(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007533
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ガラス粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 12/00 20060101AFI20240110BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20240110BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C03C12/00
C03C3/087
C03C21/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109557
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022107632
(32)【優先日】2022-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598140412
【氏名又は名称】ユニチカガラスビーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森田 好輝
(72)【発明者】
【氏名】下口 大地
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 那津子
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA20
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB14
4G059HB23
4G062AA10
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4G062DB02
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4G062KK10
4G062MM13
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、優れた機械的強度を有するガラス粒子、及び当該ガラス粒子を使用したブラスト材を提供することである。
【解決手段】本発明のガラス粒子は、K2O、Na2O、SiO2、及びAl2O3を含むガラス組成を有するものであり、特定の測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)(質量%)に対する、特定の測定方法Bにより測定されるK2Oの含有量CS(K2O)(質量%)の質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.8以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
K2O、Na2O、SiO2、及びAl2O3を含むガラス組成を有するガラス粒子であって、
下記測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)(質量%)に対する、下記測定方法Bにより測定されるK2Oの含有量CS(K2O)(質量%)の質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.8以上である、ガラス粒子。
測定方法A:JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置を用い、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)にて成分含有量を測定する。
測定方法B:粘着性透明二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粘着面に、当該粘着面におけるガラス粒子の占有面積率が50%以上になるように、かつガラス粒子同士が重ならないようにガラス粒子を付着させて作製した定量分析用試料を用いる以外は、JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置を用い、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)にて成分含有量を測定する。
【請求項2】
前記測定方法Aにより測定されるNa2Oの含有量CW(Na2O)(質量%)に対する、前記測定方法Bにより測定されるNa2Oの含有量CS(Na2O)(質量%)の質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)が0.7以下である、請求項1に記載のガラス粒子。
【請求項3】
前記測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)が、0.5~10質量%である、請求項1に記載のガラス粒子。
【請求項4】
前記ガラス組成は、さらに抗菌性及び/又は殺菌性金属を含む、請求項1に記載のガラス粒子。
【請求項5】
前記抗菌性及び/又は殺菌性金属は、Agである、請求項4に記載のガラス粒子。
【請求項6】
圧縮強度が50kgf/mm2以上である、請求項1に記載のガラス粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のガラス粒子を含む、ブラスト材。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載のガラス粒子の製造方法であって、
Na2O、SiO2、及びAl2O3を含むガラス組成を有する原料ガラス粒子を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)を1.8以上にする溶融塩接触工程を含む、ガラス粒子の製造方法。
【請求項9】
前記溶融塩は、さらに硝酸銀を含む、請求項8に記載のガラス粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた圧縮強度を有するガラス粒子、及び当該ガラス粒子を使用したブラスト材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス粒子を用いたブラスト材が使用されている。例えば、特許文献1には、サンドブラストによるフラットパネルディスプレイの隔壁形成及び電極形成に使用する研磨材であって、平均粒子径が5μm以上50μm以下のジルコニアを60%以上含有するセラミック粉末及び/又はセラミックビーズ及び/又はガラスビーズであるサンドブラスト用研磨材が開示されている。当該研磨剤によれば、フラットパネルディスプレイの隔壁形成や電極形成を行う場合に、従来使用されている研磨材と比較し、同じ条件でサンドブラスト加工を行ったところ加工スピードを上げることができ、研磨材の消耗も少なく安定した加工が行えたとされている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のサンドブラスト用研磨材は、ジルコニアを多量に含有するものであり、高価であるという問題がある。
【0004】
一方、市場に出ているガラス材料を用いたブラスト材は、商業的に多く生産されているソーダライム系組成のガラスである。ソーダライム系組成のガラスを使用してガラス粒子を製造することにより、大量且つ安価にブラスト材を提供することが可能になる。しかしながら、ソーダライム系組成のガラス粒子は、圧縮強度に劣り、ブラスト材として使用すると消耗し易いという欠点がある。また、ホウケイ酸ガラス粒子は、圧縮強度が比較的高く、ブラスト材の要求特性を満たし得るが、コストが高いという欠点がある。
【0005】
また、従来、抗菌性を付与するために銀を含有させたガラス粒子が、繊維、建材、プラスチック、塗料等の用途に使用されている。例えば、特許文献2には、ガラス組成に抗菌性金属を含むガラス微小球であって、その平均粒子径が0.05~5.0μmの特定値を有し、粒子径の標準偏差がその特定値に対して±0.08μm以内である抗菌性ガラス微小球が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2の抗菌性ガラス微小球は、ゾル-ゲル法により得られるものであり、圧縮強度に劣るという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-50327号公報
【特許文献2】特開2003-206139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた圧縮強度を有するガラス粒子、及び当該ガラス粒子を使用したブラスト材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、K2O、Na2O、SiO2、及びAl2O3を含むガラス組成を有するガラス粒子であって、ガラス粒子の表面にK2Oが顕著に偏在しているガラス粒子は、K2Oが顕著に偏在していない従来のガラス粒子に比べて優れた圧縮強度を有することを見出した。また、前記ガラス粒子は、K2Oが顕著に偏在していない又はK2Oを含まない原料ガラス粒子を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. K2O、Na2O、SiO2、及びAl2O3を含むガラス組成を有するガラス粒子であって、
