(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075192
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】凝集沈殿装置、熟成槽および結合フロックの熟成方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/02 20060101AFI20240527BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240527BHJP
【FI】
B01D21/02 P
B01D21/02 F
C02F1/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186450
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】東 盛之
(72)【発明者】
【氏名】笠 政和
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BA21
4D015BA22
4D015BA24
4D015BB09
4D015BB12
4D015CA10
4D015DA04
4D015DA13
4D015DA16
4D015DA31
4D015DB33
4D015DC06
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA06
4D015EA32
4D015FA02
4D015FA19
(57)【要約】
【課題】結合フロックの熟成工程においてより熟成効果の向上に寄与する手段を提供すること。
【解決手段】原水Aを汚泥Cと処理水Bとに分離する凝集沈殿装置に使用する熟成槽20であって、原水Aを少なくとも含んだ流入水に高分子凝集剤Fと沈降促進剤Gを添加して撹拌することで、流入水内のフロックと沈降促進剤Gとが結合された結合フロックを熟成させる機能を有する熟成槽20を、流入水を順に通過させる複数の分割槽で構成し、各分割槽に独立制御可能な撹拌装置を設け個別に撹拌力を調整することで、結合フロックの熟成効果を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置に使用する熟成槽であって、
前記熟成槽は、前記原水を少なくとも含んだ流入水に、高分子凝集剤と沈降促進剤とを添加して撹拌することで、前記流入水内のフロックと前記沈降促進剤とが結合された結合フロックを熟成させる機能を有し、
前記熟成槽が、前記流入水を順に通過させる複数の分割槽からなり、各分割槽に、独立制御可能な撹拌装置を設けてあることを特徴とする、
凝集沈殿装置用の熟成槽。
【請求項2】
前記複数の分割槽が、
前記流入水に前記高分子凝集剤および沈降促進剤を添加して撹拌することにより、前記結合フロックの形成を促進させる、第1の分割槽と、
前記第1の分割槽からの越流水を前記第1の分割槽での撹拌よりも弱い力で撹拌することにより、前記結合フロックの成長を促進させる、第2の分割槽と、
を少なくとも含むことを特徴とする、
請求項1に記載の凝集沈殿装置用の熟成槽。
【請求項3】
前記第2の分割槽を複数設け、前記第1の分割槽からの越流水を各第2の分割槽を順に経由させることを特徴とする、
請求項2に記載の凝集沈殿装置用の熟成槽。
【請求項4】
前記複数の分割槽のうち少なくとも何れか1つの分割槽に、槽内を視認するための窓部を設けてあることを特徴とする、
請求項1に記載の凝集沈殿装置用の熟成槽。
【請求項5】
前記複数の分割槽のうち少なくとも何れか1つの分割槽の流出口に、前記撹拌装置による下降流を巡回させるためのバッフルを設けてあることを特徴とする、
請求項1に記載の凝集沈殿装置用の熟成槽。
【請求項6】
原水を、汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置であって、
