(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075189
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電池の処理方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20240527BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240527BHJP
【FI】
H01M10/54
H01M50/342 101
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186445
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐介
【テーマコード(参考)】
5H012
5H031
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012DD05
5H012FF01
5H012GG01
5H031BB03
5H031BB09
5H031RR01
5H031RR07
(57)【要約】
【課題】外装体に孔を開ける際に、外装体内の電極体を傷つけにくい電池の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明により、外装体10と、外装体10に設けられたガス排出弁18と、外装体10の内部に収容された電極体20と、を備える電池100の処理方法が提供される。かかる処理方法は、ガス排出弁18に対して外装体10の外部方向に向かう力を加えることにより、ガス排出弁18を開裂させ、外装体10に孔hを開ける孔開け工程と、上記孔開け工程の後に、孔hから外装体10の内部に失活処理液を流入させ、電池100を失活させる失活処理工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と、前記外装体に設けられたガス排出弁と、前記外装体の内部に収容された電極体と、を備える電池の処理方法であって、
前記ガス排出弁に対して前記外装体の外部方向に向かう力を加えることにより、前記ガス排出弁を開裂させ、前記外装体に孔を開ける孔開け工程と、
前記孔開け工程の後に、前記孔から前記外装体の内部に失活処理液を流入させ、前記電池を失活させる失活処理工程と、
を含む、電池の処理方法。
【請求項2】
前記孔開け工程において、吸着部を備える吸着装置を用い、前記吸着部に前記ガス排出弁を吸着させて前記吸着部を引き上げることで、前記ガス排出弁を開裂させる、
請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記孔開け工程において、把持部材を前記ガス排出弁に接着または溶接した後、前記把持部材を引き上げることで、前記ガス排出弁を開裂させる、
請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記孔開け工程において、前記ガス排出弁を囲むように密閉空間を形成し、前記密閉空間内の圧力を変化させることで、前記ガス排出弁を開裂させる、
請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記ガス排出弁は、中央部に平面部を有する、
請求項1から4のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項6】
前記ガス排出弁は、切り欠き部を有する、
請求項1から4のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項7】
前記孔開け工程の前に、前記電池を放電させる放電処理工程を含む、
請求項1から4のいずれか1つに記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を低減して資源を有効利用するために、使用済みの電池を回収し、再生資源化することが行われている。これに関連して、例えば特許文献1には、リチウムイオン電池を解体して外装体から電極体を取出し、正極からNi、Co等の有価金属を資源として回収することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池を解体する際には、通常、正負極が短絡して発火することを防止するために、外装体に孔を開けて外装体の内部に失活処理液(例えば水や塩水)を流入させ、電極体を失活させる失活処理を行う。しかしながら、回収された電池はメーカーや機種、電池容量等によって内部構造が異なり、また使用済みであると内部の状態も不明である。そのため、外装体に孔を開ける際に、むやみに錐等の金属製の工具を外装体に突き刺すと、誤って外装体内の電極体を傷つけて正負極が短絡し、ひいては発火する虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、外装体に孔を開ける際に、外装体内の電極体を傷つけにくい電池の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、外装体と、上記外装体に設けられたガス排出弁と、上記外装体の内部に収容された電極体と、を備える電池の処理方法が提供される。かかる処理方法は、上記ガス排出弁に対して上記外装体の外部方向に向かう力を加えることにより、上記外装体を開裂させ、上記外装体に孔を開ける孔開け工程と、上記孔開け工程の後に、上記孔から上記外装体の内部に失活処理液を流入させ、上記電池を失活させる失活処理工程と、を含む。
