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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075310
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】水素供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240527BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20240527BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C11/00 C
F17C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186677
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 篤
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旬
(72)【発明者】
【氏名】平野 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 徹
(72)【発明者】
【氏名】騎馬 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】野内 宗一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 里夏
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AA09
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB13
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA10
3E172EA35
3E172EA48
3E172EA49
3E172EA51
3E172EB02
3E172EB05
3E172EB17
3E172EB18
3E172FA01
(57)【要約】
【課題】運転中のエネルギーの損失を低減しつつ、貯蔵可能な水素の量を多くすることができる水素供給システムを提供する。
【解決手段】水素供給システム1は、水素供給源Sから供給される水素を水素負荷Lに導くことができるように構成されており、水素供給源Sに接続された水素導入部2と、水素負荷Lに接続された水素導出部7と、水素導入部2と水素導出部7との両方に接続されたメインタンク3と、水素導入部2に接続された昇圧ポンプ4と、昇圧ポンプ4に接続された流路切替部5と、流路切替部5に接続されたサブタンク6と、を有している。水素供給システム1は、水素負荷Lに水素を供給する場合に、まずメインタンク3内の水素を使用し、その後サブタンク6内の水素を使用するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素供給源から供給される水素を水素負荷に導くことができるように構成された水素供給システムであって、
前記水素供給システムは、前記水素供給源に接続され、前記水素供給源から供給される水素を前記水素供給システムに導入可能に構成された水素導入部と、
前記水素負荷に接続され、前記水素供給システムから前記水素負荷に水素を導出可能に構成された水素導出部と、
前記水素導入部と前記水素導出部との両方に接続されたメインタンクと、
前記水素導入部に接続され、水素の圧力を上昇させることができるように構成された昇圧ポンプと、
前記昇圧ポンプに接続され、複数の出口を有するとともに、前記各出口の開閉を切り替え可能に構成された流路切替部と、
前記流路切替部の複数の前記出口のうち第1の出口に接続され、水素吸蔵合金を備えたサブタンクと、を有し、
前記流路切替部の複数の前記出口のうち第2の出口が前記メインタンクに接続されており、
前記メインタンクは、前記水素導入部との間に、開閉可能に構成されたメインタンク入口弁を有しており、
前記メインタンク入口弁は、前記水素導入部における、前記メインタンク入口弁の下流の圧力が前記メインタンク内の圧力より高い場合に開放され、前記メインタンク入口弁の下流の圧力が前記メインタンク内の圧力以下の場合に閉鎖されるように構成されたメインタンク入口弁を有しており、
前記昇圧ポンプは、前記メインタンク入口弁が閉鎖されている場合に動作するように構成されており、
前記流路切替部は、前記メインタンク内の圧力が、前記水素供給源から供給される水素の圧力以上の値である第1の閾値以下の場合には前記第1の出口を閉鎖するとともに前記第2の出口を開放し、前記メインタンク内の圧力が前記第1の閾値よりも高い場合には前記第1の出口を開放するとともに前記第2の出口を閉鎖するように構成されており、
前記サブタンクは、前記メインタンク内の圧力が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値以下の場合に前記水素吸蔵合金から水素を放出するように構成されている、水素供給システム。
【請求項2】
前記サブタンクは、前記水素導入部にも接続されており、前記サブタンクから放出された水素を前記水素導入部に供給することができるように構成されている、請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項3】
前記水素導入部は、前記水素供給源に接続された水素導入配管と、
前記水素導入配管に接続され、複数の出口を備えた第2流路切替部と、
前記第2流路切替部の複数の前記出口のうち第1の出口と前記水素導出部とを接続するバイパス配管と、
前記第2流路切替部の複数の前記出口のうち第2の出口と前記メインタンク入口弁及び前記昇圧ポンプとを接続する分岐配管と、を有しており、
前記第2流路切替部は、前記バイパス配管内の圧力が第3の閾値以下の場合に前記第1の出口を開放するとともに前記第2の出口を閉鎖し、前記バイパス配管内の圧力が第3の閾値よりも高い場合に前記第1の出口を閉鎖するとともに前記第2の出口を開放するように構成されている、請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項4】
前記サブタンクは、前記分岐配管にも接続されており、前記サブタンクから放出された水素を前記分岐配管に供給することができるように構成されている、請求項3に記載の水素供給システム。