凝集槽、熟成槽、沈殿槽、第1の循環ポンプ、第1のサイクロン、回収槽、および濃縮槽と、を少なくとも具備し、
前記凝集槽は、前記原水、前記濃縮槽からの越流水および無機凝集剤を少なくとも含む混合水を撹拌混合して懸濁物質を凝集する機能を有し、
前記熟成槽は、前記凝集槽からの混合水に、高分子凝集剤と沈降促進剤とを添加して撹拌混合することで、前記混合水内のフロックと沈降促進剤とが結合した結合フロックを熟成する機能を有し、
前記沈殿槽は、前記熟成槽からの混合水の中の結合フロックを沈降させて、当該混合水を、前記処理水と沈殿スラリーとに分離する機能を有し、
前記第1の循環ポンプは、少なくとも前記沈殿槽から取り出した沈殿スラリーを、前記第1のサイクロンに供給する機能を有し、
前記第1のサイクロンは、前記第1の循環ポンプから供給する沈殿スラリーを、分離スラリーと、前記沈降促進剤を含んだ泥状物と、に分離して、当該泥状物を前記沈降促進剤の一部または全部として前記熟成槽に供給し、前記分離スラリーを前記回収槽に供給する機能を有し、
前記回収槽は、前記第1のサイクロンからの分離スラリーに対し、回収スラリーと前記沈降促進剤を含んだ泥状物とに分離して、当該泥状物を前記沈降促進剤の一部または全部として前記熟成槽に供給し、前記回収スラリーを前記濃縮槽へ供給する機能を有し、
前記濃縮槽は、前記回収槽からの回収スラリーを所定時間滞留させて濃縮してから前記汚泥として取り出すとともに、越流分を前記越流水として前記凝集槽に供給する機能を有し、
前記熟成槽が、前記凝集槽からの混合水を順に通過させる複数の分割槽からなり、各分割槽に、独立制御可能な撹拌装置を具備してあることを特徴とする、
凝集沈殿装置。
【請求項7】
前記第2の循環ポンプおよび第2のサイクロンを更に具備し、
前記第2の循環ポンプは、少なくとも前記沈殿槽から取り出した沈殿スラリーを、前記第1のサイクロンおよびまたは前記第2のサイクロンに供給する機能を有し、
前記第2のサイクロンは、前記第2の循環ポンプから供給する沈殿スラリーを、分離スラリーと、前記沈降促進剤を含んだ泥状物と、に分離して、当該泥状物を前記沈降促進剤の一部または全部として前記熟成槽に供給し、前記分離スラリーを前記濃縮槽に供給する機能を有し、
前記濃縮槽は、前記回収槽からの回収スラリーおよび前記第2のサイクロンからの前記分離スラリーを所定時間滞留させて濃縮してから前記汚泥として取り出すとともに、越流分を前記越流水として前記凝集槽に供給する機能を有することを特徴とする、
請求項6に記載の凝集沈殿装置。
【請求項8】
前記凝集槽に送られる原水に対し、事前に無機凝集剤と炭酸ガスとを混合するラインミキサを更に具備することを特徴とする、
請求項6に記載の凝集沈殿装置。
【請求項9】
原水を汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置における結合フロックの熟成方法であって、
個別に独立制御可能な撹拌装置を具備してなる、第1の分割槽および第2の分割槽を用意し、
前記第1の分割槽で、前記原水を少なくとも含んだ流入水に、高分子凝集剤と沈降促進剤とを添加して撹拌することで、前記流入水内のフロックと前記沈降促進剤とが結合された結合フロックを生成した混合水を得る工程と、
前記第2の分割槽で、前記第1の分割槽から越流した混合水を、前記第1の分割槽での撹拌よりも弱い力で撹拌して、前記結合フロックの成長を促進させる工程と、を少なくとも有することを特徴とする、
結合フロックの熟成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事等の排水処理において、原水を凝集沈殿によって汚泥と処理水とに分離するための、凝集沈殿装置、熟成槽および結合フロックの熟成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原水を凝集沈殿によって汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置として、出願人は、以下の特許文献1に記載の発明を着想した。
