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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075169
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】アンテナ、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20240527BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186410
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】新開 浩
(72)【発明者】
【氏名】手塚 謙一
【テーマコード(参考)】
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J045AA05
5J045DA10
5J045EA08
5J045HA03
5J045MA07
5J046AA03
5J046AB13
5J046PA07
(57)【要約】
【課題】モアレの発生を抑制し、シート抵抗が低い安定したアンテナ特性が得られるアンテナ、及び表示装置を提供する。
【解決手段】放射導体21とは反対側の主面1bに透明導電体31が設けられるため、当該透明導電体31をグラウンド電位に接続することでアンテナ特性を安定させることができる。透明導電体31は、光透過性基材1から順に、銀又は銀合金を含む金属層33と、金属酸化物層34と、を含む。これにより、アンテナ300は、例えばグラウンド電極としてメッシュ状の導体パターンを用いる場合に比して、モアレ(干渉縞)を低減することができる。また、アンテナ300は、例えばグランウド電極としてITOを用いる場合に比して、シート抵抗を低減することができる。また、アンテナ300は、例えばグラウンド電極としてCuのベタ膜を用いる場合に比して、高い透過率を確保することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面、及び第2の主面を有する基材と、
前記基材の前記第1の主面に配置される放射導体と、
前記基材の前記第2の主面に配置され、前記基材の厚み方向において前記放射導体と重なる透明導電体と、を備え、
前記放射導体は、複数の開口を含む第1の導体パターンを有し、
前記透明導電体は、前記基材から順に、銀又は銀合金を含む金属層と、第1の金属酸化物層と、を含む、アンテナ。
【請求項2】
前記透明導電体のシート抵抗は、10Ω/sq以下である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記放射導体と前記透明導電体が重なる領域の平均透過率は70%以上である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記放射導体の平均透過率、及び前記透明導電体の平均透過率はそれぞれ85%以上である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記金属層は、前記透明導電体に含まれる層のうち、最も前記基材の前記第2の主面側に位置する層である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記透明導電体は、前記基材と前記金属層との間に第2の金属酸化物層を更に含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記第2の金属酸化物層の厚みは、前記第1の金属酸化物層の厚みより小さい、請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記第1の金属酸化物層の厚みは20nm以上、41nm以下である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記第1の金属酸化物層の厚みは20nm以上、41nm以下である、請求項6に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記第2の金属酸化物層の厚みは0nmより大きく、23nm以下である、請求項6に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記基材の前記第1の主面に配置され、前記放射導体と絶縁された第2の導体パターンを更に備え、
前記第2の導体パターンと前記透明導電体とは、前記基材を貫通するビア導体を介して接続される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のアンテナを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の一方の主面に配置された放射導体と、基材の他方の主面に配置されたITOやIZOなどの透明導電体、あるいはメッシュ導体パターンによって構成されるグランド電極と、を備えるアンテナが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-518070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のアンテナでは、モアレ(干渉縞)が発生したり、シート抵抗が高くなるなどの問題が生じる場合があった。従って、安定したアンテナ特性が得られるアンテナが求められていた。
【0005】
