(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007532
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 3/04 20060101AFI20240110BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20240110BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20240110BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L3/04 ZBP
C08L29/04 B
C08K5/053
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109545
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022107893
(32)【優先日】2022-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502247341
【氏名又は名称】プランティック・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼輪 峻
(72)【発明者】
【氏名】榎本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】内藤 加菜
(72)【発明者】
【氏名】太田 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジョン・マキャフリィ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB04W
4J002BE02X
4J002EC046
4J002EC056
4J002EJ036
4J002EU026
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD026
4J002FD170
4J002GF00
4J002GG00
4J200AA04
4J200BA25
4J200BA37
4J200CA01
4J200CA02
4J200DA17
4J200EA11
4J200EA13
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制でき、水を添加しなくても溶融可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、変性デンプン(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びポリオール可塑剤(C)を含み、ポリオール可塑剤(C)の含有量が、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であり、ポリオール可塑剤(C)が25℃以上のTgを有するポリオール可塑剤(c1)を含み、温度23℃・相対湿度75%で1週間調湿した後の含水率が17.0質量%以下である、樹脂組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性デンプン(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びポリオール可塑剤(C)を含み、ポリオール可塑剤(C)の含有量は、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であり、ポリオール可塑剤(C)は25℃以上のTgを有するポリオール可塑剤(c1)を含み、 温度23℃・相対湿度75%で1週間調湿した後の含水率は17.0質量%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記変性デンプン(A)は、SP値が11.3超の親水性化合物により変性された変性基を有する変性デンプン(A1)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記変性デンプン(A1)の平均アミロース含有量は50質量%以上である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記変性デンプン(A1)は、炭素原子数2~6のヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン及び炭素原子数2~6のカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記変性デンプン(A)は、SP値が11.3以下の疎水性化合物により変性された変性基を有する変性デンプン(A2)を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記変性デンプン(A2)の平均アミロース含有量は50質量%未満である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記変性デンプン(A2)は、炭素原子数6~24のグリシジルエーテル変性基を有するエーテル化デンプン及び炭素原子数6~24のカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記変性デンプン(A2)の重量平均分子量は200,000以下である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むフィルム又はシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
変性デンプン、ポリビニルアルコール系樹脂及びポリオール可塑剤を含む樹脂組成物、及び該樹脂組成物からなる層を含むフィルム又はシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変性デンプン及びポリビニルアルコール系樹脂を含む樹脂組成物は、生分解性であり、かつ、酸素バリア性が高いことから、包装容器に広く用いられている(例えば特許文献1)。また、変性デンプン、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性ポリマー、ポリオール可塑剤及びポリエチレンオキシドを含む樹脂組成物が生分解性及び水洗性を有する医療用または産業用製品易適する射出成型可能なポリマーとして知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-6900号公報
【特許文献2】特開2014-28963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生分解性を有するガスバリア材として使用できる、変性デンプン及びポリビニルアルコール系樹脂を含む樹脂組成物において、ポリオール可塑剤を含む上記従来の樹脂組成物は、低湿度下において高い酸素バリア性を有するものの、食品包装フィルムが曝されるような高湿度下(例えば75%RH)においては酸素バリア性の顕著な低下を示し、実用性能を満たさないということがわかった。また、そのような樹脂組成物は水を添加しなければ溶融できない場合があり、溶融性と高湿度下での酸素バリア性とを両立させることは困難であることがわかった。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、変性デンプン、ポリビニルアルコール系樹脂及びポリオール可塑剤を含む樹脂組成物であって、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制でき、水を添加しなくても溶融可能な樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むフィルム又はシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、変性デンプン(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びポリオール可塑剤(C)を含む樹脂組成物において、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計を100質量部としたときに、ポリオール可塑剤(C)の含有量が40質量部以上150質量部以下であり、ポリオール可塑剤(C)が25℃以上のTgを有するポリオール可塑剤(c1)を含み、温度23℃・相対湿度75%で1週間調湿した後の含水率が17.0質量%以下であると、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の形態が含まれる。
【0007】
[1]変性デンプン(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びポリオール可塑剤(C)を含み、ポリオール可塑剤(C)の含有量は、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であり、
ポリオール可塑剤(C)は25℃以上のTgを有するポリオール可塑剤(c1)を含み、温度23℃・相対湿度75%で1週間調湿した後の含水率は17.0質量%以下である、樹脂組成物。
[2]前記変性デンプン(A)は、SP値が11.3超の親水性化合物により変性された変性基を有する変性デンプン(A1)を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記変性デンプン(A1)の平均アミロース含有量は50質量%以上である、[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記変性デンプン(A1)は、炭素原子数2~6のヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン及び炭素原子数2~6のカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種である、[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5]前記変性デンプン(A)は、SP値が11.3以下の疎水性化合物により変性された変性基を有する変性デンプン(A2)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記変性デンプン(A2)の平均アミロース含有量は50質量%未満である、[5]に記載の樹脂組成物。
