(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007521
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】グルコースセンサー用電極
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20240110BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108957
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2022106116
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KY04
4C038KY08
(57)【要約】
【課題】体液中のグルコースレベル又は濃度を測定することができ、そしてin-vitroあるいはin-vivoにおいても適用することのできる改良された電極システムを提供する。
【解決手段】非導電性材料からなるマイクロニードル及び基板を含むマイクロニードルパッチのマイクロニードルが林立している基板面に作用電極部、対極部、及び参照電極部並びにこれらの各電極部からの電気信号取り出し線を設けてなり、各電極部は架橋されたグルコースオキシダーゼで被覆した固定化酵素センサーであり、体液中のグルコースの存在に応じてin-vivoで発生する電気的信号を感知し、それによりグルコース濃度を測定するグルコースセンサー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料からなるマイクロニードル及び基板を含むマイクロニードルパッチのマイクロニードルが林立している基板面に作用電極部、対極部、及び参照電極部並びにこれらの各電極部からの電気信号取り出し線を設けてなり、少なくとも作用電極部は架橋されたグルコースオキシダーゼで被覆した固定化酵素センサーであり、体液中のグルコースの存在に応じてin-vivoで発生する電気的信号を感知し、それによりグルコース濃度を測定するグルコースセンサー。
【請求項2】
非導電性材料からなるマイクロニードル及び基板を含むマイクロニードルパッチのマイクロニードルが林立している基板面に作用電極部、及び参照電極部並びに各電極部からの電気信号取り出し線を設けてなり、各電極部は架橋されたグルコースオキシダーゼで被覆した固定化酵素センサーであり、体液中のグルコースの存在に応じてin-vivoで発生する電気的信号を感知し、それによりグルコース濃度を測定するグルコースセンサー。
【請求項3】
非導電性材料が、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びCOP(サイクリックオレフィンポリマー)からなる群より選ばれる、請求項1又は2に記載のグルコースセンサー。
【請求項4】
前記マイクロニードルパッチの基板の形状が直径0.4~5cmの円形であり、前記マイクロニードルが針長さ100μm以上2,000μm以下である、請求項1又は2に記載のグルコースセンサー。
【請求項5】
前記マイクロニードルパッチがさらに土台部及び回廊部を含む、請求項1又は2に記載のグルコースセンサー。
【請求項6】
前記作用電極部及び対極が金又は白金で覆われている、請求項1に記載のグルコースセンサー。
【請求項7】
前記参照電極部が銀/塩化銀電極である、請求項1又は2に記載のグルコースセンサー。
【請求項8】
前記作用電極部、対極部、及び参照電極部が架橋されたグルコースオキシダーゼで被覆した固定化酵素センサーである、請求項1に記載のグルコースセンサー。
【請求項9】
前記電極部がグルコースオキシダーゼを架橋させた皮膜で被覆されている、請求項1又は2に記載のグルコースセンサー。
【請求項10】
前記電極部が基剤としてアミノ基を有する高分子とグルコースオキシダーゼとを架橋させた皮膜で被覆されている、請求項1又は2に記載のグルコースセンサー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のグルコースセンサーと、トランスミッターと、モニターとを用いて、該グルコースセンサーから得られた電気信号を該トランスミッターにより該モニターにデータ送信する、間質液中のグルコース濃度のモニターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコースセンサー用電極に関する。詳しくは、マイクロニードルアレイを利用したグルコース濃度の感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の血液中のグルコースレベルは、時間に依って変化し、また通常、個人の肉体的活動、食べ物、飲物、糖の摂取、代謝速度などに依って変化する。化合物としてのグルコースは、酸化及び/又は還元工程において比較的顕著な特性変化を示さないために、電気化学的に直接測定するのが難しい。このため、各種の酵素及び/又は蛋白質を利用し、これらとグルコースとを特異的に反応せしめて収量及び/又は副生成物を量的に分析して、グルコースレベルを測定する方法が好ましく行なわれて来た。従って、酵素を用いて血液中のグルコースを量的に測定する方法などの、多くのグルコースの測定法がある。しかしながら、これらの方法は、in-vivoの系に適用することができず、また、ほとんどの場合、簡単なin-vitroの系においても適用するのに困難を伴う。