下記測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)(質量%)に対する、下記測定方法Bにより測定されるK2Oの含有量CS(K2O)(質量%)の質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.8以上である、ガラス粒子。
測定方法A:JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置を用い、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)にて成分含有量を測定する。
測定方法B:粘着性透明二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粘着面に、当該粘着面におけるガラス粒子の占有面積率が50%以上になるように、かつガラス粒子同士が重ならないようにガラス粒子を付着させて作製した定量分析用試料を用いる以外は、JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置を用い、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)にて成分含有量を測定する。
項2. 前記測定方法Aにより測定されるNa2Oの含有量CW(Na2O)(質量%)に対する、前記測定方法Bにより測定されるNa2Oの含有量CS(Na2O)(質量%)の質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)が0.7以下である、項1に記載のガラス粒子。
項3. 前記測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)が、0.5~10質量%である、項1又は2に記載のガラス粒子。
項4. 前記ガラス組成は、さらに抗菌性及び/又は殺菌性金属を含む、項1~3のいずれかに記載のガラス粒子。
項5. 前記抗菌性及び/又は殺菌性金属は、Agである、項4に記載のガラス粒子。
項6. 圧縮強度が50kgf/mm2以上である、項1~5のいずれかに記載のガラス粒子。
項7. 項1~6のいずれかに記載のガラス粒子を含む、ブラスト材。
項8. 項1~6のいずれかに記載のガラス粒子の製造方法であって、
Na2O、SiO2、及びAl2O3を含むガラス組成を有する原料ガラス粒子を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)を1.8以上にする溶融塩接触工程を含む、ガラス粒子の製造方法。
項9. 前記溶融塩は、さらに硝酸銀を含む、項8に記載のガラス粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガラス粒子は、ガラス粒子表面にK2Oが顕著に偏在しているため、優れた圧縮強度を有しており、ブラスト材として好適に使用できる。また、本発明のガラス粒子は、通常のソーダライム系組成のリサイクルガラスを原料に用いて簡便な方法で製造することができるので、安価且つ大量に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のガラス粒子は、K
2O、Na
2O、SiO
2、及びAl
2O
3を含むガラス組成を有しており、下記測定方法Aにより測定されるK
2Oの含有量CW(K
2O)(質量%)に対する、下記測定方法Bにより測定されるK
2Oの含有量CS(K
2O)(質量%)の質量%比CS(K
2O)/CW(K
2O)が1.8以上であることを特徴とする。
測定方法A:JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置を用い、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)にて成分含有量を測定する。
なお、測定方法Aにおいて、定量分析用試料としては、前記「蛍光X線分析通則」の「6.2 定量分析用試料の調製 a)粉体」に記載されている方法で調製した平板状試料を用いる。
測定方法B:粘着性透明二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粘着面に、当該粘着面におけるガラス粒子の占有面積率が50%以上になるように、かつガラス粒子同士が重ならないようにガラス粒子を付着させて作製した定量分析用試料を用いる以外は、JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置を用い、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)にて成分含有量を測定する。
なお、測定方法Bにおいて用いる前記定量分析用試料は、具体的には、まず、ペトリ皿にガラス粒子を適量投入し、ガラス粒子が入ったペトリ皿を振動させたり、傾けることでガラス粒子が重ならないように一層かつ最密に並べ、その後、一層かつ最密に並べたガラス粒子に粘着性透明二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粘着面を押し当てて、当該粘着面にガラス粒子を固定して作製する。ここで、粘着性透明二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粘着面におけるガラス粒子の占有面積率は、50%以上になるように調整する。なお、ガラス粒子の占有面積率は、下記式により算出する。下記式におけるガラス粒子の平均粒子径は、後述の方法により測定される値である。
【数1】
【0013】
ここで、前記測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)(質量%)は、ガラス粒子全体におけるK2Oの含有量(質量%)に相当し、前記測定方法Bにより測定されるK2Oの含有量CS(K2O)(質量%)は、ガラス粒子表面におけるK2Oの含有量(質量%)に相当すると推測される。前記含有量CW(K2O)(質量%)と前記含有量CS(K2O)(質量%)とを測定し、それらの質量%比であるCS(K2O)/CW(K2O)を算出することにより、ガラス粒子の表面にどの程度K2Oが偏在しているかがわかる。つまり、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)の値は、ガラス粒子の表面にどの程度K2Oが偏在しているかを示す指標となるものであり、その値が大きいほど、ガラス粒子の表面にK2Oがより多く偏在していることを示す。K2Oを含む従来のガラス粒子は、質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.2程度以下であるが、本発明のガラス粒子は、質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.8以上である。すなわち、本発明のガラス粒子は、K2Oを含む従来のガラス粒子に比べて、ガラス粒子の表面にK2Oが顕著に偏在しているものである。
【0014】
以下、本発明のガラス粒子について詳述する。
【0015】
[ガラス組成]
本発明のガラス粒子は、K2O、Na2O、SiO2、及びAl2O3を含むガラス組成を有する。
【0016】
通常、K2Oは、Na2Oと同様にガラスの溶融性を高める役割を担う成分として用いられるが、本発明のガラス粒子において、K2Oは、主として機械的強度、特に圧縮強度を向上させる役割を担う成分として用いられる。
【0017】
本発明のガラス粒子は、前記測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)(質量%)に対する、前記測定方法Bにより測定されるK2Oの含有量CS(K2O)(質量%)の質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.8以上であり、K2Oを含む従来のガラス粒子に比べてガラス粒子の表面にK2Oが顕著に偏在しているため、優れた圧縮強度を有する。前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)は、圧縮強度をより向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは2.4以上、さらに好ましくは2.5以上、さらに好ましくは2.6以上である。前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)の上限値は特に制限されないが、通常、15以下であり、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは7以下である。また、本発明のガラス粒子の一態様として、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)は、好ましくは1.8~10、より好ましくは2~9、さらに好ましくは2.4~9、さらに好ましくは2.5~9、さらに好ましくは2.6~9、さらに好ましくは2.6~7である。
【0018】
また、本発明のガラス粒子の一態様として、平均粒子径が800μm以下、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmのガラス粒子の場合、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)は、好ましくは2~5、より好ましくは2.2~4、さらに好ましくは2.4~3.5、さらに好ましくは2.5~3、さらに好ましくは2.6~2.8である。また、本発明のガラス粒子の他の一態様として、平均粒子径が800μm超、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmのガラス粒子の場合、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)は、好ましくは5~10、より好ましくは6~9、さらに好ましくは7~9である。なお、前記平均粒子径は、後述の方法により測定される値である。
