(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075229
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240527BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240527BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240527BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20240527BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240527BHJP
【FI】
H01M8/04 H
H01M8/0438
H01M8/04313
H01M8/04664
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186512
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】立川 克之
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA58
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB26
5H127BB37
5H127CC01
5H127DB03
5H127DB09
5H127DB70
5H127DB82
5H127DB90
5H127DC02
(57)【要約】
【課題】水素ガスの供給路に設けられる部品を新しい部品に交換した後にガス漏れ検査を行う場合において、比較的簡易な構成でガス漏れ検査を行う。
【解決手段】配管PP1~PP3と、開閉弁SVと、配管PP3に設けられる中圧力センサS2と、制御部Cntとを備えて燃料電池モジュールFCMを構成し、制御部Cntは、検査モード時、開閉弁SVの動作を制御することで配管PP3へ水素ガスの供給が完了してから所定時間が経過した後に中圧力センサS2により測定される圧力P2が閾値Pth以上である場合、ガス漏れが発生していないと判断し、圧力P2が閾値Pthより小さい場合、ガス漏れが発生していると判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンクからインジェクタを介して燃料電池まで設けられる配管と、
前記水素タンクと前記インジェクタとの間の前記配管に設けられる開閉弁と、
前記開閉弁と前記インジェクタとの間の前記配管に設けられる圧力センサと、
前記開閉弁の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、検査モード時、前記開閉弁の動作を制御することで前記開閉弁と前記インジェクタとの間の前記配管へ水素ガスの供給が完了してから所定時間が経過した後に前記圧力センサにより測定される圧力が閾値以上である場合、ガス漏れが発生していないと判断し、前記圧力が前記閾値より小さい場合、ガス漏れが発生していると判断する
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記制御部は、携帯端末と接続されたことを判断すると、前記検査モードを実行する
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記制御部は、所定回数連続して前記圧力が前記閾値より小さい場合、ガス漏れが発生していると判断する。
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記水素タンクと前記開閉弁との間の前記配管に設けられる手動弁を備え、
前記制御部は、前記検査モード時、前記手動弁が全閉になったと判断した後、前記開閉弁を開けることで前記手動弁と前記開閉弁との間の前記配管内に残存する水素ガスを前記開閉弁と前記インジェクタとの間の前記配管に供給する
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールにおける水素ガスの供給路のガス漏れ検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス漏れ検査技術として、水素ガスが流れる配管に設けられる開閉弁の上流側と下流側との間で圧力の差が生じたときの開閉弁の下流側の圧力の変化に基づいて水素ガスの供給路にガス漏れが発生しているか否かを判断するものがある。例えば、特許文献1参照。
【0003】
また、他のガス漏れ検査技術として、配管に水素ガスが流れていたときの流量計の測定値の積算値と、配管に水素ガスが流れ終わった後の配管内の圧力から算出される流量との差により水素ガスの供給路にガス漏れが発生しているか否かを判断するものがある。例えば、特許文献2参照。
【0004】
