(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075196
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ローリングダイアフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20240527BHJP
F04B 43/04 20060101ALI20240527BHJP
F04B 9/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F04B43/02 M
F04B43/04 Z
F04B9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186459
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 景亮
(72)【発明者】
【氏名】木下 敦文
【テーマコード(参考)】
3H075
3H077
【Fターム(参考)】
3H075AA09
3H075BB04
3H075CC34
3H075DB03
3H075DB32
3H077AA08
3H077CC02
3H077CC09
3H077DD02
3H077DD12
3H077EE36
3H077FF06
3H077FF33
3H077FF42
(57)【要約】
【課題】軸方向にコンパクトに構成することができるローリングダイアフラムポンプを提供する。
【解決手段】ローリングダイアフラムポンプ1は、ハウジング2、ローリングダイアフラム5、ピストン3、モータ9、及びボールねじ7を備え、モータ9の回転運動をボールねじ7により直線運動に変換してピストン3を往復移動させ、ローリングダイアフラム5の変形によりポンプ室16の容積を変化させることで、移送流体を吸入及び吐出する。ボールねじ7は、軸線Cと同軸上に配置されモータ9によりハウジング2に対して軸線C回りに回転駆動されるねじ軸32と、ねじ軸32に対して軸方向に往復移動可能に螺合され軸線Cに対して偏心した位置で軸方向の全体にわたって挿通孔36が形成されたナット部33と、を有する。ナット部33の挿通孔36には、ナット部33の軸方向の往復移動を案内するガイド軸8が挿通されてハウジング2に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内にポンプ室を区画形成するローリングダイアフラムと、
前記ハウジング内において、その軸線に沿った軸方向に往復移動可能に設けられたピストンと、
駆動源であるモータと、
前記モータの回転運動を直線運動に変換して前記ピストンを往復移動させる運動変換機構と、を備え、
前記ピストンの往復移動に伴う前記ローリングダイアフラムの変形により、前記ポンプ室の容積を変化させることで、移送流体を吸入及び吐出するダイアフラムポンプであって、
前記運動変換機構は、
前記軸線と同軸上に配置され、前記モータにより前記ハウジングに対して前記軸線回りに回転駆動されるねじ軸と、
前記ねじ軸に対して前記軸方向に往復移動可能に螺合され、前記軸線に対して偏心した位置で前記軸方向の全体にわたって被挿通部が形成されたナット部と、を有し、
前記ナット部の前記被挿通部に挿通されて前記ハウジングに固定され、前記ナット部の前記軸方向の往復移動を案内するガイド軸を備えるローリングダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記ナット部の前記被挿通部に設けられ、前記ガイド軸に対して前記軸方向に摺動可能なブッシュをさらに備える請求項1に記載のローリングダイアフラムポンプ。
【請求項3】
前記モータの出力軸は、前記ねじ軸と平行になるように配置され、
前記出力軸の回転を前記ねじ軸に伝達する伝達機構をさらに備える請求項1又は請求項2に記載のローリングダイアフラムポンプ。
【請求項4】
前記伝達機構は、前記出力軸の回転を、所定の減速比で減速して前記ねじ軸に伝達する、請求項3に記載のローリングダイアフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローリングダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体、液晶、有機EL、太陽電池等の製造プロセスにおいて、薬液を塗布又は調合するときに当該薬液を送給させるポンプとして、例えば特許文献1に記載されたローリングダイアフラムポンプが知られている。このローリングダイアフラムポンプは、シリンダ内のピストンを往復移動させると、ローリングダイアフラムが変形してポンプ室の容積が変化することで、ポンプ室に薬液を吸入して外部へ吐出するようになっている。