【0019】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定されるK2Oの含有量CW(K2O)は特に制限されないが、機械的強度、特に圧縮強度をより向上させる観点から、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは0.8~8質量%、さらに好ましくは0.8~6質量%、特に好ましくは0.8~5質量%である。
【0020】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Bにより測定されるK2Oの含有量CS(K2O)は特に制限されないが、機械的強度、特に圧縮強度をより向上させる観点から、1~18質量%が挙げられ、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~14質量%、さらに好ましくは5~13質量%、特に好ましくは5~11質量%である。
【0021】
本発明のガラス粒子において、Na2Oは、溶融性を高める役割等を担う成分である。
【0022】
本発明のガラス粒子は、機械的強度、特に圧縮強度をより向上させる観点から、前記測定方法Aにより測定されるNa2Oの含有量CW(Na2O)(質量%)に対する、前記測定方法Bにより測定されるNa2Oの含有量CS(Na2O)(質量%)の質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)が0.7以下であることが好ましい。ここで、前記測定方法Aにより測定されるNa2Oの含有量CW(Na2O)(質量%)は、ガラス粒子全体におけるNa2Oの含有量(質量%)に相当し、前記測定方法Bにより測定されるNa2Oの含有量CS(Na2O)(質量%)は、ガラス粒子表面におけるNa2Oの含有量(質量%)に相当すると推測される。前記含有量CW(Na2O)(質量%)と前記含有量CS(Na2O)(質量%)とを測定し、それらの質量%比であるCS(Na2O)/CW(Na2O)を算出することにより、ガラス粒子表面におけるNa2Oの含有率が、ガラス粒子全体におけるNa2Oの含有率に比べてどの程度低いかがわかる。また、前記質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)の値が小さいほど、ガラス粒子全体におけるNa2Oの含有率に比べてガラス粒子表面におけるNa2Oの含有率がより低いことを示す。前記質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)は、より好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。前記質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)の下限値は特に制限されないが、通常、0.01以上であり、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.04以上である。また、本発明のガラス粒子の一態様として、前記質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)は、好ましくは0.01~0.7、より好ましくは0.02~0.6、さらに好ましくは0.03~0.6、さらに好ましくは0.04~0.6、さらに好ましくは0.04~0.5である。
【0023】
また、本発明のガラス粒子の一態様として、平均粒子径が800μm以下、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmのガラス粒子の場合、前記質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)は、好ましくは0.1~0.7、より好ましくは0.2~0.6、さらに好ましくは0.3~0.5、さらに好ましくは0.3~0.4である。また、本発明のガラス粒子の他の一態様として、平均粒子径が800μm超、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmのガラス粒子の場合、前記質量%比CS(Na2O)/CW(Na2O)は、好ましくは0.01~0.3、より好ましくは0.02~0.2、さらに好ましくは0.03~0.2、さらに好ましくは0.04~0.1である。なお、前記平均粒子径は、後述の方法により測定される値である。
【0024】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定されるNa2Oの含有量CW(Na2O)は特に制限されないが、通常3~15質量%程度であり、好ましくは5~15質量%、より好ましくは6~14質量%、さらに好ましくは7~14質量%、特に好ましくは8~14質量%、一層好ましくは9~14質量%である。前記測定方法Aにより測定されるNa2Oの含有量CW(Na2O)が前記範囲を満たすことによって、溶融性をより向上させるとともに、より優れた耐水性を具備させることができ、例えば、湿式ブラストでの連続使用可能なブラスト材として好適に使用することが可能になる。
【0025】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Bにより測定されるNa2Oの含有量CS(Na2O)は特に制限されないが、通常0.03~14質量%程度であり、好ましくは0.05~14質量%、より好ましくは0.1~12質量%、さらに好ましくは0.5~10質量%、特に好ましくは0.5~8質量%、一層好ましくは0.5~7質量%である。
【0026】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Bにより測定されるNa2Oの含有量CS(Na2O)(質量%)に対する、前記測定方法Bにより測定されるK2Oの含有量CS(K2O)(質量%)の質量%比CS(K2O)/CS(Na2O)は、機械的強度、特に圧縮強度をより向上させる観点から、好ましくは1~25、より好ましくは1.5~20、さらに好ましくは1.8~20、さらに好ましくは2~17、さらに好ましくは2.5~10、さらに好ましくは2.5~8である。
【0027】
本発明のガラス粒子において、SiO2は、ガラスの網目構造を形成する役割を担う成分である。
【0028】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定されるSiO2の含有量CW(SiO2)、及び前記測定方法Bにより測定されるSiO2の含有量CS(SiO2)は特に制限されないが、通常60~80質量%程度であり、好ましくは65~73質量%、より好ましくは66~72質量%、さらに好ましくは66~71質量%、特に好ましくは67~70質量%である。ここで、前記測定方法Aにより測定されるSiO2の含有量CW(SiO2)(質量%)は、ガラス粒子全体におけるSiO2の含有量(質量%)に相当し、前記測定方法Bにより測定されるSiO2の含有量CS(SiO2)(質量%)は、ガラス粒子表面におけるSiO2の含有量(質量%)に相当すると推測される。前記含有量CW(SiO2)及び前記含有量CS(SiO2)が前記範囲を満たすことによって、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にすることができる。また、前記含有量CW(SiO2)と前記含有量CS(SiO2)との差は特に制限されないが、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にする観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0029】
本発明のガラス粒子において、Al2O3は、ガラスの網目構造を形成及び修飾する役割を担う成分である。
【0030】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定されるAl2O3の含有量CW(Al2O3)、及び前記測定方法Bにより測定されるAl2O3の含有量CS(Al2O3)は特に制限されないが、通常0.1~10質量%程度であり、好ましくは0.1~7質量%、より好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%、特に好ましくは1~2質量%である。ここで、前記測定方法Aにより測定されるAl2O3の含有量CW(Al2O3)(質量%)は、ガラス粒子全体におけるAl2O3の含有量(質量%)に相当し、前記測定方法Bにより測定されるAl2O3の含有量CS(Al2O3)(質量%)は、ガラス粒子表面におけるAl2O3の含有量(質量%)に相当すると推測される。前記含有量CW(Al2O3)及び前記含有量CS(Al2O3)が前記範囲を満たすことによって、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にすることができる。また、前記含有量CW(Al2O3)と前記含有量CS(Al2O3)との差は特に制限されないが、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にする観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
