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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075193
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/43 20180101AFI20240527BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20240527BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20240527BHJP
   F21S 41/24 20180101ALI20240527BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20240527BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240527BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240527BHJP
【FI】
F21S41/43
F21S41/153
F21S41/143
F21S41/24
F21S41/275
F21W102:13
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186452
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 良平
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハイビーム用とロービーム用とが一体化された照明装置において、ロービーム使用時に斜め上方向の配光を容易に実現する。
【解決手段】第1の光源3は、ハイビーム用で、第2の光源4は、ロービーム用であり、第1のインナーレンズ5は、ハイビーム用であり、第2のインナーレンズ6は、ロービーム用である。遮光板7は、第1および第2のインナーレンズ5、6の間に配置され、アウターレンズ8は、第1および第2のインナーレンズ5、6の光軸上の前方に配置される。第2のインナーレンズ6および/または遮光板7は、ロービーム使用時に基準姿勢における光軸に直交する面内で、光軸に対し斜め上方向の配光を付加する構造を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイビーム用の第1の光源と、
ロービーム用の第2の光源と、
前記第1の光源から光を入射し、使用時の基準姿勢における略水平方向に光軸を有するハイビーム用の第1のインナーレンズと、
前記第2の光源から光を入射し、前記基準姿勢における前記第1のインナーレンズの上に配置され、前記基準姿勢における略水平方向に光軸を有するロービーム用の第2のインナーレンズと、
前記第1および第2のインナーレンズの間に配置される遮光板と、
前記第1および第2のインナーレンズの光軸上の前方に配置されるアウターレンズと、
を備え、
前記第2のインナーレンズおよび/または前記遮光板は、ロービーム使用時に前記基準姿勢における光軸に直交する面内で、光軸に対し斜め上方向の配光を付加する構造を有する、
照明装置。
【請求項2】
前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記第2のインナーレンズの上側側面には、出射光の一部をハイビーム側に進行させる全反射面が設けられる、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記第2のインナーレンズの出射面は、上側側面側ほど前記第1および第2の光源が配置される基板側に近づくように傾けられる、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記第2のインナーレンズは、出射光の一部をハイビーム側に進行させるプリズムを出射面の前面に有する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記遮光板には、出射側の光軸の両側に一対の切り欠きが設けられる、
請求項1~4のいずれか一つに記載の照明装置。
【請求項6】
前記切り欠きは、光軸の中央側から両側に向かい、直線状または曲線状に入射側に深くなる部分を有する、
請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第1のインナーレンズの光軸方向の長さは、前記第2のインナーレンズの光軸方向の長さよりも長い、
請求項1に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のヘッドランプ等に用いられる照明装置として、小型化や装置点数の削減等から、ハイビーム用とロービーム用とが一体化された照明装置が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0003】
