(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075287
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】金属搬送機構
(51)【国際特許分類】
B22D 17/00 20060101AFI20240527BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240527BHJP
B22D 17/30 20060101ALI20240527BHJP
B22D 35/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B22D17/00 316
B25J15/08 D
B22D17/30 Z
B22D35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186629
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 清岳
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES17
3C707ET03
3C707EV05
(57)【要約】
【課題】半凝固スラリーを安定して搬送できる金属搬送機構を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、溶融金属を冷却して半凝固スラリーを生成する容器と、容器を搬送する搬送治具と、を備える金属搬送機構である。容器は、溶融金属が投入される容器本体と、容器本体の外面に取り付けられた少なくとも1つの受容部と、を有する。少なくとも1つの受容部は、平面視で、容器本体の外側に向かって延伸する複数の延伸部を有する。搬送治具は、複数の延伸部をチャックするように構成された把持ユニットを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を冷却して半凝固スラリーを生成する容器と、
前記容器を搬送する搬送治具と、
を備え、
前記容器は、
前記溶融金属が投入される容器本体と、
前記容器本体の外面に取り付けられた少なくとも1つの受容部と、
を有し、
前記少なくとも1つの受容部は、平面視で、前記容器本体の外側に向かって延伸する複数の延伸部を有し、
前記搬送治具は、前記複数の延伸部をチャックするように構成された把持ユニットを有する、金属搬送機構。
【請求項2】
請求項1に記載の金属搬送機構であって、
前記容器は、前記少なくとも1つの受容部として、第1受容部及び第2受容部を有し、
前記第1受容部は、前記複数の延伸部として、平面視で、前記容器本体の外側に向かって互いに異なる方向に延伸する第1延伸部及び第2延伸部を有し、
前記第2受容部は、前記複数の延伸部として、平面視で、前記容器本体の外側に向かって互いに異なる方向に延伸する第3延伸部及び第4延伸部を有し、
前記把持ユニットは、
前記第1延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第1チャック部と、
前記第2延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第2チャック部と、
前記第3延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第3チャック部と、
前記第4延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第4チャック部と、
を有する、金属搬送機構。
【請求項3】
請求項2に記載の金属搬送機構であって、
前記容器本体は、平面視で、第1方向に沿った長さと、前記第1方向と直交する第2方向に沿った長さとが異なる扁平形状であり、
前記第1受容部は、前記容器本体の前記第1方向における第1端部に取り付けられ、
前記第2受容部は、前記容器本体の前記第1方向における前記第1端部とは反対の第2端部に取り付けられる、金属搬送機構。
【請求項4】
請求項1に記載の金属搬送機構であって、
前記搬送治具は、前記把持ユニットが前記容器を把持した状態で、前記容器本体の開口を覆うように構成された蓋ユニットを有する、金属搬送機構。
【請求項5】
請求項4に記載の金属搬送機構であって、
前記容器本体は、平面視で、第1方向に沿った長さと、前記第1方向と直交する第2方向に沿った長さとが異なる扁平形状であり、
前記蓋ユニットは、前記容器本体の前記開口を覆う閉位置と、前記開口を覆わない開位置とに移動するように構成された第1戸部及び第2戸部を有し、
前記第1戸部及び前記第2戸部は、前記閉位置において、前記容器本体の前記第1方向と平行な中心軸を含む仮想面で突き合わされる、金属搬送機構。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の金属搬送機構であって、