そこで、本開示は、モアレの発生を抑制し、シート抵抗が低い安定したアンテナ特性が得られるアンテナ、及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るアンテナは、第1の主面、及び第2の主面を有する基材と、基材の第1の主面に配置される放射導体と、基材の第2の主面に配置され、基材の厚み方向において放射導体と重なる透明導電体と、を備え、放射導体は、複数の開口を含む第1の導体パターンを有し、透明導電体は、基材から順に、銀又は銀合金を含む金属層と、第1の金属酸化物層と、を含む。
【0007】
本開示の一側面に係る表示装置は、上述のアンテナを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一側面によれば、モアレの発生を抑制し、シート抵抗が低い安定したアンテナ特性が得られるアンテナ、及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】アンテナを備える導電性フィルムの一実施形態を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】変形例に係る導電性フィルムを示す断面図である。
図4】表示装置の一実施形態を示す断面図である。
図5】アンテナの平面図である。
図6】ビア導体を示す断面図である。
図7】変形例に係るアンテナの拡大断面図である。
図8】透過率の測定のための試料を示す断面図である。
図9】測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は本開示の一実施形態に係るアンテナ300を備える導電性フィルムを示す平面図であり、図2図1のII-II線に沿う断面図である。導電性フィルム20は、アンテナ300を有し、アンテナ300は、配線体200を備える。図1及び図2に示される導電性フィルム20は、フィルム状の光透過性基材1(基材)と、光透過性基材1の一方の主面1a(第1の主面)上に設けられた導電性層5と、光透過性基材1の一方の主面1a上に設けられた光透過性樹脂層7Bと、光透過性基材1の他方の主面1b上に配置された透明導電体31と、を備える。導電性層5は、光透過性基材1の主面1aに沿った方向に延在し複数の開口3aを含むパターンを有する部分を含む導体部3と、導体部3の開口3a内を埋める絶縁樹脂部7Aとを有する。図2では、導電性層5がデフォルメされた状態で示されており、導体部3の幅が強調された状態で示されている。また、各層の厚みもデフォルメされた状態で示されている。各層の厚みの詳細については後述する。また、図1に示す例では、導電性フィルム20の一方の短辺付近に導電性層5が形成されているが、導電性層5が形成される位置は特に限定されず、長辺付近に導電性層5が形成されてもよい。
【0012】
光透過性基材1は、導電性フィルム20が表示装置に組み込まれたときに必要とされる程度の光透過性を有する。具体的には、光透過性基材1の全光線透過率が90~100%であってもよい。光透過性基材1のヘイズが0~5%であってもよい。
【0013】
光透過性基材1は、例えば透明樹脂フィルムであってもよく、その例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)、又はポリイミド(PI)のフィルムが挙げられる。あるいは、光透過性基材1がガラス基板であってもよい。
【0014】
例えば図3に示すように、光透過性基材1は、光透過性の支持フィルム11と、支持フィルム11上に順に設けられた中間樹脂層12及び下地層13とを有する積層体であってもよい。支持フィルム11は上記透明樹脂フィルムであることができる。下地層13は無電解めっき等によって導体部3を形成するために設けられる層である。他の方法によって導体部3を形成する場合、下地層13は必ずしも設けられなくてもよい。支持フィルム11と下地層13との間に中間樹脂層12が設けられていなくてもよい。
【0015】
光透過性基材1又はこれを構成する支持フィルム11の厚みは、10μm以上、20μm以上、又は35μm以上であってよく、500μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。光透過性基材1の誘電正接は、0.001以下であってよい。
【0016】
中間樹脂層12が設けられることにより、支持フィルム11と下地層13との間の密着性が向上し得る。下地層13が設けられない場合、中間樹脂層12が支持フィルム11と光透過性樹脂層7Bとの間に設けられることにより、支持フィルム11と光透過性樹脂層7Bとの間の密着性が向上し得る。
【0017】
中間樹脂層12は、樹脂及び無機フィラーを含有する層であってもよい。中間樹脂層12を構成する樹脂の例としては、アクリル樹脂が挙げられる。無機フィラーの例としては、シリカが挙げられる。
【0018】
中間樹脂層12の厚みは、例えば5nm以上、100nm以上、又は200nm以上であってもよく、10μm以下、5μm以下、又は2μm以下であってもよい。
【0019】
下地層13は、触媒及び樹脂を含有する層であってもよい。樹脂は、硬化性樹脂組成物の硬化物であってもよい。硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の例としては、アミノ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエステル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フラン樹脂、COPNA樹脂、ケイ素樹脂、ジクロペンタジエン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン-チオール樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物、アセナフチレン、並びに、不飽和二重結合、環状エーテル、及びビニルエーテル等の紫外線で重合反応を起こす官能基を含む紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0020】
