IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中日本高速道路株式会社の特許一覧 ▶ 中日本高速技術マーケティング株式会社の特許一覧 ▶ ショーボンド建設株式会社の特許一覧

特開2024-75302吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法
<>
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図1
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図2
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図3
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図4
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図5
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図6
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図7
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図8
  • 特開-吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075302
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20240527BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E01F8/00
G10K11/16 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186666
(22)【出願日】2022-11-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514250078
【氏名又は名称】中日本高速技術マーケティング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 鉱治
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 太一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌朗
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 誠
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】今井 巧
(72)【発明者】
【氏名】竹村 浩志
(72)【発明者】
【氏名】朝本 康太
【テーマコード(参考)】
2D001
5D061
【Fターム(参考)】
2D001AA05
2D001CA02
2D001CB01
2D001CD02
5D061CC01
5D061DD01
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物の表面状況によらず脱着自在に取り付けることができるとともに、長期的に落下するおそれを極力低減することのできる吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物の一面に騒音を吸音する吸音構造体1を取り付ける吸音構造体の取付構造10において、コンクリート構造物に取り付けられた磁性体7と、磁性体7を覆って磁性体7の落下を防止する落下防止シート8と、磁性体7に磁着する永久磁石5を有する吸音構造体1と、を備え、吸音構造体1は、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなる騒音を吸音する吸音材2と、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなり、吸音材2を収容して騒音源側の一面にメッシュ状に開放されたメッシュ部30を有する収容包体3と、を備え、永久磁石5を、収容包体3に収容し、落下防止シート8を粘着剤の粘着力で貼り付ける。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の一面に騒音を吸音する吸音構造体を取り付ける吸音構造体の取付構造であって、
前記コンクリート構造物に取り付けられた磁性体と、前記磁性体を覆って前記磁性体の落下を防止する落下防止シートと、前記磁性体に磁着する永久磁石を有する吸音構造体と、を備え、
前記吸音構造体は、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなる騒音を吸音する吸音材と、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなり、前記吸音材を収容して騒音源側の一面にメッシュ状に開放されたメッシュ部を有する収容包体と、を備え、
前記永久磁石は、前記収容包体に収容され、
前記落下防止シートは、粘着剤の粘着力で貼り付けられていること