【請求項5】
前記水素供給システムは、複数の前記サブタンクを有しており、複数の前記サブタンクから一部のサブタンクを選択し、当該サブタンクから水素を放出させることができるように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の水素供給システム。
【請求項6】
前記水素供給システムは、複数の前記サブタンクから一部のサブタンクを選択し、当該サブタンクに水素を供給することができるように構成されている、請求項5に記載の水素供給システム。
【請求項7】
前記水素供給システムは、2本以上のサブタンクから構成されるサブタンク群を複数有しており、前記サブタンク群ごとに水素の供給及び水素の放出を行うことができるように構成されている、請求項6に記載の水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の消費量を低減するため、再生可能エネルギーやバイオマス、有機廃棄物等を利用して発生させた水素を水素負荷に導き、水素負荷において水素を使用する技術が検討されている。しかし、このようにして水素を発生させる場合、例えば再生可能エネルギーの出力の変動等に応じて水素の発生量が変動することがある。また、水素負荷における水素の使用量も一定ではないことが多い。そのため、水素供給源と水素負荷との間に設けられる水素供給システムには、水素の需要量と供給量とのバランスを調整する機能が求められることがある。
【0003】
この種の水素供給システムにおいては、水素の需給のバランスを調整可能な範囲をより広くするため、水素供給システムに貯蔵可能な水素の量を多くすることが望まれている。そこで、水素供給システムにおける水素の容量を高めるため、水素吸蔵合金を備えたタンクが用いられることがある。例えば、特許文献1には、水素吸蔵合金を内蔵するタンクを備え、水素供給源からの水素を前記水素吸蔵合金内に蓄え、水素負荷に対して前記蓄えた水素を供給可能な水素吸蔵合金タンクシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-99511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる場合や水素吸蔵合金から水素を放出させる場合に、水素吸蔵合金を冷却または加熱する必要がある。このような水素吸蔵合金の温度の変更にはエネルギーが必要となるため、特許文献1の水素吸蔵合金タンクシステムは、運転中に生じるエネルギーの損失が大きくなりやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、運転中のエネルギーの損失を低減しつつ、貯蔵可能な水素の量を多くすることができる水素供給システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、水素供給源から供給される水素を水素負荷に導くことができるように構成された水素供給システムであって、
前記水素供給システムは、前記水素供給源に接続され、前記水素供給源から供給される水素を前記水素供給システムに導入可能に構成された水素導入部と、
前記水素負荷に接続され、前記水素供給システムから前記水素負荷に水素を導出可能に構成された水素導出部と、
前記水素導入部と前記水素導出部との両方に接続されたメインタンクと、
前記水素導入部に接続され、水素の圧力を上昇させることができるように構成された昇圧ポンプと、
前記昇圧ポンプに接続され、複数の出口を有するとともに、前記各出口の開閉を切り替え可能に構成された流路切替部と、
前記流路切替部の複数の前記出口のうち第1の出口に接続され、水素吸蔵合金を備えたサブタンクと、を有し、
前記流路切替部の複数の前記出口のうち第2の出口が前記メインタンクに接続されており、
前記メインタンクは、前記水素導入部との間に、開閉可能に構成されたメインタンク入口弁を有しており、
前記メインタンク入口弁は、前記水素導入部における、前記メインタンク入口弁の下流の圧力が前記メインタンク内の圧力より高い場合に開放され、前記メインタンク入口弁の下流の圧力が前記メインタンク内の圧力以下の場合に閉鎖されるように構成されたメインタンク入口弁を有しており、
前記昇圧ポンプは、前記メインタンク入口弁が閉鎖されている場合に動作するように構成されており、
前記流路切替部は、前記メインタンク内の圧力が、前記水素供給源から供給される水素の圧力以上の値である第1の閾値以下の場合には前記第1の出口を閉鎖するとともに前記第2の出口を開放し、前記メインタンク内の圧力が前記第1の閾値よりも高い場合には前記第1の出口を開放するとともに前記第2の出口を閉鎖するように構成されており、
前記サブタンクは、前記メインタンク内の圧力が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値以下の場合に前記水素吸蔵合金から水素を放出するように構成されている、水素供給システムにある。
【発明の効果】
【0008】
前記水素供給システムは、水素導入部における圧力がメインタンク内の圧力よりも高い場合に、水素導入部から導入された水素がメインタンクに直接導かれるように構成されている。また、前記水素供給システムは、メインタンク内の圧力がある程度上昇し、水素導入部の圧力よりも高くなった場合に、昇圧ポンプによって圧力を高めた水素をメインタンクに供給するように構成されている。そして、前記水素供給システムは、メインタンク内の圧力がさらに上昇した場合に、昇圧ポンプによって圧力を高めた水素をメインタンクに供給するように構成されている。このように、水素供給源から供給された水素を貯蔵する場合に、まずメインタンクに水素を貯蔵し、その後にサブタンクに貯蔵することにより、水素の貯蔵時におけるエネルギーの損失の増大を抑制しつつ水素供給システム全体として貯蔵可能な水素の量を多くすることができる。
【0009】
同様に、前記水素供給システムは、メインタンク内の水素の圧力が比較的高い場合に、メインタンクに貯蔵された水素を水素負荷に供給するように構成されている。そして、メインタンク内の水素の圧力が低下した場合に、サブタンクから水素を放出して水素負荷に水素を供給するように構成されている。このように、水素負荷に水素を供給する際に、まずメインタンクの水素を使用し、その後にサブタンクの水素を使用することにより、水素の供給中におけるエネルギーの損失の増大を抑制することができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、運転中のエネルギーの損失を低減しつつ、貯蔵可能な水素の量を多くすることができる水素供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1における水素供給システムの概略構成を示す説明図である。