下地層13に含まれる触媒は、無電解めっき触媒であってもよい。無電解めっき触媒は、Pd、Cu、Ni、Co、Au、Ag、Pd、Rh、Pt、In、及びSnから選ばれる金属であってもよく、Pdであってもよい。触媒は、1種類単独若しくは2種類以上の組合せであってもよい。通常、触媒は触媒粒子として樹脂中に分散している。
【0021】
下地層13における触媒の含有量は、下地層13全量を基準として、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であってもよく、50質量%以下、40質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。
【0022】
下地層13の厚みは、10nm以上、20nm以上、又は30nm以上であってもよく、500nm以下、300nm以下、又は150nm以下であってもよい。
【0023】
光透過性基材1は、支持フィルム11の光透過性樹脂層7B及び導体部3とは反対側の主面上に設けられた樹脂層を更に有していてもよい。樹脂層が設けられることにより、支持フィルム11と透明導電体31との間の密着性が向上し得る。樹脂層は、中間樹脂層12と同様の層であることができる。樹脂層の厚みは、5nm以上、50nm以上、又は500nm以上であってもよく、10μm以下、5μm以下、又は2μm以下であってもよい。
【0024】
導電性層5を構成する導体部3は、開口3aを含むパターンを有する部分を含む。開口3aを含むパターンは、互いに交差する複数の線状部によって形成された、規則的に配置された複数の開口3aを含むメッシュ状のパターンである。メッシュ状のパターンを有する導体部3は、例えばアンテナ300の放射導体及び給電線路として良好に機能することができる。また、導体部3は、開口3aを有さない平面状のパターンを備える。平面状のパターンを有する導体部3は、後述の端子及びグラウンドパッド部として機能する。なお、導電性層5における導体部3のパターンの構成の詳細については後述する。
【0025】
導体部3は、金属を含んでいてもよい。導体部3は、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、銀、金、白金及びスズから選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいてもよく、銅を含んでいてもよい。導体部3は、めっき法によって形成された金属めっきであってもよい。導体部3は、適切な導電性が維持される範囲で、リン等の非金属元素を更に含んでいてもよい。
【0026】
導体部3は、複数の層から構成される積層体であってもよい。また、導体部3は、光透過性基材1とは反対側の表層部として、黒化層を有していてもよい。黒化層は、導電性フィルムが組み込まれた表示装置の視認性向上に寄与し得る。
【0027】
絶縁樹脂部7Aは、光透過性を有する樹脂によって形成されており、導体部3の開口3aを埋めるように設けられており、通常、絶縁樹脂部7Aと導体部3とで平坦な表面が形成されている。
【0028】
光透過性樹脂層7Bは、光透過性を有する樹脂によって形成されている。光透過性樹脂層7Bの全光線透過率が90~100%であってもよい。光透過性樹脂層7Bのヘイズが0~5%であってもよい。
【0029】
光透過性基材1(又は光透過性基材1を構成する支持フィルムの屈折率)と、光透過性樹脂層7Bの屈折率との差が0.1以下であってもよい。これにより、表示画像の良好な視認性がより一層確保され易い。光透過性樹脂層7Bの屈折率(nd25)は、例えば、1.0以上であってもよく、1.7以下、1.6以下、又は1.5以下であってよい。屈折率は、反射分光膜厚計により測定することができる。光路長の均一性の観点から、導体部3、絶縁樹脂部7A、及び光透過性樹脂層7Bが実質的に同じ厚みを有していてもよい。
【0030】
絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bを形成する樹脂は、硬化性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物)の硬化物であってもよい。絶縁樹脂部7A及び/又は光透過性樹脂層7Bを形成する硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含み、その例としては、アクリル樹脂、アミノ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエステル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フラン樹脂、COPNA樹脂、ケイ素樹脂、ジクロペンタジエン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン-チオール樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物、アセナフチレン、及び不飽和二重結合、並びに、環状エーテル、ビニルエーテル等の紫外線で重合反応を起こす官能基を含む紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0031】
