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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075323
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/245 20060101AFI20240527BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G01B11/245 H
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186697
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 正行
(72)【発明者】
【氏名】大西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 昂宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎也
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD04
2F065FF01
2F065FF02
2F065FF05
2F065FF07
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH04
2F065HH05
2F065HH06
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065LL13
2F065MM06
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ31
2F065QQ38
(57)【要約】
【課題】間接光を減らして、測定対象物の表面からの光を取り込んだ画像から3次元データを取得可能な計測装置を提供する。
【解決手段】測定対象物の部分へ光を照射する照射部と、前記測定対象物のうち、前記照射部からの光が照射された前記測定対象物の部分を予め定められたタイミングで撮像する複数の撮像部と、前記照射部及び前記撮像部を制御する制御部と、前記撮像部で撮像された画像を元に前記測定対象物の3次元形状を計測する計測部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の部分へ光を照射する照射部と、
前記測定対象物のうち、前記照射部からの光が照射された前記測定対象物の部分を予め定められたタイミングで撮像する複数の撮像部と、
前記照射部及び前記撮像部を制御する制御部と、
前記撮像部で撮像された画像を元に前記測定対象物の3次元形状を計測する計測部とを備える計測装置。
【請求項2】
前記照射部は、前記測定対象物に向けてライン状の光を走査可能に照射する請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記撮像部は、互いに異なる角度から、共通の前記測定対象物を撮像する請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記撮像部は、前記測定対象物における前記照射部のライン状の光の走査方向に並ぶ共通の複数の視野列を有し、
各前記視野列は前記照射部から走査されるライン状の前記光と交差するよう配置される請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記照射部を用いて前記測定対象物に向けてライン状の光を照射させ、
前記撮像部を用いてライン状の前記光の走査に応じて当該光と露光が交差する領域についてそれぞれ撮像すると共に、当該領域を走査の並び順に並べて画像を生成し、
前記計測部は、
複数の前記撮像部によって取得された画像により3次元計測を行う請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記照射部は、レーザー走査式プロジェクタであり、
前記撮像部は、ローリングシャッターカメラである請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記レーザー走査式プロジェクタのレーザー光の前記測定対象物への照射タイミングと、前記ローリングシャッターカメラの前記測定対象物の撮像タイミングとを合わせて撮像させる請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記ローリングシャッターカメラの前記測定対象物の撮像タイミングを変更することで、前記測定対象物の前記ローリングシャッターカメラからの撮像される距離を変更して、当該測定対象物のカメラからの奥行き方向の複数の位置の当該測定対象物を撮像する請求項7に記載の計測装置。
【請求項9】
前記計測部は、
