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特開2024-75269終点検出機構付スピンエッチング装置及びスピンエッチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075269
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】終点検出機構付スピンエッチング装置及びスピンエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240527BHJP
   C23F 1/08 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H01L21/306 F
C23F1/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186605
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 俊一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 綾馬
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA14
4K057WB05
4K057WE02
4K057WE04
4K057WJ10
4K057WM04
4K057WM11
4K057WN01
5F043AA24
5F043BB16
5F043DD07
5F043DD13
5F043DD25
5F043EE07
5F043EE08
5F043GG04
(57)【要約】
【課題】 製品毎によるAl被覆層の厚さの違い(3~5μm程度のバラつき)、エッチングレートの多少の変動に関わらず、ウェットエッチングの終点検出を安定して行うことができるようにした、終点検出機構付スピンエッチング装置及びスピンエッチング方法を提供する。
【解決手段】 基板本体上にAl被覆層を有するAl被覆基板が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの上方に設置され、可視光を透過する材質で形成されてなり、エッチング液の飛散を防止するための薬液飛散防止用環状フードと、前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面にシャワー方式でエッチング液を吹き付けるエッチング液ノズルと、前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルを検出するための非可視光線分光装置と、を含み、前記非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体上にAl被覆層を有するAl被覆基板が載置される回転テーブルと、
前記回転テーブルの上方に設置され、可視光を透過する材質で形成されてなり、エッチング液の飛散を防止するための薬液飛散防止用環状フードと、
前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面にシャワー方式でエッチング液を吹き付けるエッチング液ノズルと、
前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルを検出するための非可視光分光装置と、
を含み、
前記非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出するようにした、
終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項2】
前記Al被覆層の厚さが、5μm以上である、請求項1記載の終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項3】
前記非可視光線が、赤外線又は紫外線である、請求項1記載の終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項4】
前記基板本体と前記Al被覆層の間に、SiO、TiN、Au、Agの群の少なくともいずれか一つから選ばれる下地層が形成されてなり、前記下地層のスペクトルを検出することで、前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出するようにした、請求項1記載の終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項5】
前記終点検出機構付スピンエッチング装置におけるエッチングの終点を検出する位置が、前記Al被覆基板の表面から20~30mmである、請求項1記載の終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項6】
前記非可視光分光装置が、非可視光線を照射するための光源と、前記Al被覆層表面で反射した非可視光線を検出するための検出器と、前記Al被覆層表面で反射した非可視光線を分光分析するための分光器と、前記光源からの前記非可視光線を前記検出器に送る光ファイバー部及び前記検出器で検出された前記Al被覆層表面で反射した非可視光線を前記分光器に送る光ファイバー部を有する同軸ファイバーと、を有し、前記検出器の検収スポット径が直径10~20mmである、請求項1記載の終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項7】