ところで、水素ガスの供給路に設けられる部品(配管や減圧弁など)を新しい部品に交換した後にガス漏れ検査を行う場合、不燃ガス(窒素ガスなど)をボンベからレギュレータや充填カプラなどを介して水素ガスの供給路に供給し、作業員が検査機器などを使用して水素ガスの供給路から不燃ガスが漏れているか否かを検査することが考えられる。
【0005】
しかしながら、上述のように、水素ガスの供給路に設けられる部品を新しい部品に交換した後にガス漏れ検査を行う場合では、不燃ガスを用意したり、ボンベやレギュレータなどを水素ガスの供給路に接続したりする必要があるため、ガス漏れ検査のために手間がかかるという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-123600号公報
【特許文献2】特開2006-278088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る目的は、水素ガスの供給路に設けられる部品を新しい部品に交換した後にガス漏れ検査を行う場合において、比較的簡易な構成でガス漏れ検査を行うことが可能な燃料電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である燃料電池モジュールは、水素タンクからインジェクタを介して燃料電池まで設けられる配管と、前記水素タンクと前記インジェクタとの間の前記配管に設けられる開閉弁と、前記開閉弁と前記インジェクタとの間の前記配管に設けられる圧力センサと、前記開閉弁の動作を制御する制御部とを備える。
【0009】
前記制御部は、検査モード時、前記開閉弁の動作を制御することで前記開閉弁と前記インジェクタとの間の前記配管へ水素ガスの供給が完了してから所定時間が経過した後に前記圧力センサにより測定される圧力が閾値以上である場合、ガス漏れが発生していないと判断し、前記圧力が前記閾値より小さい場合、ガス漏れが発生していると判断する。
【0010】
このように、検査モード時、開閉弁の動作を制御することで開閉弁とインジェクタとの間の配管に水素ガスを供給する構成であるため、水素ガスの供給路の部品を新しい部品に交換した後において開閉弁とインジェクタとの間の配管内の圧力が大気圧に下がっても、検査モードの開始時に開閉弁とインジェクタとの間の配管内の圧力を上げることができ、所定時間経過後に圧力センサにより測定される圧力に基づいて水素ガスの供給路にガス漏れが発生しているか否かを判断することができる。また、不燃ガスを用意したり、ボンベや充填カプラなどを水素ガスの供給路に接続したりする必要がないため、比較的簡易な構成でガス漏れ検査を行うことができる。
【0011】
前記制御部は、携帯端末と接続されたことを判断すると、前記検査モードを実行するように構成してもよい。
【0012】
これにより、携帯端末をもつ特定の作業員による携帯端末の操作のみによってガス漏れ検査を行うことができる。
【0013】
前記制御部は、所定回数連続して前記圧力が前記閾値より小さい場合、ガス漏れが発生していると判断するように構成してもよい。
【0014】
これにより、開閉弁とインジェクタとの間の配管に1回に供給される水素ガスの量が比較的少ない場合であっても、ガス漏れが発生していないにもかかわらずガス漏れが発生していると誤って判断してしまうことを低減することができる。
【0015】
上記燃料電池モジュールは、前記水素タンクと前記開閉弁との間の前記配管に設けられる手動弁を備え、前記制御部は、前記検査モード時、前記手動弁が全閉になったと判断した後、前記開閉弁を開けることで前記手動弁と前記開閉弁との間の前記配管内に残存する水素ガスを前記開閉弁と前記インジェクタとの間の前記配管に供給するように構成してもよい。
【0016】
これにより、開閉弁とインジェクタとの間の配管に供給される水素ガスの量を、手動弁と開閉弁との間の配管内に残存する水素ガスの量のみに抑えることができるため、検査モード時にガス漏れが発生していたとしても、大気中に漏れる水素ガスの量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水素ガスの供給路の部品を新しい部品に交換した後にガス漏れ検査を行う場合において、比較的簡易な構成でガス漏れ検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の燃料電池モジュールを備える燃料電池ユニットの一例を示す図である。
【
図2】第1実施例における制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施例における制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第3実施例における制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0020】
図1は、実施形態の燃料電池モジュールを備える燃料電池ユニットの一例を示す図である。
【0021】
図1に示す燃料電池ユニットFCUは、例えば、フォークリフトや電気自動車などの車両に搭載され、その車両に搭載される負荷Loに電力を供給する。または、燃料電池ユニットFCUは、定置式発電機に備えられ、商用電源や太陽光発電機などと協働して定置式発電機の外部に設けられる負荷Loに電力を供給する。
