(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075326
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 25/24 20060101AFI20240527BHJP
F01K 25/10 20060101ALI20240527BHJP
F01D 11/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F01D25/24 P
F01K25/10 F
F01K25/10
F01D11/00
F01D25/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186703
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000191216
【氏名又は名称】新日本造機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岩本 和也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 圭一
【テーマコード(参考)】
3G081
3G202
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G202KK11
3G202KK29
3G202KK31
(57)【要約】
【課題】複数の分割車室の継手フランジ間からの蒸気の漏れを確実に防止すること。
【解決手段】タービン車室(12)が分割された複数の分割車室(14,16)により構成され、少なくもいずれかの分割車室(16)の継手フランジ(14f,16f)の突合せ面に、蒸気導入口(20)から導入される蒸気よりも高圧のシール液を流通させるためのシール溝(56)が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割された複数の分割車室により構成され、前記複数の分割車室の継手フランジ同士が締結され、蒸気を導入するための蒸気導入口が形成され、蒸気を排出するための蒸気排出口が形成されたタービン車室と、
前記タービン車室内に回転可能に設けられたタービンロータと、を備え、
前記複数の分割車室のうち少なくもいずれかの分割車室の前記継手フランジの突合せ面に、前記蒸気導入口から導入される蒸気よりも高圧のシール液を流通させるためのシール溝が形成されていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
前記シール溝は、前記いずれかの分割車室の前記継手フランジの一端部側から他端部側にかけて連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記タービン車室内における前記タービンロータの軸方向の両端部側にそれぞれ設けられ、前記タービンロータのタービン軸を挿通させるための挿通孔が形成され、前記タービン車室からの蒸気の漏れを防止するメカニカルシールを更に備え、
前記シール溝に供給されるシール液と、前記メカニカルシールに供給されるシール液とは、同じシール液であることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項4】
蒸気は、水よりも沸点の低い低沸点流体であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の蒸気タービン。
【請求項5】
シール液は、水又は水よりも沸点の高い高沸点液であることを特徴とする請求項4に記載の蒸気タービン。
【請求項6】
蒸気は、アンモニア蒸気であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の蒸気タービン。
【請求項7】
シール液は、水であることを特徴とする請求項6に記載の蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換する蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンに用いられるタービン車室は、製造性及びメンテナンス性を考慮して、半割状に分割された2つの分割車室により構成されることが多い。2つの分割車室の継手フランジ同士は、複数のボルトによって締結されている(特許文献1等参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の蒸気タービンにおいては、2つの分割車室の継手フランジ間のシール性を高める目的で、各分割車室の継手フランジの突合せ面に、高圧の空気又は蒸気を導入可能な加圧室が形成されている。各加圧室は、各分割車室の継手フランジの突合せ面に形成された溝と、溝の開口側に溶接された可撓性のある蓋とを備える。各蓋は、各分割車室の継手フランジの突合せ面の一部を構成する。
