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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075275
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186611
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 啓二
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CC06
3D333CC47
3D333CD04
3D333CD07
3D333CD14
3D333CD31
3D333CD37
(57)【要約】
【課題】樹脂製のコネクタブロックを有する電子制御装置において、金型を使用した一体成形の硬化過程においてコネクタブロックに反りやヒケが発生し難くする。
【解決手段】電子制御装置300は、電動モータ200を制御する電子部品が実装された回路基板320と、回路基板320と電気的に接続される複数のコネクタ330Bが一体成形された樹脂製のコネクタブロック330と、回路基板320を介在させた状態でコネクタブロック330を固定する電動モータ200の背面に形成された取付ボス200Bと、を有している。そして、コネクタブロック330は、複数のコネクタ330Bに加えて、コネクタ330B同士を接続するリブ330Dが一体成形されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを制御する電子部品が実装された回路基板と、
前記回路基板と電気的に接続される複数のコネクタ、及び前記コネクタ同士を接続するリブが一体成形された樹脂製のコネクタブロックと、
前記回路基板を介在させた状態で前記コネクタブロックを固定するベースと、
を有する電子制御装置。
【請求項2】
前記リブの高さ又は幅が、前記コネクタブロックにおいて前記コネクタが形成されていない部分の板厚と同一である、
請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記リブの高さ又は幅が、前記コネクタブロックにおいて前記コネクタが形成されている部分の板厚と前記コネクタが形成されていない部分の板厚との間にある、
請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記リブの高さ又は幅が、前記コネクタブロックにおいて前記コネクタが形成されている部分の板厚と前記コネクタが形成されていない部分の板厚とのうち、板厚がより薄い部分の板厚に近似している、
請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記リブが、前記コネクタ同士を直接的に接続する他のリブを介して、当該他のリブによって接続されたコネクタに対して間接的に接続可能である、
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のコネクタブロックを有する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置などに適用される電子制御装置は、特開2019-68543号公報(特許文献1)に記載されるように、複数のコネクタが一体成形された樹脂製のコネクタブロック(樹脂カバー)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-68543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製のコネクタブロックを金型で一体成形する硬化過程において、コネクタが形成されている部分とコネクタが形成されてない部分とで樹脂の板厚が異なることから、樹脂の収縮タイミングが異なって反りやヒケが発生してしまう可能性がある。そして、コネクタブロックに反りが発生すると、コネクタ端子や取付孔の位置精度が低下し、例えば、コネクタ端子と接続される回路基板のスルーホールとの位置合わせが困難になったり、コネクタブロックの取付孔とこれを取り付けるためのねじ穴との位置合わせが困難になったりしてしまう。このような理由から、コネクタブロックの取付作業性などが低下したり、ねじ締結後に残留応力が残ってクラックが発生したりするおそれがあった。また、コネクタブロックにヒケが発生すると、表面が凹んで品質が低下してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、金型を使用した一体成形の硬化過程において反りやヒケが発生し難くした、樹脂製のコネクタブロックを有する電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電子制御装置は、電動モータを制御する電子部品が実装された回路基板と、回路基板と電気的に接続される複数のコネクタが一体成形された樹脂製のコネクタブロックと、回路基板を介在させた状態でコネクタブロックを固定するベースと、を有している。そして、コネクタブロックは、複数のコネクタに加えて、コネクタ同士を接続するリブが一体成形されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂製のコネクタブロックを有する電子制御装置において、金型を使用した一体成形の硬化過程においてコネクタブロックに反りやヒケが発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子制御装置一体型のモータユニットの一例を示す分解斜視図である。
図2】カバー取付前のモータユニットの要部の一例を示す縦断面図である。
図3】カバー取付後のモータユニットの要部の一例を示す縦断面図である。
図4】コネクタブロックの一例を示す平面図である。
図5図4におけるA-A断面図である。
図6図4におけるB-B断面図である。