[7]前記変性デンプン(A2)は、炭素原子数6~24のグリシジルエーテル変性基を有するエーテル化デンプン及び炭素原子数6~24のカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種である、[5]又は[6]に記載の樹脂組成物。
[8]前記変性デンプン(A2)の重量平均分子量は200,000以下である、[5]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むフィルム又はシート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変性デンプン、ポリビニルアルコール系樹脂及びポリオール可塑剤を含む樹脂組成物であって、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制でき、水を添加しなくても溶融可能な樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むフィルム又はシートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、変性デンプン(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びポリオール可塑剤(C)を含み、ポリオール可塑剤(C)の含有量が、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であり、ポリオール可塑剤(C)が25℃以上のガラス転移温度(Tgと称することがある)を有するポリオール可塑剤(c1)を含み、温度23℃・相対湿度75%で1週間調湿した後の含水率が17.0質量%以下である。なお、本明細書において、25℃以上のTgを有するポリオール可塑剤(c1)を「Tg≧25℃ポリオール可塑剤(c1)」、「ポリオール可塑剤(c1)」または「ポリオール(c1)」と称することがあり、ポリオール可塑剤(C)に対するポリオール可塑剤(c1)の質量比(c1/C)を単に「質量比(c1/C)」と称することがあり、温度23℃・相対湿度75%で1週間調湿した後の含水率を「23℃・75%RH下での含水率」と称する場合がある。また、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)をそれぞれ成分(A)及び成分(B)と称することがある。また、本明細書に記載の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0010】
本発明者は、Tg≧25℃ポリオール可塑剤(c1)を含むポリオール可塑剤(C)の含有量が、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であり、23℃・75%RH下での含水率が17.0質量%以下であることで、意外なことに、高湿度下(例えば23℃、75%RH)での酸素バリア性の低下を抑制しつつ、溶融成形性を向上できることを見出した。この理由は定かではないが、高湿度下での低吸水性とポリオール可塑剤(C)等による溶融成形性の向上との両方を発現できるからだと推定される。また、本発明の樹脂組成物は後述する変性デンプン(A1)及び変性デンプン(A2)を含むことで、溶融成形性及び高湿度下での酸素バリア性を高いレベルで両立できる傾向となる。本明細書において、樹脂組成物が「溶融可能」であるか否かは、水の添加なしに樹脂組成物を溶融成形できるか否かで判断でき、例えば実施例に記載のように樹脂組成物を圧縮成形(又はプレス成形)できるか否かで評価できる。かかる溶融可能な特性を溶融性又は溶融成形性と称する。また本明細書において、製膜性は、樹脂組成物を溶融成形して得られるフィルム(又はシート)表面の均一性を示す特性であり、例えば実施例に記載のように樹脂組成物を押出成形後、得られるフィルム(又はシート)表面がムラなく均一か否かを判断することで評価できる。
【0011】
〔変性デンプン(A)〕
本発明の樹脂組成物は変性デンプン(A)を含む。変性デンプン(A)の原料となるデンプンは、例えばトウモロコシ、キャッサバ、馬鈴薯、甘藷、サゴ、タピオカ、モロコシ、豆、ワラビ、ハス、ヒシ、小麦、コメ、オート麦、クズウコン、エンドウ等に由来するデンプンであってよい。これらの中でも、アミロース含有量の観点から、変性デンプン(A)の原料となるデンプンはトウモロコシ(コーン)又はキャッサバに由来するデンプンであることが好ましく、トウモロコシに由来するデンプンであることがより好ましい。変性デンプン(A)は1種又は2種以上のデンプンで構成されていてもよい。変性デンプン(A)は、デンプンに含まれる水酸基が変性された変性基を含み、樹脂組成物の23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、溶融成形性及び製膜性を高めやすい観点から、該変性基は、後述の親水性化合物変性基及び/又は疎水性化合物変性基であることが好ましい。
【0012】
<変性デンプン(A1)>
変性デンプン(A)は、SP値が11.3超の親水性化合物により変性された変性基を有する変性デンプン(A1)を含むことが好ましい。前記親水性化合物により変性された変性基(親水性化合物による変性基又は親水性化合物変性基とも称する)は、前記親水性化合物の反応性基とデンプンに含まれる水酸基との反応により該水酸基が変性された基であり、エーテル化、エステル化又はアミド化により、デンプンに結合されていることが好ましい。このような変性デンプン(A1)を含むと、生分解性及び機械的強度を高めやすく、また成形後の変性デンプンの老化を阻害しやすい。本明細書において、SP値とはFedorsの式(Polym.Eng.Sci.,14[2],147(1974))により算出された溶解度パラメータを示す。
【0013】
前記親水性化合物のSP値は、好ましくは12.0以上、より好ましくは12.5以上、さらに好ましくは13.0以上であり、好ましくは15.5以下、より好ましくは15.0以下である。親水性化合物のSP値が上記の範囲内であると、機械的強度を高めやすい。
【0014】
前記親水性化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド(SP値:13.2)、ブチレンオキシド等の炭素原子数2~6のアルキレンオキシド;クロロ酢酸等の炭素原子数2~4のハロゲン化カルボン酸;臭化メチル等の炭素原子数2~6のハロゲン化アルキル;マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の炭素原子数2~6のカルボン酸無水物;硝酸ナトリウムやリン酸ナトリウム等のオキソ酸塩;2-ジエチルアミノエチルクロライド;2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でも、デンプンに対する反応性、並びに機械的強度を高めやすい観点から、炭素原子数2~6のアルキレンオキシド及び炭素原子数2~6のカルボン酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
変性デンプン(A1)の原料となるデンプンとしては、変性デンプン(A)の原料となるデンプンとして上記に例示のものが挙げられる。変性デンプン(A1)は、1種又は2種以上の親水性化合物変性基を含んでいてもよく、また変性デンプン(A)は、1種又は2種以上の変性デンプン(A1)を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、変性デンプン(A1)の平均アミロース含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下である。アミロース含有量が上記の範囲内であると、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、溶融成形性及び製膜性を高めやすい。本明細書において、アミロース含有量は、例えば「Starch 50 No.4 158-163(1998)」に記載のヨウ素呈色法により測定できる。なお、平均アミロース含有量は、変性デンプン(A1)が1種類の場合は、該1種類の変性デンプン(A1)のアミロース含有量を示し、変性デンプン(A1)を2種類以上使用する場合は、2種以上の変性デンプン(A1)のアミロース含有量を加重平均したものである。そのため、例えば、変性デンプン(A1)を2種類以上使用し、平均アミロース含有量を50質量%以上とする場合、アミロース含有量が50質量%未満の変性デンプン(A1)を含んでいてもよい。
【0017】
具体的には、変性デンプン(A1)は、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、カチオン化デンプン及び架橋デンプンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
エーテル化デンプンとしては、例えば、メチルエーテル化デンプン等のアルキルエーテル化デンプン、好ましくは炭素原子数2~6のアルキルエーテル化デンプン;カルボキシメチルエーテル化デンプン等のカルボキシアルキルエーテル化デンプン、好ましくは炭素原子数2~6のカルボキシメチルエーテル化デンプン;ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基、ヒドロキシブチレン基等のヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン(ヒドロキシアルキルエーテル化デンプン)、好ましくは炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン;アリルエーテル化デンプン、好ましくは炭素原子数2~6のアリルエーテル化デンプンなどが挙げられる。炭素原子数2~6のヒドロキシアルキルエーテル化デンプンは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素原子数2~6のアルキレンオキシドとデンプンとの反応により得ることができる。
【0019】