一般に、ロービームについては、対向車や前走車を眩惑しないよう、上方向を照らす光がカットされるようになっており、カットされる部分と照明部分の境目はカットオフラインと呼ばれている。前述のハイビームとロービームとが一体化された照明装置においては、ロービーム用のインナーレンズとハイビーム用のインナーレンズとの間に遮光板が設けられることでカットオフラインが形成されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/246065号
【特許文献2】特開平7-195974号公報
【特許文献3】特開2017-119474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動二輪車では、カーブを走行する際に車体を傾けることから、夜間の走行では通常のロービームの配光ではカーブの前方を照らす光がなくなってしまい、視認性が低下してしまう。そのため、夜間の走行ではカーブの前方を照らすことが求められ、車体が正面を向いて起立した基準姿勢(照明装置が傾けられていない状態)において斜め上方向(左右の斜め上方向)の配光が必要となる。
【0006】
しかし、前述のロービーム用のインナーレンズとハイビーム用のインナーレンズとの間に遮光板が設けられるタイプの照明装置では、遮光板の存在によりロービーム用のインナーレンズからハイビーム側に光を照射することが難しく、要求される配光を得ることが困難であった。
【0007】
また、車体が旋回を行う際にソレノイドにより反射鏡を回動させることにより配光特性を調整する自動二輪車用の前照灯が提案されているが(例えば、特許文献2等を参照)、構造が複雑となり、照明装置が大型化する問題があった。
【0008】
また、車体のバンク角に応じて点灯する補助灯を備えた乗物が提案されているが(例えば、特許文献3等を参照)、構造が複雑化するとともに装置点数が増大する問題があった。
【0009】
なお、自動二輪車についての問題点に言及したが、自動二輪車に限られず、ハイビーム用とロービーム用とが一体化された照明装置において、ロービーム使用時に斜め上方向の配光が必要となる状況は存在する。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ハイビーム用とロービーム用とが一体化された照明装置において、ロービーム使用時に斜め上方向の配光を容易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る照明装置は、第1の光源と、第2の光源と、第1のインナーレンズと、第2のインナーレンズと、遮光板と、アウターレンズとを備える。第1の光源は、ハイビーム用である。第2の光源は、ロービーム用である。第1のインナーレンズは、ハイビーム用であり、第1の光源から光を入射し、使用時の基準姿勢における略水平方向に光軸を有する。第2のインナーレンズは、ロービーム用であり、第2の光源から光を入射し、基準姿勢における第1のインナーレンズの上に配置され、基準姿勢における略水平方向に光軸を有する。遮光板は、第1および第2のインナーレンズの間に配置される。アウターレンズは、第1および第2のインナーレンズの光軸上の前方に配置される。第2のインナーレンズおよび/または遮光板は、ロービーム使用時に基準姿勢における光軸に直交する面内で、光軸に対し斜め上方向の配光を付加する構造を有する。
【0012】
本発明の一態様に係る照明装置は、ハイビーム用とロービーム用とが一体化された照明装置において、ロービーム使用時に斜め上方向の配光を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態にかかる照明装置の要部の斜視図である。
図2図2は、基板の周辺の分解斜視図である。
図3図3は、照明装置の要部の別の視点からの斜視図(1)である。
図4図4は、照明装置の要部の別の視点からの斜視図(2)である。
図5図5は、照明装置の要部の正面図である。
図6図6は、照明装置の要部の平面図である。
図7図7は、第2のインナーレンズの設計と遮光板の切り欠きの有無とによるアウターレンズ焦点位置における照度分布の例を示す図である。
図8図8は、第2のインナーレンズの設計と遮光板の切り欠きの有無とによるアウターレンズの前方におけるスクリーン照射イメージの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る照明装置について図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0015】
図1は、一実施形態にかかる照明装置1の要部の斜視図である。図2は、基板2の周辺の分解斜視図である。図3は、照明装置1の要部の別の視点からの斜視図である。図4は、照明装置1の要部の更に別の視点からの斜視図である。図5は、照明装置1の要部の正面図である。図6は、照明装置1の要部の平面図である。なお、座標軸X、Zは、使用時の基準姿勢、すなわち自動二輪車であれば車体を傾けずに起立した状態における水平方向であり、座標軸Zの正方向が車体の進行方向(正面方向)であって、照明装置1の光軸方向である。座標軸Yは使用時の基準姿勢における垂直方向(鉛直方向)である。
