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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075205
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】消防自動車
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/04 20060101AFI20240527BHJP
   A62C 27/00 20060101ALI20240527BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B62D33/04 B
A62C27/00 501
B60P3/00 R
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186477
(22)【出願日】2022-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】514320005
【氏名又は名称】山▲崎▼自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 広志
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 太己
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA04
(57)【要約】
【課題】簡易構造であっても、軽量性や小型化に優れ、製造や修理自体等も容易な消防自動車を提供する。
【解決手段】キャビンデッキの前方から後方に向かって、荷物室及びポンプ室を順次に有するボックス構造体を備えた消防自動車であって、荷物室及びポンプ室、或いはいずれか一方の周囲壁が、下記(U1)~(U3)の少なくとも一つの構成部材から構成してある。
(U1)所定アルミブロック用接合部材で補強されてなる複合アルミニウム中空パネル
(U2)一対のアルミプレート及び樹脂シートからなるアルミニウム多層構造体
(U3)複合アルミニウム中空パネル(U1)及びアルミニウム多層構造体(U2)の組み合わせ
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンデッキの前方から後方に向かって、矩形状の荷物室と、ポンプを収容する矩形状のポンプ室と、を順次に有するボックス構造体を備えた消防自動車であって、
前記荷物室及び前記ポンプ室、或いはいずれか一方の周囲壁が、下記(U1)~(U3)の少なくとも一つの構成部材から構成してあることを特徴とする消防自動車。
(U1)コの字状のアルミブロック用接合部材で補強されてなる複合アルミニウム中空パネル
(U2)アルミプレート、樹脂シート、及びアルミプレートからなる三層構造を含むアルミニウム多層構造体
(U3)前記複合アルミニウム中空パネル(U1)及び前記アルミニウム多層構造体(U2)の組み合わせ
【請求項2】
前記ポンプ室の周囲壁は、前記(U2)アルミニウム多層構造体から構成してあり、
前記荷物室の周囲壁は、(U3)前記複合アルミニウム中空パネル(U1)及び前記アルミニウム多層構造体(U2)の組み合わせから構成してあることを特徴とする請求項1に記載の消防自動車。
【請求項3】
前記(U3)としての、(U1)複合アルミニウム中空パネル及び(U2)アルミニウム多層構造体の組み合わせが、複数の前記(U1)複合アルミニウム中空パネルの間に、前記(U2)アルミニウム多層構造体が配置されている平板状構造体であることを特徴とする請求項1に記載の消防自動車。
【請求項4】
前記ボックス構造体を平面視した場合に、前記キャビンデッキの前方から後方に向かって、前記荷物室と、前記ポンプ室と、がT字状となるように配置してあることを特徴とする請求項1に記載の消防自動車。
【請求項5】
前記キャビンデッキの後方に、荷台が設けてあって、その荷台の上に、前記ボックス構造体が、脱着可能に設けてあることを特徴とする請求項1に記載の消防自動車。
【請求項6】
前記ポンプ室に、前記ポンプを、外部に取出し、又は搬入するための機械的アーム、或いは、レール状搬送装置が設けてあることを特徴とする請求項1に記載の消防自動車。
【請求項7】
前記ボックス構造体における、前記ポンプ室と、前記荷物室と、の間に、開口部が設けてあり、当該開口部を介して、前記レール状搬送装置が設けてあることを特徴とする請求項6に記載の消防自動車。
【請求項8】
前記アルミブロック用接合部材が、第1のアルミブロックの端部における仕切板に対して、第1の固定部材を介して挿入固定され、第2のアルミブロックに対して、第2の固定部材を介して接合され、前記第1のアルミブロック及び前記第2のアルミブロックを連結補強してなる接合部材であることを特徴とする請求項1に記載の消防自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防自動車(以下、消防車と称する場合もあり、かつ、消防自動車用各種部品を含む場合もある。)に関する。
特に、重厚な筐体やボンデ鋼板等を実質的に含まないピラーレスな簡易構造であって、軽量性や小型化等に優れた消防自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大災害時の火災規模に適合する消火用水量が得られる水源までの距離、水面までに高さに適合するように、消防ポンプ、水中油圧ポンプ、及び水中油圧ポンプ駆動用油圧ポンプを搭載した消防ポンプ自動が提供されている。
より具体的には、図7(a)に示すように、消防ポンプと、電動モーターの駆動で吸水する吸水ポンプとを搭載してあった。
そして、電動モーターに電力を供給し吸水ポンプを駆動する発電機として、車両走行用エンジンで駆動して発電する発電機、若しく車両運行用として搭載されている発電機のいずれか一方、或いは両方を搭載してあった。
よって、火災規模や水源までの距離、水面までの高さ等水源の状況により、消防ポンプのみの使用や、電動モーターで駆動される吸水ポンプのみの使用等を選択可能にした吸水力強化型消防ポンプ自動車である(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
又、同様の目的で、消防ポンプ、水中油圧ポンプ、及び水中油圧ポンプ駆動用油圧ポンプを搭載した吸水力強化型消防ポンプ自動車が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
より具体的には、図7(b)に示すように、通常の消防ポンプ自動車に、消防ポンプと、電動モーターの駆動で吸水する吸水ポンプと、を搭載してあった。
そして、電動モーターに電力を供給し、吸水ポンプを駆動する発電機として、車両走行用エンジンで駆動して発電する発電機、若しく車両運行用として搭載されている発電機のいずれか一方、或いは両方を搭載した吸水力強化型消防ポンプ自動車である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-123562号公報(特許請求の範囲、図1等)
【特許文献2】特開2018-89345号公報(特許請求の範囲、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の消防自動車は、フルパワーPTOとサイドPTOの両方に油圧式水中ポンプを駆動するための油圧ポンプを設け、当該油圧ポンプによって油圧式水中ポンプを駆動するために必要な大量の作動油や、油圧ポンプと油圧式水中ポンプとを結ぶ耐圧送油ホースを積載しなければならないことから、車両の大型化が避けられないという問題が見られた。
【0006】
又、特許文献2の吸水力強化型消防ポンプ自動車は、油圧ポンプを搭載した消防ポンプ自動車で必要とした大量の作動油、及び耐圧送油ホース等の資機材の搭積載が不要になり、消火活動に必要な資機材を減ずることがないことから、消火活動機能は損なわれにくいと言う利点はあった。
しかしながら、構成上、水中モーターや、水中ポンプ等のみならず、複数の吸水ポンプを駆動する発電機を搭載する必要があって、これらを運搬する必要上、かかる吸水力強化型消防ポンプ自動車を、十分に軽量化や小型化を図ることは、未だ困難であった。
【0007】
更に言えば、特許文献1の消防自動車200や、特許文献2の吸水力強化型消防ポンプ自動車300についても、基本的に、図8に示すような、高重量、高強度材料からなる筐体401や、ボンデ鋼板等からなる壁部材402を内部に備えていた。
