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特開2024-75322検出方法、検出器具、支援システム、及び、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075322
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】検出方法、検出器具、支援システム、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20240527BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20240527BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240527BHJP
   G01L 1/00 20060101ALN20240527BHJP
【FI】
G01N3/00 A
A61B34/10
A61B10/00 T
G01L1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186695
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】小西 聡
(72)【発明者】
【氏名】堀 祐登
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 智
(72)【発明者】
【氏名】堀 佑太郎
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB01
2G061BA07
2G061CA11
2G061DA01
2G061EA01
2G061EB04
2G061EC04
2G061EC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】弾性体の内部の弾性率の特異部を高精度で検出が可能な支援システムを提供する。
【解決手段】支援システム100は生体の触診を支援する支援システムであって、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具2と、特異部の検出のための演算を行う演算装置3と、出力装置4と、を備え、検出器具は、生体の表面を押圧する押圧部材と、押圧部材の表面への押込み方向を可変とするアクチュエータと、押圧された表面上の点における反力を測定するセンサと、を有し、検出器具によって押圧する表面上の位置を指示する操作装置5を備え、演算装置は、表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにおいて実行される、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出方法であって、
前記弾性体の表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、
複数の前記押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、前記第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて前記特異部の前記表面上での位置を検出する、ことを含む
検出方法。
【請求項2】
前記第1の測定結果と前記第2の測定結果とを用いることは、前記表面上の第1線と第2線との交点を得ることを含み、
前記第1線は、前記第1の押込み方向に押圧したときの前記反力が最大の第1の押圧点を通る、前記第1の押込み方向の前記表面上の線であり、
前記第2線は、前記第2の押込み方向に押圧したときの前記反力が最大の第2の押圧点を通る、前記第2の押込み方向の前記表面上の線である
請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記第1の押圧点は、前記複数の押圧点それぞれの前記第1の押込み方向に押圧したときの前記反力を比較して、前記反力が最大の点であり、かつ、前記反力が閾値以上の押圧点である
請求項2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記第2線は、前記第1の押圧点から前記第1の押込み方向が向かう位置にある複数の押圧点それぞれを前記第2の押込み方向に押圧したときの前記反力が最大の第2の押圧点を通る
請求項2に記載の検出方法。
【請求項5】
前記交点を得ることは、
前記第1の押圧点から前記第1の押込み方向が向かう位置にある複数の押圧点を、前記第1の押圧点から前記第1の押込み方向が向かう順に前記第2の押込み方向に押圧し、
測定された前記反力が最大の点を前記交点として得る、ことを含む
請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
前記押圧点における前記押込み方向と、前記押圧による前記押圧点の位置の変化量と、前記特異部の前記表面上での位置からの距離と、を用いて、前記特異部の前記表面からの距離を算出する、ことをさらに含む
請求項1に記載の検出方法。
【請求項7】
弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具であって、
前記弾性体の表面を押圧する押圧部材と、
前記押圧部材の前記表面への押込み方向を可変とするアクチュエータと、
前記押圧部材によって押圧された前記表面の押圧点から受ける反力を測定する第1センサと、を備える
検出器具。
【請求項8】
前記押込み方向を検出する第2センサをさらに備える
請求項7に記載の検出器具。
【請求項9】
前記アクチュエータは、内部に供給された流体の流体圧によって表面の膜体が伸びつつ膨張し、当該伸びによって生じた引っ張り応力によって曲がり運動を行うバルーンアクチュエータであって、
前記膜体は、
流体圧によって伸びが生じる第1膜体と、
流体圧によって伸びが生じるとともに、伸びによって生じる引っ張り応力が前記第1膜体とは異なるよう構成され、前記第1膜体との間に前記流体が供給されるよう前記第1膜体に接合された第2膜体と、を有して構成され、
前記曲がり運動によって前記押圧部材の前記表面に対する角度を変化させる
請求項7に記載の検出器具。
【請求項10】
前記押圧部材は、前記表面に接触する位置に、前記表面側に凸の突起を有する
請求項7に記載の検出器具。
【請求項11】
生体の触診を支援する支援システムであって、
弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具と、
前記特異部の検出のための演算を行う演算装置と、
出力装置と、を備え、
前記検出器具は、
前記生体の表面を押圧する押圧部材と、
前記押圧部材の前記表面への押込み方向を可変とするアクチュエータと、
前記押圧部材によって押圧された前記表面上の点における反力を測定するセンサと、を有し、
前記検出器具によって押圧する前記表面上の位置を指示する操作装置をさらに備え、
前記演算装置は、
前記表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける前記反力の測定結果を得、
複数の前記押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、前記第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて前記特異部の前記表面上での位置を検出する、ことを含み、
前記出力装置は、前記演算装置によって得られた前記特異部の前記表面上での位置を出力する
支援システム。