【0031】
本発明のガラス粒子には、CaOが含まれていてもよい。CaOは、溶融性を高めたり、溶融時の粘性を低下させたりする役割を担う成分である。
【0032】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定されるCaOの含有量CW(CaO)、及び前記測定方法Bにより測定されるCaOの含有量CS(CaO)は特に制限されないが、通常0~15質量%程度であり、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは6~14質量%、さらに好ましくは7~13質量%、特に好ましくは8~13質量%である。ここで、前記測定方法Aにより測定されるCaOの含有量CW(CaO)(質量%)は、ガラス粒子全体におけるCaOの含有量(質量%)に相当し、前記測定方法Bにより測定されるCaOの含有量CS(CaO)(質量%)は、ガラス粒子表面におけるCaOの含有量(質量%)に相当すると推測される。前記含有量CW(CaO)及び前記含有量CS(CaO)が前記範囲を満たすことによって、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にすることができる。また、前記含有量CW(CaO)と前記含有量CS(CaO)との差は特に制限されないが、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にする観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0033】
本発明のガラス粒子には、MgOが含まれていてもよい。本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定されるMgOの含有量CW(MgO)、及び前記測定方法Bにより測定されるMgOの含有量CS(MgO)は特に制限されないが、通常0~10質量%程度であり、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは1~8質量%、さらに好ましくは2~6質量%、特に好ましくは3~5質量%である。ここで、前記測定方法Aにより測定されるMgOの含有量CW(MgO)(質量%)は、ガラス粒子全体におけるMgOの含有量(質量%)に相当し、前記測定方法Bにより測定されるMgOの含有量CS(MgO)(質量%)は、ガラス粒子表面におけるMgOの含有量(質量%)に相当すると推測される。前記含有量CW(MgO)及び前記含有量CS(MgO)が前記範囲を満たすことによって、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にすることができる。また、前記含有量CW(MgO)と前記含有量CS(MgO)との差は特に制限されないが、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にする観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0034】
本発明のガラス粒子には、Fe2O3が含まれていてもよい。本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定されるFe2O3の含有量CW(Fe2O3)、及び前記測定方法Bにより測定されるFe2O3の含有量CS(Fe2O3)は特に制限されないが、通常0~5質量%程度であり、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。なお、本発明において、Fe2O3の含有量(質量%)とは、Fe2O3に換算した全酸化鉄の含有量(質量%)を意味する。ガラス粒子中のFeは、Fe3+以外の形態(例えば、Fe2+)もとり得る。ここで、前記測定方法Aにより測定されるFe2O3の含有量CW(Fe2O3)(質量%)は、ガラス粒子全体におけるFe2O3の含有量(質量%)に相当し、前記測定方法Bにより測定されるFe2O3の含有量CS(Fe2O3)(質量%)は、ガラス粒子表面におけるFe2O3の含有量(質量%)に相当すると推測される。前記含有量CW(Fe2O3)及び前記含有量CS(Fe2O3)が前記範囲を満たすことによって、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にすることができる。また、前記含有量CW(Fe2O3)と前記含有量CS(Fe2O3)との差は特に制限されないが、ガラス粒子の成形性及びガラス組成の均一性をより良好にする観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0035】
本発明のガラス粒子には、抗菌性及び/又は殺菌性を付与するために、抗菌性及び/又は殺菌性金属が含まれていてもよい。抗菌性及び/又は殺菌性金属としては、例えば、Ag、Cu、及びZnなどが挙げられる。これら金属は、1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。また、本発明のガラス粒子は、抗菌性及び殺菌性により優れる観点から、Agを含むことが好ましい。
【0036】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Aにより測定される抗菌性及び/又は殺菌性金属(例えば、Ag、Cu、及びZnなど)の合計含有量CWは特に制限されないが、金属酸化物(例えば、Ag2O、Cu2O、及びZnOなど)換算にて、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.3~8質量%、さらに好ましくは0.5~6質量%、特に好ましくは0.7~5質量%である。ここで、前記測定方法Aにより測定される抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有量CW(質量%)は、ガラス粒子全体における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有量(質量%)に相当すると推測される。ガラス粒子表面から前記金属イオンが放出されて消費されても、ガラス粒子内部の前記金属がイオン状態で表面に向かって継続的に拡散するので、ガラス粒子全体における前記金属の合計含有量CWが前記範囲を満たすことによって、優れた抗菌性及び/又は殺菌性を継続的に長期間発揮することができ、また、ブラスト時に前記金属イオンの転写濃度を高めたり、水中への前記金属イオンの溶出量を高めることができる。
【0037】
本発明のガラス粒子において、前記測定方法Bにより測定される抗菌性及び/又は殺菌性金属(例えば、Ag、Cu、及びZnなど)の合計含有量CSは特に制限されないが、金属酸化物(例えば、Ag2O、Cu2O、及びZnOなど)換算にて、平均粒子径が800μm以下、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmのガラス粒子の場合、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.05~1質量%、さらに好ましくは0.1~0.8質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%であり、一方、平均粒子径が800μm超、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmのガラス粒子の場合、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1.5~12質量%、さらに好ましくは2~10質量%、特に好ましくは3~10質量%である。ここで、前記測定方法Bにより測定される抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有量CS(質量%)は、ガラス粒子表面における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有量(質量%)に相当すると推測される。また、本発明において、平均粒子径が800μm以下、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmのガラス粒子は、ガラス粒子表面における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有率が、ガラス粒子全体における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有率よりも低く、一方、平均粒子径が800μm超、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmのガラス粒子は、ガラス粒子表面における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有率が、ガラス粒子全体における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有率よりも高いという特徴がある。また、前述のとおり、ガラス粒子表面から前記金属イオンが放出されて消費されても、ガラス粒子内部の前記金属がイオン状態で表面に向かって継続的に拡散する。そのため、平均粒子径が800μm以下、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmのガラス粒子は、ガラス粒子表面における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有量CSが低いが、前記含有量CSが前記範囲を満たすことによって、適度な抗菌性及び/又は殺菌性を継続的に非常に長期間発揮することができる。一方、平均粒子径が800μm超、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmのガラス粒子は、ガラス粒子表面における抗菌性及び/又は殺菌性金属の合計含有量CSが高いため、前記含有量CSが前記範囲を満たすことによって、優れた抗菌性及び/又は殺菌性を継続的に長期間発揮することができる。なお、前記平均粒子径は、後述の方法により測定される値である。