それにより、消防自動車としての車両の大型化や重量化が、促進されてしまうとともに、製造や修理自体も、長期間に渡る状況であった。
【0008】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、所定の複合アルミニウム中空パネルと、所定のアルミニウム多層構造体を適宜組み合わせてなる、ボックス構造体を備えることによって、重厚な筐体やボンデ鋼板等を省略したような場合であっても、従来の問題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、簡易構造(ピラーレス構造と称する場合がある。)であって、軽量性や小型化に優れ、更には、製造や修理自体等も容易な消防自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、キャビンデッキの前方から後方に向かって、矩形状の荷物室と、少なくともポンプを収容する矩形状のポンプ室と、を順次に有するボックス構造体を備えた消防自動車であって、荷物室及びポンプ室、或いはいずれか一方の周囲壁が、下記(U1)~(U3)の少なくとも一つの構成部材から構成してあることを特徴とする消防自動車50が提供され、上述した問題を解決することができる。
(U1)コの字状のアルミブロック用接合部材で補強されてなる複合アルミニウム中空パネル
(U2)アルミプレート、樹脂シート、及びアルミプレートからなる三層構造を含むアルミニウム多層構造体
(U3)複合アルミニウム中空パネル(U1)及びアルミニウム多層構造体(U2)の組み合わせ
すなわち、所定の(U1)複合アルミニウム中空パネルや、(U2)アルミニウム多層構造体の単独、或いは、(U3)それらの組み合わせから、概ね矩形状のボックス構造体を備えることによって、複雑で、重量のある筐体等を省略した場合のピラーレス構造であっても、軽量性や小型化に優れ、更には、製造や修理自体等も容易な、簡易構造の消防自動車を提供することができる。
又、荷物室及びポンプ室、或いはいずれか一方の周囲壁が、所定の構成部材から構成してあることにより、一定条件下、優れた断熱性、結露防止性、更には、騒音防止性を発揮しやすくなる。
なお、本発明において、アルミ又はアルミニウムという場合は、素材として、アルミニウム合金を含むことはもちろん、アルミニウムやそれに由来したアルミプレート等に対して、各種防錆処理や、補強処理、着色処理、塗装処理、プライマー処理、カップリング処理、表面研磨処理、表面凹凸処理、ヘミング処理等を施したものも含むものとする(以下、同様である)。
【0010】
又、本発明の消防自動車によれば、ポンプ室の周囲壁は、(U2)アルミニウム多層構造体から構成してあり、荷物室の周囲壁は、(U3)としての、(U1)複合アルミニウム中空パネル及び(U2)アルミニウム多層構造体の組み合わせから構成してあることが好ましい。
このようにポンプ室の周囲壁は、基本的に、加工が容易な、(U2)アルミニウム多層構造体から構成することによって、設計や作業効率を向上させるととともに、更なる軽量化や小型化を図りやすくなる。
同様に、荷物室の周囲壁は、荷物室に収容する各種備品や重量物の種類に応じて、(U3)としての、耐久性や機械的強度に優れた、(U1)複合アルミニウム中空パネル及び(U2)アルミニウム多層構造体の組み合わせから構成することによって、設計や作業効率を向上させるととともに、更なる軽量化や小型化を図りやすくなる。
【0011】
又、本発明の消防自動車によれば、(U3)としての、(U1)複合アルミニウム中空パネル及び(U2)アルミニウム多層構造体の組み合わせが、複数の(U1)複合アルミニウム中空パネルの間に、(U2)アルミニウム多層構造体が配置されている平板状構造体であることが好ましい。
このように、所定構造の複数の(U1)複合アルミニウム中空パネルの間に、所定の(U2)アルミニウム多層構造体が平面的に配置してあることによって、壁材としての機械的強度を著しく向上させることができ、ひいては、ピラーレス構造を形成しやすくなる。
【0012】
又、本発明の消防自動車によれば、連結構造物を平面視した場合に、キャビンデッキの前方から後方に向かって、矩形状の荷物室と、矩形状のポンプ室と、がT字状となるように配置してあることが好ましい。
このように、所定形状の荷物室と、ポンプ室とが連結構造物を形成し、それを平面視した場合に、T字状とすることにより、消防自動車の長さ方向の重量バランスが良好となり、更に耐久性等が向上し、そればかりか、荷物室のみならず、ポンプ室の壁面も有効活用やすくなる。
【0013】
又、本発明の消防自動車によれば、キャビンデッキの後方に、荷台が設けてあって、その荷台の上に、ボックス構造体が、脱着可能に設けてあることが好ましい。
このようにキャビンデッキと、所定ボックス構造体が、脱着可能に構成してあることにより製造工程数が少なくなったり、製造時間が短縮されたり、更には、所定ボックス構造体の単独修理等も可能となる。
【0014】
又、本発明の消防自動車によれば、ポンプ室に、ポンプを、外部に取り出すための機械的アーム、又は、レール状搬送装置が設けてあることが好ましい。
このように機械的アーム、又は、レール状搬送装置が設けてあることにより、所定重量(例えば、20~150kg)のポンプを用いて水源から吸水し、ひいては、その吸水した水を、放水して、消防自動車として迅速に消火活動を行うことができる。
【0015】
又、本発明の消防自動車によれば、連結構造物における、ポンプ室と、荷物室と、の間に、開口部が設けてあり、当該開口部を介して、レール状搬送装置が設けてあることが好ましい。
このようにポンプ室と、荷物室との間に、開口部が設けてあることにより、比較的長いレール状搬送装置であっても施設することができ、そのレール状搬送装置に取り付けてあるベアリング等を利用して、自動又は半自動でポンプが移動できるように、所定ポンプの装着や外部への取出しが、更に容易となる。
【0016】
又、本発明の消防自動車によれば、コの字状のアルミブロック用接合部材が、第1のアルミブロックの端部における仕切板に対して、第1の固定部材を介して挿入固定され、第2のアルミブロックに対して、第2の固定部材を介して接合され、第1のアルミブロック及び第2のアルミブロックを連結補強してなる構成部材であることが好ましい。
このようなアルミブロック用接合部材を用いることによって、軽量性や取り扱い性等に優れるとともに、アルミブロックの端部における仕切り内部に挿入して、当該アルミブロックの機械的強度を向上させ、ひいては複合アルミニウム中空パネルの機械的強度も向上させることができる。
よって、複合アルミニウム中空パネルを周囲壁等に用い、ボックス構造体を形成した状態の消防自動車において、複雑で、重量のある筐体等を省略した、ピラーレス構造であっても、軽量性や小型化に優れ、更には、製造や修理自体等も容易な、簡易構造の消防自動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)~(c)は、本発明の所定のボックス構造体を備えた消防自動車を説明するために供する左側面図、右側面図、及び、上面図である。
図2図2(a)~(b)は、本発明の所定のボックス構造体を備えた消防自動車を説明するために供する正面図、及び、背面図である。
図3図3(a)は、本発明のボックス構造体を説明するために供する図であり、図3(b)は、キャビネット側から見た荷物室を説明するために供する図である。
図4図4(a)は、本発明のボックス構造体の配置図、及び、図4(b)~(c)は、同じくボックス構造体の上面を説明するための概略図、及び、同じくボックス構造体の左側面を説明するための概略図である。
図5図5(a)~(c)は、本発明の別のボックス構造体を説明するために供する上面図、側面図、及び、背面図である。
図6図6(a)~(d)は、アルミブロックを説明するために供する斜視図、強化用部材を説明するために供する斜視図、それらの使用方法を説明するために供する図、及び、アルミニウム多層構造体を説明するために供する図である。
図7図7(a)~(b)は、それぞれ従来の消防自動車(吸水力強化型消防ポンプ自動車)を説明するために供する模式図である。
図8図8(a)~(b)は、従来の消防自動車に用いられる筐体やボンデ鋼板を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)中に、記号A~Dで示される箇所のうち、記号Aで示される箇所に配置されたキャビンデッキの前方から後方に向かって、記号Cの箇所に配置された矩形状の荷物室52と、記号Dの箇所に配置されたポンプ60を収容する矩形状のポンプ室54と、を順次に有するボックス構造体53を備えた消防自動車50である。
