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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075245
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】印刷装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/191 20060101AFI20240527BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240527BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20240527BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240527BHJP
   H04N 1/40 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H04N1/191
B41J2/01 305
B41J29/46 Z
H04N1/12 Z
H04N1/40 006
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186542
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏門
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
5C072
5C077
【Fターム(参考)】
2C056EB49
2C056EB52
2C056HA29
2C056HA44
2C056HA46
2C061AQ05
2C061AS02
2C061AS06
2C061AS08
2C061HV01
2C061HV33
5C072BA08
5C072BA15
5C072CA02
5C072CA14
5C072DA03
5C072DA16
5C072DA17
5C072DA25
5C072EA07
5C072FB12
5C072FB16
5C072NA01
5C072NA04
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA12
5C072UA13
5C072XA04
5C077LL04
5C077LL19
5C077MM04
5C077MM27
5C077PP06
5C077PP07
5C077PP15
5C077PP44
5C077PP45
5C077PP71
5C077PQ17
5C077PQ20
5C077RR01
5C077SS02
5C077SS05
5C077SS06
(57)【要約】
【課題】 コードを印刷する印刷装置に搭載される読取機の汚れを正確に検知することができる印刷装置、および、当該印刷装置の運転方法を提供する。
【解決手段】 印刷装置1は、読取部7と、表示部(報知部)10と、メモリ9と、コントローラ8と、を備え、コントローラ8は、基準板38(第1対象物)を読取部7により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データD1を取得して第1データD1およびシェーディング補正値をメモリ9に記憶し、第1データD1の取得後に、基準板38(第2対象物)を読取部7により読み取って得たデータに対してシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データD2を取得し、第1データD1および第2データD2に基づいて表示部10による報知を行うか否かを判定する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子、受光素子、および、前記発光素子から発せられて所定位置に設けられた対象物にて反射した光を前記受光素子へ導くレンズ、を有する読取部と、
データを記憶するメモリと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記所定位置に設けられた第1対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データを取得して前記第1データおよびシェーディング補正値を前記メモリに記憶し、
前記第1データの取得後に、前記所定位置に設けられた第2対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対して、前記メモリに記憶されたシェーディング補正値に基づくシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データを取得し、
前記第1データおよび前記第2データに基づいて前記読取部の汚れを判定する、
印刷装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記所定位置に設けられた第1対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行うのに加えて、ガンマ補正も行って、前記第1データを取得する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1対象物と前記第2対象物とは同一である、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、
前記被印刷媒体を前記吐出ヘッドから前記読取部へ搬送する搬送部と、
を更に備える、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記レンズの汚れ判定は、前記第1データと前記第2データとを比較して得られる差分値に基づいて行う、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記ガンマ補正は、補正前のデータが有する第1範囲の階調値を、前記第1範囲よりも狭い第2範囲の階調値に変換して補正後のデータを生成する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
発光素子、受光素子、および、前記発光素子から発せられて所定位置に設けられた対象物にて反射した光を前記受光素子へ導くレンズ、を有する読取部と、
外部へ報知する報知部と、
データを記憶するメモリと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記所定位置に設けられた第1対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データを取得して前記第1データおよびシェーディング補正値を前記メモリに記憶し、
前記第1データの取得後に、前記所定位置に設けられた第2対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対して、前記メモリに記憶されたシェーディング補正値に基づくシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データを取得し、
前記第1データおよび前記第2データに基づいて前記報知部による報知を行うか否かを判定する、