この凝集沈殿装置は、凝集槽、熟成槽、沈殿槽、循環ポンプ、サイクロン、分配槽、および濃縮槽を少なくとも具備しており、各槽は以下の機能を有している。
[1]凝集槽:原水と濃縮槽からの越流水とを含む混合水に無機凝集剤を添加して撹拌混合して懸濁物質を凝集する。
[2]熟成槽:凝集槽からの混合水に、高分子凝集剤と沈降促進剤とを添加して撹拌混合することで、混合水内のフロックと沈降促進剤とが結合した結合フロックを熟成する。
[3]沈殿槽:熟成槽からの混合水の中の結合フロックを沈降させて、混合水を、処理水と沈殿スラリーとに分離する。
[4]循環ポンプ:少なくとも沈殿槽から取り出した沈殿スラリーを、前記サイクロンに供給する。
[5]サイクロン:循環ポンプから供給する沈殿スラリーを、分離スラリーと、前記沈降促進剤を含んだ泥状物と、に分離して、前記泥状物を前記沈降促進剤の一部または全部として熟成槽に供給し、分離スラリーを分配槽に供給する。
[6]分配槽は、サイクロンからの分離スラリーに対し、エア抜きを行いつつ排出スラリーと循環スラリーとに分離して、排出スラリーを濃縮槽へ供給し、循環スラリーを沈殿槽からの沈殿スラリーとともに循環ポンプへ供給する。
[7]濃縮槽:分配槽からの排出スラリーを所定時間滞留させて濃縮してから汚泥として取り出すとともに、越流分を越流水として凝集槽に供給する。
【0003】
このように、凝集沈殿装置は、原水から処理水を分離するにあたって、懸濁物質の凝集工程と、結合フロックの熟成工程と、結合フロックからなる沈殿スラリーの分離工程とを少なくとも有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、結合フロックの熟成工程において、より熟成効果の向上に寄与する手段の提供を目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、原水を汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置に使用する熟成槽であって、前記熟成槽は、前記原水を少なくとも含んだ流入水に、高分子凝集剤と沈降促進剤とを添加して撹拌することで、前記流入水内のフロックと前記沈降促進剤とが結合された結合フロックを熟成させる機能を有し、前記熟成槽が、前記流入水を順に通過させる複数の分割槽からなり、各分割槽に、独立制御可能な撹拌装置を設けてあることを特徴とするものである。
また、本願発明は、前記複数の分割槽が、前記流入水に前記高分子凝集剤および沈降促進剤を添加して撹拌することにより、前記結合フロックの形成を促進させる、第1の分割槽と、前記第1の分割槽からの越流水を前記第1の分割槽での撹拌よりも弱い力で撹拌することにより、前記結合フロックの成長を促進させる、第2の分割槽と、を少なくとも含むよう構成してもよい。
また、本願発明は、前記第2の分割槽を複数設け、前記第1の分割槽からの越流水を各第2の分割槽を順に経由させるよう構成してもよい。
また、本願発明は、前記複数の分割槽のうち少なくとも何れか1つの分割槽に、槽内を視認するための窓部を設けてもよい。
また、本願発明は、前記複数の分割槽のうち少なくとも何れか1つの分割槽の流出口に、前記撹拌装置による下降流を巡回させるためのバッフルを設けてもよい。
【0007】
また、本願発明は、原水を、汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置であって、凝集槽、熟成槽、沈殿槽、第1の循環ポンプ、第1のサイクロン、回収槽、および濃縮槽と、を少なくとも具備し、前記凝集槽は、前記原水、前記濃縮槽からの越流水および無機凝集剤を少なくとも含む混合水を撹拌混合して懸濁物質を凝集する機能を有し、前記熟成槽は、前記凝集槽からの混合水に、高分子凝集剤と沈降促進剤とを添加して撹拌混合することで、前記混合水内のフロックと沈降促進剤とが結合した結合フロックを熟成する機能を有し、前記沈殿槽は、前記熟成槽からの混合水の中の結合フロックを沈降させて、当該混合水を、前記処理水と沈殿スラリーとに分離する機能を有し、前記第1の循環ポンプは、少なくとも前記沈殿槽から取り出した沈殿スラリーを、前記第1のサイクロンに供給する機能を有し、前記第1のサイクロンは、前記第1の循環ポンプから供給する沈殿スラリーを、分離スラリーと、前記沈降促進剤を含んだ泥状物と、に分離して、当該泥状物を前記沈降促進剤の一部または全部として前記熟成槽に供給し、前記分離スラリーを前記回収槽に供給する機能を有し、