図7】本実施形態の作用及び効果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、本実施形態の適用対象の一例として挙げられる電動パワーステアリングシステムなどで使用される、電子制御装置一体型のモータユニット100の一例を示している。
【0010】
モータユニット100は、ブラシレスモータなどの電動モータ200と、電動モータ200に対して一体的に結合されて電動モータ200を制御する電子制御装置300と、を含んで構成されている。電子制御装置300は、電動モータ200を駆動するパワーモジュール310と、複数の電子部品が実装された回路基板320と、金型を使用して一体成形された樹脂製のコネクタブロック330と、アルミニウム合金製のカバー340と、通気フィルタ350と、を有している。
【0011】
電動モータ200の背面、即ち、図示しないステアリングギヤに連結される出力軸200Aが突出する端面とは反対側の端面には、電動モータ200のステータに電圧を印加して出力軸200Aを回転駆動させるパワーモジュール310が配置されている。また、電動モータ200の背面の所定箇所には、その底面から軸方向に向かって延びる、円柱形状の4つの取付ボス200Bが立設されている。そして、取付ボス200Bの先端部には、回路基板320を介在させた状態で、コネクタブロック330が4本のねじ360によって締結固定されている。
【0012】
なお、電動モータ200の背面に立設された取付ボス200Bは、4つに限らず、例えば、回路基板320及びコネクタブロック330の大きさに応じた任意の個数とすることができる。ここで、電動モータ200の背面に立設された4つの取付ボス200Bが、ベースの一例として挙げられる。
【0013】
回路基板320は、本実施形態では、複数の電子部品が実装された2枚のプリント基板320A及び320Bと、2枚のプリント基板320A及び320Bを電気的に接続するフレキシブルケーブル320Cと、を含んで構成されている。なお、回路基板320は、図示の構成に限らず、1枚のプリント基板からなる構成、又は3枚以上のプリント基板からなる構成などであってもよい。
【0014】
コネクタブロック330は、回路基板320に実装された複数の電子部品と電気的に接続される複数のコンタクタが埋め込まれた板形状の底板330Aと、底板330Aのコンタクタを取り囲むように底板330Aの板面から垂直方向に向かって延びる、筒状体形状をなす複数のコネクタ330Bと、を含んで構成されている。従って、コネクタブロック330のコネクタ330Bの接続部は、回路基板320の電子部品と電気的に接続されている。また、コネクタブロック330には、図示しないワイヤハーネスを介してコネクタ330Bのコンタクタに供給された電源を回路基板320へと供給するバスバーBB(図2図7参照)が埋め込まれている。
【0015】
ここで、図示のコネクタブロック330では、電動パワーステアリングシステムの冗長性を実現すべく、電源が供給される2つのコネクタ330Bと、制御信号などを授受する2つのコネクタ330Bと、が一体成形されている。しかしながら、コネクタブロック330としては、図示のような4つのコネクタ330Bが一体成形される構成に限らず、例えば、電動モータ200の駆動回路に応じた任意の個数のコネクタ330B、具体的には、少なくとも2つ以上の複数のコネクタ330Bが一体成形されている構成であってもよい。
【0016】
カバー340は、電動モータ200の背面に固定された回路基板320を収容可能なように、筒状体形状の周壁部340A、及び周壁部340Aの軸方向の一方の開口端を閉塞する底壁部340Bを有する、有底筒状体形状をなしている。カバー340の底壁部340Bには、コネクタブロック330の4つのコネクタ330Bが一体となって貫通可能な1つの開口部340Cが形成されている。従って、コネクタ330Bの接続部は、開口部340Cを介して外部に突出し、ここに図示しないワイヤハーネスが着脱可能に接続できるようになっている。また、カバー340の開口部340Cの内周端には、周壁部340Aの軸方向の他方に向かって、周壁部340Aの軸方向と平行に延びる筒状体形状の内端部340Dが一体的に接合されている。なお、周壁部340A、底壁部340B、開口部340C及び内端部340Dは、カバー340を製造するときに、例えば、プレスによって一体的に形成することができる。
【0017】
電動モータ200の背面の周縁部には、図2及び図3に示すように、カバー340の周壁部340Aの他方の開口端(外端部340E)が所定深さに亘って嵌合可能な周溝200Cが形成されている。また、コネクタブロック330の底板330Aにおいて、コネクタ330Bが立設する一面の周縁部には、図2及び図3に示すように、カバー340の内端部340Dが所定深さに亘って嵌合可能な周溝330Cが形成されている。
【0018】
従って、図3に示すように、電動モータ200の周溝200C、及びコネクタブロック330の周溝330Cにカバー340の外端部340E及び内端部340Dが夫々嵌合することで、カバー340の内部空間を密閉空間とすることができる。このとき、電動モータ200の周溝200C及びコネクタブロック330の周溝330Cに周知のシール材が塗布され、カバー340とのシール性能が確保されていることが望ましい。
【0019】
さらに、電動モータ200の背面であって、出力軸200Aの端部を臨む位置には、通気性を有するとともに防水性能及び防塵性能を発揮する通気フィルタ350が配置されている。従って、電動モータ200の背面に取り付けられたカバー340の内部空間は、通気フィルタ350及び電動モータ200の内部空間を介して外部空間と連通し、例えば、温度変化が生じても、カバー340の内部空間の圧力変動を抑制することができる。
【0020】
ここで、樹脂製のコネクタブロック330は、一般的に、金型を使用した射出成形で製造されている。射出成形では、合成樹脂などの材料を加熱して溶かして金型に射出した後、材料を冷却して硬化させることで、複雑な形状を含む多様な形状の製品を連続して安価に製造することができる。
【0021】