【0004】
特許文献1に記載の蒸気タービンにおいては、前記の構成により、蒸気タービンの運転中、各加圧室に高圧の空気又は蒸気を供給して内圧をかける。すると、各蓋が膨らむ方向に弾性変形して、2つの分割車室の継手フランジ間の面圧を高めることができる。これにより、2つの分割車室の継手フランジ間からの蒸気の漏れを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の蒸気タービンにおいては、蓋の弾性変形にバラツキが生じ易く、2つの分割車室の継手フランジ間の面圧を安定的に高めることが難しい。そのため、2つの分割車室の継手フランジ間のシール性が低下して、2つの分割車室の継手フランジ間からの蒸気の漏れが懸念される。
【0007】
特に、タービン車室に導入する蒸気として低沸点流体であるアンモニア蒸気を用いる場合に、アンモニア蒸気が2つの分割車室の継手フランジ間から漏れると、蒸気タービンの周辺において異臭が発生して、蒸気タービンの周辺の環境を害することになる。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、複数の分割車室の継手フランジ間のシール性を高めて、複数の分割車室の継手フランジ間からの蒸気の漏れを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る蒸気タービンは、分割された複数の分割車室により構成され、前記複数の分割車室の継手フランジ同士が締結され、蒸気を導入するための蒸気導入口が形成され、蒸気を排出するための蒸気排出口が形成されたタービン車室と、前記タービン車室内に回転可能に設けられたタービンロータと、を備える。前記複数の分割車室のうち少なくもいずれかの分割車室の前記継手フランジの突合せ面に、前記蒸気導入口から導入される蒸気よりも高圧のシール液を流通(循環)させるためのシール溝が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、複数の分割車室の継手フランジ間のシール性を高めて、複数の分割車室の継手フランジ間からの蒸気の漏れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る単段型蒸気タービンの模式的な正断面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った模式的な断面図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線に沿った模式的な断面図である。
【
図4】本実施形態に係る蒸気タービンの循環ユニットを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
蒸気タービンには出力の大きい多段型蒸気タービンや小出力となる単段型蒸気タービンなど、様々な種類があるが、本件では一例として、単段型蒸気タービンの構造に基づいて説明する。但し、本件は単段型蒸気タービンに適用を限定するものではなく、多段型蒸気タービンへの適用も可能となる。以下、単段型蒸気タービンの構造に基づいた
図1から
図4を参照して説明する。
【0013】
なお、明細書及び特許請求の範囲において、軸方向とは、蒸気タービンの軸方向、換言すれば、タービンロータ(タービンロータのタービン軸)の軸方向のことをいう。本実施形態においては、軸方向は、左右方向と同義であり、軸方向の一方側は、左方向又は左側、軸方向の他方側は、右方向又は右側である。図面中、「SD」は軸方向、「SDa」は軸方方向の一方側(高圧側)、「SDb」は軸方向の他方側(低圧側)、「FD」は高圧側から低圧側を見て左方向、「BD」は高圧側から低圧側を見て右方向、「UD」は上方向、「DD」は下方向をそれぞれ指している。
【0014】
図1は、本実施形態に係る単段型蒸気タービンの模式的な正断面図である。
図2は、
図1におけるII-II線に沿った模式的な断面図である。
図3は、
図1におけるIII-III線に沿った模式的な断面図である。
図4は、本実施形態に係る蒸気タービンの循環ユニットを説明する模式図である。
図3及び
図4においては、タービンロータ、静翼支持部材、及びタービン静翼を省略している。
【0015】
(蒸気タービン10の概要)
図1に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン10は、蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換する装置であり、発電機又は機械駆動用等に用いられる。また、
