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  • 特開-電圧変換装置、電圧変換方法 図1
  • 特開-電圧変換装置、電圧変換方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075319
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電圧変換装置、電圧変換方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240527BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186691
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】木内 康太
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730BB23
5H730BB43
5H730CC01
5H730EE57
5H730FD51
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX24
5H730XX35
5H730XX43
5H770CA02
5H770DA11
5H770DA47
5H770HA02X
5H770LA02X
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】入力電圧が変動する場合でも効果的に過電流保護動作を行える電圧変換装置等を提供する。
【解決手段】電圧変換装置10は、トランジスタ14のスイッチング動作に応じて入力電圧Vinを出力電圧Voutに変換する電圧変換装置10であって、トランジスタ14を流れる電流Ioutを電圧として検出するシャント抵抗16と、スイッチング動作のための制御信号をトランジスタ14に印加する制御端子151と、シャント抵抗16による検出電圧Vsenseを取得する検出端子152と、を備える電圧制御回路15であって、検出電圧Vsenseが所定の過電流保護閾値Vthを超える場合に所定の過電流保護動作を行う電圧制御回路15と、アノード側に入力電圧Vinが供給され、カソード側に検出端子152が接続されるダイオード181を備える電圧補償回路18と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御素子の制御動作に応じて入力電圧を出力電圧に変換する電圧変換装置であって、
前記制御素子を流れる電流を検出する電流検出部と、
前記制御動作のための制御信号を前記制御素子に印加する制御端子と、前記電流検出部による検出結果を取得する検出端子と、を備える電圧制御回路であって、前記検出結果が所定の過電流保護閾値を超える場合に所定の過電流保護動作を行う電圧制御回路と、
アノード側に前記入力電圧が供給され、カソード側に前記検出端子が接続されるダイオードを備える電圧補償回路と、
を備える電圧変換装置。
【請求項2】
前記制御素子は、前記制御動作としてスイッチング動作を行うスイッチング素子であり、
前記電流検出部は、前記スイッチング素子を流れる電流を電圧として検出するシャント抵抗であり、
前記検出端子は、前記検出結果として前記シャント抵抗による検出電圧を取得する、
請求項1に記載の電圧変換装置。
【請求項3】
前記入力電圧が所定の電圧補償閾値を超えない場合、前記ダイオードの電圧が順方向電圧降下を超えずに前記電圧補償回路が実質的に動作せず、
前記入力電圧が前記電圧補償閾値を超える場合、前記ダイオードの電圧が前記順方向電圧降下を超えて前記電圧補償回路が実質的に動作する、
請求項2に記載の電圧変換装置。
【請求項4】
前記入力電圧が前記電圧補償閾値を超えずに前記電圧補償回路が実質的に動作しない場合の当該入力電圧に対する前記検出電圧の減少率は、前記入力電圧が前記電圧補償閾値を超えて前記電圧補償回路が実質的に動作する場合の当該入力電圧に対する前記検出電圧の減少率より大きい、請求項3に記載の電圧変換装置。
【請求項5】
前記電圧補償回路は、前記ダイオードのカソード側に接続される検出電圧増加抵抗であって、当該ダイオードからの電流が流れることで前記検出電圧を増加させる検出電圧増加抵抗を備える、請求項2から4のいずれかに記載の電圧変換装置。
【請求項6】
前記検出電圧増加抵抗は、前記ダイオードのカソード側において、前記検出端子に対して並列に接続される、請求項5に記載の電圧変換装置。
【請求項7】
前記電圧補償回路は、前記ダイオードのアノード側に接続される分圧抵抗であって、前記入力電圧を分圧して当該ダイオードに供給する分圧抵抗を備える、請求項1から4のいずれかに記載の電圧変換装置。
【請求項8】
前記電流検出部と前記検出端子の間にローパスフィルタが設けられる、請求項1から4のいずれかに記載の電圧変換装置。
【請求項9】
前記電圧補償回路の出力は、前記検出端子と前記ローパスフィルタの間に接続される、請求項8に記載の電圧変換装置。