【0007】
ガス排出弁は、外装体の内圧が高くなったときに開裂するように構成されているので、外装体の中で最も強度が低く、破壊が容易な部分である。このようなガス排出弁に対して外装体の外部方向に向かう力を加えることにより、錐等の金属製の工具を使用せずにガス排出弁を開裂させて、外装体に孔を開けることができる。したがって、本発明によれば、金属製の工具で誤って電極体を傷つけて正負極を短絡させてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の凹部の近傍を模式的に示す拡大図である。
【
図4】
図4(A)、(B)は、孔開け工程における電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0010】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、リチウムイオンキャパシタ等の物理電池と、を包含する概念である。
【0011】
<電池100の構成>
図1は、ここで開示される処理の対象となる電池100の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号X、Yは、電池100の長辺方向、短辺方向を示し、符号Zは、鉛直方向を示す。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0012】
図2に示すように、電池100は、外装体10と、ガス排出弁18と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。電池100は、ここでは非水電解液二次電池である。なお、電池100の構成については従来と同様でよく、特に限定されない。また、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0013】
外装体10は、電極体20を収容する筐体である。外装体10は、
図1に示すように、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。外装体10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。外装体10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等の軽量で熱伝導性の良い金属材料で構成されている。外装体10は、ここではアルミニウム製である。
【0014】
図2に示すように、外装体10は、開口12hを有するケース本体12と、開口12hを塞ぐ蓋体(封口板)14と、を備えている。外装体10は、ケース本体12の開口12hの周縁に蓋体14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。蓋体14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。ケース本体12の開口12hは、気密に封止(封口)されている。
【0015】
ケース本体12は、
図1に示すように、底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、底壁12aと対向する開口12h(
図2参照)と、を備えている。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。底壁12aおよび開口12hは、略矩形状である。
【0016】
蓋体14は、ケース本体12の開口12hを封口するプレート状の部材である。
図2に示すように、蓋体14は、開口12hを塞ぐようにケース本体12に取り付けられている。蓋体14は、平面視において略矩形状である。蓋体14は、開口12hに嵌め合わされ、ケース本体12の底壁12aと対向している。蓋体14は、外側面14aを有する。蓋体14には、注液孔15と、凹部17と、2つの端子引出孔19と、が設けられている。凹部17を備える蓋体14は、例えば平板状の金属部材をプレス成型して一部分を凹ませることによって形成されている。
【0017】
注液孔15は、ケース本体12に蓋体14を組み付けた後に電解液を注液するためのものである。
図2に示すように、注液孔15は、蓋体14を鉛直方向Z(言い換えれば、蓋体14の厚み方向)に貫通している。注液孔15は、貫通孔である。注液孔15は、注液栓16によって封口されている。端子引出孔19は、蓋体14の長手方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔19は、蓋体14を鉛直方向Zに貫通している。
【0018】
凹部17は、
図1に示すように、円環状の外形を有する。凹部17は、
図2に示すように、蓋体14の外側面14aから鉛直方向Z(言い換えれば、蓋体14の厚み方向)に窪んでいる。凹部17には、ガス排出弁18が配設されている。
図3は、凹部17の近傍を模式的に示す拡大図である。
