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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000752
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電流測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20231226BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01R15/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099635
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 高裕
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】石橋 広脩
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB01
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】小電流から大電流までの広い範囲の電流測定が可能な電流測定装置を提供すること。
【解決手段】測定電流が流れる導体2の周囲を囲むように配置して導体2の周囲に生じる磁場を集磁して誘導するとともに、誘導された磁場が通る部分に少なくとも1つの間隙Gを設けた集磁コア3と、間隙Gに設けられ、誘導された磁場による誘導電圧を検出する空芯コイル4と、空芯コイル4が巻回され、空芯コイル4を間隙Gに固定するコイルボビンと、空芯コイル4によって検出された誘導電圧をもとに測定電流を演算する積分回路5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定電流が流れる導体の周囲を囲むように配置して前記導体の周囲に生じる磁場を集磁して誘導するとともに、誘導された磁場が通る部分に少なくとも1つの間隙を設けた集磁コアと、
前記間隙に設けられ、誘導された磁場による誘導電圧を検出する空芯コイルと、
前記空芯コイルが巻回され、前記空芯コイルを前記間隙に固定するコイルボビンと、
前記空芯コイルによって検出された誘導電圧をもとに前記測定電流を演算する積分回路と、
を備えることを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
測定電流が流れる導体の周囲を囲むように配置して前記導体の周囲に生じる磁場を集磁して誘導するとともに、誘導された磁場が通る部分に少なくとも1つの間隙を設けた集磁コアと、
前記間隙に設けられ、誘導された磁場による誘導電圧を検出する空芯コイルと、
前記空芯コイルが巻回され、前記空芯コイルを前記間隙に固定するコイルボビンと、
前記空芯コイルによって検出された誘導電圧をもとに前記測定電流を演算する積分回路と、
前記コイルボビンの内部に配置され、誘導された磁場による誘導電圧を検出する磁気センサと、
前記磁気センサによって検出された誘導電圧をもとに前記測定電流を演算する増幅回路と、
を備えることを特徴とする電流測定装置。
【請求項3】
小電流領域の測定電流を前記磁気センサにより測定し、前記小電流領域を超える大電流領域の測定電流を前記空芯コイルにより測定することを特徴とする請求項2に記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記磁気センサは、トンネル磁気抵抗効果を応用した磁気センサであることを特徴とする請求項2又は3に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記集磁コアは、コの字型であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小電流から大電流までの広い範囲の電流測定が可能な電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流測定装置としては、例えば、ロゴスキーコイルを用いて広い電流範囲を測定するものがある(特許文献1参照)。ロゴスキーコイルは、環状の空芯コイルであり、空芯コイルを貫く電流線に流れる電流によって生じる磁束に起因する誘導電圧を検出する。この誘導電圧は、電流の周渡数が高くなるほど高くなるので、この周波数特性を補正するため、周波数が高くなるほど損失が大きくなる積分回路を用いて補正を行い、検出した誘導電圧全体の周波数特性をフラットにしている。
【0003】
また、被測定電流が流れる導線を囲む磁気コアに電気的に絶縁して磁気的に結合するように巻回したコイルにより被測定電流を計測するカレントトランスタイプの電流測定装置が広く知られている。この電流測定装置は、測定電流に対する感度が高いため、小電流の測定に適している。一方、ロゴスキーコイルを用いた電流測定装置は、測定電流に対する感度が低いため大電流の測定に適しており、広い範囲の電流測定を行うことができる。
【0004】
なお、特許文献2には、測定電流に対する感度が高い磁気センサを用いた電流測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-310654号公報