【0003】
ピストンは、シャフト及びボールねじを介してモータに接続されている。モータの回転運動は、ボールねじにより直線運動に変換され、これによってシャフトと共にピストンが往復移動するようになっている。ボールねじは、シャフトと共に往復移動するねじ軸(出力軸)と、モータによりねじ軸に対して回転駆動されるナット(ねじナット)と、を有している。モータによりナットを回転駆動させると、ナットに対してねじ軸が軸方向に往復移動するようになっている。その際、規制機構により、ナットに対するねじ軸の回転が規制されるとともに、案内機構(案内部材等)により、ねじ軸の往復移動が案内されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたローリングダイアフラムポンプでは、ねじ軸の回転を規制する規制機構が、ねじ軸の往復移動を案内する案内機構とは別に設けられている。このため、前記規制機構は、ねじ軸と共に往復移動しながら当該ねじ軸の回転を規制する部材(スライド部材)が必要になるため、ポンプ全体が軸方向に長くなるという問題があった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、軸方向にコンパクトに構成することができるローリングダイアフラムポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、ハウジングと、前記ハウジング内にポンプ室を区画形成するローリングダイアフラムと、前記ハウジング内において、その軸線に沿った軸方向に往復移動可能に設けられたピストンと、駆動源であるモータと、前記モータの回転運動を直線運動に変換して前記ピストンを往復移動させる運動変換機構と、を備え、前記ピストンの往復移動に伴う前記ローリングダイアフラムの変形により、前記ポンプ室の容積を変化させることで、移送流体を吸入及び吐出するダイアフラムポンプであって、前記運動変換機構は、前記軸線と同軸上に配置され、前記モータにより前記ハウジングに対して前記軸線回りに回転駆動されるねじ軸と、前記ねじ軸に対して前記軸方向に往復移動可能に螺合され、前記軸線に対して偏心した位置で前記軸方向の全体にわたって被挿通部が形成されたナット部と、を有し、前記ナット部の前記被挿通部に挿通されて前記ハウジングに固定され、前記ナット部の前記軸方向の往復移動を案内するガイド軸を備えるローリングダイアフラムポンプである。
【0008】
本開示のローリングダイアフラムポンプによれば、モータにより運動変換機構のねじ軸を回転させたとき、運動変換機構のナット部がねじ軸と共に回転しようとする。しかし、ナット部の被挿通部に挿通されてハウジングに固定されたガイド軸によって、ナット部の回転が規制される。これにより、ナット部は、ねじ軸に対して軸方向に往復移動する。その際、前記ガイド軸は、ナット部の往復移動も案内する。したがって、従来のように規制機構を案内機構と別に設ける必要がないので、ローリングダイアフラムポンプを軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0009】
(2)前記(1)のローリングダイアフラムポンプは、前記ナット部の前記被挿通部に設けられ、前記ガイド軸に対して前記軸方向に摺動可能なブッシュをさらに備えるのが好ましい。
この場合、ガイド軸に対してブッシュが軸方向に摺動することで、ナット部を往復移動させることができるので、ガイド軸に対するナット部の摩耗を抑制することができる。
【0010】
(3)前記(1)又は(2)のローリングダイアフラムポンプにおいて、前記モータの出力軸は、前記ねじ軸と平行になるように配置され、前記出力軸の回転を前記ねじ軸に伝達する伝達機構をさらに備えるのが好ましい。
この場合、モータの出力軸が運動変換機構のねじ軸と平行に配置されていても、出力軸の回転を、伝達機構を介してねじ軸に伝達することができる。これにより、モータを、運動変換機構に対して軸方向と直交する方向に並べて配置することができるので、ローリングダイアフラムポンプを軸方向にさらにコンパクトに構成することができる。