そして、荷物室52及びポンプ室、或いはいずれか一方の周囲壁が、下記(U1)~(U3)の少なくとも一つの構成部材から構成してあることを特徴とする消防自動車50である。
(U1)コの字状のアルミブロック用接合部材で補強されてなる複合アルミニウム中空パネル
(U2)アルミプレート、樹脂シート、及びアルミプレートからなる三層構造を含むアルミニウム多層構造体
(U3)複合アルミニウム中空パネル(U1)及びアルミニウム多層構造体(U2)の組み合わせ
【0019】
1.全体構造
第1の実施形態の消防自動車は、図1(a)中、記号Aで示される箇所に配置されるキャビンデッキの前方から後方に向かって、記号Bで示される箇所に配置される後部座席50bを介して、記号Cで示される箇所に配置される矩形状の荷物室52と、記号Dで示される箇所に配置されるポンプ室54と、を備えた消防自動車50である。
そして、図3(a)に示されるように、所定の荷物室52と、ポンプ室54とからなる、所定のボックス構造体53を備えた消防自動車50である。
又、ポンプ室54には、ポンプ60とともに、それを使用する際には外部に搬出する装置として、機械的アーム50j等を備えた消防自動車50である。
更に、消火活動を行うための消防自動車50であることから、給排水等を行うポンプ60以外の消防活動に必要な、図1(a)等に示すように、赤色灯50d、或いは、図3(b)等に示すように、シャッター巻き取り装置50rや、発電機及び照明器具50q、更には、通信設備等についても、全体構造の一部として、基本的に含むことができる。
【0020】
2.主要構造
(1)荷物室
(1)-1 形状
荷物室の形状に関し、立体形状や平面形状等として、特に制限されるものではないは、使い勝手や耐久性、更には製造容易性等を考慮し、概ね矩形状の立体形状を有し、平面的には、長方形や正方形、或いは、多角形とすることが好ましい。
すなわち、荷物室の形状は、ポンプ室と隣接配置された場合に、連結構造物として所定ボックス構造体を形成可能な形状であることが好ましい。
【0021】
よって、図1(a)等に示す荷物室52の場合、機械的アームは、ポンプ室のみに配置されており、当該荷物室には入り込んでいないものの、幅300mmのサイドボックス80を両端にそれぞれ含んだ状態で、通常、全幅が1500~1800mm、高さが1200~1400mm、奥行きが750~1000mmの概ね矩形状であって、平面的には、消防自動車の長さ方向に沿って、横長の長方形としてあることが好ましい。
又、図5(a)等に示す荷物室52の場合、レール状搬送装置50kのポンプ稼働部が一部入り込んでいるとともに、所定幅450mmのサイドボックスを両端にそれぞれ含んでいるが、通常、全幅が1500~1、800mm、高さが1、200~1、400mm、奥行きが750~1、000mmの概ね矩形状であって、平面的には、消防自動車の長さ方向に沿って、横長の長方形としてあることが好ましい。
【0022】
(1)-2 周囲壁の厚さ等
又、荷物室についても、外部と、内部を隔てる周囲壁を備えることが好ましい。
かかる周囲壁厚さは、荷物室の強度、耐久性、使い勝手性、更には、収容する荷物の種類や重量等を考慮して定めることが好ましいが、通常、20~50mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0023】
(1)-3 周囲壁の構成種類
又、荷物室における周囲壁の構成種類としては、その機械的強度、耐久性、取り扱い性等が特に優れていることから、主として、図6(a)~(c)に示すように、アルミブロック用接合部材10や強化用部材33を用いてなる、複合アルミニウム中空パネル(アルミブロック組立体を含む。)20であることが好ましい。
より具体的には、図6(c)に示すように、一つのアルミブロックとしての第1のアルミブロック21の端部に対して、一つの固定部材としての第1の固定部材31(31a、31b)を介して挿入固定され、別のアルミブロックとしての第2のアルミブロック22或いは異種部材に対して、別の固定部材としての第2の固定部材32(32a、32b)を介して接合するためのアルミブロック用接合部材10を用いることが好ましい。
【0024】
そして、下記構成(A)~(D)を有するアルミブロック用接合部材10であることが好ましい。
(A)第1の側壁11と、平板部13と、第2の側壁15と、を備えるとともに、側面形状が、コの字状である構成。
(B)第1の側壁11及び第2の側壁15に、それぞれ第1のアルミブロック21の端部における仕切板が挿入される一対の切込み17が、少なくとも一つ設けてある構成。
(C)第1の側壁11及び第2の側壁15に、それぞれ第1の固定部材31(31a、31b)を貫通固定させるための一対の第1の貫通孔18が設けてある構成。
(D)平板部13に、第2の固定部材32(32a、32b)を貫通させるための第2の貫通孔19が、煙突状に少なくとも一つ設けてある構成。
【0025】
(1)-4 対象荷物
荷物室には、防火用品や、防災用品の各種備品を載せることができるが、例えば、下記対象荷物が代表的である。
すなわち、対象荷物としては、ポンプに、外部の水を汲み上げるための吸入ホース、ポンプで汲み上げた水を、ポンプの取り出し内口に装着し、消火場所まで導入させるための主ホース及び延長ホースのロール巻、ホースの巻き取り装置、スコップ、チェ―ンソー(電動のこぎり、エンジンカッター)、防火服、防火靴、防火用ヘルメット、ハンディ消火器、発電機等の少なくとも一つである。
【0026】
(1)-5 天井部
消防自動車の荷物室等への風雨の侵入を防ぐとともに、その上方に、梯子等を乗せるための固定場所として、天井部を設けることが好ましい。
又、図4(b)に、概略的に示すように、かかる天井部70は、荷物室52の一部のみならず、ポンプ室54も全体的に覆うため、比較的大面積となる。
従って、かかる天井部は、基本的に防水機能や、耐久性を発揮できる範囲で軽量化するために、主として、図6(d)に示すような、(U2)アルミニウム多層構造体から構成することが好ましい。
【0027】
すなわち、かかる(U2)アルミニウム多層構造体40としては、図6(d)に示すように、所定の三層構造を含む多層構造体から構成することがより好ましい。
そして、樹脂シート42を、消毒や洗剤等のための有機溶剤(アルコール類)等から防ぐために、(U2)アルミニウム多層構造体40の両端部に、硬化性接着剤からなる保護層44を設けることが好ましい。
【0028】
但し、かかる天井部における強度や耐久性等を更に向上させたい場合には、(U1)の複合アルミニウム中空パネル単独や、(U3)で示される、複合アルミニウム中空パネル(U1)と、アルミニウム多層構造体(U2)との組み合わせであっても良い。
【0029】
(2)ポンプ室
(2)-1 形状
図1(a)~(c)におけるポンプ室54の形状に関し、ポンプ60を収容することができ、それを使用等する際には、水源付近に運搬して、そこで外部に搬出できる態様であるという前提のもと、その立体形状や平面形状等は特に制限されるものではない。
但し、使い勝手や耐久性、更には製造容易性等を考慮し、かかるポンプ室の形状を、概ね矩形状の立体形状とし、平面的には、長方形や正方形、或いは、多角形とすることが好ましい。
【0030】
すなわち、図1(a)等の消防自動車50に、概略的に示されるポンプ室54の場合、機械的アーム50jのポンプ稼働部を含んでいる。
従って、機械的アーム50jのポンプ稼働部を含むポンプ室54の全幅は、通常、1、000~1、300mm、高さは1、200~1、400mm、奥行きは750~1、000mmの概ね矩形状であって、平面的には、消防自動車の長さ方向に沿って、縦長の長方形としてあることが好ましい。
又、図5(a)等に示すポンプ室54の場合、レール状搬送装置50kを備えたポンプ稼働部を含んでいるが、通常、全幅が1500~1800mm、高さが1200~1400mm、奥行きが750~1000mmの概ね矩形状であって、平面的には、消防自動車の長さ方向に沿って、横長の長方形としてあることが好ましい。
又、図示しないものの、ポンプ室の一部、特に、背面部に、ポンプを出し入れするための、観音扉戸、シャッター、或いは、ハッチ等の開閉部を設けることが好ましい。
【0031】
(2)-2 周囲壁の厚さ等
又、かかるポンプ室は、概ね矩形状であることから、外部と、内部とを隔てる周囲壁(側壁や底板等)を備えることによって、上述した機械的強度や耐久性等を得やすくするばかりか、一定条件下、優れた断熱性、結露防止性、更には、騒音防止性を発揮しやすくなる。