【請求項10】
制御素子の制御動作に応じて入力電圧を出力電圧に変換する電圧変換方法であって、
前記制御素子を流れる電流を検出することと、
前記制御動作のための制御信号を前記制御素子に印加する制御端子と、前記検出された電流を取得する検出端子と、を備える電圧制御回路によって、前記検出された電流が所定の過電流保護閾値を超える場合に所定の過電流保護動作を行うことと、
アノード側に前記入力電圧が供給され、カソード側に前記検出端子が接続されるダイオードを備える電圧補償回路によって、前記入力電圧が所定の電圧補償閾値を超えない場合、前記ダイオードの電圧が順方向電圧降下を超えずに当該電圧補償回路を実質的に動作させず、前記入力電圧が前記電圧補償閾値を超える場合、前記ダイオードの電圧が前記順方向電圧降下を超えて前記電圧補償回路を実質的に動作させることと、
を備える電圧変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、いわゆるスイッチング電源における過電流保護回路が開示されている。スイッチング素子を流れる電流が過大にならないように監視するコンパレータが設けられる。検出された電流がコンパレータの閾値を超えると、スイッチング素子を強制的にオフ状態に遷移させる過電流保護動作が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-271817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
典型的なスイッチング電源では、出力可能な定格電力が予め定められている。このように固定的な定格電力のスイッチング電源に供給される入力電圧が変動する場合、スイッチング素子を流れる電流も変動する。例えば、スイッチング電源に供給される入力電圧が増加すると、一定の定格電力に適合するためにスイッチング素子を流れる電流が減少する。従って、入力電圧が大きい場合には、スイッチング素子を流れる電流がコンパレータの閾値を超えづらくなり、過電流保護動作が開始されにくくなる。このため、過電流保護動作が開始されるまでの定格以上の電流に耐えうる部品選定が求められる結果、スイッチング電源の大型化やコストアップに繋がってしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、入力電圧が変動する場合でも効果的に過電流保護動作を行える電圧変換装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電圧変換装置は、制御素子の制御動作に応じて入力電圧を出力電圧に変換する電圧変換装置であって、制御素子を流れる電流を検出する電流検出部と、制御動作のための制御信号を制御素子に印加する制御端子と、電流検出部による検出結果を取得する検出端子と、を備える電圧制御回路であって、検出結果が所定の過電流保護閾値を超える場合に所定の過電流保護動作を行う電圧制御回路と、アノード側に入力電圧が供給され、カソード側に検出端子が接続されるダイオードを備える電圧補償回路と、を備える。
【0007】
この態様によれば、入力電圧に応じて電圧補償回路のダイオードを流れる電流によって、電圧制御回路の検出端子における検出結果を強制的に増加させられる。この結果、入力電圧が大きく制御素子を実際に流れる電流が小さい場合であっても、電圧制御回路の検出端子における検出結果は過電流保護閾値を超えやすくなり、効果的に過電流保護動作が開始される。
【0008】
本発明の別の態様は、電圧変換方法である。この方法は、制御素子の制御動作に応じて入力電圧を出力電圧に変換する電圧変換方法であって、制御素子を流れる電流を検出することと、制御動作のための制御信号を制御素子に印加する制御端子と、検出された電流を取得する検出端子と、を備える電圧制御回路によって、検出された電流が所定の過電流保護閾値を超える場合に所定の過電流保護動作を行うことと、アノード側に入力電圧が供給され、カソード側に検出端子が接続されるダイオードを備える電圧補償回路によって、入力電圧が所定の電圧補償閾値を超えない場合、ダイオードの電圧が順方向電圧降下を超えずに当該電圧補償回路を実質的に動作させず、入力電圧が電圧補償閾値を超える場合、ダイオードの電圧が順方向電圧降下を超えて電圧補償回路を実質的に動作させることと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入力電圧が変動する場合でも効果的に過電流保護動作を行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電圧変換装置の構成を模式的に示す。