【0019】
ガス排出弁18は、外装体10の内圧が予め定められた作動圧よりも上昇した場合に開裂して、外装体10内のガスを外部に排出するように構成されている。ガス排出弁18の作動圧は、典型的には0.1~10MPa、例えば0.3~5MPa、1~3MPaでありうる。ガス排出弁18は、外装体10に設けられている。ガス排出弁18は、
図3に示すように、ここでは凹部17の下面を構成し、蓋体14と一体に設けられている。そのため、ガス排出弁18は、蓋体14と同種の材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等の金属材料で構成されている。ガス排出弁18は、ここではアルミニウム製である。ガス排出弁18は、厚みtbを有する。ガス排出弁18は、プレート状の蓋体14の厚みtaよりも薄肉に形成されている。
【0020】
なお、ガス排出弁18は、ここでは蓋体14と一体であるが、蓋体14と別体であってもよい。例えば、蓋体14が凹部17にかえて蓋体14の厚み方向に貫通するガス排出孔(貫通孔)を有し、かかるガス排出孔を塞ぐように、例えば溶接等によって蓋体14にガス排出弁18が取り付けられていてもよい。この場合、ガス排出弁18は、蓋体14と異なる材料で構成されていてもよい。
【0021】
ガス排出弁18は、ここでは、平面部18aと、切り欠き部(ノッチ部、溝部)18bと、を有している。平面部18aは、ガス排出弁18の平面視における中心Mを含む中央部に設けられている。平面部18aは、表面が平坦で、切り欠き部等が形成されておらず、連続した面である。ガス排出弁18が中央部に平面部18aを有する場合、後述する処理方法において、ここに開示される技術を適用しやすい利点がある。切り欠き部18bは、ここでは略環状であり、凹部17の外縁に沿って設けられている。言い換えれば、切り欠き部18bは、平面部18aの外周に沿うように設けられている。切り欠き部18bは、ガス排出弁18のなかでも特に強度が低い脆弱部である。このため、本実施形態において、ガス排出弁18は、略環状の切り欠き部18bに沿うようにして開裂する。ガス排出弁18が切り欠き部18bを有する場合、後述する処理方法において、ガス排出弁18が開裂する際に金属片等の金属異物が発生しにくい利点がある。
【0022】
電極体20は、外装体10の内部に収容されている。電極体20は、正極と負極とを有する。電極体20は、ここでは帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心として長手方向に捲回されてなる捲回電極体である。電極体20は、扁平形状の外形を有する。ただし、電極体20は、方形状の正極と方形状の負極とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。電極体20は、ここでは、捲回軸が長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体10の内部に収容されている。ただし、電極体20は、捲回軸が鉛直方向Zと略平行になる向きで、外装体10の内部に収容されていてもよい。また、1つの外装体10に収容されている電極体20は、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。
【0023】
正極は、正極集電体と、正極集電体上に固着された正極合材層と、を有する。正極集電体は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体は、ここではアルミニウム製である。正極合材層は、典型的には、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な正極活物質(例えば、リチウム遷移金属複合酸化物)とバインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF))とを含んでいる。
【0024】
負極は、負極集電体と、負極集電体上に固着された負極合材層と、を有する。負極集電体は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体は、ここでは銅製である。負極合材層は、典型的には、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)とバインダ(例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)やカルボキシメチルセルロース(CMC))とを含んでいる。
【0025】
電極体20の長辺方向Yの一方の端部(
図2の左端部)には、正極合材層の形成されていない正極集電体の一部分(正極タブ23)が露出している。正極タブ23には、正極集電部50の下端部が接続されている。また、電極体20の長辺方向Yの他方の端部(
図2の右端部)には、負極合材層の形成されていない負極集電体の一部分(負極タブ25)が露出している。負極タブ25には、負極集電部60の下端部が接続されている。
【0026】
電解液は、ここでは、非水溶媒と支持塩とを含む非水系の液状電解質(非水電解液)である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体20と一体化されていてもよい。