【0011】
(4)前記(3)のローリングダイアフラムポンプにおいて、前記伝達機構は、前記出力軸の回転を、所定の減速比で減速して前記ねじ軸に伝達するのが好ましい。
この場合、モータを小型化できるので、省エネルギー化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示のローリングダイアフラムポンプによれば、軸方向にコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態に係るローリングダイアフラムポンプの斜視図である。
【
図2】ローリングダイアフラムポンプの断面図である。
【
図4】ピストンが最下位置まで移動した状態における要部拡大断面図である。
【
図5】ピストンが最下位置まで移動した状態におけるポンプ全体の断面図である。
【
図7】ローリングダイアフラムポンプを軸方向下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施形態に係るローリングダイアフラムポンプ1の斜視図である。
図2は、ローリングダイアフラムポンプ1の断面図である。
図1及び
図2において、ローリングダイアフラムポンプ1(以下、単にポンプ1ともいう)は、ハウジング2、ピストン3、シャフト4、ローリングダイアフラム5、取付枠6、ボールねじ7、ガイド軸8、モータ9、及び伝達機構10を備えている。なお、
図2では、モータ9の断面を省略している。また、本実施形態では、ローリングダイアフラムポンプ1の長手方向(軸方向)を、上下方向に配置しているが、水平方向に配置してもよい。
【0015】
[ハウジング]
ハウジング2は、シリンダ11と、ポンプヘッド12と、を有している。シリンダ11は、例えばSUS304等のステンレス鋼により、有底筒状に形成されている。シリンダ11は、その軸方向を上下方向として配置されている。シリンダ11の側壁には、当該側壁を貫通する通気口11aが形成されている。通気口11aは、真空ポンプ又はアスピレータ等の減圧装置(図示省略)に接続されている。シリンダ11は、その底壁の四隅から下方に突出する複数の突出部11dを有している。
【0016】
ポンプヘッド12は、例えばPTFE(ポリテトラフロオロエチレン)等のフッ素樹脂により、有蓋筒状に形成されている。ポンプヘッド12は、シリンダ11の上側の開口を閉塞するように、シリンダ11に取り付けられている。ポンプヘッド12の内部空間は、シリンダ11の内部空間と共に、ピストン3を収容する収容空間を構成している。
【0017】
ポンプヘッド12の側壁には、当該側壁を貫通する吸入口12a及び吐出口12bがそれぞれ形成されている。吸入口12aは、薬液等の液体(移送流体)を貯溜する液体タンク(図示省略)に接続されている。吐出口12bは、例えば液体を塗布する噴射ノズル等の液体供給部(図示省略)に接続されている。
【0018】
[ピストン]
ピストン3は、ハウジング2内に収容され、ハウジング2の軸線Cに沿った軸方向(
図1の上下方向)に往復移動可能に設けられている。以下、ハウジング2の軸方向を、単に「軸方向」ともいう。本実施形態において、ピストン3は、例えば、アルミニウム合金からなる。ピストン3は、円柱状に形成されており、ハウジング2(シリンダ11及びポンプヘッド12)の内径よりも小さい外径を有している。ピストン3の外周面は、当該外周面と対向するシリンダ11又はポンプヘッド12の内周面に対して所定間隔をあけて配置されている。
【0019】
図3は、
図2の要部拡大断面図である。
図3において、ピストン3の下面の中央部には、下方に開口する円形の窪み部3aが形成されている。窪み部3aは、軸線Cと同軸上に形成されている。窪み部3aは、シリンダ11の後述するボス部11bが嵌まり込む大きさに形成されている。
【0020】
窪み部3aの底面の中心部には、円形の凹部3bがさらに形成されている。凹部3bも、軸線Cと同軸上に形成されている。凹部3bは、窪み部3aよりも小径であり、シャフト4の軸方向上端部が嵌まり込む大きさに形成されている。ピストン3には、周方向に所定間隔をおいて複数の空気通路3cが、軸方向に貫通して形成されている。
【0021】
[シャフト]