図2】電圧補償回路の効果を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電圧変換装置10の構成を模式的に示す。電圧変換装置10は、トランジスタ14等の制御素子の制御動作に応じて、入力電圧Vinを出力電圧Voutに変換する装置である。本実施形態では、入力電圧Vinが交流電圧であり、出力電圧Voutが最終的に直流電圧に変換される例、すなわち、電圧変換装置10がAC-DCコンバータである例について説明するが、本発明に係る電圧変換装置10は、交流入力電圧を交流出力電圧に変換するAC-ACコンバータとして構成されてもよいし、直流入力電圧を直流出力電圧に変換するDC-DCコンバータとして構成されてもよいし、直流入力電圧を交流出力電圧に変換するDC-ACコンバータ(インバータ)として構成されてもよい。
【0014】
このような本発明に係る各種の電圧変換装置10は、後述する電圧制御回路15からの制御信号および入力電圧Vinに応じて出力電圧Voutを制御する制御素子またはスイッチング素子としてのトランジスタ14等を備える。本発明に係る電圧変換装置10は、トランジスタ14を流れる電流が過大にならないように、状況に応じて電圧制御回路15に過電流保護動作を行わせる過電流保護を主な対象とする。特に、本実施形態では、後述する電圧補償回路18によって、入力電圧Vinが変動する場合でも電圧制御回路15が効果的に過電流保護動作を行える。
【0015】
AC-DCコンバータである図1の電圧変換装置10は、整流回路11と、平滑コンデンサ12と、トランス13と、トランジスタ14と、電圧制御回路15と、シャント抵抗16と、ローパスフィルタ17と、電圧補償回路18を備える。
【0016】
整流回路11は、電圧変換装置10に外部から供給される単相交流としての入力電圧Vinを一定の方向(図1において下から上に向かう方向)に整流して直流(脈流)に変換するダイオード111~114を備える。ダイオード111は、入力電圧Vin図1における上側の入力端子の電位が正の時に、上記の方向に電流を流す。ダイオード112は、入力電圧Vin図1における上側の入力端子の電位が負の時に、上記の方向に電流を流す。ダイオード113は、入力電圧Vin図1における下側の入力端子の電位が正の時に、上記の方向に電流を流す。ダイオード114は、入力電圧Vin図1における下側の入力端子の電位が負の時に、上記の方向に電流を流す。これらのブリッジ状に接続されたダイオード111~114によって、整流回路11の出力端子間には、方向が一定で大きさが変動する脈流が現われる。平滑コンデンサ12は、整流回路11で変換された直流(脈流)を平滑して波形を整える。
【0017】
以上のような整流回路11および平滑コンデンサ12を経て、単相交流としての入力電圧Vinは波形が整えられた直流電圧VDCとなる。この直流電圧VDCは、電圧変換装置10における高電位ライン10Hと低電位ライン10Lの間に現れて、電圧変換装置10における後段(図1における右側)の各部に直接的または間接的に印加される。
【0018】
トランス13は、高電位ライン10Hと低電位ライン10Lの間に接続されて直流電圧VDCが印加される一次側の一次コイル131と、一次コイル131と磁気的に結合された二次側の二次コイル132を備える。高電位ライン10Hと低電位ライン10Lの間には、一次コイル131と直列に制御素子またはスイッチング素子としてのトランジスタ14が接続される。トランジスタ14の後述するスイッチング動作に応じて直流電圧VDCが間欠的に印加されるトランス13の一次コイル131には、交流電圧としての一次側出力電圧Voutが現れる。そして、トランス13の二次側における二次コイル132には、一次コイル131との巻数比等に応じて一次側出力電圧Voutが変換された二次側出力電圧Vout′が現れる。二次側出力電圧Vout′は、不図示の後段の回路によって最終的に直流電圧に変換される。
【0019】
トランジスタ14は、例えば、後述する電圧制御回路15の制御端子151が接続される制御端子としてのゲートと、高電位ライン10H側に接続される高電位端子としてのコレクタと、低電位ライン10L側に接続される低電位端子としてのエミッタを備える絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。トランジスタ14は、トランス13の一次コイル131に現れる出力電圧Voutの制御動作としてスイッチング動作を行うスイッチング素子である。なお、トランジスタ14は、制御端子としてのゲートと、高電位端子としてのドレインと、低電位端子としてのソースを備える電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)でもよいし、制御端子としてのベースと、高電位端子としてのコレクタと、低電位端子としてのエミッタを備えるバイポーラトランジスタでもよい。
【0020】
集積回路(IC:Integrated Circuit)として構成される電圧制御回路15は、トランジスタ14のゲートにスイッチング動作のための制御信号を印加する制御端子151を備える。例えば、電圧制御回路15は、制御端子151からPWM(パルス幅変調:Pulse Width Modulation)によってデューティ比が制御されたパルスを制御信号としてトランジスタ14のゲートに印加する。トランジスタ14は、パルスの有無に応じてオン状態とオフ状態の間でスイッチング動作を行う。具体的には、パルスがゲートに印加されている間はトランジスタ14がオン状態となり、コレクタとエミッタの間のチャネルが導通状態となる。また、パルスがゲートに印加されていない間はトランジスタ14がオフ状態となり、コレクタとエミッタの間のチャネルが非導通状態となる。