図2図2は、実施形態1の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図3図3は、実施形態1の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図4図4は、実施形態1の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図5図5は、実施形態1の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図6図6は、実施形態1の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図7図7は、実施形態2における、バイパス配管を備えた水素供給システムの概略構成を示す説明図である。
図8図8は、実施形態2の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図9図9は、実施形態2の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図10図10は、実施形態2の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図11図11は、実施形態2の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図12図12は、実施形態3における、複数のサブタンクを備えた水素供給システムの概略構成を示す説明図である。
図13図13は、実施形態3の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図14図14は、実施形態3の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図15図15は、実施形態3の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
図16図16は、実施形態3の水素供給システムにおける水素の流れの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
前記水素供給システムに係る実施形態を、図1図6を参照しつつ説明する。本形態の水素供給システム1は、図1に示すように、水素供給源Sから供給される水素を水素負荷Lに導くことができるように構成されている。水素供給システム1は、水素供給源Sに接続された水素導入部2と、水素負荷Lに接続された水素導出部7と、水素導入部2と水素導出部7との両方に接続されたメインタンク3と、水素導入部2に接続された昇圧ポンプ4と、昇圧ポンプ4に接続された流路切替部5と、流路切替部5に接続されたサブタンク6と、を有している。
【0013】
本形態の水素供給システム1に接続される水素供給源Sは特に限定されることはない。例えば、水素供給源Sは、太陽光や風力等の再生可能エネルギーを利用した水素発生装置であってもよく、有機廃棄物やバイオマスの発酵を利用した水素発生装置であってもよく、アルミニウムを利用して水素を発生させる水素発生装置であってもよい。水素供給源Sから発生する水素の最高圧力は、水素供給源Sの態様に応じて異なるが、例えばゲージ圧で0.02MPa(G)以上0.3MPa(G)以下の範囲内であることが好ましい。
【0014】
また、水素供給システム1に接続される水素負荷Lも、種々の態様を取り得る。例えば、水素負荷Lは、燃料電池等の発電装置であってもよく、水素を燃料として用いる水素バーナーであってもよい。水素負荷Lの運転に必要な水素の最低圧力は、水素負荷Lの態様に応じて異なるが、例えばゲージ圧で0.01MPa(G)以上0.6MPa(G)以下の範囲内であればよい。より具体的には、水素負荷Lが燃料電池である場合、水素の最低圧力は、ゲージ圧で0.1MPa(G)以上0.6MPa(G)以下であることが好ましい。また、水素負荷Lが水素バーナーである場合、水素の最低圧力は、ゲージ圧で0.01MPa(G)以上0.1MPa(G)以下であることが好ましい。
【0015】
水素導入部2は、水素供給源Sから供給される水素を水素供給システム1に導入することができるように構成されている。水素導入部2の具体的な構成は種々の態様を取り得る。例えば、本形態の水素導入部2は、水素供給源S、メインタンク3及び昇圧ポンプ4のそれぞれに接続された水素導入配管21を有している。また、水素導入配管21には、水素導入部2内の圧力を計測するための圧力計22が取り付けられている。水素導入配管21には、必要に応じて、開閉弁や逆止弁等の、水素の流れを制御するための流体制御機器等が取り付けられていてもよい。
【0016】
水素導出部7は、水素供給システム1を通過した水素を水素負荷Lに導出することができるように構成されている。水素導出部7の具体的な構成は種々の態様を取り得る。例えば、本形態の水素導出部7は、メインタンク3に接続された水素導出配管71と、水素導出配管71上に設けられたレギュレータ72とを有している。また、水素導出配管71には、水素負荷Lに導出される水素の圧力を計測するための圧力計73が取り付けられている。水素導出配管71には、必要に応じて、開閉弁や逆止弁等の、水素の流れを制御するための流体制御機器等が取り付けられていてもよい。
【0017】
本形態のメインタンク3は、水素導入部2の水素導入配管21と、水素導出部7の水素導出配管71との間に設けられており、両者に接続されている。メインタンク3の内部には水素吸蔵合金が充填されておらず、空洞になっている。これにより、メインタンク3は、水素導入部2から供給された水素を気体の状態で貯蔵することができるように構成されている。
【0018】