【請求項12】
前記出力装置は表示装置であって、
前記出力することは、前記特異部の前記表面上での位置を前記表面の画像に重ねて表示することを含む
請求項11に記載の支援システム。
【請求項13】
前記操作装置は、ユーザの手に装着されて、前記手によって押圧する前記表面上の位置と前記押込み方向との指示を受け付ける
請求項11に記載の支援システム。
【請求項14】
コンピュータに、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出のための演算を行わせるコンピュータプログラムであって、
前記演算は、
前記弾性体の表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、
複数の前記押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、前記第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて前記特異部の前記表面上での位置を検出する、ことを含む
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出方法、検出器具、支援システム、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性体の反力を計測する手法として、直動型デバイスが知られている。直動型デバイスは、弾性体の表面に法線方向に押圧部材を押し込むことで押圧し、押圧部材が弾性体の表面から受ける反力を計測するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-204612号公報
【発明の概要】
【0004】
直動型デバイスを用いて計測される反力は、弾性体の表面から法線方向の反力である。そのため、直動型デバイスを用いると、押圧部材を押し込む位置の直下に弾性率の特異部が存在しない場合に、特異部が高精度で検出できない場合がある、という問題がある。
【0005】
弾性体の内部の弾性率の特異部の検出は、例えば、生体組織内の悪性腫瘍の検出などが挙げられる。この場合の手法として、低侵襲性治療の一つである内視鏡外科手術が注目されている。内視鏡外科手術では医師の手による触診での悪性腫瘍等の位置の検知ができない。そのため、医師の手による触診に替えてデバイスを用いることが考えられるものの、特に、生体の特異部を検出する場合、その表面は平面でないことも多く、直動型デバイスを用いることが難しい。また、内視鏡外科手術では押圧部材を表面の法線方向に押し込むためのスペースが確保できない場合もある。従って、特異部を高精度で検出が可能な検出方法、検出器具、支援システム、及び、コンピュータプログラムが求められている。
【0006】
ある実施の形態に従うと、検出方法は、コンピュータにおいて実行される、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出方法であって、弾性体の表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する、ことを含む。
【0007】
ある実施の形態に従うと、検出器具は弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具であって、弾性体の表面を押圧する押圧部材と、押圧部材の表面への押込み方向を可変とするアクチュエータと、押圧部材によって押圧された表面の押圧点から受ける反力を測定する第1センサと、を備える。
【0008】
ある実施の形態に従うと、支援システムは生体の触診を支援する支援システムであって、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具と、特異部の検出のための演算を行う演算装置と、出力装置と、を備え、検出器具は、生体の表面を押圧する押圧部材と、押圧部材の表面への押込み方向を可変とするアクチュエータと、押圧部材によって押圧された表面上の点における反力を測定するセンサと、を有し、支援システムは検出器具によって押圧する表面上の位置を指示する操作装置をさらに備え、演算装置は、表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する、ことを含み、出力装置は、演算装置によって得られた特異部の表面上での位置を出力する。
【0009】
ある実施の形態に従うと、コンピュータプログラムはコンピュータに弾性体の内部の弾性率の特異部の検出のための演算を行わせるコンピュータプログラムであって、演算は、弾性体の表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する、ことを含む。
【0010】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る支援システムの概略図である。
図2図2は、支援システムに含まれる検出器具の概略図である。
図3図3は、検出器具の有するアクチュエータの一例としての曲げ駆動装置の概略図である。
図4図4は、曲げ駆動装置での曲がり運動の原理を説明するための図である。
図5図5は、曲げ駆動装置での曲がり運動の原理を説明するための図である。
図6図6は、検出器具での検出のための動作を説明するための図である。
図7図7は、発明者らが行った実験に用いた弾性体の概要を表した図である。
図8図8は、実験での測定結果を表した図である。
図9図9は、検出器具による検出範囲を説明するための図である。
図10図10は、実施の形態に係る特異部の検出方法を説明するための図である。
図11図11は、実施の形態に係る特異部の検出方法を説明するための図である。
図12図12は、支援システムに含まれる演算装置の概略構成図である。
図13図13は、演算装置のプロセッサでの処理の流れの一例を表したフローチャートである。
図14図14は、演算装置のプロセッサでの処理の流れの一例を表したフローチャートである。
図15図15は、特異部の深度の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.検出方法、検出器具、支援システム、及び、コンピュータプログラムの概要>
【0013】
(1)実施の形態に係る検出方法は、コンピュータにおいて実行される、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出方法であって、弾性体の表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する、ことを含む。
【0014】
弾性体の表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を用いることで、測定される反力が、押込み方向と押圧点から特異部に向かう方向との関係に応じたものとなる。そのため、この検出方法を採用した情報処理をコンピュータが実行することによって、押込み方向の異なる第1の測定結果と第2の測定結果とが用いられ、高精度で特異部の表面上での位置を検出することができる。
【0015】
(2)好ましくは、第1の測定結果と第2の測定結果とを用いることは、表面上の第1線と第2線との交点を得ることを含み、第1線は、第1の押込み方向に押圧したときの反力が最大の第1の押圧点を通る、第1の押込み方向の表面上の線であり、第2線は、第2の押込み方向に押圧したときの反力が最大の第2の押圧点を通る、第2の押込み方向の表面上の線である。これにより、高精度で特異部の表面上での位置を検出することができる。
【0016】
