(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075284
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】熱回収ボイラシステムの制御装置、熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F22B 37/38 20060101AFI20240527BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20240527BHJP
F22B 37/48 20060101ALI20240527BHJP
F22B 37/56 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F22B37/38 E
F23G5/46 A
F22B37/48 A
F22B37/56 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186624
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 照正
(72)【発明者】
【氏名】今田 潤司
(72)【発明者】
【氏名】串岡 清則
(72)【発明者】
【氏名】野間 彰
【テーマコード(参考)】
3K065
【Fターム(参考)】
3K065AA02
3K065AA05
3K065AA11
3K065AA16
3K065AA24
3K065AB01
3K065AC01
3K065AC07
3K065AC13
3K065AC17
3K065AC20
3K065BA02
3K065BA06
(57)【要約】
【課題】腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食を抑制することが可能な熱回収ボイラシステムの制御装置、熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示に係る制御装置は、超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得する取得部と、第1計測値と、第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブの減肉量と、プローブの付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定する推定部と、推定部の推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断する判断部と、判断部の判断結果に基づいて、減肉や付着灰に対する処理として、ガス温度を低下させる水噴射装置と、付着灰を除去する徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動制御する作動制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得する取得部と、
前記第1計測値と、前記第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブの減肉量と、プローブの付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定する推定部と、
前記推定部の推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて、付着灰に対する処理として、水噴射装置と、徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御する作動制御部と、を備える、
熱回収ボイラシステムの制御装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記推定部が推定したプローブの減肉量が、所定の値以上の場合に、プローブの減肉量が所定の値以上と推定されたプローブに対応する水噴射装置を作動させることを判断する、
請求項1に記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記推定部が、プローブの付着灰の溶融したことを推定した場合に、付着灰の溶融が発生したプローブに対応する徐煤装置を作動させることを判断する、
請求項1に記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記推定部が、複数のプローブにおいて、付着灰が溶融したことを推定した場合に、燃焼炉の運転温度を下げることを判断し、
前記判断部の判断結果に基づいて、燃焼炉の運転を制御する運転制御部と、をさらに備える、
請求項1に記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【請求項5】
前記判断部は、付着灰の溶融状況をオン、又はオフの応答により検知し、かつ、付着灰の溶融回数と付着灰の溶融時間の積分から溶融塩腐食リスク時間として評価し、評価結果を用いて、徐煤装置、又は水噴射装置の作動を判断する、
請求項1に記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【請求項6】
前記判断部は、伝熱管の減肉量、及び付着灰の溶融量の増加状況を検出し、検出結果に基づいて、熱回収設備全体の腐食進行度を推定し、腐食進行度に基づいて、徐煤装置、又は水噴射装置の作動を判断する、
請求項1に記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【請求項7】
超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得するステップと、
前記第1計測値と、前記第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブの減肉量と、プローブの付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定するステップと、
推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断するステップと、