【0022】
また、燃料電池ユニットFCUは、燃料電池モジュールFCMと、水素タンクTと、蓄電装置Bと、ラジエタRと、ダイアグコネクタDCとを備える。
【0023】
燃料電池モジュールFCMは、燃料電池FCと、タンクバルブTVと、減圧弁RVと、インジェクタINJと、高圧力センサS1と、中圧力センサS2(圧力センサ)と、低圧力センサS3と、エアコンプレッサACPと、インタークーラICと、ウォータポンプWPと、DCDCコンバータCNVと、制御部Cntとを備える。
【0024】
水素タンクTは、水素ガスの貯蔵容器である。水素タンクTに貯蔵された水素ガスはタンクバルブTV、減圧弁RV、及びインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0025】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、水素ガスに含まれる水素と大気に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0026】
タンクバルブTVは、水素タンクTと減圧弁RVとの間に接続され、手動弁MVと、開閉弁SVとを備える。
【0027】
手動弁MVは、水素タンクTと配管PP1との間に設けられ、作業員(ユーザ)の操作により手動弁MVの開度が調整される。手動弁MVが全開(開度が最大)になると、水素タンクTから配管PP1への水素ガスの流量が最大になり、手動弁MVが全閉(開度がゼロ)になると、水素タンクTから配管PP1への水素ガスの流量がゼロになる。
【0028】
開閉弁SVは、電磁弁などにより構成され、制御部Cntから送られてくる制御信号により開度が制御される。
【0029】
高圧力センサS1は、開閉弁SVと減圧弁RVとの間に設けられる配管PP2内の圧力P1を測定し、その測定した圧力P1を制御部Cntに送る。
【0030】
中圧力センサS2は、減圧弁RVとインジェクタINJとの間に設けられる配管PP3内の圧力P2を測定し、その測定した圧力P2を制御部Cntに送る。
【0031】
低圧力センサS3は、インジェクタINJと燃料電池FCとの間に設けられる配管PP4内の圧力P3を測定し、その測定した圧力P3を制御部Cntに送る。
【0032】
減圧弁RVは、タンクバルブTVから配管PP2に供給される水素ガスを減圧して配管PP3に供給する。
【0033】
インジェクタINJは、電磁弁などにより構成され、制御部Cntから送られてくる制御信号により配管PP3から配管PP4に供給される水素ガスの流量を制御する。
【0034】
エアコンプレッサACPは、燃料電池ユニットFCUの周囲に存在する大気を圧縮しインタークーラICを介して燃料電池FCに供給する。
【0035】
インタークーラICは、圧縮により高温になった大気をインタークーラICに流れる冷媒と熱交換させる。
【0036】
ラジエタRは、燃料電池FCの発熱により温められた冷媒を外気と熱交換させる。
【0037】
ウォータポンプWPは、ラジエタRにより冷却された冷媒をインタークーラICを介して燃料電池FCに供給する。
【0038】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCから出力される電圧を所定の電圧に変換する。DCDCコンバータCNVから出力される電力は、負荷Lo、インジェクタINJなどの補機、及び蓄電装置Bに供給される。
【0039】
蓄電装置Bは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続される。DCDCコンバータCNVから出力される電力と、補機に供給される電力との差に相当する供給電力が、燃料電池ユニットFCUの外部(例えば、負荷Loの動作を制御する制御部)から要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうち、要求電力分の電力が負荷Loに供給されるとともに、残りの電力が蓄電装置Bに供給される。DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率(蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合[%])が増加する。また、負荷Loから燃料電池ユニットFCUに供給される回生電力が蓄電装置Bに供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率が増加する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力と、補機に供給される電力との差に相当する供給電力が、燃料電池ユニットFCUの外部から要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに、足りない分の電力が蓄電装置Bから負荷Loに供給される。蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電率が減少する。