図1は単段型蒸気タービンのものであるが、多段型蒸気タービンに適用しても良い。特に、蒸気タービン10は、水よりも沸点の低い低沸点流体の1つであるアンモニア蒸気の熱エネルギを、回転エネルギに変換する。なお、蒸気タービン10は、アンモニア蒸気に代わる低沸点流体として、フロン蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換してもよい。
【0016】
(タービン車室12、第1分割車室14、第2分割車室16)
図1から
図3に示すように、蒸気タービン10は、タービン車室12を備えている。
図3に示すように、タービン車室12は、半割状に上下に分割された第1分割車室14と第2分割車室16とにより構成されている。第1分割車室14は、その下側に、2つの第1継手フランジとしての上側水平フランジ14fを有しており、2つの上側水平フランジ14fは、軸直角方向に離隔している。第2分割車室16は、その上側に、2つの第2継手フランジとしての下側水平フランジ16fを有しており、2つの下側水平フランジ16fも、軸直角方向に離隔している。第1分割車室14の各上側水平フランジ14fと第2分割車室16の各下側水平フランジ16fとは、複数のボルト18によって締結されている。
【0017】
なお、タービン車室12は、第1分割車室14及び第2分割車室16の代わりに、半割状に前後に分割された2つの分割車室により構成されてもよい。換言すれば、タービン車室12の分割方向は、上下方向に限るものでなく、軸方向であってもよい。又、2つの分割に限らず、タービンの仕様によっては、3つまたは4つの分割車室により構成されても良い。
【0018】
(蒸気導入口20、蒸気排出口22)
図1に示すように、第2分割車室16の前側の下部には、アンモニア蒸気をタービン車室12内に導入するための蒸気導入口20が形成されている。
図1及び
図3に示すように、第2分割車室16における蒸気導入口20から離隔した位置には、回転エネルギの変換に寄与したアンモニア蒸気をタービン車室12から排出するための蒸気排出口22が形成されている。
【0019】
(第1軸受ハウジング26、第2軸受ハウジング28)
図1に示すように、タービン車室12の軸方向の一方側(左側)には、第1軸受ハウジング26が配設されている。第1軸受ハウジング26は、タービン車室12に一体的に連結されている。また、タービン車室12の軸方向の他方側(右側)には、第2軸受ハウジング28が配設されている。第2軸受ハウジング28は、タービン車室12に一体的に連結されている。
【0020】
(タービンロータ30、タービン軸32)
図1及び
図2に示すように、タービン車室12内には、タービンロータ30が回転可能に設けられており、タービンロータ30は、アンモニア蒸気の熱エネルギが低圧側に流れる速度エネルギによって回転する。タービンロータ30は、タービン軸32を有している。
図1に示すように、タービン軸32の一端部は、タービン車室12から軸方向の一方側に突出し、かつ第1軸受ハウジング26内に位置する。タービン軸32の他端部側は、タービン車室12から軸方向の他方側に突出し、かつ第2軸受ハウジング28を貫通している。タービン軸32の他端部側は、発電機など被駆動機の回転軸(不図示)に接続されている。
【0021】
(第1ラジアル軸受34、スラスト軸受36、第2ラジアル軸受38)
図1に示すように、第1軸受ハウジング26内には、タービン軸32の一端部側を回転自在に支持する第1ラジアル軸受34が設けられている。換言すれば、タービン軸32の一端部側は、第1ラジアル軸受34によって回転自在に支持されている。第1軸受ハウジング26内における第1ラジアル軸受34の近傍には、タービン軸32のスラスト荷重を支持するスラスト軸受36が設けられている。また、第2軸受ハウジング28内には、タービン軸32の他端部側を回転自在に支持する第2ラジアル軸受38が設けられている。換言すれば、タービン軸32の他端部側は、第2ラジアル軸受38によって回転自在に支持されている。
【0022】
(タービンディスク40、タービン動翼42)
図1及び
図2に示すように、タービンロータ30は、タービン軸32にはめ込む構造またはタービン軸32との一体成形(鋳鍛造若しくは削り出し)として、タービン軸32と一体的に設けられた円板状のタービンディスク40と、タービンディスク40の外周部に円周方向に沿って間隔を置いて設けられた複数のタービン動翼42とを有している。本実施形態においては、タービン動翼42の配置状態は、軸方向に2列になっており、軸方向の一方側に位置する複数のタービン動翼42は、1列目のタービン動翼42である。軸方向の他方側に位置する複数のタービン動翼42は、2列目のタービン動翼42である。また、タービンロータ30は、各列の複数のタービン動翼42の先端部を連結する環状のシュラウド(不図示)を有してもよい。