判断結果に基づいて、付着灰に対する処理として、水噴射装置と、徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御するステップと、を含む、
熱回収ボイラシステムの制御方法。
【請求項8】
超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得するステップと、
前記第1計測値と、前記第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブの減肉量と、プローブの付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定するステップと、
推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断するステップと、
判断結果に基づいて、付着灰に対する処理として、水噴射装置と、徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱回収ボイラシステムの制御装置、熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却炉ボイラ、ソーダ回収ボイラ、石炭焚きボイラなどの焼却炉、及びボイラ炉の炉内、煙道においては、石炭や廃棄物などの燃料に塩素、重金属、硫黄、バナジウムなどが含まれており、ボイラ過熱器管などの金属材料の腐食が発生することがある。しかしながら、特にごみ焼却炉ボイラは、燃料性状のばらつきが大きいことから、あらかじめボイラ過熱器管等の寿命予測をすることは難しい。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、ボイラの金属部品の腐食を検知する腐食検知手段と、腐食検知手段からの情報に基づいてボイラの腐食環境を監視し、腐食環境が過酷になったことを検知する腐食環境監視手段と、ボイラの腐食環境が過酷になったときに、焼却炉の処理量、焼却炉への燃焼空気供給量、ボイラで発生する蒸気量および発熱量のうち少なくとも1つに基づいて腐食環境が過酷化した要因を推定し、腐食環境を緩和させるための方策を決定し、決定された方策に基づいて腐食環境を緩和させるように焼却炉の運転を制御する熱回収プラントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の熱回収プラントでは、燃焼炉の運転を制御することから、運転性能の低下(計画処理量の未達、熱回収効率の低下など)を招くという弊害があった。本開示は上記課題を鑑み、腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食を抑制することが可能な熱回収ボイラシステムの制御装置、熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る熱回収ボイラシステムは、超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得する取得部と、前記第1計測値と、前記第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブの減肉量と、プローブの付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定する推定部と、前記推定部の推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断する判断部と、前記判断部の判断結果に基づいて、減肉や付着灰に対する処理として、ガス温度を低下させる水噴射装置と、付着灰を除去する徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御する作動制御部と、を備える。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る熱回収ボイラシステムの制御方法は、超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得するステップと、前記1計測値と、前記第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブの減肉量と、プローブの付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定するステップと、推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断するステップと、判断結果に基づいて、減肉や付着灰に対する処理として、ガス温度を低下させる水噴射装置と、付着灰を除去する徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御するステップと、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得するステップと、前記1計測値と、前記第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブの減肉量と、プローブの付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定するステップと、推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断するステップと、判断結果に基づいて、減肉や付着灰に対する処理として、ガス温度を低下させる水噴射装置と、付着灰を除去する徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食抑制を行うことが可能な熱回収ボイラシステムの制御装置、熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示に係る熱回収ボイラシステムの構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示に係る制御装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る運転データ記