【0040】
制御部Cntは、マイクロコンピュータなどにより構成される。なお、車両がキーオンすると、または、定置式発電機の電源がオンすると、制御部Cntが起動し発電モードが実行される。
【0041】
また、制御部Cntは、発電モード時、蓄電装置Bの充電率と複数の閾値との比較結果に応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させるとともに、PI(Proportional-Integral)制御などにより燃料電池FCの発電電力が目標発電電力Ptに追従するように、補機の動作を制御する。例えば、制御部Cntは、蓄電装置Bの充電率が所定閾値より小さくなると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt´に増加させるとともに、燃料電池FCの発電電力が目標発電電力Pt´に追従するようにインジェクタINJの動作を制御して燃料電池FCに供給される水素ガスの流量を増加させる。
【0042】
また、作業員は、車両をキーオフすることでまたは定置式発電機の電源をオフすることで燃料電池FCの発電を停止させ、手動弁MVを全開から全閉に切り替え、水素ガスの供給路の部品(例えば、配管PP2、減圧弁RV、または配管PP3など)を新しい部品に交換した後、検査ツールDTをダイアグコネクタDCに接続し、検査ツールDTのスイッチSWをオンする。制御部Cntは、検査ツールDTのスイッチSWがオンされ、検査ツールDTの携帯端末MTと接続されたことを判断すると、検査モードを実行する。
【0043】
また、制御部Cntは、検査モード時において、携帯端末MTからスイッチSW及びダイアグコネクタDCを介して送られてくる指示を受け付け、水素ガスの供給路のガス漏れを検査することができる。なお、水素ガスの供給路とは、配管PP2、減圧弁RV、及び配管PP3とする。なお、制御部Cntは、携帯端末MTからスイッチSW及びダイアグコネクタDCを介して送られてくる指示を受け付けるほか、携帯端末MTとの間でWi-fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信や、モバイルネットワークを介して送られてくる指示を受け付けてもよい。
【0044】
また、制御部Cntは、検査モード時、開閉弁SVの動作を制御することで配管PP2及び配管PP3に所定量の水素ガスを供給してから所定時間が経過した後に中圧力センサS2により測定される圧力P2が閾値Pth以上である場合、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していないと判断する。
【0045】
一方、制御部Cntは、検査モード時、開閉弁SVの動作を制御することで配管PP2及び配管PP3に所定量の水素ガスを供給してから所定時間が経過した後に中圧力センサS2により測定される圧力P2が閾値Pthより小さい場合、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断する。例えば、ガス漏れの箇所は、開閉弁SVと配管PP2との継手部分、配管PP2と減圧弁RVとの継手部分、減圧弁RVと配管PP3との間の継手部分、及び配管PP3とインジェクタINJとの継手部分などが考えられる。
【0046】
<第1実施例>
図2は、第1実施例における検査モード時の制御部Cntの動作を示すフローチャートである。なお、水素ガスの供給路の部品が新しい部品に交換された後、開閉弁SVが閉じられたまま手動弁MVが全閉から全開に切り替えられた状態とする。そのため、水素タンクTから手動弁MVを介して配管PP1に水素ガスが供給されているものとする。また、配管PP2及び配管PP3内の圧力が大気圧とほぼ同じになっているものとする。
【0047】
まず、制御部Cntは、手動弁MVを全閉にさせる指示(水素タンクTから配管PP1に水素ガスが供給されないように作業員により手動弁MVの開度をゼロにしてほしい旨の指示)を携帯端末MTに送信する(ステップS101)。携帯端末MTは、手動弁MVを全閉にさせる指示を受信すると、手動弁MVの開度をゼロにしてほしい旨を作業員に伝える。例えば、携帯端末MTは、手動弁MVの開度をゼロにしてほしい旨のメッセージを不図示のディスプレイに表示することで、手動弁MVの全閉操作を作業員に促す。
【0048】
次に、制御部Cntは、手動弁MVが全閉になったか否かを判断する(ステップS102)。制御部Cntは、手動弁MVが全閉になっていないと判断しているとき(ステップS102:No)、現状を維持したまま再び、手動弁MVが全閉になったか否かを判断し、手動弁MVが全閉になったと判断すると(ステップS102:Yes)、ステップS103に進む。例えば、制御部Cntは、作業員による携帯端末MTの操作により手動弁MVが全閉になった旨を携帯端末MTから受信すると、手動弁MVが全閉になったと判断する。また、開閉弁SVが閉じられたまま手動弁MVが全開から全閉に切り替わると、所定量の水素ガスが配管PP1に残存する。
【0049】