【0003】
化学的に改良された電極が電気化学的感知機構に使用されるようになった(特許文献1、2、3)。この場合、酵素あるいは他の蛋白定量試薬を電極に共有結合させて簡単な電極を調製し、これを用いて、採取した体液に接触させて体液中のグルコース濃度を測定する。近年さらに進歩し、電極部をセンサーとして経皮的に体内に挿入し、体内の血液あるいは浸出液に接触させてグルコースと反応させて発生する過酸化水素を電流測定あるいは電圧測定により電気化学的測定を行なうのが現在の主流の装置である(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-501679号公報
【特許文献2】特開平9-80010号公報
【特許文献3】特開2013-53907号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Continuous glucose monitoring devices: A brief presentation EXPERIMENTAL AND THERAPEUTIC MEDICIE 23: 174,2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在主流の装置を使用する方法においては、化学的検知のためのセンサープローブを皮内に導入するためにはステンレスの導入用針が必要であり、装置全体として非常に複雑な物となり、患者への装着の操作もまた複雑であり、システムとしても高価となる。
しかして本発明の第1の目的は、体液中のグルコースレベル又は濃度を測定することができ、そしてin-vitroあるいはin-vivoにおいても適用することのできる改良された電極システムを提供することにある。
本発明の第2の目的は、in-vitroあるいはin-vivoにおいて体液中のグルコース濃度を測定するのに特に好適であり、かつ、感知電極は信頼性があり安定で強い、改良された電極手段を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、体液中のグルコースレベルに対する電気的信号を提示することができ、速度可変インシュリンポンプと共に使用するのに適した、グルコースセンサーを調製する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、電流測定に基いて機能する電極によりグルコースを感知する電極が提供される。
かかる電極は、マイクロニードルパッチ面を2分割あるいは3分割して形成する。2分割の場合は、電極は作用電極部と対極部とからなる。3分割の場合は、電極は作用電極部、対極部、及び参照電極部からなる。2分割において作用電極部及び参照電極部とすることも可能である。作用電極部及び対極部は、電解あるいは無電解めっきによってマイクロニードル及びそれが立つ基板面を金あるいは白金で被覆することで形成される。別の被覆法としては、基板面に金あるいは白金の箔を圧着により基板面被覆することもありえる。被覆にあたっては、分割された各電極を被覆する白金ないしは金は、互いに接触しないように被覆する。3分割における参照電極部は、電解あるいは無電解めっきによってマイクロニードル及びそれが立つ基板面を銀で被覆し表面を塩素化することで、銀/塩化銀電極部とする。参照電極部としては、カロメル電極を用いても良い。
マイクロニードルが林立するパッチ面を分割しないで、マイクロニードルを有しない基板部に対極部や参照電極部を形成してもよい。
各電極部さらにそれら電極をグルコースオキシダーゼ(GOD)を固定化して水不溶とした固定化酵素で被覆する。GOD層の外部表面上には、薄いシリコーンラバーフィルムの如き被覆層を設けてもよい。GODの被覆は作用電極部においては必須であるが、対極部及び参照電極部においては必ずしも必須ではない。
作用電極部、対極部、参照電極部からはリード線を設置し電気信号の取り出しを設ける。リード線は、電気信号取り出し線を意味する。取り出した電気的信号の処理は、現在までに成されている方法に準じる。
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 非導電性材料からなるマイクロニードル及び基板を含むマイクロニードルパッチのマイクロニードルが林立している基板面に作用電極部、対極部、及び参照電極部並びにこれらの各電極部からの電気信号取り出し線を設けてなり、少なくとも作用電極部は架橋されたグルコースオキシダーゼで被覆した固定化酵素センサーであり(対極部及び参照電極部も架橋されたグルコースオキシダーゼで被覆した固定化酵素センサーであってもよく)、体液中のグルコースの存在に応じてin-vivoで発生する電気的信号を感知し、それによりグルコース濃度を測定するグルコースセンサー。