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示に係る第1計測値の時系列変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示に係る第2計測値の時系列変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示に係るモデル記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示に係る熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムの第1態様のフローを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示に係る熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムの第2態様のフローを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本開示に係る熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムの第3態様のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0012】
(熱回収ボイラシステムの構成)
図1は、本開示に係る熱回収ボイラシステム10の構成例を示す模式図である。
図1に示すように、本開示に係る熱回収ボイラシステム10は、焼却炉200と、ボイラ炉300を備え、ボイラ炉300の内部に、高温腐食モニタリングプローブ310(310A,310B,310C)と、徐煤装置320(320A,320B,320C)と、熱交換器330(330A、330B、330C)と、水噴射装置340と、を備える。
【0013】
焼却炉200は、燃料供給装置202から燃料が供給され、炉内で燃料を燃焼させる。焼却炉200は、ごみ(廃棄物)、黒液、石炭、石油、バイオマス、アスファルトなどを燃料として燃焼させて、燃焼ガスGを生成する。なお、本実施形態では、対象物を償却する焼却炉としたが、燃料を燃焼する燃焼炉に適用できる。
図1の焼却炉は、ストーカ式焼却炉を模式的に示している。焼却炉200は、微粉炭焚き燃焼炉、油・ガス焚き燃焼炉、ストーカ式焼却炉、流動床式焼却炉、シャフト式ガス化溶融炉、流動床式ガス化溶融炉、キルン式ガス化溶融炉などにより実現されてよい。焼却炉200から燃焼ガスGが、ボイラ炉300の内部に供給され、熱交換器330の内部に流通する蒸気を過熱することにより燃焼ガスGから熱を回収する。
【0014】
ボイラ炉300は、各種の熱交換器330が配置され、焼却炉200にて生成された燃焼ガスGから熱を回収する。ボイラ炉300には、例えば、燃焼ガスGから水に熱を回収する蒸発器、過熱器、節炭器などの熱交換器330が配置される。ボイラ炉300に流入した燃焼ガスGがこれらの熱交換器330に接触することで、燃焼ガスGから熱交換器330を流れる熱輸送媒体に熱が伝達される。
【0015】
高温腐食モニタリングプローブ310(以下、「プローブ」と呼ぶ)は、薄型の超音波センサと、二電極センサを備え、プローブ310の減肉量、及び付着灰の溶融状態を検出する。
図1に示すように、プローブ310は、熱交換器330の燃焼ガスGの上流側に設けられる。プローブ310は、熱交換器330の伝熱管を模擬して製作される。そのため、プローブ310の減肉量、及び付着灰の溶融状態は、対応する熱交換器330の伝熱管の減肉量、及び付着灰の溶融状態と見做してよい。プローブ310の厚さ方向片側に設けられる薄型の超音波センサは、圧電素子を備え、圧電素子に高周波電圧を印加することにより、圧電素子を高周波振動させることで、超音波を発信させて、プローブ310の内部に超音波を伝達させ、プローブ310の圧電素子を備えた反対側の端部からの超音波の反射波を受信し、反射波を受信するまでの時間間隔に基づいて肉厚を算出する。プローブ310に設けられる二電極センサは、互いに電気的に非接続の電極の間に、付着した付着灰の溶融により導電性液体が生成されたときの電流値を計測することにより、付着灰の溶融を検出する。
【0016】
プローブ310の内部のような狭い場所には、通常の超音波センサは大き過ぎるため、設置が難しい場合がある。また、通常の超音波センサは耐熱性に問題がある。さらに、プローブ310を高温の燃焼ガスGに晒される腐食環境に設置する場合、長期間に亘る運転に耐えられるだけの耐久性を満たさないといった問題が生じる。一方で、本願に係る薄型の超音波センサであれば複数個所を容易に計測できる。また、二電極センサは、構造がシンプルで耐久性に優れ、多数電極のように付着を誘発しない。また、二電極センサは、付着灰の厚さが増大すると、付着灰と電極の接触面積が増えて抵抗が小さくなることで把握でき、シンプルな構造でも現象に関する多くの情報を取得できる可能性がある。
【0017】
徐煤装置320は、ボイラ炉300の熱交換器330の伝熱管に付着した煤や灰を除去する装置である。
図1に示すように、徐煤装置320は、熱交換器330の燃焼ガスGの上流側に設けられる。徐煤装置320は、例えば、ショックパルス式スーツブロアであってよい。ショックパルス式スーツブロアは、スーツブロアの内部に可燃性ガスを充てんしておき、可燃性ガスの爆発により衝撃波を発生させ、衝撃波により徐煤を行う。ショックパルス式スーツブロアを用いることにより、ボイラ炉300において発生された蒸気を徐煤に用いる必要をなくすことができることから、通常はボイラ炉300において発生された蒸気を用いた徐煤装置を用いる場合と比較して、蒸気ロスを減らすことができることから、熱回収ボイラシステム10の熱回収効率を上げることができる。
【0018】
熱交換器330は、燃焼ガスGから熱を熱輸送媒体に回収する。熱交換器330は、ボイラ炉300に複数設けられる。熱交換器330は、例えば、蒸発器、過熱器、節炭器などであってよい。これらは、水を熱輸送媒体として、熱交換器330を構成する伝熱管の内部を流れる水が伝熱管から燃焼ガスGの熱を熱伝導又は熱伝達により熱が伝えられることにより熱を回収する。
【0019】