(3)好ましくは、第1の押圧点は、複数の押圧点それぞれの第1の押込み方向に押圧したときの反力を比較して、反力が最大の点であり、かつ、反力が閾値以上の押圧点である。これにより、複数の押圧点のうち、特異部が最も近くにある可能性のある押圧点を第1の押圧点とすることができる。
【0017】
(4)好ましくは、第2線は、第1の押圧点から第1の押込み方向が向かう位置にある複数の押圧点それぞれを第2の押込み方向に押圧したときの反力が最大の第2の押圧点を通る。これにより、特異部が近くにある可能性のある複数の押圧点の中を用いて特異部を検出することができる。その結果、高精度で特異部を検出することができる。
【0018】
(5)好ましくは、交点を得ることは、第1の押圧点から第1の押込み方向が向かう位置にある複数の押圧点を、第1の押圧点から第1の押込み方向が向かう順に第2の押込み方向に押圧し、測定された反力が最大の点を交点として得る、ことを含む。これにより、第1の押圧点から第1の押込み方向が向かう位置にある複数の押圧点を、第1の押圧点から第1の押込み方向が向かう順に第2の押込み方向に押圧しているときに交点が得られた時点で、第2の押込み方向での押圧を終了することができる。そのため、すべての押圧点を押圧するよりも少ない押圧で特異部を検出することができる。
【0019】
(6)好ましくは、押圧点における押込み方向と、押圧による押圧点の位置の変化量と、特異部の表面上での位置からの距離と、を用いて、特異部の表面からの距離を算出する、ことをさらに含む。これにより、特異部の表面からの深さも算出することができる。
【0020】
(7)実施の形態に係る検出器具は弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具であって、弾性体の表面を押圧する押圧部材と、押圧部材の表面への押込み方向を可変とするアクチュエータと、押圧部材によって押圧された表面の押圧点から受ける反力を測定する第1センサと、を備える。アクチュエータが備えられることによって、検出器具では、押圧部材の弾性体の表面への押込み方向が可変となる。そのため、表面の押圧点を、その接平面の法線方向に対して角度を有して押圧することができる。これにより、検出器具による検出範囲は、押込み方向と、押圧点から特異部に向かう方向との関係による特性を有する。そのため、押込み方向ごとに特異部の位置が推定され、異なる押込み方向での反力の測定結果を用いることで、高精度で特異部を検出することができる。
【0021】
(8)好ましくは、検出器具は押込み方向を検出する第2センサをさらに備える。これにより、押込み方向を検出することができ、特異部の検出に用いることができる。
【0022】
(9)好ましくは、アクチュエータは、内部に供給された流体の流体圧によって表面の膜体が伸びつつ膨張し、当該伸びによって生じた引っ張り応力によって曲がり運動を行うバルーンアクチュエータであって、膜体は、流体圧によって伸びが生じる第1膜体と、流体圧によって伸びが生じるとともに、伸びによって生じる引っ張り応力が第1膜体とは異なるよう構成され、第1膜体との間に流体が供給されるよう第1膜体に接合された第2膜体と、を有して構成され、曲がり運動によって押圧部材の表面に対する角度を変化させる。アクチュエータとしてバルーンアクチュエータを用いることにより、押込み方向の調整が容易になる。
【0023】
(10)好ましくは、押圧部材は、表面に接触する位置に、表面側に凸の突起を有する。これにより、押込み方向の調整が容易になる。
【0024】
(11)実施の形態に係る支援システムは生体の触診を支援する支援システムであって、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具と、特異部の検出のための演算を行う演算装置と、出力装置と、を備え、検出器具は、生体の表面を押圧する押圧部材と、押圧部材の表面への押込み方向を可変とするアクチュエータと、押圧部材によって押圧された表面上の点における反力を測定するセンサと、を有し、支援システムは検出器具によって押圧する表面上の位置を指示する操作装置をさらに備え、演算装置は、表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する、ことを含み、出力装置は、演算装置によって得られた特異部の表面上での位置を出力する。
【0025】
支援システムを用いることで、ユーザの手による触診に替えて、検出器具を用いて生体の表面を押圧することができる。このとき、検出器具では、生体の表面の押圧点が、その接平面の法線方向に対して角度を有して押圧される。そのため、検出器具による検出範囲は、押込み方向と、押圧点から特異部に向かう方向との関係による特性を有する。演算装置は、検出器具による異なる押込み方向での反力の測定結果を用いて演算を行うことで、高精度で特異部を検出することができる。
【0026】
(12)好ましくは、出力装置は表示装置であって、出力することは、特異部の表面上での位置を表面の画像に重ねて表示することを含む。これにより、対象の表面が生体内部のものであるなどして見えない場合であっても、表示装置の表示によってその表面に特異部が存在するように視認することができる。
【0027】
(13)好ましくは、操作装置は、ユーザの手に装着されて、手によって押圧する表面上の位置と押込み方向との指示を受け付ける。これにより、例えば医師による触診など、ユーザが実際に触診しているような操作性で生体の触診を支援することができる。
【0028】
(14)実施の形態に係るコンピュータプログラムはコンピュータに弾性体の内部の弾性率の特異部の検出のための演算を行わせるコンピュータプログラムであって、演算は、弾性体の表面を、接平面の法線方向に対して角度を成す押込み方向に押圧したときの各押圧点から受ける反力の測定結果を得、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向に押圧したときの第1の測定結果と、第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する、ことを含む。
【0029】
このコンピュータプログラムによって、コンピュータでは押込み方向の異なる第1の測定結果と第2の測定結果とを用いた演算が行われ、その結果、高精度で特異部の表面上での位置を検出することができる。
【0030】
<2.検出方法、検出器具、支援システム、及び、コンピュータプログラムの例>
【0031】
図1は、本実施の形態に係る支援システム100の概略図である。支援システム100は、生体200の触診を支援するシステムである。生体200は弾性体であって、触診は、例えば腫瘍などの、生体200の内部の弾性率の特異部201を検出するために行われる。
【0032】
支援システム100は、弾性体の内部の弾性率の特異部の検出に用いられる検出器具2を備える。検出器具2は操作装置5に接続されて、操作装置5に対するユーザ操作に従って動作する。検出器具2は、例えば腫瘍が疑われる箇所などの生体200の検出エリアに配置され、検出のための動作を行うことが想定される。
【0033】
図2は、検出器具2の概略図である。検出器具2は、先端に押圧部材22が取り付けられたアーム21を有する。検出のための動作は、生体200の表面200Aを、押圧部材22先端の接触部22Aにて押圧することを含む。
【0034】
検出器具2は、一例として、小型器具であって、人の手が入らない狭所箇所や、視認し難い生体内部で用いられることが想定されている。この場合、一例として、押圧部材22の幅は8mm程度、長さは20mm程度である。押圧部材22の幅は押圧部材22のアーム21の長手方向に直交する方向の長さを指し、押圧部材22の長さはアーム21の長手方向に一致する方向の長さを指す。
【0035】