【0038】
本発明のガラス粒子には、B2O3が含まれていてもよい。本発明のガラス粒子において、前記測定方法A又はBにより測定されるB2O3の含有量は、通常0~15質量%程度であり、0~13質量%、0~10質量%、0~5質量%、0~3質量%、又は0~1質量%であってもよい。また、本発明のガラス粒子には、前記成分の他に、SO3、F、Cl、Li2O、ZrO2、La2O3、WO3、Nb2O5、Y2O3、MoO3、TiO2、As2O3等の成分が含まれていてもよい。これらの成分は不可避的不純物として、例えば、ガラス原料、ガラス組成物の製造装置、及びガラス組成物の成形装置等に由来することがある。本発明のガラス粒子において、前記測定方法A又はBにより測定されるこれらの成分のそれぞれの含有量は、通常0~1質量%程度であり、0~0.5質量%であってもよい。
【0039】
[粒子径]
本発明のガラス粒子の平均粒子径は特に制限されないが、前述するガラス組成を好適に具備させやすくする観点から、通常、1~4000μm程度であり、好ましくは50~2000μm、より好ましくは80~1200μmである。また、本発明のガラス粒子の一態様として、平均粒子径は、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmである。また、本発明のガラス粒子の他の一態様として、平均粒子径は、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmである。
【0040】
本発明において、「ガラス粒子の平均粒子径」は、次のように測定される値である。先ず、ガラス粒子を30000個以上となるように採取し、JIS Z 8801-1:2019の表2に記載されている補助寸法300μmのJIS試験用ふるいに通し、ガラス粒子がすべてふるいを通過する場合は下記(1)の方法で平均粒子径の測定を行い、それ以外は下記(2)の方法で平均粒子径の測定を行う。
【0041】
方法(1)
ガラス粒子の平均粒子径は、JIS Z 8832:2010で規定されている「粒子径分布測定方法-電気的検知帯法」に記載の方法(コールターカウンター法)に準じて測定される体積基準のメジアン径(D50)とする。
【0042】
方法(2)
JIS K 0069:1992で規定される「化学製品のふるい分け試験方法」に記載されている乾式ふるい分けの手動ふるい分け方法に準じて測定し粒子径分布を求める。具体的に、試験用ふるいとして、JIS Z 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいを全て準備する。測定試料は0.1gまで測定できるはかりを用いて100.0gはかりとる。ふるい分け時間は、試験用ふるいを通過する試料がなくなるまで行う。ふるい網の下側に付着する場合はたたき棒を用いてふるい下とし、ふるい網に詰まった場合はふるい網の下側からブラシで除去しふるい上(残留分)とする。ふるい分けに用いる最大の試験用ふるいは全量通過する目開きとし、最小の試験用ふるいは全量通過しない目開きとする。各試験用ふるいの残留分を0.1gまで測定できるはかりを用いてはかりとり、粒子径分布として、各粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率Aを求める。このとき小数点以下一桁に数字を丸める。ここで、各粒子径範囲とは、上記JIS Z 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいにより定まる範囲、すなわち、125mm~106mm、106mm~90mm、90mm~75mm、75mm~63mm、63mm~53mm、53mm~45mm、45mm~37.5mm、37.5mm~31.5mm、31.5mm~26.5mm、26.5mm~22.4mm、22.4mm~19mm、19~16mm、16mm~13.2mm、13.2mm~11.2mm、11.2mm~9.5mm、9.5mm~8mm、8mm~6.7mm、6.7mm~5.6mm、5.6mm~4.75mm、4.75mm~4mm、4mm~3.35mm、3.35mm~2.8mm、2.8mm~2.36mm、2.36mm~2mm、2mm~1.7mm、1.7mm~1.4mm、1.4mm~1.18mm、1.18mm~1mm、1000μm~710μm、710μm~600μm、600μm~500μm、500μm~425μm、425μm~355μm、355μm~300μm、300μm~250μm、250μm~212μm、212μm~180μm、180μm~150μm、150μm~125μm、125μm~106μm、106μm~90μm、90μm~75μm、75μm~63μm、63μm~53μm、53μm~45μm及び45μm~38μmである。そして、各粒子径範囲の最大値及び最小値の和を2で除した値(例えば、125mm~106mmの粒子径範囲の場合は(125000μm+106000μm)/2=115500μm)に、前記算出した、当該粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率A/100を乗じ、これを全各粒子径範囲について積算し得られる値を平均粒子径とする。
【0043】
また、本発明のガラス粒子の粒子径分布については、特に制限されないが、平均粒子径の±50%の範囲内の粒子径のガラス粒子が、全ガラス粒子の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは100%を占めていることが望ましい。
【0044】
[物理的特性]
(圧縮強度)
本発明のガラス粒子は、圧縮強度が高いという特徴があり、本発明のガラス粒子の一態様として、圧縮強度が、好ましくは50kgf/mm2以上、より好ましくは55kgf/mm2以上、さらに好ましくは60kgf/mm2以上、さらに好ましくは70kgf/mm2以上、さらに好ましくは80kgf/mm2以上、さらに好ましくは90kgf/mm2以上、さらに好ましくは100kgf/mm2以上、さらに好ましくは110kgf/mm2以上である。また、本発明のガラス粒子が有する圧縮強度の上限値は特に制限されないが、通常、150kgf/mm2以下、好ましくは140kgf/mm2以下、より好ましくは130kgf/mm2以下、さらに好ましくは120kgf/mm2以下である。また、本発明のガラス粒子の他の一態様として、圧縮強度は、好ましくは50~150kgf/mm2、より好ましくは55~150kgf/mm2、さらに好ましくは60~150kgf/mm2、さらに好ましくは70~150kgf/mm2、さらに好ましくは80~150kgf/mm2、さらに好ましくは90~140kgf/mm2、さらに好ましくは100~130kgf/mm2、さらに好ましくは110~120kgf/mm2である。
【0045】
また、本発明のガラス粒子の一態様として、平均粒子径が800μm以下、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmのガラス粒子の場合、圧縮強度は、好ましくは90~140kgf/mm2、より好ましくは100~130kgf/mm2、さらに好ましくは110~120kgf/mm2である。また、本発明のガラス粒子の他の一態様として、平均粒子径が800μm超、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmのガラス粒子の場合、圧縮強度は、好ましくは50~90kgf/mm2、より好ましくは55~80kgf/mm2、さらに好ましくは60~75kgf/mm2である。
【0046】
前記圧縮強度は次の方法によって測定される値である。
【0047】
ガラス粒子は粒子径が平均粒子径±1%の範囲内になるように顕微鏡で選別したものを測定対象とする。下記式に従って、測定対象のガラス粒子の平均断面積を算出する。
【数2】
【0048】
次いで、測定対象となるガラス粒子について、JIS Z 8844:2019で規定されている「微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法」に記載の「圧縮方法B(変位を一定速度で増加させる変位制御)」に準じて破壊強度を測定する。具体的には、平均粒子径が300μm以下の場合は、引張圧縮試験機の測定テーブルに下ジグとして材質S45C-H製の平板を設置し、引張圧縮試験機のクロスヘッド下部に上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(直径5mmの円柱形)を設置する。ガラス粒子を下ジグ上に上ジグの中心に合わせて置き、荷重レンジを100N、試験速度0.1mm/分に設定して圧縮試験を行い、ガラス粒子が破壊した際の荷重を破壊強度(kgf)として求める。25個のガラス粒子について、破壊強度を測定して、その平均値を算出する。破壊強度の平均値を、前記平均断面積で除することにより、圧縮強度(kgf/mm2)を算出する。また、平均粒子径が300μm超1000μm以下の場合には、下ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の平板、及び上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(直径20mmの円柱形)を使用し、荷重レンジを2000N、試験速度0.1mm/分に設定すること以外は、上記平均粒子径が300μm以下のガラス粒子の場合と同条件で、圧縮強度(kgf/mm2)を求める。また、平均粒子径が1000μm超の場合には、下ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の平板、及び上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(直径20mmの円柱形)を使用し、荷重レンジを2000N、試験速度1mm/分に設定すること以外は、上記平均粒子径が300μm以下のガラス粒子の場合と同条件で、圧縮強度(kgf/mm2)を求める。