【0021】
高電位ライン10Hと低電位ライン10Lの間には、一次コイル131およびトランジスタ14と直列にシャント抵抗16が接続される。シャント抵抗16は、トランジスタ14を流れる電流Ioutを検出する電流検出部である。具体的には、シャント抵抗16は、トランジスタ14を流れる電流Ioutを電圧Vsenseとして検出する。ここで、シャント抵抗16の抵抗値をRとすれば、オームの法則により、Vsense≒Iout×R、である。シャント抵抗16の抵抗値Rは任意に設定できるが、例えば、入力電圧Vinの範囲を200Vと400Vの間とする電圧変換装置10においては、数mΩまたは数十mΩ程度とするのが好ましい。
【0022】
シャント抵抗16による検出結果としての検出電圧Vsenseは、電圧制御回路15の検出端子152に入力される。電圧制御回路15は、検出端子152で取得された検出電圧Vsenseを、所定の過電流保護閾値Vthを用いて監視する。検出電圧Vsenseが過電流保護閾値Vthを超えない場合、電圧制御回路15はトランジスタ14を流れる電流Ioutが正常範囲内であると判断し、制御端子151からPWM信号等の制御信号を通常通りに出力する。一方、検出電圧Vsenseが過電流保護閾値Vthを超える場合、電圧制御回路15はトランジスタ14を流れる電流Ioutが過大である(すなわち、過電流が発生している)と判断し、制御端子151からの制御信号の通常の出力を即時に停止する等の所定の過電流保護動作を行う。
【0023】
シャント抵抗16と検出端子152の間には、ローパスフィルタ17が設けられる。ローパスフィルタ17は、シャント抵抗16による検出電圧Vsenseから、トランジスタ14のスイッチングノイズ等の高周波ノイズを除去するためのフィルタである。ローパスフィルタ17は、シャント抵抗16に対して並列に設けられる抵抗171とコンデンサ172によって構成される。抵抗171の抵抗値は例えば数百Ω程度であり、例えば数mΩまたは数十mΩとされるシャント抵抗16の抵抗値Rと比べて極めて大きい。電圧制御回路15の検出端子152は、抵抗171とコンデンサ172の接続点に接続される。このように、検出端子152では、ローパスフィルタ17によって高周波ノイズが除去された検出電圧Vsenseを取得できるため、電圧制御回路15は、トランジスタ14のスイッチングノイズ等の影響を受けず高精度に過電流保護動作を行うべきタイミングを判断できる。
【0024】
電圧補償回路18は、例えば、200Vと400Vの間のような広い範囲の入力電圧Vinが電圧変換装置10に供給される場合でも、電圧制御回路15が適切な過電流保護動作を行えるように、検出端子152における検出電圧Vsenseを補償または補正する回路である。電圧補償回路18は、ダイオード181と、分圧抵抗182、183と、検出電圧増加抵抗184と、補助抵抗185を備える。
【0025】
ダイオード181は、アノード側に入力電圧Vinに基づく直流電圧VDCが供給され、カソード側に検出端子152が接続される。分圧抵抗182、183は、ダイオード181のアノード側(図1における左側)に接続され、入力電圧Vinに基づく直流電圧VDCを分圧して当該ダイオード181のアノードに供給する。このように、ダイオード181のアノードには、分圧抵抗182、183の抵抗値の比によって分圧された直流電圧VDC(以下では入力電圧Vin′とも表される)が入力される。
【0026】
ダイオード181は、順方向(図1における左側のアノードから右側のカソードに向かう方向)に電流を流すために必要な電圧である順方向電圧降下Vまたは順方向電圧Vを有する。ダイオード181への入力電圧Vin′が順方向電圧Vを超えない場合、ダイオード181に順方向の電流が流れずに電圧補償回路18が実質的に動作しない。また、ダイオード181への入力電圧Vin′が順方向電圧Vを超える場合、ダイオード181に順方向の電流が流れて電圧補償回路18が実質的に動作する。このように、ダイオード181の順方向電圧Vは、電圧補償回路18の非動作状態(Vin′<Vの場合)と動作状態(Vin′>Vの場合)が切り替わる閾値として機能する。
【0027】
なお、Vin′=Vの場合の入力電圧Vinを、以下では電圧補償閾値VinXとも表す。すなわち、電圧変換装置10への入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超えない場合、ダイオード181への入力電圧Vin′が順方向電圧降下Vを超えずに電圧補償回路18が実質的に動作しない。また、電圧変換装置10への入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超える場合、ダイオード181への入力電圧Vin′が順方向電圧降下Vを超えて電圧補償回路18が実質的に動作する。