前記同軸ファイバーが、耐薬品性のある樹脂で被覆されてなり、前記検出器の検収スポット側先端からエッチング液雰囲気が入らないようにNパージが行われる、請求項6記載の終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項8】
前記Al被覆層へのエッチングの終点の検出が、前記Al被覆基板の少なくともエッジエクスクルージョン領域で行われる、請求項1記載の終点検出機構付スピンエッチング装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の終点検出機構付スピンエッチング装置を用いたスピンエッチング方法であり、
前記回転テーブル上に載置される、前記Al被覆層を有するAl被覆基板に対して、前記回転テーブルを回転させながら、シャワー方式でエッチング液を前記Al被覆基板表面に吹き付けて前記Al被覆基板表面をエッチングする工程と、
前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出する工程と、
を含む、スピンエッチング方法。
【請求項10】
前記非可視光線が、赤外線又は紫外線である、請求項9記載のスピンエッチング方法。
【請求項11】
前記Al被覆層へのエッチングの終点の検出が、前記Al被覆基板の少なくともエッジエクスクルージョン領域で行われる、請求項9記載のスピンエッチング方法。
【請求項12】
前記Al被覆層へのエッチングの終点の検出が、前記Al被覆基板のエッチング後の各チップ間の線幅が0.5mm以上1.5mm以下の箇所で行われる、請求項9記載のスピンエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットエッチング処理の終点検出技術、特に、試料の表面に形成されたアルミニウム膜がエッチング処理されるに際しての終点を検出する技術に関し、例えば、半導体製造工程において、基板上に形成されたアルミニウム膜がウェットエッチング処理されるに際しての終点検出機構付スピンエッチング装置及びスピンエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス工程において、ウェーハ上に形成される最後の電極としてアルミ(Al)材が使用されており、アルミをエッチングして電極が形成される。アルミ材のエッチングによるアルミ電極の形成方法の一例を図5に示す。図5において、(a)はエッチング前、(b)はエッチング後をそれぞれ示す。図5において、符号116は半導体基板であり、図5(a)に示した如く、シリコン等の半導体基板116上に絶縁膜114、アルミ材112及びレジスト110を形成した後、アルミ材112をエッチングし、アルミ電極120が形成される[図5(b)]。
【0003】
一般的な半導体デバイスの場合、アルミ電極の厚さは1μm以下である為、アルミ膜をエッチングするには、ドライエッチングで行うことが有効である。一方、シリコンパワー半導体などのパワーデバイスにおいてはアルミの電極の厚さは5μmにもなる。図6に、パワーデバイス半導体の例を示す。図6では、パワーデバイス半導体として、シリコンパワー半導体の例を示した。図6に示すように、シリコンパワー半導体のウェーハ100では、ウェーハ100の外周部102に多くあるエッジエクスクルージョン領域も大きなものとなり、その分、アルミをエッチングする必要がある。
【0004】
このように厚いアルミ膜をエッチングするには、ドライエッチングでは時間が掛かるため、厚いアルミ膜ではウェットエッチングで行うことが一般的に成っている。
【0005】
ウェットエッチングの終点を光で検出するものとして、例えば特許文献1がある。
【0006】
上記したパワーデバイスにおいてはアルミの電極の厚さが厚く、アルミのウェットエッチングの場合、シャワー方式でないとエッチングレートが低く、歩留まりが悪いため、シャワー方式のウェットエッチングが行われる。シャワー方式のウェットエッチングでは、エッチング液として燐硝酢酸を約60℃位に加熱してシャワーで、回転する基板(ウェーハ)表面に、エッチング液を満遍なく供給する必要がある。このようにシャワー方式でエッチング液を供給することでエッチングレートを確保する事が出来るが、それ故、エッチング液が周辺に飛散することとなる。
【0007】
このエッチング液の飛散を避けるため、エッチングを行う際は回転する基板周辺を薬液飛散防止用の環状フードにて覆う必要が有る。
【0008】
このように、薬液飛散防止用環状フードを設けてシャワー方式でエッチングし、光源からの光で終点を検出すると、検出に誤差が生じることがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-36981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記薬液飛散防止用環状フードを設けてシャワー方式でエッチングし、光源からの光で終点を検出すると、検出に誤差が生じる原因について、発明者等は鋭意検討した。