エステル化デンプンとしては、例えば、酢酸由来の構造単位を有するエステル化デンプン等のカルボン酸変性基を有するエステル化デンプン(カルボン酸由来の構造単位を有するエステル化デンプンともいう);マレイン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン、フタル酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン、オクテニルスクシン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン等のカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプン(カルボン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプンともいう);硝酸エステル化デンプン、リン酸エステル化デンプン、尿素リン酸エステル化デンプン等のオキソ酸由来の構造単位を有するエステル化デンプン;キサントゲン酸エステル化デンプン;アセト酢酸エステル化デンプンなどが挙げられる。
【0020】
これらの中でも、溶融成形性及び製膜性を高めやすい観点から、変性デンプン(A1)は、ヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン及びカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭素原子数2~6のヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン及び炭素原子数2~6のカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。また、変性デンプン(A1)において、1グルコースユニット当たりの変性された水酸基の平均数[置換度(DS)という]は、好ましくは0.05~2である。
【0021】
本発明の好適な実施形態において、変性デンプン(A1)の重量平均分子量(Mwと称することがある)は、好ましくは200,000以上、より好ましくは250,000以上、さらに好ましくは300,000以上、さらにより好ましくは350,000以上、特に好ましくは400,000以上であり、好ましくは800,000以下、より好ましくは650,000以下、さらに好ましくは550,000以下である。変性デンプン(A1)のMwが上記の下限以上であると、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、機械的強度を高めやすい。また該Mwが上記の上限以下であると、溶融成形性及び製膜性を高めやすい。変性デンプン(A1)の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0022】
変性デンプン(A1)としては、市販されているものを用いてもよく、所定のデンプンを、慣用の方法を用いて親水性化合物により変性することで製造してもよい。変性デンプン(A1)の代表的市販品の例としては、例えばIngredion社やNational Starch & Chemical Company社から入手できる、ECOFILM(登録商標)、GELOSE(登録商標)A939等が挙げられる。
【0023】
本発明の一実施形態において、変性デンプン(A1)の含有量は、変性デンプン(A)の質量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下である。変性デンプン(A1)の含有量が上記の下限以上であると、機械的強度が高くなりやすい。また変性デンプン(A1)の含有量が上記の上限以下であると、溶融成形性及び製膜性を向上しやすい。
【0024】
<変性デンプン(A2)>
変性デンプン(A)は、SP値が11.3以下の疎水性化合物により変性された変性基を有する変性デンプン(A2)を含むことが好ましい。前記疎水性化合物により変性された変性基(疎水性化合物による変性基又は疎水性化合物変性基と称することがある)は、前記疎水性化合物の反応性基とデンプンに含まれる水酸基との反応により該水酸基が変性された基であり、エーテル化、エステル化又はアミド化により、デンプンに結合されていることが好ましい。このような変性デンプン(A2)を含むと、吸水性が低減されるため、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、また溶融成形性及び製膜性を高めやすい。
【0025】
前記疎水性化合物のSP値は、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.8以下、さらに好ましくは10.5以下であり、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.4以上、さらに好ましくは8.8以上である。疎水性化合物のSP値が上記の範囲内であると、樹脂組成物の吸水性が低減されるため、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、また溶融成形性及び製膜性を高めやすい。
【0026】
疎水性化合物は、例えばハロゲン基、ハロヒドリン基、エポキシ基、グリシジル基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を含むことが好ましい。
【0027】
疎水性化合物をエーテル化、すなわちエーテル結合によりデンプンに結合させる場合、疎水性化合物に含まれる反応性基は、例えばハロゲン基、ハロヒドリン基、エポキシ基、グリシジル基であってよく、該疎水性化合物は炭素原子数6~24の疎水性化合物であることが好ましい。具体的に疎水性化合物としては、臭化セチル、臭化ラウリル;エポキシ化大豆脂肪アルコール、エポキシ化亜麻仁脂肪アルコール;アリルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、デカングリシジルエーテル、ラウリルフェニルグリシジルエーテル、ミリストイルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル、パルミチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、リノリルグルシジルエーテル等の炭素原子数2~24のグリシジルエーテル、好ましくは炭素原子数6~24のグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
疎水性化合物をエステル化、すなわちエステル結合によりデンプンに結合させる場合、疎水性化合物に含まれる反応性基は、例えば酸無水物基であってよく、該疎水性化合物としては、炭素原子数6~24、好ましくは炭素原子数7~20のカルボン酸無水物が好ましい。具体的にカルボン酸無水物としては、例えばオクタン酸酢酸無水物、デカン酸酢酸無水物、ラウリン酸酢酸無水物、ミリスチン酸酢酸無水物等のアルカン酸カルボン酸無水物;アルキル又はアルケニルコハク酸無水物、アルキル又はアルケニルマレイン酸無水物等のアルキル又はアルケニルジカルボン酸無水物が挙げられる。アルキル又はアルケニルジカルボン酸無水物としては、オクテニルコハク酸無水物(SP値:10.4)、ノニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクテニルマレイン酸無水物、ノニルマレイン酸無水物、デシルマレイン酸無水物、ドデセニルマレイン酸無水物が好ましく、オクテニルコハク酸無水物又はオクテニルマレイン酸無水物がより好ましい。
【0029】
疎水性化合物をアミド化、すなわちアミド結合によりデンプンに結合させる場合、疎水性化合物に含まれる反応性基は、例えばアミノ基であってよく、該疎水性化合物としては、炭素原子数6~24の飽和又は不飽和炭化水素基を含む脂肪族アミンを好適に使用でき、該脂肪族アミンは分岐鎖を含んでいてよいが、直鎖であることが好ましい。具体的に脂肪族アミンとしては、n-ドデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、ココアミン、タローアミン、水素添加N-タロー-1,3-ジアミノプロパン、N-水素化タロー-1,3-ジアミノプロパン、N-オレイル-1,3-ジアミノプロパンなどが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、樹脂組成物の23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、溶融成形性及び製膜性を高めやすい観点から、前記疎水性化合物は、炭素原子数6~24のグリシジルエーテル及び炭素原子数6~24のカルボン酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0031】
変性デンプン(A2)の原料となるデンプンとしては、変性デンプン(A)の原料となるデンプンとして上記に例示のものが挙げられる。変性デンプン(A2)は、1種又は2種以上の疎水性化合物変性基を含んでいてもよく、また変性デンプン(A)は、1種又は2種以上の変性デンプン(A2)を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の好適な実施形態において、変性デンプン(A2)の平均アミロース含有量は、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、特により好ましくは5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。アミロース含有量が上記の範囲内であると、溶融成形性及び製膜性を高めやすい。なお、平均アミロース含有量は、変性デンプン(A2)が1種類の場合は、該1種類の変性デンプン(A2)のアミロース含有量を示し、変性デンプン(A2)を2種類以上使用する場合は、2種以上の変性デンプン(A2)のアミロース含有量を加重平均したものである。そのため、例えば、変性デンプン(A2)を2種類以上使用し、平均アミロース含有量を50質量%未満とする場合、アミロース含有量が50質量%以上の変性デンプン(A2)を含んでいてもよい。変性デンプン(A2)において、1グルコースユニット当たりの変性された水酸基の平均数[置換度(DS)という]は、好ましくは0.05~2である。
【0033】
具体的には、変性デンプン(A2)は、例えばエーテル化デンプン、エステル化デンプン及びアミド化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭素原子数6~24のエーテル化デンプン、炭素原子数6~24のエステル化デンプン及び炭素原子数6~24のアミド化デンプンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0034】