次に、ステップS103において、制御部Cntは、開閉弁SVを開く。開閉弁SVが開くと、配管PP1に残存していた所定量の水素ガスが開閉弁SVを介して配管PP2に供給されるとともに、配管PP2に供給された水素ガスが減圧弁RVを介して配管PP3に供給される。
【0050】
次に、制御部Cntは、開閉弁SVを開いてから所定時間(配管PP2及び配管PP3への所定量の水素ガスの供給が完了してから所定時間)が経過すると(ステップS104:Yes)、中圧力センサS2により測定される圧力P2を取得する(ステップS105)。所定時間は、水素ガスの供給路に許容できないガス漏れが発生している場合において、配管PP2及び配管PP3への所定量の水素ガスの供給が完了したタイミングから配管PP2及び配管PP3内の圧力が大気圧まで下がるタイミングまでの時間とする。例えば、所定時間は、10[秒]とする。所定時間は、水素ガスの供給路に許容できないガス漏れが発生している場合において、配管PP2及び配管PP3への所定量の水素ガスの供給が完了したタイミングから配管PP2及び配管PP3内の圧力が、水素ガス漏れによって設計上望ましくない圧力まで下がることを検知できる時間であれば、上述のような設定方法に限らない。また、閾値Pthは、中圧力センサS2の測定ばらつきを考慮し、大気圧と区別可能な圧力とする。例えば、閾値Pthは、120[kPa]とする。
【0051】
次に、制御部Cntは、圧力P2が閾値Pth以上である場合(ステップS106:Yes)、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していないと判断し(ステップS107)、検査モードを終了する。
【0052】
一方、制御部Cntは、圧力P2が閾値Pthより小さい場合(ステップS106:No)、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断し(ステップS108)、検査モードを終了する。
【0053】
第1実施例における燃料電池モジュールFCMによれば、検査モード時、開閉弁SVの動作を制御することで配管PP2及び配管PP3に所定量の水素ガスを供給する構成であるため、水素ガスの供給路の部品を新しい部品に交換した後において配管PP2及び配管PP3内の圧力が大気圧に下がっても、検査モードの開始時に配管PP2及び配管PP3内の圧力を上げることができ、所定時間経過後に中圧力センサS2により測定される圧力P2に基づいて水素ガスの供給路にガス漏れが発生しているか否かを判断することができる。
【0054】
また、第1実施例における燃料電池モジュールFCMは、不燃ガスを用意したり、不燃ガスを配管PP2及び配管PP3に供給するための検査ツール(ボンベや充填カプラ)を水素ガスの供給路に接続したりする必要がないため、簡易な構成で水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行うことができる。
【0055】
また、第1実施例における燃料電池モジュールFCMは、不燃ガスの検査ツールを用意する必要がないため、水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行う際にかかるコストを低減することができる。
【0056】
また、第1実施例における燃料電池モジュールFCMは、制御部Cntと携帯端末MTとの接続判断を検査モードの開始トリガとしているため、携帯端末MTをもつ特定の作業員による携帯端末MTの操作のみによってガス漏れ検査を行うことができる。
【0057】
また、第1実施例における燃料電池モジュールFCMは、水素ガスに基づいて水素ガスの供給路のガス漏れを検査する構成であるため、水素ガス自体を検知することが可能な装置を使用して水素ガスの供給路のガス漏れを検知することができる。
【0058】
また、第1実施例における燃料電池モジュールFCMは、検査モード時に開閉弁SVを閉じたまま手動弁MVを全開から全閉に切り替えることで配管PP1内に残存させた水素ガスを配管PP2及び配管PP3に供給する構成であるため、配管PP2及び配管PP3に供給される水素ガスの量を、配管PP1内に残存させた水素ガスの量のみに抑えることができるため、検査モード時にガス漏れが発生していたとしても、大気中に漏れる水素ガスの量を抑えることができる。
【0059】
<第2実施例>
図3は、第2実施例における検査モード時の制御部Cntの動作を示すフローチャートである。なお、水素ガスの供給路の部品が新しい部品に交換された後、開閉弁SVが閉じられたまま手動弁MVが全閉から全開に切り替えられた状態とする。そのため、水素タンクTから手動弁MVを介して配管PP1に水素ガスが供給されているものとする。また、配管PP2及び配管PP3内の圧力が大気圧とほぼ同じになっているものとする。また、
図3に示すフローチャートのステップS101~S107は、
図2に示すフローチャートのステップS101~S107と同様であるため、その説明を省略する。
【0060】