〔2〕 非導電性材料からなるマイクロニードル及び基板を含むマイクロニードルパッチのマイクロニードルが林立している基板面に作用電極部、及び参照電極部並びに各電極部からの電気信号取り出し線を設けてなり、各電極部は架橋されたグルコースオキシダーゼで被覆した固定化酵素センサーであり、体液中のグルコースの存在に応じてin-vivoで発生する電気的信号を感知し、それによりグルコース濃度を測定するグルコースセンサー。
〔3〕 非導電性材料が、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びCOP(サイクリックオレフィンポリマー)からなる群より選ばれる、〔1〕又は〔2〕に記載のグルコースセンサー。
〔4〕 前記マイクロニードルパッチの基板の形状が直径0.4~5cmの円形であり、前記マイクロニードルが針長さ100μm以上2,000μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載のグルコースセンサー。
〔5〕 前記マイクロニードルパッチがさらに土台部及び回廊部を含む、〔1〕又は〔2〕に記載のグルコースセンサー。
〔6〕 前記作用電極部及び対極が金又は白金で覆われている、〔1〕に記載のグルコースセンサー。
〔7〕 前記参照電極部が銀/塩化銀電極である、〔1〕又は〔2〕に記載のグルコースセンサー。
〔8〕 前記電極部がグルコースオキシダーゼを架橋させた皮膜で被覆されている、〔1〕又は〔2〕に記載のグルコースセンサー。
〔9〕 前記電極部が基剤としてアミノ基を有する高分子とグルコースオキシダーゼとを架橋させた皮膜で被覆されている、〔1〕又は〔2〕に記載のグルコースセンサー。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のグルコースセンサーと、トランスミッターと、モニターとを用いて、該グルコースセンサーから得られた電気信号を該トランスミッターにより該モニターにデータ送信する、間質液中のグルコース濃度のモニターシステム。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、多数のマイクロニードルが林立しているマイクロニードルパッチを用いて検出するセンサーであり、皮内導入は容易であり、また発生する電流値も大きいので、従来法に比べて安定したシステムを提供することが可能である。マイクロニードルパッチを皮膚に適用することにより、間質液中のグルコース濃度をシグナル表示として表わすことができ、それ故、血液グルコースセンサーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】固定化酵素電極用マイクロニードルパッチの平面図及び断面図。
【
図3】本発明のグルコースセンサーに使用されるマイクロニードルパッチの一例の概略。
【
図4】固定化酵素電極用マイクロニードルパッチの別の例の平面図(B)及び断面図(A)。作用電極部及び対極部を有し、銀/塩化銀電極を参照電極部とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
マイクロニードルパッチ
本発明におけるマイクロニードルパッチは、基板と、基板の片側に複数のマイクロニードルが林立している構成をいい、さらに粘着シートをもってマイクロニードルパッチを裏打ちしてもよい。粘着シートは、典型的には、フィルムの基材としてポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステル、紙等を使用し、厚さ5~50μm程度に成形したフィルム上に、アクリル系ないしはゴム系粘着剤を5~50μm程度塗布したものである。粘着シートの形状は特に制限はないが、マイクロニードルアレイの形状に類似させて円形、楕円形、勾玉形等が好ましい。
【0011】
マイクロニードルパッチの基板
マイクロニードルパッチの基板の材料、形状及び大きさは、特に限定されず、従来用いられてきたものを使用することができる。基板とマイクロニードルの基剤は同一であることを基本とするが、異なっていてもよい。
前記基剤としては、シリコーン、二酸化ケイ素、セラミック、ガラス、等の非導電性無機化合物、合成又は天然の樹脂素材で水不溶性材料等の非導電性材料が挙げられる。合成又は天然の樹脂素材としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体、カプロノラクトン、等の生体分解性ポリマー、又はナイロン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、COP(サイクリックオレフィンポリマー)等の生体非分解性ポリマーが挙げられる。
【0012】