その結果、従来は、光源からの光としては可視光で終点検出を行っていたが、前記薬液飛散防止用環状フードに付着したエッチング液の水滴が流れることで、散乱光が発生し、誤検知が生じていることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、製品毎によるAl被覆層の厚さの違い(3~5μm程度のバラつき)、エッチングレートの多少の変動に関わらず、ウェットエッチングの終点検出を安定して行うことができるようにした、終点検出機構付スピンエッチング装置及びスピンエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置は、基板本体上にAl被覆層を有するAl被覆基板が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの上方に設置され、可視光を透過する材質で形成されてなり、エッチング液の飛散を防止するための薬液飛散防止用環状フードと、前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面にシャワー方式でエッチング液を吹き付けるエッチング液ノズルと、前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルを検出するための非可視光線分光装置と、を含み、前記非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出するようにした、終点検出機構付スピンエッチング装置である。
【0013】
前記Al被覆層の厚さが、5μm以上であるのが好適である。
【0014】
前記非可視光線が、赤外線又は紫外線であるのが好適である。
【0015】
前記基板本体と前記Al被覆層の間に、SiO、TiN、Au、Agの群の少なくともいずれか一つから選ばれる下地層が形成されてなり、前記下地層のスペクトルを検出することで、前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出するのが好適である。
【0016】
前記終点検出機構付スピンエッチング装置におけるエッチングの終点を検出する位置が、前記Al被覆基板の表面から20~30mmであるのが好適である。
【0017】
前記赤外分光装置が、非可視光線を照射するための光源と、前記Al被覆層表面で反射した非可視光線を検出するための検出器と、前記Al被覆層表面で反射した非可視光線を分光分析するための分光器と、前記光源からの前記非可視光線を前記検出器に送る光ファイバー部及び前記検出器で検出された前記Al被覆層表面で反射した非可視光線を前記分光器に送る光ファイバー部を有する同軸ファイバーと、を有し、前記検出器の検収スポット径が直径10~20mmであるのが好適である。
【0018】
前記同軸ファイバーが、耐薬品性のある樹脂で被覆されてなり、前記検出器の検収スポット側先端からエッチング液雰囲気が入らないようにNパージが行われるのが好適である。
【0019】
前記Al被覆層へのエッチングの終点の検出が、前記Al被覆基板の少なくともエッジエクスクルージョン領域で行われるのが好適である。
【0020】
本発明のスピンエッチング方法は、前記終点検出機構付スピンエッチング装置を用いたスピンエッチング方法であり、前記回転テーブル上に載置される、前記Al被覆層を有するAl被覆基板に対して、前記回転テーブルを回転させながら、シャワー方式でエッチング液を前記Al被覆基板表面に吹き付けて前記Al被覆基板表面をエッチングする工程と、前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出する工程と、を含む、スピンエッチング方法である。
【0021】
前記非可視光線が、赤外線又は紫外線であるのが好適である。
【0022】
前記Al被覆層へのエッチングの終点の検出が、前記Al被覆基板の少なくともエッジエクスクルージョン領域で行われるのが好適である。
【0023】
前記Al被覆層へのエッチングの終点の検出が、前記Al被覆基板のエッチング後の各チップ間の線幅が0.5mm以上1.5mm以下の箇所で行われるのが好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、製品毎によるAl被覆層の厚さの違い(3~5μm程度のバラつき)、エッチングレートの多少の変動に関わらず、ウェットエッチングの終点検出を安定して行うことができるようにした、終点検出機構付スピンエッチング装置及びスピンエッチング方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置の一つの実施の形態を示す構成図である。
図2】本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置の一つの実施の形態を示す側面図である。
図3】本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置の一つの実施の形態を示す平面図である。
図4】本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置で用いられる赤外分光装置の一例を示す概略模式図である。
図5】アルミ材のエッチングによるアルミ電極の形成方法の一例を示す概略模式図である。
図6】パワーデバイス半導体の例を示す模式図である。
図7】従来の可視光により終点検出を行うスピンエッチング装置の一例を示す構成図である。
図8】波長913.6nmにおけるアルミ、Si、及びSiOの反射スペクトルの違いを示すグラフであり、(a)は、アルミの反射スペクトル、(b)は波長913.6nmにおけるアルミ、Si及びSiOの反射スペクトルをそれぞれ示す。