前記蓋ユニットは、前記容器本体の前記開口を上方から覆った部分が前記容器本体に向かって移動するように構成される、金属搬送機構。
【請求項7】
請求項4又は請求項5に記載の金属搬送機構であって、
前記少なくとも1つの受容部は、前記容器本体の前記外面のうち、前記溶融金属の液面が到達する位置よりも上方の領域に取り付けられる、金属搬送機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
軽金属の溶湯を容器に投入し、冷却により半凝固スラリーを生成する機構が知られている(特許文献1参照)。この機構では、多関節ロボットによって金属が投入された容器を把持することで、金属が搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の機構では、把持された状態の容器のバランスが悪いため、搬送時に容器から半凝固スラリーがこぼれるおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、半凝固スラリーを安定して搬送できる金属搬送機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、溶融金属を冷却して半凝固スラリーを生成する容器と、容器を搬送する搬送治具と、を備える金属搬送機構である。容器は、溶融金属が投入される容器本体と、容器本体の外面に取り付けられた少なくとも1つの受容部と、を有する。少なくとも1つの受容部は、平面視で、容器本体の外側に向かって延伸する複数の延伸部を有する。搬送治具は、複数の延伸部をチャックするように構成された把持ユニットを有する。
【0007】
このような構成によれば、容器に設けられた複数の延伸部が把持ユニットによってチャックされるため、半凝固スラリーの入った容器を安定して搬送することができる。また、容器本体に把持ユニットが直接触れないため、半凝固スラリーの放熱低下による温度の偏りを抑制できる。
【0008】
さらに、受容部の形状を維持したまま容器本体の形状を変えることができるため、容器本体の形状が異なる複数の容器に対し、1つの把持ユニットを共通して使用することができる。
【0009】
本開示の一態様では、容器は、少なくとも1つの受容部として、第1受容部及び第2受容部を有してもよい。第1受容部は、複数の延伸部として、平面視で、容器本体の外側に向かって互いに異なる方向に延伸する第1延伸部及び第2延伸部を有してもよい。第2受容部は、複数の延伸部として、平面視で、容器本体の外側に向かって互いに異なる方向に延伸する第3延伸部及び第4延伸部を有してもよい。把持ユニットは、第1延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第1チャック部と、第2延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第2チャック部と、第3延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第3チャック部と、第4延伸部が挿入されるように構成された孔を有する第4チャック部と、を有してもよい。このような構成によれば、容器搬送時の安定性を高めることができる。
【0010】
本開示の一態様では、容器本体は、平面視で、第1方向に沿った長さと、第1方向と直交する第2方向に沿った長さとが異なる扁平形状であってもよい。第1受容部は、容器本体の第1方向における第1端部に取り付けられてもよい。第2受容部は、容器本体の第1方向における第1端部とは反対の第2端部に取り付けられてもよい。このような構成によれば、扁平形状の容器本体を有する容器に対し、搬送時の安定性を高めることができる。
【0011】
本開示の一態様では、搬送治具は、把持ユニットが容器を把持した状態で、容器本体の開口を覆うように構成された蓋ユニットを有してもよい。このような構成によれば、容器の搬送時に半凝固スラリーが容器本体からこぼれることを抑制できる。
【0012】
本開示の一態様では、容器本体は、平面視で、第1方向に沿った長さと、第1方向と直交する第2方向に沿った長さとが異なる扁平形状であってもよい。蓋ユニットは、容器本体の開口を覆う閉位置と、開口を覆わない開位置とに移動するように構成された第1戸部及び第2戸部を有してもよい。第1戸部及び第2戸部は、閉位置において、容器本体の第1方向と平行な中心軸を含む仮想面で突き合わされてもよい。このような構成によれば、蓋ユニットを迅速に閉じることができる。そのため、容器の搬送工程の処理速度を高めることができる。
【0013】
本開示の一態様では、蓋ユニットは、容器本体の開口を上方から覆った部分が容器本体に向かって移動するように構成されてもよい。このような構成によれば、蓋ユニットで容器本体を覆う際に蓋ユニットと容器本体とが干渉することを避けつつ、容器本体を蓋ユニットで密閉することができる。