変更された撮像タイミングで複数の前記撮像部により撮像された画像を元に、ステレオマッチングにより前記測定対象物の3次元形状を計測する請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記測定対象物は、透明な素材で形成された透明物体又は光沢面を備える光沢面物体である請求項1に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光を照射して測定対象物の3次元データを取得する装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-1832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、測定対象物が、表面で光を乱反射しやすい場合は、3次元データの取得が困難であるという問題がある。特に、測定対象物が、透明体や光沢面物体である場合には、照射した光のうち測定対象物の表面から返ってくる光が弱く、又、ノイズとなる間接光(マルチパス光)を測定してしまう。
【0005】
本開示は、間接光を減らして、測定対象物の表面からの光を取り込んだ画像から3次元データを取得可能な計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る計測装置は、測定対象物の部分へ光を照射する照射部と、前記測定対象物のうち、前記照射部からの光が照射された前記測定対象物の部分を予め定められたタイミングで撮像する複数の撮像部と、前記照射部及び前記撮像部を制御する制御部と、前記撮像部で撮像された画像を元に前記測定対象物の3次元形状を計測する計測部とを備える。
【0007】
第2態様に係る計測装置は、前記照射部は、前記測定対象物に向けてライン状の光を走査可能に照射する。
【0008】
第3態様に係る計測装置は、前記撮像部は、互いに異なる角度から、共通の前記測定対象物を撮像する。
【0009】
第4態様に係る計測装置は、前記撮像部は、前記測定対象物における前記照射部のライン状の光の走査方向に並ぶ共通の複数の視野列を有し、各前記視野列は前記照射部から走査されるライン状の前記光と交差するよう配置される。
【0010】
第5態様に係る計測装置は、前記制御部は、前記照射部を用いて前記測定対象物に向けてライン状の光を照射させ、前記撮像部を用いてライン状の前記光の走査に応じて当該光と露光が交差する領域についてそれぞれ撮像すると共に、当該領域を走査の並び順に並べて画像を生成し、前記計測部は、複数の前記撮像部によって取得された画像により3次元計測を行う。
【0011】
第6態様に係る計測装置は、前記照射部は、レーザー走査式プロジェクタであり、前記撮像部は、ローリングシャッターカメラである。
【0012】
第7態様に係る計測装置は、前記制御部は、前記レーザー走査式プロジェクタのレーザー光の前記測定対象物への照射タイミングと、前記ローリングシャッターカメラの前記測定対象物の撮像タイミングとを合わせて撮像させる。
【0013】
第8態様に係る計測装置は、前記制御部は、前記ローリングシャッターカメラの前記測定対象物の撮像タイミングを変更することで、前記測定対象物の前記ローリングシャッターカメラからの撮像される距離を変更して、当該測定対象物のカメラからの奥行き方向の複数の位置の当該測定対象物を撮像する。
【0014】
第9態様に係る計測装置は、前記計測部は、変更された撮像タイミングで複数の前記撮像部により撮像された画像を元に、ステレオマッチングにより前記測定対象物の3次元形状を計測する。
【0015】
第10態様に係る計測装置は、前記測定対象物は、透明な素材で形成された透明物体又は光沢面を備える光沢面物体である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、間接光を減らして、測定対象物の表面からの光を取り込んだ画像から3次元データを取得可能な計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る計測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るプロジェクタとカメラの配置を説明するための説明図である。
図3】実施形態に係る計測装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る計測装置の制御部の動作を説明するための説明図である。
図5】実施形態に係る制御部の動作の一例を説明するための説明図である。
図6】実施形態に係る制御部の奥行き制御を説明するための説明図である。
図7】実施形態に係る制御部の傾き制御を説明するための説明図である。
図8】実施形態に係る制御部の厚み制御を説明するための説明図である。
図9】実施形態に係る計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】実施形態に係る測定対象物の撮像位置と撮像厚みの一例を説明するための説明図である。
図11】実施形態に係るセンサユニットと測定対象物との位置関係を説明するための説明図である。
図12】実施形態に係る測定対象物の撮像位置と撮像厚みの他の一例を説明するための説明図である。
図13】実施形態に係るプロジェクタとカメラの配置の他の例を説明するための説明図である。
