(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075188
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】蓄電池の冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/651 20140101AFI20240527BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240527BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240527BHJP
H01M 10/627 20140101ALI20240527BHJP
【FI】
H01M10/651
H01M10/613
H01M10/6563
H01M10/627
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186444
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 信一郎
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH00
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】簡易な支持構造で効果的に単電池又は電池モジュールからなる蓄電池を冷却するとともに、冷却装置の小型化、簡素化を図る。
【解決手段】単電池1又は前記単電池が複数収容された電池モジュール7からなる1又は複数の蓄電池と、前記蓄電池を冷却する冷却空気13と、を備えた蓄電池の冷却装置において、前記蓄電池の底面を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせて傾斜させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単電池又は前記単電池が複数収容された電池モジュールからなる1又は複数の蓄電池と、前記蓄電池を冷却する冷却空気と、を備えた蓄電池の冷却装置において、
前記蓄電池の底面を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせて傾斜させたことを特徴とする蓄電池の冷却装置。
【請求項2】
前記蓄電池を架台の上部板に設置するとともに、当該上部板を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせるように傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の蓄電池の冷却装置。
【請求項3】
前記架台を電池室の内部に収容し、当該電池室の一方の側板に吸気口を設け、他方の側板に排気口を設けたことを設けられた特徴とする請求項2記載の蓄電池の冷却装置。
【請求項4】
前記仰角は45度以下、好ましくは約20度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蓄電池の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電池の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池に電力を蓄え、蓄えた電力を放電することにより、電力を使用する各種回路やシステムは様々な利点を得ることができる。例えば、再生可能エネルギーによって発電された電力と、それを使用する負荷の消費電力が異なっている場合、すなわち発電電力が消費電力よりも多い場合には、蓄電池に余剰となる電力を充電することができる。
【0003】
また逆に、発電電力が消費電力よりも少ない場合には、蓄電池から放電することにより電力不足を解消することができる。その他にも多様な用途で蓄電池の充放電が利用されている。
【0004】
ここで、
図3を用いて蓄電池として一般的なリチウムイオン電池の単電池(セル)の構造を冷却の観点から説明する。
リチウムイオン電池の単電池1の内部は、正極2と負極3、及び正極2と負極3の間に挟み込まれ両者が物理的に接触することを防止するためのセパレータ4が内蔵されている。
【0005】
一般的な単電池1では体積当たりの蓄電電力量を大きくするために正極2、負極3及びセパレータ4は巻回され、単電池1の形状を保つためのケース5に収納されている。なお、ケース5内の正極2、負極3及びセパレータ4の隙間には電解液が満たされている。
【0006】
また、複数の単電池1を電気的に直列又は並列に接続して所望の電圧と蓄電容量が得られるようにすることがあり、
図4に示すように、接続された複数の単電池1をモジュールケース6に収納したものを電池ユニット又は電池モジュール7と呼ぶ。さらに、複数個の電池モジュール7を直列又は並列に接続したものを電池ストリングと呼び、様々な蓄電用途に用いられる。
【0007】
次に、充放電による単電池1の温度上昇について説明する。
充電又は放電にともない単電池1内の正極2及び負極3に電流が流れ、それぞれの極がもつ電気抵抗によりジュール熱が生じる。また、リチウムイオン電池の内部では物理化学的な変化も生じており、それによる発熱も併せて発生している。
【0008】
一方、単電池1の内部で生じた熱は熱伝導と熱伝達により正極2、負極3及びセパレータ4の間を移動し、最終的にはケース5の表面から熱伝達によりその外側にある空気等の冷却物質に伝達する。単電池1の中心からケース5の表面までの伝熱経路における熱伝導及び熱伝達による熱の伝わりにくさを熱抵抗として表すこととする。
【0009】
図3に示したように、単電池1の内部では正極2、負極3及びセパレータ4が巻回されているため、熱伝達率は構造的な異方性を持つ。