【0027】
正極端子30は、
図1、
図2に示すように、蓋体14の長手方向Yの一方の端部(
図1、
図2の左端部)に配置されている。正極端子30は、
図2に示すように、外装体10の内部で正極集電部50を介して電極体20の正極と電気的に接続されている。正極端子30は、端子引出孔19を挿通して蓋体14の内部から外部へと延びている。正極端子30は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。正極端子30は、ここではアルミニウム製である。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、蓋体14と絶縁されている。
【0028】
正極端子30の上には、板状の正極外部導電部材32が固定されている。正極外部導電部材32は、バスバー等を介して、他の電池や外部機器と接続される部材である。正極外部導電部材32は、外部絶縁部材92によって蓋体14と絶縁された状態で蓋体14に取り付けられている。正極外部導電部材32は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。正極外部導電部材32は、ここではアルミニウム製である。
【0029】
負極端子40は、
図1、
図2に示すように、蓋体14の長手方向Yの他方の端部(
図1、
図2の右端部)に配置されている。負極端子40は、
図2に示すように、外装体10の内部で負極集電部60を介して電極体20の負極と電気的に接続されている。負極端子40は、端子引出孔19を挿通して蓋体14の内部から外部へと延びている。負極端子40は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。負極端子40は、ここでは銅製である。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、蓋体14と絶縁されている。
【0030】
負極端子40の上には、板状の負極外部導電部材42が固定されている。負極外部導電部材42は、バスバー等を介して、他の電池や外部機器と接続される部材である。負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって蓋体14と絶縁された状態で蓋体14に取り付けられている。負極外部導電部材42は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。負極外部導電部材42は、ここでは銅製である。
【0031】
正極集電部50は、正極タブ23と正極端子30とを電気的に接続する導通経路を構成している。正極集電部50は、正極集電体と同じ金属種、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。正極集電部50は、ここでは略L字状である。正極集電部50は、蓋体14の内面に沿って延び、正極端子30と接続される正極第1集電部と、ケース本体12の短側壁12cに沿って延び、正極タブ23に接続される正極第2集電部と、を有している。
【0032】
負極集電部60は、負極タブ25と負極端子40とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電部60は、負極集電体と同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。負極集電部60は、ここでは略L字状である。負極集電部60は、蓋体14の内面に沿って延び、負極端子40と接続される負極第1集電部と、ケース本体12の短側壁12cに沿って延び、負極タブ25に接続される負極第2集電部と、を有している。
【0033】
正極内部絶縁部材70は、蓋体14の内面と電極体20との間に設けられている。正極内部絶縁部材70は、外装体10の内部で、蓋体14と正極集電部50(詳しくは正極第1集電部)とを絶縁する部材である。正極内部絶縁部材70は、例えば、使用する電解液に対する耐性と電気絶縁性とを有し、弾性変形が可能な樹脂材料からなっている。正極内部絶縁部材70は、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等からなることが好ましい。
【0034】
図2に示すように、正極内部絶縁部材70は、ここではベース部70aと突出部70bとを有する。ベース部70aは、蓋体14と正極第1集電部との間に配置され、蓋体14の内面に沿って延びている。突出部70bは、ベース部70aよりも電極体20の側に突出している。
【0035】
負極内部絶縁部材80は、
図2に示すように、電極体20の長辺方向Yに対して、正極内部絶縁部材70と対称に配置されている。負極内部絶縁部材80の具体的な構成は、正極内部絶縁部材70と同様であってよい。負極内部絶縁部材80は、外装体10の内部で、蓋体14と負極集電部60(詳しくは負極第1集電部)とを絶縁する部材である。負極内部絶縁部材80は、ここでは正極内部絶縁部材70と同様に、蓋体14と負極第1集電部との間に配置されるベース部80aと、ベース部80aよりも電極体20の側に突出した突出部80bと、を有する。
【0036】
<電池100の処理方法>