図14】実施形態に係るプロジェクタを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
計測装置10のハードウェア構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る計測装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、計測装置10は、測定対象物Fに対向して配置されるセンサユニット100、及びセンサユニット100に接続されたコンピュータ200を備える。
【0021】
センサユニット100は、図1に示すように、プロジェクタ101と、カメラ102(第1カメラ103及び第2カメラ104)とが、一体に構成されたものである。ここで、プロジェクタ101は、照射部の一例であり、カメラ102は撮像部の一例である。また、カメラ102は、第1カメラ103及び第2カメラ104から構成される。なお、プロジェクタ101及びカメラ102は、センサユニット100として全部が一体化されておらず、それぞれ別体に設けられてもよく、一部が一体化されていてもよい。また、センサユニット100は、コンピュータ200と一体化されていてもよい。
【0022】
プロジェクタ101は、測定対象物Fの3次元計測を行うための計測光(例えばパターン光)を含む照明を、測定対象物Fへ照射する。より詳しくは、プロジェクタ101は、測定対象物Fに向けてライン状(線状)の光を走査可能に照射する。また、プロジェクタ101は、本実施形態では、レーザー光を走査方向に沿って走査させるレーザー走査式プロジェクタを用いている。なお、プロジェクタ101は、レーザー走査式プロジェクタに限定されず、他の方式のプロジェクタであってもよい。また、プロジェクタ101からの光(レーザー)は、常時連続点灯でも、カメラ102の露光時間に同期したパルス点灯でもよい。
【0023】
第1カメラ103及び第2カメラ104は、それぞれ例えば一般的な光学センサが搭載されたカメラ装置を含んで構成されており、照明が投射された測定対象物Fをそれぞれ撮像する。また、第1カメラ103及び第2カメラ104は、互いに異なる角度から、共通の測定対象物Fを撮像する。また、第1カメラ103及び第2カメラ104は、本実施形態では、ローリングシャッターカメラを用いている。なお、カメラ102は、ローリングシャッターカメラに限定されず、グローバルシャッターカメラであってもよい。
【0024】
また、プロジェクタ101と、第1カメラ103及び第2カメラ104の配置は、図2に示すように、測定対象物Fに対向して配置されている。また、プロジェクタ101及び第1カメラ103、第2カメラ104は、プロジェクタ101の走査方向Lに、第1カメラ103及び第2カメラ104の撮影する視野列を揃えて配置され、走査方向Lと交差する垂直方向に走査及び撮影の走査の向きを揃えて配置されている。そして、第1カメラ103及び第2カメラ104は、プロジェクタ101の垂直方向に並べて配置されている。なお、カメラ102は、プロジェクタ101の投影位置に、撮像する位置を寄せるように傾けて配置されてもよい。プロジェクタ101は、カメラ103及びカメラ104の撮像する位置に、投影位置を寄せるように傾けて配置されてもよい。すなわち、プロジェクタ101及びカメラ102は、輻輳角を設けて配置されてもよい。
【0025】
コンピュータ200は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)201、メモリ202、記憶装置203、入力装置204、出力装置205、記憶媒体読取装置206、及び通信I/F(Interface)207を有する。各構成は、バス208を介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
記憶装置203には、後述する計測処理を実行するための計測プログラムが格納されている。CPU201は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各構成を制御したりする。すなわち、CPU201は、記憶装置203からプログラムを読み出し、メモリ202を作業領域としてプログラムを実行する。CPU201は、記憶装置203に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0027】
メモリ202は、RAM(Random Access Memory)により構成され、作業領域として一時的にプログラム及びデータを記憶する。記憶装置203は、ROM(Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0028】
入力装置204は、例えば、キーボードやマウス等の、各種の入力を行うための装置である。出力装置205は、例えば、ディスプレイやプリンタ等の、各種の情報を出力するための装置である。出力装置205として、タッチパネルディスプレイを採用することにより、入力装置204として機能させてもよい。記憶媒体読取装置206は、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の各種記憶媒体に記憶されたデータの読み込みや、記憶媒体に対するデータの書き込み等を行う。通信I/F207は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、本実施形態では、センサユニット100(プロジェクタ101、第1カメラ103及び第2カメラ104)が接続されている。