図3の例では巻回軸の軸方向へは熱が伝わりやすい。
【0010】
一方、正極2、負極3及びセパレータ4の積層方向(
図3参照)、すなわち巻回軸の半径方向は熱が伝わりにくい。したがって、熱抵抗の大きさは、巻回軸方向<<積層方向となる。
【0011】
また、
図4に示すように、複数の単電池1を電池モジュール7の内部に設置した場合でも、上下方向の熱抵抗は小さいが、左右又は奥行方向の熱抵抗は大きなものとなる。
【0012】
また、単電池1の内部の温度が一定以上の温度まで上昇すると熱暴走と呼ばれる状態に陥ることがある。熱暴走を引き起こす要因は種々考えられているが、単電池1の内部の温度が上昇することにより、その熱が電池内部の更なる発熱を引き起こし、電池全体が温度上昇して発火や発煙などの状態に陥る。
【0013】
この熱暴走を防止するために、単電池1の内部の温度をそれが規定される使用温度範囲に保持することが安全上の観点からも非常に重要である。
【0014】
通常では、充放電時の電流によって生じた単電池1の内部の発熱は、単電池1を外部から冷却することによってその温度を使用温度の上限以下に保っている。また、単電池1を複数個内蔵した電池モジュール7においても単電池1の内部の温度を使用温度範囲に保持するためにその外面を冷却する必要があることは明らかである。
【0015】
このように、単電池1の温度を使用温度範囲に保持するために様々な方法で冷却する必要があり、例えば、電池モジュール7の周囲に適切な冷却空気の通気路を形成することで単電池を冷却する手段が提案されている。
【0016】
図5に示す従来の冷却装置では、棚状の架台8の上に複数の電池モジュール7を設置し、熱抵抗の小さい巻回軸方向に下方から冷却空気13を供給し、電池モジュール7の上下面を冷却している。なお、電池モジュール7の上面側には単電池1の電極を接続する導体や、単電池1の温度等の計測等をおこなう電子基板が設置されることが多く、このために電池モジュール7の底面に比べて上面の熱抵抗は大きなものになることが多い。したがって通常では、電池モジュール7の底面を冷却することが効果的である。
【0017】
また、
図6に示す従来の冷却装置では、電池室12内の架台8の上に複数の電池モジュール7を設置し、排気口10に設けた冷却ファン11により冷却空気13を吸気口9から電池室12の内部に導入し、電池モジュール7を冷却している。
【0018】
電池室12の大きさは電池モジュール7の周辺の冷却空気13の流れが一様になるように決定される。なお、電池室12のサイズに制約がある場合は、吸気口9や排気口10を複数設けてもよいし、また、電池室12の内部を冷却空気13が適切に流れるようにするために、適宜整流部材を設ける等、一様な流れを創出するための工夫が行われる(図示せず)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したように、単電池1及び電池モジュール7の熱抵抗は異方性を持っているため、複数の単電池1又は電池モジュール7を効果的に冷却する必要がある。
【0021】
しかしながら
図5に示す従来の冷却装置は、冷却空気13を下方から上方へ流して電池モジュール7を冷却しているが、電池モジュール7を均一に冷却するために、冷却空気13の方向を規定する支持部材や方向を変える整流部材又は多数の吸気誘導ダクト等が必要となり、装置が大型化、複雑化するという課題があった。
【0022】
また、
図6に示す従来の冷却装置では、電池モジュール7に冷却空気13が当たると、冷却空気13の流れは分割され電池モジュール7の上下面に均等な空気量が流れるが、電池モジュール7の上面及び下面の熱抵抗の大小を考慮しておらず、電池モジュール7を効率的に冷却することができないという課題があった。
【0023】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、簡易な支持構造で効果的に単電池、又は電池モジュールを冷却することができるとともに、装置の小型化、簡素化を図ることができる蓄電池の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓄電池の冷却装置は、単電池又は前記単電池が複数収容された電池モジュールからなる1又は複数の蓄電池と、前記蓄電池を冷却する冷却空気と、を備えた蓄電池の冷却装置において、前記蓄電池の底面を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせて傾斜させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡易な支持構造で効果的に単電池又は電池モジュールを冷却することができるとともに、冷却装置の小型化、簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る蓄電池の冷却装置の概観図。
【
図2】本実施形態に係る蓄電池の冷却装置の要部図。
【
図5】従来の蓄電池の冷却装置の概観図(その1)。
【
図6】従来の蓄電池の冷却装置の概観図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る蓄電池の冷却装置の実施形態について説明する。
【0028】
(構成)
本実施形態に係る蓄電池の冷却装置は、
図1に示すように、例えば筐体状の電池室12と、電池室12の内部に設けられた架台8と、架台8の上部に設置された1又は複数の電池モジュール7(蓄電池)と、電池室12の内部に冷却空気13を通流するための吸気口9及び排気口10と、排気口10に設けられた冷却ファン11と、から構成される。
【0029】
図2は、架台8の上部に設置された複数の電池モジュール7の要部図である。
本実施形態において、複数の電池モジュール7が設置される架台8の上部板8aは、