押圧部材22は折れ部23を有し、折れ部23から先端の接触部22Aまでの曲げ部22Bを構成している。検出器具2が小型である場合、曲げ部22Bの長さrは10mm程度である。曲げ部22Bは、折れ部23が外に凸となるように屈曲する。押圧部材22の屈曲度合は、アーム21の長手方向に対する角度である屈曲角θで表される。
【0036】
好ましくは、折れ部23の上面には1又は複数の溝23Aが形成されている。折れ部23の上面は、曲げ部22Bが屈曲したときの凸側の面を指す。検出器具2が小型である場合、溝23Aの幅は0.3mm程度であり、例えば0.8mm間隔で3本程度、長さが2.5mmの範囲に設けられてもよい。これにより、折れ部23の上面を凸として曲げ部22Bが屈曲しやすくなる。
【0037】
好ましくは、接触部22Aの下面には、突起27が形成されている。検出器具2が小型である場合、突起27の高さは3mm程度である。これにより、検出器具2を用いて生体200の表面200Aを押圧する際の、表面200Aへの接触面積を小さくすることができる。その結果、表面200Aを効率的に押圧できるとともに、後述する押込み量を増加させることで検出精度を向上させることができる。好ましくは、突起27は柔軟な素材で形成され、一例として、エラストマー素材によって形成される。これにより、生体200への侵襲性を低下させることができる。
【0038】
押圧部材22には、第1センサ24が配置されている。第1センサ24は、接触部22Aが受ける反力を測定する。接触部22Aの面積は、押圧部材22の生体200への押込み量により変化する。そのため、第1センサ24は、接触面に関わらず反力を検出可能なセンサが好ましい。第1センサ24は、例えば、歪センサである。好ましくは、押圧部材22には、屈曲角θを検出する第2センサ26が配置されている。
【0039】
検出器具2は、屈曲角θを可変とするアクチュエータ1を有する。アクチュエータ1は、一例として、曲げ駆動装置1Aである。図3図5は、曲げ駆動装置1Aを説明するための図であって、図3は曲げ駆動装置1Aの概略図である。図4及び図5は曲げ駆動装置1Aでの曲がり運動の原理を説明するための図である。
【0040】
曲げ駆動装置1Aは、内部空間13を有する膜体10を備える。膜体10は、第1膜体11と第2膜体12とを含む。第2膜体12は、第1膜体11との間に内部空間13を構成するように、第1膜体11の第1の面11Aに対して接合されている。内部空間13は、図示しない空気流入口を有し、アーム21に設けられた流路21Bに接続されている。内部空間13に対しては、空気流入口及び流路21Bを介して給排気が可能である。
【0041】
説明の簡便のために、図3に示されるように、曲げ駆動装置1Aに対してXY軸を設定する。第1膜体11の第1の面11A、及び、第1の面11Aの逆側の第2の面11B内の第1の方向をX軸方向とし、第1の面11A内にX軸を設定する。第1の面11Aの法線方向をY軸方向として、第1膜体11及び第2膜体12のX軸方向の一方の端部ED1を原点OとしてY軸を設定する。第1膜体11及び第2膜体12のX軸方向の他方の端部ED2は、Xの値が大きくなるようにX軸の向きを設定する。第1膜体11と第2膜体12とはX軸を挟んで接合されている。X軸方向のうち、Xの値が大きくなる向きを+X向き、Xの値が小さくなる向きを-X向きという。また、Xの値が大きい側を+X側、小さい側を-X側という。Y軸方向のうち、Yの値が大きくなる向きを+Y向き、Yの値が小さくなる向きを-Y向きという。また、Yの値が大きい側を+Y側、小さい側を-Y側という。第1膜体11の第1の面11Aは第1膜体11の-Y側の面であり、第2の面11Bは第1膜体11の+Y側の面である。
【0042】
曲げ駆動装置1Aは、さらに、第1膜体11の第2の面11B側に積層された非伸縮性のシート14を備える。シート14は、第2の面11Bに対して、内部空間13を挟む第1接合位置14A及び第2接合位置14Bで接合され、接合位置14A,14B以外は非接合である。第1接合位置14A及び第2接合位置14Bが並ぶ方向がX軸方向(第1の方向)である。第1接合位置14Aは内部空間13の-X側の位置であり、第2接合位置14Bは内部空間13の+X側の位置である。好ましくは、曲げ駆動装置1Aは、端部ED1が固定端、端部ED2が自由端である。
【0043】
第1膜体11の材質は、内部空間13内の空気圧によって伸びが生じるものである。そのため、第1膜体11は内部空間13内の空気圧によって+Y方向に膨張する。第2膜体12の材質も、内部空間13内の空気圧によって伸びが生じるものであるが、その伸びは第1膜体11の伸びよりも小さい。そのため、第2膜体12も内部空間13内の空気圧によって-Y方向に膨張するが、第1膜体11の内部空間13内の空気圧による膨張よりも小さい。シート14は非伸縮性のシートである。なお、ここでの非伸縮性とは、まったく伸縮しないものに加えて、第1膜体11及び第2膜体12と比較して非伸縮と言える程度に伸縮が十分に小さいものも含む。つまり、若干の伸縮性を有するものが含まれてもよい。
【0044】
第1膜体11及び第2膜体12の素材は、一例として、シリコン樹脂である。第1膜体11の素材は、例えば、二液型RTC(Room-Temperature Curing:室温硬化型)シリコンゴムであって、例えば、主剤と硬化剤との重量比が10:1のRTCシリコンゴムである。物性値の一例として、密度は1.03g/cm^3、引張強さは4.3MPa、破断伸びT1は350%である。
【0045】
第2膜体12は、一例として、シリコン樹脂素材の膜と、PDMS(polydimethylsiloxane:ポリメチルシロキサン)素材の膜との積層構造である。PDMS素材は、例えば、主剤と硬化剤との重量比が10:1である。物性値の一例として、PDMSの密度は1.05g/cm^3、引張強さは6.7MPa、破断伸びT2は140%である。PDMSのヤング率は0.44MPa程度であり、RTCシリコンゴムのヤング率はPDMSのヤング率よりも大きい。
【0046】
シート14は高分子合成フィルムである。シート14の素材は、一例として、PI(polyimide:ポリイミド)であって、例えば、厚みが50μmのPIである。物性値の一例として、密度は1.42g/cm^3、引張強さは300MPa、破断伸びT3は85%である。ヤング率E3は3300MPaである。
【0047】
RTCシリコンゴムからなる第1膜体11のヤング率E1、シリコン樹脂素材の膜とPDMSの膜との積層構造である第2膜体12のヤング率E2、及び、シート14のヤング率E3は、E2>E3>E1の関係を満たす。E2>E1より、第2膜体12の方が第1膜体11より剛性が高い。このため、内部空間13の空気圧によって第1膜体11の方が第2膜体12よりも変形しやすい。つまり、第2膜体12の膨張が抑えられ、一方で、第1膜体11が大きく膨張する。これにより、内部空間13の膨張が効率的にシート14に伝搬する。また、E2>E3より、シート14の方が第2膜体12よりも変形しやすい。これにより、内部空間13の膨張によってシート14に生じた押上げ力が効率的に第2膜体12に伝搬する。これらのことから、内部空間13の膨張を効率的に曲がり運動に変換することができる。
【0048】