【0016】
図1図6において、照明装置1は、基板2と、第1の光源3と、第2の光源4(4A、4B、4C)と、第1のインナーレンズ5と、第2のインナーレンズ6と、遮光板7と、アウターレンズ8とを備えている。なお、基板2、第1の光源3、第2の光源4(4A、4B、4C)、第1のインナーレンズ5、第2のインナーレンズ6および遮光板7は一体に組み立てられており、これとは離れてアウターレンズ8が配置されるが、両者は図示の配置関係を維持した状態で、図示しない支持部材(筐体フレーム等)により支持される。
【0017】
第1の光源3は、ハイビーム用であり、基板2上に配置され、図示の例では1パッケージのLED(Light Emitting Diode)等により構成され、図2に示されるように、配線2a、2bを介して電力が供給される。なお、例えば、光源3は、充分な光量を確保するために、1パッケージに3つのLEDチップが搭載されている。光源3の表面には略矩形状の発光面3aが設けられている。
【0018】
第2の光源4(4A、4B、4C)は、ロービーム用であり、基板2上に配置され、図2に示されるように、例えば3パッケージのLED等により構成され、配線2c~2fを介して電力が供給される。なお、例えば、中央の光源4Aは1パッケージに2つのLEDチップが搭載されており、両側の光源4B、4Cはそれぞれ1パッケージに1つのLEDチップが搭載されている。光源4A、4B、4Cの表面には略矩形状の発光面4Aa、4Ba、4Caが設けられている。
【0019】
第1のインナーレンズ5は、ハイビーム用であり、第1の光源3から光を入射し、使用時の基準姿勢における略水平方向(Z軸方向)に光軸を有している。第1のインナーレンズ5は、透明な材質、例えば透明な合成樹脂等により形成され、図2に示されるように、入射面5aと、出射面5bと、上側側面5cと、下側側面5dと、凸部5e、5fとを有している。
【0020】
入射面5aは、第1の光源3の発光面3aに中央部が対向するフラットな横長矩形状の面となっており、その左右端部は凸部5e、5fに連なっている。出射面5bは、入射面5aに対して光軸上でアウターレンズ8側に位置し、光軸に略垂直な略矩形状のフラットな面となっている。上側側面5cは、遮光板7に接するフラットな面となっている。下側側面5dは、曲面となっている。第1のインナーレンズ5の光軸方向の長さは、第2のインナーレンズ6の光軸方向の長さよりも長くなっている。これにより、第2のインナーレンズ6の出射光の一部を第1のインナーレンズ5のハイビーム側に進行させることが容易になる。
【0021】
第2のインナーレンズ6は、ロービーム用であり、第2の光源4(4A、4B、4C)から光を入射し、基準姿勢における第1のインナーレンズ5の上に遮光板7を介して配置され、基準姿勢における略水平方向(Z軸方向)に光軸を有している。なお、ロービーム用の第2のインナーレンズ6が上側にあるのは、その後段のアウターレンズ8により上下の光像が反転するためである。
【0022】
第2のインナーレンズ6は、透明な材質、例えば透明な合成樹脂等により形成され、図2に示されるように、入射面6aと、出射面6bと、下側側面6cと、上側側面6dと、右側側面6eと、左側側面6fと、凸部6g、6hとを有している。入射面6aは、第2の光源4(4A、4B、4C)に対向するフラットな横長矩形状の面となっており、その左右端部は凸部6g、6hに連なっている。出射面6bは、入射面6aに対して光軸上でアウターレンズ8側に位置し、光軸に略垂直な横長矩形状のフラットな面となっている。なお、本実施形態では、入射面6aの光軸方向(Z軸方向)の位置を、第1のインナーレンズ5の入射面5aの光軸方向の位置と一致させ、出射面6bの光軸方向の位置を、第1のインナーレンズ5の出射面5bの光軸方向の位置よりも基板2寄りに設定させている。下側側面6cおよび上側側面6dは、出射面6b側から入射面6a側に向かって下側側面6cと上側側面6dとの間隔が薄くなる曲面または平面となっている。右側側面6eおよび左側側面6fは、出射面6b側から入射面6a側に向かって右側側面6eと左側側面6fとの間隔が薄くなる平面となっている。
【0023】
遮光板7は、第1および第2のインナーレンズ5、6の間に配置される。遮光板7は、対向車や前走車を眩惑しないようにするためのカットオフラインを定める。遮光板7は、例えば金属等により形成され、図2に示されるように、平板部7aと、切り欠き7b、7cとを有している。切り欠き7b、7cは、光軸の中央側から両側に向かい、直線状または曲線状に入射側に深くなる傾斜部を有している。切り欠き7b、7cの形状(特に傾斜部の傾斜の角度、角度変化、深さ等)により、後述する配光の調整が可能となる。図2および図6に示されるように、X軸方向において、第1のインナーレンズ5の幅よりも第2のインナーレンズ6の幅は大きく、第1のインナーレンズ5は遮光板7の切り欠き7b、7cの内側に収まり、第2のインナーレンズ6は遮光板7の切り欠き7b、7cの両方に跨っている。また、遮光板7の光軸方向の長さは、第1のインナーレンズ5の光軸方向の長さと略同等である。なお、本実施形態では、遮光板7の後辺の位置を第1のインナーレンズ5の入射面5aの位置に一致させた状態で、遮光板7の前辺から第1のインナーレンズ5の出射面5bがわずかに前方に突き出る長さに設定している。
