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特開2024-75175オートファジー活性化剤及びそれを用いた皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075175
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】オートファジー活性化剤及びそれを用いた皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9728 20170101AFI20240527BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61Q19/00
A61K8/9789
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186423
(22)【出願日】2022-11-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520061767
【氏名又は名称】紅道科研センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】付 子華
(72)【発明者】
【氏名】森山 博由
(72)【発明者】
【氏名】森山 麻里子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA111
4C083CC02
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】生体組織を構成する細胞でオートファジーを活性化できるオートファジー活性化剤を提供する。
【解決手段】本発明に係るオートファジー活性化剤は、ガラクトミセス培養抽出物を有効成分として含有する。ガラクトミセス培養抽出物には、ラパマイシンを上回る高いオートファジー活性作用があることから、当該抽出物を有効成分とすることで、優れたオートファジー活性化剤を得ることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトミセス培養抽出物を有効成分として含むオートファジー活性化剤。
【請求項2】
前記ガラクトミセス培養抽出物の含有量が、1-5質量%であることを特徴とする請求項1に記載のオートファジー活性化剤。
【請求項3】
ムラサキバレンギク抽出物を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のオートファジー活性化剤。
【請求項4】
テンニンカ果実抽出物を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のオートファジー活性化剤。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のオートファジー活性化剤を用いた皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの表皮を構成する細胞でオートファジーを活性化できるオートファジー活性化剤及びそれを用いた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オートファジーとは、細胞質の一部が隔離膜によって取り囲まれてオートファゴソームとよばれる膜構造を形成し、このオートファゴソームがリソソームと融合してオートリソソームとなって、老廃物や不要な蛋白質等を分解する細胞内代謝機構である。近年、老化とオートファジーの関連についての研究により、オートファジーによる分解産物(アミノ酸やペプチド)が新たなタンパク質合成や抗原提示に利用されることが判明している。すなわち、オートファジーによって不要となった成分が持続的に除去されると共に、新たに合成された成分に置換されることで、細胞の恒常性を保つことができることが知られている。
【0003】
また、シミ、ソバカスや日焼け後の皮膚の色素沈着は、皮膚内に存在するメラノサイトの活性化によりメラニン産生が進んだ結果として生じるものであり、肌の悩みの原因となっている。そして、皮膚細胞内におけるメラニンの取り込み、蓄積、分解に、オートファジーか関与することが知られ、オートファジー活性化剤を用いて、メラニン量を調整し、皮膚色の制御する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6075891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体組織内、特に、ヒトの表皮を構成する細胞でオートファジーを活性化できるオートファジー活性化剤及びそれを用いた皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ガラクトミセス培養抽出物を有効成分として含むオートファジー活性化剤である。
【0007】
上記オートファジー活性化剤において、前記ガラクトミセス培養抽出物の含有量が、1-5質量%であることが好ましい。
【0008】
上記オートファジー活性化剤において、ムラサキバレンギク抽出物を更に含有することが好ましい。
【0009】
上記オートファジー活性化剤において、テンニンカ果実抽出物を更に含有することが好ましい。
【0010】