なお、上記した第1膜体11、第2膜体12、及びシート14の素材は一例であって、他の素材であってもよい。他の例として、第1膜体11、第2膜体12、及びシート14の素材は、それぞれのヤング率がE3>E2>E1の関係を満たす素材であってもよい。E3>E2>E1の関係より、第1膜体11、第2膜体12、及びシート14の変形率(伸び)1/Eは、1/E1>1/E2>1/E3の関係を満たす。つまり、第1膜体11の方が第2膜体12より伸びやすい。このため、内部空間13の空気圧によって第1膜体11の方が第2膜体12よりも伸びやすい。つまり、第2膜体12の膨張が抑えられ、一方で、第1膜体11が大きく膨張する。これにより、内部空間13の膨張が効率的にシート14に伝搬する。また、シート14の方が第2膜体12よりも伸びやすい。これにより、内部空間13の膨張によってシート14に生じた押上げ力が効率的に第2膜体12に伝搬する。これらのことから、内部空間13の膨張を効率的に曲がり運動に変換することができる。
【0049】
なお、好ましくは、第1膜体11の厚みH1、第2膜体12の厚みH2、及び、シート14の厚みH3が、H2>H3>H1の関係を満たす。一例として、第1膜体11の厚みH1は90μm、第2膜体12の厚みH2は1.2mmである。第1膜体11のヤング率E1、第2膜体12のヤング率E2、及び、シート14のヤング率E3が共通の場合、それぞれの曲げ剛性EIは断面二次モーメントI(I=WH^3/12(W:矩形幅、H:矩形厚み))に比例する。断面二次モーメントIは、厚みHの三乗に比例する。そのため、H2>H1より、第2膜体12の方が第1膜体11より曲げ剛性が高い。このため、内部空間の空気圧による変形は、第1膜体11の方が第2膜体12よりも大きい。これにより、内部空間の膨張が効率的にシート14に伝搬する。また、H2>H3より、シート14の押上げ力をより効率的に曲がり運動に変換することができる。
【0050】
なお、第1の例に係る曲げ駆動装置1Aの場合、第1膜体11及び第2膜体12は、一例として、16mm×50mmである。X軸方向の長さ50mmのうち、内部空間13のX軸方向の長さは例えば12mm、図示しない内部空間13に伸びる流路の高さは例えば65μmである。
【0051】
第2膜体12のヤング率E2は第1膜体11のヤング率E1より大きいため、第2膜体12の方が第1膜体11より剛性が高い。つまり、第1膜体11の方が第2膜体12より変形しやすい。また、第1膜体の破断伸びT1は第2膜体の破断伸びT2より大きいため、第2膜体12の方が第1膜体11より伸び剛性が高い。これらのことより、内部空間13に供給された空気の空気圧によって、第2膜体12より第1膜体11の方が大きく変形する。その結果、図4に示されたように、曲げ駆動装置1Aでは、内部空間13に空気が給気されると、第1膜体11は+Y向きである膨張方向Exに膨張し、かつ、第2膜体12の-Y向きの膨張は第1膜体11の膨張よりも小さい。又は、ほぼ膨張しない。
【0052】
シート14は第1膜体11の膨張により+Y向きに力F1が作用して押し上げられる。しかしながら、非伸縮性のシートであるため+Y向きに膨張しない。又は、膨張が極めて小さい。そのため、接合位置14A,14Bに、それぞれ+X向き、-X向きの内部空間13に向かう方向の引っ張り力TF1,TF2が生じる(B)。これにより、第2膜体12はX軸方向に圧縮され、接合位置14A,14Bは、それぞれ、元の位置(A)から+X向き、-X向きに圧縮に応じた距離e移動する。
【0053】
しかしながら、第2膜体12は剛性が高いため、圧縮による変形が小さい。そのため、接合位置14A,14Bはそれぞれ距離eよりも大きく移動しない。その結果、第2膜体12の接合位置14A,14Bと重なる位置には+Y向きにたわみW1,W2が生じる(C)。たわみW1,W2によって、接合された第1膜体11及び第2膜体12は+Y向きに曲がる。
【0054】
図5に示されるように、曲げ駆動装置1Aの端部ED1は固定端であり、端部ED2は自由端であるため、接合位置14A,14Bにそれぞれ引っ張り力TF1,TF2が生じる。この状態は、第2膜体12を端部ED1を固定端とする片持ち梁とし、接合位置14Bに引っ張り力TF2の+Y向き分力が集中荷重として作用している状態である。そのため、第2接合位置14Bと重なる位置には+Y向きのたわみWが発生する。たわみWは、接合された第1膜体11及び第2膜体12に+Y向きの曲がり運動を生じさせる。
【0055】
アーム21に設けられた流路21Bには、図示しないポンプを含む給排気装置が接続されて、流路21Bを通って内部空間13への給排気が行われる。給排気装置は操作装置5に接続されて、操作装置5からの操作信号に従って動作する。操作装置5には、屈曲角θに応じた給排気量が予め設定されている。操作装置5は、ユーザ操作に対応した屈曲角θのための給排気量で給排気させるようポンプに操作信号を出力する。これにより、曲げ駆動装置1Aをアクチュエータ1とした検出器具2は、曲げ部22Bがアーム21の長手方向に対してユーザ操作に対応した屈曲角θで屈曲する。
【0056】
アクチュエータ1として曲げ駆動装置1Aを利用することで屈曲角θの調整が容易になり、柔軟な検出が可能になる。そのため、検出精度を向上させることができるとともに、後述する特異部の深さの算出も容易になる。
【0057】
アーム21は、少なくとも一部、例えば基端21Aが可動部25に取り付けられている。可動部25は、操作装置5からの操作信号に従って基端21Aを移動させる。一例として、ユーザが、操作装置5を用いて特定の方向(例えば右)に対して規定量の移動を指示した場合に、操作装置5は可動部25に対して、上記規定量に対応付けて予め記憶されている駆動量の駆動を指示する。これにより、検出器具2は、指示時の位置から規定量、移動する。その結果、押圧部材22は、操作装置5からの操作指示に従う位置となる。
【0058】
操作装置5は、検出器具2の位置の移動、及び、屈曲角θの増減を指示するユーザ操作を受け付ける。一例として、操作装置5は、ユーザが指に装着するタイプのものである。この場合、操作装置5は、指の動き、及び、間接の角度を検出するセンサを有し、指の動きの検出結果を検出器具2の位置の移動の指示、間接の角度の検出結果を屈曲角θの増減の指示とする。これにより、ユーザは、自身の手で触診しているように、自然な動作で検出器具2の位置の移動、及び、屈曲角θの増減を指示することができる。
【0059】
図6は、検出器具2での検出のための動作を説明するための図であって、初期状態401及び押圧状態402の概略図である。初期状態401は、生体200の表面200Aの押圧点Pに接触部22Aが接触した状態である。初期状態401にあるとき、曲げ部22Bはアーム21の長手方向に対して初期屈曲角θ0を成し、接触部22Aによって押圧点Pに与えられる初期押圧力F0が生じる。第1センサ24のセンサ信号からは、接触による初期反力R0が検出される。
【0060】
初期状態401において、アーム21を長手方向を表面200Aの押圧点Pにおける接平面Sと平行とすると、接触部22Aが押圧点Pに与えている初期押圧力F0の方向である押込み方向は、押圧点Pにおける接平面Sの法線方向Nに対して初期屈曲角θ0を成す。押圧点Pに初期押圧力F0が与えられることによって押圧点Pは移動し、初期の押込み量t0が発生する。押込み量は、押圧点Pの法線方向Nの移動距離を指す。初期状態401では初期押圧力F0は極めて小さいため、押込み量t0は概ね0であると想定される。
【0061】
初期状態401の検出器具2に対して操作装置5から操作信号が送られることによって、検出器具2は押圧状態402に移行する。押圧状態402は、曲げ部22Bの屈曲の度合が初期屈曲角θ0から屈曲角θまで増した状態である。押圧状態402にあるとき、押圧点Pには接触部22Aによって押圧力Fが生じる。これにより、接触部22Aに対する反力Rが第1センサ24のセンサ信号から検出される。また、押圧力Fによって押込み量tが発生する。押圧力Fの押込み方向Gは、押圧点Pにおける法線方向Nに対して屈曲角θを成す。すなわち、屈曲角θを得ることによって、押込み方向Gが得られる。
【0062】