又、優れた断熱性等が得られることから、保管時における結露の発生も少なくなる。よって、ポンプ室にポンプを長期間保管したとしても、ポンプ自体やその部品が腐蝕することが少なくなり、修理や置換時期も伸ばすことができ、ひいては、経済性も良好となる。
従って、かかる周囲壁の厚さは、ポンプ室の強度、耐久性、使い勝手性、更には、収容するポンプの種類や重量、収容するポンプの移動手段(機械的アームやスライドレール等)の大きさ等を考慮して定めることが好ましいが、通常、2~40mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0032】
(2)-3 周囲壁の構成種類1
又、ポンプ室の周囲壁の構成種類としては、その機械的強度、耐久性、軽量性、断熱性、取り扱い性等が優れていることから、(U2)で示される複合アルミニウム中空パネル単独や、(U3)で示されるように、複合アルミニウム中空パネルと、アルミニウム多層構造体との組み合わせであっても良いが、主として、図6(d)に示す、アルミニウム多層構造体40であることが好ましい。
【0033】
すなわち、軽量性や耐久性等をより高める場合には、(U2)アルミニウム多層構造体であって、図6(d)に示すように、所定の三層構造を含む多層構造体を用いることがより好ましい。
よって、このような多層構造体を用いることによって、相当の肉厚部材として、所定長さのリベットやボルト/ナット等の固定具を用いることができ、ひいては、優れた耐久性や機械的強度を発揮することができる。
しかも、一対のアルミニウム基材間の樹脂シート(発泡樹脂層)により、所定の断熱性やクッション性も発揮することができる。
よって、ポンプへの過度な加圧力や振動力がかかった場合であっても、それらを吸収して、ポンプを保護しやすくなり、その上、所定長さのリベットやボルト/ナット等の固定具が緩む心配も更に少なくなる。
【0034】
(2)-4 周囲壁の構成種類2
又、軽量性や使い勝手性等を、更に高める場合には、周囲壁として、基本的に、所定厚さのアルミプレート単体を用いることも好ましい。
その場合、上述した多層構造体と比較して、その厚さにもよるが、機械的強度や耐久性等が低下する場合があることから、適宜、図5(b)に示すような、ステンレス、アルミニウム合金、ニッケル合金等からなる長尺部材54aや、L字状部材を付加するとともに、それらをリベット等の固定具で止めて、補強することが好ましい。
又、アルミプレートの厚さとしては、通常、1~5mmの範囲内の値とすることが好まく、2~4mmも厚さとすることがより好ましい。
そして、アルミプレート単体の機械的強度や耐久性を向上させるために、アルミプレート単体に、ヘミング処理や表面凹凸処理を施して、端部に折り曲げ箇所を設けたり、表面を波型模様としたり、更には、強化樹脂材料や、強化ゴム材料で、端部処理を施すことも好ましい。
【0035】
なお、アルミプレートの場合、固定する際に、溶接処理も困難であるが、アルミプレートの厚さ以上の比較的長いリベットやボルト/ナット等の固定具であっても、厚さの関係で、そのまま使用できない場合がある。
よって、そのような場合、ワッシャーを用いたり、或いは、アルミプレートの所定位置に、厚さ調整プレートを貼付し、それを介して、リベットやボルト/ナット等の固定具を用いたりすることが好ましい。
【0036】
(2)-5 ポンプ
ポンプ室に収容するポンプの種類は、消防活動用に、給排水機能を有するポンプ(給排水ポンプとも称する。)であれば、特に制限されるものではない。
但し、汎用性に優れ、かつ、大容量の水等を迅速に汲み上げ、それを、火元に迅速に送水して、散布する等の必要性から、通常、規格圧力0.5~1MPaであって、総重量(25~100Kgf)、規格放出量(1~1.3m3/分)の水冷方式のターボポンプであることが好ましい。
より具体的には、株式会社シバウラ防災製作所製、FF500RC B2級、Fi-FF500Z等の市販品が好適である。
そして、大容量の水等を迅速に汲み上げるために、初期動作として、ポンプ及び配管内等を減圧するための、真空ポンプ機能も更に有していることが好ましい。
【0037】
(2)-6 機械的アーム
図1(a)等に示すように、ポンプ60を、使用時に、記号Dで表示されるポンプ室の所定位置から外部に取出したり、或いは、使用後に、所定位置に搬入したりするための機械的アーム50jを設けてあることが好ましい。
この場合、ポンプの重量を考慮し、それが自動又は半自動で可動できるような機械的アームを、ポンプ室の所定場所に、設けることが好ましい。
又、かかる機械的アームを設けた場合、機械的アームの先端部に設けたポンプ架台が、約1/4円弧を描くように、動作することが好ましい。
従って、約1/4円弧を描いて停止したポンプを、かかる機械的アームを用いて、自動又は半自動で、使用時には、ポンプ室の所定位置から外部に取出し、更に、使用後には、所定位置に搬入することになる。
【0038】
(2)-7 レール状搬送装置
図5(a)~(c)に示すように、ポンプ60を、使用時に、ポンプ室54の所定位置から外部に取出したり、或いは、使用後に、ポンプ室54の所定位置に搬入したりするためのレール状搬送装置50k(スライドレールと称する場合がある。)が、水平状に設けてあることが好ましい。
すなわち、ポンプの重量(例えば、100kg)を考慮し、それが水平移動できるように、梯子状の一対のスライドレールが上下方向に設けてあり、その間に、複数のベアリング材が設けてあることが好ましい。
そして、上側のスライドレールの上に、自動又は半自動で、ポンプを載せた状態で、相対的に一対のレールが相互にスライドさせ、少なくともポンプ室の背面側に設けてある開口部まで、ポンプを水平移動させることが可能とすることが好ましい。
【0039】
なお、ポンプ室の背面側に設けてある開口部までは、別のレール状搬送装置として、斜面用レール状搬送装置が設けてあることが好ましい。
すなわち、消防自動車の架台は、ある程度の高さがあるため、ポンプ室の開口部まで移動させたポンプを、斜面用レール状搬送装置を用いて、ほぼ地面まで移動させることができる。
そして、斜面用レール状搬送装置の機構や動作は、水平方向用レール状搬送装置と同様であって、基本的な違いは、重力方向に対して、斜め方向に動作し、安全性向上のためのストッパーが設けてあるという点である。
なお、レール状搬送装置の幅は、通常、500~800mmの範囲内であるが、長さは、1800~2000mmと相当長くなる。
従って、そのような場合には、図5(a)に示すように、ポンプ室54のみならず、荷物室52の内部にまで、その間に設けてある開口部50nを介して、レール状搬送装置50kの先端部を含む一部が届くような構成とすることが好ましい。
そして、開口部の大きさは、レール状搬送装置の幅や高さ等を考慮して定めることが好ましいが、更に言えば、汎用性を高めるために、開口部に、シャッターや開閉扉等が設けてあり、当該開口部の大きさが可変であることが好ましい。
【0040】
(2)-8 天井部
消防自動車のポンプ部等への風雨の侵入を防ぐとともに、その上方に、梯子等を乗せるための固定場所として、図4(b)に示すように、天井部70を設けることが好ましい。
かかる天井部は、比較的大面積となることから、基本的に防水機能や、耐久性、断熱性、遮音性等を発揮できる範囲で軽量化するために、主として、(U2)アルミニウム多層構造体や、所定形状のアルミフレーム及び幌(防水シート)との組合わせであることが好ましい。
すなわち、(U2)の複合アルミニウム中空パネル単独や、(U3)で示される、複合アルミニウム中空パネルと、アルミニウム多層構造体との組み合わせであっても好適である。
但し、より軽量化、簡易構造化のために、(U2)アルミニウム多層構造体であって、図6(d)に示すように、第1のアルミプレート41/樹脂シート42/第2のアルミプレート43からなるアルミニウム多層構造体40であることがより好ましい。
【0041】
更に、天井部に、消防服や消防靴等の荷物を載置するスペースを設ける場合があるが、そのような場合には、図5(b)~(c)に示すように、所定形状のアルミフレーム50m及び、それを覆う幌(図示せず。)の組合わせとすることがより好ましい。
そして、所定形状のアルミフレーム及び幌の組合わせを天井部とする場合には、幌の真上ではなく、アルミフレームの側方に、梯子を載置するスペースを設けることが好ましい。
【0042】
(3)ボックス構造体
(3)-1 基本構成