を特徴とする吸音構造体の取付構造。
【請求項2】
前記コンクリート構造物に剥落防止層が形成され、前記剥落防止層に前記磁性体が介装又は接着されていること
を特徴とする請求項1記載の吸音構造体の取付構造。
【請求項3】
前記永久磁石は、ヨーク付きであること
を特徴とする請求項1又は2記載の吸音構造体の取付構造。
【請求項4】
前記コンクリート構造物の端部に位置する前記吸音構造体の前記収容包体には、前記永久磁石が前記コンクリート構造物の他の部位に位置する前記吸音構造体より多く収容されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の吸音構造体の取付構造。
【請求項5】
前記メッシュ部は、ガラス繊維がメッシュ状に配置され、そのメッシュ状のガラス繊維に難燃剤が添加されることにより自己消火性又は難燃性が付与された樹脂コーティングが施されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の吸音構造体の取付構造。
【請求項6】
前記収容包体は、無端状線材を介して前記コンクリート構造物に張設された落下防止ワイヤーに掛け止められていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の吸音構造体の取付構造。
【請求項7】
コンクリート構造物の一面に騒音を吸音する吸音構造体を取り付ける吸音構造体の取付方法であって、
コンクリート構造物に磁性体を取り付けた後に、磁性体を覆って前記磁性体の落下を防止する落下防止シートを粘着剤の粘着力で貼り付け、
難燃材、準不燃材、又は不燃材からなる騒音を吸音する吸音材と、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなり、前記吸音材を収容して騒音源側の一面にメッシュ状に開放されたメッシュ部を有する収容包体と、を備える吸音構造体の前記収容包体に前記永久磁石を内包し、
前記磁性体に前記永久磁石の磁力で前記吸音構造体を着脱自在に取り付けること
を特徴とする吸音構造体の取付方法。
【請求項8】
前記コンクリート構造物に剥落防止層を形成した後、前記磁性体を取り付け、前記落下防止シートを貼り付けること
を特徴とする請求項7に記載の吸音構造体の取付方法。
【請求項9】
前記コンクリート構造物の端部に位置する前記吸音構造体の前記収容包体に、前記永久磁石を前記コンクリート構造物の他の部位に位置する前記吸音構造体より多く収容すること
を特徴とする請求項7又は8に記載の吸音構造体の取付方法。
【請求項10】
前記コンクリート構造物に落下防止ワイヤーを固定し、固定した前記落下防止ワイヤーに無端状線材を用いて前記収容包体を掛け止めること
を特徴とする請求項7又は8に記載の吸音構造体の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の天井面に取り付けられる吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高架併設道路、掘割式道路、トンネル内道路などは、自動車騒音の反射が沿道の騒音レベルの上昇を招いており、遮音壁等の従来の騒音対策だけでは、充分な効果が得られない場合があった。
【0003】
そこで、高架道路の下面、掘割式道路の壁面、トンネル内の壁面、沿道建物の壁面、橋脚、及び植栽桝の外壁面等に吸音材を設置し、反射音を軽減して反射音が増大することを防止するための試みが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、枠体の前面に配置された多孔板と、枠体の中に配置された繊維質吸音材を有する吸音構造体において、グラスウール等の繊維質吸音材が平らで厚さが50~110mmであり、かつプラスチックフィルムに覆われ、さらに多孔板と繊維質吸音材の間に厚さ10mm~30mmの空気層が設けられた吸音構造体が開示されている。
【0005】
特許文献1の吸音構造体によれば、下方に道路が併設された高架橋の下面に、中空枠体内に繊維質吸音材を配置した吸音構造体を設置して、高架橋自体からの構造物音や下方の道路からの交通騒音を吸音して騒音を低減することが可能とされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の吸音構造体は、繊維質吸音材として所定の重量を有するグラスウールが用いられている。このため、特許文献1の吸音構造体は、このグラスウールの重量を支持するために、金属製の多孔板を用いる必要があることから、吸音構造体を軽量化することができないという問題点があった。
【0007】
特に近年では、高架橋等の橋下における車両事故等による火災等が数多く発生している。このような火災等の事故の発生により、最悪の場合には、高架橋から吸音構造体が落下するおそれがある。この点、特許文献1の吸音構造体は、上記したような所定の重量を有することから、高架橋から落下した場合には大変危険である。したがって、吸音構造体には、万が一落下したとしても安全性が確保されるように、その重量の軽量化が求められている。
【0008】
加えて、高架橋の下面に設置される吸音構造体は、屋外に設置されるものの、太陽光、雨水、結露等によって吸音材が劣化してしまった場合には、騒音を効果的に低減させることができないものとなる。このため、吸音構造体は、太陽光、雨水、結露等に対する耐候性の向上も求められる。