上記オートファジー活性化剤は、皮膚外用剤に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラクトミセス培養抽出物には、ラパマイシンを上回る高いオートファジー活性作用があることから、当該抽出物を有効成分とすることで、優れたオートファジー活性化剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】細胞毒性試験1(エキス1、2、3)の結果を示す図。
図2】オートファジー活性測定試験1(エキス1、2、3)の結果を示す図。
図3】細胞毒性試験2(エキス4、5)の結果を示す図。
図4】オートファジー活性測定試験2(エキス3、4、5)の結果を示す図。
図5】オートファジー活性測定試験3(エキス3、エキス4、エキス5、エキス3+4、エキス3+5)の結果を示す図。
図6】オートファジー活性測定試験4(エキス3、エキス3+4+5)の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るオートファジー活性化剤及びそれを用いた皮膚外用剤について説明する。
本発明の実施形態に係るオートファジー活性化剤は、ガラクトミセス培養抽出物(エキス3)を有効成分として含む。また、上記ガラクトミセス培養抽出物の含有量は、後述する試験1の結果で示されるように、1-5質量%であることが好ましい。
また、本実施形態に係るオートファジー活性化剤は、ムラサキバレンギク抽出物(エキス4)を更に含有することが好ましい。更に、オートファジー活性化剤は、テンニンカ果実抽出物(エキス5)を含有していてもよい。
【0014】
本件発明者らは、本実施形態に係るオートファジー活性化剤であるガラクトミセス培養抽出物を見出すにあたり、当該ガラクトミセス培養抽出物だけでなく、サーマスサーモフィルス/バチルス培養抽出物(エキス1)及びサッカロミセス/コメ発酵液抽出物(エキス2)について、オートファジー活性を有しているか否かを試験した。そして、上記3エキスのオートファジー活性を対比し、ガラクトミセス培養抽出物(エキス3)のオートファジー活性の有効性を検証することとした。
【0015】
上記検証を行うため、ガラクトミセス培養抽出物(エキス3)を下記の手順に従って生成した。
(1)粉末化工程:まず、米を粉末化して200メッシュでろ過した。得られた米粉は、米粉1に対して水1000の割合で混ぜて、65℃~80℃で3時間ゲル化する。そして、酵素を活性化するため、得られたゲルをクエン酸でpHを4に調整する。
(2)液化、糖化工程:pHを調整したゲルに純水を加えて得た溶液を45~55℃に冷却する。そして、ガラクトミセス(α-アミラーゼ、グルコアミラーゼを含む)を接種し、酵素の活性化によるデンプンの液化、糖化を1時間行う。
(3)再接種工程:酵素の触媒効果を強化するため、溶液を28~30℃に冷却した後、ガラクトミセスもう一回接種する。
(4)発酵工程:糖化した後、28~30℃で静置発酵し、2~3日間の培養を行う。
(5)遠心分離工程:醪と発酵液の分離するため、上記培養液を15000rpm/minで遠心分離器に供し、不溶性固形物を沈殿させて、水溶性発酵活性物のみを回収する。
(6)ろ過工程:回収された水溶性発酵活性物をNaOHでpHを調整し、調整した発酵活性物溶液を複数のフィルター(0.24~120um)でろ過した後、配合する。
(7)濃縮工程:ろ過後の溶液を濃縮し、水分調整、高温殺菌の後、超ろ過を行う。
(8)精製工程:高温(>90℃,60min)で不純物を取り除き、超ろ過(0.24~10um)を行う。
【0016】
サーマスサーモフィルス/バチルス培養抽出物(エキス1)は、下記の手順に従って生成した。
(1)枯草菌の発酵:100L、500L、5000Lの発酵槽で枯草菌を培養した(温度:37℃、発酵時間:18h)。
(2)菌体と発酵液の分離:連続式高速遠心機を用いて、菌体と発酵液を分離し、発酵液を回収する(試料の注入速度:5L/min,回転速度:15,000rpm)。
(3)脱色・脱臭:活性炭の吸着を通して、発酵液の脱色・脱臭を行う(脱色温度:45℃、脱色時間:30分)。
(4)活性炭の分離:連続式高速遠心機を用いて、活性炭と発酵液を分離し、清澄化した発酵液を回収する。
(5)防腐剤配合:回収された発酵液に防腐剤として、ヒドロキシアセトフェノン(0.5%)、ブチレングリコール(4%)、1,2-ヘキサンジオール(0.5%)を添加する。
(6)pH整:防腐剤を配合した発酵液のpH6.5-6.8に調整する。
(7)ろ過・滅菌:得られた溶液を0.1μmの粗ろ過、及び0.22μmの精密ろ過を行い、溶液中の不純物や細菌を除去する。
また、サッカロミセス/コメ発酵液抽出物(エキス2)には、丸善製薬株式会社製のコメ発酵液PDを用いた。
【0017】
<細胞毒性試験1>
上記エキス1~3のオートファジー活性の測定に先立ち、オートファジー活性を測定する際の各サンプルの濃度を決定するため、それらの細胞毒性試験を行った。
まず、ヒト表皮由来初代角化細胞(Human Primary epidermal keratinocytes:HPEK)をCELLnTEC社(Bern, Switzerland)より購入し、CnT-PR培地(CELLnTEC社)を使用して細胞培養を行った(温度:37℃、培養期間:48時間)。
続いて、培養した細胞を96wellプレートに5×103cellsずつ播種し、24時間培養後、各wellに上記手順で得られたサンプルを所定濃度となるように添加した。48時間後、Cell Counting Reagent SF (ナカライテスク社製:日本)入り培地に置き換えて1時間培養し、Nivoマイクロプレートリーダー(Perkin Elmer, Waltham, MA, USA)を用いて、WST-8の吸収スペクトルである波長450nmの吸光度を測定し、上記サンプルを添加していないコントロールと比較することで、各サンプルの添加濃度(1%又は5%)と細胞生存率との関係を調べた。