前記回収槽は、前記第1のサイクロンからの分離スラリーに対し、回収スラリーと前記沈降促進剤を含んだ泥状物とに分離して、当該泥状物を前記沈降促進剤の一部または全部として前記熟成槽に供給し、前記回収スラリーを前記濃縮槽へ供給する機能を有し、前記濃縮槽は、前記回収槽からの回収スラリーを所定時間滞留させて濃縮してから前記汚泥として取り出すとともに、越流分を前記越流水として前記凝集槽に供給する機能を有し、前記熟成槽が、前記凝集槽からの混合水を順に通過させる複数の分割槽からなり、各分割槽に、独立制御可能な撹拌装置を具備してあることを特徴とする。
ことを特徴とするものである。
また、本願発明は、前記第2の循環ポンプおよび第2のサイクロンを更に具備し、前記第2の循環ポンプは、少なくとも前記沈殿槽から取り出した沈殿スラリーを、前記第1のサイクロンおよびまたは前記第2のサイクロンに供給する機能を有し、前記第2のサイクロンは、前記第2の循環ポンプから供給する沈殿スラリーを、分離スラリーと、前記沈降促進剤を含んだ泥状物と、に分離して、当該泥状物を前記沈降促進剤の一部または全部として前記熟成槽に供給し、前記分離スラリーを前記濃縮槽に供給する機能を有し、前記濃縮槽は、前記回収槽からの回収スラリーおよび前記第2のサイクロンからの前記分離スラリーを所定時間滞留させて濃縮してから前記汚泥として取り出すとともに、越流分を前記越流水として前記凝集槽に供給する機能を有する構成としてもよい。
また、本願発明は、前記凝集槽に送られる原水に対し、事前に無機凝集剤と炭酸ガスとを混合するラインミキサを更に具備するよう構成してもよい。
【0008】
また、本願発明は、原水を汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置における結合フロックの熟成方法であって、個別に独立制御可能な撹拌装置を具備してなる、第1の分割槽および第2の分割槽を用意し、前記第1の分割槽で、前記原水を少なくとも含んだ流入水に、高分子凝集剤と沈降促進剤とを添加して撹拌することで、前記流入水内のフロックと前記沈降促進剤とが結合された結合フロックを生成した混合水を得る工程と、前記第2の分割槽で、前記第1の分割槽から越流した混合水を、前記第1の分割槽での撹拌よりも弱い力で撹拌して、前記結合フロックの成長を促進させる工程と、を少なくとも有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)熟成槽を複数の分割槽で構成しつつ、各分割槽に独立制御可能な撹拌装置を設けることで、各分割槽での結合フロックの熟成に適した撹拌力の管理を実施することができる。
(2)凝集槽からの混合水を最初に受け入れる第1の分割槽では比較的回転数の高い撹拌でもって、フロックと高分子凝集剤および沈降促進剤との衝突機会を増やすことで、結合フロックの形成を促進させ、第1の分割槽からの越流水を受け入れる第2の分割槽では、第1の分割槽での撹拌よりも弱い力で撹拌することにより、結合フロックを破壊することなく成長を促進させることで、より熟成した結合フロックを得ることができる。
(3)第2の分割槽を複数設け、第1の分割槽からの越流水を各第2の分割槽を順に経由させることで、結合フロックの熟成効果をより高めることができる。
(4)熟成槽を構成する複数の分割槽のうち少なくとも何れか1つの分割槽に、槽内を視認するための窓部を設けておくことにより、結合フロックの熟成状況を適宜確認し、撹拌力の管理(回転数など)を適宜調整することができる。