メインタンク3には、メインタンク3内の圧力を計測するための圧力計31が設けられている。また、メインタンク3は、水素導入配管21との間に設けられたメインタンク入口弁32を有している。本形態のメインタンク入口弁32は、水素導入部2における、メインタンク入口弁32の下流の圧力がメインタンク3内の圧力より高い場合に開放され、メインタンク入口弁32の下流の圧力がメインタンク3内の圧力以下の場合に閉鎖されるように構成されている。より具体的には、メインタンク入口弁32は、水素導入配管21に設けられた圧力計22の圧力と、メインタンク3に設けられた圧力計31の圧力とを比較し、前者の値が後者の値より高い場合に開放され、前者の値が後者の値以下の場合に閉鎖されるように構成されている。
【0019】
また、本形態のメインタンク3は、水素導出配管71との間に開閉可能に構成されたメインタンク出口弁33を有している。メインタンク出口弁33は、水素負荷Lが停止しており、水素の需要がない場合に閉鎖され、水素負荷Lが運転されており、水素の需要がある場合に開放されるように構成されている。
【0020】
メインタンク3の容積は300m以下であることが好ましい。メインタンク3の容積を300m以下とすることにより、メインタンク3の安全性を高め、メンテナンスをより簡易化することができる。同様の観点から、メインタンク3の最高使用圧力は、ゲージ圧において1MPa(G)以下であることが好ましい。
【0021】
本形態の昇圧ポンプ4は、水素導入部2の水素導入配管21に接続されており、水素導入配管21から供給される水素の圧力を上昇させることができるように構成されている。昇圧ポンプ4は、メインタンク入口弁32が閉鎖されている場合、つまり、メインタンク3内の水素の圧力が水素導入部2内の圧力よりも高い場合に動作し、水素の圧力を上昇させるように構成されている。昇圧ポンプ4の具体的な態様は特に限定されることはなく、例えば、機械式の水素圧縮機や水素吸蔵合金を利用した水素圧縮機などを使用することができる。
【0022】
昇圧ポンプ4には、複数の出口51を有するとともに、各出口51の開閉を切り替え可能に構成された流路切替部5が接続されている。本形態の流路切替部5は2つの出口51(51a、51b)を有しており、流路切替部5の第1の出口51aには水素吸蔵合金を備えたサブタンク6が接続されている。また、流路切替部5の第2の出口51bはメインタンク3に接続されている。
【0023】
流路切替部5は、メインタンク3内の圧力が、水素供給源Sから供給される水素の圧力以上の値である第1の閾値以下の場合には、第1の出口51aを閉鎖するとともに第2の出口51bを開放し、メインタンク3内の圧力が第1の閾値よりも高い場合には第1の出口51aを開放するとともに第2の出口51bを閉鎖するように構成されている。流路切替部5をこのように動作させることにより、メインタンク3内に貯蔵される水素の量をできるだけ多くすることができる。その結果、サブタンク6への水素の貯蔵をできるだけ回避し、水素供給システム1の運転中に生じるエネルギーの損失を低減することができる。
【0024】
流路切替部5の動作における第1の閾値は、水素供給源Sから供給される水素をできるだけメインタンク3に導き、水素の貯蔵時におけるエネルギーの損失を低減する観点から、水素供給源Sから供給される水素の圧力以上の値に設定される。第1の閾値を高くすることにより、サブタンク6の使用をできるだけ回避し、水素の貯蔵時におけるエネルギーの損失をより低減することができる。一方、第1の閾値の上限は、メインタンク3内の圧力の過度の上昇を回避する観点から、メインタンク3の最高使用圧力である。メインタンク3内の圧力の過度の上昇をより確実に回避しつつ、メインタンク3に貯蔵可能な水素の量をより多くする観点から、第1の閾値はメインタンク3の最高使用圧力に対して0.7倍以上1倍以下の範囲であることが好ましく、0.75倍以上0.95倍以下の範囲であることがより好ましく、0.8倍以上0.9倍以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0025】
流路切替部5の具体的な態様は特に限定されることはなく、水素導入部2から導入された水素の供給先を切り替えることができるように構成されていれば種々の態様を取り得る。例えば、流路切替部5は、3つ以上のポートを備えた方向切替弁であってもよい。また、流路切替部5は、複数の開閉弁の組み合わせにより水素の供給先を切り替えることができるように構成されていてもよい。本形態の流路切替部5は、具体的には3つのポートを有する方向切替弁であり、水素導入配管21に接続されたポートと第1の出口51aとが連通した状態、水素導入配管21に接続されたポートと第2の出口51bとが連通した状態、及び全てのポートが閉鎖された状態の3つの状態を切り替えることができるように構成されている。
【0026】
流路切替部5の第1の出口51aは、前述したようにサブタンク6に接続されている。水素供給システム1に設けられるサブタンク6の数は、所望する水素の容量に応じて適宜設定すればよい。例えば、本形態の水素供給システム1は、1本のサブタンク6を有している。
【0027】
サブタンク6内には水素吸蔵合金が充填されており、流路切替部5を介してサブタンク6に供給された水素を吸蔵することができるように構成されている。サブタンク6の具体的な構成は特に限定されることはないが、例えば、本形態のサブタンク6は、サブタンク6内の水素吸蔵合金を冷却するための冷却部(図示略)と、サブタンク6内の水素吸蔵合金を加熱するための昇温部(図示略)と、を有している。冷却部は、サブタンク6内に低温の熱媒体を流通させることができるように構成されている。冷却部に低温の熱媒体を流通させることにより、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることができる。また、昇温部は、サブタンク6内に高温の熱媒体を流通させることができるように構成されている。昇温部に高温の熱媒体を流通させることにより、水素吸蔵合金から水素を放出させることができる。
【0028】
また、サブタンク6は、メインタンク3内の圧力が第1の閾値よりも低い第2の閾値以下の場合に水素吸蔵合金に吸蔵された水素を放出することができるように構成されている。サブタンク6をこのように動作させることにより、メインタンク3内に水素供給源Sから供給される水素の供給量が水素負荷Lにおける水素の需要量に対して不足している場合等においても、サブタンク6に貯蔵された水素を放出し、水素負荷Lにおける水素の需要量を容易に充足させることができる。
【0029】