【0009】
このような問題を解決するべく、本願出願人らが提案した特許文献2には、屋外のコンクリート製の天井に設置される吸音構造体であって、メッシュ状に形成されるメッシュ部24を有する樹脂製の収容部2と、収容部2に収容される難燃性樹脂層3と、収容部2に収容される不織布層4と、を備える。不織布層4は、撥水性を有し、メッシュ部24と難燃性樹脂層3との間に配置される吸音構造体1が開示されている。
【0010】
特許文献2に記載の吸音構造体は、騒音を低減することが可能となり、軽量化を達成できるとともに、耐候性を向上させることができる。しかし、特許文献2に記載の吸音構造体を、高架橋のコンクリート床版などの道路上空のコンクリート構造物の下面に設置する場合、コンクリートの剥落を防止する剥落防止シートを接着するなど剥落防止層を形成した後、その剥落防止層の下面(表面)に吸音構造体を取り付けたいという要望があり、その場合、吸音構造体の落下のおそれが生じる。また、剥落防止層を形成しない場合でも防汚塗料や対候性塗料を塗布するなど何等かの保護層を形成する場合があり、その場合でも、同様に吸音構造体の落下のおそれが生じ得る。
【0011】
その上、高架併設道路やトンネル内道路は、風が吹き抜ける経路ともなるため、このような場所に設置される吸音構造体は、かなりの風圧にさらされるという問題もある。また、特許文献2に記載されているように、屋外に設置される吸音構造体は、継続的に長年風雨にさらされて経年劣化する上、万が一落下した場合に大事故に繋がりかねないため、落下防止の手段を厳重に施す必要がある。
【0012】
さらに、剥落防止シートなどの剥落防止層は、透明で貼着しているコンクリート構造物が劣化してひび割れや剥離が生じているか否かを目視で確認する必要があり、点検時に吸音構造体を簡単に取り外したいとの要望もある。また、剥落防止層を形成しない場合でもコンクリート構造物の劣化等を目視や打音検査等で確認する必要性があり、点検時に吸音構造体を簡単に取り外したいとの要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11-305781号公報
【特許文献2】特開2020-64204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、コンクリート構造物の表面状況によらず脱着自在に取り付けることができるとともに、長期的に落下するおそれを極力低減することのできる吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明に係る吸音構造体の取付構造は、コンクリート構造物の一面に騒音を吸音する吸音構造体を取り付ける吸音構造体の取付構造であって、前記コンクリート構造物に取り付けられた磁性体と、前記磁性体を覆って前記磁性体の落下を防止する落下防止シートと、前記磁性体に磁着する永久磁石を有する吸音構造体と、を備え、前記吸音構造体は、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなる騒音を吸音する吸音材と、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなり、前記吸音材を収容して騒音源側の一面にメッシュ状に開放されたメッシュ部を有する収容包体と、を備え、前記永久磁石は、前記収容包体に収容され、前記落下防止シートは、粘着剤の粘着力で貼り付けられていることを特徴とする。
【0016】
第2発明に係る吸音構造体の取付構造は、第1発明において、前記コンクリート構造物に剥落防止層が形成され、前記剥落防止層に前記磁性体が介装又は接着されていることを特徴とする。
【0017】
第3発明に係る吸音構造体の取付構造は、第1発明又は第2発明において、前記永久磁石は、ヨーク付きであることを特徴とする。
【0018】
第4発明に係る吸音構造体の取付構造は、第1発明又は第2発明において、前記コンクリート構造物の端部に位置する前記吸音構造体の前記収容包体には、前記永久磁石が前記コンクリート構造物の他の部位に位置する前記吸音構造体より多く収容されていることを特徴とする。
【0019】
第5発明に係る吸音構造体の取付構造は、第1発明又は第2発明において、前記メッシュ部は、ガラス繊維がメッシュ状に配置され、そのメッシュ状のガラス繊維に難燃剤が添加されることにより自己消火性又は難燃性が付与された樹脂コーティングが施されていることを特徴とする。
【0020】
第6発明に係る吸音構造体の取付構造は、第1発明又は第2発明において、前記収容包体は、無端状線材を介して前記コンクリート構造物に張設された落下防止ワイヤーに掛け止められていることを特徴とする。
【0021】
第7発明に係る吸音構造体の取付方法は、コンクリート構造物の一面に騒音を吸音する吸音構造体を取り付ける吸音構造体の取付方法であって、コンクリート構造物に磁性体を取り付けた後に、磁性体を覆って前記磁性体の落下を防止する落下防止シートを粘着剤の粘着力で貼り付け、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなる騒音を吸音する吸音材と、難燃材、準不燃材、又は不燃材からなり、前記吸音材を収容して騒音源側の一面にメッシュ状に開放されたメッシュ部を有する収容包体と、を備える吸音構造体の前記収容包体に前記永久磁石を内包し、前記磁性体に前記永久磁石の磁力で前記吸音構造体を着脱自在に取り付けることを特徴とする。