【0049】
また、本発明のガラス粒子の一態様として、圧縮強度の標準偏差は30kgf/mm2以下が好ましく挙げられ、12kgf/mm2以下がより好ましく挙げられる。当該標準偏差は、上記圧縮強度の測定方法において、25個のガラス粒子について破壊強度を測定し、当該25個の破壊強度の値それぞれについて前記平均断面積で除して当該25個の圧縮強度(kgf/mm2)を算出し、算出した25個の圧縮強度それぞれの値から、Microsoft ExcelのSTDEV.S関数を用いて標準偏差を算出する。上記圧縮強度の標準偏差とする方法としては、例えば、原料ガラス粒子の球状化方法として、ガス燃焼フレーム中で溶融あるいは軟化して表面張力により球状のガラス粒子にする浮遊法、または回転溶融炉で原料ガラス粒子の軟化点以上の温度で加熱する間接加熱法により、球状の原料ガラス粒子とすることが好適に挙げられる。
【0050】
(弾性率)
また、本発明のガラス粒子の一態様として、弾性率は、好ましくは3500N/mm2以上、より好ましくは3600N/mm2以上、さらに好ましくは3700N/mm2以上、さらに好ましくは3800N/mm2以上、さらに好ましくは4000N/mm2以上、特に好ましくは4500N/mm2以上である。また、本発明のガラス粒子の弾性率の上限値は特に制限されないが、通常、6000N/mm2以下であり、好ましくは5700N/mm2以下、より好ましくは5500N/mm2以下である。本発明のガラス粒子の他の一態様として、弾性率は、好ましくは3500~6000N/mm2、より好ましくは3600~5700N/mm2、さらに好ましくは3700~5500N/mm2、さらに好ましくは3800~5500N/mm2、さらに好ましくは4000~5500N/mm2、さらに好ましくは4500~5500N/mm2である。
【0051】
また、本発明のガラス粒子の一態様として、平均粒子径が800μm以下、好ましくは50~800μm、より好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmのガラス粒子の場合、弾性率は、好ましくは4000~5500N/mm2、より好ましくは4500~5500N/mm2である。また、本発明のガラス粒子の他の一態様として、平均粒子径が800μm超、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmのガラス粒子の場合、弾性率は、好ましくは3500~4000N/mm2、より好ましくは3600~3800N/mm2である。
【0052】
前記弾性率は、次の方法によって求められる値である。前記圧縮強度の測定データから、荷重が0kgfから破壊強度までの変位量(mm)と破壊強度(kgf)から一次最小二乗法により弾性勾配(N/mm)を求め、下記式に従って弾性率(N/mm
2)を算出する。
【数3】
【0053】
本発明のガラス粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、不定形状が挙げられるが、例えば、ガラス粒子をブラスト材やスペーサーとして使用する際に、ガラス粒子を吐出する装置における当該ガラス粒子と接触する箇所の摩耗を低減しやすくする観点、及びろ過材や充填剤(樹脂等に含有させるフィラー等)として使用するときの流動性や充填性を向上させる観点から球状が好ましい。
【0054】
[用途]
本発明のガラス粒子の用途は特に制限されず、ブラスト材、水処理用ろ過材、スペーサー、フィラー、抗菌剤、及び殺菌剤等が挙げられるが、好適な一例はブラスト材である。本発明のガラス粒子をブラスト材として使用する場合、湿式ブラスト又は乾式ブラストのいずれにも適用可能である。
【0055】
[製造方法]
本発明のガラス粒子の製造方法は、前述する組成を具備できることを限度として特に制限されないが、例えば、通常のソーダライム系組成(即ち、K2O含有量が1.5質量%以下のソーダライム系組成)又は通常のホウケイ酸ガラス組成の原料ガラス粒子を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)を1.8以上にする溶融塩接触工程を含む製造方法が挙げられる。
【0056】
より具体的には、本発明のガラス粒子の製造方法として、K2Oを0~3質量%、Na2Oを4~20質量%、SiO2を60~80質量%、Al2O3を0.1~10質量%、CaOを0~15質量%、MgOを0~10質量%、Fe2O3を0~5質量%、B2O3を0~15質量%含むガラス組成を有する原料ガラス粒子を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)を1.8以上にする溶融塩接触工程を含む製造方法が挙げられる。
【0057】
本発明のガラス粒子に抗菌性及び/又は殺菌性を付与するためにAgを含ませる場合には、例えば、硝酸カリウムと硝酸銀を含む溶融塩を用いればよい。また、Cuを含ませる場合には、例えば、硝酸カリウムと硝酸銅を含む溶融塩を用いればよい。また、Znを含ませる場合には、例えば、硝酸カリウムと硝酸亜鉛を含む溶融塩を用いればよい。
【0058】
原料ガラス粒子は、硝酸カリウムを含む溶融塩との接触によってNa2Oの一部がK2Oに置換される。溶融塩がさらに硝酸銀、硝酸銅、又は硝酸亜鉛を含む場合には、Na2Oの一部のNaがさらにAg、Cu、又はZnに置換される。そのため、原料ガラス粒子のガラス組成は、Na2O、K2O、Ag、Cu、及びZnの含有量以外(即ち、SiO2及びAl2O3の含有量、必要に応じて含有していてもよい成分等)については、前記[ガラス組成]の欄に記載の通りである。
【0059】
原料ガラス粒子において、Na2Oの含有量は4~20質量%程度であればよいが、好ましくは5~17質量%、より好ましくは10~17質量%、さらに好ましくは12~15質量%である。
【0060】
原料ガラス粒子において、K2Oの含有量は特に制限されず、0~3質量%程度であればよい。即ち、原料ガラス粒子のガラス組成において、K2Oは含まれていなくてもよい。原料ガラス粒子におけるK2Oの含有量は、好ましくは0~1.3質量%、より好ましくは0.5~1.0質量%である。
【0061】
原料ガラス粒子の平均粒子径は特に制限されないが、通常1~4000μm程度であり、好ましくは10~2000μm、より好ましくは50~2000μm、さらに好ましく80~1200μmである。また、原料ガラス粒子の一態様として、平均粒子径は、好ましくは10~800μm、より好ましくは50~800μm、さらに好ましくは50~600μm、さらに好ましくは50~400μm、さらに好ましくは80~200μm、さらに好ましくは80~150μmである。また、原料ガラス粒子の他の一態様として、平均粒子径は、好ましくは800超~1300μm、より好ましくは900~1200μm、さらに好ましくは1000~1200μmである。なお、本発明において、「原料ガラス粒子の平均粒子径」は、前述する本発明のガラス粒子の平均粒子径と同様の方法で測定される値である。
【0062】
また、原料ガラス粒子の粒度分布としては、平均粒子径の±50%の範囲内の粒子径のガラス粒子が、全ガラス粒子の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは100%を占めていることが望ましい。
【0063】
原料ガラス粒子、特に球状のガラス粒子は、前記ガラス組成を満たす原料を使用して、浮遊法、液滴法、マーブル形成法、ダイレクトプレス法、モールドプレス法、リヒートプレス法等の方法で製造することができる。球状の原料ガラス粒子の製造方法の好適な一例として、特開平11-199249号公報に開示されている浮遊法が挙げられる。
【0064】
また、球状のガラス粒子は、前記ガラス組成を満たす原料を使用して、燃焼や電気加熱などでガラスの軟化点以上に加熱した傾斜回転筒に、カーボン粉末とともに投入して球状化するカーボン法によって製造することもできる。原料ガラス粒子を当該方法によって製造することにより、前述した圧縮強度の標準偏差がより小さいものが得られやすくなる。上記回転筒は金属製の中空円筒形状であり、水平面に対し当該中空円筒の軸心が傾斜して配置され、当該軸心を中心に回転する。回転筒の材質としてはガラス粒子の軟化点以上の温度に耐え得るものであればよく、例えば、ステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
【0065】