絶縁樹脂部7Aを形成する樹脂と光透過性樹脂層7Bを形成する樹脂とが同じであってもよい。同じ樹脂によって形成された絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bは屈折率が等しいことから、導電性フィルム20を透過する光路長の均一性がより一層向上することができる。絶縁樹脂部7Aを形成する樹脂と光透過性樹脂層7Bを形成する樹脂とが同じである場合、例えば1層の硬化性樹脂層からインプリント法等によってパターン形成することによって、絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bを容易に一括して形成することができる。
【0032】
透明導電体31は、光透過性基材1から順に、第2の金属酸化物層32と、銀又は銀合金を含む金属層33と、第1の金属酸化物層34と、を含む。透明導電体31は、光透過性基材1の厚み方向において導電性層5の放射導体21(図5参照)と重なるように配置される。透明導電体31は、グラウンド電位に接続される。
【0033】
第2の金属酸化物層32は、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム及び酸化チタンの4成分、又は、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化チタンの3成分を、主成分として含有してもよい。第2の金属酸化物層32は上記4成分を含むことによって、十分に高い導電性と透明性を兼ね備えることができる。第2の金属酸化物層32に含まれる酸化亜鉛は例えばZnOであり、酸化インジウムは例えばInである。酸化チタンは例えばTiOである。酸化スズは例えばSnOである。上記各金属酸化物における金属原子と酸素原子の比は、化学量論比からずれていてもよい。また、酸化数が異なる別の酸化物を含んでいてもよい。第2の金属酸化物層32は、酸化スズを含んでいてもよいが、金属層33に含まれる銀又は銀合金の腐食を低減する観点から、酸化スズ(SnO)の含有量は少なくてもよく、酸化スズを含有しなくてもよい。第2の金属酸化物層32は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、金属ターゲット又は金属酸化物ターゲットを用いることができる。第2の金属酸化物層32は、酸性エッチング液に溶解しない層であってもよい。
【0034】
第1の金属酸化物層34は、金属酸化物を含む透明の層である。有機層と接する第1の金属酸化物層34は、例えば、有機デバイスの有機層側に配置されたときに、正孔の移動を円滑にする機能を有する。有機層と接する第1の金属酸化物層34は、ITOを含む金属酸化物で構成されてもよい。第1の金属酸化物層34は、ITOを主成分として含有していてもよく、ITOと原料の不純物等に由来する不可避的不純物から構成されていてもよい。第1の金属酸化物層34におけるITOの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。第1の金属酸化物層34は組成が互いに異なる複数の金属酸化物膜から構成されてもよい。第1の金属酸化物層34が組成が互いに異なる複数の金属酸化物膜から構成される場合、金属層33と接する膜はITOとは異なる金属酸化物を主成分として含有する金属酸化物膜であり、有機層と接する膜は、ITOを主成分として含有する金属酸化物膜であってよい。ITOは、インジウムとスズの酸化物である。当該酸化物は、構成元素としてIn、Sn及びO(酸素)を有する複合酸化物である。また、第1の金属酸化物層34は、別の複合酸化物を含んでいてもよい。
【0035】
金属層33は、主成分として銀又は銀合金を含んでもよい。金属層33は、酸性エッチング液に溶解する層であってもよい。これによって、容易にパターニングすることができる。金属層33が高い透明性と優れた導電性を有することによって、透明導電体31の透過率を確保しつつ表面抵抗を十分に低くすることができる。金属層33は、銀以外の金属元素を含んでいてもよい。例えば、Cu、Nd、Pt、Pd、Bi、Sn及びSbからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を銀合金の構成元素又は金属単体として含有することによって、金属層33の耐環境性を向上することができる。銀合金の例としては、Ag-Pd、Ag-Cu、Ag-Pd-Cu、Ag-Nd-Cu、Ag-In-Sn、及びAg-Sn-Sbが挙げられる。銀合金は、Agを主成分として含有し、副成分として上述の各金属を含むものが好ましい。金属層33は、金属のみからなる層であってもよい。銀合金におけるAg以外の金属の含有量は、耐食性と透明性を一層向上させる観点から、例えば0.5~5質量%である。銀合金はAg以外の金属としてPdを含有することが好ましい。これによって、高温高湿環境下における耐食性を一層向上することができる。金属層33は、透明導電体31の導電性及び表面抵抗を調整する機能を有している。金属層33は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はCVD法などの真空成膜法によって作製することができる。これらのうち、成膜室を小型化できる点、及び成膜速度が速い点で、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法としては、DCマグネトロンスパッタリングが挙げられる。ターゲットとしては、金属ターゲットを用いることができる。
【0036】