【0023】
(静翼支持部材46、タービン静翼48)
図1及び
図2に示すように、第2分割車室16内には、半リング状の静翼支持部材46が設けられている。静翼支持部材46には、複数のタービン静翼48が間隔を置いて設けられている。本図のタービンは、単段(1段)に2列のタービン動翼42を有するカーチス段を採用したタービンであるため、複数のタービン静翼48は、1列目のタービン動翼42と2列目のタービン動翼42との間に配置されており、タービン静翼48は1列目のタービン動翼42から排出された蒸気を2列目のタービン動翼42へ導く役目を負うが、蒸気条件によっては、単段(1段)に1列のタービン動翼42のみを搭載するラトー段を採用しても良い。
【0024】
(ノズル50)
図1に示すように、第2分割車室16内には、1列目のタービン動翼42に向かってアンモニア蒸気を噴射するノズル50が設けられている。ノズル50の内部は、蒸気導入口20に連通している。
【0025】
(第1メカニカルシール52、第2メカニカルシール54)
図1及び
図2に示すように、タービン車室12内における軸方向の一端部側には、タービン車室12からのアンモニア蒸気の漏れを防止する第1メカニカルシール52が設けられている。第1メカニカルシール52には、タービン軸32を挿通させるための第1挿通孔52hが形成されている。また、タービン車室12内における軸方向の他端部側には、タービン車室12からのアンモニア蒸気の漏れを防止する第2メカニカルシール54が設けられている。第2メカニカルシール54には、タービン軸32を挿通させるための第2挿通孔54hが形成されている。
【0026】
(シール溝56)
図2及び
図3に示すように、第2分割車室16の各下側水平フランジ16fの突合せ面には、シール溝56が形成されている。シール溝56は、蒸気導入口20から導入されるアンモニア蒸気よりも高圧のシール液(不図示)を流通(本実施形態では循環)させるための溝である。各シール溝56は、第2分割車室16の各下側水平フランジ16fの一端部側から他端部側にかけて連続して形成されている。シール溝56の断面形状は、例えば、矩形状であるが、半円形状等に変更してもよい。各シール溝56に供給されるシール液と、第1メカニカルシール52及び第2メカニカルシール54に供給されるシール液とは、同じシール液である。シール溝56に供給されるシール液は、本実施形態では水であるが、水よりも沸点の高い高沸点液であってもよい。
【0027】
なお、第2分割車室16の各下側水平フランジ16fの突合せ面にシール溝56を形成する代わりに、第1分割車室14の各上側水平フランジ14fの突合せ面にシール溝56を形成してもよい。或いは、第2分割車室16の各下側水平フランジ16fの突合せ面及び第1分割車室14の各上側水平フランジ14fの突合せ面に、シール溝56をそれぞれ形成してもよい。
【0028】
(循環ユニット58)
図4に示すように、蒸気タービン10は、第1メカニカルシール52及び第2メカニカルシール54にシール液を循環させるため、外部に設置された循環ユニット58からの接続口を有している。循環ユニット58は、第1メカニカルシール52及び第2メカニカルシール54にシール液を循環させるだけでなく、2つのシール溝56にシール液を供給して2つのシール溝56内の圧力を保持する。一般的な循環ユニットの構成は、次の通りである。なお、
図4において、シール液の流れ方向を矢印で示している。
【0029】
タービン車室12から離隔した位置には、シール液を供給するシール液供給源60が配設されている。シール液供給源60は、シール液を収容するタンク62と、シール液を圧送するポンプ64とを有している。ポンプ64には、シール液を第1メカニカルシール52に供給するための第1供給回路66の一端部が接続されている。第1供給回路66の先端部は、第1メカニカルシール52の供給ポートに接続されている。また、第1メカニカルシール52の供給ポートは、2つのシール溝56に連通している。
【0030】
第1供給回路66の途中には、シール液を第2メカニカルシール54に供給するための第2供給回路68の一端部が接続されている。第2供給回路68の他端部は、第2メカニカルシール54の供給ポートに接続されている。また、第2メカニカルシール54の供給ポートは、2つのシール溝56に連通している。
【0031】
第1メカニカルシール52の排出ポートには、シール液を第1メカニカルシール52から排出するための第1排出回路70の一端部が接続されており、第1排出回路70の他端部は、タンク62に接続されている。第2メカニカルシール54の排出ポートには、シール液を第2メカニカルシール54から排出するための第2排出回路72の一端部が接続されており、第2排出回路72の他端部は、第1排出回路70の途中に接続されている。