【0024】
第2のインナーレンズ6および/または遮光板7は、ロービーム使用時に基準姿勢におけるアウターレンズ8の光軸に直交する面内で、中心となる光軸に対し斜め上方向の配光を付加する構造を有する。上記の斜め上方向の配光を付加する構造として、第2のインナーレンズ6の上側側面6dには、出射光の一部をハイビーム側に進行させる全反射面が設けられる。また、斜め上方向の配光を付加する構造として、遮光板7には、出射側の光軸の両側に一対の切り欠き7b、7c(図2)が設けられる。なお、図示の例では、第2のインナーレンズ6における構造と、遮光板7における構造との両者が適用されているが、いずれか一方の構造であってもよい。
【0025】
アウターレンズ8は、第1および第2のインナーレンズ5、6の光軸上の前方に配置される。アウターレンズ8は、例えば、インナーレンズ5の出射面の位置に設定されたアウターレンズ8の焦点位置に表れるインナーレンズ5、6の照度分布を前方に投影する。
【0026】
アウターレンズ8は、例えば透明な合成樹脂等により形成され、図4に示されるように、入射面8aと、出射面8bと、側面8cとを有している。入射面8aは、第1のインナーレンズ5の出射面5bおよび第2のインナーレンズ6の出射面6bと対向し、光軸に略垂直な、円形の上下左右が直線状にカットされた略矩形状のフラットな面となっている。図示の例では、入射面8aは上側が出射側に若干傾斜しており、入射面8aは光軸に対して正確に垂直である必要はなく、光軸に対して傾斜していてもよい。出射面8bは、略半球面の自由曲面となっている。側面8cは、入射面8aと出射面8bとを繋いでいる。
【0027】
ヘッドランプの基本的な動作として、例えば図5において、ハイビームの使用時には第1の光源3が点灯し、アウターレンズ8の焦点位置に及ぼす第1のインナーレンズ5の出射面5b(図2)の照度分布がアウターレンズ8により上下が反転して前方のやや上側に投影される。なお、図示の例ではアウターレンズ焦点位置Lに第1のインナーレンズ5の出射面5bが位置決めされているため、第1のインナーレンズ5の出射面5bにおける照度分布が投影される。
【0028】
また、ロービームの使用時には第2の光源4(4A、4B、4C)が点灯し、アウターレンズ焦点位置Lに及ぼす第2のインナーレンズ6の出射面6b(図2)における照度分布がアウターレンズ8により上下が反転して前方のやや下側に投影される。
【0029】
図7は、第2のインナーレンズ6、6’の設計と遮光板7、7’の切り欠き7b、7cの有無とによるアウターレンズ焦点位置Lにおける照度分布の例を示す図であり、第2のインナーレンズ6、6’側が発光している状態を示している。第2のインナーレンズ6’および遮光板7’は比較例における、実施形態の第2のインナーレンズ6および遮光板7に対応する部材である。図8は、第2のインナーレンズ6、6’の設計と遮光板7、7’の切り欠き7b、7cの有無とによるアウターレンズ8の前方におけるスクリーン照射イメージの例を示す図であり、同様に第2のインナーレンズ6側が発光している状態を示している。
【0030】
図7において、遮光板7’に切り欠きがない場合であって、インナーレンズ設計として第2のインナーレンズ6’の上側側面6d’による全反射面が光軸に対して平行光を出射するようになっている場合の照度分布に対し、インナーレンズ設計として第2のインナーレンズ6の上側側面6dによる全反射面が光軸に対してハイビーム側に曲げて進行させて出射するようになっている場合、照度分布としてはインナーレンズ6のハイビーム側が全体的に強くなっている。なお、光軸に対してハイビーム側に曲げて進行させて出射するのは、第2のインナーレンズ6の上側側面6dが第2のインナーレンズ6’の上側側面6d’よりも光軸方向(Z軸方向)に対し浅い角度になっているからである。その角度の調整により、ハイビーム側に拡がる配光の調整が可能である。
【0031】
これが、アウターレンズ8により上下反転されて投影されることにより、図8における同じ組み合わせの欄に示されるように、光軸に直交する面内で、光軸に対し斜め上方向の配光を付加することになる。これは、アウターレンズ8の焦点位置からの第2のインナーレンズ6の出射面6b(図2)の各部の距離の違いによるものであり、出射面6bの中央付近の光はアウターレンズ8の焦点位置に近いためほぼ光軸方向に進むが、出射面6bの長手方向の両端に行くにつれアウターレンズ8の焦点位置から離れるため、光が回り込み、広がりをもって出ていくため、図8における斜め上方向の配光が生じる。
【0032】
また、図7において、インナーレンズ設計としてインナーレンズ6’の上側側面6d’による全反射面が光軸に対して概ね平行光を出射するようになっている場合であって、遮光板7’に切り欠きがない場合の照度分布に対し、遮光板7に切り欠き7b、7cが設けられている場合、照度分布の図における斜め下方向が強くなっている。この場合、後段のアウターレンズ8の作用とは関係なく、遮光板7の切り欠き7b、7cを抜けてハイビーム側に到達した光により斜め下方向が強くなる。これが、アウターレンズ8により上下反転されて投影されることにより、図8における同じ組み合わせの欄に示されるように、アウターレンズ8の光軸に直交する面内で、中心となる光軸に対し斜め上方向の配光を付加することになる。