【0029】
つぎに、本実施形態における計測装置10の機能構成について説明する。
図3は、計測装置10の機能構成の例を示すブロック図である。図3に示すように、計測装置は、機能構成として、制御部210と、計測部211とを含む。各機能構成は、CPU201が記憶装置203に記憶された計測プログラムを読み出し、メモリ202に展開して実行することにより実現される。
【0030】
制御部210は、プロジェクタ101及びカメラ102(第1カメラ103及び第2カメラ104)を制御する。
【0031】
制御部210の動作について、図4を用いて説明する。図4は、プロジェクタ101とカメラ102とを側面から見た図である。
【0032】
図4に示すように、制御部210は、レーザー走査式のプロジェクタ101が測定対象物Fに光Eを照射する。また、制御部210は、プロジェクタ101の光Eとカメラ102の露光が交差する領域のみを撮像するようにカメラ102のローリングシャッターのタイミングを同期させる。すなわち、プロジェクタ101が光Eを照射した測定対象物Fの部分のみを撮像するようにカメラ102のローリングシャッターのタイミングを合わせる。P1は、プロジェクタ101が光Eを照射した測定対象物Fの部分のみを撮像するようにカメラ102のローリングシャッターのタイミングを合わせた測定対象物Fの位置である。そして、プロジェクタ101が光Eを照射した測定対象物Fの部分のみを撮像するようにカメラ102のローリングシャッターのタイミングが合っていない、P2,P3,P4の位置の測定対象物Fはカメラ102に撮像されない。そして、プロジェクタ101の光Eとカメラ102の露光が交差する領域をプロジェクタ101の走査の並び順に並べて測定対象物Fを撮像した画像を生成する。
【0033】
また、制御部210は、図5に示すように、プロジェクタ101の光Eの照射に対しカメラ102のローリングシャッターのタイミングを調整することで測定対象物Fの奥行き方向のどの部分を撮像するかの奥行き制御と、プロジェクタ101の走査速度の差が生じるようにカメラ102の走査速度を変更することで測定対象物Fをどの傾きで撮像するかの傾き制御と、カメラ102の露光時間を変えることで測定対象物Fをどの厚さで撮像(撮像厚み)するかの厚み制御とが可能となる。
【0034】
奥行き制御について、図6を用いて説明する。
制御部210は、カメラ102の露光開始を遅くすると、遅くする時間(以下、「遅延時間」ともいう。)によって撮像面Nまでの距離を変えることができ、測定対象物Fの奥行き方向のどの部分を撮像するかを制御することができる。例えば、図6(A)に示すように、プロジェクタ101の光Eの照射開始からの遅延時間がt1の光E2で照射している場合は、距離K1の撮像面N1の撮像が可能となる。そして、図6(B)に示すように、遅延時間がt1よりも長いt2の光E3で照射している場合は、撮像面N1よりもカメラ102からの距離K1よりも近い距離K2の撮像面N2の撮像が可能となる。すなわち、カメラ102の露光開始のタイミングによって、測定対象物Fの奥行き方向のどの部分を撮像するかを制御することができ、測定対象物Fのカメラからの距離方向の複数の位置、例えば、測定対象物Fの表面部分や裏面部分、測定対象物Fの奥行き方向の様々な部分を撮像することが可能となる。
【0035】
傾き制御について、図7を用いて説明する。
プロジェクタ101の走査速度とカメラ102の走査速度とが一致する場合は、図7(A)に示すように、傾いていない撮像面N3の撮像が可能となる。また、カメラ102の走査速度をプロジェクタ101の走査速度よりも早くすると、図7(B)に示すように、先に撮像される側(図7中右側)が傾いていない撮像面N3よりもカメラ102と反対方向に傾いた撮像面N4の撮像が可能となる。また、カメラ102の走査速度をプロジェクタ101の走査速度よりも遅くすると、図7(C)に示すように、後に撮像される側(図7中右側)が傾いていない撮像面N3よりもカメラ102の方向に傾いた撮像面N5の撮像が可能となる。すなわち、プロジェクタ101の走査速度とカメラ102の走査速度とに差を設けることで、測定対象物Fの傾いた面を撮像することが可能となる。
【0036】
厚み制御について、図8を用いて説明する。
カメラ102の露光時間を変更すると、撮像するプロジェクタ101の光Eの走査線の数が変更され、複数の走査線が撮像可能になることから、図8に示すように、撮像面Nの厚みである撮像厚みΔPを制御することができる。具体的には、図8に示すように、カメラ102の露光時間が長くなるように変更すると、プロジェクタ101の光Eの複数の走査線、すなわち、光E4から光E5を撮像することになり、撮像厚みΔPを厚くすることが可能となる。図8に示すように、カメラの視野幅とプロジェクタ101の光Eのビーム幅が重なる部分が撮像されることになる。