【0018】
図1に示すように、エキス1、エキス2においては、濃度1%では、コントロールよりも細胞生存率が高くなったものの、濃度5%では、細胞生存率が低くなった。これに対して、本実施形態のオートファジー活性化剤であるエキス3は、濃度5%においてもコントロールと同等の細胞生存率であり、細胞毒性が低いことが示された。これらの結果から、後述するオートファジー活性の測定試験では、エキス1,2のサンプルの濃度を夫々1%とし、エキス3のサンプルの濃度を3%とすることにした。
【0019】
<オートファジー活性測定試験1>
細胞培養:上記細胞毒性試験と同様に、ヒト表皮由来初代角化細胞(HPEK)を培養し、培養した細胞を6wellプレートに播種し、48時間培養した後、エキス1,2が濃度1%に、エキス3が濃度3%となるように含有させた培地に置き換え、更に48時間培養を行った。
【0020】
ウェスタンブロッティング:培養した細胞を、リン酸緩衝液PBSで洗浄し、Lysis Buffer(20mM Tris-HCl(pH8.0),1% SDS,1mM DTT)にプロテアーゼ阻害剤(ナカライテスク社製)を添加した溶液でタンパク質の抽出を行った。
抽出したタンパク質は、5×SampleBuffer(0.25M Tris-HCl(pH6.8),8% SDS,10% グリセロール,0.04% ブロモフェノールブルー,5% 2-メルカプトエタノール)と混合した後、95℃で5分間ボイルし、SDSを含むポリアクリルアミドゲルで泳動、分離を行った。
分離したタンパク質は、PVDF膜(Immobilon-P;Merck Millipore, Burlington, MA, USA)に転写した。ブロッキングには、5% スキムミルク/TBST(20mM Tris-HCl(pH7.4),137mM NaCl,0.1% Tween-20)を使用した。抗体としては、一次抗体には、抗LC3Bウサギモノクローナル抗体(abcam;Cambridge, MA, USA ; Clone EPR18709, ab192890, 1000倍希釈)、抗Actinマウスモノクローナル抗体(Merck Millipore; Clone C4, MAB1501, 10000倍希釈)を用いた。二次抗体には、HRP標識抗ウサギIgG抗体、HRP標識抗マウスIgG抗体(いずれもCell Signaling Technology; Danvers, MA, USA; 5000倍希釈)を用いた。
検出は、イモビロンHRP化学発光検出試薬(Merck Millipore)を使用し、37℃で5分間インキュベーションした後、Cytiva社(Marlborough, MA, USA)のAmersham ImageQuant 800を用いて撮影した。バンドの指標のマーカーとしてビオチン化プロテインラダー (Cell Signaling Technology)と、プレステインプロテインマーカー (ナカライテスク社製)の2種を用いた。また、ビオチン化プロテインラダーを検出するために、HRP標識抗ビオチン化抗体(Cell Signaling Technology)を用いた。
バンドの定量には、Image J software(National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA)を用いた。
【0021】
上記の手順で定量されたLC3B-II活性を、サンプルを添加していないコントロールと対比することで、エキス1~3のオートファジー活性を評価した。また、ポジティブコントロールとして、オートファジー誘導剤として知られるラパマイシンを使用した。なお、試験の反復数Nは夫々のサンプルにおいて5回とした。以下の試験も同様である。
【0022】
図2に示すように、エキス1、2におけるLC3B-II活性は、コントロールと同等であった。一方、エキス3では、ラパマイシンを上回るLC3B-II活性が確認された。この結果より、ガラクトミセス培養抽出物には、オートファジー活性化剤として使用できる可能性が示唆された。
【0023】
<細胞毒性試験2>
次に、ムラサキバレンギク抽出物(エキス4)及びテンニンカ果実抽出物(エキス5)の細胞毒性試験を行った。ムラサキバレンギク抽出物(エキス4)は、SIRT1を活性化することが知られており、また、テンニンカ果実抽出物(エキス5)は、ミトコンドリアのオートファジー効果(マイトファジー)があることが知られている。エキス4には、SymFinity(登録商標)1298(シムライズ株式会社製)を、エキス5には、テンニンカ果実抽出液BG80(丸善製薬株式会社製)を用い、上記細胞毒性試験1と同様の手順により、コントロールと比較したエキス4、5における細胞生存率を調べた。
【0024】
図3に示すように、エキス4では、0.1%の濃度でもコントロールと同等の細胞生存率であり、0.05%では細胞生存率が高くなった。一方、エキス5では、0.1%では細胞生存率が向上するものの、0.2%の濃度で細胞生存率が大きく低下することが示された。この結果から、後述するオートファジー活性の測定試験では、エキス4は0.05%の濃度で、エキス5は0.1%の濃度で使用することとした。
【0025】
<オートファジー活性測定試験2>