(5)熟成槽を構成する複数の分割槽のうち少なくとも何れか1つの分割槽にバッフルを設けておくことにより、前記撹拌装置による水流の勢いによって結合フロックの熟成が不十分なまま次の槽へと流出することを防止することができる。
(6)第1の循環ポンプおよび第1のサイクロンの他に、第2の循環ポンプおよび第2のサイクロンを具備することで、沈殿槽での沈殿スラリーの引き抜き量を増やすことができる。また、第1の循環ポンプの故障に備えて、第2の循環ポンプを予備ポンプとして確保しておくことができる。
(7)濃縮槽に、高分子凝集剤の添加機能を設けることで、濃縮槽内に収容した排出スラリーの濃縮効果をより高めることができる。
(8)凝集槽に送られる原水に対し、事前に無機凝集剤と炭酸ガスとを混合するラインミキサを設けることで、炭酸ガスと無機凝集剤が十分に混合した原水を凝集槽へ流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る凝集沈殿装置の全体構成を示す概略図。
【
図2】実施例2に係る凝集沈殿装置の一部構成を示す概略図。
【
図3】実施例3に係る凝集沈殿装置での熟成槽の配置例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0012】
<1>全体構成
本発明に係る凝集沈殿装置は、原水Aを、処理水Bと汚泥Cとに分離する装置である。
そして、
図1に示す凝集沈殿装置は、主要な構成要素として、凝集槽10、熟成槽20、沈殿槽30、第1の循環ポンプ40、第1のサイクロン50、回収槽60、および濃縮槽70と、を少なくとも具備している。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0013】
<2>凝集槽
凝集槽10は、原水Aと濃縮槽70からの越流水とを含む混合水に、無機凝集剤Eを添加して、槽内に設けた撹拌装置でもって撹拌混合する機能を有する。
本発明で対象とする原水Aは、建設工事で発生した排水(建設排水)や、生活排水など種々の排水が含まれる。
濃縮槽70からの越流水の詳細は、後述する濃縮槽70の欄で説明する。
凝集槽10内の混合水の越流分は、次工程の熟成槽20へと送られる。
【0014】
<2.1>無機凝集剤
無機凝集剤Dは、混合水の中の懸濁物質を凝集させて微細なフロックを生成させるための添加剤である。
無機凝集剤Dとしては、たとえばポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄のうち何れか或いはこれらの混合物を使用することができる。
なお、本発明において、無機凝集剤Dの添加方法は特段限定するものではなく、原水Aを凝集槽10に送るラインの途中で無機凝集剤Dを添加してもよいし、凝集槽10に無機凝集剤Dを直接添加してもよい。
【0015】
<2.2>炭酸ガスとの混合
本発明では、原水Aに対し炭酸ガスEを混合する機構を設けても良い。
本実施例では、原水Aを凝集槽10に送るラインの途中に炭酸ガスEの供給ラインと、無機凝集剤Dの供給ラインとを接続し、ラインミキサでもって、炭酸ガスEと無機凝集剤Dを混合した原水Aを凝集槽10に送るよう構成している。
当該構成により事前に炭酸ガスEと無機凝集剤Dが十分に混合した原水Aを凝集槽10へ流入させるという効果を得ることができる。
【0016】
<2.3>越流量の調整機構
凝集槽10の流出口には、高さ調整可能な堰板(仕切り板)を設けておいても良い(図示せず)。
当該構成とすることにより、凝集槽10内の混合水が均一な越流となるように調整することができる。
【0017】
<3>熟成槽
熟成槽20は、凝集槽10から越流してきた混合水に、高分子凝集剤Fと沈降促進剤Gとを添加して撹拌混合することで、当該混合水の中にある微細なフロックと沈降促進剤Gの結合を図り、結合フロックを熟成する機能を有する。
【0018】