図7及び図8は、発明者らが行った実験を説明するための図であって、図7は、実験に用いた弾性体300の概要を表した図である。図8は、測定結果を表した図である。
【0063】
実験に用いた弾性体300は、ゼラチンを用いて作成された、ヤング率約28KPaの疑似生体モデルである。特異部301として、直径5mmの鋼球を表面から10mmの位置に配置されている。弾性体300の表面300Aには、5mm間隔のA,B,C,D行、5mm間隔の第1,第2,第3,第4列それぞれの交点に押圧点A1,A2,A3,A4,…,D4が設定されている。特異部301の直上に押圧点B3が設定されている。
【0064】
実験では、弾性体300の表面300Aに設定された16個の押圧点それぞれを、検出器具2を用いて押圧した。反力は、歪ゲージである第1センサ24の抵抗値によって得た。押込み方向Gを同一として、隣接する押圧点にて得られた反力の差分を抵抗変化率としてそれぞれ算出することによって、図8の測定結果が得られた。
【0065】
図8の測定結果は、押圧点B3において抵抗変化率が最も高く、押圧点B3から四方に離れるほど抵抗変化率が低くなることを示している。この測定結果より、特異部301の直上にて最大反力が測定されていることが分かる。そのため、検出器具2を用いることによって特異部301が検出できることが検証された。
【0066】
さらに、図8の測定結果は、A,B,C行それぞれの1~4列の測定結果を比較すると、1,2列の抵抗変化率の方が4列の抵抗変化率よりも大きいことを示している。実験における押込み方向Gは、1,2,3列において特異部301に向かい、4列において特異部301のない方向に向かう方向、つまり、図7において右下向きの方向である。このことより、押圧点と特異部301との位置関係と、押込み方向Gとの間に関連があると考察された。
【0067】
図9は、検出器具2による検出範囲を説明するための図である。検出器具2では、曲げ部22Bが屈曲角θで屈曲することで、押圧点Pが、その接平面Sの法線方向Nに対して屈曲角θと同じ角度を有して押圧される。そのため、表面300Aのうち、押込み方向Gが特異部301に向かう方向である領域W1においては、押圧力Fが特異部301に影響する。そのため、接触部22Aが受ける反力は、特異部301の弾性率の違いの影響を受ける。一方、押込み方向Gが特異部301の存在しない方向である領域W2においては、押圧力Fが特異部301に影響しない。そのため、接触部22Aが受ける反力は、特異部301の弾性率の違いの影響を受けない。つまり、検出器具2による検出範囲は、押込み方向Gと、押圧点から特異部301に向かう方向との関係による特性を有する。
【0068】
実験においては、押圧点B1,B2,B3が領域W1に存在し、押圧点B4が領域W2に存在している。そのため、押圧点B1,B2,B3の測定結果が特異部301の弾性率の違いの影響を受けて大きくなり、押圧点B4の測定結果が特異部301の弾性率の違いの影響を受けていないと考えられる。これより、周囲の押圧点における反力との変化におって、特異部301が存在する方向が推定される。そのため、特異部301が存在する方向を少なくとも2方向、推定することによって、これら2方向の表面300A上の直線の交点の下に特異部301が存在すると推定することができる。
【0069】
検出器具2では、曲げ部22Bが屈曲角θで屈曲することで、押圧点Pが、その接平面Sの法線方向Nに対して屈曲角θと同じ角度を有して押圧される。そのため、直上型デバイスを用いて押圧する場合と比較して、広範囲で特異部301を検出することができ、検出精度を向上させることができる。また、表面300Aが平面でない場合であっても押圧が可能であるとともに、押圧のためのストロークも直上型デバイスと比較して小さくすることができる。そのため、弾性体が生体などであっても精度よく特異部が検出できるとともに、体内や狭所であっても押圧が可能になる。
【0070】
本実施の形態に係る特異部の検出方法は、図9に説明された検出範囲を利用したものである。図10及び図11は、本実施の形態に係る特異部の検出方法を説明するための図である。本実施の形態に係る検出方法は、弾性体300の表面300A上の押圧点を、検出器具2を用いて押圧したときに押圧点から受ける反力の測定結果を得ることを含む。このとき、検出器具2では、押圧点を、その点における表面300Aの接平面に直交する方向である法線方向に対して角度を成す押込み方向Gに押圧する。
【0071】
本実施の形態に係る検出方法は、複数の押圧点のうち、第1の押込み方向G1に押圧したときの第1の測定結果と、前記第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向G2に押圧したときの第2の測定結果と、を用いて特異部の表面上での位置を検出する、ことを含む。
【0072】
具体例として、第1の押込み方向に押圧したときの反力が最大の第1の押圧点を通り、第1の押込み方向を有する表面上の第1線を決定する。図10の例では、一例として、押圧点A1,B1,C1,D1それぞれの第1の押込み方向G1に押圧したときの第1センサ24の抵抗値を用いて、反力が最大の第1の押圧点を決定する。ここでの決定方法の一例として、押圧点A1,B1,C1,D1それぞれの第1センサ24の抵抗値の基準値に対する変化率を算出し、変化率が最大の押圧点を第1の押圧点と決定する。基準値は、例えば、特異部を含まない弾性体で測定された抵抗値であってもよいし、予め規定された値であってもよい。
【0073】
好ましくは、変化率が最大であり、かつ、周囲の点における変化率との差が閾値以上である押圧点を第1の押圧点として抽出する。閾値は、例えば、0.1%程度であってよい。これにより、反力が最大の点であり、かつ、反力が閾値以上である押圧点を第1の押圧点として抽出されるようになる。
【0074】
図10の例では、押圧点A1,B1,C1,D1それぞれでの反力の変化率を比較すると、押圧点B1での反力の変化率が最大であり、かつ、閾値とした0.1%より大きい。そのため、押圧点B1が第1の押圧点と決定される。そして、押圧点B1を通り、第1の押込み方向G1を有する表面300A上の線を第1線L1とする。なお、第1の押込み方向G1を有する表面300A上の線は、第1の押込み方向G1を表面300Aに投影した方向を有する線を指す。以降においても同様である。
【0075】
次に、第1の押込み方向とは異なる第2の押込み方向に押圧したときの反力が最大の第2の押圧点を通り、第2の押込み方向を有する表面上の第2線を決定する。好ましくは、第1の押圧点に対して第1の押込み方向に応じた位置にある複数の押圧点のうちの第2の押込み方向に押圧したときの反力が最大の第2の押圧点を通り、第2の押込み方向を有する表面上の第2線を決定する。
【0076】
図11の例では、図10の例で決定された第1の押圧点B1から第1の押込み方向G1が向かう位置にある押圧点B2,B3,B4それぞれの第2の押込み方向G2に押圧したときの第1センサ24の抵抗値を用いて、反力が最大の第2の押圧点を決定する。図11の例では、押圧点B1,B2,B3,B4それぞれでの反力の変化率を比較すると、押圧点B3での反力の変化率が最大であり、かつ、閾値とした0.1%より大きい。そのため、押圧点B3が第2の押圧点と決定される。そして、押圧点B3を通り、第2の押込み方向G2を有する表面300A上の線を第2線L2とする。
【0077】
図9の考察のよると、押圧点A1,B1,C1,D1のうちでは、第1の押圧点B1が第1の押込み方向G1の向く位置に特異部301が存在すると推定される。そのため、第1線L1は、その下に特異部301が存在する可能性が高い。同様に、第2線L2は、その下に特異部301が存在する可能性が高い。そのため、第1線L1と第2線L2との交点を特異部301の表面300A上での位置と推定することができる。つまり、第1線L1と第2線L2との交点を算出することで、特異部301の表面300A上での位置を検出する。