【0022】
第8発明に係る吸音構造体の取付方法は、第7発明において、前記コンクリート構造物に剥落防止層を形成した後、前記磁性体を取り付け、前記落下防止シートを貼り付けることを特徴とする。
【0023】
第9発明に係る吸音構造体の取付方法は、第7発明又は第8発明において、前記コンクリート構造物の端部に位置する前記吸音構造体の前記収容包体に、前記永久磁石を前記コンクリート構造物の他の部位に位置する前記吸音構造体より多く収容することを特徴とする。
【0024】
第10発明に係る吸音構造体の取付方法は、第7発明又は第8発明において、前記コンクリート構造物に落下防止ワイヤーを固定し、固定した前記落下防止ワイヤーに無端状線材を用いて前記収容包体を掛け止めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1ないし10に係る発明によれば、磁性体と永久磁石で吸音構造体をコンクリート構造物に取り付けるので、コンクリート構造物の表面の劣化の進捗具合や表面の塗装の有無によらず吸音構造体を脱着自在に取り付けることができ、コンクリート構造物に反射する騒音を低減できる。また、請求項1ないし10に係る発明によれば、磁性体を落下防止シートで覆って粘着剤で貼り付けるので、長期的に落下するおそれを極力低減することができる。
【0026】
特に、請求項2及び請求項8に係る発明によれば、コンクリート構造物に剥落防止層が形成されているので、コンクリート構造物が劣化して剥落することを防止した上、目視で点検可能にするとともに、吸音構造体でコンクリート構造物に反射する騒音を低減することができる。
【0027】
特に、請求項3に係る発明によれば、永久磁石をヨーク付き磁石とすることにより、永久磁石を磁着力を落とさずに薄く軽量にすることができ、吸音構造体全体を軽量にすることができる。
【0028】
特に、請求項4及び請求項9に係る発明によれば、風圧により落下するおそれの高い、コンクリート構造物の端部に位置する吸音構造体を効果的に高い磁力で磁着することができる。
【0029】
特に、請求項5によれば、メッシュ部は、ガラス繊維がメッシュ状に配置され、そのメッシュ状のガラス繊維に難燃剤が添加されることにより自己消火性又は難燃性が付与された樹脂コーティングが施されているので、ガラス繊維の不燃性が強化されて、車両事故等で火災が発生しても吸音構造体が燃え広がるおそれを低減することができる。
【0030】
特に、請求項6及び請求項10に係る発明によれば、吸音構造体が磁性体と永久磁石との磁力だけでなく、フェイルセーフとして落下防止ワイヤーに掛け止められているので、万が一磁力を超える力が働いた場合でも吸音構造体の落下を防止することができる。また、無端状線材を介して掛け止められているので、特許文献2に記載の吸音構造体のように、風等の振動でカラビナがコンクリート構造物にぶつかって騒音が発生するおそれも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施形態に係る吸音構造体を模式的に示す鉛直断面図である。
図2図2は、同上の吸音構造体を下方から上方に見上げて示す正面図である。
図3図3は、同上の吸音構造体の永久磁石の構成を模式的示す拡大断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付構造を示す床版橋の全体鉛直断面図である。
図5図5は、同上の吸音構造体の取付構造を示す図4のA部拡大断面図である。
図6図6は、同上の吸音構造体の取付構造の剥落防止層の構成を模式的に示す模式断面図である。
図7図7は、同上の吸音構造体の取付構造の落下防止シートの構成を模式的に示す模式断面図である。
図8図8は、同上の吸音構造体の取付構造の無端状線材を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態の変形例に係る吸音構造体に装着されている永久磁石の数を主に示す下方から上方に見上げて示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の吸音構造体の取付構造及び吸音構造体の取付方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
<吸音構造体>
先ず、図1図3を用いて、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付構造に用いる吸音構造体について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付構造に用いる吸音構造体1を示す鉛直断面図であり、図2は、吸音構造体1を下方から上方に見上げて示す正面図である。また、図3は、吸音構造体1の永久磁石5の構成を模式的示す拡大断面図である。
【0034】
本発明に係る吸音構造体は、高架道路の下面、掘割式道路の壁面、トンネル内の壁面、沿道建物の壁面、橋脚の側面、及び植栽桝の外壁面などのコンクリート構造物の下面や壁面などの一面に設置され、騒音を吸音してコンクリート構造体に騒音が反射して増幅されることを防止する機能を有している。本実施形態に係る吸音構造体1は、高架道路の下面に設置されて下方の道路を走行する車両に起因する騒音が反射されて増幅されることを防止する吸音構造体として用いられる場合を例示して説明する。