又、図4(a)に、荷物室及びポンプ室、並びにボックス構造体を配置する、それぞれ消防自動車のシャーシの上に設けた荷台(滑り止め付きアルミプレート等を含む。)における所定位置62~64を示す。
従って、それらの所定位置に対応させて、ボルト/ナット、或いは、所定ネジ等の固定部材等によって、荷物室及びポンプ室を、隣接配置したうえで、強固に接続することにより、連結構造物として、耐久性や機械的強度に優れたボックス構造体を精度良く形成することができる。
すなわち、ボックス構造体を消防自動車(或いは、シャーシ)の長さ方向の、少なくとも中間点以降に含むことにより、消防自動車全体としての重量バランスが良好になると言える。しかも、耐久性や機械的強度に、より影響する荷物室が、キャビンデッキを含む消防自動車の前方部と、最後方のポンプ室との間に位置することになる。
よって、このような配置関係となる消防自動車であることから、耐久性や機械的強度等を著しく向上させるとともに、製造工程や製造時間を短縮化することができる。
よって、所定のボックス構造体を、所定位置に備えることは、経済面、環境面から判断しても、極めて好適な態様である。
【0043】
(3)-2 T字状配置
そして、図4(b)に示すように、ボックス構造体53を平面視した場合に、キャビンデッキの前方から後方に向かって、矩形状で横長の荷物室52と、矩形状で縦長のポンプ室54と、がT字状となるように配置してあることが好ましい。
この理由は、このようにT字状を形成することにより、矩形状で横長の荷物室と、矩形状で縦長のポンプ室とが相互に干渉し、ひいては、消防自動車の長さ方向の重量バランスが良好となり、更に耐久性等が向上するためである。
又、ボックス構造体の平面形状が、概ねT字状であれば、ポンプ室の壁面の片面或いは、両面についても、周辺機器の設置場所として有効活用できるためである。
更に、平面形状が、概ねT字状のボックス構造体であれば、相互に接触する面積が多くなるとともに、天井部や、床板部材を利用して、容易に密着させて、隙間なく設けることができるので、耐久性等を向上させながら、製造や修理自体も容易になると言える。
【0044】
(4)シャッター
又、図示しないものの、棚構造に収容するホースや他の備品類の落下防止や、外部からのいたずら防止等のために、所定シャッターを備えることが好ましい。
すなわち、軽量化、小型化を阻害しない範囲で、例えば、すだれ式のシャッターや跳ね上げドア等を設けることが好ましい。
【0045】
(5)梯子
又、図1(a)等に示すように、消防自動車50の天井部分に、所定長さであって、かつ伸縮機構を備えた梯子50gを設けることが好ましい。
よって、かかる梯子を利用して、高所等の消火作業や救助作業であっても、効率的に行うことができる。
なお、梯子の長さは、畳んだ状態では、通常、3~5m程度であるが、伸ばした状態で、8~20m程度の長さになる態様であることが好ましい。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図1(a)に示されるように、第1の実施形態のキャビンデッキの前方から後方に向かって、矩形状の荷物室52と、少なくともポンプを収容する矩形状のポンプ室54と、を順次に有するボックス構造体53を備えた消防自動車50に用いられる、下記(U1)~(U3)の少なくとも一つの構成部材に関する実施形態である。
(U1)コの字状のアルミブロック用接合部材で補強されてなる複合アルミニウム中空パネル(単に、複合アルミニウム中空パネルと称する場合がある。)
(U2)アルミプレート、樹脂シート、及びアルミプレートからなる三層構造を含むアルミニウム多層構造体(単に、多層構造体と称する場合がある。)
(U3)複合アルミニウム中空パネル(U1)及びアルミニウム多層構造体(U2)の組み合わせ(単に、U1及びU2の組み合わせと称する場合がある。)
【0047】
1.(U1)複合アルミニウム中空パネル
コの字状のアルミブロック用接合部材で補強されてなる複合アルミニウム中空パネルである。
すなわち、図6(a)は、アルミブロック用接合部材10の全体斜視図、図6(b)は、複合アルミニウム中空パネル20の強化用部材33、並びに、図6(c)は、アルミブロック用接合部材10を用いてなる複合アルミニウム中空パネル20を説明するための図であり、これらを適宜参照するものとする。
【0048】
(1)複合アルミニウム中空パネルの基本構成
図6(a)に示されるアルミブロック用接合部材10の基本構成としては、図6(c)に示されるように、第1のアルミブロック21の端部における仕切板21aで形成された所定空間21bに対して、第1の固定部材31(31a、31b)を介して挿入固定される構成である。
そして、アルミブロック用接合部材10は、第2のアルミブロック22に対して、第2の固定部材32(32a、32b)を介して固定する構成である。
すなわち、図6(a)は、アルミブロック用接合部材10の典型例としての斜視図を示しているが、このように第1の側壁11と、平板部13と、第2の側壁15と、を備えるとともに、側面形状から視認した場合の形状が、概ねコの字状部材である。
【0049】
そして、図6(c)に示すように、かかるアルミブロック用接合部材10によれば、複数のアルミブロックである第1のアルミブロック21及び第2のアルミブロック22を、所定角度、例えば、垂直方向に、溶接作業等を省略し、第1の固定部材31及び第2の固定部材32を介して、強固に固定することができる。
又、かかるアルミブロック用接合部材10によれば、例えば、第1のアルミブロック21の端部における仕切板21aで形成された所定空間21bに対して、挿入して、嵌合及び接合させることから、第1のアルミブロック21の端部の機械的強度を著しく向上させることができる。
【0050】
又、アルミブロック用接合部材を構成する材質は、基本構成の一つとして、特に制限されるものではないが、通常、耐食性や機械的強度等が良好な一方、比較的軽量でありながら安価であって、かつ、経済性にも優れていることが好ましい。
そのため、かかるアルミブロック用接合部材の材質が、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル、チタン、タングステン、FRP(繊維強化プラスチック樹脂)、CFRP(カーボン繊維強化プラスチック樹脂)の一種単独又は二種以上の組み合わせ(合金も含む。)であることが好ましい。
【0051】
(2)複合アルミニウム中空パネルの構成(A)
複合アルミニウム中空パネルの構成(A)は、図6(a)に示すように、アルミブロック用接合部材10の外形に関する構成であって、第1の側壁11と、平板部13と、第2の側壁15と、を備えるとともに、それを側面形状から視認した場合、コの字状であることを特徴とする。
すなわち、アルミブロック用接合部材を側方視した場合に見える形状であって、側面形状から視認される形状が、概ねコの字状であれば、アルミブロックの端部における仕切板で形成される、複数の所定空間に対して、容易に挿入することができる。
そして、アルミブロック用接合部材の挿入部分及びそこに形成した貫通孔に対して、所定の固定部材(例えば、第1の固定部材及び第2の固定部材)を用いることによって、第1のアルミブロック自体、或いは第2のアルミブロックにおける所定場所に、容易かつ強固に固定することができる。
【0052】
又、アルミブロック用接合部材における第1の側壁の高さは、アルミブロックの態様や用途等によって変更できるが、通常、0.5~5cmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、同様に、第1の側壁の長さは、アルミブロックの態様や用途等にもよるが、通常、8~25cmの範囲内の値とすることが好ましい。
更に又、同様に、第1の側壁の厚さは、アルミブロックの態様や用途等によるが、通常、0.1~5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、第1の側壁の高さや厚さ等は、後述する第2の側壁の高さや厚さ等と同等とすることも好ましいが、局部的に、機械的強度をより高めたいような場合には、第2の側壁の高さや厚さ等と異ならせることも好ましい。
【0053】
又、アルミブロック用接合部材における平板部の厚さは、アルミブロックの態様や用途等によって適宜変更できるが、通常、0.1~5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、同様に、アルミブロック用接合部材の平板部の長さは、アルミブロックの態様や用途等によるが、通常、8~25cmの範囲内の値とし、第1の側壁及び第2の側壁の長さと、実質的に同等とすることが好ましい。