印刷装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記所定位置に設けられた第1対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行うのに加えて、ガンマ補正も行って、前記第1データを取得する、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第1対象物と前記第2対象物とは同一である、
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項10】
液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、
前記被印刷媒体を前記吐出ヘッドから前記読取部へ搬送する搬送部と、
を更に備える、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記レンズの汚れ判定は、前記第1データと前記第2データとを比較して得られる差分値に基づいて行う、
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記ガンマ補正は、補正前のデータが有する第1範囲の階調値を、前記第1範囲よりも狭い第2範囲の階調値に変換して補正後のデータを生成する、
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項13】
発光素子、受光素子、および、前記発光素子から発せられて所定位置に設けられた対象物にて反射した光を前記受光素子へ導くレンズ、を有する読取部と、
データを記憶するメモリと、
コントローラと、を備える印刷装置の運転方法であって、
前記所定位置に設けられた第1対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データを取得して前記第1データおよびシェーディング補正値を前記メモリに記憶し、
前記第1データの取得後に、前記所定位置に設けられた第2対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対して、前記メモリに記憶されたシェーディング補正値に基づくシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データを取得し、
前記第1データおよび前記第2データに基づいて前記読取部の汚れを判定する、
印刷装置の運転方法。
【請求項14】
前記所定位置に設けられた第1対象物を前記読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行うのに加えて、ガンマ補正も行って、前記第1データを取得する、請求項13に記載の印刷装置の運転方法。
【請求項15】
前記第1対象物と前記第2対象物とは同一である、
請求項13に記載の印刷装置の運転方法。
【請求項16】
前記印刷装置は、液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、前記被印刷媒体を前記吐出ヘッドから前記読取部へ搬送する搬送部と、を更に備える、
請求項13に記載の印刷装置の運転方法。
【請求項17】
前記レンズの汚れ判定は、前記第1データと前記第2データとを比較して得られる差分値に基づいて行う、
請求項13に記載の印刷装置の運転方法。
【請求項18】
前記ガンマ補正は、補正前のデータが有する第1範囲の階調値を、前記第1範囲よりも狭い第2範囲の階調値に変換して補正後のデータを生成する、
請求項13に記載の印刷装置の運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取部を備える印刷装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーコードを印刷可能な印刷システムとして、例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1の印刷システムは、管理コードの印刷データか管理コード以外の印刷データかに応じて、印刷データに対して輪郭線を補正するか否かを切り替えている。これにより、管理コードおよびそれ以外の両画像が混在する印刷データであっても、管理コードの読み取り精度が低下しないように管理コードを印刷しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-3994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年ではバーコードを印刷する印刷装置に、印刷後のバーコードを検証する検証機を搭載することが検討されている。すなわち、被印刷媒体に印刷されたバーコードは、そのバーコードが示す情報を読取機によって正確に読み取れなければ意味がない。そのため、発光素子、受光素子、およびレンズアレイなどを備える読取機から成る検証機を印刷装置に搭載し、被印刷媒体に印刷された直後のバーコードを読取機にて実際に読み取るようにすることが検討されている。
【0005】
しかしながら、このように印刷装置に読取機を搭載した場合、被印刷媒体が読取機に接触して被印刷媒体上の未乾燥のインクが読取機を汚したり、インクミストが流れてきて読取機を汚したりすることが考えられる。従って、印刷装置に読取機を搭載する場合には、読取機の汚れを正確に検知して適時に清掃することが必要である。
【0006】
そこで本発明は、コードを印刷する印刷装置に搭載される読取機の汚れを正確に検知することができる印刷装置、および、当該印刷装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る印刷装置は、発光素子、受光素子、および、発光素子から発せられて所定位置に設けられた対象物にて反射した光を受光素子へ導くレンズ、を有する読取部と、データを記憶するメモリと、コントローラと、を備え、コントローラは、所定位置に設けられた第1対象物を読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データを取得して第1データおよびシェーディング補正値をメモリに記憶し、第1データの取得後に、所定位置に設けられた第2対象物を読取部により読み取って得たデータに対して、前記メモリに記憶されたシェーディング補正値に基づくシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データを取得し、第1データおよび第2データに基づいてレンズの汚れを判定する。
【0008】
本開示に係る印刷装置は、発光素子、受光素子、および、発光素子から発せられて所定位置に設けられた対象物にて反射した光を受光素子へ導くレンズ、を有する読取部と、外部へ報知する報知部と、データを記憶するメモリと、コントローラと、を備え、コントローラは、所定位置に設けられた第1対象物を読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データを取得して第1データおよびシェーディング補正値をメモリに記憶し、第1データの取得後に、所定位置に設けられた第2対象物を読取部により読み取って得たデータに対して、前記メモリに記憶されたシェーディング補正値に基づくシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データを取得し、第1データおよび第2データに基づいて報知部による報知を行うか否かを判定する。