【0078】
なお、図10及び図11の例では、先に第1線L1を決定している。この場合、第1線L1上の押圧点B1,B2,B3,B4を、第1の押圧点B1から第1の押込み方向G1が向かう順である押圧点B1,B2,B3,B4の順に第2の押込み方向G2に押圧していき、測定された反力が最大となった点を交点として得てもよい。この例の場合、押圧点B1,B2,B3の押圧の時点で押圧点B3が交点として得られ、特異部301の表面300A上での位置と推定することができる。このようにリアルタイムで押圧しながら特異部301を検出する場合、図10及び図11の例に示された手順を採用することによって、押圧点B4の押圧を不要とでき、検出の簡略化、迅速化が図られる。
【0079】
なお、他の例として、第2線は、図11に示されたような第1の押圧点B1を通る線でなくてもよい。この場合、第1線及び第2線は、どの順で決定されてもよい。例えば、複数の押圧点それぞれについて、1以上の押込み方向と反力の測定結果とが予め記憶されていてもよい。その場合であっても、本実施の形態に係る検出方法を用いることで第1線及び第2線が決定され、その交点に当たる位置を特異部の表面上での位置として検出することができる。
【0080】
支援システム100は演算装置3を備える。演算装置3は、上の検出方法によって特異部の検出のための演算処理を行う。演算装置3は、第1センサ24からのセンサ信号を取得する。演算装置3は、図1に示されたように第1センサ24に有線又は無線で接続されてセンサ信号を受信してもよいし、センサ信号に示されるデータを記憶媒体から読み出すことで取得してもよい。これにより、演算装置3は、接触部22Aが受ける反力を得る。演算装置3は、第2センサ26からのセンサ信号も、同様に取得する。これにより、演算装置3は、屈曲角θを得る。
【0081】
なお、第2センサ26からのセンサ信号に替えて、演算装置3は、操作装置5からの操作信号や、アクチュエータ1の動作量を得ることで屈曲角θを得てもよい。これにより、第2センサ26を不要とすることができる。
【0082】
図12は、演算装置3の概略構成図である。演算装置3は、一例として、プロセッサ31とメモリ32とを有するコンピュータで構成されている。演算装置3は、複数のコンピュータが協働して実現されるものであってもよい。
【0083】
プロセッサ31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。メモリ32は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含む。または、メモリ32は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。
【0084】
メモリ32は、プロセッサ31に情報処理を実行させるコンピュータプログラム(以下、プログラム)321を記憶している。プロセッサ31は、プログラム321を実行することによって、生体200の内部の弾性率の特異部201を検出する検出処理311を含む演算処理を実行する。
【0085】
プロセッサ31がプログラム321を実行することで実現される演算処理は、好ましくは、後述する、特異部201の表面200Aからの距離を算出する算出処理312を含む。また、図1に示されるように、支援システム100が出力装置4を含む場合、プロセッサ31がプログラム321を実行することで実現される演算処理は、好ましくは、出力処理313を含む。出力処理313は、反力の測定結果や特異部の位置などを出力装置4に出力するための処理を含む。
【0086】
出力装置4は、一例としてディスプレイである。この場合、出力処理313は、表示用データを生成し、出力装置4に表示を指示する処理を含む。出力装置4としてのディスプレイは、例えば、演算装置3と一体で形成されているものであってもよい。また例えば、ディスプレイは、演算装置3とは別体の、大型ディスプレイなどであってもよい。また例えば、ディスプレイは、透過ディスプレイであってもよい。また例えば、ディスプレイは、メガネ型ディスプレイであってもよい。また例えば、ディスプレイはこれらの組み合わせであってもよい。
【0087】
図13及び図14は、プロセッサ31での処理の流れの一例を表したフローチャートである。プロセッサ31は、検出器具2の第1センサ24からのセンサ信号の入力を受け付け(ステップS101でYES)、センサ信号から得られる抵抗値を用いて反力を算出するとともに、押込み方向、及び、接触部22Aの位置を算出する(ステップS103)。図10の例では、ユーザが操作装置5で検出器具2を操作し、押圧点A1から順に第1の押込み方向G1で押圧を行っていくことが想定される。
【0088】
一例として、プロセッサ31は、操作装置5からの操作信号を取得して検出器具2の移動量を算出する。プロセッサ31は、記憶している初期位置に対して順に移動量を加えることで、移動先の位置を算出する。
【0089】
また、プロセッサ31は、第2センサ26からのセンサ信号を取得して屈曲角θを算出する。プロセッサ31は、第2センサ26からセンサ信号を取得するたびに屈曲角θを更新し、検出器具2の屈曲角θをリアルタイムに得る。
【0090】
プロセッサ31は、ステップS101で第1センサ24からセンサ信号を得ると、記憶されている検出器具2の位置と屈曲角θとを用いて接触部22Aの位置を算出するとともに、屈曲角θを押込み方向として得る。
【0091】
第1センサ24から得られたセンサ信号が第1の押込み方向G1での押圧を行っているものである場合(ステップS105でYES)、プロセッサ31は、算出した位置を押圧点の位置とし、反力とともに記憶する(ステップS107)。
【0092】
複数の押圧点に対する第1の押込み方向G1での押圧が行われている間、プロセッサ31は、ステップS101~S107を繰り返す(ステップS109でNO)。第1の押込み方向G1での押圧の終了は、一例として、所定時間、センサ信号が入力されないことや、終了の操作が行われたこと、などによって判断されてもよい。図10の例では、これにより、押圧点A1,B1,C1,D1それぞれの位置とそれぞれで受けた反力の測定結果とが得られる。
【0093】
プロセッサ31は、第1の押込み方向G1での押圧によって得られた反力のうちの最大であり、かつ、閾値以上である押圧点を(ステップS111でYES,かつ、ステップS113でYES)、第1の押圧点として決定する(ステップS115)。図10の例では、押圧点A1,B1,C1,D1のうちの押圧点B1を第1の押圧点として決定する。好ましくは、ステップS115で第1の押圧点が決定されると、プロセッサ31は、出力装置4に第1の押圧点の通知を出力させる。これにより、ユーザは、図11のように、第2の押込み方向G2で押圧する押圧点を決めやすくなる。
【0094】
なお、そうでない場合(ステップS111でNO、又は、ステップS113でNO)、プロセッサ31は第1の押圧点を決定せず、処理を終了する。この場合、第1の押込み方向G1の向かう方向に特異部がない、又は、特異部の影響を受け得る距離にないことが想定される。
【0095】
次に、プロセッサ31は、第1センサ24からのセンサ信号の入力を受け付け(ステップS121でYES)、センサ信号から得られる抵抗値を用いて反力を算出するとともに、押込み方向、及び、接触部22Aの位置を算出する(ステップS123)。図11の例では、ユーザが操作装置5で検出器具2を操作し、押圧点B1から順に第2の押込み方向G2で押圧を行っていくことが想定される。