<3.1>各添加剤について
まず、熟成槽20で添加する添加材について説明する。
【0019】
<3.1.1>高分子凝集剤
高分子凝集剤Fは、凝集槽10で生成された微細なフロックと沈降促進剤Gを結合するための添加剤である。
高分子凝集剤Fとしては、たとえばノニオン性、アニオン性、カチオン性あるいは両性の高分子凝集剤Fや、天然高分子凝集剤Fであるアルギン酸などのうち何れか或いはこれらの混合物を用いることができる。
【0020】
<3.1.2>沈降促進剤
沈降促進剤Gは、凝集槽10で生成された微細なフロックと結合することにより、より比重の大きなフロックを得るための添加剤である。
沈降促進剤Gとしては、砂などの粒状物などを用いる事ができる。
凝集槽10で添加される沈降促進剤Gは、新たに用意するもの、または後述する沈殿槽30から抜き出されたスラリー(沈殿スラリー)から再度分離されたもの、の何れも含まれる。
【0021】
<3.1.3>各添加剤の添加方法
本実施例では、凝集槽10から越流した混合水が熟成槽20に送られる途中で沈降促進剤Gを添加し、熟成槽20に直接高分子凝集剤Fを添加しているが、本発明においてこれらの添加剤の添加態様や添加順番を特段限定するものではない。
【0022】
<3.2>熟成槽の構造
次に、熟成槽20の構成について説明する。
本発明では、熟成槽20を、複数の分割槽で構成することができる。
本実施例では、熟成槽20を二種類の分割槽(第1の分割槽21を一台、第2の分割槽22を三台)の計四台で構成しており、凝集槽10からの混合水を、第1の分割槽21、第2の分割槽22a、第2の分割槽22b、第2の分割槽22c、の順に直列配置している。
【0023】
<3.2.1>撹拌装置
各分割槽には、個別に独立制御可能な撹拌装置を設けている。
また、各分割槽のうち、少なくとも何れか1つの分割槽には、槽内の結合フロックの状態を視認するための窓部を設けておいても良い(図示せず)。
さらに、各分割槽のうち、少なくとも何れか1つの分割槽には、撹拌装置による水流の勢いによって結合フロックの熟成が不十分なまま次の槽へと流出することを防止するためのバッフル23(水流調整板)を設けておいても良い(図示せず)。
以下、各分割槽の詳細について説明する。
【0024】
<3.3>第1の分割槽
第1の分割槽21は、凝集槽10から越流してきた混合水の中に結合フロックを形成するための槽である。
より具体的には、第1の分割槽21では、凝集槽10からの混合水に対し、高分子凝集剤Fおよび沈降促進剤Gを添加して撹拌することにより、結合フロックの形成を促進させる機能を有する。
第1の分割槽21で添加する高分子凝集剤Fおよび沈降促進剤Gの詳細は、前述した通りである。
【0025】
<3.3.1>結合フロックの形成
第1の分割槽21では、比較的強い撹拌力でもって混合撹拌を行うことが好ましい。
その理由は、結合フロックの形成にあたって、混合水中のフロックと高分子凝集剤Fおよび沈降促進剤Gとの接触頻度を高めることが好ましいためである。
撹拌力の調整には、撹拌羽根のサイズ調整や回転数調整、回転方法の切替などを適宜用いる事ができるが、一般的には撹拌羽根の回転数を調整する方法が好ましい。
本実施例では、第1の分割槽21での撹拌羽根の回転数を約60[rpm]としている。
第1の分割槽21で結合フロックが形成された混合水の越流分は、第2の分割槽22aへと送られる。
【0026】
<3.4>第2の分割槽
第2の分割槽22は、結合フロックの成長を促進させるための槽である。
本実施例では、第2の分割槽22を三台直列に繋いで構成しており、凝集槽10から越流してきた混合水が各第2の分割槽22を経由して、最終となる三台目の第2の分割槽22cから越流してきた混合水が沈殿槽30へと送られることになる。
【0027】
<3.4.1>結合フロックの成長
第2の分割槽22では、第1の分割槽21で実施される撹拌よりも弱い力で撹拌を行うことが好ましい。
その理由は、第1の分割槽21で形成された結合フロックを、第2の分割槽22に設けた撹拌装置でもって破壊させないためである。