エーテル化デンプンは、疎水性化合物変性基を有するエーテル化デンプンであることが好ましく、該疎水性化合物としては、疎水性化合物をエーテル化によりデンプンに結合させる場合に使用する疎水性化合物として上記に例示のものが挙げられる。エステル化デンプンは、疎水性化合物変性基を有するエステル化デンプンであることが好ましく、該疎水性化合物としては、疎水性化合物をエステル化によりデンプンに結合させる場合に使用する疎水性化合物として上記に例示のものが挙げられる。アミド化デンプンは、疎水性化合物変性基を有するアミド化デンプンであることが好ましく、該疎水性化合物としては、疎水性化合物をアミド化によりデンプンに結合させる場合に使用する疎水性化合物として上記に例示のものが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、樹脂組成物の23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、溶融成形性及び製膜性を高めやすい観点から、変性デンプン(A2)は、炭素原子数6~24のグリシジルエーテル変性基を有するエーテル化デンプン(グリシジルエーテル由来の構造単位を有するエーテル化デンプン)及び炭素原子数6~24のカルボン酸無水物変性基を有するエステル化デンプン(カルボン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態において、変性デンプン(A2)の重量平均分子量は、好ましくは200,000以下、より好ましくは190,000以下、さらに好ましくは180,000以下であり、175,000以下であってもよい。また、本発明の一実施形態において、変性デンプン(A2)の重量平均分子量は、好ましくは170,000以下、より好ましくは140,000以下、さらに好ましくは100,000以下、さらにより好ましくは70,000以下であり、50,000以下であってもよい。また、変性デンプン(A2)の重量平均分子量の下限は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。変性デンプン(A2)のMwが上記の上限以下であると溶融成形性及び製膜性を高めやすく、また変性デンプン(A2)のMwが上記の下限以上であると、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。変性デンプン(A2)の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0037】
疎水変性デンプン(A2)としては、市販されているものを用いてもよいし、所定のデンプンを、慣用の方法を用いて疎水性化合物により変性することで製造してもよい。
【0038】
変性デンプン(A)は、1種又は2種以上の疎水変性デンプン(A2)を含むことができる。本発明の一実施形態では、2種以上の疎水変性デンプン(A2)を含み、樹脂組成物の溶融成形性及び製膜性を高めやすい観点から、好ましくはMwの異なる2種以上の変性デンプン(A2)を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、変性デンプン(A2)の含有量は、変性デンプン(A)の質量に対して、好ましくは0質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは45質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。変性デンプン(A2)の含有量が上記の下限以上であると、溶融成形性及び製膜性を向上しやすい。また変性デンプン(A2)の含有量が上記の上限以下であると、樹脂組成物の機械的強度を高めやすい。
【0040】
本発明の一実施形態において、本発明の樹脂組成物が、変性デンプン(A1)と変性デンプン(A2)とを含む場合、変性デンプン(A1)に対する変性デンプン(A2)の割合[(A2)/(A1)]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、さらにより好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上、特により好ましくは1.8以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。変性デンプン(A1)に対する変性デンプン(A2)の割合が上記の下限以上であると、溶融成形性及び製膜性を向上しやすい。また該含有量が上記の上限以下であると、樹脂組成物の機械的強度を高めやすい。
【0041】
〔ポリビニルアルコール系樹脂(B)〕
本発明の樹脂組成物は、ポリビニルアルコール系樹脂(B)を含む。ポリビニルアルコール系樹脂(B)は、けん化度が好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上であり、好ましくは99.8モル%以下、より好ましくは99.5モル%以下である。ポリビニルアルコール(B)のけん化度が上記範囲内である場合には、樹脂組成物の機械的強度が向上しやすく、また23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。なお、本明細書において、けん化度は、ポリビニルアルコール系樹脂(B)における水酸基とエステル基との合計に対する水酸基のモル分率を意味し、JIS K6726に準拠して測定できる。
【0042】
ポリビニルアルコール系樹脂(B)は、ビニルアルコール単位を有するポリビニルアルコールであっても、ビニルアルコール単位以外の他の単量体単位(他の単量体由来の構成単位ともいう)を含有する変性ポリビニルアルコールであってもよい。他の単量体単位としては、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセンなどのα-オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カルリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル単量体が例示される。これらの他の単量体単位の中でも、樹脂組成物の吸水性を低減して23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、また溶融成形性及製膜性を高めやすい観点から、エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類由来の構成単位(α-オレフィン類単位)が好ましい。また、不飽和単量体に由来する単量体単位であって、けん化されなかったものも、前記他の単量体単位に含まれる。変性ポリビニルアルコールに含まれる他の単量体単位の含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上、さらにより好ましくは7モル%以上であり、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下であり、13モル%以下であっても10モル%以下であってもよい。他の単量体単位の含有量が上記の範囲内であると、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、溶融成形性及び製膜性を高めやすい。
【0043】
本発明の一実施形態において、ポリビニルアルコール系樹脂(B)は、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、溶融成形性及び製膜性を向上しやすい観点から、ポリビニルアルコール及びエチレン変性ポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、エチレン変性ポリビニルアルコールがより好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールを含むと、23℃・75%RH下での含水率を低下させることができる。エチレン変性ポリビニルアルコールにおいて、エチレン単位の含有量は、上記他の単量体単位の含有量と同様の範囲から選択できる。エチレン単位の含有量が上記の範囲内であると、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、樹脂組成物の高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、また溶融成形性及び製膜性を高めやすい。なお、エチレン単位の含有量は、NMR等を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0044】
ポリビニルアルコール系樹脂(B)の製造方法は、特に限定されないが、例えばビニルアルコール単量体と、任意に前記他の単量体とを共重合し、得られた共重合体をけん化してビニルアルコール単位に変換する方法が挙げられる。共重合する際の重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合等が挙げられる。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。共重合体のけん化は、公知の方法を適用できる。例えばアルコール又は含水アルコールに当該共重合体が溶解した状態で行うことができる。このとき使用できるアルコールは、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコールであることが好ましい。
【0045】
ポリビニルアルコール系樹脂(B)の粘度平均重合度(重合度と称することがある)は、好ましくは200以上、より好ましくは220以上、さらに好ましくは300以上であり、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、さらにより好ましくは1600以下、特に好ましくは900以下、特により好ましくは600以下である。重合度が上記の下限以上であると、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、機械的強度を向上しやすい。また、重合度が上記の上限以下であると、溶融成形性及び製膜性を高めやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。ポリビニルアルコール系樹脂(B)の重合度は、JIS-K6726に準じて測定でき、具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである(P:粘度平均重合度)。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
【0046】
〔ポリオール可塑剤(C)〕