制御部Cntは、圧力P2が閾値Pthより小さい場合(ステップS106:No)、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなったか否かを判断する(ステップS201)。例えば、制御部Cntは、ステップS101~S106が繰り返し実行される場合において、圧力P2が閾値Pthより小さいと判断される度に、カウンタ値をインクリメントし、カウンタ値がN以上になると、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなったと判断してもよい。なお、Nは、所定量の水素ガスが配管PP2及び配管PP3に供給されたときの配管PP3内の圧力が比較的低い場合において、その圧力をn倍した圧力が閾値Pthより大きくなるときのnの最小値とする。例えば、1回目に所定量の水素ガスが配管PP3に供給されたときの配管PP3内の圧力が80[kPa]であり、2回目に所定量の水素ガスが配管PP3に供給されたときの配管PP3内の圧力が160[kPa]になる場合で、かつ、閾値Pthが120[kPa]である場合、Nを「2」とする。
【0061】
次に、制御部Cntは、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなっていないと判断すると(ステップS201:No)、開閉弁SVを閉じ(ステップS202)、手動弁MVを全開にさせる指示(水素タンクTから配管PP1に水素ガスが供給されるように作業員により手動弁MVの開度を最大にしてほしい旨の指示)を携帯端末MTに送信する(ステップS203)。携帯端末MTは、手動弁MVを全開にさせる指示を受信すると、手動弁MVの開度を最大にしてほしい旨を作業員に伝える。例えば、携帯端末MTは、手動弁MVの開度を最大にしてほしい旨のメッセージを不図示のディスプレイに表示することで、手動弁MVの全開操作を作業員に促す。
【0062】
次に、制御部Cntは、手動弁MVが全開になったか否かを判断する(ステップS204)。制御部Cntは、手動弁MVが全開になっていないと判断しているとき(ステップS204:No)、現状を維持したまま再び、手動弁MVが全開になったか否かを判断し、手動弁MVが全開になったと判断すると(ステップS204:Yes)、ステップS101~106の処理を再度実行する。例えば、制御部Cntは、作業員による携帯端末MTの操作により手動弁MVが全開になった旨を携帯端末MTから受信すると、手動弁MVが全開になったと判断する。
【0063】
一方、制御部Cntは、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなったと判断すると(ステップS201:Yes)、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断し(ステップS108)、検査モードを終了する。
【0064】
第2実施例における燃料電池モジュールFCMによれば、第1実施例と同様に、検査モード時、開閉弁SVの動作を制御することで配管PP2及び配管PP3に所定量の水素ガスを供給する構成であるため、水素ガスの供給路の部品を新しい部品に交換した後において配管PP2及び配管PP3内の圧力が大気圧に下がっても、検査モードの開始時に配管PP2及び配管PP3内の圧力を上げることができ、所定時間経過後に中圧力センサS2により測定される圧力P2に基づいて水素ガスの供給路にガス漏れが発生しているか否かを判断することができる。
【0065】
また、第2実施例における燃料電池モジュールFCMは、第1実施例と同様に、不燃ガスを用意したり、不燃ガスを配管PP2及び配管PP3に供給するための検査ツール(ボンベや充填カプラ)を水素ガスの供給路に接続したりする必要がないため、簡易な構成で水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行うことができる。
【0066】
また、第2実施例における燃料電池モジュールFCMは、第1実施例と同様に、不燃ガスの検査ツールを用意する必要がないため、水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行う際にかかるコストを低減することができる。
【0067】
また、第2実施例における燃料電池モジュールFCMは、第1実施例と同様に、制御部Cntと携帯端末MTとの接続判断を検査モードの開始トリガとしているため、携帯端末MTをもつ特定の作業員による携帯端末MTの操作のみによってガス漏れ検査を行うことができる。
【0068】
また、第2実施例における燃料電池モジュールFCMは、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さい場合に水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断する構成であるため、配管PP1に1回に供給される水素ガスの量が比較的少ない場合であっても、ガス漏れが発生していないにもかかわらずガス漏れが発生していると誤って判断してしまうことを低減することができる。
【0069】