水噴射装置340は、熱交換器330に対して、ガス流の上流側に設けられ、ボイラ炉300の内部に水を噴射して、ガスを冷却し、熱交換器330に燃焼ガスGが到達する際のガス温度を低下させる。水噴射装置340は、例えば、噴射ノズル、耐熱ホース、ポンプユニットにより構成されてよい。なお、
図1においては、水噴射装置340の噴射ノズルが焼却炉200の紙面の左右方向の側面から突出して設けられる例が示されているが、焼却炉200の紙面の手前方向の側面、及び紙面の奥方向の側面から突出して設けてもよい。また、焼却炉200の上面から耐熱ホースを吊り下げて、噴射ノズルが取り付けられ耐熱ホースに接続された噴射ユニットを焼却炉200の内部に設けて、焼却炉200の中心部から焼却炉200の側面側に向かって噴射ノズルから水を噴射してもよい。また、焼却炉200の側面を形成する壁面に噴射ノズルの噴射口が開口して設けられ、噴射ノズルが焼却炉200の内部に突出していない形態としてもよい。
【0020】
そして、
図1に示すようにプローブ310と、徐煤装置320と、水噴射装置340は、制御装置100に接続されている。制御装置100に接続されたこれらの機器は、制御装置100が発信する信号に基づいて作動する。以下、制御装置100について説明する。
【0021】
(制御装置の構成)
制御装置100は、熱回収ボイラシステム10を司り、熱回収ボイラシステム10を構成する各種の機器、装置を統率し、制御する。
図2を用いて制御装置100の構成について説明する。
図2は、本開示に係る制御装置の構成例を示す図である。制御装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、入力部140と、表示部150と、を備える。
【0022】
通信部110は、熱回収ボイラシステム10を構成する各種の機器、装置から情報を送受信する。通信部110は、例えば、各種の専用の有線回線、セキュリティ対策が施された無線通信により実現されてよい。
【0023】
記憶部120は、制御部130の処理に用いられるプログラムや、熱回収ボイラシステム10の運転データなどの各種の情報を記憶する記憶装置である。記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等のような半導体メモリ素子や、ハードディスクやSSD(Solid State Drive)、光ディスク等の組み合わせによって実現されてよい。
【0024】
記憶部120は、運転データ記憶部121と、モデル記憶部122と、を備える。運転データ記憶部121と、モデル記憶部122には、それぞれ異なる種類の情報が記憶される。以下、これらに記憶される情報の一例について説明する。
【0025】
運転データ記憶部121は、熱回収ボイラシステム10の運転に伴い生じる各種の計測値や、運転状況に関する情報を記憶する。ここで、
図3を用いて、運転データ記憶部121が記憶する情報の一例について説明する。
【0026】
図3は、本開示に係る運転データ記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
図3に示すように、運転データ記憶部121は、「計測日時」、「第1計測値」、「第2計測値」、「圧力値」、「温度値」という腐食に影響する各種環境条件や運転に関する項目に係る情報を紐付けて記憶する。
【0027】
「計測日時」は、各種の計測値を計測した日時を示す情報である。「第1計測値」は、薄型の超音波センサの計測値を示す情報である。「第2計測値」は、二電極センサの計測値を示す情報である。「圧力値」は、圧力計測器の計測値を示す情報である。「温度値」は、温度計測器の計測値を示す情報である。
【0028】
すなわち、
図3において、計測日時「TM#1」において計測された第1計測値「FMD#1」と、第2計測値「SMD#1」と、圧力値「PD#1」と、温度値「TD#1」が紐付けられて記憶されている。
【0029】
なお、運転データ記憶部121に記憶される情報は、「計測日時」、「第1計測値」、「第2計測値」、「圧力値」、「温度値」という項目に係る情報に限定されることなく、例えば、燃焼室温度や、過熱管(Superheater:SH)入口ガス温度、処理量、蒸発量などの熱回収ボイラシステム10の運転に関係するデータが記憶されてよい。さらに、これらの記憶データとともに、実際の過熱管の減肉量を定期的に計測したデータを関連付けて記憶してもよい。これにより、燃焼室温度やSH入口ガス温度が高ければ、そもそもの燃料としてのごみのカロリーが高いことが明確となる。さらに、腐食速度も早ければ、除媒や水噴霧の判断が行いやすくなる。
【0030】
ここで、第1計測値、及び第2計測値の時系列変化について、それぞれ
図4、
図5を用いて説明する。
図4は、本開示に係る薄型の超音波センサの計測値の時系列変化を示す図である。
図4の横軸は、熱回収ボイラシステム10の運転時間を、月の単位を用いて示している。
図4の縦軸は、第1計測値を用いて推定したプローブ310の肉厚の時系列変化を示している。
図4に示すように、運転時間の経過に伴い、プローブ310の肉厚が減少していく傾向があることが分かる。
【0031】
第2計測値の時系列変化について、
図5を用いて説明する。
図5は、本開示に係る二電極センサの計測値の時系列変化を示す図である。
図5の横軸は、熱回収ボイラシステム10の運転時間を、月の単位を用いて示している。
図5の縦軸は、第2計測値として、電極間電流を示している。
図5に示すように、二電極間に電流が計測された場合は、例えば、ごみ質変化によりガス温度が上昇し、それに伴いプローブ310の表面温度が上昇し、付着灰が加熱されて、付着灰が溶融したことが推定される。加えて、
図4に示したグラフに示されるプローブ肉厚の減少量が大きくなったタイミングと照合することで付着灰の溶融と減肉傾向の関係を推定することも可能となる。このように、二電極センサの計測値を用いることにより、焼却炉200に投入されたごみの性状変化や、付着灰の溶融状態を推定することが可能となる。例えば、プラスチックのような塩素含有が多いごみを燃焼させる場合、燃焼室温度が上昇し、付着量や溶融量が増大することにより、腐食速度が増大する。また、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)の含有が多いごみを燃焼させる場合、溶融量が増大し、腐食速度が増大し、それ以外の変化は少ない。また、プラスチックのようなカロリーの変動が大きい場合、燃焼室温度の変動が大きく、付着量が大きくなり、溶融量が変動し、腐食速度が大きくなる。また、水分が多いごみのようなカロリーの変動が大きい場合、燃焼室温度の変動が大きく、溶融量の変動が大きくなる。二電極センサの計測値を用いることにより、焼却炉200に投入された上記のようなごみの性状の変化を推定できる。