【0028】
ダイオード181のカソード側(図1における右側)に設けられる検出電圧増加抵抗184は、電圧制御回路15の検出端子152に対して並列に接続される。具体的には、検出電圧増加抵抗184は、ダイオード181のカソードと低電位ライン10Lの間に接続される。一方、同じくダイオード181のカソード側に設けられる補助抵抗185は、電圧制御回路15の検出端子152に対して直列に接続される。具体的には、補助抵抗185は、ダイオード181のカソードと検出端子152の間に接続される。このように、検出電圧増加抵抗184は、ダイオード181のカソードより検出端子152から遠ざかる側(図1における下側)に接続され、補助抵抗185は、ダイオード181のカソードより検出端子152に近づく側(図1における上側)に接続される。
【0029】
検出電圧増加抵抗184は、ダイオード181からの電流が流れることで、検出端子152における検出電圧Vsenseを増加させる。すなわち、ダイオード181からの電流が流れることで検出電圧増加抵抗184に発生する電圧が、検出電圧Vsenseを強制的に押し上げる。このようにダイオード181および検出電圧増加抵抗184によって検出電圧Vsenseが補償または補正される効果は、電圧補償回路18が実質的に動作する場合、すなわち、前述のように、電圧変換装置10への入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超えて、ダイオード181への入力電圧Vin′が順方向電圧降下Vを超える場合に得られる。検出電圧増加抵抗184の抵抗値は任意に設定できるが、例えば、入力電圧Vinの範囲を200Vと400Vの間とする電圧変換装置10においては、数百Ωまたは数kΩ程度とするのが好ましい。このように、検出電圧増加抵抗184の抵抗値は、数mΩまたは数十mΩとされるシャント抵抗16の抵抗値Rと比べて極めて大きく、数百Ω程度とされるローパスフィルタ17の抵抗171の抵抗値と比べて大きくするのが好ましい。
【0030】
補助抵抗185は、主に電圧補償回路18が実質的に動作していない場合、すなわち、前述のように、電圧変換装置10への入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超えず、ダイオード181への入力電圧Vin′が順方向電圧降下Vを超えない場合に、検出端子152における検出電圧Vsenseを引き下げる機能を有する。このことは、検出端子152における検出電圧Vsenseの一部が、補助抵抗185(および検出電圧増加抵抗184)を通じて低電位ライン10L側に放電される(または、逃げる)ためと理解されてもよい。なお、前述の検出電圧増加抵抗184も、電圧補償回路18(特にダイオード181)の非動作時には補助抵抗185と同様に機能する(すなわち、検出端子152における検出電圧Vsenseを引き下げる)ため、補助抵抗185を設けなくてもよい。このように、検出電圧増加抵抗184は、ダイオード181(電圧補償回路18)の非動作時(Vin′<V)には検出電圧Vsenseを引き下げ、ダイオード181(電圧補償回路18)の動作時(Vin′>V)には検出電圧Vsenseを押し上げるという二つの異なる機能を有する。
【0031】
以上のような電圧補償回路18の出力(図1の例では補助抵抗185の上端)は、電圧制御回路15の検出端子152とシャント抵抗16の高電位側の上端の間に接続される。具体的には、電圧補償回路18の出力は、電圧制御回路15の検出端子152とローパスフィルタ17(厳密には、抵抗171とコンデンサ172の接続点)の間に接続される。
【0032】
図2は、電圧補償回路18の効果を模式的に示す。横軸は電圧変換装置10への入力電圧Vinを表し、縦軸は電圧制御回路15の検出端子152における検出電圧Vsenseを表す。電圧補償回路18が設けられる本実施形態における検出電圧Vsenseの遷移が実線で示され、電圧補償回路18が設けられない二つの比較例における検出電圧Vsenseの遷移がそれぞれ点線で示される。図2における上側の点線は、シャント抵抗16の抵抗値Rが比較的大きい(Large shunt register)第1の比較例を示し、図2における下側の点線は、シャント抵抗16の抵抗値Rが比較的小さい(Small shunt register)第2の比較例を示す。
【0033】
図2における実線(本実施形態)および二つの点線(第1および第2の比較例)は、電圧変換装置10が予め定められている定格電力を出力する場合の検出電圧Vsenseの遷移を表す。このように固定的な定格電力を電圧変換装置10が出力するために、電圧変換装置10に供給される入力電圧Vinが増加すると、トランジスタ14を流れる電流Ioutが減少するため、シャント抵抗16によって検出されて電圧制御回路15の検出端子152に現れる検出電圧Vsenseは減少する。すなわち、図2において、実線(本実施形態)および二つの点線(第1および第2の比較例)は、概ね右下がりになる。なお、図2では単純化のために、実線および二つの点線が直線状または折れ線状に示されている。実際には、検出電圧Vsenseが入力電圧Vinに対して曲線状または非線型に変化すると考えられる。