【0054】
又、アルミブロック用接合部材における第2の側壁の高さは、アルミブロックの態様や用途等によって適宜変更できるが、通常、0.5~5cmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、同様に、第2の側壁の長さは、アルミブロックの態様や用途等にもよるが、通常、8~25cmの範囲内の値とすることが好ましい。
更に又、同様に、第2の側壁の厚さは、アルミブロックの態様や用途等によるが、通常、0.1~5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、第2の側壁の高さや厚さ等は、前述した第1の側壁の高さや厚さ等と同等とすることも好ましいが、局部的に、機械的強度をより高めたいような場合には、第1の側壁の高さや厚さ等と異ならせることも好ましい。
【0055】
(3)複合アルミニウム中空パネルの構成(B)
複合アルミニウム中空パネルの構成(B)は、図6(a)に示すように、アルミブロック用接合部材10に設けてある切込み17に関する構成である。
そして、第1の側壁11及び第2の側壁15に、それぞれ第1のアルミブロック21の端部における仕切板21aが挿入される一対の切込み17が、少なくとも一つ設けてあることを特徴とする。
【0056】
すなわち、第1のアルミブロック21の横方向の単位長さ(例えば、約30cm)あたり、アルミブロック用接合部材10の第1の側壁11及び第2の側壁15における、それぞれ端部から等しい距離の位置に、対になって設けてある。
従って、第1のアルミブロック21の端部における仕切板21aが、垂直方向に挿入され、それと嵌合されるように、アルミブロック用接合部材10の所定位置に、切込み17が設けてあることが好ましい。
【0057】
又、アルミブロック用接合部材における切込み幅は、隣接する第1の側壁どうし、或いは、対向して、隣接する第2の側壁どうしとの離間距離に相当するが、通常、1~10mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる切込み幅が1mm未満になると、アルミブロック用接合部材と、第1のアルミブロックとの間の接合は強固になりやすいが、アルミブロックやアルミブロック用接合部材の作成精度が劣り、両者を容易に挿入できないという問題が生じる場合があるためである。
一方、かかる切込み幅が10mmを超えると、アルミブロックの作成精度が多少劣っていても、容易に挿入できるものの、アルミブロック用接合部材と、第1のアルミブロックとの間の接合が脆弱になりやすいという問題が生じる場合があるためである。
従って、アルミブロック用接合部材における切込み幅を0.5~8mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1~5mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0058】
又、アルミブロック用接合部材に設ける切込みの形状は、アルミブロックの用途や長さ等にもよるが、通常、直線状、長方形状、S字状、テーパ状(漏斗状)等とすることが好ましい。
この理由は、このような切込みの形状であれば、形成自体が容易な一方、アルミブロックに挿入することが、比較的容易であるとともに、一旦挿入すれば、脱着しにくい形状であるためである。
【0059】
(4)複合アルミニウム中空パネルの構成(C)
複合アルミニウム中空パネルの構成(C)は、図6(c)に示すように、アルミブロック用接合部材10における第1の側壁11及び第2の側壁15に設けてある、一対の第1の貫通孔18と、所定の固定部材である第1の固定部材31とを利用して、アルミブロック用接合部材10を、第1のアルミブロック21に対して、固定させるための構成である。
すなわち、図6(a)に示すように、第1の側壁11及び第2の側壁15のそれぞれ対になる位置に、一対の第1の貫通孔18を設けておき、当該一対の第1の貫通孔18に対応して、第1のアルミブロック21に予め設けてある一対の貫通孔18aと、それぞれ位置決めした状態とする。
そして、アルミブロック用接合部材10における一対の2つの第1の貫通孔18を含む、4つの穴を貫通させるように、第1の固定部材として、ネジ付きボルトとしてのボルト31aを挿入し、それを両側からナット31b或いは、ワッシャー付きナットにより、強固に螺合させ、固定する構成である。
【0060】
又、一対の第1の貫通孔の数は、第1のアルミブロックの用途や長さ等にもよるが、当該アルミブロックの単位長さあたり(約2cm)、通常、2~10個の範囲内の値にすることが好ましい。
又、第1の貫通孔の直径(円相当径)は、第1のアルミブロックの用途や長さ、或いは、第1の固定部材の太さ等にもよるが、通常、1~8mmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、隣接する第1の貫通孔の間隔は、第1のアルミブロックの用途や長さ或いは大きさ等にもよって適宜変更できるが、通常、0.5~10cmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、第1の固定部材の種類は、特に制限されるものでないが、第1の固定部材を、第1のアルミブロックに対して、貫通させて、所定位置に強固に固定させるためのものであれば良い。
従って、かかる第1の固定部材としては、通常、図6(c)に示すように、ボルト31aと、ナット31bとの組み合わせ、或いは、両端にナット及びワッシャーが付いたボルト等の組み合わせ、更には、リベットであることが好ましい。
【0061】
(5)複合アルミニウム中空パネルの構成(D)
複合アルミニウム中空パネルの構成(D)は、図6(a)に示すように、平板部13に設けてある、煙突状(以下、円筒状と称する場合がある。)の第2の貫通孔19に関する構成であって、それぞれ所定の固定部材である第2の固定部材32を貫通させ、第2のアルミブロック22に対して、強固に固定するための第2の貫通孔19に関する構成である。
【0062】
又、第2の貫通孔の数は、アルミブロック用接合部材の長さ、更には、第2のアルミブロックの用途や長さ等にもよるが、通常、1~8個の範囲内の値にすることが好ましい。
又、第2の貫通孔の直径(円相当径)は、第1の貫通孔の直径(円相当径)と同等か、それよりも大きく、かつ、第2のアルミブロックの用途や長さ、或いは、第2の固定部材の太さ等にもよるが、通常、3~15mmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、隣接する第2の貫通孔の間隔は、第2のアルミブロックの用途や長さ等にもよって適宜変更できるが、通常、5~20cmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、第2の固定部材の種類は、特に制限されるものでないが、第2の固定部材を、第2のアルミブロックに対して、貫通固定させるためのものであれば良い。
従って、かかる第2の固定部材としては、図示しないものの、フランジ付き中空部材を含む片側ボルトであることが好ましい。
【0063】
(6)第1のアルミブロックの形態
第1のアルミブロックは、中空のアルミニウム押出材の適数個を接続してなるパネルであれば、特に、その形態は制限されるものではないが、長さ方向に切断した場合の断面形状が、複数の仕切板と、それによって形成された空間部からなる長方形状であることが好ましい。
より具体的には、図6(c)に示すように、第1のアルミブロック21は、長方形状の空間を有するアルミブロック成形品において、その間に4つの仕切板21aで、等分に区画し、3つの所定空間21bを有する構成であることが好ましい。
そして、第1のアルミブロック21の側端部、すなわち、3つの所定空間21bの左右に、別のアルミブロック成形品(図示せず)と嵌合して、対向する概ね断面三角形状の突起どうしが係合し、連結するための突起接続部21c及び21eを有することが好ましい。
【0064】
(7)強化用部材
又、図6(b)~(c)に示すように、アルミブロック用接合部材10を介して、第1のアルミブロック21と、第2のアルミブロック22と、を接合させてなる複合アルミニウム中空パネル20に対して、接合強度を強化するために、側面形状が、L字状(概ねL字状である構成を含む。以下、同様である。)である強化用部材33を更に設けることが好ましい。
この理由は、かかる強化用部材33を更に設けた複合アルミニウム中空パネル20であれば、軽量化や小型化という特性を維持しつつ、水平方向や垂直方向に対して、機械的強度(機械的安定性)を更に高めることができるためである。