本実施形態の処理方法は、市場から回収された電池100の処理方法(失活処理方法)である。なお、回収された電池100は、未使用の状態であってもよいし、使用済みの状態であってもよい。回収された電池100は、過充電、過放電等によって使用不可となり、放電が不可能な状態であってもよい。
【0037】
本実施形態の処理方法は、電圧確認工程(ステップS1)と、放電処理工程(ステップS2)と、孔開け工程(ステップS3)と、失活処理工程(ステップS4)とを、この順で含む。ただし、電圧確認工程(ステップS1)と、放電処理工程(ステップS2)とは、必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。また、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
図4(A)、(B)は、孔開け工程(ステップS3)における電池100の模式図である。
【0038】
電圧確認工程(ステップS1)では、回収された電池100を充放電装置に接続して、電圧(回収時電圧)を確認する。なお、本工程において、電池100(詳しくは外装体10)は、典型的には、蓋体14が鉛直方向Zの真上に位置し、かつ長側壁12bおよび短側壁12cが鉛直方向Zに沿う通常姿勢である。ただし、通常姿勢以外であってもよい。
【0039】
回収された電池100は、電圧を有する状態であることが多い。回収された電池100が電圧を有している場合、失活処理工程(ステップS4)に先立って、放電処理を行うことが好ましい。そのため、ステップS2に進む。ただし、回収された電池100が電圧を有していない場合や、放電が不可能な状態である場合等には、放電処理を省略することができる。そのため、ステップS2を省略して、ステップS3に進んでもよい。
【0040】
放電処理工程(ステップS2)では、電池100を強制的に放電させて、電池100の電圧を低下させる。これにより、次工程以後の作業の安全性を高められる。例えば、失活処理工程(ステップS4)で大量のガスが発生するリスクを低減できる。なお、本工程において、電池100(詳しくは外装体10)は、典型的には通常姿勢である。ただし、通常姿勢以外であってもよい。
【0041】
放電処理は、従来と同様に行うことができる。回収された電池100は、充電状態(SOC:State Of Charge)がバラついていることが多い。そのため、本工程における放電条件、例えばCC放電(定電流放電)での放電レートないし到達電圧、CV放電(定電圧放電)での保持電圧ないし保持時間は、電池100の回収時電圧によって適宜調整することが好ましい。次工程以後の作業の安全性を高める観点から、残留電圧は、可能な限り小さくすることが好ましい。そのため、放電処理は、電池100の残留電圧が、概ね0.5V以下、例えば略0Vになるまで行うことが好ましい。そして、ステップS3に進む。
【0042】
孔開け工程(ステップS3)では、
図4(B)に示すように、外装体10に液体を流入させるための孔hを開ける。孔hは、典型的には、液体が流入可能であるが、電極体20は取出し不可能な大きさである。本実施形態において、孔hは、蓋体14に設けられたガス排出弁18の位置に開けられる。詳しくは、ガス排出弁18を強制的に開裂させることで、外装体10に孔hが開けられる。そのため、孔hのサイズは、典型的には、ガス排出弁18と同じかそれよりも小さい。ただし、ガス排出弁18よりも大きくてもよい。
【0043】
上述の通り、ガス排出弁18は、外装体10の内圧が予め定められた作動圧よりも上昇した場合に開裂するように構成されている。このため、ガス排出弁18に対して外装体10の外部方向に向かう力、好ましくは作動圧相当の力(例えば、内圧上昇と同じベクトルの力)を加えることにより、容易に孔hを開けることができる。また、このように孔hを開けることで、ドリルや錐等の金属製の工具を使用する必要がないため、金属製の工具で誤って電極体を傷つけて正負極を短絡させてしまうことを防止できる。
【0044】
本実施形態では、吸着装置200を用いて、ガス排出弁18を開裂させる。具体的には、まず、吸着装置200(
図4(A)参照)を用意する。吸着装置200は、従来から一般的に用いられているものと同様の構成であってよく、特に限定されない。
図4(A)に示すように、吸着装置200は、例えば、吸着部210と、移動機構220と、を有している。吸着部210は、ガス排出弁18と対向する側の面に設けられている。吸着部210は、ここでは平板状である。図示は省略するが、吸着部210の下面には、ガス排出弁18(詳しくは平面部18a)を吸着するための吸着穴が複数設けられている。吸着穴は、ガス排出弁18(好ましくは平面部18a)の外寸よりも内側に設けられている。吸着穴は、図示しない真空源(例えば真空ポンプ)に連通している。吸着装置200は、真空源のオンオフを制御することで、吸着および吸着解除がコントロールされる。移動機構220は、吸着部210をガス排出弁18に近づく側とガス排出弁18から遠ざかる側とに移動させる(ここでは、下降および上昇させる)ものである。移動機構220は、例えば上下シリンダである。
【0045】