【0096】
プロセッサ31は、ステップS121で第1センサ24からセンサ信号を得ると、記憶されている検出器具2の位置と屈曲角θとを用いて、接触部22Aの位置を算出するとともに、屈曲角θを押込み方向として得る。
【0097】
第1センサ24から得られたセンサ信号が第2の押込み方向G2での押圧を行っているものである場合(ステップS125でYES)、プロセッサ31は、算出した位置を押圧点の位置とし、反力とともに記憶する(ステップS127)。
【0098】
プロセッサ31は、ステップS127で記憶された、第2の押込み方向G2での押圧によって得られた反力のうちの最大であり、かつ、閾値以上である押圧点が検出されると(ステップS129でYES,かつ、ステップS131でYES)、第2の押圧点として決定するとともに、第2の押圧点を特異部の表面上での位置とする(ステップS133)。
【0099】
反力のうちの最大であり、かつ、閾値以上である押圧点が検出されなかった場合(ステップS111でNO、又は、ステップS113でNO)、プロセッサ31は第2の押圧点を決定せず、処理を終了する。この場合、第2の押込み方向G2の向かう方向に特異部がない、又は、特異部の影響を受け得る距離にないことが想定される。他の例として、プロセッサ31は、再度、ステップS121~S131を繰り返してもよい。この場合、ユーザが第2の押込み方向G2を変更して、再度操作をやり直すことが想定される。
【0100】
好ましくは、プロセッサ31は、ステップS133で決定した特異部の表面上での位置を出力装置4に出力させる(ステップS135)。これにより、ユーザは、第2の押圧点が決定された時点で押圧の操作を終了することができるとともに、すべての点を押圧するより早く特異部の位置を知ることができる。
【0101】
ステップS135の出力は、出力装置4の一例であるディスプレイに表示させることであってよい。ステップS135での表示は、一例として、生体200の検出エリアの撮影画像に重ねて行われる。例えば、撮影画像に、押圧点ごとの反力の測定結果を表示させてもよい。押圧点ごとの反力の測定結果は、例えば、図8に表されたような色分けやハッチングによって区別されてもよく、そのような画像を撮影画像に重畳して表示させるものであってもよい。これにより、生体200の検出エリアの反力が視認しやすくなるとともに、特異部の位置も視覚的に把握することができる。
【0102】
なお、撮影画像に重ねて表示する場合、ステップS135でプロセッサ31は、撮影画像に対して検出器具2の座標系を設定する。撮影画像は、予め撮影したものを用いてよい。一例として、撮影の際にマーキングを行って、撮影画像中の基準位置を設ける。マーキングは、フックワイヤー法や色素を注入する方法など、従来の方法であってよい。好ましくは、画像解析で基準位置が判別されるマーキング方法が採用される。
【0103】
また、この場合、プロセッサ31は、検出器具2の初期位置と基準位置との位置関係を予め記憶しておく。初期位置は、操作装置5がユーザ操作によって移動の指示を受け付ける前に設置される位置であって、一例として、基準位置とすることができる。これにより、プロセッサ31は、各押圧点の位置を基準位置との相対位置として算出することができる。その結果、プロセッサ31は、撮影画像において各押圧点に対応した位置を決定し、その位置に応じた反力に基づく表示を行うことができる。
【0104】
好ましくは、プロセッサ31は、得られた測定結果を用いて、特異部201の、表面200Aからの距離、すなわち、特異部201の深度を算出する(ステップS137)。図15は、特異部201の深度dの算出方法を説明するための図である。
【0105】
特異部201の深度dは、初期状態での押圧点Pにおける表面200Aの接平面Sから特異部201までの、押圧点Pにおける接平面Sの法線方向の距離を指す。図15に示された位置関係より、深度dは、押圧点Pの特異部201の表面200Aにおける位置からの距離l(エル)、屈曲角θ、及び押込み量tを用いて、下の式(1)で表される。
tan(90°-θ)=(d-t)/l …(1)
【0106】
式(1)より、深度dは下の式(2)で表される。
d=l×tan(90°-θ)+t=l/tanθ+t …(2)
【0107】
ここで、押込み量tは、屈曲角θで押圧したときの押圧点Pにおける押込み量であって、押圧点Pの接平面Sの法線方向の移動距離である。上記のように初期状態の押込み量t0は概ね0であるため、押込み量tは、初期屈曲角θ0、及び、曲げ部22Bの長さrを用いて、下の式(3)で表される。
t=r(sinθ-sinθ0) …(3)
【0108】
式(3)を式(1)に代入することで、深度dは下の式(4)で表される。
d=l/tanθ+r(sinθ-sinθ0)
【0109】
以上より、ステップS137においてプロセッサ31は、押圧点Pの特異部201の表面200Aにおける位置からの距離l(エル)、屈曲角θ、及び押込み量tを式(3)に代入することによって特異部201の深度dを算出してもよい。
【0110】
また、他の例として、プロセッサ31は、押圧点Pの特異部201の表面200Aにおける位置からの距離l(エル)、屈曲角θ、及び初期屈曲角θ0を式(4)に代入することによって特異部201の深度dを算出してもよい。
【0111】
支援システム100では、例えば人の手が入らない狭所箇所や、視認し難い生体内部であっても、ユーザの手に替わって小型器具である検出器具2を用いて押圧し、反力の測定結果や特異部の位置を検出することができる。従って、ユーザによって生体200の検出エリアへの触診が行われているように、触診を支援することができる。さらに、ディスプレイである出力装置4に上記のように表示されることによって、生体200の検出エリアを実際に見るように視認できる。
【0112】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 :アクチュエータ
1A :曲げ駆動装置
2 :検出器具
3 :演算装置
4 :出力装置
5 :操作装置
10 :膜体
11 :第1膜体
11A :第1の面
11B :第2の面
12 :第2膜体
13 :内部空間
14 :シート
14A :第1接合位置
14B :第2接合位置
21 :アーム
21A :基端
21B :流路
22 :押圧部材
22A :接触部
22B :曲げ部
23 :折れ部
23A :溝
24 :第1センサ
25 :可動部
26 :第2センサ
27 :突起
31 :プロセッサ
32 :メモリ
100 :支援システム
200 :生体
200A :表面
201 :特異部
300 :弾性体
300A :表面
301 :特異部
311 :検出処理
312 :算出処理
313 :出力処理
321 :プログラム
401 :初期状態
402 :押圧状態
A1 :押圧点
A2 :押圧点
A3 :押圧点
A4 :押圧点
B1 :押圧点
B2 :押圧点
B3 :押圧点
B4 :押圧点
ED1 :端部
ED2 :端部
F :押圧力
F0 :初期押圧力
F1 :力
G :押込み方向
G1 :第1の押込み方向
G2 :第2の押込み方向
H :厚み
H1 :厚み
H2 :厚み
H3 :厚み
I :断面二次モーメント
L1 :第1線
L2 :第2線
N :法線方向
O :原点
P :押圧点
R :反力
R0 :初期反力
S :接平面
TF1 :引っ張り力
TF2 :引っ張り力
W1 :領域
W2 :領域
d :深度
e :距離
l :距離
t :押込み量
t0 :押込み量
θ :屈曲角
θ0 :初期屈曲角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15