導電性フィルム20は、例えばインプリント法によるパターン形成を含む方法によって製造することができる。導電性フィルム20を製造する方法の一例は、支持フィルムと支持フィルムの一方の主面上に設けられた、中間樹脂層及び触媒を含有する下地層とを有する光透過性基材1を準備することと、光透過性基材1の下地層側の主面1a上に、硬化性樹脂層を形成させることと、凸部を有するモールドを用いたインプリント法により、下地層が露出するトレンチを形成させることと、トレンチを充填する導体部3を、下地層から金属めっきを成長させる無電解めっき法により形成することとを含む。硬化性樹脂層にモールドが押し込まれた状態で硬化性樹脂層を硬化させることにより、モールドの凸部の反転形状を有する開口を含むパターンを有する絶縁樹脂部7Aと光透過性樹脂層7Bとが一括して形成される。開口を含むパターンを有する絶縁樹脂部7Aを形成する方法は、インプリント法に限られず、フォトリソグラフィー等の任意の方法を適用できる。
【0037】
以上例示的に説明された導電性フィルムを、例えば平面状の透明アンテナとして表示装置に組み込むことができる。表示装置は、例えば、液晶表示装置、又は有機EL表示装置であってもよい。図4は、導電性フィルムが組み込まれた表示装置の一実施形態を示す断面図である。図4に示される表示装置100は、画像表示領域10Sを有する画像表示部10と、導電性フィルム20と、偏光板30と、カバーガラス40とを備える。導電性フィルム20、偏光板30、及びカバーガラス40は、画像表示部10の画像表示領域10S側において、画像表示部10側からこの順に積層されている。表示装置の構成は図4の形態に限られず、必要により適宜変更が可能である。例えば、偏光板30が画像表示部10と導電性フィルム20との間に設けられてもよい。画像表示部10は、例えば液晶表示部であってもよい。偏光板30及びカバーガラス40として、表示装置において通常用いられているものを用いることができる。偏光板30及びカバーガラス40は、必ずしも設けられなくてもよい。画像表示部10の画像表示領域10Sから出射される画像表示のための光が、導電性フィルム20を含む均一性の高い光路長の経路を通過する。これにより、モワレが抑制された均一性の高い良好な画像表示が可能である。
【0038】
次に、図5を参照して、本開示の実施形態に係る配線体200を備えるアンテナ300の構成について詳細に説明する。アンテナ300は、前述の導電性層5を含んで構成される。図5は、アンテナ300の平面図である。図5は、配線体200を備えるアンテナ300の一部を拡大して示している。なお、以降の説明においては、主面1aと平行な平面に対してXY座標を設定して、説明を行うものとする。Y軸方向は、主面1aに沿った方向であり、図1に示す例においては、導電性フィルム20の辺部20aと直交する方向に対応する。導電性フィルム20の中央側をY軸方向の正側とし、導電性フィルム20の外周側をY軸方向の負側とする。X軸方向は、主面1aに沿ってY軸方向と直交する方向であり、図1に示す例においては、導電性フィルム20の辺部20aが延びる方向に対応する。導電性フィルム20の辺部20aが延びる一方側をX軸方向の正側とし、他方側をX軸方向の負側とする。
【0039】
アンテナ300の導電性層5は、放射導体21と、給電線路25A,25Bと、端子22A,22Bと、グラウンドパッド部24A,24B,24C(第2の導体パターン)と、を有する。アンテナ300は、Y軸方向に平行な中心線CLに対して線対称な構成を有する。
【0040】
放射導体21は、アンテナ300として信号を放射する領域である。放射導体21は、円形状の形状を有する。放射導体21の中心は、中心線CL上に配置される。放射導体21は、導電性フィルム20の辺部20aからY軸方向の正側へ離間した位置に配置される。放射導体21は、直径Rの寸法を有する。
【0041】
給電線路25A,25Bは、放射導体21に給電を行う線路である。つまり、アンテナ300は、2偏波アンテナとして機能する。例えば、給電線路25Aの傾斜部25bが延びる方向の斜め偏波信号を、給電線路25Aを介して給電し、給電線路25Bの傾斜部25bの延びる方向の斜め偏波信号を、給電線路25Bを介して給電することができる。給電線路25A,25Bは、導電性フィルム20の辺部20aに対して垂直に延びる垂直部25aと、Y軸方向に対して傾斜する傾斜部25bと、を有する。給電線路25Aの垂直部25aは、導電性フィルム20の辺部20a側に形成された端子22AからY軸方向の正側へ延びる。給電線路25Aの垂直部25aは、中心線CLからX軸方向の負側へ離間した位置にて、当該中心線CL(すなわちY軸方向)と平行に延びる。
【0042】
給電線路25Aの傾斜部25bは、垂直部25aのY軸方向の正側の端部から、Y軸方向の正側へ向かうに従って中心線CL側(すなわちX軸方向の正側)へ近付くように傾斜する。傾斜部25bのY軸方向の正側の端部は、放射導体21の外周縁21aに接続される。給電線路25Aは、垂直部25a及び傾斜部25bにおいて一定の幅寸法W1を有する。また、給電線路25Aは、垂直部25aの長さ寸法と傾斜部25bの長さ寸法の合計寸法である線路長L1を有する。ここで、幅寸法W1は、平面状のアンテナ300の面内方向における垂直部25a及び傾斜部25bの延在方向と直交する方向の寸法であり、線路長L1は、平面状のアンテナ300の面内方向における垂直部25a及び傾斜部25bの延在方向に沿った寸法である。
【0043】
なお、図5に示す例では、給電線路25Aの垂直部25aは、放射導体21のX軸方向の負側の端部よりも、X軸方向の負側へ離間した位置に配置される。また、給電線路25Aの垂直部25aのY軸方向の正側の端部(すなわち傾斜部25bとの接続部)は、放射導体21のY軸方向の負側の端部よりも、Y軸方向の負側へ離間した位置に配置される。ただし、垂直部25a及び傾斜部25bの配置及び形状は、特に限定されるものではない。給電線路25Bは、給電線路25Aと中心線CLを基準として線対称な構造を有する。本実施形態では、給電線路25Aの傾斜部25bと給電線路25Bの傾斜部25bは、給電線路25Aの傾斜部25bを延ばした仮想線と給電線路25Bの傾斜部25bを延ばした仮想線とが直交するように放射導体21の外周縁21aに接続されている。つまり、給電線路25Aの傾斜部25bを延ばした仮想線と給電線路25Bの傾斜部25bを延ばした仮想線とが成す角度は90度である。