本実施形態では、次に、移動機構220で吸着部210を下降させ、吸着部210をガス排出弁18(詳しくは平面部18a)に当接させる。この状態で、真空源をオンとして真空引きすることにより、ガス排出弁18が吸着部210に吸着される。好ましくは、真空吸着される。このとき、ガス排出弁18が中央部に平面部18aを有していると、例えば、中央部に切り欠き部等が形成されていたり中央部の表面が湾曲していたりする場合に比べて、相対的にガス排出弁18を強く吸着することができる。また、平面部18aが広いほど、吸着力を好適に確保できる。
【0046】
次に、
図4(A)に矢印で示すように、移動機構220で吸着部210を上昇させる。これにより、吸着部210と共にガス排出弁18が引き上げられ、ガス排出弁18に対して外装体10の外部方向に向かう力が加えられる。ガス排出弁18は、典型的には、作動圧以上の力(内圧上昇と同じベクトルの力)が加えられた段階で開裂する。このようにして、
図4(B)に示すように、ガス排出弁18は吸着部210によって吸着除去され、外装体10に孔hが開けられる。本実施形態では、ガス排出弁18を吸着除去することで、開裂によって生じた金属片等の金属異物が孔hから外装体10の内部に混入することを抑制できる。またこのとき、ガス排出弁18に切り欠き部18bが設けられていると、ガス排出弁18が切り欠き部18bに沿うようにして開裂するため、金属片等の金属異物が発生しにくくなる。したがって、正負極の短絡をより高いレベルで抑制でき、発火のリスクが抑えられる。
【0047】
なお、ガス排出弁18を開裂させる際の雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましい。また、電池100が液状電解質(非水電解液)を備えている場合、本工程において、電池100(詳しくは外装体10)は、
図4(A)、(B)に示すように、典型的には通常姿勢である。これにより、孔hを開けた際に非水電解液が外装体10からこぼれ出ることを防止できる。ただし、電池100が固体状電解質を備えている場合や、後述する第2変形例の方法を採用する場合等は、通常姿勢以外であってもよい。そして、ステップS4に進む。
【0048】
失活処理工程(ステップS4)では、外装体10のガス排出弁18の位置に設けた孔hから、外装体10の内部に、水や食塩水等の導電性の液体(失活処理液)を流入させて、電池100を失活させる。外装体10の内部に失活処理液を流入させる方法は、例えば、孔hから外装体10の内部に失活処理液を注入してもよいし、外装体10ごと失活処理液中に浸漬させてもよい。なお、本工程において、電池100(詳しくは外装体10)は、典型的には通常姿勢である。ただし、例えば外装体10ごと失活処理液中に浸漬させるような場合には、通常姿勢以外であってもよい。
【0049】
失活処理(典型的には塩水処理)は、従来と同様に行うことができる。失活処理の条件、例えば処理時間、処理剤(食塩(塩化ナトリウム)等)の濃度、失活処理液の電気伝導率等は、電池100の残留電圧によって適宜調整するとよい。これにより、電池100を完全放電させ、失活させることができる。
【0050】
以上のようにして、外装体10に孔hを開けて電池100を失活させた後、外装体10を、例えば開口12hに沿って切断して、ケース本体12と蓋体14とに分離することができる。ケース本体12は、アルミニウムとして再資源化できる。また、ケース本体12から電極体20を取り出し、合材(所謂、ブラックマス)と集電体とに分離して、従来公知の方法で電極体20から有価金属を回収できる。例えば、リチウム(Li)や遷移金属(例えばNi、Co、Mn)等のレアメタルを回収できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0052】
例えば上記した実施形態では、ガス排出弁18が蓋体14に設けられていた。しかしこれには限定されない。変形例において、ガス排出弁18は、蓋体14以外の部分、例えばケース本体12の長側壁12bや短側壁12c等に設けられていてもよい。また、上記した実施形態では、ガス排出弁18が、中心Mを含む中央部に平面部18aを有していた。しかしこれには限定されない。変形例において、ガス排出弁18の中央部には、中心Mを通るように(例えば、平面視で直線状(I字状)ないしY字状の)切り欠き部が設けられていてもよい。また、ガス排出弁18の中央部は、例えば湾曲面や凹凸面等であってもよい。
【0053】
例えば上記した実施形態では、孔開け工程(ステップS3)において、吸着装置200を用い、吸着部210でガス排出弁18を吸着し除去することにより、外装体10に孔hが開けられていた。しかしこれには限定されない。例えば、上記した変形例のようにガス排出弁18の中央部に切り欠き部等が形成されていたり中央部の表面が湾曲していたりする場合は、吸着部210でガス排出弁18を吸着しにくかったり、所望の吸着力を得られなかったりする場合がある。このような場合は、以下のような方法を好適に採用することができる。
【0054】
(第1変形例)第1変形例では、吸着装置200にかえて把持部材を用意する。把持部材は、例えば棒状の使い捨ての部材である。リサイクルの観点から、把持部材は、ガス排出弁18と同じ材質であることが好ましい。ガス排出弁18がアルミニウム製である場合、把持部材もアルミニウム製であることが好ましい。
【0055】