【0037】
また、測定対象物Fを撮像する撮像厚み最小値ΔPについては、以下の関係式により算出される。
【数1】

【数2】

【数3】

ここで、zωsは露光開始(start)時刻の奥行方向の位置、zωeは露光終了(end)時刻の奥行方向の位置を示す。また、tは任意の撮影時刻、tは露光時間を示す。すなわち、時刻tでのzωsが露光開始時の奥行方向の距離、zωeが露光終了時の奥行き方向の距離を示しており、その差分が時刻tの位置での撮像の厚みになる。また、bはカメラとプロジェクタの間の基線長(ベース長さ)を示し、カメラの座標(0,-b/2,0)及びプロジェクタの座標(0,b/2,0)を元にし、vtはプロジェクタの照明投影器列を示し、v(t-t-t/2)とv(t-t+t/2)は、ローリングシャッターでキャプチャされたカメラ列を示す。また、vは行毎のプロジェクタのスキャン速度を示し、vは行毎のローリングシャッターの速度を示す。また、f及びcは、カメラ行列Kについての以下の関係式を元にする。
【数4】
【0038】
制御部210は、上述した奥行き制御、傾き制御及び厚み制御で測定対象物Fを撮像した画像を取得する。また、制御部210は、同じ奥行き制御、傾き制御及び厚み制御で測定対象物Fを複数枚撮像し、計測部211で合成することを可能にしている。
【0039】
計測部211は、カメラ102で撮像された画像を元に測定対象物Fの3次元形状を計測する。すなわち、計測部211は、カメラ102により撮像された画像を元に、ステレオマッチングにより測定対象物Fの3次元データを算出する。具体的には、計測部211は、第1カメラ103による測定対象物Fのカメラ側となる表面側を撮像した第1表面画像と、第2カメラ104による測定対象物Fのカメラ側となる表面側を撮像した第2表面画像とを元に、ステレオマッチングにより表面画像の3次元データを算出する。また、計測部211は、第1カメラ103によるローリングシャッターのタイミングを調整して、測定対象物Fの奥行き方向の一部を撮像した第1調整画像と、第2カメラ103によるローリングシャッターのタイミングを調整して、測定対象物Fの奥行き方向の一部を撮像した第2調整画像とを元に、ステレオマッチングにより調整画像の3次元データを算出する。そして、表面画像の3次元データと調整画像の3次元データとを統合し、測定対象物Fの3次元データを作成する。なお、表面画像の3次元データと調整画像の3次元データとを統合して、測定対象物Fの3次元データを取得する場合に限定されず、表面画像の3次元データ又は調整画像の3次元データのいずれか一方のみを使用して、測定対象物Fの3次元データを取得してもよい。
【0040】
また、計測部211は、ステレオマッチングの前に、表面画像と調整画像とのうち、測定対象物Fの奥行き方向で複数枚撮像した画像の各画素の輝度データ値を取得し、最大輝度値となる各画素を集めて画像を生成し、生成した画像をステレオマッチングしてもよい。また、計測部211は、ステレオマッチングにおいて、表面画像の輝度パターンを画素表面上でズラしながら輝度パターンの合致するズラシ量を探索することで、第1カメラ103の画像と第2カメラ104の画像との間で視差を決定する処理を行う。そして、計測部211は、この視差を決定する処理の輝度パターンを探索する範囲を、調整画像から計算される距離の範囲に狭めることで、探索する範囲を削減し、ステレオマッチングの処理を軽減することで、高速化をはかってもよい。すなわち、調整画像は、上述した数1により、撮像厚みΔPの範囲に測定対象物Fの表面があることが分かり、ΔPの範囲に探索する範囲を決定するようにしてもよい。また、計測部211は、統合された表面画像と調整画像との3次元データを予め定められた係数を用いた歪み補正を行って3次元データを調整することが望ましい。また、第1カメラ103及び第2カメラ104により撮像された画像を予め定められた係数を用いた歪み補正を行い、歪み補正後の画像を元に、ステレオマッチングにより測定対象物Fの3次元データを算出してもよい。ここで、予め定められた係数は、キャリブレーションの際に取得した画像を元に決定しておくものである。また、計測部211は、カメラ102により撮像された画像を、2Dメジアンフィルタやしきい値処理などによりノイズを除去することが望ましい。
【0041】
上述のステレオマッチングは、既知の手法を用いて行うため、説明を省略する。なお、ステレオマッチングの手法は限定されず、例えば、特開2018-63220号公報、特開2019-138817号公報、特開2019-138822号公報などに記載の方法であってもよい。
【0042】
また、計測部211は、測定対象物FのCADモデルとのマッチングをして、3次元形状の計測を補助してもよい。すなわち、予め測定対象物Fの3次元CADモデル記憶しておき、取得した3次元データと3次元CADモデルとのマッチングを行い、3次元データを修正したり、補完したりしてもよい。
【0043】