【0032】
なお、運転データ記憶部121は、「計測日時」、「第1計測値」、「第2計測値」、「圧力値」、「温度値」という項目に係る情報に限定されることなく、その他の任意の運転データに関係する情報が記憶されてよい。
【0033】
モデル記憶部122は、複数のモデルを記憶する。
図6は、本開示に係るモデル記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【0034】
図6に示す例において、モデル記憶部122は、「モデルID」、「モデルデータ」という項目に係る情報を紐付けて記憶する。
【0035】
「モデルID」は、機械学習モデルを識別する識別子であり文字列や番号などによって表される。「モデルデータ」は、機械学習モデルのモデルデータを示す。例えば、「モデルデータ」には、運転データを入力すると、各種の運転支援情報や腐食状態に関する情報などを出力するモデルの為のデータが記憶される。例えば、機械学習モデルは、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシーン、ソフトセンサなどであってよい。
【0036】
すなわち、
図4において、モデルID「M#1」で識別されるモデルは、機械学習モデルM#1を示す。また、モデルデータ「MDT#1」は、機械学習モデルM#1のモデルデータを示す。
【0037】
ここで、機械学習モデルがニューラルネットワークである場合は、モデルデータ「MDT#1」には、例えば、ニューラルネットワークを構成する複数の層のそれぞれに含まれるノードが互いにどのように結合するかという結合情報や、結合されたノード間で入出力される数値に掛け合わされる結合係数などの各種情報が含まれる。
【0038】
なお、モデル記憶部122は、「モデルID」、「モデルデータ」という項目に係る情報に限定されることなく、その他の任意の機械学習モデルに関係する情報が記憶されてよい。
【0039】
制御部130は、制御装置100を司り、制御するコントローラ(controller)である。制御部130は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部13に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0040】
制御部130は、取得部131と、推定部132と、判断部133と、作動制御部134と、運転制御部135と、を備える。制御部130は、記憶部120からプログラムを読み出して実行することで、これらを実現する。すなわち、これらはプログラムにより記述された処理の集合により実現される。制御部130は、プログラムの記述に沿って実行することにより、これらの処理を実行する。なお、制御部130は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、複数のCPUで、これらの処理を実行してもよい。
【0041】
取得部131は、薄型の超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得する。例えば、取得部131は、通信部110に接続された計測線を介して、薄型の超音波センサ、及び二電極センサからそれぞれ第1計測値、第2計測値を取得してよい。取得部131は、第1計測値と、第2計測値を取得したら、取得した第1計測値と、第2計測値を記憶部120の運転データ記憶部121に記憶する。
【0042】
推定部132は、第1計測値と、第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブ310の減肉状態と、プローブ310の腐食状態の少なくともいずれか一方を推定する。例えば、推定部132は、第1計測値に基づいて、プローブ310の減肉量を推定する。なお、ここで、プローブ310の減肉量とは、ダミー過熱器管であるプローブ310の減肉量のことを意味する。プローブ310は、過熱器管を模擬していることから、プローブ310の減肉量は、過熱器の減肉量に近似した値と考えられる。薄型の超音波センサの計測データを示す第1計測値は、プローブ310の肉厚を示している。したがって、プローブ310の肉厚の初期値から、第1計測値が示すプローブ310の肉厚を差し引くことにより、プローブ310の減肉量を推定することができる。また、推定部132は、第1計測値を蓄積したデータベースを機械学習したモデルを用いて、減肉量の予測値を推定してもよい。
【0043】
また、例えば、推定部132は、第2計測値に基づいて、プローブ310の腐食状態を推定する。二電極センサの計測データを示す第2計測値は、付着灰の溶融が発生した場合に、二電極の間に流れる電流値を示す。したがって、第2計測値が示す電流値の値が大きければ大きいほど、電気抵抗が低い溶融物質が生成されたことを示していると考えられる。また、第2計測値が示す電流値が流れる時間が長ければ長いほど、付着灰の溶融により生成された溶融物質の量が多く、二電極の間に継続的に電流が流れていることを示していると考えられる。推定部132は、このような推定に基づいて、第2計測値に基づいて、プローブ310の付着灰の溶融状態を推定する。また、推定部132は、第2計測値を蓄積したデータベースを機械学習したモデルを用いて、付着灰の溶融状態の予測を推定してもよい。加えて、推定部132は、前述したプローブの減肉量と付着灰の溶融の相関関係を学習させることで、減肉量の予測値を推定してもよい。
【0044】
判断部133は、推定部132の推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動指令を判断する。つまり、判断部133は、水噴射装置340と、徐煤装置320と、焼却炉200のうちの少なくとも一つの作動指令を判断する。すなわち、判断部133は、推定部132が推定した減肉量と、腐食状態とに基づいて、水噴射装置340と、徐煤装置320と、焼却炉200のうちの少なくとも一つを作動させるか否かや、作動状態を遷移させることを含む作動指令を判断する。つまり、作動指令とは、これらの装置、機器に対する作動指示を示す指令信号である。