【0014】
本開示の一態様では、少なくとも1つの受容部は、容器本体の外面のうち、溶融金属の液面が到達する位置よりも上方の領域に取り付けられてもよい。このような構成によれば、把持ユニットによる溶融金属の冷却への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aは、実施形態における金属搬送機構の容器の模式的な平面図であり、
図1Bは、
図1Aの容器の模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態における金属搬送機構の搬送治具の模式的な斜視図である。
【
図3】
図3Aは、
図2の搬送治具における把持ユニットの模式的な斜視図であり、
図3Bは、
図3Aの把持ユニットにおけるチャック部の模式的な分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3Aの把持ユニットが容器を把持した状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図2の搬送治具における蓋ユニットの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
本実施形態の金属搬送機構は、
図1A及び
図1Bに示す容器10と、
図2に示す搬送治具20とを備える。
【0017】
<容器>
図1A及び
図1Bに示す容器10は、溶融金属(つまり溶湯)を冷却して半凝固スラリーを生成する。
【0018】
容器10に投入される金属としては、例えば、アルミニウム等の軽金属が挙げられる。容器10で生成された半凝固スラリーは、容器10から鋳造機又は鍛造機に供給される。容器10は、容器本体11と、第1受容部12と、第2受容部13とを有する。
【0019】
<容器本体>
容器本体11は、溶融金属が投入される金属製のカップである。容器本体11は、有底の筒体である。
【0020】
容器本体11は、平面視で、X軸に沿った長さと、X軸と直交するY軸に沿った長さとが異なる扁平形状である。つまり、容器本体11の底面は、X軸と平行な長軸P1と、長軸P1に直交する短軸P2とを有する扁平形状を有する。
【0021】
本実施形態の容器本体11は、X軸と平行な方向における第1端部111のY軸に沿った幅が、X軸と平行な方向における第1端部111とは反対側の第2端部112のY軸に沿った幅よりも小さい。また、短軸P2は、第1端部111よりも第2端部112の近くに位置する。容器10は、長軸P1を含む仮想面を対称面とする面対称形状である。
【0022】
<第1受容部>
第1受容部12は、容器本体11の外面に取り付けられている。具体的には、第1受容部12は、第1端部111に取り付けられている。
【0023】
また、第1受容部12は、容器本体11の外面のうち、溶融金属の液面Lが到達する位置よりも上方の領域に取り付けられている。第1受容部12は、第1延伸部121と、第2延伸部122とを有する。
【0024】
第1延伸部121及び第2延伸部122は、平面視で、容器本体11の外側に向かって互いに異なる方向に延伸している。具体的には、第1延伸部121は、容器本体11の第1端部111の外面から、Y軸と平行な方向に延伸した板状の部位である。第2延伸部122は、第1端部111の外面から、Y軸と平行、かつ第1延伸部121とは反対方向に延伸した板状の部位である。
【0025】
第1延伸部121と第2延伸部122とは、Y軸と平行な方向において重なっている。第1延伸部121のY軸に沿った長さと、第2延伸部122のY軸に沿った長さとは等しい。
【0026】
<第2受容部>
第2受容部13は、容器本体11の外面に取り付けられている。具体的には、第2受容部13は、第1端部111とは反対の第2端部112に取り付けられている。
【0027】
また、第2受容部13は、容器本体11の外面のうち、溶融金属の液面Lが到達する位置よりも上方の領域に取り付けられている。第2受容部13は、第3延伸部131と、第4延伸部132とを有する。
【0028】
第3延伸部131及び第4延伸部132は、平面視で、容器本体11の外側に向かって互いに異なる方向に延伸している。具体的には、第3延伸部131は、容器本体11の第2端部112の外面から、Y軸と平行な方向に延伸した板状の部位である。第4延伸部132は、第2端部112の外面から、Y軸と平行、かつ第4延伸部132とは反対方向に延伸した板状の部位である。
【0029】
第3延伸部131と第4延伸部132とは、Y軸と平行な方向において重なっている。第3延伸部131のY軸に沿った長さと、第4延伸部132のY軸に沿った長さとは等しい。
【0030】
第1延伸部121の先端の長軸P1からの距離と、第2延伸部122の先端の長軸P1からの距離と、第3延伸部131の先端の長軸P1からの距離と、第4延伸部132の先端の長軸P1からの距離とは等しい。