図9】Al、Ag及びAuの反射スペクトルを示すグラフである。
図10】波長297.6nmにおけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの反射スペクトルの違いを示すグラフであり、(a)は、アルミの反射スペクトル、(b)は波長297.6nmにおけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの反射スペクトルをそれぞれ示す。
図11】波長297.6nmにおけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの反射スペクトルの違いを示すグラフであり、(a)は、TiNの反射スペクトル、(b)は波長297.6nmにおけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの反射スペクトルをそれぞれ示す。
図12】波長297.6nmにおけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの反射スペクトルの違いを示すグラフであり、(a)は、SiC+SiOの反射スペクトル、(b)は波長297.6nmにおけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの反射スペクトルをそれぞれ示す。
図13】実施例1の波長940nmにおけるエッチング中の反射スペクトルの変化を示すグラフである。
図14】実施例1の終点検出時における反射スペクトルを示すグラフである。
図15】比較例1の波長450nmにおけるエッチング中の反射スペクトルの変化を示すグラフである。
図16】比較例1の終点検出時における反射スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。図示において、同一部材は同一符号であらわされる。
【0027】
本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置の一つの実施の形態を図1図3に示す。図1図3において、符号10は、本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置である。本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置10は、基板本体上にAl被覆層を有するAl被覆基板が載置される回転テーブル12と、前記回転テーブル12の上方に設置され、可視光を透過する材質で形成されてなり、エッチング液の飛散を防止するための薬液飛散防止用環状フード14と、前記回転テーブル12上の前記Al被覆基板表面にシャワー方式でエッチング液を吹き付けるエッチング液ノズル16と、前記回転テーブル12上の前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルを検出するための非可視光線分光装置18と、を含み、前記非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出するようにした、終点検出機構付スピンエッチング装置である。なお、図3において、符号Aで示す領域は、エッチングステージであり、符号Bで示す領域は旋回待機位置であり、符号Cで示す領域はリンスシャワー領域である。
【0028】
本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置10は、エッチングによるパターン形成により、Al被覆層のエッチングされる領域が完全に除去され、Al被覆層の下層(Al被覆層とは非可視光線のスペクトルが異なる材質からなるものとする)が露出した状態をエッチングの終点と規定するアルミのエッチングに用いられる。
本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置10では、Al被覆基板のAl被覆層をエッチング中に、前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルを検出することにより、Al被覆層の下層が露出し、エッチングが終了した時点において非可視光線のスぺクトルが変化するため、その非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出することができる。
【0029】
前記回転テーブル12としては、特に制限はなく、スピンエッチング装置に用いられる公知の回転テーブルを用いることができる。
【0030】
前記薬液飛散防止用環状フード14としては、可視光を透過する材質で形成された環状のフードであれば特に制限はなく、エッチング液の飛散を防止するための公知の環状フードを使用することができる。前記薬液飛散防止用環状フード14を用いることにより、回転テーブル12を回転させながら、シャワー方式でエッチング液をAl被覆基板表面に吹き付けて前記Al被覆基板表面をエッチングするアルミのウェットエッチングにおいて、エッチング液の周辺への飛散を防ぎ、且つ回転させたAl被覆基板表面にエッチング液を満遍なく供給する事でエッチングレートを確保する事が出来る。
【0031】