【0009】
本開示に係る印刷装置の運転方法は、発光素子、受光素子、および、発光素子から発せられて所定位置に設けられた対象物にて反射した光を受光素子へ導くレンズ、を有する読取部と、データを記憶するメモリと、コントローラと、を備える印刷装置の運転方法であって、所定位置に設けられた第1対象物を読取部により読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データを取得して第1データおよびシェーディング補正値をメモリに記憶し、第1データの取得後に、所定位置に設けられた第2対象物を読取部により読み取って得たデータに対して、前記メモリに記憶されたシェーディング補正値に基づくシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データを取得し、第1データおよび第2データに基づいてレンズの汚れを判定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、コードを印刷する印刷装置に搭載される読取機の汚れを正確に検知することができる印刷装置、および、当該印刷装置の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る印刷装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、読取部の構成を示す模式的斜視図である。
図3図3は、印刷装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4図4は、第1データ作成処理における印刷装置の運転方法を示すフローチャートである。
図5図5A図5Dは、第1データ作成処理を説明するための図表である。
図6図6A図6Bは、第1データ作成処理でのデータの変遷を表すフローチャートである。
図7図7は、汚れ検知処理における印刷装置の運転方法を示すフローチャートである。
図8図8は、汚れ検知処理における印刷装置の運転方法を示すフローチャートである。
図9図9A図9Cは、ガンマ補正を説明するための図表である。
図10図10は、第1データ作成処理における印刷装置の運転方法の別の態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る印刷装置およびその運転方法の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では、全ての図面を通じて同一又は対応する要素には同一の参照符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
【0013】
[印刷装置の構成]
図1は、実施の形態に係る印刷装置の構成を示す模式図である。図1に示す印刷装置1は例えば直方体形状の筐体2を備え、この筐体2内には、媒体供給部3、搬送部4、印刷部5、定着部6、読取部7、コントローラ8、およびメモリ9が備えられている。また、筐体2の壁面には表示部10および操作部11が設けられている。
【0014】
媒体供給部3は、筐体2の内底面に立設された支持部20およびモータ21を有しており、被印刷媒体Mを支持すると共にこれを搬送経路Rに沿って送り出す。被印刷媒体Mは、紙管22に長尺の台紙が巻回されたロール状を成し、かつ、台紙の外側の面上には複数のシート状のラベルが台紙の長手方向に所定間隔を空けて貼着されている。このような被印刷媒体Mは、支持部20により紙管が回転可能に支持され、かつ、モータ21により台紙が送り出されて、印刷部5によりラベル上に所定の画像が印刷される。
【0015】
以下、印刷部5により印刷されているときのラベルの搬送方向を前方、その反対方向を後方とし、ラベルの面に沿って前後方向に交差する方向を左右方向、ラベルに対して印刷部5が位置する方向を上方、その反対方向を下方とする。
【0016】
なお、被印刷媒体Mの上記構成は一例であり、これに限られない。例えば、台紙はロール状ではなく所定寸法に裁断されたカット紙を用いてもよい。また、台紙とラベルとを別にせず、台紙の一部に切り取り線を設けておき、印刷後に切り取り線に沿って切り取ったものをラベルとしてもよい。さらに、被印刷媒体Mは、ラベルを含む構成を必須としなくてもよい。
【0017】
印刷部5は、キャリッジ24および印刷ヘッド25を備えている。キャリッジ24は左右に長寸の直方体の箱状を成し、その底部に複数の印刷ヘッド25が支持されている。印刷ヘッド25は複数のノズル26を有し、各ノズル26からはキャリッジ24に搭載されたタンクから供給される液体状のインクを吐出可能である。複数の印刷ヘッド25は、隣り合う印刷ヘッド25が前後にオフセットするようにして、左右方向に並べて配置されている。すなわち、本実施の形態に係る印刷部4は、インクジェット式であり、かつ、ラインヘッド方式(シングルパス方式とも言う)である。ただし、印刷部4はシリアルヘッド方式(マルチパス方式とも言う)を採用してもよい。
【0018】
定着部6は、印刷部5に対して前方、すなわち、被印刷媒体Mの搬送方向下流側に配置されている。一例として定着部6はハロゲンヒータであり、ハロゲンランプ28、反射板29、および、箱状の筐体30を有する。筐体30の下壁には左右方向に長寸の開口30aが形成されており、その内方には左右方向に軸を有する半円筒状の反射板29が下方へ開くようにして支持されている。ハロゲンランプ28は左右方向に長寸の棒状であり、周りを反射板29により取り囲まれる位置に支持されている。このような定着部6は、ハロゲンランプ28に通電すると赤外光が輻射され、反射板29により反射して開口30aから外部へ照射される。印刷部5にて吐出された被印刷媒体M上のインクは、定着部6からの赤外光が照射されると、硬化が促進されて被印刷媒体Mに定着する。
【0019】
読取部7は、定着部6に対して前方、すなわち、被印刷媒体Mの搬送方向下流側に配置されている。読取部7は、被印刷媒体Mに印刷された画像を光学的に読み取り、読み取った画像信号をコントローラ8へ出力する。読取部7は、筐体32に収容されたラインイメージセンサであって、例えばCIS(Contact Image Sensor)を用いることができる。
【0020】
図2は、読取部7の具体的な構成を示す模式的斜視図である。なお、図2では、図1とは上下を反転させた状態での読取部7を示している。図2に示すように、CISから成る読取部7は、センサユニット33、レンズアレイ34、導光体35、および発光素子である光源36を有する。
【0021】
センサユニット33は、受光素子として例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)から成るイメージセンサ33aを複数(例えば、3000個)有している。各イメージセンサ33aは受光面を下方に向けた状態で、左右方向に一列に並んで配置されている。レンズアレイ34は、所定倍率で結像する円柱状のレンズ34aを複数有している。各レンズ34aは軸方向を上下方向に向けた状態で、左右方向に一列に並んで配置されている。レンズアレイ34は、その上端(各レンズ34aの上端が位置する端部)をセンサユニット33の受光面に近接かつ対向させて配置されている。
【0022】