【0035】
本実施形態に係る吸音構造体1は、騒音を吸音する吸音材2と、この吸音材2を収容する収容包体3と、を備えている。
【0036】
(吸音材)
本実施形態に係る吸音材2は、メラミン樹脂からなる難燃性のメラミンフォームであり、高周波数帯の音の減衰に効果的な発泡体の多孔質の孔で入射した音のエネルギーを熱エネルギーに変換することで減衰して吸音する機能を有している。勿論、本発明に係る吸音材は、事故等で火災が発生した場合でも燃え広がらない難燃性の発泡樹脂や難燃性又は不燃性の繊維材からなり、所定の吸音率を達成できる素材であればよい。例えば、吸音材は、難燃性のウレタン樹脂を発泡させたウレタンフォームやポリエステル樹脂、不燃性のグラスウールとすることもできる。
【0037】
但し、吸音材2をメラミンフォームとすることにより、密度が9.0kg/m3程度となり、一般的なウレタンフォーム等の密度よりも小さく、平均斜入射吸音率が0.9以上といった道路交通騒音対策に求められる吸音性能を確保するのに必要な厚さを薄くして軽量化することができるため好ましい。
【0038】
(収容包体)
本実施形態に係る収容包体3は、難燃性樹脂からなるシート状の素材を基体として吸音材2のメラミンフォームを収容する概略直方体状の包状の部材であり、騒音源側となる面(高架橋の下面に設置する場合は下面)にメッシュ状に開放されたメッシュ部30が設けられている。
【0039】
このメッシュ部30は、ガラス繊維がメッシュ状に配置され、そのメッシュ状のガラス繊維に難燃剤が添加されることにより自己消火性又は難燃性が付与された樹脂コーティングが施されて形成されている。このように、不燃材であるガラス繊維に自己消火性又は難燃性が付与された樹脂コーティングされることにより、火炎に晒されるおそれのある収容包体3の下部面の延焼防止性能が強化されている。
【0040】
また、コンクリート構造物へ取り付けられる取付面3aとなる直方体状の一面が短辺から外側二方向に張り出して縁部31が形成され、この縁部31に後述の無端状ワイヤーを掛け止めるための複数のハトメ部32が形成されている。勿論、この縁部31は、取付面3aの長辺から外側二方向に張り出して形成されていてもよいし、取付面3aの四辺から外側四方向に張り出して形成されていてもよい。
【0041】
(撥水性不織布)
また、吸音材2のメラミンフォームと収容包体3のメッシュ部30との間には、撥水性を有する撥水性不織布4が介装されている。撥水性不織布4で水を弾き、開口部であるメッシュ部30から降水(雨水及び雪)や結露により水が侵入して吸音材2のメラミンフォームが水を含み重くなったり、染み込んだ水が腐敗したりすることを抑制するためである。
【0042】
(永久磁石)
その上、図2に示すように、収容包体3の取付面3a側に永久磁石5が装着されている。本実施形態に係る永久磁石5は、図3に示すように、Nd(ネオジム)・Fe(鉄)・B(ボロン)を主成分としたネオジム磁石50と、鋼板からなるヨーク51とから構成されている。
【0043】
ネオジム磁石50は、現在ある永久磁石の中で最も強力な磁石であり、必要な磁力を発生させて薄く軽量化することができる。また、永久磁石5は、図3に示すように、ヨーク51を設けることでN極(又はS極)がヨーク51の端面に移動することとなり、磁性体とヨーク51との間で磁気の回路が構成され、磁束が磁性体に有効に集中することができる。このため、必要な磁着力に対して永久磁石5全体を薄く軽量化することができる。
【0044】
なお、図2に示すように、標準タイプの吸音構造体1には、永久磁石5が5つ設置されているが、後述のように、コンクリート構造物の端部に設置する端部用タイプの吸音構造体1’には、永久磁石5が7つ設置されている(図9参照)。勿論、吸音構造体1内に設ける永久磁石5の個数は、必要な磁着力に応じて適宜選択すればよいことは云うまでもない。
【0045】
<吸音構造体の取付構造>
次に、図4図9を用いて、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付構造10について説明する。前述の吸音構造体1が取り付けられるコンクリート構造物として床版橋B1の高架道路を例示し、その桁下となる下面C1に吸音構造体1が設置されて下方の道路を走行する車両に起因する騒音が反射されて増幅されることを防止する吸音構造体として用いられる場合を例示して説明する。図4は、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付構造10を示す床版橋B1の全体鉛直断面図であり、図5は、吸音構造体の取付構造10を示す図4のA部拡大断面図である。
【0046】
(剥落防止層)
図5に示すように、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付構造10は、後述の剥落防止層形成工程により、床版橋B1の下面C1に透明な剥落防止層6が形成されている。この剥落防止層6は、図6に示すように、特殊ビニロンクロス60を基体とし、その内外両面(表面及び裏面)に含浸接着剤層61,62を有し、外側となる下層の含浸接着剤層62の外層(下層)に、ぎらつき防止のためシリコーン樹脂からなるトップコート層63を有している。図6は、吸音構造体の取付構造10の剥落防止層6の構成を模式的に示す模式断面図である。