前記終点検出機構付スピンエッチング装置10を用いることにより、5μm以上の厚いAl被覆層のエッチングにおいても、迅速なスピンエッチングを達成することができ、具体的には、スピンエッチングのエッチングレートを13000Å/min以上とすることができる。また、Al被覆層の厚さは製品により差異があり、例えば、3~5μmの製品による差異では、製品によっては3μmだったり、製品によっては3.5μmだったり、或いは別の製品だと5μmだったりと、バラつきがある。しかしながら、本発明では、厚いAl被覆層のエッチングに好適に用いることができ、製品毎によるAlの厚さのバラつきが3~5μm程度あったとしても、又はエッチングレートが多少変動した場合でも、ウェットエッチングの終点検出を安定して行うことができる。
【0032】
前記エッチング液ノズル16としては、回転テーブル12上のAl被覆基板表面にシャワー方式でエッチング液を吹き付けることが可能なノズルであれば特に制限はなく、スピンエッチング装置に用いられる公知のエッチング液ノズルを用いることができる。エッチング液としては、アルミのエッチングに使用される公知のエッチング液を広く使用可能であり、例えば、リン酸や硝酸等の酸を含む酸性のエッチング液が挙げられ、リン酸、硝酸及び酢酸を含む燐硝酢酸(例えば、燐酸76~81%、硝酸2~4%、酢酸2~4%、残部水の燐硝酢酸)等の酸性のエッチング液が好適に用いられる。エッチング液は所定温度に加熱されたエッチング液が好適に用いられる。エッチング液の加熱温度は特に制限はないが、55~65℃が好適である。
【0033】
図4に、本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置10で用いられる非可視光線分光装置18の一例を示す。前記非可視光線分光装置18としては、前記回転テーブル12上のAl被覆基板28の表面に非可視光線を照射し、Al被覆基板で反射した非可視光線のスぺクトルを検出することができる非可視光線分光装置であれば特に制限はないが、図1及び図4に示した如く、前記非可視光線分光装置18が、非可視光線(励起光X)を照射するための光源20と、前記Al被覆層表面で反射した非可視光線(蛍光Y)を検出するための検出器24と、前記蛍光Yを分光分析するための分光器26と、前記光源20からの励起光Xを前記検出器24に送る光ファイバー部22a及び前記検出器24で検出された蛍光Yを前記分光器26に送る光ファイバー部22bを有する同軸ファイバー22と、を有することが好適である。光源20として非可視光線を使用し、且つ同軸ファイバー22を使用して光源20と分光器26で分離する上記構成とすることにより、ウェットエッチングの終点検出をより安定して正確に行うことができる。図1及び図4では、非可視光線を照射する光源20として波長約940nmの赤外線を照射するIR-LED照明を用いた例を示した。なお、前記光検出器24は、鉛直方向よりも少し傾斜して設置するのが好ましく、水平面に対して垂直よりも1°~25°傾斜して設置するのが好ましい。図1の例では、前記光検出器24を15°傾斜して設置した例を示した。
【0034】
本発明では、終点検出機構に、一般的な室内環境には無い波長である非可視光線を使用することにより、散乱光を避けることができる。可視光を使用した場合、外部からの光が影響し、薬液飛散防止用環状フードに水滴(エッチング液等の薬液)が付着し、流れる事で散乱光が発生して誤検知の原因と成ってしまう問題がある。本発明においては、エッチング液の飛散を防止するための薬液飛散防止用環状フード14を設け、且つ非可視光線を使用することにより、薬液の周辺への飛散を防止すると共に、散乱光を避け、安定して正確に終点を検出することができる。
【0035】
前記光源20より照射される非可視光線としては、エッチングの終了時に露出するAl被覆層の下層の材質に応じて、非可視光線の波長範囲から、AlとAl被覆層の下層の反射率の異なる波長を適宜選択すればよいが、波長780nm~1mmの赤外線又は波長10nm~380nmの紫外線から選択するのが好適である。
前記分光器26は、照射する可視光線に対応した分光器を選択すればよく、例えば、非可視光線が赤外線の場合は、分光器26として赤外分光器を用い、非可視光線が紫外線の場合は、分光器26として紫外分光器を用いることができる。
【0036】
前記同軸ファイバー22及び検出器24の材質は特に制限はないが、耐薬品性のある樹脂で被覆されてなり、前記検出器24の検収スポット側先端からエッチング液雰囲気が入らないようにNパージが行われることが好適である。耐薬品性のある樹脂で被覆されたものを用いることにより、エッチングの終点を検出する位置として、薬液飛散防止用環状フード14の内側のAl被覆基板28の表面の近傍に検出距離を設けることができ、より安定して正確に終点を検出することができる。Al被覆基板28の表面からの検出距離は特に制限はないが、Al被覆基板28の表面から約20~30mmであることが好適である。
前記同軸ファイバー22としては、ファイバー波長範囲250~1200nmのものが好適である。
前記検出器24の検収スポット径は特に制限はないが、直径10~20mmであることが好適である。
【0037】
前記Al被覆基板28において、前記Al被覆層は、基板本体の表面上に直接形成されていても良く、前記基板本体と前記Al被覆層の間に下地層が形成されていても良く、また、図5に示したアルミ電極のように、前記基板本体と前記Al被覆層の間に部分的に下地層が形成されていても良い。
【0038】
前記Al被覆層の厚さは特に制限はなく、5μm以上の厚いAl被覆層にも好適に用いられ、前記Al被覆層の厚さが3μm以上7μm以下であることがより好適である。