サブタンク6の動作における第2の閾値は、水素負荷Lにおける水素の需要量を充足させる観点から、水素負荷Lの運転に必要な水素の最低圧力以上の値に設定される。一方、第2の閾値を低くすることにより、サブタンク6内の水素吸蔵合金の加熱または冷却をできるだけ回避し、サブタンク6の使用に伴うエネルギーの損失をより低減することができる。水素の需要量と釣り合う供給量を確保しつつ、サブタンク6の使用に伴うエネルギーの損失をより低減する観点から、第2の閾値は水素負荷Lの運転に必要な水素の最低圧力の1倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、1.5倍以上7倍以下の範囲であることがより好ましく、2倍以上5倍以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0030】
サブタンク6から放出される水素の供給先は特に限定されることはない。例えば、サブタンク6は、水素導出部7に水素を供給することができるように構成されていてもよく、メインタンク3に水素を供給することができるように構成されていてもよい。
【0031】
本形態のサブタンク6は、流路切替部5の第1の出口51aに接続されているとともに、水素導入部2の水素導入配管21にも接続されている。また、サブタンク6と水素導入配管21との間には、開閉可能に構成されたサブタンク出口弁61が設けられている。サブタンク出口弁61は、サブタンク6から水素が放出されている場合に開放され、サブタンク6から水素が放出されていない場合に閉鎖されるように構成されている。
【0032】
本形態のサブタンク6のように、サブタンク6と水素導入部2とを接続することにより、サブタンク6から放出された水素を、水素供給源Sから導入された水素と同様に、メインタンク3内の圧力と水素導入部2の圧力との大小関係に応じてメインタンク入口弁32から直接的に、または昇圧ポンプ4を通じて間接的にメインタンク3に供給することが可能となる。
【0033】
次に、図2図4を参照しつつ、水素の供給量が需要量に対して過剰である場合の水素供給システム1の動作の一例を説明する。水素供給源Sから水素導入部2内に水素が導入されると、水素導入部2内の圧力が上昇する。この時、水素導入部2内の圧力がメインタンク3内の圧力よりも高い場合にはメインタンク入口弁32が開放されている。従って、水素供給源Sから供給された水素Hは、図2に示すように、水素導入部2、メインタンク3及び水素導出部7を通り、水素導出部7から水素負荷Lに供給される。
【0034】
一方、水素導入部2内の圧力がメインタンク3内の圧力に近い場合には、水素導入部2から供給された水素がメインタンク3に流入しにくくなる。そのため、水素導入部2内の圧力がメインタンク3内の圧力以下の場合には、水素供給システム1はメインタンク入口弁32を閉鎖するとともに、昇圧ポンプ4の動作を開始させる。これにより、図3に示すように、水素導入部2内の水素Hは昇圧ポンプ4に導かれる。昇圧ポンプ4において圧力が上昇した水素Hは、流路切替部5に導かれる。
【0035】
また、水素導入部2内の圧力がメインタンク3内の圧力以下の場合であっても、水素の供給量が需要量に対して過剰であると、水素負荷Lで消費しきれない水素がメインタンク3内に蓄積される。そのため、メインタンク3内の圧力が次第に上昇し、水素導入部2内の圧力がメインタンク3内の圧力以下となる。この場合においても、メインタンク入口弁32が閉鎖されるとともに昇圧ポンプ4が動作を開始し、図3に示すように、昇圧ポンプ4により昇圧された水素Hが流路切替部5に導かれる。
【0036】
昇圧ポンプ4が動作を開始したときのメインタンク3内の圧力が、水素供給源Sから供給される水素の圧力以上、第1の閾値以下である場合には、流路切替部5における第1の出口51aが閉鎖され、第2の出口51bが開放されている。そのため、この場合には、昇圧ポンプ4により昇圧された水素Hが流路切替部5の第2の出口51bからメインタンク3内に供給される。メインタンク3内に供給された水素Hは、メインタンク出口弁33を通過して水素導出部7に導かれ、水素導出部7から水素負荷Lに供給される。
【0037】
一方、メインタンク3内の圧力が第1の閾値に近くなると、メインタンク3内にさらに水素を貯蔵することが難しくなる。そのため、昇圧ポンプ4が動作を開始したときのメインタンク3内の圧力が第1の閾値より高い場合には、水素供給システム1は、流路切替部5における第1の出口51aを開放するとともに、第2の出口51bを閉鎖する。これにより、図4に示すように、昇圧ポンプ4により昇圧された水素Hが流路切替部5の第1の出口51aからサブタンク6内に供給される。このとき、冷却部によってサブタンク6内の水素吸蔵合金を冷却することにより、サブタンク6に供給された水素Hを水素吸蔵合金に吸蔵させることができる。
【0038】
また、昇圧ポンプ4が動作を開始したときのメインタンク3内の圧力が、水素供給源Sから供給される水素の圧力以上、第1の閾値以下であっても、水素の供給量が需要量に対して過剰であると、水素負荷Lで消費しきれない水素がメインタンク3内に蓄積される。そのため、メインタンク3内の圧力が次第に上昇し、メインタンク3内の圧力が第1の閾値に到達する。この場合においても、流路切替部5の第1の出口51aが開放され、第2の出口51bが閉鎖される。これにより、図4に示すように、流路切替部5を通過した水素が第1の出口51aを通ってサブタンク6に供給され、サブタンク6内の水素吸蔵合金に吸蔵される。
【0039】
このように、本形態の水素供給システム1は、水素導入部2における圧力がメインタンク3内の圧力よりも高い場合には、図2に示すように、水素導入部2から導入された水素がメインタンク3に直接導かれるように構成されている。これにより、メインタンク3内の圧力が比較的低い場合における、運転に伴うエネルギーの損失を低減することができる。
【0040】
また、水素供給システム1は、メインタンク3内の圧力がある程度上昇し、水素導入部2の圧力よりも高くなった場合には、図3に示すように、昇圧ポンプ4によって圧力を高めた水素をメインタンク3に供給するように構成されている。前述したように、メインタンク3には水素吸蔵合金が設けられていないため、昇圧ポンプ4を動作させた場合においても、運転に伴うエネルギーの損失の増大を抑制することができる。
【0041】
そして、水素供給システム1は、メインタンク3内の圧力がさらに上昇した場合には、図4に示すように、昇圧ポンプ4によって圧力を高めた水素をサブタンク6に供給するように構成されている。これにより、水素供給システム1全体として貯蔵可能な水素の量を多くすることができる。
【0042】