また、原料ガラス粒子の製造原料は、前記ガラス組成を有していることを限度として特に制限されず、リサイクルガラス、ガラスフリット等のガラス組成物であってもよく、また、SiO2、Na2O、Al2O3、CaO、MgO、Fe2O3、B2O3等の供給源となる原料(例えば、鉱物や酸化物原料を熔融したものを含む)であってもよい。中でも、ソーダライム系組成のリサイクルガラスは、安価で大量に入手可能であり、原料ガラス粒子の製造原料として好適である。
【0066】
また、原料ガラス粒子として、前記ガラス組成を有するガラス粒子の市販品を使用することもできる。
【0067】
原料ガラス粒子は、前記溶融塩接触工程の前に、熱処理(予備加熱処理)を行っておくことが好ましい。当該熱処理を行うことにより、原料ガラス粒子を当該溶融塩に接触させる際に、原料ガラス粒子と当該溶融塩との温度差によって原料ガラス粒子に熱衝撃が与えられ、原料ガラス粒子の表面がひび割れたり、割れたりするのを緩和することができる。熱処理の温度条件としては、例えば、100℃以上、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~500℃、更に好ましくは300~500℃、特に好ましくは350~450℃である。また、熱処理時間としては、例えば、15分以上、好ましくは30~120分である。
【0068】
硝酸カリウムを含む溶融塩は、化学強化ガラスの製造に使用されているものであればよく、溶融塩中の硝酸カリウムの含有量は、例えば、50質量%以上、好ましくは90~100質量%、より好ましくは98~100質量%である。
【0069】
前記溶融塩が、硝酸カリウムと硝酸銀を含む場合、溶融塩中の硝酸カリウムの含有量は特に制限されないが、原料ガラス粒子中のNa2OのK2Oへの置換をより促進させる観点から、通常、90~99.99質量%程度であり、好ましくは98~99.97質量%、より好ましくは98~99.95質量%であり、さらに好ましくは99~99.6質量%である。また、溶融塩中の硝酸銀の含有量は特に制限されないが、原料ガラス粒子中のNaのAgへの置換をより促進させる観点から、通常、0.01~1質量%程度であり、好ましくは0.03~0.8質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0070】
前記溶融塩が、硝酸カリウムと硝酸銀を含む場合、溶融塩中の硝酸カリウムの含有量に対する硝酸銀の含有量(硝酸銀/硝酸カリウム)は、原料ガラス粒子中のNaのAgへの置換をより促進させる観点から、通常、0.01~1程度であり、好ましくは0.03~0.8、より好ましくは0.05~0.5である。
【0071】
前記溶融塩には、硝酸カリウム、硝酸銀、硝酸銅、及び硝酸亜鉛以外に、必要に応じて、K2CO3、Na2CO3、KHCO3、NaHCO3、K3PO4、Na3PO4、K2SO4、Na2SO4、KOH、NaOH、NaCl、及びKCl等の無機塩が含まれていてもよい。
【0072】
硝酸カリウム(及び硝酸銀など)を含む溶融塩に原料ガラス粒子を接触させるには、当該溶融塩を収容した槽内に、原料ガラス粒子を浸漬させればよい。その場合、前記溶融塩の質量に対する原料ガラス粒子の質量の比(原料ガラス粒子の質量/溶融塩の質量)は特に制限されないが、Na2OのK2Oへの置換をより促進させる観点から、通常、0.01~10程度であり、好ましくは0.1~5、より好ましくは0.2~3である。
【0073】
硝酸カリウム(及び硝酸銀など)を含む溶融塩に原料ガラス粒子を接触させる際の当該溶解塩の温度としては、Na2OのK2Oへの置換をより促進させる観点から、通常、333~500℃程度であり、好ましくは360~460℃である。
【0074】
硝酸カリウム(及び硝酸銀など)を含む溶融塩に原料ガラス粒子を接触させる時間は、当該溶融塩の組成や温度、原料ガラス粒子の粒子径等に応じて、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.8以上となる範囲に設定すればよいが、通常、1時間以上であり、好ましくは2~50時間、より好ましくは2~30時間である。
【0075】
斯くして硝酸カリウム(及び硝酸銀など)を含む溶融塩に原料ガラス粒子を接触させることにより、原料ガラス粒子のNa2Oの一部がK2Oに置換され(及びNa2Oの一部のNaがAgに置換され)、前記質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.8以上である本発明のガラス粒子が得られる。
【0076】
前記溶融塩接触工程において、原料ガラス粒子全体に対して増加させるK2O増加量は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1~7質量%、さらに好ましくは2~5質量%である。ここで、「原料ガラス粒子全体に対して増加させるK2O増加量」とは、前記測定方法Aにより測定される、前記溶融塩接触工程により得られたガラス粒子全体のK2Oの含有量CW(K2O)(質量%)から、前記測定方法Aにより測定される原料ガラス粒子全体のK2O含有量(質量%)を差し引いた値である。
【0077】
前記溶融塩接触工程において、原料ガラス粒子表面に対して増加させるK2O増加量は、好ましくは2~15質量%、より好ましくは3~14質量%、さらに好ましくは4~13質量%である。ここで、「原料ガラス粒子表面に対して増加させるK2O増加量」とは、前記測定方法Aにより測定される、前記溶融塩接触工程により得られたガラス粒子表面のK2Oの含有量CS(K2O)(質量%)から、前記測定方法Bにより測定される原料ガラス粒子表面のK2O含有量(質量%)を差し引いた値である。
【0078】
前記溶融塩接触工程後のガラス粒子は、必要に応じて放冷により冷却した後に、洗浄処理に供して表面付着している溶融塩を除去すればよい。洗浄処理は、純水やイオン交換水等を洗浄液として使用すればよい。また、洗浄処理時の洗浄水の温度は、洗浄効率の観点から、70℃以上であることが好ましい。また、洗浄処理は、洗浄水を入れた容器内にガラス粒子を入れて撹拌する方法、洗浄水を用いて超音波洗浄する方法、又はこれらを組み合わせた方法等によって行うことができる。洗浄処理後のガラス粒子は、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。
【実施例0079】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
測定方法
以下に示す実施例1~7のガラス粒子、比較例1及び2の原料ガラス粒子について、成分含有量、平均粒子径、圧縮強度、弾性率、ブラスト転写濃度、及び銀イオンの水溶出量を測定した方法を以下に示す。
【0081】
[成分含有量]
実施例1~7のガラス粒子、比較例1及び2の原料ガラス粒子について、下記測定方法Aにより各成分含有量CW(質量%)を測定し、また、下記測定方法Bにより各成分含有量CS(質量%)を測定した。なお、下記測定方法Aにより測定される各成分含有量CW(質量%)は、ガラス粒子全体における各成分含有量(質量%)に相当するものであり、下記測定方法Bにより測定される各成分含有量CS(質量%)は、ガラス粒子表面における各成分含有量(質量%)に相当するものであると推測される。
測定方法A:JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて各成分含有量CW(質量%)を測定した。まず、ガラス粒子を粉砕機(シー・エム・ティ社製、TI-100)にて3分粉砕し、粉砕したガラス粒子を粉体試料用塩ビリング(リガク社製、外径38mm×内径30mm×高さ5mm)に充填し、20MPaで加圧成形して平板状の定量分析用試料を作製した。作製した定量分析用試料を口径30mmφ試料マスクを用いて分析装置試料ホルダに取り付けた。そして、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX PrimusII)を用い、測定範囲を直径30mmの円に設定し、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)を用い、EZスキャンモードによるSQX(Scan Quant X)分析
により、作製した定量分析用試料の各成分含有量CW(質量%)を測定した。
測定方法B:ペトリ皿にガラス粒子を粉砕することなく適量投入し、ガラス粒子が入ったペトリ皿を振動させ、傾けることでガラス粒子が重ならないように一層かつ最密に並べ、その後、一層かつ最密に並べたガラス粒子に粘着性透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム(コクヨ社製、タックタイトル用保護フィルム、フリーサイズ寸法95・122)の粘着面を押し当てて、当該粘着面にガラス粒子を固定して定量分析用試料を作製した。粘着性透明二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粘着面におけるガラス粒子の占有面積率は、54.4%であった。なお、ガラス粒子の占有面積率は、下記式により算出した。下記式におけるガラス粒子の平均粒子径は、後述の方法により測定される値である。
【数4】
【0082】
そして、作製した定量分析用試料を用いた以外は、JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析に準じて各成分含有量CS(質量%)を測定した。まず、作製した定量分析用試料を口径30mmφ試料マスクを用いて分析装置試料ホルダに取り付けた。そして、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX PrimusII)を用い、測定範囲を直径30mmの円に設定し、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)を用い、EZスキャンモードによるSQX(Scan Quant X)分析により、作製した定量分析用試料の各成分含