本発明の樹脂組成物はポリオール可塑剤(C)を含み、ポリオール可塑剤(C)の含有量は、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であり、さらに前記ポリオール可塑剤(C)がTg≧25℃ポリオール可塑剤(c1)を含む。本発明の樹脂組成物は、上記構成を有することにより高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しつつ、溶融成形性を向上させることができる。一方、ポリオール可塑剤(C)の含有量が上記の範囲外であると、高湿度下での酸素バリア性が十分でない傾向がある。ポリオール可塑剤(C)は糖アルコールであることが好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物において、ポリオール可塑剤(C)の含有量は、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100質量部を基準として、好ましくは45質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは55質量部以上、さらにより好ましくは60質量部以上であり、好ましくは130質量部以下、より好ましくは110質量部以下である。ポリオール可塑剤(C)の含有量が上記の下限以上であると、樹脂組成物の溶融成形性及び製膜性を向上しやすく、またポリオール可塑剤(C)の含有量が上記の上限以下であると、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。
【0048】
<ポリオール可塑剤(c1)>
ポリオール可塑剤(c1)は、Tgが25℃以上のポリオールである。一般に、溶融成形性を向上する目的で変性デンプン及びポリビニルアルコール系樹脂を含む樹脂組成物に、ポリオール可塑剤を添加する場合、結晶性が低下することで特に高湿度下での酸素バリア性が悪化する。一方、本発明では、23℃・75%RH下での含水率が17.0質量%以下となるように、Tg≧25℃ポリオール可塑剤(c1)を含有させることにより、樹脂組成物の融点を低下させて溶融成形性を向上させるだけでなく、意外なことに、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制することができる。ポリオール可塑剤(c1)は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0049】
ポリオール可塑剤(c1)のTgは、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上、さらにより好ましくは45℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらにより好ましくは80℃以下、特に好ましくは60℃以下である。ポリオール可塑剤(c1)のTgが上記の下限以上であると、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。またポリオール可塑剤(c1)のTgが上記の上限以下であると、成形性及び製膜性を向上しやすい。ポリオール可塑剤(c1)のTgは示差走査熱量計を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0050】
ポリオール可塑剤(c1)としては、Tgが25℃以上であり、かつ変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)と相溶し融点を低下させる効果があれば特に限定されないが、例えば、マルチトール、トレハロース、マンニトール、ラクチトールなどの多価アルコールなどが挙げられる。これらは、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、優れた酸素バリア性と溶融成形性とを両立しやすい観点から、マルチトール、トレハロース及びラクチトールからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、マルチトール及び/又はラクチトールがより好ましく、マルチトールがさらに好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物において、ポリオール可塑剤(C)に対するTg≧25℃ポリオール可塑剤(c1)の質量比(c1/C)は、0.45以上又は0.50以上であってもよく、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.65以上、さらにより好ましくは0.70以上、特に好ましくは0.75以上、特により好ましくは0.80以上であり、0.85以上であっても、0.90以上であっても、0.95以上であってもよい。質量比(c1/C)が上記の下限以上であると、23℃・75%RH下での含水率の上昇を低減しやすく、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。質量比(c1/C)は1.00以下であり、0.97以下であってもよい。
【0052】
<ポリオール可塑剤(c2)>
本発明の樹脂組成物において、ポリオール可塑剤(C)は、25℃未満のTgを有するまたはTgを有さないポリオール可塑剤(c2)(「Tg<25℃ポリオール可塑剤(c2)」、「ポリオール可塑剤(c2)」または「ポリオール(c2)」と称することがある)を含んでいてもよい。Tg<25℃ポリオール可塑剤(c2)を含むことで溶融成形性が向上しやすい一方、高湿度下での酸素バリア性が低下する傾向となる。ポリオール可塑剤(c2)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
ポリオール可塑剤(c2)のTgは、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは10℃以下、さらにより好ましくは5℃以下であり、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-80℃以上、さらに好ましくは-60℃以上、さらにより好ましくは-40℃以上、特に好ましくは-20℃以上である。ポリオール可塑剤(c2)のTgが上記の下限以上であると、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、またポリオール可塑剤(c2)のTgが上記の上限以下であると、樹脂組成物の溶融成形性及び製膜性を向上しやすい。ポリオール可塑剤(c2)のTgは示差走査熱量計を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0054】
ポリオール可塑剤(c2)としては、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)のTg又は溶融粘度を低下させ得る化合物であれば特に制限はないが、例えば、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、ジグリセリン等の多価アルコール;1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等のジオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;ソルビトール、キシリトール、グリセリン、ジグリセリン等の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が付加したグリセリン誘導体;ペンタエリスリトール、糖類、ポリエーテル類;ビスフェノールA、ビスフェノールS等のフェノール誘導体;N-メチルピロリドン等のアミド化合物;トリメチロールプロパン、ジグリセリン、3-メチル-1,3,5ペンタントリオールなどが挙げられる。これらは、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、樹脂組成物の溶融成形性及び製膜性を向上しやすい観点から、多価アルコールが好ましく、ソルビトール、キシリトール及びグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ソルビトールがより好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物において、可塑剤(C)に対するTg<25℃ポリオール可塑剤(c2)の質量比(c2/C)は、好ましくは0.45未満、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.35以下、さらにより好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.20以下、特により好ましくは0.15以下である。質量比(c2/C)が上記の上限以下であると、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。質量比(c2/C)は0以上である。
【0056】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)に加え、Tg≧25℃ポリオール可塑剤(c1)を含有するポリオール可塑剤(C)を、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して40~150質量部含み、23℃・75%RH下での含水率が17.0質量%以下であるため、高湿度下における酸素バリア性の低下を抑制でき、水を添加しなくても溶融可能である。さらに、本発明の好適な実施形態では、本発明の樹脂組成物は、高湿度下での酸素バリア性に加え、優れた溶融成形性及び製膜性を発現することもできる。さらに生分解性にも優れる。そのため、本発明の樹脂組成物は食品用包装及び容器等の材料として好適に使用できる。
【0057】