【0032】
なお、循環ユニット58は、図示は省略するが、圧力制御弁、方向制御弁等の種々の制御弁、及び圧力センサ等の種々のセンサ等を備えている。循環ユニット58は、前述の構成に限るものでなく、供給回路の構成、排出回路の構成等を適宜に変更してもよい。
【0033】
(作用効果)
続いて、蒸気タービン10の動作を含めて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0034】
圧力を持ったアンモニア蒸気が蒸気導入口20からタービン車室12内に導入されると、ノズル50が1列目のタービン動翼42に向かってアンモニア蒸気を噴射する。すると、複数のタービン静翼48がアンモニア蒸気を整流しながら、タービンロータ30がアンモニア蒸気の熱エネルギによって回転する。これにより、発電機等の被駆動機の回転軸を伝達することができる。
【0035】
蒸気タービン10においては、前述のように、第2分割車室16の各下側水平フランジ16fの突合せ面に、蒸気導入口20から導入されるアンモニア蒸気よりも高圧のシール液を流通させるためのシール溝56が形成されている。そのため、蒸気タービン10の運転中に、循環ユニット58を適宜に作動させることにより、蒸気導入口20から導入されるアンモニア蒸気よりも高圧のシール液が各シール溝56に供給される。これにより、第1分割車室14の上側水平フランジ14fと第2分割車室16の下側水平フランジ16fとの間のシール性を高めるこができる。
【0036】
特に、各シール溝56が第2分割車室16の各下側水平フランジ16fの一端部側から他端部側にかけて形成されているため、第1分割車室14の上側水平フランジ14fと第2分割車室16の下側水平フランジ16fとの間のシール性を高めるこができる。
【0037】
よって、本実施形態によれば、第1分割車室14の上側水平フランジ14fと第2分割車室16の下側水平フランジ16fとの間からのアンモニア蒸気の漏れを確実に防止することができ、蒸気タービン10のタービン効率を高めることができると共に、蒸気タービン10の周辺の環境がアンモニア蒸気によって害されることを回避できる。
【0038】
蒸気タービン10においては、前述のように、2つのシール溝56に供給されるシール液と、第1メカニカルシール52及び第2メカニカルシール54に供給されるシール液とは、同じシール液である。そのため、共通のシール液供給源60から第1メカニカルシール52、第2メカニカルシール54、及び2つのシール溝56にシール液を供給することができる。これにより、本実施形態によれば、第1メカニカルシール52、第2メカニカルシール54、及び2つのシール溝56にシール液を循環させる循環ユニット58の構成の簡略化を図ることができる。
【0039】
蒸気タービン10においては、前述のように、2つのシール溝56に供給されるシール液は、水又は水よりも沸点の高い高沸点液である。そのため、蒸気タービン10の運転中に、シール液が気化することを抑えて、第1分割車室14の上側水平フランジ14fと第2分割車室16の下側水平フランジ16fとの間のシール性を安定的に高めることができる。これにより、本実施形態によれば、第1分割車室14の上側水平フランジ14fと第2分割車室16の下側水平フランジ16fとの間からのアンモニア蒸気の漏れを確実に防止することができる。
【0040】
蒸気タービン10において、前述のように、蒸気導入口20からタービン車室12内に導入される蒸気は、水よりも沸点の低い低沸点流体の1つであるアンモニア蒸気である。そのため、本実施形態によれば、蒸気タービン10の運転中におけるタービン車室12内の高温化を抑えて、蒸気タービン10の耐久性を高めることができる。
【0041】
蒸気タービン10において、前述のように、2つのシール溝56に供給されるシール液として水を用いた場合には、蒸気タービン10の運転中に、アンモニアがシール液である水に溶けて、シール液がアンモニア水になることがある。そのため、本実施形態によれば、仮に、シール液が第1分割車室14の上側水平フランジ14fと第2分割車室16の下側水平フランジ16fとの間から漏れても、水又はアンモニア水がタービン車室12の外側に流出するだけで、蒸気タービン10の周辺の環境がアンモニアによって害されることを確実に回避できる。