【0045】
例えば、判断部133は、推定部132が推定した減肉量が所定の値以上であるか、もしくは溶融物質が比較的長い時間溶融状態にあるか否かを判定し、減肉量が所定の値以上であった場合は、水噴射装置340を作動させることを判断する。ここで、所定の値とは、水噴射装置340の作動の判断基準となる予め決められた設定値である。例えば、所定の値は、熱回収ボイラシステム10の運転実績により蓄積されたデータに基づいて統計的に任意に設定した値であってよい。または、所定の値は、熱回収ボイラシステム10の運転作業員の長年の経験により構築された経験則に基づいて任意に設定した値であってもよい。また、所定の値は、プローブ310ごとに異なる値を設定されてもよい。なお、水噴射によりボイラの目標回収熱量を満足できなくなる可能性があることから、その場合には、処理量を増大して運転温度を上げた状態を作って、回収熱量の調整をしてよい。
【0046】
また、判断部133は、推定部132が推定した付着灰の溶融が発生したことを示す、もしくは通常状態よりも減肉速度の進行が速い場合に、徐煤装置320を作動させることを判断する。例えば、判断部133は、推定部132が第2計測値に基づいて、プローブ310の付着灰の溶融が発生したことを推定した場合に、付着灰の溶融が発生したと推定されたプローブ310に対応する徐煤装置320を作動させることを判断する。
【0047】
また、判断部133は、推定部132が複数のプローブ310において付着灰の溶融が発生したと推定した場合に、焼却炉200の温度を運用に問題ない範囲で下げること、又は水噴射装置340による水噴射によりガス温度を下げることを判断する。ここで、複数のプローブ310の数としては、類似の形態の熱回収ボイラシステム10の過去の運転実績に基づいて、任意の数を設定してよい。例えば、熱回収ボイラシステム10のボイラ炉300に熱交換器330が3つ備え付けられ、それぞれに対応して1つのプローブ310が備え付けられ、合計3つのプローブ310が備え付けられている形態であれば、半数以上、すなわち、2つ以上のプローブ310において付着灰の溶融が推定された場合に、焼却炉200の温度を運用に問題ない範囲で下げること、又は水噴射装置340による水噴射によりガス温度を下げることを判断してよい。
【0048】
また、判断部133は、付着灰の溶融状況をオン又はオフの応答により検知することに加え、付着灰の溶融回数と付着灰の溶融時間の積分から溶融塩腐食リスク時間として評価し、評価結果を用いて、徐煤装置320、又は水噴射装置340の作動を判断してもよい。すなわち、このパラメータ自体で評価してもよいし、ほかのパラメータと組合せて評価してもよい。例えば、プローブ310の減肉量と、溶融塩腐食リスク時間との相関で評価してもよい。また、伝熱管実機の肉厚計測結果(定期検査)と溶融塩腐食リスク時間との相関で評価してもよい。
【0049】
また、判断部133は、伝熱管の減肉量、及び付着灰の溶融量の増加状況を検出(モニタリング)して、検出結果に基づいて熱回収設備全体の腐食進行度を推定し、腐食進行度に基づいて、作動を判断してもよい。次のステップにより、徐煤装置320、水噴射装置340の作動を判断してもよい。すなわち、プローブ310の超音波センサ、及び二電極センサにて、伝熱管の減肉量、及び付着灰の溶融量の増加状況をモニタリングして、熱回収設備全体の腐食進行度を推定する。そして、腐食進行度が大きい場合は、熱回収設備の上流側に水噴霧することにより、腐食温度環境を軽減する。噴霧水は、プラント内排水の使用が好ましい。なお、腐食進行度は、同一プローブまたは異なるプローブのうち、複数センサの検知結果を考え合わせて判断されてもよい。なお、プローブ310により取得されたデータだけでなく、ボイラの運用条件(燃料性状、空気比、蒸発量など)や伝熱管実機の肉厚計測結果(定検結果)も加味してもよい。これらにより、腐食速度と運用条件の関係に基づく腐食速度分布やその要因も推定できる。あるいは、炉内伝熱管の腐食速度分布の推定結果の評価と更新までも可能となる。
【0050】
作動制御部134は、判断部133の判断結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動を制御する。つまり、作動制御部134は、水噴射装置340と、徐煤装置320のうちの少なくとも一つを作動制御する。例えば、判断部133が、減肉量が所定の値以上であることに基づいて、水噴射装置340を作動させることを判断した場合、作動制御部134は、水噴射装置340を作動させる制御を行う。これにより、腐食温度環境を軽減させることが可能となる。
【0051】
また、作動制御部134は、判断部133が付着灰の溶融が発生したと推定したことに基づいて、これに対応する徐煤装置320を作動させることを判断した場合に、当該の徐煤装置320を作動させる制御を行う。プローブ310は、複数設けられていることから、付着灰の溶融が発生したプローブ310に対応する徐煤装置320を作動させることにより、付着灰の溶融が発生したと推定される熱交換器330の伝熱管に付着した付着灰の除去を行うことが可能となる。
【0052】
運転制御部135は、判断部133の判断結果に基づいて、焼却炉200の運転を制御する。運転制御部135は、判断部133が複数のプローブ310において付着灰の溶融が発生したと推定したことに基づいて、焼却炉200の温度を運用に問題ない範囲で下げること、又は水噴射装置340による水噴射によりガス温度を下げることを判断した場合に、焼却炉200の運転温度を下げる制御を行う。例えば、焼却炉200がストーカ式焼却炉である場合は、送風機からの送風量を減少させることや、焼却炉200に投入するごみの量を減少させる制御を行う。
【0053】
入力部140は、運転作業員から熱回収ボイラシステム10の操作を受け付ける。入力部140は、マウスやキーボードなどの各種の入力装置により実現されてよい。また、入力部140は、複数のスイッチを組み合わせた専用の操作盤により実現されてもよい。入力部140に運転作業員から入力された操作にしたがって熱回収ボイラシステム10は作動する。