第1変形例では、まず、ガス排出弁18に、把持部材の端部を接着または溶接して、両者を一体化させる。なお、ガス排出弁18および把持部材が金属製である場合は、抵抗溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接等の溶接が好ましい。ガス排出弁18および/または把持部材が樹脂製である場合は、接着剤による接着や、超音波溶接等の溶接が好ましい。
【0056】
次に、上下シリンダのような移動機構で把持部材を把持し、把持部材を引き上げてガス排出弁18に対して外装体10の外部方向に向かう力を加える。あるいは、作業者が把持部材を掴んで引っ張ってもよい。このような方法によっても、ガス排出弁18を開裂させることができる。
【0057】
(第2変形例)第2変形例では、吸着装置200にかえて圧力調整装置300を用意する。圧力調整装置300は、従来から一般的に用いられているものと同様の構成であってよく、特に限定されない。
図5は、第2変形例における
図4(A)対応図である。
図5に示すように、圧力調整装置300は、ここでは、チャンバー310と、チャンバー310内の圧力を調整する圧力調整部320と、を有している。チャンバー310は、ここでは円筒形状で、内径が、ガス排出弁18よりも大きく、かつ蓋体14の幅(短辺方向Xの長さ)よりも小さい。チャンバー310は、ガス排出弁18を覆うことができるサイズである。ただし、チャンバー310は、1つまたは複数の電池100をそのまま収容可能なサイズであってもよい。
【0058】
圧力調整部320は、例えば、分岐した流路の一方にガス供給源(例えば不活性ガスのタンク)が接続され、他方の流路に真空源(例えば真空ポンプ)が接続され、分岐点に三方バルブが配置された構造である。圧力調整部320は、チャンバー310と真空源とが連通するように三方バルブを切り替えることで、チャンバー310内を減圧し、かつ、チャンバー310とガス供給源とが連通するように三方バルブを切り替えることで、チャンバー310内を圧抜き(加圧)できるように構成されている。
【0059】
第2変形例では、まず、
図5に示すように、ガス排出弁18を覆うようにチャンバー310を被せ、蓋体14(ガス排出弁18の周縁部)と密着させる。これにより、ガス排出弁18の近傍に密閉空間を形成することができる。次に、三方バルブを切り替えることで、少なくとも1回、密閉空間内を減圧する(密閉空間内の圧力を変化させる)。これにより、ガス排出弁18に対して外装体10の外部方向に向かう力を加える。ただし、本発明者の検討によれば、密閉空間内を減圧することではガス排出弁18に作動圧以上の力を加えることが難しく、1回の減圧動作のみでガス排出弁18が開裂しない場合があった。そこで、ガス排出弁18が開裂しない場合は、三方バルブを切り替えることで、一旦チャンバー310内を圧抜きして大気圧に戻した後、再び密閉空間内を減圧する。この動作(加減圧)を複数回繰り返すことで、ガス排出弁18を疲労破壊させ、ガス排出弁18を開裂させることができる。
【0060】
なお、第2変形例では、
図5に示すように、電池100(詳しくは外装体10)を、蓋体14が鉛直方向Zの真下を向く反転姿勢とすることが好ましい。これにより、ガス排出弁18が開裂した際に、孔h(
図5には図示せず、
図4(B)参照。)が鉛直方向Zの真下を向くため、電池100を通常姿勢としてガス排出弁18を開裂させた場合に比べて、開裂によって生じた金属片等の金属異物が孔hから外装体10の内部に入り込むことを抑制できる。
【0061】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:外装体と、上記外装体に設けられたガス排出弁と、上記外装体の内部に収容された電極体と、を備える電池の処理方法であって、上記ガス排出弁に対して上記外装体の外部方向に向かう力を加えることにより、上記ガス排出弁を開裂させ、上記外装体に孔を開ける孔開け工程と、上記孔開け工程の後に、上記孔から上記外装体の内部に失活処理液を流入させ、上記電池を失活させる失活処理工程と、を含む、電池の処理方法。
項2:上記孔開け工程において、吸着部を備える吸着装置を用い、上記吸着部に上記ガス排出弁を吸着させて上記吸着部を引き上げることで、上記ガス排出弁を開裂させる、項1に記載の処理方法。
項3:上記孔開け工程において、把持部材を上記ガス排出弁に接着または溶接した後、上記把持部材を引き上げることで、上記ガス排出弁を開裂させる、項1に記載の処理方法。
項4:上記孔開け工程において、上記ガス排出弁を囲むように密閉空間を形成し、上記密閉空間内の圧力を変化させることで、上記ガス排出弁を開裂させる、項1に記載の処理方法。
項5:上記ガス排出弁は、中央部に平面部を有する、項1~項4のいずれか一つに記載の処理方法。
項6:上記ガス排出弁は、切り欠き部を有する、項1~項5のいずれか一つに記載の処理方法。
項7:上記孔開け工程の前に、上記電池を放電させる放電処理工程を含む、項1~項6のいずれか一つに記載の処理方法。
【符号の説明】
【0062】
10 外装体
12 ケース本体
14 蓋体
18 ガス排出弁
18a 平面部
18b 切り欠き部
20 電極体
100 電池
200 吸着装置
210 吸着部
220 移動機構
300 圧力調整装置
310 チャンバー
320 圧力調整部