導光体35は円柱状のガラス材から成り、端部から入射した光が、加工された表面で乱反射することにより、ほぼ全長の周面にて発光するようになっている。この導光体35の長さ寸法は、レンズアレイ34の長手方向(左右方向)の寸法とほぼ同一であり、レンズアレイ34の下端(各レンズ34aの下端が位置する端部)の後方近傍に配置されている。また、導光体35の長手方向の少なくとも一方の端部近傍には、光源36が設けられている。従って、光源36が発光すると、その光は導光体35内を伝搬しつつ、周面から外部へ発せられる。
【0023】
このような構成の読取部7は、レンズアレイ34および導光体35の下方所定位置に対象物(例えば、被印刷媒体M)が存在するときに光源36を発光させることで、対象物の上面の画像を示す画像信号を出力する。すなわち、図2に示すように、光源36が発光するとその光が対象物の上面にて反射する。この反射光はレンズアレイ34の各レンズ34aを通じてセンサユニット33の各イメージセンサ33aへ導かれる。イメージセンサ33aは、このようにして入射された光の強度等に応じて電気信号を生成し、外部へ出力する。
【0024】
読取部7の下方には、読取部7に対向するようにして基準板38および付勢部材39が設けられている。基準板38は、読取部7とほぼ同一の左右方向寸法および前後方向寸法を有する矩形の板部材である。基準板38の上面は、後述するシェーディング補正を行うときの基準となる色を呈しており、例えば、白色の補正を行う場合には基準板38として上面が白色の白色基準板を用いることができ、黒色の補正を行う場合には基準板38として上面が黒色の黒色基準板を用いることができる。付勢部材39は、例えばコイルばねなどから成り、基準板23の下面に接続されていて基準板38を上方に付勢している。
【0025】
搬送部4は、媒体支持部3に支持された被印刷媒体Mを、上述した印刷部5、定着部6、および読取部7を経て、印刷装置1の筐体2の外へ排出すべく、複数のローラや搬送ベルトを備え、被印刷媒体Mの搬送経路Rを形成している。
【0026】
具体的には、搬送部4は、媒体支持部3に支持された被印刷媒体Mを印刷部5に搬送するための給紙ローラ対41を有している。給紙ローラ対41は軸心を左右方向に向けた2つのローラを上下に配置して構成されており、一方のローラはモータにより駆動される。このような上下のローラの間には前方へ向かう搬送経路Rの一部が形成される。すなわち、給紙ローラ対41は、上下のローラの間に被印刷媒体Mを挟持しつつ、モータの駆動によって前方へこれを送り出す。
【0027】
また、媒体供給部3の上方かつ給紙ローラ対41の後方の位置には搬送ガイド板42が設けられている。搬送ガイド板42は、側面視で後方斜め上方へ膨らんだ円弧状を成す外曲面42aを有している。そして、媒体供給部3から給紙ローラ対41へ向かう被印刷媒体Mは、この搬送ガイド板42の外曲面42aに沿って上方から前方へ滑らかに転向される。
【0028】
給紙ローラ対41の前方には、ベルト搬送部44が設けられている。ベルト搬送部44は、後方の従動ローラ44aと前方の駆動ローラ44bとの間に無数の小径孔が形成された無端ベルト44cが巻回された構成になっている。ローラ44a,44bは軸心を左右方向に向け、かつ、前後方向に所定距離だけ離れて配置され、駆動ローラ44bがモータにより正回転すると、ローラ44a,44bに巻回された無端ベルト44cのうち上側部分は前方へ走行する。なお、従動ローラ44aは印刷部5より後方に位置し、駆動ローラ44bは定着部6より前方に位置している。
【0029】
また、無端ベルト44cを挟んで従動ローラ44aの上方には入口ローラ45aが設けられ、無端ベルト44cを挟んで駆動ローラ44bの上方には出口ローラ45bが設けられている。さらに、無端ベルト44cの上側部分の下方には、当該上側部分の下面を囲む閉じた空間46が形成されており、当該空間46には吸引装置が接続されている。従って、吸引装置を作動させると、空間46は負圧になり、無端ベルト44cの上側部分に形成された無数の小径孔からエアが吸引される。
【0030】
このようなベルト搬送部44は、給紙ローラ対41により送られてきた被印刷媒体Mを、入口ローラ45aと無端ベルト44cとの間に挟持する。挟持された被印刷媒体Mは、駆動ローラ44bの駆動により無端ベルト44c(の上側部分)が走行すると、無端ベルト44cと共に前方へ搬送される。このとき、吸引装置も作動させると、小径孔からの吸引により、無端ベルト44cの上面に被印刷媒体Mは吸着した状態となり、安定した姿勢の状態で印刷部5および定着部6の下方を通って前方へ搬送される。搬送される被印刷媒体Mは、出口ローラ45bと無端ベルト44cとに挟持され、さらに前方へ送り出される。従って、入口ローラ45aと無端ベルト44cとで挟まれる位置から、出口ローラ45bと無端ベルト44cとで挟まれる位置まで、印刷部5および定着部6の下方近傍を通りつつ前方へ延びる搬送経路Rの一部が形成される。
【0031】
読取部7を挟んでベルト搬送部44の前方には排出ローラ対48が設けられている。排出ローラ対48は、軸心を左右方向に向けた2つのローラを上下に配置して構成されており、一方のローラはモータにより駆動される。そして、ベルト搬送部44から送り出されてきた被印刷媒体Mは、読取部7の下方を経た後にこの排出ローラ対48に挟持され、印刷装置1の筐体2の排紙口2aから外方へ送り出される。従って、ベルト搬送部44の前端と排出ローラ対48との間には、読取部7の下方近傍を通りつつ前方へ延びる搬送路Rの一部が形成される。
【0032】
図1および図3を参照しつつ、印刷装置1のその他の構成について説明する。図3は、印刷装置1の機能的構成を示すブロック図である。印刷装置1は、筐体2内にコントローラ8およびメモリ9を備えている。また、印刷装置1は、筐体2の外面に表示部10および操作部11を備えている。
【0033】
コントローラ8は、印刷装置1の動作を制御する回路であり、MPU(Micro Processing Unit)や専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)など各種の演算回路により構成でき、各種のプログラムを実行する。メモリ9は、コントローラ8により実行される各種のプログラムや、当該プログラムの実行時に必要なデータ等を記憶するROM(Read only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびフラッシュメモリ等で構成されている。
【0034】
表示部10は、液晶ディスプレイ等で構成され、文字、記号、画像などを用いてユーザに各種の情報を提供するなど、外部へ情報を出力する報知部も成している。操作部11は、タッチパネルや物理スイッチなどで構成され、ユーザによる各種の操作入力を受け付ける。
【0035】
図3に示すように、このようなメモリ9、表示部10、および操作部11はコントローラ8との間で電気的に接続されている。従って、コントローラ8は、メモリ9に記憶されたプログラムやデータを参照することができ、かつ、プログラムの実行により生成されたデータをメモリ9に記憶することができる。また、表示部10は、コントローラ9からの制御信号に基づき所定の情報を表示する。また、操作部11は、ユーザによる操作入力を電気信号に変換し、これをコントローラ8へ送る。
【0036】