【0031】
第1延伸部121、第2延伸部122、第3延伸部131及び第4延伸部132は、溶融金属の液面Lが到達する位置よりも上方に設けられている。また、第1延伸部121、第2延伸部122、第3延伸部131及び第4延伸部132それぞれの高さ(つまりZ軸における位置)は、同じである。
【0032】
<搬送治具>
図2に示す搬送治具20は、容器10を搬送する装置である。搬送治具20は、把持ユニット21と、蓋ユニット22とを有する。把持ユニット21と蓋ユニット22とは、例えば、互いに連結されてロボットのアームに取り付けられる。
【0033】
<把持ユニット>
把持ユニット21は、容器10の第1受容部12及び第2受容部13を把持する(つまり、複数の延伸部121,122,131,132をチャックする)ように構成されている。
【0034】
図3Aに示すように、把持ユニット21は、第1ベース211と、第1アーム212と、第2アーム213と、第1チャック部214と、第2チャック部215と、第3チャック部216と、第4チャック部217とを有する。
【0035】
第1ベース211は、第1アーム212及び第2アーム213を保持している。第1アーム212及び第2アーム213は、それぞれ、第1ベース211に対し揺動可能に取り付けられている。第1アーム212及び第2アーム213は、容器10をY軸に沿った方向に挟むように配置されている。
【0036】
第1チャック部214は、第1アーム212の先端部に取り付けられている。第1チャック部214は、容器10の第1延伸部121の先端部が挿入されるように構成された孔を有する。
【0037】
図3Bに示すように、第1チャック部214は、下型214Aと、上型214Bとを有する。下型214Aは、第1アーム212に固定されている。下型214Aは、第1チャック部214の外側に向かって下方に傾斜した第1テーパ部214Cを有する。
【0038】
上型214Bは、下型214Aに上方から重ね合わされ、例えばボルト等によって下型214Aに固定されている。上型214Bは、第2テーパ部214Dと、凹部214Eとを有する。
【0039】
第2テーパ部214Dは、第1チャック部214の外側に向かって上方に傾斜している。第2テーパ部214Dは、下型214Aの第1テーパ部214Cと対向し、第1延伸部121を第1チャック部214の内部に誘導する。凹部214Eは、下型214Aと重ね合わされることで、第1延伸部121が挿入される孔を構成している。
【0040】
第1チャック部214が第1延伸部121に向かって移動することで、第1延伸部121が第1テーパ部214Cと第2テーパ部214Dとの間を通過して凹部214E内に進入する。
【0041】
第2チャック部215は、第1チャック部214と対向するように、第2アーム213の先端部に取り付けられている。第2チャック部215は、容器10の第2延伸部122の先端部が挿入されるように構成された孔を有する。第2チャック部215の構造は、第1チャック部214と同じである。
【0042】
第3チャック部216は、第1チャック部214よりも第1ベース211に近い位置において第1アーム212に取り付けられている。第3チャック部216は、容器10の第3延伸部131の先端部が挿入されるように構成された孔を有する。第3チャック部216の構造は、第1チャック部214と同じである。
【0043】
第4チャック部217は、第3チャック部216と対向するように、第2チャック部215よりも第1ベース211に近い位置において第2アーム213に取り付けられている。第4チャック部217は、容器10の第4延伸部132の先端部が挿入されるように構成された孔を有する。第4チャック部217の構造は、第1チャック部214と同じである。
【0044】
図4に示すように、第1アーム212及び第2アーム213は、それぞれ第1ベース211に設けられた軸を中心として、一点鎖線で示す待機位置と、実線で示す把持位置との間でそれぞれ揺動する。
【0045】
第1アーム212及び第2アーム213が待機位置にあるとき、第1チャック部214、第2チャック部215、第3チャック部216及び第4チャック部217は、容器10の第1受容部12及び第2受容部13から離れている。
【0046】
図5に示すように、第1アーム212及び第2アーム213が把持位置にあるとき、第1チャック部214、第2チャック部215、第3チャック部216及び第4チャック部217には、それぞれ容器10の第1延伸部121、第2延伸部122、第3延伸部131及び第4延伸部132のいずれかが、Y軸と平行な方向に挿入される。
【0047】
<蓋ユニット>
図6に示す蓋ユニット22は、把持ユニット21が容器10を把持した状態で、容器本体11の開口を覆うように構成されている。蓋ユニット22は、第2ベース221と、第1戸部222と、第2戸部223とを有する。
【0048】