また、第2実施例における燃料電池モジュールFCMは、第1実施例と同様に、水素ガスに基づいて水素ガスの供給路のガス漏れを検査する構成であるため、水素ガス自体を検知することが可能な装置を使用して水素ガスの供給路のガス漏れを検知することができる。
【0070】
また、第2実施例における燃料電池モジュールFCMは、第1実施例と同様に、検査モード時に開閉弁SVを閉じたまま手動弁MVを全開から全閉に切り替えることで配管PP1内に残存させた水素ガスを配管PP2及び配管PP3に供給する構成であるため、配管PP2及び配管PP3に供給される水素ガスの量を、配管PP1内に残存させた水素ガスの量のみに抑えることができるため、検査モード時にガス漏れが発生していたとしても、大気中に漏れる水素ガスの量を抑えることができる。
【0071】
<第3実施例>
図4は、第3実施例における検査モード時の制御部Cntの動作を示すフローチャートである。なお、水素ガスの供給路の部品が新しい部品に交換された後、開閉弁SVが閉じられたまま手動弁MVが全閉から全開に切り替えられた状態とする。そのため、水素タンクTから手動弁MVを介して配管PP1に水素ガスが供給されているものとする。また、配管PP2及び配管PP3内の圧力が大気圧とほぼ同じになっているものとする。
【0072】
まず、制御部Cntは、開閉弁SVを開いた後(ステップS301)、開閉弁SVを閉じる(ステップS302)。開閉弁SVを開いている時間を調整することで、水素タンクTから手動弁MV、配管PP1、及び開閉弁SVを介して配管PP2及び配管PP3に供給される水素ガスの量を所定量に制御することができる。
【0073】
次に、制御部Cntは、開閉弁SVを閉じてから所定時間(配管PP2及び配管PP3への所定量の水素ガスの供給が完了してから所定時間)が経過すると(ステップS303:Yes)、中圧力センサS2により測定される圧力P2を取得し(ステップS304)、圧力P2が閾値Pth以上である場合(ステップS305:Yes)、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していないと判断し(ステップS306:Yes)、検査モードを終了する。
【0074】
一方、制御部Cntは、圧力P2が閾値Pthより小さい場合(ステップS305:No)、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなったか否かを判断する(ステップS307)。例えば、制御部Cntは、ステップS301~S305が繰り返し実行される場合において、圧力P2が閾値Pthより小さいと判断される度に、カウンタ値をインクリメントし、カウンタ値がN以上になると、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなったと判断してもよい。
【0075】
次に、制御部Cntは、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなっていないと判断すると(ステップS307:No)、ステップS301~305の処理を再度実行する。
【0076】
一方、制御部Cntは、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さくなったと判断すると(ステップS307:Yes)、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断し(ステップS308)、検査モードを終了する。
【0077】
第3実施例における燃料電池モジュールFCMにおいても、第1実施例及び第2実施例と同様に、検査モード時、開閉弁SVの動作を制御することで配管PP2及び配管PP3に所定量の水素ガスを供給する構成であるため、水素ガスの供給路の部品を新しい部品に交換した後において配管PP2及び配管PP3内の圧力が大気圧に下がっても、検査モードの開始時に配管PP2及び配管PP3内の圧力を上げることができ、所定時間経過後に中圧力センサS2により測定される圧力P2に基づいて水素ガスの供給路にガス漏れが発生しているか否かを判断することができる。
【0078】
また、第3実施例における燃料電池モジュールFCMにおいても、第1実施例及び第2実施例と同様に、不燃ガスを用意したり、不燃ガスを配管PP2及び配管PP3に供給するための検査ツールを水素ガスの供給路に接続したりする必要がないため、簡易な構成で水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行うことができる。
【0079】
また、第3実施例における燃料電池モジュールFCMにおいても、第1実施例及び第2実施例と同様に、不燃ガスの検査ツールを用意する必要がないため、水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行う際にかかるコストを低減することができる。
【0080】
また、第3実施例における燃料電池モジュールFCMにおいても、第1実施例及び第2実施例と同様に、制御部Cntと携帯端末MTとの接続判断を検査モードの開始トリガとしているため、携帯端末MTをもつ特定の作業員による携帯端末MTの操作のみによってガス漏れ検査を行うことができる。