シャフト4は、ピストン3に軸方向下側から当接した状態でピストン3と連動するものである。本実施形態のシャフト4は、ピストン3と別体であり、例えば、焼き入れされた高炭素クロム軸受鋼等の鋼材や、マルテンサイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼により丸棒状に形成されている。シャフト4は、軸線Cと同軸上に配置されている。シャフト4の軸方向上端部は、ピストン3の凹部3bに嵌め込まれることによってピストン3の軸方向下側に当接する。
【0022】
シリンダ11の底壁には、当該底壁を貫通する円筒状のボス部11bが一体に形成されている。ボス部11bは、シリンダ11の底壁の中央部において上方に突出しており、軸線Cと同軸上に形成されている。ボス部11b内には、ブッシュ13を介してシャフト4が挿入されている。これにより、シャフト4は、ブッシュ13を介してボス部11bによって軸方向に移動可能に支持されている。
【0023】
ボス部11bの軸方向下端部とシャフト4との間には、Oリング等のパッキン14が設けられている。パッキン14は、例えば、フッ素ゴム等のゴム材料からなる。シリンダ11の底壁の下面には、パッキン14を下方から押さえる押さえ部材15が設けられている。押さえ部材15は、例えば、SUS304等のステンレス鋼から構成されている。
【0024】
[ローリングダイアフラム]
ローリングダイアフラム5は、ハウジング2内に収容されている。ローリングダイアフラム5は、PTFE等のフッ素樹脂からなる。ローリングダイアフラム5は、円環状の固定部5aと、円板状の可動部5bと、繋ぎ部5cと、を有している。
【0025】
固定部5aは、シリンダ11の軸方向上端面に形成された円環状の凹部11cに嵌め込まれ、シリンダ11とポンプヘッド12との間に挟み込まれた状態でハウジング2に固定されている。可動部5bは、固定部5aの径方向内方において、ピストン3の上面に固定されている。可動部5bの外径は、ピストン3の外径と略同一である。可動部5bは、ピストン3と一体に軸方向に往復移動する。
【0026】
繋ぎ部5cは、固定部5aの径方向内端と可動部5bの径方向外端とを繋いでいる。繋ぎ部5cは、薄肉(薄膜状)に形成され、可撓性を有している。一方、固定部5a及び可動部5bは、剛性を有するように、繋ぎ部5cよりも十分に厚い厚肉に形成されている。
【0027】
図3に示すように、ピストン3が最上位置にあるとき、繋ぎ部5cは、ピストン3の外周面に沿って円筒状に変形し、当該外周面に繋ぎ部5cの内周面全体が密着している。この状態から、
図4に示すようにピストン3が最下位置まで移動すると、繋ぎ部5cは、シリンダ11の内周面とピストン3の外周面との間で断面U字状に屈曲するように変形する。この状態において、繋ぎ部5cは、シリンダ11の内周面及びピストン3の外周面にそれぞれ密着する。
【0028】
[ポンプ室と減圧室]
図5は、ピストン3が最下位置まで移動した状態におけるポンプ1全体の断面図である。
図5において、ハウジング2内には、ポンプ室16及び減圧室17が、ローリングダイアフラム5によって区画形成されている。ポンプ室16は、ローリングダイアフラム5とポンプヘッド12とにより囲まれて形成されている。ポンプ室16は、吸入口12a及び吐出口12bのそれぞれと連通している。ポンプ室16の容積は、ピストン3の往復移動によって変化するようになっている(
図2参照)。
【0029】
減圧室17は、ハウジング2内において、ピストン3、ローリングダイアフラム5、及びシリンダ11によって区画形成されている。減圧室17は、通気口11aと連通している。減圧室17は、ポンプ1の駆動時に、通気口11aを介して接続される減圧装置により所定の圧力(負圧)になるように減圧される。これにより、シリンダ11の内周面及びピストン3の外周面に、ローリングダイアフラム5の繋ぎ部5cを確実に密着させることができる。また、
図3に示すように、ローリングダイアフラム5の可動部5bの下面とピストン3の上面との間は、減圧室17と連通する複数の空気通路3cを介して減圧されるため、ピストン3の上面に対して可動部5bの下面を確実に密着させることができる。
【0030】
[取付枠]
図1及び
図2において、取付枠6は、ハウジング2の下方においてボールねじ7及びモータ9が取り付けられるものである。取付枠6は、第1仕切板21、第2仕切板22、第3仕切板23、第4仕切板24、複数の第1スペーサ25、複数の第2スペーサ26、及び複数の第3スペーサ27を有している。第1~第3仕切板21~24は、いずれも同一形状である正方形状に形成されている。第4仕切板24は、矩形状に形成されている。第1~第3スペーサ25~27は、いずれも円筒状に形成されている。本実施形態の取付枠6は、第1~第3スペーサ25~27を4個ずつ有している。