【0034】
シャント抵抗16の抵抗値Rが比較的大きい第1の比較例(上側の点線)では、入力電圧Vinの最小値Vminに対する検出電圧Vsenseが、電圧制御回路15の過電流保護閾値Vthを超えている。このため、電圧制御回路15は、トランジスタ14に過電流が発生していると判断して過電流保護動作を行ってしまう。これは、入力電圧Vinが小さい(例えば、最小値Vmin等)場合に、電圧変換装置10が定格電力を出力できないことを意味する。
【0035】
このような問題に対処するために、第2の比較例(下側の点線)のように、シャント抵抗16の抵抗値Rを下げて、検出電圧Vsense(≒Iout×R)を引き下げることが考えられる。この場合、入力電圧Vinの最小値Vminに対する検出電圧Vsenseが、電圧制御回路15の過電流保護閾値Vthを超えないため、第1の比較例のように電圧制御回路15は過電流保護動作を行わない。しかし、入力電圧Vinが増加すると検出電圧Vsenseが減少するため、例えば、入力電圧Vinが最大値Vmaxの時の検出電圧Vsenseが、電圧制御回路15の過電流保護閾値Vthを大幅に下回ってしまう。このように、入力電圧Vinが大きい場合には、検出電圧Vsenseが過電流保護閾値Vthを超えづらくなり、電圧制御回路15による過電流保護動作が開始されにくくなる。このため、過電流保護動作が開始されるまでの定格以上の電流に耐えうる部品選定が求められる結果、電圧変換装置10の大型化やコストアップに繋がってしまう。
【0036】
実線で示される本実施形態(Voltage compensation)では、前述した電圧補償回路18の作用によって、第1および第2の比較例の問題を一挙に解決できる。例えば、入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超えない低電圧領域では、ダイオード181に電流は流れないものの、電圧制御回路15の検出端子152における検出電圧Vsenseの一部が、補助抵抗185および検出電圧増加抵抗184を通じて低電位ライン10L側に放電される。この結果、例えば、シャント抵抗16の抵抗値Rが第1の比較例(上側の点線)と同様に大きい場合であっても、検出電圧Vsenseは第1の比較例よりも引き下げられて、入力電圧Vinの最小値Vminに対しても電圧制御回路15の過電流保護閾値Vthを超えない。このように、本実施形態によれば、第1の比較例と同様に抵抗値Rの大きいシャント抵抗16を使用した場合でも、第1の比較例のように低電圧領域で電圧制御回路15が過電流保護動作を行ってしまうという問題を解決できる。
【0037】
また、入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超える高電圧領域では、ダイオード181からの電流が検出電圧増加抵抗184を流れて、検出電圧Vsenseが押し上げられる。この結果、高電圧領域(Vin>VinX)における入力電圧Vinに対する検出電圧Vsenseの減少率(負の傾きまたは微分の絶対値)が、低電圧領域(Vin<VinX)における入力電圧Vinに対する検出電圧Vsenseの減少率(負の傾きまたは微分の絶対値)より小さくなる。換言すれば、入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超えずに電圧補償回路18が実質的に動作しない場合の当該入力電圧Vinに対する検出電圧Vsenseの減少率は、入力電圧Vinが電圧補償閾値VinXを超えて電圧補償回路18が実質的に動作する場合の当該入力電圧Vinに対する検出電圧Vsenseの減少率より大きい。この結果、高電圧領域における検出電圧Vsenseと過電流保護閾値Vthの乖離が、第2の比較例と比べて著しく小さくなると共に、第1の比較例と比べても小さくなる。このように、本実施形態によれば、高電圧領域においても検出電圧Vsenseが過電流保護閾値Vthを超えやすくなるため、第2の比較例のような過電流保護動作が開始されるまでの定格以上の電流に耐えるための電圧変換装置10の大型化やコストアップという問題を解決できる。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0039】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0040】
10 電圧変換装置、13 トランス、14 トランジスタ、15 電圧制御回路、16 シャント抵抗、17 ローパスフィルタ、18 電圧補償回路、151 制御端子、152 検出端子、181 ダイオード、182、183 分圧抵抗、184 検出電圧増加抵抗、185 補助抵抗。
図1
図2