次に、本実施形態に係る計測装置10の作用について説明する。図9は、計測装置10のコンピュータ200のCPU201により実行される計測処理のフローチャートである。CPU201が記憶装置203からプログラムを読み出して、メモリ202に展開して実行することにより、CPU201が計測装置10の各機能構成として機能し、図9に示す処理が実行される。
【0044】
また、かかる処理の前提として、ユーザは、プロジェクタ101の光Eの照射と、カメラ102のローリングシャッターのタイミングとを同期させておく。例えば、撮像距離範囲内で、距離3条件以上(例えば、最短、中間、最遠の距離)で白いキャリブレーション用のサンプルを撮像した遅延時間データから各画素の遅延時間と撮像距離の相関関係を予め取得しておく。また、カメラ102から測定対象物Fまでの距離を、カメラなどを用いた既知の手法で取得しておく。なお、カメラ102から測定対象物Fまでの距離は、ユーザが手動で入力しても良い。
【0045】
また、ユーザは、撮像パラメータとして、奥行き制御に関する遅延時間、傾き制御に関するカメラ102の走査速度、厚み制御に関するカメラ102の露光時間などを、入力装置204を用いて入力しておく。具体的には、測定対象物Fの大きさを参考に撮像する深さや厚みを決定して入力しておく。奥行き方向の撮像枚数は、「撮像枚数≧測定対象物Fの厚さ÷2÷最小撮像厚み」などとなるように決定する。また、例えば、測定対象物Fの厚み(カメラ102からの奥行き方向の厚さ)が5mmの場合は、測定対象物Fの厚み方向で複数の画像を撮像するため、1mmずつの撮像厚みで奥行き方向に6枚の撮像となるように調整する。具体的には、図10に示すように、測定対象物Fの奥行き方向に、M1~M6の位置の画像を撮像するように設定する。ここで、測定対象物Fの撮像は、図10に示すように、予め定められた撮像厚みで測定対象物F全体を全て撮像することが望ましい。すなわち、測定対象物Fを予め定められた撮像厚みで複数枚、本例では6枚撮像することで、測定対象物Fの全体を撮像する。ここで、予め定められた撮像厚みは、撮像厚みが最も小さくなる最小撮像厚みであってもよい。
【0046】
また、プロジェクタ101から測定対象物Fへ照射する光の投影パターンを設定しておく。投影パターンは、例えば、黒パターン(投影なし)と白パターン、ランダムドットパターンの3つの投影パターンである。なお、白パターンで照射した場合に、光源の映り込みなどによって距離違いで白トビする場合は、白トビする箇所の白パターンの明るさを下げるなどの調整をしてもよい。また、撮像パラメータとして、撮像枚数や、表面反射光として検出する画素輝度値を設定しておく。
【0047】
ステップS10において、CPU201が、事前にユーザにより入力されていた撮像の設定を取得する。ここで、撮像の設定は、奥行き制御に関する遅延時間、傾き制御に関するカメラ102の走査速度、厚み制御に関するカメラ102の露光時間などの撮像パラメータや、投影パターンなどである。ここで、奥行き制御の範囲は、奥行き制御に関する遅延時間をスイープして測定対象物Fまでの奥行きを探索して取得してもよい。そして、次のステップS12に進む。
【0048】
ステップS12において、CPU201が、プロジェクタ101を用いて、ステップS10で取得した投影パターンで測定対象物Fに光を照射する。そして、次のステップS14に進む。
【0049】
ステップS14において、CPU201が、カメラ102を用いて、ステップS10で取得した撮像パラメータで測定対象物Fを撮像する。そして、次のステップS16に進む。
【0050】
ステップS16において、CPU201が、ステップS14で撮像した画像から、表面画像と、調整画像とを作成する。かかる表面画像と調整画像の作成では、全ての撮像した画像から作成する場合の他、各画像の画素の最大輝度値となる各画素を集めて画像を生成し、生成した画像をステレオマッチングする。また、ステップS14で撮像した画像は、予め定められた係数を用いて歪み補正とノイズ除去が行われる。そして、次のステップS18に進む。
【0051】
ステップS18において、CPU201が、ステップS16で作成した表面画像と調整画像とを用いてステレオマッチング処理を行い、測定対象物Fの3次元データを算出する。そして、次のステップS20に進む。
【0052】
ステップS20において、CPU201が、ステップS18で算出した表面画像の3次元データと調整画像の3次元データとを統合して、測定対象物Fの3次元データを作成する。そして、処理を終了する。
【0053】
このように作成した3次元データを元に、測定対象物Fを特定し、ピッキングなどを可能にする。このように構成することで、測定対象物Fを奥行き方向にスライス撮像し、測定対象物Fで乱反射する間接光ではなく、測定対象物Fの表面の反射光だけを取り込んだ画像を取得することが可能となる。そして、取得した画像を元に3次元データを算出することが可能となる。
【0054】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0055】