樹脂組成物の23℃・75%RH下での含水率が17.0質量%を超えると、高湿度下での酸素バリア性の低下抑制が十分でない傾向がある。本発明の樹脂組成物の23℃・75%RH下での含水率は、17.0質量%以下であり、好ましくは16.0質量%以下、より好ましくは15.9%以下、さらに好ましくは15.5質量%以下、さらにより好ましくは15.0質量%以下、特に好ましくは14.5質量%以下、特により好ましくは13.5質量%以下、特にさらに好ましくは13.0質量%以下である。前記含水率が上記の上限以下であると、高湿度下におかれても低吸水性能を発現でき、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすい。23℃・75%RH下での含水率は0質量%以上であり、5質量%以上であっても、10質量%以上であってもよい。なお、前記含水率は、温度23℃/相対湿度75%の条件下で一週間調湿した後、加熱乾燥式水分率計を用いて130℃で30分間測定したときの含水率であり、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。また、本発明の樹脂組成物の23℃・75%RH下での含水率は、例えば、変性デンプン(A1)の分子量及び平均アミロース含有量、変性デンプン(A2)の分子量、平均アミロース含有量、疎水性化合物の種類及びSP値、ポリビニルアルコール系樹脂(B)のけん化度、成分(B)中のエチレン変性ポリビニルアルコールの含有量及びそのエチレン変性量、ポリオール可塑剤(c1)のTg、種類及び含有量(質量比(c1/C)等)などにより調整できる。
【0058】
変性デンプン(A)の含有量は、変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)との合計100質量部を基準に、好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上、さらに好ましくは48質量部以上であり、好ましくは98質量部以下、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは85質量部以下、さらにより好ましくは80質量部以下である。変性デンプン(A)の含有量が上記の下限以上であると、生分解性を高めやすく、また変性デンプン(A)の含有量が上記の上限以下であると、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しつつ、溶融成形性及び製膜性を向上しやすい。
【0059】
ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量は、変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)との合計100質量部を基準に、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、さらにより好ましくは20質量部以上であり、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは52質量部以下である。ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量が上記の下限以上であると、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しつつ、溶融成形性及び製膜性を向上しやすく、またポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量が上記の上限以下であると、生分解性を高めやすい。特にポリビニルアルコール系樹脂(B)がエチレン変性ポリビニルアルコールである場合、その含有量は、変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)との合計100質量部を基準に、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、30質量部以上、40質量部以上、45質量部以上が好ましい場合もあり、好ましくは70質量部以下であり、60質量部以下、55質量部以下が好ましい場合もある。
【0060】
本発明の樹脂組成物において、変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)との合計割合は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。成分(A)及び(B)の合計割合が上記の下限以上であると、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制しやすく、また成分(A)及び(B)の合計割合が上記の上限以下であると、樹脂組成物の溶融成形性及び製膜性を向上しやすい。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、炭素原子数が12~22の脂肪酸及び/又はその脂肪酸塩をさらに含んでいてよい。炭素原子数が12~22の脂肪酸及びその脂肪酸塩としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノレイン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。これらの中でも加工性の観点から、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウムが好ましい。炭素原子数が12~22の脂肪酸及びその脂肪酸塩はそれぞれ単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
本発明の樹脂組成物が、炭素原子数が12~22の脂肪酸及び/又はその脂肪酸塩を含有する場合、樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.03~2質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。炭素原子数が12~22の脂肪酸及び/又はその脂肪酸塩の含有量が上記範囲であると加工性の点で有利となる傾向がある。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、粘土をさらに含んでいてもよい。粘土としては、合成又は天然層状ケイ酸塩粘土、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、雲母(マイカ)、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、レディカイト、マガダイト、ケニヤアイト、スチーブンサイト、ヴォルコンスコイトなどが挙げられる。粘土は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
本発明の樹脂組成物が粘土を含有する場合、樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。粘土の含有量が上記範囲であると、透明性及び強度の点で有利となる傾向がある。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、ポリオール可塑剤以外の他の可塑剤を含んでいてもよい。他の可塑剤としては、例えば、水、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、トリ酢酸グリセリル、可塑剤樹脂などが挙げられる。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて充填材、銅化合物等の加工安定剤、耐候安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、潤滑剤、香料、発泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強材、防かび剤、防腐剤、結晶化速度遅延剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0067】
本発明の樹脂組成物を構成する樹脂において、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)が占める割合(合計割合)は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上がさらにより好ましく、99質量%以上が特に好ましく、99.9質量%以上であっても、99.99質量%以上であってもよく、本発明の樹脂組成物を構成する樹脂は、変性デンプン(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)のみからなっていてもよい。本発明の樹脂組成物において、変性デンプン(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びポリオール可塑剤(C)が占める割合(合計割合)は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上がさらにより好ましく、99質量%以上が特に好ましく、99.9質量%以上であっても、99.99質量%以上であってもよい。
【0068】
本発明の好適な実施形態では、本発明の樹脂組成物は、溶融成形性に優れるため、溶融粘度が低い。本発明の樹脂組成物の190℃、10rad/sにおける複素粘度は、好ましくは10,500Pa・s以下、より好ましくは9,000Pa・s以下、さらに好ましくは8,000Pa・s以下、さらにより好ましくは7,000Pa・s以下、特に好ましくは6,000Pa・s以下、特により好ましくは5,000Pa・s以下であり、好ましくは500Pa・s以上、より好ましくは1,000Pa・s以上である。前記複素粘度が上記の範囲内であると、樹脂組成物の溶融成形性及び製膜性を向上しやすい。複素粘度は、粘弾性測定装置を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。なお、複素粘度は製膜性の評価の指標とすることができ、複素粘度が大きいと製膜性が低くなる傾向があり、複素粘度が小さいと製膜性が高くなる傾向がある。
【0069】
本発明の好適な実施形態では、本発明の樹脂組成物の温度23℃・相対湿度75%での酸素透過度(cc・20μm/(m2・day・atm))は、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下、さらにより好ましくは40以下、特に好ましくは20以下、特により好ましくは15以下、特にさらに好ましくは10以下である。温度23℃・相対湿度75%での酸素透過度が上記の上限以下であると、優れた高湿度下における酸素バリア性を発現できる。酸素透過度は、温度23℃/相対湿度75%の条件下で一週間調湿した後、ガス透過率測定装置を用いて測定でき、厚みを20μmに換算した場合の透過量であり、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、ペレット及びフィルム又はシートの形態であってよい。
