温25℃では純水および1%食塩水に対して良好な遮水性を示したが、液温70℃では純水および1%食塩水のいずれにおいても液漏洩を生じた。
【0112】
比較吸水性樹脂粉末2は、ボルテックス法による純水吸収速度が100秒超、ボルテックス法による1.0%塩水吸収速度が100秒超であり、吸水速度が遅く、遮水性能を発揮するまでに長時間を要する。比較吸水性樹脂粉末2を用いた遮水シートは、液温25℃において純水および1%食塩水のいずれにおいても液漏洩を生じた。
【0113】
比較吸水性樹脂粉末3は、純水吸収量が1200g/g超であり、吸水後のゲル強度が弱い。この比較吸水性樹脂粉末3を用いた遮水シートは、液温25℃では純水および1%食塩水に対して良好な遮水性を示したが、液温70℃では純水および1%食塩水のいずれにおいても液漏洩を生じた。
【0114】
比較吸水性樹脂粉末4は、純水吸収量が450g/g未満、1.0%塩水吸収量が30g/gであり、吸収量が不足している。この比較吸水性樹脂粉末4を用いた遮水シートでは、液温25℃の1%食塩水において液漏洩を生じた。
【0115】
比較吸水性樹脂粉末5は、純水通液速度が0.33mL/min超、1.0%塩水通液速度が2.0mL/min超であり、吸水後の通液速度が速い。このような通液性能は、一般的な使い捨ておむつに使用される吸水性樹脂粉末が有する性能である。この比較吸水性樹脂粉末5を用いた遮水シートは、純水および1%食塩水に対して、液温25℃、70℃のいずれにおいても液漏洩を生じており、遮水性が劣っていた。