上述した実施形態では、カメラ102のシャッターのタイミングを制御することで、図10に示すように、測定対象物Fの厚み方向に複数枚の撮像を行っているが、これに限定されず、図11(A)に示すように、センサユニット100を矢印方向に動かしてセンサユニット100から同じ距離の測定対象物Fを撮像することで、測定対象物Fの奥行き方向を全て撮像しても良いし、又、図11(B)に示すように、測定対象物Fを矢印方向に動かしてセンサユニット100から同じ距離の測定対象物Fを撮像することで、測定対象物Fの奥行き方向を全て撮像しても良い。また、図11(C)に示すように、センサユニット100を矢印方向に動かしてセンサユニット100から同じ距離の測定対象物Fを撮像することと、測定対象物Fを矢印方向に動かしてセンサユニット100から同じ距離の測定対象物Fを撮像することとを組み合わせて測定対象物Fを撮像してもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、図10に示すように、測定対象物Fの全体を予め定められた撮像厚みで撮像しているが、これに限定されず、図12に示すように、間引いて撮像しても良い。例えば、上述した実施形態では、図10に示すように、測定対象物Fの奥行き方向に6枚で撮像しているが、図12(A)に示すように、カメラ側の表面と中間とカメラ反対側の裏面との3枚(M1~M3の位置の画像)に間引いて撮像してもよい。また、図12(B)に示すように、測定対象物Fの全体を撮像可能な撮像厚みで撮像しつつ(M1の位置の画像)、カメラ側の表面(M2の位置の画像)と、カメラ反対側の裏面(M3の位置の画像)とを撮像するようにしてもよい。これにより、撮像枚数を少なくすることで、処理の高速化を図ることができる。
【0057】
また、プロジェクタ101と第1カメラ103及び第2カメラ104の配置は、上述した、図2に示すものに限定されず、他の配置であってもよい。例えば、図13(A)に示すように、プロジェクタ101の走査方向Lに並行にプロジェクタ101を挟むように第1カメラ103及び第2カメラ104を配置してもよい。また、図13(B)に示すように、プロジェクタ101の走査方向Lに垂直にプロジェクタ101を挟むように第1カメラ103及び第2カメラ104を配置してもよい。また、カメラ102の数は2個に限定されず、3個以上であってもよいし、図13(C)に示すように、カメラ102をプロジェクタ101の走査速度Lに並行に2個、垂直方向に2個配置してもよい。また、図13(D)に示すように、プロジェクタ101の走査速度Lに並行に2個のずつカメラ102を配置してもよい。
【0058】
また、プロジェクタ101は、図14(A)に示すような、2軸のMEMSミラーなどの点レーザースキャン方式や、図14(B)に示すような、ポリゴンミラーレーザースキャナなどのラインレーザースキャン方式であってもよい。ここで、点レーザースキャン方式の場合は、水平方向には高速に走査していくことで、垂直方向にもスキャンを行っていく。また、ラインレーザースキャン方式の場合は、垂直方向(図中の矢印方向)への走査のみになる。本開示で、点レーザースキャン方式のプロジェクタを使う場合、水平方向の高速な走査は、カメラ露光時間内に水平1ライン分以上の時間の間に行われる。そして、カメラ102のローリングシャッターの露光は、水平画素ライン毎に管理される。同じ水平ラインの画素は露光開始終了が同じになる。そのため、1ライン分の点レーザースキャンがカメラ102の露光時間内で行われるため、カメラ102の画像上では水平ライン上に投影された光が撮像されることになる。そして、今回の開示では、その水平ライン上の光がカメラ102の画像上で上から下に向かって走査されて観測されるようにプロジェクタ101やカメラ102の設定を調整して動作をさせる。
【0059】
本実施形態における計測装置10は、透明な部品の成形後、ばら積みになっている部品をピッキングする際のロボットアームの先端側や、部品がばら積みになっている上方側にプロジェクタ101とカメラ102を備え、計測された部品をピッキングすることに好適である。
【0060】
また、本実施形態は、測定対象物Fが透明な素材で形成された透明物体や、光沢面を備える光沢面物体に対して好適であるが、測定対象物Fは、透明物体や光沢面物体に限定されない。
【0061】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した計測処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、TPU(Tensor processing unit)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、計測処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0062】
また、上記実施形態では、計測プログラムが記憶装置に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 計測装置
100 センサユニット
101 プロジェクタ
102 カメラ
200 コンピュータ
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