【0071】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、少なくとも、前記変性デンプン(A)、前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)及び可塑剤(C)を混合して混合物を得る工程(1)、該混合物を押出す工程(2)、及び押出された混合物を冷却及び乾燥する工程(3)を含むことが好ましい。
【0072】
工程(1)は、少なくとも変性デンプン(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)及び可塑剤(C)を混合する工程であり、任意に他の成分、例えば上記添加剤を共に混合することができる。
【0073】
工程(1)は通常、押出機を用いて行う。押出機中において、各成分にスクリューによりせん断応力を与え、バレルへの外部熱の適用により加熱しながら均質に混合する。
【0074】
押出機としては、例えば二軸スクリュー押出機を用いることができる。二軸スクリュー押出機は、共回転又は逆回転のいずれであってもよい。スクリュー直径は、例えば15~150mm、押出機長さ(L)とスクリュー直径(D)の比L/D比は、例えば20~50であってよい。スクリューの回転速度は、好ましくは80rpm以上、より好ましくは100rpm以上である。また、押出成形圧力は、好ましくは5バール(0.5MPa)以上、より好ましくは10バール(1.0MPa)以上である。各成分はそれぞれ直接、押出機中へ導入することができる。また、これらの各成分をミキサーを用いて予備混合したものを押出機中へ導入してもよい。
【0075】
工程(1)において、樹脂組成物の混合性を高める観点から、水を添加することが好ましい。添加する水の量は、混合物の質量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、該混合物の質量は水を含む混合物の質量である。工程(1)において、押出の初期段階に水を導入してもよく、上記加熱温度に達する前、例えば100℃以下のときに水を導入することができる。変性デンプン(A)は、水分、熱及びせん断応力の組み合わせによりクッキング処理が施され、ゼラチン(ゲル)化させることができる。また、水を導入することにより、ポリビニルアルコール系樹脂(B)を溶解し、樹脂組成物を軟化し、モジュラス及び脆性を低下させることができる。
【0076】
工程(1)において、好ましくは100℃以上160℃以下、より好ましくは115℃以上150℃以下の温度に加熱してクッキング処理を行う。ここで、クッキング処理とは、デンプン粒を破砕し、ゲル化させる処理である。加熱は押出機のバレルに外部から熱を適用することにより行える。各バレルへは、段階的に変えた温度を適用することにより、目的とする温度にまで加熱できる。120℃以上の温度においてクッキング処理を行う場合、加工性の点で有利となる。
【0077】
クッキング処理した混合物は、発泡を防止するため、好ましくは80~120℃、より好ましくは85~110℃の温度へ低下しながら、ダイの方へ押し進めるのがよい。また、バレルから排気することにより発泡を防止し、水分を除去できる。
【0078】
押出機中の滞留時間は、温度プロファイルやスクリュー速度に応じて設定可能であり、好ましくは1~2.5分である。
【0079】
混合物を押出す工程(2)では、溶融混練されながら押出機中を押し進められてきた溶融した混合物をダイから押出す。ダイの温度は好ましくは70~120℃、より好ましくは75~110℃の温度である。
【0080】
押出された混合物(溶融物)を冷却及び乾燥する工程(3)では、混合物(溶融物)はフィルム状(若しくはシート状)又はストランド状に押出すことができる。
【0081】
混合物をフィルム状(若しくはシート状)に押出す場合、混合物はフィルム成形用ダイから押出し、次いで引取りローラーで巻取りながら冷却及び乾燥することができる。ダイ及びローラーの間では、混合物がローラーに付着するのを防ぐように冷却するのが好ましい。乾燥のために、ロールは加温してもよく、巻取の際に脱湿空気を供給してもよい。脱湿空気は、吹込チューブ法の場合、フィルムがダイを退出するときにフィルムを膨張させるために使用できる。タルクを空気流中に同伴させてフィルムのブロッキングを防ぐこともできる。
【0082】
混合物をストランド状に押出す場合、複数穴のストランドノズルから押出し、回転カッターで切断することでストランドをペレット形状にできる。ペレットの膠着を防ぐために、振動を定期的もしくは定常的に与え、熱風、脱湿空気又は赤外線ヒーターによりペレット中の水分を除去することができる。
【0083】
本発明の樹脂組成物、好ましくはペレット状樹脂組成物は、溶融成形することにより、フィルム、シート、チューブ、ボトルなどの任意形状の成形品に成形できる。溶融成形方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法、Tダイからの押出製膜法、インフレーション製膜法、圧縮成形法、トランスファー成形法、強化プラスチック成形法、中空成形法、プレス成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、発泡成形法、真空成形法、圧空成形法等の慣用の方法が挙げられる。
【0084】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(例えばペレット状樹脂組成物)を圧縮成形する場合、慣用の圧縮成形機を用いて成形品を製造できる。圧縮成形する際の温度は、用途に応じて適宜調整でき、例えば100~300℃、好ましくは120~250℃であってもよく、180~220℃であっても、190~215℃であってもよい。荷重は、例えば50~200kgf/cm2、好ましくは70~150kgf/cm2であってもよい。
【0085】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(例えばペレット状樹脂組成物)を押出成形する場合、慣用の押出機を用いて成形品を製造できる。押出機としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機などが挙げられる。押出機のスクリュー直径は例えば15~150mmであり、押出機長さ(L)とスクリュー直径(D)の比L/D比は例えば15~50であり、スクリューの回転速度は、好ましくは80rpm以上、より好ましくは100rpm以上である。押出機中のシリンダー温度は例えば180~220℃、好ましくは190~210℃である。本発明の他の実施形態では、押出条件としては、[樹脂組成物の製造方法]の項に記載のものと同様の方法を採用してもよい。
【0086】
[フィルム又はシート]
本発明は、樹脂組成物からなる層(樹脂層と称することがある)を少なくとも1層含むフィルム又はシートを包含する。本発明のフィルム又はシートは、本発明の樹脂組成物からなる層を含むため、高湿度下における酸素バリア性及び生分解性に優れている。さらに、本発明の好適な実施形態では、本発明のフィルム又はシートは、製膜性に優れる樹脂組成物から形成される樹脂層を含んでなるため、ムラがなく、表面が均一であり得る。
【0087】
本発明のフィルム又はシートは、樹脂層からなる単層フィルム又はシートであっても、樹脂層を2層以上含むか、樹脂層を1層以上かつ他の層を1層以上含む多層フィルム又はシートであってもよい。樹脂層を2層以上含む場合、樹脂層を構成する樹脂組成物の組成は同一又は異なっていてもよい。
【0088】
他の層は、特に限定されないが、例えば、紙、高分子フィルム、接着剤などが挙げられる。紙としては、特に限定されず、例えばクラフト紙、上質紙、模造紙、グラシン紙、パーチメント紙、合成紙、白板紙、マニラボール、ミルクカートン原紙、カップ原紙、アイボリー紙、白銀紙などが挙げられる。
【0089】
高分子フィルムとしては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム(好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム)、ポリ乳酸(PLA)フィルム、ポリブチレンサクシネート(PBS)フィルム、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)フィルム及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)フィルム、等が挙げられる。
【0090】
本発明のフィルム又はシートが単層フィルム又は単層シートである場合、上記の[樹脂組成物の製造方法]の項に記載の通り、押出機からフィルム状(若しくはシート状)に押し出すことで製造してもよいし、ペレット状樹脂組成物を製造後、上記の溶融成形方法を用いて、フィルム又はシートを製造してもよい。
【0091】
本発明のフィルム又はシートが多層フィルム又は多層シートである場合、多層フィルム又は多層シートとしては、以下の層構成のものが挙げられる。紙/樹脂層;高分子フィルム/樹脂層;紙/接着剤/樹脂層;高分子フィルム/接着剤/樹脂層;高分子フィルム/接着剤/樹脂層/紙/接着剤/高分子フィルム。
【0092】
本発明の一実施形態において、例えば紙/樹脂層、又は高分子フィルム/樹脂層をこの順に有する多層フィルムの製造方法は、押出機を用いて、前記樹脂組成物を、引取機で搬送された高分子フィルム又は紙に被覆する工程を含む方法であることが好ましい。
【0093】
押出機としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機などが挙げられる。押出機のスクリュー直径は例えば15~150mmであり、押出機長さ(L)とスクリュー直径(D)の比L/D比は例えば15~50であり、スクリューの回転速度は、好ましくは80rpm以上、より好ましくは100rpm以上である。押出機中のシリンダー温度は例えば180~220℃、好ましくは190~210℃である。
【0094】
押出機に投入された樹脂組成物は可塑化され、ダイス出口から吐出される。一方、引取機、好ましくはローラー式引取機で紙又は高分子フィルムを搬送させる。該搬送させた紙又は高分子フィルム上にダイス出口から吐出した樹脂組成物をコートすることで多層フィルムが得られる。得られた多層フィルムは、例えば加圧ロール等で基材と圧着させて巻取機でロール状に巻き取ってよい。
【0095】
本発明の好適な実施形態において、樹脂組成物は溶融成形性に優れるため、例えば押出機に可塑剤として水を添加しなくても溶融成形することができ、また樹脂組成物の含水率が低いため、製膜する際に乾燥工程に供さなくてもよい。
【0096】
また、接着剤を含む多層フィルム又は多層シートは、例えば紙、高分子フィルム及び樹脂層を接着剤を介して積層することで製造してもよい。