また、図3に示すように、印刷部5、定着部6、および読取部7とも電気的に接続されている。従って、印刷部5は、コントローラ8からの制御信号に従ってインクを吐出し、定着部6は、コントローラ8からの制御信号に従ってハロゲンランプ28に通電し、読取部7は、コントローラ8からの制御信号に従って画像を読み取る。
【0037】
さらに、コントローラ8には、通信インタフェース50、駆動部51、およびエンコーダ52が電気的に接続されている。通信インタフェース50は、印刷装置1を外部機器と接続するためのインタフェースであり、有線により接続するコネクタや、無線LANにより接続するためのインタフェースを備えている。従って、印刷装置1は通信インタフェース50を介して外部機器との間でデータの送受信が可能であり、外部機器を通じてユーザにより操作することも可能である。
【0038】
駆動部51は、搬送部4の各部を駆動するためのアクチュエータであり、例えば、媒体供給部3のモータ21、給紙ローラ対41を駆動するモータ、ベルト搬送部44の駆動ローラ44bを駆動するモータ、吸引装置、排出ローラ対48を駆動するモータ、などを含む。また、エンコーダ52は、搬送部4が有する各部のモータや駆動ローラに設けられており、これらモータおよび駆動ローラの回転角度を検出する。検出した結果を示す信号は、コントローラ8へ入力される。従って、コントローラ8は、制御信号を送って駆動部51を駆動して搬送部4を動作させ、被印刷媒体Mを搬送することができると共に、エンコーダ52からの信号に基づき、被印刷媒体Mを所定位置にて停止させることができる。
【0039】
[印刷時の運転方法]
このような印刷装置1は、概ね次のように動作して被印刷媒体Mのラベルに画像を印刷すると共にその印刷結果の検証(以下、「通常印刷処理」)を行う。すなわち、印刷装置1は、通信インタフェース50を介して印刷データを受信すると、供給部3を駆動して被印刷媒体Mを搬送路Rに沿って送り出す。送り出された被印刷媒体Mは搬送路Rに沿って搬送ガイド板42、給紙ローラ対41を経てベルト搬送部44へ向かう。ベルト搬送部44は、はじめに被印刷媒体Mを入口ローラ45aと無端ベルト44cとの間に挟持し、続いて吸引装置を駆動しつつ駆動ローラ44bを回転させることで、被印刷媒体Mを無端ベルト44cの上面に吸着された状態で前方へ搬送する。
【0040】
印刷装置1は、このように無端ベルト44aの上面に吸着された状態で搬送される被印刷媒体Mのラベルが印刷部5の下方に到達すると、印刷ヘッド25のノズル26からインクを吐出させる。吐出されたインクは被印刷媒体Mのラベル上面に着弾し、ラベル上面に画像が形成される。画像としては、1次元バーコードまたは2次元バーコード等の、所定の情報がコード化された画像(コード画像)が例示される。また、画像が形成された被印刷媒体Mは、ベルト搬送部44により定着部6の下方に到達すると、ハロゲンランプ28が輻射する赤外光が照射され、被印刷媒体M上のインクの硬化が促進される。
【0041】
次に、定着部6を経た被印刷媒体Mは、出口ローラ44bからベルト搬送部44を出ると、排出ローラ対48へ向かう。そして、ベルト搬送部44から排出ローラ対48へ向かう途中で、読取部7によって被印刷媒体M上に印刷された画像が読み取られる。例えば、被印刷媒体Mのラベルに印刷されたコード画像が読み取られて、読み取られた信号がコントローラ8へ送られる。コントローラ8は、読取部7から送られてきた信号が示す情報と、当該コード画像としてコード化された情報とが一致するか否かを判断する。
【0042】
これにより、印刷装置1は、所定の情報を含むコード画像を印刷した場合に、そのコード画像から実際に所望の情報を読み取ることができるか否かを検証することができる。
【0043】
[汚れ検知時の運転方法の概要]
一方、このような印刷装置1は、画像が印刷されて間もない被印刷媒体Mが読取部7の近傍を搬送されるため、被印刷媒体M上に完全に定着されなかったインクが残っている場合に、当該インクが読取部7を汚損する可能性がある。あるいは、同一筐体2内に印刷部5および読取部7が存在するため、印刷部5でのインク吐出時に発生したインクミストが流れて、読取部7を汚損する可能性がある。従って、本実施の形態に係る印刷装置1は、適宜のタイミングで読取部7の汚れ具合を検知する「汚れ検知処理」を実行する。
【0044】
この汚れ検知処理では、汚れがない(あるいは、少ない)ときの読取部7によって予め読み取っておいた基準データである第1データと、その後の現時点における読取部7によって読み取った現状データである第2データとを比較することで汚れを検知する。また、印刷装置1は、上記第1データを所定の手順により作成する「第1データ作成処理」を実行する。
【0045】
汚れ検知時の運転方法を概説すると、コントローラ8は、所定位置に設けられた第1対象物(例えば、基準板38)を読取部7により読み取り、読み取って得たデータに対してシェーディング補正を行って第1データを取得する(第1データ作成処理の実行)。コントローラ8は、この第1データおよびシェーディング補正値をメモリ9に記憶しておく。その後の適宜タイミングで、コントローラ8は、所定位置に設けられた第2対象物(例えば、基準板38)を読取部7により読み取り、読み取って得たデータに対し、メモリ9に記憶されたシェーディング補正値に基づくシェーディング補正およびガンマ補正を行って第2データを取得する。そして、先に取得していた第1データおよび現時点で取得された第2データに基づいて読取部7の汚れを判定する(汚れ検知処理の実行)。
【0046】
なお、汚れ検知処理では、第1データと第2データとを比較して得られる差分値に基づいて、レンズ34aの汚れ判定を行うことができる。また、汚れ検知処理にて第2データを取得するときに行うガンマ補正は、補正前のデータが有する第1範囲の諧調値を、この第1範囲より狭い第2範囲の諧調値に変換することで、補正後のデータを取得することができる。さらに、第1データを取得するために読取部7により読み取る対象物と、第2データを取得するために読取部7により読み取る対象物とは、同一の物を用いてもよいし異なる物を用いてもよい。
【0047】
以下では、印刷装置1による第1データ作成処理および汚れ検知処理の更なる詳細について順に説明する。
【0048】
[第1データ作成処理]
図4は、第1データ作成処理における印刷装置1の運転方法を示すフローチャートである。図5A図5Dは、第1データ作成処理を説明するための図表である。また、図6A図6Bは、第1データ作成処理でのデータの変遷を表すフローチャートである。この第1データ作成処理は、例えば印刷装置1の製造後、工場から出荷される前に、製造会社の社員による操作によって実行される。第1データ作成処理が開始されると、印刷装置1は、AFE(Analog Front End)調整の処理を行う(ステップS1)。
【0049】
具体的には、黒色基準板などの基準板38を、光源36を消灯したままで読取部7により1ライン分だけ読み取る。読み取られたデータ(以下、「黒読取データ」)D10は、センサユニット33を構成する複数のイメージセンサ33aのそれぞれにより読み取られた個別のデータ(以下、「黒読取個別データ」)D11の集合となっている。従って、黒読取データD10は、図5Aの破線で例示するように、読み取られた画素の位置(すなわち、イメージセンサ33aの位置)に応じた諧調値を有するデータとなる。