【0044】
端子22A,22Bは、給電線路25A,25Bにそれぞれ接続される端子である。端子22A,22Bは、外部の入出力端子と接続されることで、給電線路25A,25Bを介して放射導体21に給電する。端子22A,22Bは、導電性フィルム20の辺部20a付近に配置される。端子22A,22Bは、給電線路25A,25Bの垂直部25aのY軸方向の負側の端部から、辺部20aまでY軸方向の負側へ延びる。端子22A,22Bは、一定の幅寸法W2にて、Y軸方向に延びる。端子22A,22Bは、長さ寸法L2にてY軸方向に延びる。ここで、幅寸法W2は、平面状のアンテナ300の面内方向における端子22A,22Bの延在方向と直交する方向の寸法であり、長さ寸法L2は、平面状のアンテナ300の面内方向における端子22A,22Bの延在方向に沿った寸法である。
【0045】
グラウンドパッド部24A,24B,24Cは、電気的にグラウンド状態となる領域である。グラウンドパッド部24A,24B,24Cは、図示されないグラウンド端子と接続される。グラウンドパッド部24A,24B,24Cは、端子22A,22Bに対して隙間GPを空けて配置されることで、端子22A,22Bと絶縁されている。グラウンドパッド部24Aは、端子22A,22B間の領域において、辺部20aに沿ってX軸方向に延びるように形成される。グラウンドパッド部24Bは、端子22AのX軸方向の負側の領域において、辺部20aに沿ってX軸方向に延びるように形成される。グラウンドパッド部24Cは、端子22BのX軸方向の正側の領域において、辺部20aに沿ってX軸方向に延びるように形成される。グラウンドパッド部24A,24B,24Cは、Y軸方向において一定の幅寸法にて、X軸方向に帯状に延びる。グラウンドパッド部24A,24B,24Cの幅寸法は、端子22A,22Bの長さ寸法L2と同じである。
【0046】
上述のように、信号ラインである端子22Aは、X軸方向の両側からグラウンドパッド部24A,24Bに挟まれる構造を有する。信号ラインである端子22Bは、X軸方向の両側からグラウンドパッド部24A,24Cに挟まれる構造を有する。このように、端子22A,22Bは、コプレナー線路である。
【0047】
図5に示すように、アンテナ300は、導体部3として、メッシュ状の導体パターン50(第1の導体パターン)を有する。アンテナ300の構成要素のうち、放射導体21及び給電線路25A,25Bは、当該メッシュ状の導体パターン50を有する。メッシュ状の導体パターン50は、複数の第1の導電線51、及び複数の第2の導電線52を含む。第1の導電線51は、Y軸方向に平行に延びる直線状の導体部3である。複数の第1の導電線51は、X軸方向に互いに離間するように配置される。複数の第1の導電線51は、等ピッチで離間するように配置される。第2の導電線52は、X軸方向に平行に延びる直線状の導体部3である。複数の第2の導電線52は、Y軸方向に互いに離間するように配置される。複数の第2の導電線52は、等ピッチで離間するように配置される。導電線51,52の太さは特に限定されないが、例えば1μm以上、2.5μm以下、3μmμm以下に設定されてよい。導体パターン50の厚みは2.0μm以上であってよく、4.0μm以下であってよい。また、導電線51,52のピッチも特に限定されないが、例えば50~300μmに設定されてよい。なお、第1の導電線51は、Y軸方向に延びていれば、Y軸方向と平行でなくても構わず、第2の導電線52は、X軸方向に延びていれば、X軸方向と平行でなくても構わない。
【0048】
本実施形態では、放射導体21及び給電線路25A,25Bは、外周縁を構成する端部導電線を有する。放射導体21は、この端部導電線により形成される形状が円形状となっている。なお、円形状の放射導体21は、厳密な真円形状に限られず、製造誤差等により生じるばらつきは含まれるものとする。また、放射導体21の外周縁を構成する端部導電線は、曲線だけで構成されるものだけでなく、一部に直線、波線部分などが含まれていても構わない。さらに、放射導体21及び給電線路25A,25Bは、端部導電線を含まなくてもよく、この場合、メッシュ状の導体パターン50に含まれる第1の導電線51又は第2の導電線52の先端を結んだ形状が円形状となっていればよい。
【0049】
端子22は、当該端子22の略全域に平面状に広がる第2の導体層56を有する。なお、「端子22」と称した場合、端子22Aと端子22Bを区別せず両方を指しているものとする。図5においては、端子22全域に第2の導体層56が形成されているが、第2の導体層56の面積は特に限定されない。例えば、第2の導体層56の面積は、端子22全体の面積に対する95%以上の面積であってよい。端子22のうち、第2の導体層56以外の箇所は、導体パターン50が存在していてよい。なお、グラウンドパッド部24A,24B,24Cも、第2の導体層56を有する。ただし、グラウンドパッド部24A,24B,24Cは、メッシュ状の導体パターン50を有する構成であってもよい。
【0050】
次に、図2に戻り、透明導電体31の更なる詳細について説明する。第1の金属酸化物層34の厚みは20nm以上であってよく、25nm以上であってよい。また、第1の金属酸化物層34の厚みは41nm以下であってよく、35nm以下であってよい。第2の金属酸化物層32の厚みは0nmより大きく、5nm以上であってよい。第2の金属酸化物層32の厚みは23nm以下であってよく、15nm以下であってよい。金属層33の厚みは5nm以上であってよく、25nm以下であってよい。第2の金属酸化物層32の厚みは、第1の金属酸化物層34の厚みより小さい。