ところで、樹脂製のコネクタブロック330は、図2及び図3から明らかなように、底板330Aの板厚方向について、コネクタ330Bが形成されている部分とコネクタ330Bが形成されていない部分とで板厚が異なっている。このため、コネクタブロック330を射出成形する硬化(冷却)過程において、コネクタ330Bが形成されていない部分が先に硬化した後、コネクタ330Bが形成されている部分が硬化するという過程となり易い。この場合、先に硬化した部分(コネクタ330Bが形成されていない部分)に未硬化の部分(コネクタ330Bが形成されている部分)が引き寄せられるように変位し、反りやヒケが発生してしまう可能性がある。コネクタブロック330に反りやヒケが発生すると、上述したように、コネクタブロック330を取り付ける作業性やその品質などが低下してしまうおそれがある。
【0022】
そこで、本実施形態に係るコネクタブロック330では、図4図6に示すように、コネクタ330Bが突出している底板330Aの表面に、隣接するコネクタ330B同士を接続する複数のリブ330Dが一体成形されている。具体的には、図4図6に示すコネクタブロック330では、図4において左右に配置されている2つのコネクタ330B同士は、左右方向に延びる上下一対のリブ330Dによって接続されている。また、図4において最上位及び最下位に配置されている2つのコネクタ330B同士は、これらの間に配置されているコネクタ330Bを介して、上下方向に延びるリブ330D(2つに分割されている)によって接続されている。
【0023】
さらに、図4において最上位に配置されているコネクタ330Bは、左右に配置されているコネクタ330B同士を接続する上下一対のリブ330Dのうち、上位に位置しているリブ330Dの中間部に対して上下方向に延びるリブ330Dによって接続され、これによって、左右に配置された2つのコネクタ330Bと間接的に接続されている。要するに、リブ330Dは、コネクタ330B同士を直接的に接続する他のリブ330Dを介して、他のリブ330Dによって接続された複数のコネクタ330Bに対して間接的に接続されていてもよい。
【0024】
リブ330Dの高さ又は幅は、コネクタブロック330においてコネクタ330Bが形成されていない部分の板厚と同一、要するに、2つのコネクタ330Bの間に位置する底板330Aの板厚と同一とすることができる。
【0025】
かかるコネクタブロック330によれば、コネクタ330Bが形成されていない部分の板厚と同一の高さをリブ330Dが有しているため、金型を使用した射出成形の硬化過程において、コネクタ330Bが形成されていない部分及びリブ330Dが最初に硬化する。そして、これに続いてコネクタ330Bが形成されている部分が硬化するが、図7において白抜き矢印で示すように、先に硬化した2つのコネクタ330Bの間に位置する部分に引き寄せられようとしても、双方向矢印で示すように2つのコネクタ330B同士を接続するリブ330Dがこれを受け止めて変位が抑制される。このため、コネクタブロック330の反りやヒケが発生し難くなり、例えば、電動モータ200の背面に形成された取付ボス200Bへのコネクタブロック330の取付作業が困難になったり、コネクタブロック330の品質が低下したりすることを抑制することができる。
【0026】
また、コネクタブロック330の反りが抑制されることから、特に、回路基板320に対する端子の位置精度の低下が抑制され、端子の接続不良を低減することもできる。さらに、コネクタブロック330を電動モータ200の背面に取り付けるとき、コネクタブロック330の反りを矯正するような負荷がかからないため、コネクタブロック330に残留応力がほぼ発生せず、例えば、クラックなどの発生を抑制することができる。
【0027】
ここで、隣接する2つのコネクタ330Bを接続するリブ330Dの数は、例えば、コネクタブロック330のサイズ、コネクタ330Bの個数、コネクタブロック330の材質などを考慮して、実験やシミュレーションによって適宜決定することができる。従って、図4図6に示すコネクタブロック330のリブ330Dは、本実施形態を説明するための単なる一例であって、そこに開示された構成に限定されると解釈すべきではないことを理解されたい。
【0028】
リブ330Dの高さ又は幅は、コネクタブロック330においてコネクタ330Bが形成されている部分の板厚とコネクタ330Bが形成されていない部分の板厚との間、要するに、コネクタ330Bが形成されている部分の板厚~コネクタ330Bが形成されていない部分の板厚の間にあってもよい。この場合、リブ330Dの高さ又は幅は、コネクタブロック330においてコネクタ330Bが形成されている部分の板厚とコネクタ330Bが形成されていない部分の板厚とのうち、板厚がより薄い部分の板厚に近似、即ち、この板厚に近いことが望ましい。このようにすれば、2つのコネクタ330Bの間に位置する部分が硬化するとき、リブ330Dが早めに硬化して強度を確保できるので、コネクタブロック330の反りやヒケを効果的に抑制することができるようになる。
【0029】
なお、当業者であれば、上記実施形態の技術的思想について、その一部を省略したり、その一部を適宜組み合わせたり、その一部を周知技術に置換したりすることで、新たな実施形態を生み出せることを容易に理解できるであろう。
【0030】
その一例を挙げると、本実施形態に係る電子制御装置300は、電動モータ200の背面に限らず、例えば、自動車の車体の任意箇所に取り付けられていてもよい。この場合、自動車の車体が、ベースの一例として挙げられる。また、電動モータ200の駆動対象は、電動パワーステアリングシステムに限らず、自動車に搭載される各種のシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
100…モータユニット、200…電動モータ、200B…取付ボス(ベース)、300…電子制御装置、320…回路基板、330…コネクタブロック、330B…コネクタ、330D…リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7