【0050】
なお、光源36を消灯した状態で読み取るため、この黒読取データD10は全画素位置において諧調値が例えば0~255の範囲のうち0に近い値を有する。ただし、各画素の位置における読取環境は均一ではなく、画素位置により、僅かに明るさが異なる場合があったり、イメージセンサ33aの感度が異なっていたり、レンズ34aの特性が異なっていたりする場合がある。そのため、各画素位置で読み取られた黒読取個別データD11は、図5Aに示すように異なる場合がある。
【0051】
そして、AFE調整(S1)では、黒読取データV10を、諧調値がより小さくなるようにオフセットする。例えば、黒読取データD10に含まれる黒読取個別データD11のうち、最も小さい諧調値を有する黒読取個別データ(図5A中のデータD12)に着目し、当該黒読取個別データD12の諧調値と所定の黒基準諧調値(例えば、最小諧調値である0)との差分値だけ、全ての黒読取雄個別データD11をオフセットする。このようなオフセット処理は、例えば読取部7を構成するCIS内のレジスタ(オフセット・レジスタ)により実行可能である。また、コントローラ8は、このようにしてAFE調整したときの調整値であるオフセット値をメモリ9に記憶する。これにより、図5Aにおいて実線で示すように、黒読取データD10をオフセットしたデータ(以下、「黒調整データ」)D13を得る。
【0052】
以上が、ステップS1のAFE調整である。すなわち、図6Aに示すように、このステップS1の処理によって、黒読取データD10から黒調整データD13が取得され、その過程で取得された調整値であるオフセット値がメモリ9に記憶(保存)される。
【0053】
次にコントローラ8は、光量調整の処理を行う(ステップS2)。具体的には、第1対象物として白色基準板などの基準板38を、光源36を点灯した状態で読取部7により1ライン分だけ読み取る。読み取られたデータ(以下、「白読取データ」)D20は、センサユニット33を構成する複数のイメージセンサ33aのそれぞれにより読み取られた個別のデータ(以下、「白読取個別データ」)D21の集合となっている。従って、白読取データD20は、図5Bの破線で示すように、読み取られた画素の位置(すなわち、イメージセンサ33aの位置)に応じた諧調値を有するデータとなる。
【0054】
なお、黒読取データD10で説明したのと同様に、白読取データD20の読取環境も均一ではない。そのため、各画素位置で読み取られた白読取個別データD21は、図5Bに示すように異なる場合がある。
【0055】
そして、光量調整(S2)では、白読取データD20を、諧調値がより大きくなるようにオフセットする。例えば、白読取データD20に含まれる白読取個別データD21のうち、最も大きい諧調値を有する白読取個別データ(図5B中のデータD22)に着目し、当該白読取個別データD22の諧調値と所定の白基準諧調値(例えば、最大諧調値である255)との差分値だけ、全ての白読取個別データD21をオフセットする。このようなオフセット処理は、読取部7を構成するCISが有する光源36への通電電流値、イメージセンサ33aの検出値を調整して出力する回路中のゲインまたはデューティ・レジスタなどの各種パラメータを適宜調整することで可能である。また、コントローラ8は、このようにして調整された各種パラメータの調整値をメモリ9に記憶する。これにより、図5Bにおいて実線で示すように、白読取データD20をオフセットしたデータ(以下、「白調整データ」)D23を得る。
【0056】
以上が、ステップS2の光量調整である。すなわち、図6Bに示すように、このステップS2の処理によって、白読取データD20から白調整データD23が取得され、その過程で取得された調整値がメモリ9に記憶(保存)される。
【0057】
次にコントローラ8は、黒レベルデータ読取の処理および黒補正値取得の処理を行う(ステップS3)。このうち黒レベルデータ読取の処理では、ステップS1で得られた黒調整データD13が有する画素位置ごとのデータ(以下、「黒調整個別データ」)D14の諧調値(レベルデータ)を読み取る。そして黒補正値取得の処理では、黒調整データD13の諧調値を全ての画素位置において黒基準諧調値(例えば、0)にするための補正値を取得し、メモリ9に記憶する。具体的には、黒調整個別データD14のそれぞれの諧調値と黒基準諧調値との差分値を、黒調整個別データD14のそれぞれの補正値として取得する。従って、黒調整個別データD14の諧調値から、当該黒調整個別データD14の補正値を除算すると、黒基準諧調値になる。このような補正を行った後のデータ(以下、「黒補正データ」)D15は、図5Cにおいて実線で示すように、全ての画素位置での諧調値が黒基準諧調(ここでは、0の場合を例示)の直線状になる。
【0058】
以上が、ステップS3の処理である。すなわち、図6Aに示すように、このステップS3の処理によって、黒調整データD13から更に黒補正データD15が取得され、その過程で取得された補正値がメモリ9に記憶(保存)される。
【0059】
次にコントローラ8は、白レベルデータ読取の処理およびシェーディング補正値取得の処理を行う(ステップS4)。このうち白レベルデータ読取の処理では、ステップS2で得られた白調整データD23が有する画素位置ごとのデータ(以下、「白調整個別データ」)D24の諧調値(レベルデータ)を読み取る。そして、シェーディング補正値取得の処理では、白調整データD23の諧調値を全ての画素位置において白基準諧調値(例えば、255)にするための補正値を取得し、メモリ9に記憶する。具体的には、白基準諧調値に対する白調整個別データD24のそれぞれの諧調値の比率の逆数を、白調整個別データD24のそれぞれの補正値(シェーディング補正値)として取得する。従って、白調整個別データD24の諧調値に対し、この補正値を乗算すると、白基準諧調値になる。このような補正を行った後のデータ(以下、「白補正データ」)D25は、図5Dにおいて実線で示すように、全ての画素位置での諧調値が白基準諧調値(ここでは、255の場合を例示)の直線状になる。
【0060】
以上が、ステップS4の処理である。すなわち、図6Bに示すように、このステップS4の処理によって、白調整データD23から更に白補正データD25が取得され、その過程で取得された補正値がメモリ9に記憶(保存)される。
【0061】
次にコントローラ8は、汚れ検知用ライン読取の処理を行う(ステップS5)。図6Bも参照しつつこの処理について具体的に説明する。コントローラ8は、光量調整の処理(S2)において取得した調整値をメモリ9から読み出し、各種のパラメータに対して設定する(ステップS51)。そして、読取部7により、光源36を点灯した状態で第1対象物である白色基準板などの基準板38を1ライン分だけ読み取る(ステップS52)。次に、読取部7により読み取ったデータに対し、メモリ9に記憶されたシェーディング補正値を適用してシェーディング補正を行う(ステップS53)。このようにして読み取られたデータが、第1データD1である(ステップS6)。すなわち、コントローラ8は、汚れ検知用ライン読取の処理(S5)を実行することで、汚れ検知用の白色の基準データとして、第1データD1を取得する(S6)。また、このようにして取得した第1データD1と、第1データD1を取得するための補正値とを、関連付けてメモリ9に記憶(保存)する(ステップS7)。以上が、第1データ作成処理の流れである。