次に、図5図6を参照しつつ、水素の需要量が供給量に対して過剰である場合の水素供給システム1の動作の一例を説明する。水素負荷Lにおいて水素が使用されると、まず、図5に示すように、メインタンク3内に貯蔵された水素Hが水素負荷Lに供給される。これにより、メインタンク3内の圧力が低下する。メインタンク3内の圧力が低下し、第2の閾値に到達すると、サブタンク6が水素の放出を開始する。サブタンク6から放出された水素は、例えば、図6に示すようにサブタンク出口弁61、水素導入部2、メインタンク3及び水素導出部7を順次通過し、水素負荷Lに供給される。
【0043】
このように、本形態の水素供給システム1は、水素負荷Lに水素を供給する場合に、図5に示すように先にメインタンク3内の水素を使用し、メインタンク3内の水素の圧力が低下した場合に、図6に示すようにサブタンク6内の水素を使用するように構成されている。これにより、水素供給システム1から水素を供給する際のエネルギーの損失の増大を抑制することができる。
【0044】
(実施形態2)
本形態においては、水素導入部202にバイパス配管24を設けた水素供給システム102の例を示す。なお、本形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一の符号は、特に示さない限り、既出の形態における構成要素と同様の構成要素等を表す。
【0045】
図7に示すように、本形態の水素供給システム102は、水素供給源Sに接続された水素導入部202と、水素負荷Lに接続された水素導出部7と、水素導入部202と水素導出部7との両方に接続されたメインタンク3と、水素導入部202に接続された昇圧ポンプ4と、昇圧ポンプ4に接続された流路切替部5と、流路切替部5に接続されたサブタンク6と、を有している。本形態の水素供給システム102における水素導出部7、メインタンク3、昇圧ポンプ4及び流路切替部5の構成及び動作は、実施形態1と同様である。
【0046】
本形態の水素導入部202は、水素供給源Sに接続された水素導入配管21と、水素導入配管21に接続され、複数の出口231(231a、231b)を備えた第2流路切替部23と、第2流路切替部23の複数の出口231のうち第1の出口231aと水素導出部7とを接続するバイパス配管24と、第2流路切替部23の複数の出口231のうち第2の出口231bとメインタンク入口弁32及び昇圧ポンプ4とを接続する分岐配管25と、を有している。
【0047】
バイパス配管24には、バイパス配管24内の圧力を計測するための圧力計241と、水素導出部7からバイパス配管24への水素の逆流を防止するための逆止弁242とが設けられている。また、第2流路切替部23は、バイパス配管24内の圧力が第3の閾値以下の場合に第1の出口231aを開放するとともに第2の出口231bを閉鎖し、バイパス配管24内の圧力が第3の閾値よりも高い場合に第1の出口231aを閉鎖するとともに第2の出口231bを開放するように構成されている。本形態の水素供給システム102は、水素導入部202をこのように構成することにより、水素供給源Sから供給された水素を、バイパス配管24を介して水素負荷Lに供給することができる。また、水素供給源Sからの水素の供給量が水素負荷Lにおける水素の需要量に対して過剰である場合には、まずメインタンクに水素を貯蔵し、次いでサブタンクに水素を貯蔵することができる。これにより、水素供給システム102における水素の容量を高めつつ、水素供給システム102の運転中に生じるエネルギーの損失をさらに低減することができる。
【0048】
第2流路切替部23の動作における第3の閾値は、水素供給源Sから供給される水素をできるだけバイパス配管24を介して水素導出部7に導く観点から、水素負荷Lの運転に必要な水素の最低圧力以上の値に設定される。第3の閾値を高くすることにより、メインタンク3及びサブタンク6の使用をできるだけ回避し、水素供給時のエネルギーの損失をより低減することができる。一方、第3の閾値が水素供給源Sから供給される水素の圧力よりも高くなると、水素供給源Sから供給される水素がバイパス配管24に進入しにくくなる。従って、水素供給源Sからの水素の供給を継続して行う観点から、第3の閾値の上限は、水素供給源Sから供給される水素の最高圧力である。水素を安定的に水素負荷Lに供給しつつ、水素供給時のエネルギーの損失をより低減する観点から、第3の閾値は水素供給源Sから供給される水素の最高圧力に対して0.5倍以上1倍以下の範囲であることが好ましく、0.6倍以上0.9倍以下の範囲であることがより好ましく、0.7倍以上0.8倍以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0049】
第2流路切替部23の具体的な態様は特に限定されることはなく、水素導入配管21から導入された水素の供給先を切り替えることができるように構成されていれば種々の態様を取り得る。例えば、第2流路切替部23は、3つ以上のポートを有する方向切替弁であってもよい。また、第2流路切替部23は、複数の開閉弁の組み合わせにより水素の供給先を切り替えることができるように構成されていてもよい。本形態の第2流路切替部23は、具体的には3つのポートを有する方向切替弁であり、水素導入配管21に接続されたポートと第1の出口231aとが連通した状態、水素導入配管21に接続されたポートと第2の出口231bとが連通した状態、及び全てのポートが閉鎖された状態の3つの状態を切り替えることができるように構成されている。
【0050】
本形態のサブタンク6は、流路切替部5の複数の出口51(51a、51b)のうちの第1の出口51aと、水素導入部202における分岐配管25との両方に接続されており、サブタンク6から放出された水素を分岐配管25に供給することができるように構成されている。また、サブタンク6と分岐配管25にとの間には、開閉可能に構成されたサブタンク出口弁61が設けられている。サブタンク出口弁61は、サブタンク6から水素が放出されている場合に開放され、サブタンク6から水素が放出されていない場合に閉鎖されるように構成されている。
【0051】
水素導入部202が水素導入配管21、第2流路切替部23及び分岐配管25を有している場合、本形態のサブタンク6のように、サブタンク6と分岐配管25とを接続することにより、サブタンク6から放出された水素を、水素供給源Sから導入された水素と同様に、メインタンク3内の圧力と水素導入部202の圧力との大小関係に応じてメインタンク入口弁32から直接、または昇圧ポンプ4を通じて間接的にメインタンク3に供給することが可能となる。