第2ベース221は、第1戸部222及び第2戸部223を保持している。また、第2ベース221は、第1戸部222及び第2戸部223を上下方向に移動させる機構を有している。つまり、蓋ユニット22は、容器本体11の開口を上方から覆った部分が容器本体11に向かって移動するように構成されている。具体的には、第2ベース221は、第1戸部222及び第2戸部223を容器本体11の開口の縁に押し当てる。
【0049】
第1戸部222及び第2戸部223は、それぞれ、第2ベース221に対し揺動可能に取り付けられている。
図7に示すように、第1戸部222及び第2戸部223は、それぞれ第2ベース221に設けられた軸を中心として、一点鎖線で示す開位置と、実線で示す閉位置との間でそれぞれ揺動する。
【0050】
開位置では、第1戸部222及び第2戸部223は、容器本体11の開口を覆わない(つまり、開口と上下方向において重ならない)。閉位置では、第1戸部222及び第2戸部223は、容器本体11の開口を覆う。
【0051】
第1戸部222及び第2戸部223は、閉位置において、容器本体11のX軸と平行な中心軸である長軸P1を含む仮想面Sで突き合わされる。つまり、第1戸部222は、容器本体11の開口のうち長軸P1で分割された2つの分割領域の一方を覆い、第2戸部223は、分割領域の他方を覆うように構成されている。
【0052】
第1戸部222及び第2戸部223は、閉位置から開位置に移動する際に、平面視で容器本体11の長軸P1から離れるように揺動する。つまり、第1戸部222及び第2戸部223は、長軸P1を中心にY軸方向に開くように移動する。
【0053】
<金属搬送機構の使用方法>
以下、金属搬送機構の使用方法(つまり半凝固スラリーの生成及び供給方法)について説明する。
【0054】
まず、溶融金属が投入されていない空の状態の容器10に対し、第1受容部12及び第2受容部13を把持ユニット21で把持する。具体的には、第1アーム212及び第2アーム213をそれぞれ待機位置から把持位置に移動させる。このとき、蓋ユニット22の第1戸部222及び第2戸部223は開位置に保持されている。
【0055】
把持ユニット21で容器10を把持した後、溶融金属を容器本体11に投入する。溶融金属の投入量は、液面が容器本体11における第1受容部12及び第2受容部13の取付位置よりも低い位置となるように調整される。
【0056】
溶融金属の投入後、蓋ユニット22によって容器本体11の開口を塞ぐ。具体的には、第1戸部222及び第2戸部223を開位置から閉位置に移動させる。このとき、第1戸部222及び第2戸部223が容器本体11に干渉しないように、第1戸部222及び第2戸部223を容器本体11の開口よりも上方において移動させる。
【0057】
第1戸部222及び第2戸部223が閉位置に移動した後、蓋ユニット22の第2ベース221によって第1戸部222及び第2戸部223を容器本体11の開口に押し付けるように下方に移動させる。
【0058】
容器本体11の開口が塞がれた後、容器本体11において自然冷却によって半凝固スラリーを生成する。半凝固スラリーの生成後、容器本体11内の半凝固スラリーを後工程(例えば鋳造機又は鍛造機)に供給する。
【0059】
例えば、開口を蓋ユニット22で塞いだまま把持ユニット21及び蓋ユニット22を容器10と共に上下反転させた後、蓋ユニット22を開いて半凝固スラリーを容器本体11から落下させることで、半凝固スラリーを後工程に供給することができる。
【0060】
<容器の変形例>
図8A及び
図8Bに示す容器10Aは、容器本体11Aと、第1受容部12と、第2受容部13とを有する。
【0061】
容器10Aは、容器本体11Aの形状が異なる点を除いて、
図1Aの容器10と同じ構成を有する。すなわち、容器10Aの第1受容部12及び第2受容部13の形状及び位置は、
図1Aの容器10と同じである。
【0062】
容器10Aの容器本体11Aは、X軸に沿った長さと、X軸と直交するY軸に沿った長さとが異なる扁平形状である。容器本体11Aは、長軸P1を含む仮想面を対称面とする面対称形状であると共に、短軸P2を含む仮想面を対称面とする面対称形状でもある。
【0063】
図9A及び
図9Bに示す容器10Bは、容器本体11Bと、第1受容部12Bと、第2受容部13Bとを有する。
【0064】
容器10Bにおける容器本体11Bの平面形状は真円形である。容器本体11BのX軸に沿った長さは、
図1Aの容器10の容器本体11よりも短い。そのため、第1受容部12Bは、容器本体11Bの第1端部111からX軸に沿って突出する第1連結部123を有する。また、第2受容部13Bは、容器本体11Bの第2端部112からX軸に沿って突出する第2連結部133を有する。
【0065】
第1受容部12Bは、第1延伸部121と、第2延伸部122と、上述の第1連結部123とを有する。第1延伸部121及び第2延伸部122の形状及び位置は、
図1Aの容器10と同じである。