【0031】
第1仕切板21の上面は、シリンダ11の各突出部11dの下端に当接している。第1仕切板21の中央部には、後述する第2筒部35bが挿通される貫通孔21aが形成されている。第1仕切板21の下面の四隅には、それぞれ第1スペーサ25の軸方向上端が当接している。第1スペーサ25は、ボールねじ7のナット部33(後述)が軸方向に往復移動できるように、軸方向に長く形成されている。各第1スペーサ25の軸方向下端には、第2仕切板22の上面が当接している。
【0032】
第2仕切板22の中央部には、後述する非ねじ部32bが挿通される貫通孔22aが形成されている。第2仕切板22の下面の四隅には、それぞれ第2スペーサ26の軸方向上端が当接している。第2スペーサ26は、第1スペーサ25よりも軸方向に短く形成されている。各第2スペーサ26の軸方向下端には、第3仕切板23の上面が当接している。
【0033】
第3仕切板23の中央部には、後述する第1支持部31aが挿通される貫通孔23aが形成されている。第3仕切板23の下面の四隅には、それぞれ第3スペーサ27の軸方向上端が当接している。第3スペーサ27も、第1スペーサ25よりも軸方向に短く形成されている。各第3スペーサ27の軸方向下端には、第4仕切板24の上面が当接している。第4仕切板24の長手方向(
図2の左右方向)の一方側には、後述する第3支持部31cが挿通される貫通孔24aが形成されている。
【0034】
取付枠6は、複数(
図1では4個)のボルト18によって、ハウジング2に固定されている。各ボルト18は、第4仕切板24、第3スペーサ27内、第3仕切板23、第2スペーサ26内、第2仕切板22、第1スペーサ25内、及び第1仕切板21を、この順に貫通し、シリンダ11の各突出部11dに締め込まれている。
【0035】
[ボールねじ]
ボールねじ7は、モータ9の回転運動を直線運動に変換してピストン3を往復移動させる運動変換機構である。ボールねじ7は、支持部31と、ねじ軸32と、ナット部33と、複数のボール(図示省略)と、を有している。
【0036】
支持部31は、ハウジング2から軸方向下側に離間した位置において取付枠6に固定されている。支持部31は、円筒状の第1支持部31aと、第1支持部31aの下面に設けられた矩形状の第2支持部31bと、第2支持部31bの下面に設けられた円筒状の第3支持部31cと、を有している。
【0037】
第1支持部31aは、第3仕切板23の貫通孔23aに挿通されている。第1支持部31aの軸方向上端は、第2仕切板22の下面に当接している。第2支持部31bは、第3仕切板23と第4仕切板24との間に配置され、第3仕切板23にボルト19A及びナット19Bにより固定されている。第3支持部31cは、第4仕切板24の貫通孔24aに挿通されている。
【0038】
ねじ軸32は、軸線Cと同軸上に配置されている。ねじ軸32は、雄ねじ部32aと、支持部31に支持される非ねじ部32bと、を有している。非ねじ部32bは、第2仕切板22の貫通孔22aを貫通し、支持部31の第1~第3支持部31a~31c内に挿通されている。非ねじ部32bは、支持部31に対して回転自在に支持されている。
【0039】
非ねじ部32bの軸方向下端部は、第3支持部31cよりも下方に突出しており、伝達機構10が接続される接続部32cとされている。非ねじ部32bは、伝達機構10を介してモータ9により回転駆動される。その詳細については後述する。雄ねじ部32aは、非ねじ部32bの上端から上方に延び、第1仕切板21と第2仕切板22との間に配置されている。
【0040】
ナット部33は、ねじ軸32の雄ねじ部32aに対して、前記複数のボールを介して軸方向に往復移動可能に螺合されている。ナット部33は、ハウジング2と支持部31との間で往復移動するようになっている。ナット部33は、ナット本体34と、連結体35と、を有している。ナット本体34は、ねじ軸32の雄ねじ部32aに螺合された円筒状の雌ねじ部34aと、雌ねじ部34aの軸方向下端部に形成された矩形板状のフランジ部34bと、を有している。フランジ部34bは、雌ねじ部34aよりも径方向外側に突出している。
【0041】