【0042】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る蒸気タービンは、分割された複数の分割車室を有し、前記複数の分割車室の継手フランジ同士が締結され、蒸気を導入するための蒸気導入口が形成され、蒸気を排出するための蒸気排出口が形成されたタービン車室と、前記タービン車室内に回転可能に設けられたタービンロータと、を備える。前記複数の分割車室のうち少なくもいずれかの分割車室の前記継手フランジの突合せ面に、前記蒸気導入口から導入される蒸気よりも高圧のシール液を流通(循環)させるためのシール溝が前記継手フランジの縁部に沿って形成されている。
【0043】
前記の構成により、前記蒸気タービンの運転中に、前記蒸気導入口から導入される蒸気よりも高圧のシール液が前記シール溝に供給される。これにより、前記複数の分割車室の前記継手フランジ間のシール性を高めて、前記複数の分割車室の前記継手フランジ間からの蒸気の漏れを確実に防止することができる。
【0044】
タービン車室に導入する蒸気としてアンモニア蒸気を用いる場合においても、前記複数の分割車室の前記継手フランジ間からのアンモニア蒸気の漏れを確実に防止することができ、前記蒸気タービンの周辺の環境がアンモニア蒸気によって害されることを回避できる。
【0045】
本発明の態様2に係る蒸気タービンは、前記態様1において、前記シール溝は、前記いずれかの分割車室の前記継手フランジの一端部側から他端部側にかけて連続して形成されてよい。
【0046】
前記の構成により、前記複数の分割車室の前記継手フランジ間のシール性をより高めることができる。
【0047】
本発明の態様3に係る蒸気タービンは、前記態様1又は2において、前記タービン車室内における前記タービンロータの軸方向の両端部側にそれぞれ設けられ、前記タービンロータのタービン軸を挿通させるための挿通孔が形成され、前記タービン車室からの蒸気の漏れを防止するメカニカルシールを更に備えてもよい。前記シール溝に供給されるシール液と、前記メカニカルシールに供給されるシール液とは、同じシール液であってもよい。
【0048】
前記の構成により、共通のシール液供給源から2つの前記メカニカルシール及び前記シール溝にシール液を供給することができる。これにより、2つの前記メカニカルシール及び前記シール溝にシール液を循環させる循環ユニットの構成の簡略化を図ることができる。
【0049】
本発明の態様4に係る蒸気タービンは、前記態様1から3のいずれかにおいて、蒸気は、水よりも沸点の低い低沸点流体であってもよい。
【0050】
前記の構成により、前記蒸気タービンの運転中における前記タービン車室内の高温化を抑えて、前記蒸気タービンの耐久性を高めることができる。
【0051】
本発明の態様5に係る蒸気タービンは、前記態様4において、シール液は、水又は水よりも沸点の高い高沸点液であってもよい。
【0052】
前記の構成により、前記蒸気タービンの運転中に、シール液が気化することを抑えて、前記複数の分割車室の前記継手フランジ間のシール性を安定的に高めることができる。これにより、前記複数の分割車室の前記継手フランジ間からの蒸気の漏れをより確実に防止することができる。
【0053】
本発明の態様6に係る蒸気タービンは、前記態様1から3のいずれかにおいて、蒸気は、アンモニア蒸気であってもよい。
【0054】
前記の構成により、アンモニア蒸気が水よりも沸点の低い低沸点流体であるため、前記蒸気タービンの運転中における前記タービン車室内の高温化を抑えて、前記蒸気タービンの耐久性を高めることができる。
【0055】
本発明の態様7に係る蒸気タービンは、前記態様6において、シール液は、水であってもよい。
【0056】
前記の構成により、前記蒸気タービンの運転中に、アンモニアがシール液である水に溶けて、シール液がアンモニア水になることがある。そのため、仮に、シール液が前記2つの分割車室の前記継手フランジ間から漏れても、水又はアンモニア水が前記タービン車室の外側に流出するだけで、前記蒸気タービンの周辺の環境がアンモニアによって害されることを確実に回避できる。
【0057】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 蒸気タービン
12 タービン車室
14 第1分割車室
14f 上側水平フランジ(第1継手フランジ)
16 第2分割車室
16f 下側水平フランジ(第2継手フランジ)
18 ボルト
20 蒸気導入口
22 蒸気排出口
26 第1軸受ハウジング
28 第2軸受ハウジング
30 タービンロータ
32 タービン軸
34 第1ラジアル軸受
36 スラスト軸受
38 第2ラジアル軸受
40 タービンディスク
42 タービン動翼
46 静翼支持部材
48 タービン静翼
50 ノズル
52 第1メカニカルシール
52h 第1挿通孔
54 第2メカニカルシール
54h 第2挿通孔
56 シール溝
58 循環ユニット
60 シール液供給源
62 タンク
64 ポンプ
66 第1供給回路
68 第2供給回路
70 第1排出回路
72 第2排出回路