基板の形状は、任意の形状とすることができる。一例として、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形等を基本とし、適用部位(皮膚)に合わせてさらに変形したものであってもよい。基板の大きさは、直径(長径)又は一辺(長辺)の長さで代表して表すと、通常0.2~5cm、又は0.4~5cmであり、0.5~3cmが好ましい。
【0013】
基板の面積は、通常0.05~100cm2であり、取扱い易さの観点から、0.4~10cm2程度が好ましく、0.6~5cm2程度がより好ましい。基板の厚さは0.1~1.0mmが好ましい。
【0014】
マイクロニードルの形状
マイクロニードルは、針長さが100μm以上2,000μm以下であり、好ましくは200~1,000μmである。 針の先端部頂点の大きさを直径として表すと、皮膚への刺し入れの容易性と確実性を考慮して、80μm以下であり、20μm以上が好ましい。
個々のマイクロニードルとしては、底面が円である円柱状もしくは円錐状、底面が楕円である楕円柱状もしくは楕円錐状、底面が三角形である三角柱状もしくは三角錐状、底面が四角形である四角柱状もしくは四角錐状、又は底面が多角形である多角柱状もしくは多角錐状が挙げられる。底面の大きさは、楕円の場合、長径を直径として表し、短径は楕円を形成できる限りにおいて長径より短い。三角形ないし多角形の場合、一辺を代表として表してもよく、対角線を代表として表してもよい。マイクロニードルが円錐状である場合には、その底面における直径は、100~400μm程度であり、150~300μm程度が好ましい。
【0015】
本発明におけるマイクロニードルは、段差を有していてもよい。ここに段差とは、マイクロニードルのある点から先端方向に向かって、マイクロニードルの断面積が不連続的に縮小し、階段状を呈しているものをいう。
【0016】
基板上のマイクロニードルの配置
マイクロニードルパッチは、基板の上に直接マイクロニードルが立つのが基本形であるが、基板上に土台部を設けて、その土台部の上(パッチ平面という)にマイクロニードルが立ったものであっても良い。土台部を設けることにより、マイクロニードルの皮膚穿刺性がより確実になる。土台部の厚さ(土台面の高さ)は基板面上に0.2mm~4.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.5mm~2.0mmである。
基板上に土台部を設ける場合、作用電極部、対極部、参照電極部の各電極部毎に設ける。3電極部の配置は、ほぼ同面積を原則とするが、特に制約はない。異なる電極部の土台に囲まれた基板部を回廊部とよぶ。上記の配置の模式図を
図1に示す。
【0017】
マイクロニードルパッチの成形は、材料に適した成形法を採用するが、生体分解性ポリマー、生体非分解性ポリマーを射出成形法により行うことが工業生産上好ましい。
【0018】
グルコースセンサー作製
作用電極部及び対極部は、マイクロニードルパッチを金あるいは白金で被覆する。被覆の方法は、蒸着法、電解メッキ法、無電解メッキ法などを用いることができる。さらには、金箔あるいは白金箔を針を突き刺して、基板面に接着塗布することでも可能である。参照電極部は、銀/塩化銀電極とする。銀/塩化銀電極は、銀を電解あるいは塩素イオン含有水溶液浸漬により銀表面を塩化銀とすることにより、作製する。
作用電極部を固定化GODで被覆する。対極部及び参照電極部は、GOD被覆してもしなくても良い。GOD被覆は、グルコースオキシダーゼをグルタルアルデヒドなどの多官能性アルデヒドでアミノ基を有する基剤高分子と反応させて不溶化し、同時に基剤をも不溶化して電極部に固定する。アミノ基を有する基剤高分子として、血清アルブミン、核酸、キトサン、等が例示される。
【0019】
以下に、無電解メッキ法による白金メッキの方法に関して詳述する。作用電極部及び対極部を白金メッキするために回廊部の全て及び参照電極部をシリコーン樹脂で覆い、加熱して皮膜とし、マスキングする。側面及び裏面も同様にマスキングする。白金無電解めっきは、ジニトロジアンミン白金、アンモニア、ヒドラジン、により60℃において1時間実施する。得られた白金膜付きマイクロニードルパッチを水洗いした後、乾燥させる。その後、作用電極部、対極部をシリコーンマスキングし、参照電極部のマスキングを剥がし参照電極部を無電解銀メッキする。その後、飽和塩化鉄(III)溶液に浸すことにより、Ag/AgCl電極とする。作用電極、対極及び回廊部のマスキングを取り去って、3電極部をそれぞれリード線に接続し、リード線を回廊部から外部に導く。電極間に与える電位、電流値を外部計測できるようにする。
図2においては、リード線をマイクロニードル側に設置したが、マイクロニードル側でなく裏側に設置してもよい。その後、作用電極部及びその他の2電極上にGOD皮膜を作り、さらにグルタルアルデヒドにより架橋させ、固定化酵素電極(グルコースセンサー)とする。GOD皮膜を作製するに当たっては、例えばアルブミンのようなGOD以外のアミノ基を有する親水性高分子を共存させることがグルコースの間質液からの浸透、及びGODの安定性の面から望ましい。以上のプロセスにより作製する固定化酵素電極の例を
図2に示す。
【0020】