【0066】
第2受容部13Bは、第3延伸部131と、第4延伸部132と、上述の第2連結部133とを有する。第3延伸部131及び第4延伸部132の形状及び位置は、
図1Aの容器10と同じである。
【0067】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)容器10,10A,10Bに設けられた4つの延伸部121,122,131,132が把持ユニット21によってチャックされるため、半凝固スラリーの入った容器10,10A,10Bを安定して搬送することができる。また、容器本体11,11A,11Bに把持ユニット21が直接触れないため、半凝固スラリーの放熱低下による温度の偏りを抑制できる。
【0068】
さらに、第1受容部12,12B及び第2受容部13,13Bの形状を維持したまま容器本体11,11A,11Bの形状を変えることができるため、容器本体11,11A,11Bの形状が異なる複数の容器10,10A,10Bに対し、1つの把持ユニット21を共通して使用することができる。
【0069】
(1b)第1受容部12及び第2受容部13がそれぞれ容器本体11,11Aの長軸P1と平行な方向の端部に取り付けられることで、扁平形状の容器本体11,11Aを有する容器10,10Aに対し、搬送時の安定性を高めることができる。
【0070】
(1c)搬送治具20が蓋ユニット22を有することで、容器10,10A,10Bの搬送時に、半凝固スラリーが容器本体11,11A,11Bからこぼれることを抑制できる。
【0071】
(1d)第1戸部222及び第2戸部223が容器本体11,11Aの長軸P1を含む仮想面Sで突き合わされることで、蓋ユニット22を迅速に閉じることができる。そのため、容器10,10Aの搬送工程の処理速度を高めることができる。
【0072】
(1e)蓋ユニット22の容器本体11,11A,11Bの開口を上方から覆った部分が容器本体11,11A,11Bに向かって移動することで、蓋ユニット22で容器本体11,11A,11Bを覆う際に蓋ユニット22と容器本体11,11A,11Bとが干渉することを避けつつ、容器本体11,11A,11Bを蓋ユニット22で密閉することができる。
【0073】
(1f)第1受容部12,12B及び第2受容部13,13Bが容器本体11,11A,11Bの外面のうち、溶融金属の液面が到達する位置よりも上方の領域に取り付けられることで、把持ユニット21による溶融金属の冷却への影響を抑制することができる。
【0074】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0075】
(2a)上記実施形態の金属搬送機構において、容器は、1つの受容部のみを有してもよい。また、第1チャック部、第2チャック部、第3チャック部及び第4チャック部は必ずしも延伸部が挿入される孔を有しなくてもよい。
【0076】
(2b)上記実施形態の金属搬送機構において、第1チャック部、第2チャック部、第3チャック部及び第4チャック部は、必ずしも揺動するアームに取り付けられなくてもよい。例えば、第1チャック部、第2チャック部、第3チャック部及び第4チャック部は、容器の各延伸部に向かってスライドするように構成されてもよい。
【0077】
(2c)上記実施形態の金属搬送機構において、第1戸部及び第2戸部は、必ずしも揺動しなくてもよい。例えば、第1戸部及び第2戸部は、スライドによって閉位置に移動するように構成されてもよい。また、第1戸部及び第2戸部は、必ずしも容器本体の長軸を含む仮想面で突き合わされなくてもよい。
【0078】
(2d)上記実施形態の金属搬送機構において、蓋ユニットは、必ずしも容器本体の開口を上方から覆った部分(つまり第1戸部及び第2戸部)が上下に移動するように構成されなくてもよい。
【0079】
(2e)上記実施形態の金属搬送機構において、第1受容部及び第2受容部は、必ずしも容器本体の外面のうち、溶融金属の液面が到達する位置よりも上方の領域に取り付けられなくてもよい。
【0080】
(2f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0081】
10,10A,10B…容器、11,11A,11B…容器本体、
12,12B…第1受容部、13,13B…第2受容部、20…搬送治具、
21…把持ユニット、22…蓋ユニット、111…第1端部、112…第2端部、
121…第1延伸部、122…第2延伸部、123…第1連結部、
131…第3延伸部、132…第4延伸部、133…第2連結部、
211…第1ベース、212…第1アーム、213…第2アーム、
214…第1チャック部、214A…下型、214B…上型、
214C…第1テーパ部、214D…第2テーパ部、214E…凹部、
215…第2チャック部、216…第3チャック部、217…第4チャック部、
221…第2ベース、222…第1戸部、223…第2戸部。