【0062】
なお、ステップS6で取得される第1データD1は、それ以前にシェーディング補正値取得の処理(S4)を実行したときの補正後のデータである白補正データD25と、理論的には同じになるはずである。しかしながら、ステップS6の第1データD1は読取部7により実際に読み取りを行って得られたデータであるのに対し、白補正データD25は計算により得られたデータである。そのため、前者のデータである第1データD1には、何らかのノイズが混入することが考えられ、その場合には白補正データD25と相違する可能性がある。従って、本実施の形態に係る印刷装置1では、第1データD1を白補正データD25と同一とみなすことなく、実際に読取部7により基準板36を読み取ることで第1データD1を取得することとしている。
【0063】
また、上述したノイズの影響をより低減するため、基準板36の同一箇所を読取部7により複数回読み取り、読み取って得られたデータから各画素位置での諧調値について平均値を取得し、取得した各画素位置での平均値で構成される1ライン分のデータを第1データD1としてもよい。なお、仮にノイズの影響が無視できる程度である場合には、ステップS5の汚れ検知用ライン読取の処理を省略し、白補正データD25を第1データD1としてもよい。
【0064】
[汚れ検知処理]
図7および図8は、汚れ検知処理における印刷装置1の運転方法を示すフローチャートである。また、図9A図9Cは、汚れ検知処理にて行うガンマ補正を説明するための図表である。この汚れ検知処理は、例えば印刷装置1が工場から出荷されてユーザに使用されている状況の適宜タイミングで実行される。適宜タイミングとしては、前回の汚れ検知処理の実行後において、印刷累積時間が所定の閾値に達したとき、インクの累積吐出量が所定の閾値に達したとき、あるいは、ユーザが操作部11を操作することで汚れ検知処理の実行指示が入力されたとき、などである。
【0065】
汚れ検知処理が開始されると、印刷装置1は、補正値の設定を行う(ステップS10)。すなわち、第1データ作成処理のステップS7でメモリ9に保存した補正値を読み出し、この補正値を各種のパラメータに対して設定する。次に、コントローラ8は、汚れ検知用ライン読取の処理を行う(ステップS11)。具体的には、読取部7により、光源36を点灯した状態で第2対象物である白色基準板などの基準板38を1ライン分だけ読み取って検知用データD30を取得する(ステップS111)。そして、読取部7により読み取った検知用データD30に対し、メモリ9に記憶されたシェーディング補正値(第1データ作成処理で取得した補正値)を適用することで(ステップS112)、シェーディング補正を行った補正データD31を取得する(ステップS113)。そしてコントローラ8は、この補正データD31に対してガンマ補正を行って(ステップS12)、現状データである第2データD2を取得する(ステップS13)。
【0066】
ここで、印刷装置1は、工場からの出荷後、ユーザにより使用される過程で、読取部7のイメージセンサ33aとこれに対向するレンズ34aとの相対的な位置関係が変化し得る。例えば、温度等の周辺環境の変化によって両者の位置関係にズレが生じうるし、ユーザの使用中に生じる振動や衝撃によっても両者の位置関係にズレが生じうる。このような位置ズレは、読取部7による読み取り結果に影響を及ぼす。例えば、レンズ34aに対するイメージセンサ33aの位置が変化すると、同じ画素を読み取った場合であってもイメージセンサ33aが読み取った結果(諧調値)は違ってくる。一方、シェーディング補正は、各画素位置に応じた補正値を用いる。従って、位置ズレが生じると、イメージセンサ33aが読み取った値にシェーディング補正を適用したデータには、リップルと称される波状の波形が現れる。このリップルを低減するために、ガンマ補正(S12)を行う。
【0067】
図9A図9Cを参照してガンマ補正について説明する。図9Aの実線は、ステップS11で取得した検知用データD30であり、シェーディング補正値を取得した時点から現時点に至るまでにイメージセンサ33aおよびレンズ34aの間に位置ズレが生じたために複数のリップルrpを含むデータになっている。このようなリップルrpを含む検知用データD30をガンマ補正により図9Bに示すように平滑化して第2データD2を得る。
【0068】
具体的には、検知用データD30に対して諧調値に関する所定の変換テーブル(ガンマ補正テーブル)を適用する。図9Cに示すように、この変換テーブルは、0~255の諧調範囲のうち所定の第1範囲Ra1の入力値が、第1範囲Ra1よりも狭い第2範囲Ra2の出力値と対応するテーブルになっている。従って、ガンマ補正前のデータが有する第1範囲Ra1の階調値は、この変換テーブルを用いて諧調値を変換することで、第1範囲Ra1よりも狭い第2範囲Ra2の階調値に変換される。また、諧調値の第1範囲Ra1は、検知用データD30において生じるリップルrpの諧調値を含むように予め設定されている。
【0069】
なお、図9Cに示す変換テーブルでは、第1範囲Ra1の入力値と第2範囲Ra2の出力値とが直線状の比例関係を有しているが、これに限定されず、曲線状の対応関係であってもよい。また、第1範囲Ra1の中央値Vm1と第2範囲Ra2の中央値Vm2とは同一であり、これらの中央値Vm1,Vm2は、検知用データD30をシェーディング補正したときにリップルが生じなければ本来得られるはずの諧調値(目標諧調値)に設定することが好ましい。このような目標諧調値は、例えば白補正データD25の諧調値(すなわち、白基準諧調値)が対応する。従って図9Cに示す例は、白補正データD25として、最大の諧調値(255)よりも小さい諧調値を有するものを想定した場合を示している。
【0070】
このようにしてガンマ補正(S12)を行って第2データD2を取得すると(S13)、次にコントローラ8は第1データD1と第2データD2とを比較する(ステップS14)。具体的には、第1データD1に含まれる各画素の諧調値と、第2データD2に含まれる各画素の諧調値とを、対応する画素同士で比較することで、画素ごとの読取精度の劣化率を算出する。この劣化率の算出方法は特に限定されないが、例えば、対応する画素同士の諧調値の比率または差分値に対応する値を劣化率としてもよい。ここでは、対応する画素同士の諧調値の差が大きいほど、劣化率が大きいものとする。
【0071】
次にコントローラ8は、複数の画素に関する劣化率のうち最大のもの(最大劣化率)を抽出し、これと所定の閾値Xとの大小関係を判定する(ステップS15)。ここで最大劣化率が閾値X未満であった場合は(S15:NO)、AFE調整(ステップS16)および光量調整(ステップS17)を行い、交換時期検知の処理として、読取部7の交換時期に関する情報を検知して(ステップS18)、読取部7の交換時期が到来したか否かを判定する(ステップS19)。なお、この交換時期の判定は、例えば、読取部7の動作時間または動作回数などの累積値をメモリ9に逐次記憶しておき、これと所定の閾値とを比較して判定してもよいし、後述する第1データD1の更新処理の実行回数をメモリ9に記憶しておき、これと所定の閾値とを比較して判定してもよい。
【0072】