【0047】
吸音構造体の取付構造10は、剥落防止層6を有するため、高架道路である床版橋B1からコンクリートが剥落することを防止することができ、下方の道路を走行する車両等の安全を確保することができる。また、剥落防止層6が透明であるため、床版橋B1の下面C1のコンクリートの経年劣化等の変状を目視により確認することができる。なお、この剥落防止層6は、現地で形成するものに限られず、工場等で予め製作されてシート状となった既製品の剥落防止シートを床版橋B1の下面C1に接着することで形成するようにしてもよい。
【0048】
また、剥落防止層6は、省略することもできる。床版橋B1が新しい場合など、しばらくはコンクリートの経年劣化に伴う剥落防止が必要ない場合もあり得るからである。
【0049】
(磁性体)
また、図5に示すように、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付構造10は、前述の吸音構造体1を床版橋B1の下面C1に取り付けるための磁性体7が剥落防止層6の下面(表面)に接着されている。本実施形態に係る磁性体7は、矩形状の厚さ3mm以下(例えば、市販の2.3mmのステンレス鋼板)の薄いマルテンサイト系やフェライト系のステンレス鋼板からなる。勿論、本発明に係る磁性体は、SS400(一般構造用圧延鋼材)などの他の磁性体であっても構わない。なお、防錆上、磁性体7は、磁性のあるステンレス鋼板が好ましい。また、磁性体7の形状は、矩形状に限られず、永久磁石5の形状に合わせれればよい。但し、磁性体7を矩形状とすることにより、剥落防止工の施工性向上にも寄与することができる。
【0050】
前記のように、磁性体7が剥落防止層6の下面(表面)に接着されているものを例示したが、磁性体7は、剥落防止層6の内部に介装されていても構わない。剥落防止層6の下面(表面)に接着されているのと同様に、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止しつつ、吸音構造体1を固定することができるからである。
【0051】
また、コンクリート構造物と鋼板の接着には、エポキシ樹脂などのアルカリ性に強く硬化時に硬くなり強度の高い接着剤が用いられる。本実施形態に係る磁性体7もエポキシ樹脂系の接着剤で接着される。しかし、撥水性、離型性の高いシリコーン樹脂の層には、そもそも接着しにくい上、振動等で経時的に剥落防止層6と接着剤との界面で剥がれて磁性体7及び吸音構造体1が落下するおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10では、図5に示すように、剥落防止層6に接着剤で磁性体7を接着した上、その表面(下方)から磁性体7を覆って磁性体7が落下を防止する落下防止シート8を貼り付ける。
【0053】
(落下防止シート)
この落下防止シート8は、図7に示すように、耐候性フッ素フィルムなどの樹脂フィルム80の裏面に粘着剤からなる粘着剤層81が形成された既製品のシート材である。ここで、粘着剤としては、アクリルポリマーからなるアクリル系粘着剤、シロキサン結合を主骨格にもつポリマーからなるシリコーン粘着剤、イソシアネート基とヒドロキシ基をもつ化合物同士を縮合し得られるポリウレタンからなるウレタン粘着剤、ブチルゴム系などのゴム系粘着剤等、が挙げられる。図7は、吸音構造体の取付構造10の落下防止シート8の構成を模式的に示す模式断面図である。
【0054】
このように、磁性体7を剥落防止層6に接着するとともに、その表面(下面)から落下防止シート8で覆って粘着剤層81の粘着力で粘着するので、落下防止シート8が、磁性体7接着のフェイルセーフとなる。また、落下防止シート8は、接着剤とはくっつくメカニズムが全く相違する粘着剤の粘着力で磁性体7をくっつけているので、粘着剤の粘着力が徐々に低下することはあっても、振動等で経時的にある一帯の磁性体7が一気に剥離するおそれは少ない。このため、落下防止シート8の剥離は、コンクリートの劣化等の目視による点検時に剥がれていることが発見し易いものである。
【0055】
(落下防止機構)
また、図5に示すように、吸音構造体の取付構造10は、吸音構造体1の落下を防止する落下防止機構9を備えている。具体的には、落下防止機構9は、床版橋B1の下面C1に張設されたPC鋼線より線等からなる落下防止ワイヤー90と、この落下防止ワイヤー90に掛け止められた無端状線材であるワイヤーキャッチ91など、からなる。この落下防止機構9は、永久磁石5と磁性体7との磁力による固定に加え、吸音構造体1の固定手段のフェイルセーフとして機能する。
【0056】
また、図8に示すように、ワイヤーキャッチ91は、ステンレス製のワイヤーロープ92と、ワイヤーロープ92の両端に固着された雄ねじ部93と、雌ねじ部94と、から構成され、雄ねじ部93と雌ねじ部94とをねじ止めることにより、無端状線材となる。図8は、吸音構造体の取付構造10の無端状線材であるワイヤーキャッチ91を示す図である。
【0057】