【0051】
透明導電体31のシート抵抗は、10Ω/sq以下であってよく、7Ω/sq以下であってよい。シート抵抗は、一様の厚さを持つフィルム状物質の電気抵抗を表す値である。透明導電体31のシート抵抗は、第1の金属酸化物層34の下面の電気抵抗である。透明導電体31のシート抵抗は、四端子抵抗測定器によって測定される。なお、放射導体21のシート抵抗は、2Ω/sq以下であってよく、透明導電体31のシート抵抗以下であってよい。
【0052】
アンテナ300のうち、放射導体21と透明導電体31が重なる領域の平均透過率は70%以上であってよく、75%以上であってよい。本実施形態では、少なくとも放射導体21が形成されている円形の領域(図5参照)と厚み方向に対向する領域には、透明導電体31が配置されている。従って、放射導体21が形成されている円形の領域が、放射導体21と透明導電体31が重なる領域となる。平均透過率は、ヘイズメーターを用いて測定される。
【0053】
放射導体21の平均透過率、透明導電体31の平均透過率はそれぞれ85%以上であってよく、87%以上であってよい。放射導体21の平均透過率は、光透過性基材1上に放射導体21を形成し、透明導電体31を除いたものの平均透過率である。透明導電体31の平均透過率は、光透過性基材1上に透明導電体31を形成し、放射導体21を除いたものの平均透過率である。平均透過率の測定方法は、上述と同様である。
【0054】
図6に示すように、光透過性基材1の主面1aには、放射導体21と絶縁されたグラウンドパッド部24A,24B,24Cが配置されている。グラウンドパッド部24A,24B,24Cと透明導電体31とは、光透過性基材1を貫通するビア導体36を介して接続される。ビア導体36の本数、及び位置は特に限定されない。
【0055】
図7に示すように、第2の金属酸化物層32の厚みが0nmとなることで、金属層33は、光透過性基材1の主面1bと接するように配置されてよい。すなわち、透明導電体31は、光透過性基材1側から順に、金属層33、及び第1の金属酸化物層34が設けられてよい。言い換えれば、金属層33が、透明導電体31に含まれる層のうち、最も光透過性基材1の主面1b側に位置する層となる。この場合の第1の金属酸化物層34の厚み、及び金属層33の厚みの条件は、前述と同様である。
【0056】
次に、図8及び図9を参照して、第2の金属酸化物層32の厚みに関する実験について説明する。図8(a)は、実施例1に係るアンテナの透明導電体31の透過率を測定するための試料150を示す概略断面図である。図8(b)は、実施例2に係るアンテナの透明導電体31の透過率を測定するための試料151を示す概略断面図である。試料150,151は、光透過性基材1、及び主面1b上に配置された透明導電体31を有し、主面1aが露出している。実施例1の試料150では、第1の金属酸化物層34の厚みを30nmとし、金属層33の厚みを8nmとし、第2の金属酸化物層32の厚みを0nm~60nmに範囲で変化させた。実施例2の試料151では、第2の金属酸化物層32の厚みを30nmとし、金属層33の厚みを8nmとし、第1の金属酸化物層34の厚みを0nm~60nmに範囲で変化させた。試料150,151に対して、主面1a側から光Lを入射させ、透明導電体31側へ透過した光を測定することで、透過率を計算した。光Lの波長を600nmとした。当該透過率の結果を図9に示す。図9に示すように、実施例2においては、透過率が85%以上となる第1の金属酸化物層34の厚みの範囲が20nm~41nmの範囲であった。実施例1においては、透過率が85%以上となる第2の金属酸化物層32の厚みの範囲が0nm~23nmの範囲であった。このことより、光透過性基材1側の第2の金属酸化物層32の厚みを薄くすることで、所望の透過率を得ることができることが理解される。
【0057】
次に、本実施形態に係るアンテナ300、及び表示装置100の作用・効果について説明する。
【0058】
本開示の一側面に係るアンテナ300は、主面1a、及び主面1bを有する光透過性基材1と、光透過性基材1の主面1aに配置される放射導体21と、光透過性基材1の主面1bに配置され、光透過性基材1の厚み方向において放射導体21と重なる透明導電体31と、を備え、放射導体21は、複数の開口3aを含む導体パターン50を有し、透明導電体31は、光透過性基材1から順に、銀又は銀合金を含む金属層33と、第1の金属酸化物層34と、を含む。
【0059】
アンテナ300は、光透過性基材1の主面1aに配置される放射導体21と、光透過性基材1の主面1bに配置され、光透過性基材1の厚み方向において放射導体21と重なる透明導電体31と、を備える。このように放射導体21とは反対側の主面1bに透明導電体31が設けられるため、当該透明導電体31をグラウンド電位に接続することでアンテナ特性を安定させることができる。放射導体21は、複数の開口3aを含む導体パターン50を有する。これに対し、透明導電体31は、光透過性基材1から順に、銀又は銀合金を含む金属層33と、第1の金属酸化物層34と、を含む。これにより、アンテナ300は、例えばグラウンド電極としてメッシュ状の導体パターンを用いる場合に比して、モアレ(干渉縞)を低減することができる。また、アンテナ300は、例えばグランウド電極としてITOを用いる場合に比して、シート抵抗を低減することができる。また、アンテナ300は、例えばグラウンド電極としてCuのベタ膜を用いる場合に比して、高い(例えば70%以上)透過率を確保することができる。以上より、モアレの発生を抑制し、シート抵抗が低い安定したアンテナ特性が得られる。