しかも、固定部材の種類にもよるが、かかる強化用部材33は、後から取り付けことも可能であることから、容易に設けることができる。
【0065】
より具体的には、図6(b)に示すように、かかる強化用部材33を側方視した場合に見える形状である、側面形状が、L字状であれば、アルミブロック用接合部材10を介して水平方向又は垂直方向に接合された第1のアルミブロックと第2のアルミブロックの双方に隙間なく接するため、容易かつ強固に取り付けることができる。
又、強化用部材の長さは、アルミブロック用接合部材及びアルミブロックの態様や用途等にもよるが、通常、10~30cmの範囲内の値とすることが好ましい。
更に又、強化用部材の厚さは、アルミブロック用接合部材及びアルミブロックの態様や用途等によるが、通常、0.5~5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0066】
そして、強化用部材33の取り付け方法は特に制限されるものではないが、図6(b)に示すように、アルミブロック用接合部材10を使用して複合アルミニウム中空パネル20とする際に、同時に取り付けることが好ましい。
一例として、図6(c)に示すように、複合アルミニウム中空パネル20において、アルミブロック用接合部材10と、第1のアルミブロック21と、及び強化用部材33とが、第1の固定部材としての所定のリベット(図示せず)によって、更に、強化用部材33と、第2のアルミブロックとが、第3の固定部材34としての所定のリベット(図示せず)によって、固定されていることが好ましい。
【0067】
(8)第1のアルミブロックの使用方法
次いで、アルミブロック用接合部材の、第1のアルミブロックに対する使用方法につき、その典型例を、下記工程(1)~(4)に沿って説明する。
(1)まずは、図6(a)に示されるアルミブロック用接合部材10を準備し、それを図6(c)に示すように、第1のアルミブロック21の端部の所定位置に挿入する。
(2)次いで、図6(c)に示すように、第1の固定部材31を用いて、アルミブロック用接合部材10を、第1のアルミブロック21の所定位置に固定する。
(3)次いで、図6(c)に示すように、第1のアルミブロック21の端部の所定位置に、第2のアルミブロック22が垂直方向をなすように、位置決めをする。
(4)次いで、図6(c)に示すように、第2の固定部材32を用いて、第2のアルミブロック22を、アルミブロック用接合部材10を介して、第1のアルミブロック21に対して固定し、所定構造の複合アルミニウム中空パネル20、すなわち、棚やサイドボックス等の形態とする。
【0068】
2.(U2)アルミニウム多層構造体
(U2)の記号で示される、アルミニウム多層構造体(以下、単に、多層構造体と称する場合がある。)40は、図6(d)に示すように、少なくとも一対のアルミプレート41、43と、その間の樹脂シート42と、に由来した三層構造を含んでなる多層構造体である。
【0069】
(1)多層構造体の基本構成
まず、図6(d)に示すように、第1のアルミプレート41/樹脂シート42/第2のアルミプレート43からなる三層構造を含む多層構造体(多層軽量パネルと称する場合もある。)40を、各所に設けることが好ましい。
より具体的には、少なくとも、天井部や側壁に対して、それぞれ多層構造体の単独、或いは、多層構造体(三層構造)と、他の保護層との組み合わせである多層構造体を用いることが好ましい。
この理由は、このように消防自動車の所定箇所、特に、腐蝕しやすいポンプ室の周囲に、所定の多層構造体を用いることによって、重厚な筐体やボンデ鋼板に相当する機能を発揮できるためである。
従って、かかる多層構造体を用いることにより、軽量性、耐食性、組立性等に関し、更に優れた消防自動車の態様とすることができる。
その上、消防自動車の製作上、所定の多層構造体を適宜用いることによって、リベットやボルト/ナット等の簡易固定具を用いて、所定場所に、容易に固定配置することができる。
すなわち、従来の主たる固定方法としての、熟練者による溶接作業等が不要になって、消防自動車における組み立て、修理、更には、分解廃棄等につき、熟練者でなくとも、精度良く、かつ、迅速に行うことができる。
【0070】
又、樹脂シートの構成材料としては、発泡スチロール樹脂、発泡ウレタン樹脂、発泡フェノール樹脂、硬質ウレタン、ゴムシート、カーボン繊維入り樹脂シート、アラミド繊維入り樹脂シート、ガラス繊維入り樹脂シート、発泡樹脂入り樹脂シート、軽量無機繊維入り発泡シート、軽量有機繊維入り発泡シート等の少なくとも一つであることが好ましい。
特に、発泡スチロール樹脂であれば、汎用性、軽量性、経済性、断熱性、結露防止性、耐久性、取り扱い性等の観点から、好適な樹脂シートの構成材料であると言える。
更に言えば、樹脂シートの構成材料の一部に、有機不燃材料や無機不燃材料の単独又は混合物を、樹脂シートの全体量に対して、通常、0.1~10重量%の範囲で配合することも好ましい。
【0071】
又、図6(d)に示す多層構造体40の形態に関し、表裏に存材するアルミプレート41、43の少なくとも一方の外表面に、耐食性を更に向上させるために、公知の防錆処理、例えば、リン酸亜鉛メッキ処理、アルマイト処理、クロメート処理、珪酸化炎処理、或いは防錆塗料の塗布処理等の少なくとも一つを施すことも好ましい。
又、アルミプレート41、43の厚さは、それぞれ等しくても、異なっていても良いが、通常、それぞれの厚さを0.5~15mmの範囲内の値とすることが好ましい。
又、かかるアルミニウム多層構造体40における樹脂シート42の厚さを、通常、1~30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
そして、かかる多層構造体の単位面積当たりの質量に関し、通常、0.5~20kg/m2の範囲内の値とすることが好ましく、3~10kg/m2の範囲内の値とすることがより好ましい。
更に、かかる多層構造体40の端部(断面部)において、塗布処理(保護処理)を施して、例えば厚さ10~3000μmの保護層44を形成することが好ましい。
【0072】
(2)多層構造体の適用方法
次いで、図6(d)に示す多層構造体40の適用方法を説明する。
すなわち、典型的には、第1のアルミプレート41/樹脂シート42/第2のアルミプレート43からなる多層構造体40を用いて、消防自動車50におけるポンプ室54等の周囲壁として、軽量性やクッション性に富んだ、矩形状のポンプ室54を構成することが好ましい。
或いは、図4(b)に示すように、かかる多層構造体40を、矩形状の荷物室52の一部及び矩形状のポンプ室54の全部の天井部とすることも好ましい。
そして、多層構造体40を所定位置に、強固かつ軽量的に固定するために、リベットや、ボルトナット、くぎ、更には、接着剤や粘着テープ等を用いて、固定することが好ましい。
例えば、所定リベットを用いて、多層構造体を所定場所に固定する際には、当該リベットが、アルミプレートを貫通して、樹脂シートの一部まで到達するように固定することが好ましい。
【0073】
3.(U3)複合アルミニウム中空パネル(U1)と、アルミニウム多層構造体(U2)との組み合わせ
かかる(U3)の組み合わせ構造は、少なくとも(U1)複合アルミニウム中空パネルと、(U2)アルミニウム多層構造体とを組み合わせてなる構造体である。
例えば、(U3)の組み合わせ構造は、主として、耐久性等に優れた複数の(U1)複合アルミニウム中空パネルの間に、主として、軽量性や断熱性等に優れた(U2)アルミニウム多層構造体が配置されている構造体であることが好ましい。
この理由は、所定構造の複数の(U1)複合アルミニウム中空パネルの間に、所定の(U2)アルミニウム多層構造体が平面的に配置してあることによって、比較的内部において、優れた軽量性や断熱性等を維持しつつ、比較的外部において、より機械的強度を著しく向上させることができ、ひいては、ピラーレス構造を形成しやすくなるためである。
【0074】
又、複数の(U1)複合アルミニウム中空パネル及び複数の(U2)アルミニウム多層構造体を準備し、それらが順次配置されている構造体である。
従って、(U3)の組み合わせ構造において、片側から、第1の複合アルミニウム中空パネルと、第1のアルミニウム多層構造体と、第2の複合アルミニウム中空パネルと、第2のアルミニウム多層構造体と4つの部材を、順次配置してなる平板状構造体である。