【0081】
また、第3実施例における燃料電池モジュールFCMにおいても、第2実施例と同様に、N回連続で圧力P2が閾値Pthより小さい場合に水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断する構成であるため、配管PP2及び配管PP3に1回に供給される水素ガスの量が比較的少ない場合であっても、ガス漏れが発生していないにもかかわらずガス漏れが発生していると誤って判断してしまうことを低減することができる。
【0082】
また、第3実施例における燃料電池モジュールFCMにおいても、第1実施例及び第2実施例と同様に、水素ガスの圧力に基づいて水素ガスの供給路のガス漏れを検査する構成であるため、水素ガス自体を検知することが可能な装置を使用して水素ガスの供給路のガス漏れを検知することができる。
【0083】
また、
図4に示すフローチャートにおいて、所定量の水素ガスが配管PP2及び配管PP3に供給されたときの配管PP2及び配管PP3内の圧力が比較的高い場合、ステップS307の処理を省略してもよい。すなわち、制御部Cntは、圧力P2が閾値Pthより小さい場合(ステップS305:No)、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断する(ステップS308)。このように構成することにより、制御部Cntにおいてカウンタ値をカウントする構成などを省略することができるため、さらに簡易な構成で水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行うことができる。
【0084】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0085】
<変形例1>
制御部Cntは、所定量の水素ガスが配管PP2及び配管PP3に供給される前に中圧力センサS2により測定される圧力P2´(大気圧)と、所定量の水素ガスが配管PP2及び配管PP3に供給されてから所定時間が経過したときに中圧力センサS2により測定される圧力P2との差ΔP(絶対値)が閾値ΔPth以上である場合、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していないと判断し、N回連続で差ΔPが閾値ΔPthより小さい場合、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断するように構成してもよい。なお、閾値ΔPthは、例えば、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していない場合において、所定量の水素ガスが配管PP2及び配管PP3に供給される前に中圧力センサS2により測定される圧力P2´と、所定量の水素ガスが配管PP2及び配管PP3に供給されてから所定時間が経過したときに中圧力センサS2により測定される圧力P2との差(絶対値)とし、中圧力センサS2の測定ばらつきを考慮して決められるものとする。
【0086】
このように、ガス漏れの判断用パラメータとして、大気圧を基準とした差ΔPを用いることにより、大気圧のばらつきの影響によるガス漏れの誤判断を抑えることができる。
また、変形例1において、制御部Cntは、差ΔPが閾値ΔPthより小さい場合、水素ガスの供給路にガス漏れが発生していると判断するように構成してもよい。
このように構成することにより、制御部Cntにおいてカウンタ値をカウントする構成などを省略することができるため、さらに簡易な構成で水素ガスの供給路のガス漏れ検査を行うことができる。
【0087】
<変形例2>
制御部Cntは、
図2または
図3に示すステップS106または
図4に示すステップS305において、高圧力センサS1により測定される圧力P1が閾値Pth以上であるか否かを判断するように構成してもよい。このように構成する場合、
図3に示すステップS201または
図4に示すステップS307において、制御部Cntは、N回連続で圧力P1が閾値Pthより小さくなったか否かを判断する。また、閾値Pthは、高圧力センサS1の測定ばらつきを考慮し、大気圧と区別可能な圧力とする。
【0088】
<変形例3>
図1に示す燃料電池モジュールFCMにおいて、手動弁MVを省略してもよい。このように構成する場合、制御部Cntは、検査モード時、
図4に示すフローチャートを実行する。
【符号の説明】
【0089】
FCU 燃料電池ユニット
FCM 燃料電池モジュール
Lo 負荷
FC 燃料電池
T 水素タンク
TV タンクバルブ
MV 手動弁
SV 開閉弁
RV 減圧弁
INJ インジェクタ
S1 高圧力センサ
S2 中圧力センサ
S3 低圧力センサ
PP1 配管
PP2 配管
PP3 配管
ACP エアコンプレッサ
R ラジエタ
WP ウォータポンプ
IC インタークーラ
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置
Cnt 制御部
DC ダイアグコネクタ
DT 検査ツール
MT 携帯端末
SW スイッチ