このように、落下防止ワイヤー90に掛け止める部材を可撓性を有する無端状のワイヤーロープとすることで、特許文献2に記載の発明のように、風等の振動でカラビナがコンクリート構造物(床版橋B1)にぶつかって騒音が発生するおそれも低減することができる。さらに、線状のワイヤーで止める場合だと、従来のカラビナと比べてワイヤー自体も短く、余裕分が少ないため、各部材の自由度も低くなり、ワイヤー素材の騒音低減効果に加え、騒音の低減効果を達成することができる。
【0058】
(端部に位置する変形例に係る吸音構造体)
なお、図4図9に示すように、吸音構造体の取付構造10は、床版橋B1の下面C1の端部に位置する前述の吸音構造体1の変形例に係る吸音構造体1’は、収容包体3に永久磁石5が他の部位(一般部)に位置する前述の吸音構造体1より多く収容されている。床版橋B1の下面C1を流れる風に起因する端部の吸音構造体1’に作用する風荷重の負圧に対抗するためである。図9は、主に、変形例に係る吸音構造体1’に装着されている永久磁石5の数を示す吸音構造体1’を下方から上方に見上げて示す正面図である。
【0059】
具体的には、図2に示すように、吸音構造体1に収容されている永久磁石5の数が5であるのに対し、図9に示すように、変形例に係る吸音構造体1’に収容されている永久磁石5の数は7である。勿論、吸音構造体1,1’内に設ける永久磁石5の個数は、必要な磁着力に応じて適宜選択すればよいことは云うまでもない。
【0060】
ここで、床版橋B1の下面C1の端部の範囲は、図4に示すように、床版橋B1の下面C1の外縁から0.1Lの範囲であり、Lとは、床版橋B1の総高Hの2倍もしくは幅員Bの小さい値である。これらの値は、「附属施設物設計施工要領 第4編[遮音壁編]」の風荷重を参考にするとともに、本発明の吸音構造体と同様に、橋梁の下面に設ける恒久足場の風洞実験等から恒久足場の裏面には、特に端部に大きな負圧(橋梁下を流れる風が恒久足場を引き込んで押し下げる圧力)が発生することが明らかにされていることから算出されている。
【0061】
<吸音構造体の取付方法>
次に、図1図9を用いて、本発明の実施形態に係る吸音構造体の取付方法について説明する。前述と同様に、吸音構造体1が取り付けられるコンクリート構造物として床版橋B1の高架道路を例示し、その桁下となる下面C1に吸音構造体1を設置する場合を例示して説明する。
【0062】
(剥落防止層形成工程)
先ず、本実施形態に係る吸音構造体の取付方法では、コンクリート構造物である床版橋B1の下面C1に前述の剥落防止層6を形成する剥落防止層形成工程を行う(図5参照)。
【0063】
具体的には、床版橋B1の下面C1にプライマーを塗布し、パテ材で不陸調整を行った後、含浸接着剤で特殊ビニロンクロス60を接着するとともに、接着した特殊ビニロンクロス60に再度含浸接着剤を塗布して、前述の特殊ビニロンクロス60の内外両面に含浸接着剤層61,62を形成する(図6参照)。その後、含浸接着剤層62の外層(下層)にシリコーン樹脂を塗布し、前述のトップコート層63を形成する(図6参照)。
【0064】
本工程を実施することにより、高架道路である床版橋B1からコンクリートが剥落することを防止することができ、下方の道路を走行する車両等の安全を確保することができる。また、剥落防止層6が透明であるため、床版橋B1の下面C1のコンクリートの経年劣化等の変状を目視により確認することができる。なお、本工程では、工場等で予め製作された既製品の剥落防止シートを床版橋B1の下面C1に接着することで形成するようにしてもよい。
【0065】
但し、本工程を実施せず、床版橋B1の下面C1に直接磁性体7を接着しても構わない。その場合は、床版橋B1の下面C1にプライマーを塗布した上、次工程を実施し、エポキシ系樹脂を用いて接着する。床版橋B1が新しい場合など、しばらくはコンクリートの経年劣化に伴う剥落防止が必要ない場合もあり得るからである。
【0066】
(磁性体接着工程)
次に、本実施形態に係る吸音構造体の取付方法では、剥落防止層6に前述の磁性体7を接着する磁性体接着工程を行う。
【0067】
具体的には、剥落防止層6のトップコート層63の表面にステンレス鋼板からなる磁性体7を従来通り、エポキシ系樹脂を用いて接着する(図5参照)。磁性体7を接着する位置は、図2に示す吸音構造体1の永久磁石5の位置に対応した位置である。
【0068】
(落下防止シート貼付工程)
次に、本実施形態に係る吸音構造体の取付方法では、前工程で接着した磁性体7の表面に前述の落下防止シート8を貼り付ける落下防止シート貼付工程を行う。
【0069】
具体的には、前工程で接着した磁性体7の表面(下面)に、落下防止シート8の粘着剤層81を押し当てて、粘着剤の粘着力で落下防止シートを貼り付ける(図7参照)。
【0070】
本工程を実施することにより、磁性体7の表面(下面)から落下防止シート8で覆って粘着剤層81の粘着力で粘着するので、落下防止シート8が、磁性体7接着のフェイルセーフとなる。また、落下防止シート8は、粘着剤の粘着力で貼り付けているので、粘着剤の粘着力が徐々に低下することはあっても、振動等で経時的にある一帯の磁性体7が一気に剥離するおそれが少ない。このため、落下防止シート8の剥離は、コンクリートの劣化等の目視による点検時に剥がれていることが発見し易いものとなる。
【0071】
(吸音構造体装着工程)
次に、本実施形態に係る吸音構造体の取付方法では、床版橋B1の下面C1に吸音構造体1を装着する吸音構造体装着工程を行う。