又、別な(U3)の組み合わせ構造において、片側から、第1のアルミニウム多層構造体と、第1の複合アルミニウム中空パネルと、第2のアルミニウム多層構造体と、第2の複合アルミニウム中空パネルと、第3のアルミニウム多層構造体とからなる5つの部材を、順次配置してなる平板状構造体である。
又、更に別な(U3)の組み合わせ構造において、異種構成のプレート材を併用することも好ましい。
すなわち、片側から、第1の複合アルミニウム中空パネルと、第1のアルミニウム多層構造体と、一枚物のアルミニウムプレートと、第2のアルミニウム多層構造体と、第2の複合アルミニウム中空パネルとからなる5つの部材を、順次配置してなる平板状構造体であることも好ましい。
【0075】
8.製造方法
本発明の消防自動車の製造方法の一例を説明する。
【0076】
(1)基本車両の準備
まず、運転席及び後部座席と、消防自動車のシャーシの上に設けた荷台を有する基本車両として、ボックス構造体を固定配置する前の消防器具を除いた状態の貨物自動車等を準備する。
かかる貨物自動車は、市販自動車において、貨物室を設ける前の状態の自動車やワゴン等であっても良いし、或いは、市販自動車の改良品や、特注品であっても良い。
【0077】
(2)ボックス構造体の作成
一方で、所定の複合アルミニウム中空パネル及びアルミニウム多層構造体、或いはその組み合わせから、概ね矩形状の荷物室と、ポンプ室を設け、それらを連結して、ボックス構造体を作成する。
【0078】
なお、本発明の消防自動車の場合、基本車両の架台の上で、ボックス構造体を作成する必要は必ずしもない。
むしろ、別の場所において、所定の複合アルミニウム中空パネル、アルミニウム多層構造体、更にはそれらの組み合わせからなるボックス構造体を作成しておき、基本車両の架台の上に固定配置することができる。
よって、基本車両における作業と、ボックス構造体の作業とを、完全分離して行うことができるため、消防自動車の製造時間の全体を、著しく短くすることができる。
【0079】
(3)サイドボックスの作成
図4(b)に示すように、消防自動車50の片側又は両側において、荷物室52の一部として、サイドボックス80を作成することが好ましい。
すなわち、所定のアルミブロック用接合部材を用い、一つのアルミブロックの端部における仕切板に対して、一つの固定部材としての第1の固定部材を介して挿入固定し、別のアルミブロック或いは異種部材に対して、別の固定部材としての第2の固定部材を介して接合し、棚構造のサイドボックスを作成することが好ましい。
【0080】
一方、図5(a)に示すように、ポンプ室54から、荷物室52に貫通するようにレール状搬送装置50kを収容する場合には、消防自動車50の片側又は両側において、荷物室52の一部として、より幅広のサイドボックス80´を作成することが好ましい。
すなわち、ポンプ室54から、荷物室52に貫通するようにレール状搬送装置50kを収容する場合には、その間に開口部50nがあるため、より強度を高める必要がある。
従って、図5(a)に示すような、サイドボックス80´の場合には、その横幅を、開口部が無い場合と比較して、1.2~1.8倍とすることが好ましく、1.3~1.6倍とすることがより好ましい。
【0081】
(4)各種消防設備の取り付け
次いで、備品室やサイドボックス等を利用して、ホース、階段、カッター、発電機、梯子、消防灯等を更に所定場所に取り付けることが好ましい。
一方、エンジン車体の運転席等には、各種通信設備や音響機器、更には、赤色灯やサイレン等を取り付けることが好ましい。
【0082】
(5)塗装や車体整備
次いで、図示しないものの、消防自動車としての風体を整備したり、所定機能を発揮させるために、周囲を赤色に塗装したり、赤色鉄板で被覆したり、或いは、所定箇所にシャッターやはしご等を取り付けることが好ましい。
【0083】
(6)検査
最後に、消防自動車としての点検動作、例えば、消防自動車における運行動作、消火設備の動作、ポンプ動作、音響動作、耐久性動作、通信動作等を確認することによって、法令順守の消防自動車と認定することができる。
又、かかる消防自動車は、アルミニウム等を多用してなるボックス構造体を設け、従来の溶接工程を事実上省略したとしても、設計変更のみならず、分解や修理も容易であって、その上、廃棄することも比較的容易であることから、環境適合性も高いと言える。
【0084】
(7)修理
本発明の場合、基本車両の架台の上に、基本的に、ボックス構造体が固定配置されている。そのことから、ボックス構造体の一部又は全部を修理する場合には、基本車両の架台の上から、はずして、それらを集中的に修理したり、正常化したことを点検したりすることができる。
よって、基本車両における修理作業と、ボックス構造体の修理作業や、それに伴う点検作業とを、完全分離して行うことができるため、消防自動車の修理時間を、全体的に著しく短くすることができる。
【0085】
(8)変更
更に言えば、法制等により、基本車両、或いは、ボックス構造体(内部に収容してあるポンプをはじめ、各種消防部品)を、変更する場合もある。
しかも、基本車両は同一であっても、選択可能なボックス構造体が数種存在する消防自動車もある。
従って、そのような場合であっても、基本車両の架台の上から、ボックス構造体をはずして、それのみを集中的に変更したり、独自に検査、点検したりすることができる。
よって、基本車両における修理作業と、ボックス構造体の修理作業とを、完全分離して行うことができるため、消防自動車における変更時間を、全体的に著しく短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の、所定の複合アルミニウム中空パネル及びアルミニウム多層構造体、或いはその組み合わせから、概ね矩形状のボックス構造体を構成し、それを所定場所に備えることによって、重厚な筐体やボンデ鋼板等を実質的に省略した場合であっても、簡易なピラーレス構造として、軽量性や小型化に優れ、更には、製造や修理自体等も容易な消防自動車を提供することができるようになった。
従って、かかる消防自動車においても、良好な軽量性、機械的強度、耐久性、取り扱い性、断熱性等を示し、かつ、所定の接合部材を用いることによって、従来の溶接工程を省略した場合であっても、リベット等の簡易固定部材を用いることができるようになった。
【0087】
よって、熟練者(例えば、経験5年以上)でなくとも、所定構造の消防自動車を精度良く、かつ、迅速に製造できるようになった。例えば、図1等に示すような消防自動車において、溶接時間も事実上なくなって、少なくとも3か月程度かかっていた製造時間を、初心者(例えば、経験1年未満)であっても、1か月以内で完成できるようになり、極めて高い生産性が得られるようになった。
その上、耐食性に関しても、従来の消防自動車においては、SST(塩水噴霧試験)において、1000時間程度の耐久時間であったが、本発明の消防自動車においては、3000時間以上の耐久性が得られるようになった。
しかも、本発明の消防自動車が故障の際には、溶接場所が事実上無いことから、容易かつ短時間で、修理したり、更には、消防自動車を廃棄する際にも、容易かつ短時間に、分解作業を行ったりすることができるようになった。
【符号の説明】
【0088】
10:アルミブロック用接合部材、11:第1の側壁、13:平板部、15:第2の側壁、17:切込み、18:第1の貫通孔、18a、19a、19b:貫通孔、19:第2の貫通孔、20:複合アルミニウム中空パネル、21:アルミブロック(第1のアルミブロック)、21a:仕切板、21b:所定空間、21c、21e:突起接続部、22:アルミブロック(第2のアルミブロック)、31:固定部材(第1の固定部材)、31a、34a:ボルト、31b、34b:ナット、32:固定部材(第2の固定部材)、32a:片側ボルト、32b:フランジ付き中空部材、33:強化用部材、34:固定部材(第3の固定部材)、40:多層構造体、41、43:アルミプレート、42:樹脂シート、44:保護層、50:消防自動車、50a:運転席、50b:後部運転席、50c:キャビンデッキ天板、50d:赤色灯、50e:吸水ホース、50f:延長ホース、50g:梯子、50h:ハンディ消火器、50j:機械的アーム、50k:レール状搬送装置、50m:天井フレーム、50n:開口部、50p:スピーカ、50q:発電機及び照明器具、50r:シャッター巻き取り装置、52:荷物室、53:ボックス構造体、54:ポンプ室、62:荷物室を配置する荷台位置、63:ボックス構造体を配置する荷台位置、64:ポンプ室を配置する荷台位置、70:天井板、80、80´:サイドボックス、80a、80b:荷物棚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8