エキス3に加えて、エキス4、5を単体で添加した場合のオートファジー活性を、上記オートファジー活性測定試験1と同様の手順により測定し、その結果を図4に示す。なお、ここでも、ポジティブコントロールとしてラパマイシンを使用した。また、クロロキン(CQ)を添加してリソソームを阻害することで、オートファゴソームを蓄積させて、LC3の増加が見られるかを確認した。すなわち、サンプルにオートファジー活性化作用があることを確認するためには、オートファゴソームの形成、オートリソソームの形成、及びオートリソソーム内で内容物が分解されるまでの一連の流れ(オートファジックフラックス)が進行していることを確認する必要がある。オートファジックフラックスが進行している場合には、クロロキン等のリソソーム阻害剤の存在下で細胞を培養すると、リソソームの作用が阻害され、LC3B、LC3B-IIが分解されないので、細胞内のLC3B、LC3B-IIの量が増加する。この原理に基づき、細胞をサンプルと共に、リソソーム阻害剤の存在下で培養したとき、リソソーム阻害剤非存在下で培養した場合と比べ、LC3B、LC3B-IIの量が増加している場合には、オートファジックフラックスが進行していると判断される。
【0026】
図4に示すように、エキス3だけでなく、エキス4、5においても、ラパマイシンを上回るLC3B-II活性が確認された。また、クロロキン(CQ)添加系において、LC3B-II活性が増加していることから、エキス3~5には、オートファジー活性作用があることが示された。そして、これらの結果より、ガラクトミセス培養抽出物(エキス3)には劣るものの、ムラサキバレンギク抽出物(エキス4)及びテンニンカ果実抽出物(エキス5)にも、オートファジー活性化剤として使用できることが示された。
【0027】
<オートファジー活性測定試験3>
続いて、上記オートファジー活性測定試験2で、オートファジー活性作用が確認されたエキス4、5を、それぞれエキス3と併せて添加したときのオートファジー活性について試験した。
【0028】
図5に示すように、エキス3+エキス4のミックスは、エキス3又はセキス4の単体の場合よりも高いLC3B-II活性が確認された。また、エキス3+エキス5のミックスにおいても、エキス3又はセキス5の単体の場合よりも高いLC3B-II活性が確認された。すなわち、エキス3は、エキス4又はエキス5を組み合わせることで、LC3B-II活性が更に増加することが確認された。なお、本試験でも、クロロキン(CQ)添加系において、LC3B-II活性が増加していることから、エキス3+エキス4及びエキス3+エキス5のミックスにおいても、オートファジー活性作用があることが確認された。特に、エキス3+エキス4及びエキス3+エキス5のミックスは、CQ添加系におけるLC3B-II活性の増加が著しいものであった。
【0029】
<オートファジー活性測定試験4>
更に、上記オートファジー活性測定試験2、3で、オートファジー活性作用が確認されたエキス4、5を、両方ともエキス3と併せて添加したときのオートファジー活性について試験した。
【0030】
図6に示すように、エキス3+エキス4+エキス5のミックスは、エキス3の単体の場合よりも高いLC3B-II活性が確認された。すなわち、エキス3は、エキス4及びエキス5の両方と組み合わせることで、単体の場合に比べて、LC3B-II活性が増加することが確認された。なお、本試験でも、クロロキン(CQ)添加系において、LC3B-II活性が増加していることから、エキス3+エキス4+エキス5のミックスにおいても、オートファジー活性作用があることが確認された。
【0031】
上述した試験結果から明らかなように、ガラクトミセス培養抽出物(エキス3)には、ラパマイシンを上回る高いオートファジー活性作用があり、当該抽出物を有効成分とするオートファジー活性化剤に適用することができる。また、上記試験では、ヒト表皮由来初代角化細胞(HPEK)を用いており、生体組織内でも、特に、ヒトの表皮を構成する細胞でオートファジーを活性化できるオートファジー活性化剤を実現することができることが示された。また、細胞毒性試験1の結果より、オートファジー活性化剤におけるガラクトミセス培養抽出物の含有量は、1-5質量%であることが好ましいことが示された。更に、ガラクトミセス培養抽出物(エキス3)は、ムラサキバレンギク抽出物(エキス4)又はテンニンカ果実抽出物(エキス5)と組み合わせて使用することで、より高いオートファジー活性作用を得ることができる。
【0032】
本実施形態のオートファジー活性化剤は、化粧品や美白剤といった皮膚外用剤として使用されることが好ましく、発明の効果を損なわない範囲で、適宜に任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、生薬類、pH調整剤、キレート剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、ポリマー、香料、抗菌剤又は色素が挙げられる。具体的には、ポリマーとして、カルボマーが挙げられ、キレート剤として、EDTA-2ナトリウム等が挙げられる。また、本実施形態のオートファジー活性化剤は、皮膚外用剤以外にも、例えば、健康増進等を目的とする飲食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、医薬部外品、医薬品等として使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6