前記Al被覆層の形成方法は特に制限はなく、公知のAlの薄膜作製方法を用いることができ、例えば、スパッタ法やCVD法が好適である。
【0039】
前記Al被覆基板28に用いられる基板本体の材質は特に制限はなく、基板に用いられる公知の材質のものを広く使用することができる。例えば、前記基板本体として、シリコンウェーハやSiCウェーハ等の半導体ウェーハが好適であり、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)等のパワーデバイス半導体に用いられるシリコンウェーハがより好適である。
【0040】
図6に示した如く、IGBTパターンは1モジュールの大きさが大きく、ウェーハ100の外周部102にエッジエクスクルージョン領域が多く存在する。本発明では、このエッジエクスクルージョン領域が多く存在する外周部102を検出エリアとしてエッチングの終点検出を行うことが好ましい。
具体的には、前記Al被覆層へのエッチングの終点の検出が、前記Al被覆基板のエッチング後の各チップ間の線幅が0.5mm以上1.5mm以下の箇所で行われるのが好適である。
【0041】
前記基板本体と前記Al被覆層の間に形成される下地層の材質は特に制限はなく、Al被覆層とは非可視光線の反射スペクトルが異なる材質からなるものを広く使用することができ、例えば、アルミの下地として一般的であるSiO層が好適に用いられる。また、TiN、Au、Agの群の少なくともいずれか一つから選ばれる下地層も好適に用いることができる。
【0042】
次に、図1~3に示した終点検出機構付スピンエッチング装置10を用いたAl被覆基板28のアルミのスピンエッチング方法の第一の態様を以下に説明する。前記Al被覆基板28としては、基板本体としてシリコンウェーハを用い、該シリコンウェーハ上に、下地層としてアルミの下地として一般的であるSiO層を形成した後、Al被覆層を形成したアルミ電極用のAl被覆基板を用い、図5に示した如く、レジストを用いたアルミのエッチングを行う例を示した。レジストとしては、アルミのエッチングに用いられる公知のレジストを広く使用することができる。
【0043】
図8は、波長913.6nmの赤外線におけるアルミ、Si及びSiOの反射スペクトルの違いを示すグラフである。図8において、赤外線の照射条件は、波長913.6nm、露光時間100秒、測定時間119秒、であり、図8(a)は、アルミ時の周波数に対する強度を示す反射スペクトル、図8(b)は波長913.6nmにおけるアルミ、Si及びSiOの強度を示すスペクトル[X軸:時間(秒)、Y軸:強度]、をそれぞれ示す。
図8(b)に示した如く、赤外線はSi及びSiOは透過するが、アルミは透過しない。
【0044】
図5に示した如く、エッチング前はAl被覆基板の表面にはAl被覆層及びレジストが存在するが、エッチング終了後、レジストが存在しないエッチング領域はSiO層が露出した状態となる。図8に示した如く、Si及びSiOはアルミとは特定波長(例えば、波長910~950nmの赤外線)の反射スペクトルが異なる為、エッチング中に特定波長の赤外線を照射し、赤外線分光装置により反射スペクトルを測定し、強度の変化を観察することによりアルミからSiOに変更したことを検出し、急激に強度が変更した位置を終点として、エッチングの終点を検出することができる。
【0045】
図9は、Al、Ag及びAuの反射スペクトルを示すグラフである。図9に示した如く、Alは波長200nm~5μmの範囲において平均的に反射するのに対し、Ag及びAuは紫外領域の光を吸収する。よって、下地層としてAg又はAuを用いたAl被覆基板では、下地層が吸収する特定波長の紫外線(例えば、波長200nm~380nm)を光源として使用して、紫外分光装置により反射スペクトルを測定し、強度の変化を観察することによりアルミからAg又はAuに変更したことを検出し、急激に強度が変更した位置を終点として、エッチングの終点を検出することができる。
【0046】
次に、図1~3に示した終点検出機構付スピンエッチング装置10を用いたAl被覆基板28のアルミのスピンエッチング方法の第二の態様を以下に説明する。前記Al被覆基板28としては、基板本体としてSiCウェーハを用い、該SiCウェーハ上に、下地層としてTiN層を形成した後、Al被覆層を形成したアルミ電極用のAl被覆基板を用い、図5に示した如く、レジストを用いたアルミのエッチングを行う例を示した。レジストとしては、アルミのエッチングに用いられる公知のレジストを広く使用することができる。
【0047】
図10~12は、波長297.6nmの紫外線におけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの反射スペクトルの違いを示すグラフである。図10図12において、紫外線の照射条件は、波長297.6nm、露光時間100秒、測定時間100秒、であり、図10(a)は、アルミ時の周波数に対する強度を示す反射スペクトル、図11(a)は、TiN時の周波数に対する強度を示す反射スペクトル、図12(a)は、SiC+SiO時の周波数に対する強度を示す反射スペクトル、図10(b)~図12(b)は波長297.6nmにおけるアルミ、TiN及びSiC+SiOの強度を示すスペクトル[X軸:時間(秒)、Y軸:強度]、をそれぞれ示す。
図10図12に示した如く、アルミ、TiN及びSiC+SiOは紫外線に対する強度差が300,000以上あった。