連結体35は、ナット本体34とシャフト4とを連結するものである。連結体35は、ナット本体34の外周に嵌合された第1筒部35aと、ねじ軸32の雄ねじ部32aが挿入される第2筒部35bと、を有している。第1筒部35a及び第2筒部35bは、軸線Cと同軸上に配置されている。第1筒部35aは、その軸方向下端がナット本体34のフランジ部34bに当接した状態で、ボルト37(
図6参照)によってフランジ部34bに固定されている。これにより、連結体35は、ナット本体34と一体に連結されている。
【0042】
連結体35の第2筒部35bは、有蓋筒状に形成されている。第2筒部35bは、その軸方向下側の開口が第1筒部35aの内部と連通するように、第1筒部35aと一体に形成されている。第2筒部35bの内径は、雄ねじ部32aの外径よりも大きい。第2筒部35bの外径は、第1仕切板21の貫通孔21aの孔径よりも小さい。これにより、連結体35が雄ねじ部32aに対して往復移動する際に、第2筒部35bは、第1仕切板21の貫通孔21aに挿通される。第2筒部35bの軸方向上側の蓋壁には、シャフト4の下端部が固定されている。これにより、連結体35は、シャフト4と一体に連結されている。
【0043】
[ガイド軸]
図6は、ガイド軸8の周辺を示す拡大断面図である。
図2及び
図6において、ボールねじ7のナット部33には、軸線Cに対して偏心した位置で、軸方向の全体にわたって貫通する挿通孔(被挿通部)36が形成されている。挿通孔36は、例えば円孔からなる。挿通孔36の孔径は、後述するガイド軸8の外径よりも大きい。挿通孔36は、ナット本体34のフランジ部34bを軸方向に貫通する第1孔部36aと、連結体35の第1筒部35aを軸方向に貫通する第2孔部36bと、からなる。第2孔部36bの軸方向両端部には、一対の円筒状のブッシュ38が嵌合して固定されている。
【0044】
ナット部33の挿通孔36には、一対のブッシュ38を介してガイド軸8が挿通されている。各ブッシュ38は、ガイド軸8の外周面に沿って軸方向に摺動可能である。ガイド軸8の軸方向の長さは、第1スペーサ25の軸方向の長さと同一である。ガイド軸8の軸方向上端部は、第1仕切板21の下面に当接した状態で、ボルト41により第1仕切板21に固定されている。ガイド軸8の軸方向下端部は、第2仕切板22の上面に当接した状態で、ボルト42により第2仕切板22に固定されている。これにより、ナット部33の挿通孔36に挿通されたガイド軸8は、取付枠6を介してハウジング2に固定されている。
【0045】
以上により、ねじ軸32が支持部31に対して軸線C回りに回転すると、ナット部33がねじ軸32の雄ねじ部32aと共に軸線C回りに回転しようとするが、ガイド軸8によってナット部33の回転が規制される。これにより、ナット部33は、雄ねじ部32aに対して軸方向に往復移動可能となる。その際、ガイド軸8の外周面に沿ってブッシュ38が摺動するので、ガイド軸8によってナット部33の往復移動も案内することができる。
【0046】
[モータ]
図1及び
図2において、モータ9は、ボールねじ7のねじ軸32を回転駆動させる駆動源である。モータ9は、ボールねじ7の支持部31に対して、軸方向と直交する方向(
図2の左右方向)に並べて配置された状態で、第4仕切板24に設けられている。モータ9は、モータ本体9aと、出力軸9bと、を有している。
【0047】
モータ本体9aは、第4仕切板24の上面に当接した状態で、複数のボルト43により第4仕切板24に固定されている。出力軸9bは、モータ本体9aの下側の端面から第4仕切板24を貫通して下方に突出している。これにより、第4仕切板24の下方において、モータ9の出力軸9bは、ねじ軸32の接続部32cと平行に配置されている。
【0048】
[伝達機構]
図7は、ポンプ1を軸方向下側から見た斜視図である。
図2及び
図7において、伝達機構10は、モータ9の出力軸9bの回転を、ねじ軸32の接続部32cに伝達する機構である。伝達機構10は、第4仕切板24の下方に配置されている。伝達機構10は、駆動プーリ10aと、従動プーリ10bと、ベルト10cと、を有している。
【0049】
駆動プーリ10aは、モータ9の出力軸9bに接続されており、出力軸9bにより回転駆動される。従動プーリ10bは、ねじ軸32の接続部32cに接続されており、接続部32cと共に軸線C回りに回転可能である。従動プーリ10bの外径は、駆動プーリ10aの外径よりも大きい。ベルト10cは、無端状に形成され、駆動プーリ10aと従動プーリ10bとに掛け渡されている。