図1、
図2に示すように、冷却空気13の流れ方向に対し、水平方向から所定の仰角を持たせて設置されている。
【0030】
(作用、効果)
上記のように構成された蓄電池の冷却装置において、吸気口9から導入された冷却空気13は、上部板8aで上下に分割されるが、架台8の上部板8aを冷却空気13の流れ方向に対し、仰角αで傾斜して設置したことにより、すなわち、電池モジュール7の底面を冷却空気13の流れに対して所定の仰角を持たせて傾斜させたことにより、電池モジュール7の底面側を流れる冷却空気13は、電池モジュール7の上面に比較し冷却空気13の剥離が少なくなり、熱抵抗の小さい電池モジュール7の底面をより効率的に冷却することが可能となる。
【0031】
これにより、電池モジュール7の底面側の熱伝達率が増加することで、電池モジュール7を効率的に冷却することができる。
なお、本実施形態では、仰角αは45度以下に設定されるが、特に、約20度とすることが好ましい。
【0032】
また、電池室12の床面が水平でなくても、さらに、電池室12内の冷却空気13の流れが水平でなかったとしても、電池モジュール7の底面が冷却空気13の流れに対して所定の仰角を持っていればよく、架台8の形状や電池室12の形状、又は吸気口9や排気口10の位置関係や数量に左右されない。
【0033】
さらに、上記実施形態では、架台8の上部板8aを傾斜させているが、電池モジュール7の底面を冷却空気13の流れに対して所定の仰角を持たせて傾斜させればよく、架台8を省略して、電池モジュール7の底面が冷却空気13の流れに対して所定の仰角を持つように、上部から電池モジュール7を傾斜させて吊り下げるようにしてもよい。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、簡易な支持構造で効果的に単電池、又は電池モジュールを冷却することができるとともに、装置の小型化、簡素化を図ることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1…単電池、2…正極、3…負極、4…セパレータ、5…ケース、6…モジュールケース、7…電池モジュール、8…架台、8a…上部板、9…吸気口、10…排気口、11…冷却ファン、12…電池室、13…冷却空気
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面側の熱抵抗が上面側の熱抵抗よりも小さい単電池又は前記単電池が複数収容された電池モジュールからなる1又は複数の蓄電池と、前記蓄電池を冷却する冷却空気と、を備えた蓄電池の冷却装置において、
前記蓄電池の底面を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせるように、当該蓄電池を当該冷却空気の流れに対して傾斜して配置したことを特徴とする蓄電池の冷却装置。
【請求項2】
前記蓄電池を架台の上部板に設置し前記冷却空気を当該上部板で上下に分割するとともに、当該上部板を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせるように傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の蓄電池の冷却装置。
【請求項3】
前記架台を電池室の内部に収容し、当該電池室の一方の側板に吸気口を設け、他方の側板に排気口を設けたことを特徴とする請求項2記載の蓄電池の冷却装置。
【請求項4】
前記仰角は45度以下、好ましくは約20度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蓄電池の冷却装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓄電池の冷却装置は、底面側の熱抵抗が上面側の熱抵抗よりも小さい単電池又は前記単電池が複数収容された電池モジュールからなる1又は複数の蓄電池と、前記蓄電池を冷却する冷却空気と、を備えた蓄電池の冷却装置において、前記蓄電池の底面を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせるように、当該蓄電池を当該冷却空気の流れに対して傾斜して配置したことを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面側の熱抵抗が上面側の熱抵抗よりも小さい単電池又は前記単電池が複数収容された電池モジュールからなる1又は複数の蓄電池と、前記蓄電池を冷却する冷却空気と、を備えた蓄電池の冷却装置において、
前記蓄電池を架台の上部板に設置し、前記冷却空気を前記上部板で上下に分割するとともに、当該上部板を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせるように傾斜させたことを特徴とする蓄電池の冷却装置。
【請求項2】
前記架台を電池室の内部に収容し、当該電池室の一方の側板に吸気口を設け、他方の側板に排気口を設けたことを特徴とする請求項1記載の蓄電池の冷却装置。
【請求項3】
前記仰角は45度以下、好ましくは約20度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池の冷却装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓄電池の冷却装置は、底面側の熱抵抗が上面側の熱抵抗よりも小さい単電池又は前記単電池が複数収容された電池モジュールからなる1又は複数の蓄電池と、前記蓄電池を冷却する冷却空気と、を備えた蓄電池の冷却装置において、前記蓄電池を架台の上部板に設置し、前記冷却空気を前記上部板で上下に分割するとともに、当該上部板を前記冷却空気の流れに対して所定の仰角を持たせるように傾斜させたことを特徴とする。