【0052】
なお、図には示さないが、サブタンク6から放出される水素の供給先を、分岐配管25に替えて、水素導入配管21またはバイパス配管24とすることも可能である。
【0053】
次に、図8図11を参照しつつ、本形態の水素供給システム102において、水素の供給量が需要量に対して過剰である場合の動作の一例を説明する。水素供給源Sから供給された水素は、水素導入配管21を通り、第2流路切替部23に到達する。この時、バイパス配管24内の圧力が第3の閾値以下である場合には、水素供給システム102は、第2流路切替部23の第1の出口231aを開放するとともに第2の出口231bを閉鎖している。そのため、図8に示すように、水素供給源Sから供給された水素Hは、水素導入配管21、第2流路切替部23及びバイパス配管24を通って水素導出部7に導かれる。
【0054】
一方、バイパス配管24内の圧力が第3の閾値に近い場合には、水素供給源Sから供給された水素がバイパス配管24に進入しにくくなる。そのため、バイパス配管24内の圧力が第3の閾値を超える場合には、水素供給システム102は、第2流路切替部23の第1の出口231aを閉鎖するとともに第2の出口231bを開放する。これにより、図9に示すように、第2流路切替部23を通過した水素Hは分岐配管25に導かれる。
【0055】
また、バイパス配管24内の圧力が第3の閾値以下の場合であっても、水素の供給量が需要量に対して過剰であると、水素負荷Lで消費しきれない水素がバイパス配管24内に蓄積される。そのため、バイパス配管24内の圧力が次第に上昇し、バイパス配管24内の圧力が第3の閾値に到達する。この場合においても、第1の出口231aが閉鎖されるとともに第2の出口231bが開放され、図9に示すように、水素供給源Sから供給された水素Hが分岐配管25に流入する。
【0056】
その他の動作は、実施形態1の水素供給システム1と同様である。すなわち、メインタンク入口弁32の下流の圧力、つまり圧力計22によって計測される分岐配管25内の圧力が、圧力計31によって計測されるメインタンク3内の圧力よりも高い場合には、メインタンク入口弁32が開放される。従って、この場合には、水素供給源Sから供給された水素Hは、図9に示すように、水素導入配管21、第2流路切替部23及び分岐配管25を通ってメインタンク3内に供給され、メインタンク3に貯蔵される。メインタンク3内に貯蔵された水素Hは、必要に応じて水素負荷Lに供給される。
【0057】
また、分岐配管25内の圧力がメインタンク3内の圧力以下になると、メインタンク入口弁32が閉鎖されるとともに、昇圧ポンプ4が動作を開始する。昇圧ポンプ4により昇圧された水素Hは、図10に示すように、流路切替部5の第2の出口51bからメインタンク3内に供給され、メインタンク3に貯蔵される。メインタンク3内に貯蔵された水素Hは、必要に応じて水素負荷Lに供給される。
【0058】
メインタンク3内の圧力が第1の閾値以上となった場合には、流路切替部5の第1の出口51aが開放され、第2の出口51bが閉鎖される。これにより、流路切替部5を通過した水素Hは、図11に示すように、第1の出口51aを通ってサブタンク6に供給され、サブタンク6内の水素吸蔵合金に吸蔵される。
【0059】
本形態の水素供給システム102の水素導入部202は、第2流路切替部23と、第2流路切替部23と水素導出部7とを接続するバイパス配管24とを有しており、第2流路切替部23の動作が前述したように構成されている。このように構成された水素供給システム102においては、水素供給源Sから供給された水素Hを、図8に示すように、まずバイパス配管24を介して水素導出部7へ導くことができる。また、バイパス配管24を介して供給される水素の供給量が需要量に対して過剰となる場合には、図9図11に示すように、余剰の水素Hをメインタンク3またはサブタンク6に貯蔵することができる。それ故、本形態の水素供給システム102は、貯蔵可能な水素の量を多くしつつ、運転中に生じるエネルギーの損失をさらに低減することができる。
【0060】
(実施形態3)
本形態では、複数のサブタンク603を有する水素供給システム103の例を説明する。図12に示すように、本形態の水素供給システム103は、水素供給源Sに接続された水素導入部202と、水素負荷Lに接続された水素導出部7と、水素導入部202と水素導出部7との両方に接続されたメインタンク3と、水素導入部202に接続された昇圧ポンプ4と、昇圧ポンプ4に接続された流路切替部5と、流路切替部5に接続された複数のサブタンク603と、を有している。本形態の水素供給システム103における水素導入部202、水素導出部7、メインタンク3、昇圧ポンプ4及び流路切替部5の構成及び動作は、実施形態2と同様である。
【0061】
本形態の水素供給システム103は、6本のサブタンク603を有している。各サブタンク603は、その入り口にサブタンク開閉弁62を有しており、サブタンク603の内部と外部とが連通した開放状態と、サブタンク603の内部が外部から遮断された閉鎖状態とを切り替えることができるように構成されている。
【0062】
また、6本のサブタンク603は、3本のサブタンク603からなる第1サブタンク群63aと、残る3本のサブタンク603からなる第2サブタンク群63bとに分かれている。第1サブタンク群63aを構成する3本のサブタンク603は、昇圧ポンプ4に対して並列に接続されている。第1サブタンク群63aと流路切替部5との間には、開放状態と閉鎖状態とを切り替え可能に構成された第1サブタンク群入口弁631aが設けられている。また、第1サブタンク群63aは、水素導入部202の分岐配管25に対しても並列に接続されている。第1サブタンク群63aと分岐配管25との間には、開放状態と閉鎖状態とを切り替え可能に構成された第1サブタンク群出口弁632aが設けられている。
【0063】
第2サブタンク群63bを構成する3本のサブタンク603は、流路切替部5の第1の出口51aに対して並列に接続されている。また、第2サブタンク群63bは、水素導入部202の分岐配管25に対しても並列に接続されている。第2サブタンク群63bと分岐配管25との間には、開放状態と閉鎖状態とを切り替え可能に構成された第2サブタンク群出口弁632bが設けられている。
【0064】