【0072】
具体的には、磁性体接着工程で接着した磁性体7に、吸音構造体1の収容包体3に装着されている永久磁石5(ネオジム磁石50)を近づけ、ネオジム磁石50の磁力で磁性体7に永久磁石5を磁着させることにより、吸音構造体1を装着する。
【0073】
このとき、磁性体7と永久磁石5との間には、落下防止シート8及び収容包体3の取付面3aが介在することとなるが、実験結果から厚さ1.5mmまで問題ないことが確認されている。このため、磁力により容易に床版橋B1の下面C1に吸音構造体1を装着することができる。
【0074】
(落下防止機構構築工程)
次に、本実施形態に係る吸音構造体の取付方法では、前述の落下防止機構9を構築する落下防止機構構築工程を行う。
【0075】
具体的には、床版橋B1の下面C1に前述の落下防止ワイヤー90を張設し、ワイヤーキャッチ91を前述のハトメ部32に挿通し、雄ねじ部93と雌ねじ部94とをねじ止めることにより、張設した落下防止ワイヤー90にワイヤーキャッチ91で吸音構造体1を掛け止める。
【0076】
本工程を実施することにより、落下防止機構9が構築され、永久磁石5と磁性体7との磁力による固定に加え、落下防止機構9を吸音構造体1の固定手段のフェイルセーフとして機能させることができる。
【0077】
本工程の終了により、吸音構造体の取付構造10が完成し、本実施形態に係る吸音構造体の取付方法が完了する。
【0078】
以上説明した本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10及び吸音構造体の取付方法によれば、磁性体7と永久磁石5で吸音構造体1をコンクリート構造物である床版橋B1の下面C1に取り付けるので、吸音構造体1を下面C1に対して脱着自在に取り付けることができ、床版橋B1に反射する騒音を低減することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10及び吸音構造体の取付方法によれば、磁性体7を落下防止シート8で覆って粘着剤で貼り付けるので、長期的に落下するおそれを極力低減することができる。
【0080】
その上、本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10及び吸音構造体の取付方法によれば、床版橋B1の下面C1に剥落防止層6を形成するので、床版橋B1のコンクリートが劣化して剥落することを防止した上、目視で点検可能にするとともに、吸音構造体1で床版橋B1に反射する騒音を低減することができる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10によれば、永久磁石5をヨーク51付き磁石とすることにより、効率よく磁束を流すことができ、永久磁石5を軽量化しても必要な磁着力を確保することができ、吸音構造体1全体を軽量にすることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10及び吸音構造体の取付方法によれば、風圧により落下するおそれの高い、床版橋B1の端部に位置する吸音構造体1’を効果的に高い磁力で磁着することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10によれば、吸音構造体1のメッシュ部30が、ガラス繊維に自己消火性又は難燃性が付与された樹脂コーティングが施されているので、不燃性が強化されて、車両事故等で火災が発生しても吸音構造体1が燃え広がって延焼するおそれを低減することができる。
【0084】
さらに、本実施形態に係る吸音構造体の取付構造10及び吸音構造体の取付方法によれば、磁性体7と永久磁石5との磁力だけでなく、吸音構造体1がフェイルセーフとして落下防止ワイヤー90に掛け止められているので、万が一磁力を超える力が働いた場合でも吸音構造体1の落下を防止することができる。また、無端状線材であるワイヤーキャッチ91を介して落下防止ワイヤー90に掛け止められているので、風等の振動でカラビナがコンクリート構造物にぶつかって金属音が発生するおそれも低減することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0086】
特に、吸音構造体1を取り付けるコンクリート構造物として床版橋B1からなる高架道路を例示したが、掘割式道路の壁面、トンネル内の壁面、沿道建物の壁面、橋脚の側面、植栽桝の外壁面などの他のコンクリート構造物としてもよいことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1,1’:吸音構造体
2:吸音材
3:難燃性樹脂層
30:メッシュ部
31:縁部
32:ハトメ部
4:撥水性不織布
5:永久磁石
50:ネオジム磁石
51:ヨーク
6:剥落防止層
60:特殊ビニロンクロス
61,62:含浸接着剤層
63:トップコート層
7:磁性体
8:落下防止シート
80:樹脂フィルム
81:粘着剤層
9:落下防止機構
90:落下防止ワイヤー
91:ワイヤーキャッチ
92:ワイヤーロープ
93:雄ねじ部
94:雌ねじ部
10:吸音構造体の取付構造
B1:床版橋(コンクリート構造物)
C1:下面
B:幅員
H:総高
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9