【0033】
また、図7において、インナーレンズ設計としてインナーレンズ6の上側側面6dによる全反射面が光軸に対してハイビーム側に曲げて進行させて出射するようになっている場合であって、遮光板7に切り欠き7b、7cが設けられている場合、照度分布の図における斜め下方向の強さは、両者の効果が重畳し、より強くなっている。これが、アウターレンズ8により上下反転されて投影されることにより、図8における同じ組み合わせの欄に示されるように、光軸に直交する面内で、光軸に対し斜め上方向の配光となる。
【0034】
また、上述した実施形態では、インナーレンズ6の上側側面6dにおいて出射光の一部をハイビーム側に進行させる全反射面が設けられる場合について説明したが、それに代え、または、それに加えて、次のような構成をとることができる。例えば、インナーレンズ6の出射面6bを上側側面6d側ほど基板2側に近づくように傾けることで、出射光の一部をハイビーム側に進行させることができる。また、インナーレンズ6の出射面6bの前面にプリズムを設け、出射光の一部をハイビーム側に進行させることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0036】
以上のように、実施形態に係る照明装置はハイビーム用の第1の光源と、ロービーム用の第2の光源と、前記第1の光源から光を入射し、使用時の基準姿勢における略水平方向に光軸を有するハイビーム用の第1のインナーレンズと、前記第2の光源から光を入射し、前記基準姿勢における前記第1のインナーレンズの上に配置され、前記基準姿勢における略水平方向に光軸を有するロービーム用の第2のインナーレンズと、前記第1および第2のインナーレンズの間に配置される遮光板と、前記第1および第2のインナーレンズの光軸上の前方に配置されるアウターレンズと、を備え、前記第2のインナーレンズおよび/または前記遮光板は、ロービーム使用時に前記基準姿勢における光軸に直交する面内で、光軸に対し斜め上方向の配光を付加する構造を有する。これにより、ハイビーム用とロービーム用とが一体化された照明装置において、ロービーム使用時に斜め上方向の配光を容易に実現することができる。
【0037】
また、前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記第2のインナーレンズの上側側面には、出射光の一部をハイビーム側に進行させる全反射面が設けられる。これにより、一方のインナーレンズの改良により斜め上方向の配光を容易に実現することができる。
【0038】
また、前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記第2のインナーレンズの出射面は、上側側面側ほど前記第1および第2の光源が配置される基板側に近づくように傾けられる。これにより、一方のインナーレンズの改良により斜め上方向の配光を容易に実現することができる。
【0039】
また、前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記第2のインナーレンズは、出射光の一部をハイビーム側に進行させるプリズムを出射面の前面に有する。これにより、一方のインナーレンズへの光学素子の追加により斜め上方向の配光を容易に実現することができる。
【0040】
また、前記斜め上方向の配光を付加する構造として、前記遮光板には、出射側の光軸の両側に一対の切り欠きが設けられる。これにより、遮光版の改良により斜め上方向の配光を容易に実現することができる。
【0041】
また、前記切り欠きは、光軸の中央側から両側に向かい、直線状または曲線状に入射側に深くなる部分を有する。これにより、切り欠きを容易に実現することができ、配光を容易に調整することができる。
【0042】
また、前記第1のインナーレンズの光軸方向の長さは、前記第2のインナーレンズの光軸方向の長さよりも長い。これにより、第2のインナーレンズの出射光の一部をハイビーム側に進行させることが容易になる。
【0043】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 照明装置,2 基板,2a~2f 配線,3、4、4A、4B、4C 光源,3a、4Aa、4Ba、4Ca 発光面,5 インナーレンズ,5a 入射面,5b 出射面,5c 上側側面,5d 下側側面,5e、5f 凸部,6 インナーレンズ,6a 入射面,6b 出射面,6c 下側側面,6d 上側側面,6e 右側側面,6f 左側側面,6g、6h 凸部,7 遮光板,7a 平板部,7b、7c 切り欠き,8 アウターレンズ,8a 入射面,8b 出射面,8c 側面,L アウターレンズ焦点位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8