【0054】
表示部150は、熱回収ボイラシステム10の操作情報や運転状況などの各種の情報を表示する表示装置である。表示部150は、制御部130から表示する情報を受け取り、受け取った情報に基づいて各種の情報を表示する。これにより、熱回収ボイラシステム10の運転作業員は、運転状況を把握して、運転状況に応じた各種の機器の操作の決断や判断を行うことが可能となる。表示部150は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等の表示装置によって実現されてよい。なお、表示部150は、運転作業員が多くの情報を瞬時に把握することを可能とすることを目的として、複数の表示装置を組み合わせて実現されてよい。
【0055】
(熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムの構成)
次に、本開示に係る熱回収ボイラシステム10の制御方法、及びプログラムについて
図7から
図9を用いて説明する。
【0056】
(第1態様)
図7は、本開示に係る熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムの第1態様のフローを示すフローチャートである。
図7を用いて第1態様の熱回収ボイラシステム10の制御方法について説明する。
【0057】
まず、制御装置100は、薄型の超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を含む計測データを取得する(ステップS1)。次に、制御装置100は、第1計測値、及び第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブ310の減肉量と、プローブ310の付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定する(ステップS2)。次に、制御装置100は、減肉量が所定の値以上であるか否かを判定する(ステップS3)。次に、制御装置100は、減肉量が所定の値以上である場合(ステップS3:Yes)、水噴射装置340を作動させる制御を行う(ステップS4)。なお、減肉量が所定の値以上ではない場合(ステップS3:No)、制御装置100は、処理を終了する。これらの処理を制御装置100が備えるコンピュータに実行させるプログラムに記述して、プログラムによりコンピュータに実行させてもよい。
【0058】
これにより、減肉量と付着灰の溶融に応じて、徐煤装置320の作動を制御することが可能となる。そのため、プローブ310のモニタリングに応じて、適切に徐煤装置320の作動を実行することが可能となる。
【0059】
(第2態様)
図8は、本開示に係る熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムの第2態様のフローを示すフローチャートである。
図8を用いて第2態様の熱回収ボイラシステム10の制御方法について説明する。
【0060】
第2態様の熱回収ボイラシステム10の制御方法は、ステップS10からステップS20までを、第1態様に係る熱回収ボイラシステム10の制御方法のステップS1からステップS2までと同じ処理を実行する。次に、制御装置100は、付着灰の溶融が発生したか否かを判定する(ステップS30)。付着灰の溶融が発生したと判定した場合(ステップS30:Yes)、制御装置100は、徐煤装置320を作動させる(ステップS40)。付着灰の溶融が発生していないと判定した場合(ステップS30:No)、制御装置100は処理を終了する。これらの処理を制御装置100が備えるコンピュータに実行させるプログラムに記述して、プログラムによりコンピュータに実行させてもよい。
【0061】
これにより、付着灰が溶融した場合に、徐煤装置320を作動させることが可能となる。そのため、プローブ310のモニタリングに応じて、適切に徐煤装置320の作動を実行することが可能となる。
【0062】
(第3態様)
図9は、本開示に係る熱回収ボイラシステムの制御方法、及びプログラムの第3態様のフローを示すフローチャートである。
図9を用いて第3態様の熱回収ボイラシステム10の制御方法について説明する。
【0063】
第3態様の熱回収ボイラシステム10の制御方法は、ステップS100からステップS200までを、第1態様に係る熱回収ボイラシステム10の制御方法のステップS1からステップS2までと同じ処理を実行する。次に、制御装置100は、複数の箇所においてプローブ310の減肉量が所定の値以上であるか否かを判定する(ステップS300)。複数のプローブ310の減肉量が所定の値以上である場合(ステップS300:Yes)、制御装置100は、運転温度を下げる制御を行う(ステップS400)。複数のプローブ310の減肉量が所定の値以上ではない場合(ステップS300:No)、制御装置100は、処理を終了する。これらの処理を制御装置100が備えるコンピュータに実行させるプログラムに記述して、プログラムによりコンピュータに実行させてもよい。
【0064】
これにより、複数のプローブ310において付着灰の溶融が発生した場合に、運転温度を減少せる運転を行うことができる。そのため、高温環境に晒されることによる高温腐食のリスクを減少させることが可能となる。
【0065】
(構成と効果)
本開示は、以下の発明を開示している。なお、下記に限定されない。
(1)超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得する取得部131と、第1計測値と、第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブ310の減肉量と、プローブ310の付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定する推定部132と、推定部132の推定結果に基づいて、付着灰に対する処理として、水噴射装置と、徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動指令を判断する判断部133と、判断部133の判断結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動を制御する作動制御部134と、を備える熱回収ボイラシステムの制御装置。