【0050】
モータ9の出力軸9bを回転させると、その出力軸9bの回転は、駆動プーリ10a、ベルト10c、及び従動プーリ10bを介して、ねじ軸32の接続部32cに伝達される。その際、従動プーリ10bの外径は駆動プーリ10aの外径よりも大きいので、出力軸9bの回転は、所定の減速比で減速されて、ねじ軸32の接続部32cに伝達される。
【0051】
[ポンプの動作]
モータ9を駆動させると、その出力軸9bから伝達機構10を介して、ボールねじ7のねじ軸32が軸線C回りに回転する。ねじ軸32が回転すると、その回転運動は、ナット部33による軸方向の直線運動に変換され、シャフト4を介してピストン3が軸方向に往復移動する。ピストン3が往復移動すると、ローリングダイアフラム5が変形し、ポンプ室16の容積が変化する。
【0052】
その際、ピストン3が軸方向下側に移動してポンプ室16に液体を吸入する吸入工程(
図5参照)と、ピストン3が軸方向上側へ移動してポンプ室16から液体が吐出される吐出工程(
図2参照)と、が交互に繰り返し行われる。これにより、液体タンクに貯溜された液体を、ポンプ1から液体供給部に定量かつ定流量で供給することができる。
【0053】
[実施形態の作用効果]
以上、本実施形態のローリングダイアフラムポンプ1によれば、モータ9によりボールねじ7のねじ軸32を回転させたとき、ボールねじ7のナット部33がねじ軸32と共に回転しようとする。しかし、ナット部33の挿通孔36に挿通されてハウジング2に固定されたガイド軸8によって、ナット部33の回転が規制される。これにより、ナット部33は、ねじ軸32に対して軸方向に往復移動する。その際、ガイド軸8は、ナット部33の往復移動も案内する。したがって、従来のように規制機構を案内機構と別に設ける必要がないので、ローリングダイアフラムポンプ1を軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0054】
ナット部33の挿通孔36には、ガイド軸8に対して軸方向に摺動可能なブッシュ38が設けられている。これにより、ガイド軸8に対してブッシュ38が軸方向に摺動することで、ボールねじ7のナット部33を往復移動させることができるので、ガイド軸8に対するナット部33の摩耗を抑制することができる。
【0055】
モータ9の出力軸9bの回転は、伝達機構10によりボールねじ7のねじ軸32に伝達される。これにより、モータ9を、ボールねじ7に対して軸方向と直交する方向に並べて配置することができるので、ローリングダイアフラムポンプ1を軸方向にさらにコンパクトに構成することができる。
【0056】
モータ9の出力軸9bの回転は、伝達機構10により所定の減速比で減速されてねじ軸32に伝達される。これにより、モータ9を小型化できるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0057】
[その他]
ナット部33の軸方向全体にわたって形成される被挿通部は、挿通孔36に限定されるものではなく、ナット部33の外側(
図6では左側)に開口する溝であってもよい。本実施形態のボールねじ7におけるナット部33は、ナット本体34と連結体35とを別体にして構成されているが、ナット本体34と連結体35とを一体化した単一部材で構成されていてもよい。運動変換機構は、ボールねじ7に限定されるものではなく、ボールを有しない送りねじであってもよい。
【0058】
本実施形態の伝達機構10は、一対のプーリ10a,10bとベルト10cとにより構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、伝達機構10は、一対のスプロケットと、これらのスプロケットに掛け渡されたチェーンとにより構成されていてもよい。また、モータ9の出力軸9bは、伝達機構10を介さずに、ねじ軸32の接続部32cに直接接続されていてもよい。
【0059】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 ローリングダイアフラムポンプ
2 ハウジング
3 ピストン
5 ローリングダイアフラム
7 ボールねじ(運動変換機構)
8 ガイド軸
9 モータ
9b 出力軸
10 伝達機構
16 ポンプ室
32 ねじ軸
33 ナット部
36 挿通孔(被挿通部)
38 ブッシュ
C 軸線