第2の分割槽22による結合フロックの成長が進むことで、結合フロックは、比重が大きく沈澱しやすくなるように熟成されることになる。
【0028】
また、第2の分割槽22を複数設けてある場合には、順番に送られる第2の分割槽22での撹拌力を徐々に弱めるように構成しておくこともできる。
当該構成により、各第2の分割槽22の経由によって成長が進んだ結合フロックの破壊をより効率良く抑制することができる。
本実施例では、混合水が順に流れる三台の第2の分割槽22a,22b,22cでの撹拌羽根の回転数を以下の様に設定している。
・一台目の第2の分割槽22a:約50~40[rpm]
・二台目の第2の分割槽22b:約40~30[rpm]
・三台目の第2の分割槽22c:約30~20[rpm]
【0029】
<4>沈殿槽
沈殿槽30は、熟成槽20からの混合水の中の結合フロックを沈降させて、混合水を、処理水Bと沈殿スラリーとに分離する機能を有する。
熟成槽20で大きく成長した結合フロックは、沈殿槽30の下方へと沈殿するため、混合水は、沈殿槽30内で沈殿した結合フロックからなる沈殿スラリーと、その上澄みである処理水Bとに分離される。
沈殿槽30の底部には、沈殿スラリーを掻き寄せて集める手段と、集めた沈殿スラリーを引き抜くためのラインを設けている。
【0030】
<5>第1の循環ポンプ
第1の循環ポンプ40は、沈殿槽30から沈殿スラリーを引き抜いて、サイクロンへと送る機能を有する。
第1の循環ポンプ40は、公知のポンプを用いることができる。
【0031】
<6>第1のサイクロン
第1のサイクロン50は、第1の循環ポンプ40で供給された沈殿スラリーから泥状物を取り出す機能を有する。
泥状物は、沈殿スラリーに含まれていた沈降促進剤Gを主として含むスラッジである。
第1のサイクロン50は、公知の分離器または分級器を用いることができる。
まず始めに、第1のサイクロン50は、内部での遠心分離作用によって、循環ポンプから供給する沈殿スラリーを、分離スラリーと泥状物とに分離する。
分離した分離スラリーは、回収槽60へと送られる。
また、分離した泥状物は、沈降促進剤Gの一部または全部として熟成槽20へと供給することができる。
【0032】
<7>回収槽
回収槽60は、第1のサイクロン50からの分離スラリーを一旦収容して、濃縮槽70に回収スラリーとして供給する機能を有する。
【0033】
<7.1>開放空間
回収槽60は、槽外の空間と連通する開放空間を設けている。
まず、回収槽はサイクロンからの分離スラリーを収容する。
【0034】
<7.2>泥状物の再回収
また、回収槽60には、分離スラリーに残存する泥状物を再回収して、沈降促進剤Gの一部または全部として熟成槽20へと供給可能なラインを設けておいてもよい。
【0035】
<8>濃縮槽
濃縮槽70は、回収スラリーを滞留させて濃縮する機能を有する。
まず、濃縮槽70は、回収槽60からの回収スラリーを収容して、所定時間滞留させて、回収スラリーを濃縮する。
濃縮槽70内で濃縮された排出スラリーは、適当なタイミングで、濃縮槽70の下部から排泥ポンプ等によって最終的な汚泥Cとして抜き出され、次工程の脱水処理へと送られる。
また、回収スラリーの抜出しは濃縮槽70に設置された汚泥界面計で抜出し量を制御することもできる。
よって、回収スラリーを濃縮してなる汚泥Cは、常に高濃度の状態で脱水処理されることとなり、脱水効率の向上に寄与することとなる。
【0036】
また、本発明では、濃縮槽70に対し、排出スラリーに対する高分子凝集剤Fの添加機能を設けておくこともできる。
当該機能を設けることにより、回収スラリーの濃縮効果をより高めることができる。
【0037】
また、濃縮槽70に収容した回収スラリーの越流水は、凝集槽10へと循環するように構成する。
濃縮槽70から凝集槽10へ循環させる越流水の供給態様は、越流分が自然流下の状態となるように構成すると、特段のエネルギーを要しない点で好ましい。