【0066】
この構成によれば、腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食を抑制することが可能な制御装置を提供することができる。この構成によれば、水噴射装置340と、徐煤装置320と、燃焼炉のいずれかを制御することで、付着灰の低減処理、除去処理を適切に実行できる。
【0067】
(2)判断部133は、推定部132が推定したプローブ310の減肉量が、所定の値以上の場合に、プローブ310の減肉量が所定の値以上と推定されたプローブ310に対応する水噴射装置340を作動させることを判断する(1)に記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【0068】
この構成によれば、プローブ310の減肉が進んでいる場合に、水噴射装置340を作動させることで、腐食温度環境を軽減することができる。
【0069】
(3)判断部133は、推定部132が、プローブ310の付着灰の溶融したことを推定した場合に、付着灰の溶融が発生したプローブ310に対応する徐煤装置320を作動させることを判断する(1)または(2)に記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【0070】
この構成によれば、付着灰の溶融が推定された場合に、付着灰の溶融が発生したプローブ310に対応する徐煤装置320を作動させて、付着灰を除去することが可能となる。そのため、腐食を抑制することが可能な熱回収ボイラシステム10の制御装置100を提供することができる。
【0071】
(4)判断部133は、推定部132が、複数のプローブにおいて、付着灰が溶融したことを推定した場合に、燃焼炉の運転温度を下げることを判断し、判断部133の判断結果に基づいて、燃焼炉の運転を制御する運転制御部135と、をさらに備える(1)から(3)のいずれかに記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【0072】
この構成によれば、複数のプローブ310において付着灰の溶融が発生した場合に、燃焼炉の運転温度を下げる運転を行うことができる。そのため、腐食を抑制することが可能な熱回収ボイラシステム10の制御装置100を提供することができる。
【0073】
(5)判断部133は、付着灰の溶融状況をオン、又はオフの応答により検知し、かつ、付着灰の溶融回数と付着灰の溶融時間の積分から溶融塩腐食リスク時間として評価して、その評価結果を用いて、徐煤装置320、又は水噴射装置340の作動を判断する、(1)から(4)のいずれかに記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【0074】
この構成によれば、腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食を抑制することが可能な熱回収ボイラシステム10を提供することができる。
【0075】
(6)判断部133は、伝熱管の減肉量、及び付着灰の溶融量の増加状況を検出し、検出結果に基づいて、熱回収設備全体の腐食進行度を推定し、腐食進行度に基づいて、徐煤装置、又は水噴射装置の作動を判断する、(1)から(5)のいずれかに記載の熱回収ボイラシステムの制御装置。
【0076】
この構成によれば、腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食を抑制することが可能な熱回収ボイラシステム10を提供することができる。
【0077】
(7)超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得するステップと、第1計測値と、第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブ310の減肉量と、プローブ310の付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定するステップと、推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動を判断するステップと、判断結果に基づいて、付着灰に対する処理として、水噴射装置と、徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御するステップと、を含む熱回収ボイラシステムの制御方法。
【0078】
この構成によれば、腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食を抑制することが可能な熱回収ボイラシステム10の制御方法を提供することができる。
【0079】
(8)超音波センサの計測データを示す第1計測値、及び二電極センサの計測データを示す第2計測値を取得するステップと、第1計測値と、第2計測値の少なくともいずれか一方に基づいて、プローブ310の減肉量と、プローブ310の付着灰の溶融の少なくともいずれか一方を推定するステップと、推定結果に基づいて、付着灰に対する処理の作動を判断するステップと、判断結果に基づいて、付着灰に対する処理して、水噴射装置と、徐煤装置のうちの少なくとも一つの作動を制御するステップと、をコンピュータに実行させる熱回収ボイラシステムのプログラム。
【0080】
この構成によれば、腐食状態をリアルタイムにモニタリングして腐食を抑制することが可能なプログラムを提供することができる。
【0081】
以上、本開示に係る実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
10 熱回収ボイラシステム
100 制御装置
110 通信部
120 記憶部
121 運転データ記憶部
122 モデル記憶部
130 制御部
131 取得部
132 推定部
133 判断部
134 作動制御部
135 運転制御部
140 入力部
150 表示部
200 焼却炉
300 ボイラ炉
310 高温腐食モニタリングプローブ(プローブ)
320 徐煤装置
330 熱交換器