【特許文献2】特開2020-85906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ロゴスキーコイルを用いた電流測定装置は、測定電流に対する感度が低いため、大電流までの広い範囲の電流を測定することができるが、小電流の測定を精度良く測定することができない。一方、上記のように、カレントトランスタイプの電流測定装置や磁気センサを電流測定装置は、測定電流に対する感度が高いため、小電流の電流測定を測定することができるが、大電流までの広い範囲の電流測定を行うことができない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小電流から大電流までの広い範囲の電流測定が可能な電流測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、測定電流が流れる導体の周囲を囲むように配置して前記導体の周囲に生じる磁場を集磁して誘導するとともに、誘導された磁場が通る部分に少なくとも1つの間隙を設けた集磁コアと、前記間隙に設けられ、誘導された磁場による誘導電圧を検出する空芯コイルと、前記空芯コイルが巻回され、前記空芯コイルを前記間隙に固定するコイルボビンと、前記空芯コイルによって検出された誘導電圧をもとに前記測定電流を演算する積分回路と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、測定電流が流れる導体の周囲を囲むように配置して前記導体の周囲に生じる磁場を集磁して誘導するとともに、誘導された磁場が通る部分に少なくとも1つの間隙を設けた集磁コアと、前記間隙に設けられ、誘導された磁場による誘導電圧を検出する空芯コイルと、前記空芯コイルが巻回され、前記空芯コイルを前記間隙に固定するコイルボビンと、前記空芯コイルによって検出された誘導電圧をもとに前記測定電流を演算する積分回路と、前記コイルボビンの内部に配置され、誘導された磁場による誘導電圧を検出する磁気センサと、前記磁気センサによって検出された誘導電圧をもとに前記測定電流を演算する増幅回路と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、小電流領域の測定電流を前記磁気センサにより測定し、前記小電流領域を超える大電流領域の測定電流を前記空芯コイルにより測定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記磁気センサは、トンネル磁気抵抗効果を応用した磁気センサであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記集磁コアは、コの字型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小さいサイズで、小電流から大電流までの広い範囲の電流測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態1である電流測定装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1である電流測定装置の構成を示す斜視図である。
図3図3は、測定電流に対する積分回路の出力電圧の関係を示した図である。
図4図4は、本発明の実施の形態2である電流測定装置の構成を示す模式図である。
図5図5は、図4に示したコイルボビンの構成を示す斜視図である。
図6図6は、図4に示した磁気センサをコイルボビン内に配置した状態を示す断面図である。
図7図7は、測定電流に対する積分回路及び増幅回路の出力電圧の関係を示した図である。
図8図8は、温度変化に対するTMR磁気センサとホール素子との出力電圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1である電流測定装置1の構成を示す模式図である。また、図2は、本発明の実施の形態1である電流測定装置1の構成を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、電流測定装置1は、集磁コア3、空芯コイル4、コイルボビン8、積分回路5、及び、回路基板9を有する。集磁コア3は、測定電流が流れる導体2の周囲を囲むように配置して導体2の周囲に生じる磁場を集磁して誘導するとともに、誘導された磁場が通る部分に少なくとも1つの間隙Gが設けられる。集磁コア3は、例えば、軟質磁性材料で形成されてコの字形状である。集磁コア3の形状は、コの字形状に限らず、例えば、間隙Gを有する円形形状や楕円形形状であってもよい。集磁コア3は、積層または一体で形成される。集磁コア3は、間隙Gを介して、集磁した磁場に対する磁束7のループを形成する。
【0017】
空芯コイル4は、間隙Gに設けられ、誘導された磁場(磁束)による誘導電圧を検出する。空芯コイル4は、環状に配置されたロゴスキーコイルの一部ともいえる。コイルボビン8は、空芯コイル4が巻回され、空芯コイル4を間隙Gに位置決めして集磁コア3に固定される。なお、間隙Gは、コの字形状の集磁コア3の開放端側(-Z方向側)の端部であって、磁束7が通過する部分である。図1に示した間隙Gは、±Y方向に直線的であり、空芯コイル4も直線的なコイルとなる。
【0018】
積分回路5は、空芯コイル4に接続され、空芯コイル4によって検出された誘導電圧をもとに導体2に流れる測定電流を演算し、測定電流に対応した出力電圧として出力端子T1から出力する。ここで、積分回路5は、検出した誘導電圧の周波数特性をフラットに変換し、測定電流に対応する出力電圧として出力する。回路基板9は、コイルボビン8と積分回路5とが接続されて実装される基板である。