【0048】
従って、エッチング中に特定波長の非可視光線を照射し、非可視光分光装置により反射スペクトルを測定し、強度の変化を観察することによりアルミからTiN及びSiC+SiOに変更したことを検出し、急激に強度が変更した位置を終点として、エッチングの終点を検出することができる。特に、図10図12に示した如く、アルミ、TiN及びSiC+SiOは紫外線に対する強度差が非常に大きく、紫外線を用いた終点検出がより有効である。
【0049】
上述したようにして終点検出機構付スピンエッチング装置10を用いてAl被覆層を有するAl被覆基板のスピンエッチングを行うことで、本発明のスピンエッチング方法となる。具体的には、本発明のスピンエッチング方法は、前記回転テーブル上に載置される、前記Al被覆層を有するAl被覆基板に対して、前記回転テーブルを回転させながら、シャワー方式でエッチング液を前記Al被覆基板表面に吹き付けて前記Al被覆基板表面をエッチングする工程と、前記回転テーブル上の前記Al被覆基板表面に非可視光線を照射し、前記Al被覆基板で反射した前記非可視光線のスぺクトルの変化で前記Al被覆層へのエッチングの終点を検出する工程と、を含む、スピンエッチング方法である。
【実施例0050】
(実施例1)
終点検出機構付スピンエッチング装置として図1に示す構成を有する本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置を用いて、赤外線を照射し、反射スペクトルを測定しながらアルミのウェットエッチングを行った。具体的には、回転テーブル上にAl被覆層を有するAl被覆基板を載置し、回転テーブルを800~1500rpmで回転させながら、シャワー方式でエッチング液(燐硝酢酸、温度65℃)をAl被覆基板表面に吹き付けてAl被覆基板表面をエッチングした。非可視光分光装置として、図4に示す同軸ファイバー及び検出器(検収スポット径:直径約10mm)を使用した赤外分光装置(光源:波長940nm)を用い、ファイバー先端の検出器からAl被覆基板の検収面まで距離が約20mmの位置にて、回転テーブル上のAl被覆基板表面に赤外線(励起光)を照射し、Al被覆基板で反射した蛍光を測定し、赤外線のスぺクトルの変化を観察し、急激に強度が低下した位置を終点として、エッチングの終点を検出した。結果を図13及び14に示す。Al被覆基板上の測定ポイントは、図6に示した如く、外周部102のエッジエクスクルージョン領域にて、エッチング後の各チップ間の線幅が5mm以上の箇所で行った。
【0051】
Al被覆基板として、シリコンウェーハ[直径200mm(8インチ)、厚さ725μm]上に、下地層としてSiO層(厚さ約0.3μm)をCVD法により図5に示した如く部分的に形成した後、Al被覆層(厚さ5μm)をCVD法により形成したアルミ電極用のAl被覆基板を用い、図5に示した如く、レジストを用いたアルミのスピンエッチングを行った。エッチングレートは15000Å/分であった。
【0052】
図13は、実施例1の波長940nmにおけるエッチング中の反射スペクトルの変化を示すグラフである。図13に示した如く、エッチング中に反射スペクトルの強度が急激に低下した為、強度が急激に低下した位置を終点として検出した。図14は、実施例1の終点検出時における反射スペクトルを示すグラフである。
終点検出時のAl被覆基板表面は、エッチング領域のアルミが除去され、SiO層が露出した状態となっており、正確にウェットエッチングの終点検出が行われた。従って、本発明により、エッチングレートを落とすことなく、乱反射の影響を受けず、散乱光による誤検知を防止し、ウェットエッチングの終点検出を安定して行うことができた。
【0053】
(比較例1)
図7に示す従来の可視光により終点検出を行うスピンエッチング装置を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、Al被覆基板に対してアルミのスピンエッチングを行った。
図7において、符号104は、従来のスピンエッチング装置であり、可視光の光源122(可視光のLED蛍光灯及び太陽光の合成波長)を、可視光を透過する環状フード14の外側から照射し、Al被覆基板で反射した可視光の蛍光を環状フード14の外側に設けた検出器124で直接検出し、分光器126により波長450nmにおけるスペクトルの変化を測定した。結果を図15及び図16に示す。
【0054】
可視光を使用すると、乱反射が起きる状態での検出となり、図15に示した如く、ノイズが発生し、スペクトルによる終点検出では、誤検知が発生しやすいものであった。
【符号の説明】
【0055】
10:本発明の終点検出機構付スピンエッチング装置、12:回転テーブル、14:薬液飛散防止用環状フード、16:エッチング液ノズル、18:非可視光線分光装置、20:光源、22,22a,22b:同軸ファイバー、24:検出器、26:分光器、28:Al被覆基板、100:シリコンパワー半導体のウェーハ、102:ウェーハの外周部、104:従来のスピンエッチング装置、110:レジスト、112:アルミ材、114:絶縁膜、116:半導体基板、120:アルミ電極、122:可視光の光源、124:検出器、126:分光器、130:光ファイバー、A:エッチングステージ、B:旋回待機位置,C:リンスシャワー領域、X:励起光、Y:蛍光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16