交換時期がまだであると判定した場合は(S19:NO)、この汚れ検知処理を終了する。そして、必要に応じて、印刷時の運転方法として説明した、ラベルへのコード画像の印刷およびその印刷結果の検証に関する「通常印刷処理」を実行する。一方、交換時期が到来したと判定した場合は(S19:YES)、ユーザにその旨を通知する(ステップS20)。例えば、印刷装置1の筐体2外面に設けられた表示部10に、読取部7の交換時期が到来したことを示す情報を文字列等により表示する。そして、ユーザが操作部11を操作して、すぐに読取部7を交換する旨の指示を入力したか否かを判定する(ステップS21)。すぐに交換する旨の入力があった場合は(S21:YES)、コントローラ8は表示部10に交換方法を通知する(ステップS22)。一方、ユーザが入力した指示が、読取部7の交換を保留する内容であった場合(ステップS21:NO)、コントローラ8はこの汚れ検知処理を終了する。
【0073】
ここでステップS15の処理に戻り、最大劣化率が閾値X以上であった場合は(S15:YES)、コントローラ8の内部メモリにて管理している試行回数Nに1を加算する(ステップS30)。そして、加算後の試行回数Nと所定の閾値Ntとの大小関係を判定する(ステップS31)。もし試行回数Nが閾値Nt以上であった場合は(S31:YES)、基準データである第1データD1の更新の要否判定を行う。ここでは、複数の画素に関する劣化率の平均値(平均劣化率)を算出し、これと所定の閾値Yとの大小関係を判定する(ステップS39)。平均劣化率が閾値Y未満であった場合は(S39:NO)、第1データD1の更新は不要と判定してステップS16の処理へ移行する。
【0074】
これに対し、平均劣化率が閾値Y以上であった場合は(S39:YES)、第1データ更新処理を実行する(ステップS40)。この第1データ更新処理では、実質的に図4を参照して説明した第1データ作成処理と同じ処理を実行して新たな第1データD1を作成する。そして、メモリ9に記憶されていた第1データD1とこれに対応する調整値および補正値とを、ステップS40で作成した第1データD1とこれに対応する調整値および補正値とに置き換える更新を行う。その後は、ステップS16の処理へ移行する。
【0075】
ステップS31の処理に戻り、試行回数Nが閾値Nt未満であった場合は(S31:NO)、ユーザに対して拭き取りを指示すべく報知を行う(ステップS32)。例えば、印刷装置1の表示部10に、読取部7の拭き取りを行う必要がある旨の情報を文字列等により表示する。この表示を見たユーザは、専用のクロスなどで読取部7の各部を拭き取る。コントローラ8は、ユーザによる操作部11への所定の操作により、拭き取り作業が完了したことを示す入力があったか否かを判定するべく(ステップS33)、当該入力があるまで待機する(S33:NO)。
【0076】
拭き取り作業完了の入力があった場合は(ステップS33:YES)、先に説明したステップS11,S12と同様の汚れ検知用ライン読取の処理(ステップS34)およびガンマ補正の処理(ステップS35)を実行し、第3データD3を取得する(ステップS36)。この第3データD3は、ステップS13で取得した第2データD2と同様に汚れ検知用の現状データであるが、第2データD2は今回の汚れ検知処理にて読取部7の拭き取りを行っていない状態での現状データであり、第3データD3は今回の汚れ検知処理にて読取部7の拭き取りを行った後の現状データである。
【0077】
次にコントローラ8は、基準データである第1データD1と最新の現状データである第3データD3とを比較し(ステップS37)、複数の画素に関する劣化率のうち最大のもの(最大劣化率)を抽出し、これと所定の閾値Xとの大小関係を判定する(ステップS38)。この比較(S37)および判定(S38)の各処理は、既に説明したステップS14,S15の処理と同様の手順により行う。そして、最大劣化率が閾値X以上であった場合は(S38:YES)、ステップS30へ移行し、既に説明したようにそれ以降の処理を実行する。一方、最大劣化率が閾値X未満になっていた場合は(S38:NO)、基準データである第1データD1の更新の要否判定を行うべく、既に説明したステップS39の処理を行う。これ以降は既に説明した通り、ステップS39の判定結果に基づき第1データD1を更新し、または、更新せずに、ステップS16からの処理をするので、その詳細な説明は省略する。
【0078】
以上に説明したように、本実施の形態に係る印刷装置1が実行する第1データ取得処理および汚れ検知処理によれば、基準データである第1データD1を取得する際にはシェーディング補正を行い、現状データである第2データD2(または、第3データD3)を取得する際にはシェーディング補正を行うのに加え、ガンマ補正も行う。これにより、第1データD1を取得してから汚れ検知処理を実行するまでの間に、周辺環境が変化したり振動や衝撃が加わったりしてイメージセンサ33aとレンズ34aとの位置関係にズレが生じた場合であっても、その位置ズレの影響を抑制でき、読取部7の汚れ検知の精度を向上することができる。
【0079】
[他の実施の形態]
印刷装置1の運転方法は上述したものに限られず、一部の処理を省略したり、任意の処理を追加したりすることができる。例えば、図10のフローチャートに示すように、第1データ作成処理において、ガンマ補正(ステップS50)を追加して行うようにしてもよい。具体的に説明すると、図10に示す第1データ作成処理は、図4を用いて説明した第1データ作成処理と同様のステップS1~S7をこの順で実行するが、汚れ検知用ライン読取の処理(S5)と第1データ取得の処理(S6)との間に、ガンマ補正(S50)を実行する。
【0080】
すなわち、図10に示す第1データ作成処理では、ステップS5の処理により得られたデータ(すなわち、実際に読み取って且つシェーディング補正を適用したデータ)に対し、さらにガンマ補正(S50)を行うことで、第1データD1を取得する(S6)。これにより、第1データD1を取得するときの処理内容と、第2データD2を取得するときの処理内容とが一致するため、読取部7の汚れ検知の更なる精度向上を期待できる。
【0081】
なお、上述したAFE調整(S1)では黒色基準板を用いる場合を例示したが、これに限られず、例えば読取部7が遮光された環境であれば、白色基準板を用いて消灯状態で行うこととしてもよい。また、第1データ作成処理での汚れ検知用ライン読取の処理(S5)で読み取る第1対象物と、汚れ検知処理での汚れ検知用ライン読取の処理(S11,S34)で読み取る第2対象物とを、いずれも同一の白色基準板とした場合を例示したが、これに限られない。すなわち、第1対象物と第2対象物とを異ならせてもよく、一方を白色基準板として他方を被印刷媒体Mとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、コードを印刷する印刷装置に搭載される読取機の汚れを正確に検知することができる印刷装置、および、当該印刷装置の運転方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 印刷装置
4 搬送部
5 印刷部
7 読取部
8 コントローラ
9 メモリ
10 表示部(報知部)
25 印刷ヘッド
33 センサユニット
33a センサ(受光素子)
34 レンズアレイ
34 レンズ
36 光源(発光素子)
38 基準板(第1対象物,第2対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10