【0097】
本発明におけるフィルムまたはシートの厚みは、層数や用途に応じて適宜選択でき、限定されないが、好ましくは5~1000μm、より好ましくは10~500μmである。フィルム又はシートの厚みは、厚み計により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【実施例0098】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
<試験方法>
(1)高湿度下における酸素透過度
JIS K 7126-1:2006に準拠して、実施例及び比較例で得られた単層シートを温度23℃/相対湿度75%の条件下で一週間調湿した後、ガス透過率測定装置(GTRテック株式会社製、GTR-30XAK)を用いて、温度23℃/相対湿度75%の条件下で酸素透過量を測定し、測定した単層シートの厚みを20μmに換算した場合の酸素透過量を酸素透過度(cc・20μm/(m2・day・atm))として算出した。
【0100】
(2)高湿度下における含水率
実施例及び比較例で得られた単層シートを温度23℃/相対湿度75%の条件下で一週間調湿した後、加熱乾燥式水分率計(メトラー・トレド社製、MX-50)を用いて130℃で30分間加熱することで、含水率(質量%)を測定した。
【0101】
(3)複素粘度
粘弾性測定装置(TA Instruments社製、DISCOVERY HR-2)を用いて、1Hzの条件下、実施例及び比較例で得られた単層シートの190℃、10rad/sにおける複素粘度(Pa・s)を測定した。
【0102】
(4)製膜性
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、Φ15mmの二軸押出機(テクノベル社製、KZW)に投入し、スクリュー回転数を200rpm、シリンダー温度を200℃として溶融混練し、幅150mmのダイより押出して厚み約50μmの単層フィルムを作製した。得られたフィルムの膜面を目視で観察し、ムラなく均一である場合はA、ムラがあり均一でない場合はBと評価した。
【0103】
(5)変性デンプン(A)の重量平均分子量
変性デンプン(A)の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ、東ソー社製、HLC-8320GPC)を用いて、プルランで検量線を引いて算出した。
【0104】
(6)変性デンプン(A)の変性に用いた化合物のSP値
変性デンプン(A)の変性に用いた化合物のSP値は、Polym.Eng.Sci.,14[2],147(1974)に記載のFedorsの式により算出した。
【0105】
(7)ポリオール可塑剤(C)のガラス転移温度(Tg)
ポリオール可塑剤(C)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用いて、窒素下で昇温速度10℃/minで測定した。
【0106】
(8)厚み
実施例及び比較例で得られた単層シート及び製膜性の評価で作製した単層フィルムの厚みは、マイクロメータ(ミツトヨ社製、BMD-25MX)を用いて測定した。
【0107】
<変性デンプン(A1-1)>
・ECOFILM(登録商標):プロピレンオキシドにより変性されたトウモロコシデンプン、アミロース含有量70質量%、Ingredion社から入手。
プロピレンオキシドのSP値は13.2である。
【0108】
<疎水変性デンプン(A2-1)>
・National912(登録商標):オクテニルコハク酸により変性されたトウモロコシデンプン、重量平均分子量170,000、アミロース含有量1質量%、Ingredion社から入手。
【0109】
<疎水変性デンプン(A2-2)>
・CAPSUL(登録商標):オクテニルコハク酸により変性されたトウモロコシデンプン、重量平均分子量32,000、アミロース含有量1質量%、Ingredion社から入手。
オクテニルコハク酸のSP値は10.4である。
【0110】
製造例1
[ポリビニルアルコール(B-1)の製造]
還流冷却器、撹拌機、温度計、窒素導入管及び後添加液の仕込み口とポンプを備えたセパラブルフラスコに酢酸ビニルを1300g、メタノールを500g仕込んだ。前記フラスコ内に窒素置換した後、フラスコ内の溶液温度を60℃に調整した。撹拌される前記溶液中に2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gを添加し重合を開始した。重合開始から2.3時間後に重合率が30%となったところで、メタノールを1000g加えて重合を停止した。この重合ペーストにメタノール蒸気を吹き込んで未反応の酢酸ビニル単量体を除去し、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。得られた溶液にメタノールを加えてポリ酢酸ビニルの濃度が25質量%となるように調整したメタノール溶液400gに、水酸化ナトリウムの10質量%メタノール溶液11.6gを撹拌下に添加して、40℃でけん化を行った。けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した時点でゲルを粉砕器にて粉砕し、合計1時間けん化反応を行った後、メタノール1000gを加えて中和処理した。その後、濾別して得られた白色固体のポリビニルアルコールにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたポリビニルアルコールを乾燥機中70℃で2日間乾燥して、粘度平均重合度が1700であり、けん化度が99.2モル%のポリビニルアルコール(B-1)を得た。なお、粘度平均重合度及びけん化度は、JIS K6726に準拠して測定した。
【0111】
製造例2
[エチレン変性ポリビニルアルコール(B-2)の製造]
還流冷却器、原料供給ライン、反応液取出ライン、温度計、窒素導入口、エチレン導入口及び撹拌翼を備えた連続重合槽に酢酸ビニルを626L/hr、メタノールを216L/hr、開始剤としてn-プロピルパーオキシジカーボネートの1%メタノール溶液を30.3L/hr、それぞれ定量ポンプを用いて連続的に供給した。重合槽内のエチレン圧力は0.69MPaになるように調整した。重合槽内の液面が一定になるように連続重合槽から重合液を連続的に取り出した。連続重合槽の出口での重合率が67%になるように調整した。連続重合槽の滞留時間は5時間であった。連続重合槽の出口の温度は60℃であった。連続重合槽より重合液を回収し、温水浴で75℃に加熱しながら重合液にメタノール蒸気を導入することで残存する酢酸ビニルの除去を行い、エチレン変性ビニルエステル重合体のメタノール溶液を得た。次いで40℃下、けん化工程に供する系含水率を0.5質量%、けん化触媒としてエチレン変性ビニルエステル重合体に対してモル比0.02の割合で水酸化ナトリウムを用い、1時間けん化反応を行った。得られた重合体をメタノールに浸漬し洗浄を行った。次いで溶媒を遠心分離で除去したのち乾燥を行うことで、粘度平均重合度が400であり、けん化度が98.5モル%のエチレン変性ポリビニルアルコール(B-2)を得た。なお、粘度平均重合度及びけん化度は、JIS K6726に準拠して測定した。重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn-ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO-D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX-500)を用いて80℃で測定したところ、エチレン単位の含有量は10モル%であった。
【0112】
<ポリオール可塑剤(c1)>
Tgが25℃以上の可塑剤(c1)として、以下のものを用いた。
・可塑剤(c1-1):マルチトール,Tg=47℃
・可塑剤(c1-2):ラクチトール,Tg=33℃
・可塑剤(c1-3):トレハロース,Tg=120℃
【0113】
<ポリオール可塑剤(c2)>
Tgが25℃未満またはTgを有さないポリオール(c2)として、以下のものを用いた。
・可塑剤(c2-1):ソルビトール,Tg=-4℃
・可塑剤(c2-2):キシリトール,Tg=-23℃
・可塑剤(c2-3):グリセリン,Tg=-75℃
【0114】
<実施例1>
変性デンプン(A1-1)18.2質量部(乾燥質量)、疎水変性デンプン(A2-1)18.2質量部、疎水変性デンプン(A2-2)18.2質量部(乾燥質量)、ポリビニルアルコール(B-1)5.5質量部及び可塑剤(c1-1)40質量部を混合し、液体ポンプを接続したΦ15mm、L/D=45の二軸押出機(テクノベル社製、KZW)に投入し、スクリュー回転数を200rpm、以下に示した温度プロファイル(表1)で混練し、押し出しされる樹脂組成物の含水率が30質量%となるように水をC2における液体ポンプに通し、バレル内に投入した。ダイからストランド状に押し出された樹脂組成物をペレタイザーでカットすることでペレット形状に成形した。その後、90℃の熱風乾燥機で72時間乾燥した。得られた樹脂組成物ペレットについて、上記評価方法(4)に記載の方法に従って製膜性を評価した。結果を表2及び表3に示す。
また、得られた樹脂組成物ペレットを、圧縮成形機を用いて、金型温度190℃、荷重100kgf/cm2の条件下で1分間圧縮成形することで、厚さが約300μmの単層シートを製造した。得られた単層シートについて、上記評価方法(1)~(3)に記載の方法に従って、高湿度下酸素透過度、高湿度下含水率、及び複素粘度を測定した。結果を表2及び表3に示す。
【0115】
【0116】
<実施例2~実施例13、比較例1~比較例6>
変性デンプン(A)の種類及び含有量、PVA(B)の種類及び含有量、並びに可塑剤(C)の種類及び含有量を表2及び表3の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物及び単層シートを製造し、評価した。結果を表2及び表3に示す。なお、比較例5では、変性デンプン(A1-1)及びポリビニルアルコール(B-1)を溶融できなかったため、上記の方法では単層シートを作製できなかった。また、製膜性の評価は、実施例1、4、5、10、13及び比較例4のみ行った。
【0117】
【0118】
実施例1~13で得られた樹脂組成物は、溶融成形可能であり、比較例1~6と比べ、高湿度下(23℃、75%RH)における酸素透過度が低い、すなわち、酸素バリア性が高いことが確認された。従って、本発明の樹脂組成物は、高湿度下における酸素バリア性の低下を抑制でき、水を添加しなくても溶融可能である。