【0060】
透明導電体31のシート抵抗は、10Ω/sq以下であってよい。この場合、透明導電体31のグラウンド電極としての抵抗値を十分に低くすることができるため、アンテナ特性を向上できる。
【0061】
放射導体21と透明導電体31が重なる領域の平均透過率は70%以上であってよい。この場合、グラウンド電極としての透明導電体31を設けた場合であっても、アンテナとして十分に透過率を高くすることができる。
【0062】
放射導体21の平均透過率、及び透明導電体31の平均透過率はそれぞれ85%以上であってよい。この場合、アンテナ300の層として十分に透過率を高くすることができる。
【0063】
金属層33は、透明導電体31に含まれる層のうち、最も光透過性基材1の主面1b側に位置する層であってよい。この場合、アンテナとして十分に透過率を高くすることができる。
【0064】
透明導電体31は、光透過性基材1と金属層33との間に第2の金属酸化物層32を更に含んでよい。この場合、金属層33の耐腐食性を向上することができる。
【0065】
第2の金属酸化物層32の厚みは、第1の金属酸化物層34の厚みより小さくてよい。この場合、透明導電体31の透過率を高くすることができる。
【0066】
第1の金属酸化物層34の厚みは20nm以上、41nm以下であってよい。この場合、透明導電体31の透過率を高くすることができる。
【0067】
第2の金属酸化物層32の厚みは0nmより大きく、23nm以下であってよい。この場合、透明導電体31の透過率を高くすることができる。
【0068】
アンテナ300は、光透過性基材1の主面1aに配置され、放射導体21と絶縁されたグラウンドパッド部24A,24B,24Cを更に備え、グラウンドパッド部24A,24B,24Cと透明導電体31とは、光透過性基材1を貫通するビア導体36を介して接続されてよい。この場合、グラウンド電極としての透明導電体31とグラウンドパッド部24A,24B,24Cとを接続することで、グラウンドパッド部24A,24B,24Cをグラウンド電位にすることができる。また、ビア導体36を用いることで、光透過性基材1の外部に、透明導電体31とグラウンドパッド部24A,24B,24Cとを接続する導体が露出することを抑制できる。
【0069】
本開示の一側面に係る表示装置100は、上述のアンテナ300を備える。
【0070】
上述の表示装置100によれば、上述のアンテナ300と同様な作用・効果を得ることができる。
【0071】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、図5に示す構成は導電性層5の構成の一例に過ぎず、放射導体21、及び端子22及びグラウンド部23の形状を適宜変更してもよい。
【0073】
図1は導電性フィルムの全体構成の一例に過ぎず、導電性フィルムの中で導電性層をどのような範囲、形状で形成してもよい。
【0074】
導電性フィルムの適用装置として表示装置を例示したが、他の装置に導電性フィルムを適用してもよい。例えば、建物や自動車等のガラスなどに導電性フィルムを適用してもよい。
【0075】
[形態1]
一方の第1の主面、及び他方の第2の主面を有する基材と、
前記基材の前記第1の主面に配置される放射導体と、
前記基材の前記第2の主面に配置され、前記基材の厚み方向において前記放射導体と重なる透明導電体と、を備え、
前記放射導体は、複数の開口を含む第1の導体パターンを有し、
前記透明導電体は、前記基材から順に、銀又は銀合金を含む金属層と、第1の金属酸化物層と、を含む、アンテナ。
[形態2]
前記透明導電体のシート抵抗は、10Ω/sq以下である、形態1に記載のアンテナ。
[形態3]
前記放射導体と前記透明導電体が重なる領域の平均透過率は70%以上である、形態1又は2に記載のアンテナ。
[形態4]
前記放射導体の平均透過率、及び前記透明導電体の平均透過率はそれぞれ85%以上である、形態1~3の何れか一項に記載のアンテナ。
[形態5]
前記金属層は、前記透明導電体に含まれる層のうち、最も前記基材の前記第2の主面側に位置する層である、形態1~4の何れか一項に記載のアンテナ。
[形態6]
前記透明導電体は、前記基材と前記金属層との間に第2の金属酸化物層を更に含む、形態1~5の何れか一項に記載のアンテナ。
[形態7]
前記第2の金属酸化物層の厚みは、前記第1の金属酸化物層の厚みより小さい、形態6に記載のアンテナ。
[形態8]
前記第1の金属酸化物層の厚みは20nm以上、41nm以下である、形態1~7の何れか一項に記載のアンテナ。
[形態9]
前記第1の金属酸化物層の厚みは20nm以上、41nm以下である、形態6に記載のアンテナ。
[形態10]
前記第2の金属酸化物層の厚みは0nmより大きく、23nm以下である、形態6に記載のアンテナ。
[形態11]
前記基材の前記第1の主面に配置され、前記放射導体と絶縁された第2の導体パターンを更に備え、
前記第2の導体パターンと前記透明導電体とは、前記基材を貫通するビア導体を介して接続される、形態1~10の何れか一項に記載のアンテナ。
[形態12]
形態1~11の何れか一項に記載のアンテナを備える、表示装置。
【符号の説明】
【0076】
1…光透過性基材(基材)、1a…主面(第1の主面)、1b…主面(第2の主面)、21…放射導体、24A,24B,24C…グラウンドパッド部(第2の導体パターン)、31…透明導電体、32…第2の金属酸化物層、33…金属層、34…第1の金属酸化物層、36…ビア導体、50…導体パターン(第1の導体パターン)、100…表示装置、300…アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9