本形態の水素供給システム103は、複数のサブタンク603を有しており、複数のサブタンク603から一部のサブタンク603を選択し、当該サブタンク603に水素を供給することができるように構成されている。例えば図13に示すように、水素供給源Sから供給される水素Hを第1サブタンク群63aを構成する3本のサブタンク603に導く場合には、流路切替部5における第1の出口51a及び第2の出口51bの両方を閉鎖するとともに、第1サブタンク群入口弁631a及び各サブタンク603のサブタンク開閉弁62を開放すればよい。この際、3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603のサブタンク開閉弁62を閉鎖することにより、第1サブタンク群63aを構成する3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603に水素を供給することもできる。
【0065】
また、例えば図14に示すように、第2サブタンク群63bを構成する3本のサブタンク603に水素を供給しようとする場合には、流路切替部5の第1の出口51aを開放し、第2の出口51bを閉鎖するとともに、各サブタンク603のサブタンク開閉弁62を開放すればよい。この際、3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603のサブタンク開閉弁62を閉鎖することにより、第2サブタンク群63bを構成する3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603に水素を供給することもできる。
【0066】
このように、複数のサブタンク603から任意に選択したサブタンク603に水素を供給すると、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させるサブタンク603以外のサブタンク603の冷却が不要となる。これにより、サブタンク603に水素を吸蔵させる際のエネルギーの損失の増大を回避することができる。
【0067】
また、本形態の水素供給システム103は、複数のサブタンク603から一部のサブタンク603を選択し、当該サブタンク603から水素を放出させることができるように構成されている。例えば図15に示すように、第1サブタンク群63aを構成する3本のサブタンク603から水素を放出させようとする場合には、第1サブタンク群出口弁632a及び各サブタンク603のサブタンク開閉弁62を開放し、サブタンク603内の水素吸蔵合金を加熱すればよい。この際、3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603のサブタンク開閉弁62を閉鎖する、あるいは一部のサブタンク603の水素吸蔵合金のみを加熱する等の方法により、第1サブタンク群63aを構成する3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603から水素を放出させることもできる。
【0068】
また、例えば図16に示すように、第2サブタンク群63bを構成する3本のサブタンク603から水素を放出しようとする場合には、第2サブタンク群出口弁632b及び各サブタンク603のサブタンク開閉弁62を開放し、サブタンク603内の水素吸蔵合金を加熱すればよい。この際、3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603のサブタンク開閉弁62を閉鎖する、あるいは一部のサブタンク603の水素吸蔵合金のみを加熱する等の方法により、第2サブタンク群63bを構成する3本のサブタンク603のうち一部のサブタンク603から水素を放出させることもできる。
【0069】
このように、複数のサブタンク603のうち一部のサブタンク603を選択し、当該サブタンク603から水素を放出させることにより、サブタンク603から放出される水素の圧力の過度な上昇を抑制することができる。また、サブタンク603からの水素の放出が進行し、サブタンク603内に吸蔵された水素の残量が少なくなった場合であっても、他のサブタンク603から水素を放出させることができる。これにより、サブタンク603から放出される水素の圧力を容易に維持することができる。
【0070】
さらに、本形態の水素供給システム103は、2本以上のサブタンク603から構成されるサブタンク群63(63a、63b)を複数有しており、サブタンク群63ごとに水素の供給及び水素の放出を行うことができるように構成されている。それ故、例えばいずれかのサブタンク群63から水素を放出した後に水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる場合に、当該サブタンク群63とは異なるサブタンク群63の水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることができる。この場合、水素を吸蔵させるサブタンク群63における水素吸蔵合金の温度は、水素を放出させた後のサブタンク群63における水素吸蔵合金の温度よりも低くなっている。それ故、水素を放出させた直後のサブタンク群63とは別のサブタンク群63に水素を吸蔵させることにより、水素吸蔵合金の冷却に必要なエネルギーをより低減することができる。
【0071】
さらに、水素を放出させた直後のサブタンク群63とは別のサブタンク群63に水素を吸蔵させることにより、水素の放出が完了したサブタンク群63の温度を外気との熱交換によって自然に低下させることができる。その結果、水素吸蔵合金の冷却に必要なエネルギーをさらに低減することができる。
【0072】
従って、2つ以上のサブタンク群63を有する場合には、サブタンク群63ごとに水素の供給及び水素の放出を行うことにより、水素供給システム103の運転中に生じるエネルギーの損失をより低減することができる。
【0073】
以上、実施形態1~3に基づいて本発明に係る水素供給システムの態様を説明したが、本発明に係る水素供給システムの具体的な態様は、実施形態に示した態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0074】
1、102、103 水素供給システム
2、202 水素導入部
3 メインタンク
32 メインタンク入口弁
4 昇圧ポンプ
5 流路切替部
51 出口
6、603 サブタンク
7 水素導出部
S 水素供給源
L 水素負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16