以上は3電極を有する基本的固定化酵素電極であるが、対極を設けず参照電極に対極の役割をさせることも可能である。その場合、電極部は2つとなる。
【0021】
このようにして作製した固定化酵素電極を用いて間質液中のグルコース濃度を測定するには、既に公知の方法による。固定化酵素電極マイクロニードルパッチをアプリケーターにより経皮投与する。安定的に皮膚に保持するためには、マイクロニードルを基板の背面から粘着テープで覆い、皮膚に密着させる。3本あるいは2本のリード線を電圧付与装置に接続し、0.6~1.0Vの電圧を与え、流れる電流を計測するのは、例えば、特開平2-501679号公報に記載の方法によればよい。また、外部装置に接続することなく、皮膚投与マイクロニードルに隣接した皮膚上にトランスミッターを設置し、そこから電気的操作を行い、さらに得られた電気信号をモニターに無線送信して経時的に間質液中のグルコース濃度をモニターすることも可能である。
【実施例0022】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明を具体的に説明するための例であり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
金型を射出成形機に取付け、ポリグリコール酸を溶融して射出成形により
図1のようなマイクロニードルパッチを成形した。パッチ直径:12.3mmであった。本マイクロニードルパッチの詳細は、以下のようである。
パッチ基板上針が立つ土台部外径:10.5mm、回廊部幅:1.2mm。回廊部及び周辺部の基板面からの高さ:0.5mm。土台面の高さ:1.3mm。針高さ:0.9mm。針間隔:0.6mm。
マスキングするシリコーン樹脂は、2液性硬化型(HYV-4000, エングラービングジャパン社製)を用いた。白金無電解めっき後、シリコーン樹脂を参照電極部から剥がし、作用電極部、対極部をマスキングし、参照電極部を銀/塩化銀電極とした。白金膜、銀膜の厚みは約10μmであった。3電極部にそれぞれリード線を取り付けた。
次いで、GOD及びヒトアルブミンの等量1%水溶液にパッチを浸漬し、取り出し、乾燥後、グルタルアルデヒド水溶液に浸漬して、GOD及びアルブミンを架橋し、グルコース濃度測定用固定化酵素電極とした。固定化酵素膜の厚みは30μmであった。
【0024】
実施例2
ポリグリコール酸を溶融して射出成形を行ない、乳白色の楕円形のマイクロニードルパッチを取り出した。パッチ長径:12.3mm、短径:11.5mmであった(
図3)。本マイクロニードルパッチの詳細は、以下のようである。
パッチ基板上針が立つ土台部外径:10.5mm、土台部内径:6.0mm。回廊部幅:1.2mm。回廊部及び中央部の基板面からの高さ:0.5mm。土台面の高さ:1.3mm。針高さ:0.6mm。針総本数:280本であった。
【0025】
本マイクロニードルパッチは、土台部が2つに分かれ、その片方の土台部上の針部をマスキングすることなく白金膜で覆って、作用電極部とした。白金膜の厚さは10μmであった。もう片方の土台部上の針部を同様に銀/塩化銀電極部とした。銀/塩化銀膜の厚さは10μmであった。リード線を設置後、両電極面を実施例1と同様に固定化酵素膜で覆って、グルコース濃度測定用固定化酵素電極とした。固定化酵素膜の厚みは30μmであった。本電極では参照電極を対極として用いる。
【0026】
実施例3
金型を射出成形機に取付け、ポリグリコール酸を溶融して射出成形により
図4のようなマイクロニードルパッチを成形した。パッチは長径:16mm、短径:12.3mmの楕円形であった。本マイクロニードルパッチの詳細は、以下のようである。パッチ基板上針が立つ土台部外形:10.5mm、回廊部幅:1.2mm。回廊部及び周辺部の基板面からの高さ:0.5mm。土台面の高さ:1.3mm。針高さ:0.9mm。針間隔:0.6mm。
マスキングするシリコーン樹脂は、2液性硬化型(HYV-4000, エングラービングジャパン社製)を用いて基板部、回廊部、周辺部を保護して白金無電解めっき後、シリコーン樹脂を剥がした。参照電極部として、直径0.3mmの銀線を塩化鉄溶液中で電解酸化して銀/塩化銀電極部とした。3電極部にそれぞれ白金リード線を取り付けた。電極との接続は導電性樹脂(デナコールEX-830,ナガセケムテックス社製)を用いた。
次いで、GOD及びヒトアルブミンの等量1質量%水溶液にパッチを浸漬し、取り出し、乾燥後、グルタルアルデヒド水溶液に浸漬して、GOD及びアルブミンを架橋し、グルコース濃度測定用固定化酵素電極とした。固定化酵素皮膜の厚みは30μmであった。
【0027】
製造した電極の作用を確認した。上記マイクロニードルパッチを上向きに静置しマイクロニードル面に直径1.5cmの円形濾紙を置いた。試料溶液として1質量%の塩化ナトリウム溶液に200mg/dl、及び 400mg/dlになるようグルコースを添加した溶液を作製し、その200μlを濾紙上に滴下し3電極を覆った。作用電極部及び対極部に0.7Vを付加し、両電極を流れる電流値を測定した。結果を表1に示す。
【0028】