【0019】
図3は、測定電流に対する積分回路5の出力電圧の関係を示した図である。図3において、特性曲線L1は、本実施の形態1による測定電流Iに対する出力電圧Voutの関係を示している。また、特性曲線L100は、集磁コア3を設けない空芯コイル4のみによる測定電流Iに対する出力電圧Voutの関係を示している。なお、出力電圧Voutは、積分回路5の電源電圧Vmax以下の値となる。図3に示すように、本実施の形態1の電流測定装置1では、集磁コア3を設けない空芯コイル4のみの電流測定装置に比して測定電流Iに対する出力電圧Voutの感度が高くなり、これに伴い、測定可能な電流範囲が小電流領域側に広がり、広い範囲の電流測定が可能になっている。これは、集磁コア3内の磁束7が、集磁コア3を構成する磁性材料の透磁率の大きさに比例して増加するため、集磁コア3を設けない空芯コイル4のみの場合に比して測定電流に対する感度が向上するからである。
【0020】
本実施の形態1では、測定電流が流れる導体2の周囲に生じる磁場を誘導するために、導体2を囲むように配置した間隙Gを有する集磁コア3を設け、この間隙Gに生じる磁場を空芯コイル4により誘導電圧を検出するようにしているので、小さいサイズの空芯コイルで広い範囲の電流測定が可能になる。
【0021】
[実施の形態2]
本実施の形態2では、実施の形態1の構成に対し、空芯コイル4内に磁気センサ11を設け、空芯コイル4と磁気センサ11とを併用し、磁気センサ11によりさらに小電流領域側の電流測定範囲を広げるようにしている。図4は、本発明の実施の形態2である電流測定装置10の構成を示す模式図である。また、図5は、図4に示したコイルボビン8の構成を示す斜視図である。さらに、図6は、図4に示した磁気センサ11をコイルボビン8内に配置した状態を示す断面図である。
【0022】
図4図6に示すように、電流測定装置10は、電流測定装置1の構成に対し、さらに磁気センサ11及び増幅回路12を有する。磁気センサ11は、コイルボビン8の中心付近の空芯コイル4が巻回される中空円筒20内に配置され、集磁コア3により集磁された磁束による誘導電圧を検出する。磁気センサ11は、中空円筒20内に固定配置された回路基板13上に実装される。増幅回路12は、回路基板9上に設けられ、回路基板13を介して磁気センサ11に接続され、磁気センサ11が検出した誘導電圧を増幅し、測定電流に対応した出力電圧として出力端子T2から出力する。
【0023】
図7は、測定電流に対する積分回路5及び増幅回路12の出力電圧の関係を示した図である。図7において、特性曲線L1は、本実施の形態2の空芯コイル4による測定電流Iに対する出力電圧Voutの関係を示している。また、特性曲線L10は、磁気センサ11による測定電流Iに対する出力電圧Voutの関係を示している。
【0024】
特性曲線L10に示すように、磁気センサ11は、空芯コイル4に比べて磁界に対する感度が高いため、測定電流が0を含む測定電流が小さい小電流領域EAにおいて大きな出力電圧を得ることができるが、小電流領域EAを超えた大電流領域EBでは出力電圧Voutが飽和する。一方、特性曲線L1に示すように、空芯コイル4による出力電圧は、小電流領域EAの途中から大電流領域EBまで飽和せずにリニアな出力となる。したがって、磁気センサ11と空芯コイル4とを組み合わせた電流計測を行うことにより、小さなサイズで、広い範囲の測定電流の電流計測を行うことができる。なお、磁気センサ11による電流計測は、少なくとも出力電圧が飽和する飽和電流I1までとする。すなわち、飽和電流I1までは磁気センサ11による電流計測結果を用い、飽和電流I1を超えた場合、空芯コイル4による電流計測結果を用いるようにするとよい。
【0025】
図8は、温度変化に対するTMR磁気センサ(磁気センサ11)とホール素子(磁気センサ11´)との出力電圧の変化を示す図である。磁気センサ11としては、ホール効果を利用したもの(ホール素子)や,磁気インピーダンス効果(MI効果)を利用したものなどがある。本実施の形態2では、磁気センサ11としてトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を応用したTMR磁気センサを用いている。TMR磁気センサは、数ナノメートルレベルの極めて薄い非磁性の絶縁膜を2枚の磁性膜でサンドイッチした構造となっており、一般的な磁気センサに比べて小型で磁界に対する感度が高い。
【0026】
図8に示すように、TMR磁気センサは、ホール素子に比べて温度変化による影響を受けにくく、温度変化に対する出力電圧の変化が小さいため、高精度な電流測定が可能になる。
【0027】
なお、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1,10 電流測定装置
2 導体
3 集磁コア
4 空芯コイル
5 積分回路
7 磁束
8 コイルボビン
9,13 回路基板
11,11´ 磁気センサ
12 増幅回路
20 中空円筒
EA 小電流領域
EB 大電流領域
G 間隙
I 測定電流
I1 飽和電流
L1,L10,L100 特性曲線
T1,T2 出力端子
Vmax 電源電圧
Vout 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8