有量CS(質量%)を測定した。
【0083】
[平均粒子径]
実施例1~4のガラス粒子、比較例1の原料ガラス粒子の平均粒子径は、JIS Z 8832:2010で規定されている「粒子径分布測定方法-電気的検知帯法」に記載の方法に準じて測定した。具体的には、ガラス粒子を30000個以上となるように採取し、コールターカウンター(BECKMAN COULTER社製 Multisizer4)を用いて、アパチャー径280μmを選択し、測定個数20000に設定して、体積基準のメジアン径(D50)を測定した。実施例8及び9のガラス粒子、比較例3及び4の原料ガラス粒子の平均粒子径は、JIS Z 8832:2010で規定されている「粒子径分布測定方法-電気的検知帯法」に記載の方法に準じて測定した。具体的には、ガラス粒子を3000個以上となるように採取し、コールターカウンター(BECKMAN COULTER社製 Multisizer4)を用いて、アパチャー径560μmを選択し、測定個数2000に設定して、体積基準のメジアン径(D50)を測定した。
【0084】
実施例5~7のガラス粒子、実施例10及び11のガラス粒子、比較例2、5及び6の原料ガラス粒子の平均粒子径は、JIS K 0069:1992で規定される「化学製品のふるい分け試験方法」に記載されている乾式ふるい分けの手動ふるい分け方法に準じて測定し粒子径分布を求めた。具体的に、試験用ふるいとして、JIS Z 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいを全て準備した。測定試料は0.1gまで測定できるはかりを用いて100.0gはかりとった。ふるい分け時間は、試験用ふるいを通過する試料がなくなるまで行った。ふるい網の下側に付着する場合はたたき棒を用いてふるい下とし、ふるい網に詰まった場合はふるい網の下側からブラシで除去しふるい上(残留分)とした。ふるい分けに用いる最大の試験用ふるいは全量通過する目開きとし、最小の試験用ふるいは全量通過しない目開きとする。各試験用ふるいの残留分を0.1gまで測定できるはかりを用いてはかりとり、粒子径分布として、各粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率Aを求めた。このとき小数点以下一桁に数字を丸めた。ここで、各粒子径範囲とは、上記JIS Z 8801-1:2019の表1及び表2に記載されている補助寸法系列の目開きのふるいにより定まる範囲、すなわち、125mm~106mm、106mm~90mm、90mm~75mm、75mm~63mm、63mm~53mm、53mm~45mm、45mm~37.5mm、37.5mm~31.5mm、31.5mm~26.5mm、26.5mm~22.4mm、22.4mm~19mm、19~16mm、16mm~13.2mm、13.2mm~11.2mm、11.2mm~9.5mm、9.5mm~8mm、8mm~6.7mm、6.7mm~5.6mm、5.6mm~4.75mm、4.75mm~4mm、4mm~3.35mm、3.35mm~2.8mm、2.8mm~2.36mm、2.36mm~2mm、2mm~1.7mm、1.7mm~1.4mm、1.4mm~1.18mm、1.18mm~1mm、1000μm~710μm、710μm~600μm、600μm~500μm、500μm~425μm、425μm~355μm、355μm~300μm、300μm~250μm、250μm~212μm、212μm~180μm、180μm~150μm、150μm~125μm、125μm~106μm、106μm~90μm、90μm~75μm、75μm~63μm、63μm~53μm、53μm~45μm及び45μm~38μmである。そして、各粒子径範囲の最大値及び最小値の和を2で除した値(例えば、125mm~106mmの粒子径範囲の場合は、(125000μm+106000μm)/2=115500μm)に、前記算出した、各粒子径範囲に対応するふるい残留分の質量の、全量(100.0g)に対する百分率A/100を乗じ、これを全各粒子径範囲について積算して得られる値を平均粒子径とした。
【0085】
[圧縮強度]
圧縮強度の測定に供するガラス粒子は顕微鏡で選別したものを使用した。具体的には、圧縮強度の測定に供するガラス粒子は、粒子径が平均粒子径±1%の範囲内になるように顕微鏡で選別したものを使用した。
【0086】
実施例1~4、8及び9のガラス粒子、比較例1、3及び4の原料ガラス粒子については、次の方法で圧縮強度を測定した。引張圧縮試験機(SDT-503NB-200R3、株式会社今田製作所社製)の測定テーブルに下ジグとして材質S45C-H製の平板(ロックウェル硬さ55、表面粗度Ra0.16)を設置し、引張圧縮試験機のクロスヘッド下部に上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(ロックウェル硬さ60、直径5mmの円柱形)を設置した。ガラス粒子を下ジグ上に上ジグの中心に合わせて置き、荷重レンジを100N、試験速度0.1mm/分に設定して圧縮試験を行い、ガラス粒子が破壊した際の荷重を破壊強度(kgf)として求めた。25個のガラスについて、破壊強度を測定して、その平均値を算出した。破壊強度の平均値を、下記式により平均粒子径から算出した平均断面積で除することにより、圧縮強度(kgf/mm
2)を求めた。
【数5】
【0087】
実施例5~7、10及び11のガラス粒子、比較例2、5及び6の原料ガラス粒子については、下ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の平板(ロックウェル硬さ60)、及び上ジグとして材質SKH/焼入れ焼き戻し製の押しジグ(ロックウェル硬さ60、直径20mmの円柱形)を使用し、荷重レンジを2000N、試験速度1mm/分に設定したこと以外は、前記と同条件で、圧縮強度(kgf/mm2)を求めた。
【0088】
[圧縮強度の標準偏差]
実施例1~11のガラス粒子、比較例1~6の原料ガラス粒子について、上記圧縮強度の測定方法において、25個のガラス粒子について破壊強度を測定し、当該25個の破壊強度の値それぞれについて前記平均断面積で除して当該25個の圧縮強度(kgf/mm2)を算出し、算出した25個の圧縮強度それぞれの値から、Microsoft ExcelのSTDEV.S関数を用いて標準偏差を算出した。
【0089】
[弾性率]
前記圧縮強度の測定データから、荷重が0kgfから最大荷重までの変位量(mm)と破壊強度(kgf)から一次最小二乗法により弾性勾配(N/mm)を求め、下記式に従って弾性率(N/mm
2)を算出した。
【数6】
【0090】
[ブラスト転写濃度]
ブラストマシン(厚地鉄工社製、B-0型)、及びブラスト対象物としてステンレス板(0.5t×25mm角)を使用し、実施例1~7のガラス粒子、比較例1及び2の原料ガラス粒子について、ステンレス板へのAg2Oの転写濃度(質量%)を測定した。まず、それぞれのガラス粒子30gをブラストマシンに投入し、ステンレス板からブラストノズル先端までの距離を10cmとし、エア圧力0.6MPaで全量投射した。投射後、ガラス粒子のみをブラストマシン下部から回収し、再度ガラス粒子をブラストマシンに投入し、エア圧力0.6MPaで全量投射した。この操作を10回繰り返し行い、それぞれのガラス粒子を投射したブラストステンレス板を得た。そして、分析装置として波長分散方式蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX PrimusII)を用い、定量方法としてファンダメンタルパラメーター法(FP法)を用い、EZスキャンモードによるSQX(Scan Quant X)分析により、各ブラストステンレス板のブラスト表面におけ
る各成分含有量(質量%)を測定した。前記蛍光X線分析装置による分析は、JIS K 0119:2008「蛍光X線分析通則」に規定されている定量分析方法に準じて行った。
【0091】
[銀イオンの水溶出量]
実施例1~7のガラス粒子、比較例1及び2の原料ガラス粒子を、20℃の精製水(関西蒸溜水製造所、W-20)中に浸漬して24時間放置した。ガラス粒子及び精製水を入れる容器としてはホウケイ酸ガラス製ビーカーを用いた。また、精製水の体積に対する浸漬させるガラス粒子の重量は20g/Lとした。その後、溶液のみを採取し、銀イオン溶出液を得た。そして、得られた銀イオン溶出液を用いて、銀イオン濃度測定器(ハンナ インスツルメンツ製、HI97737)にて銀イオンの溶出量(ppb)を測定した。
【0092】
[比較例1]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、ガラス微粉末をガスバーナのフレーム内の加熱成形ゾーンに空気とともに吹き込むことにより、球状のガラス粒子を製造した。得られたガラス粒子を篩別し、粒子径が90~125μmの範囲内にあり、平均粒子径105μmである原料ガラス粒子(以下、原料ガラス粒子A)を得た。原料ガラス粒子Aについて、前記測定方法Aにより測定した各成分含有量の結果を表1に、前記測定方法Bにより測定した各成分含有量の結果を表2に示す。
【0093】
【0094】
【0095】
[実施例1]
SUS316製の円筒系容器(厚み3mm、内径200mm、容器内高さ500mm)に硝酸カリウム(大塚化学株式会社製、スーパータブレット、融点333℃、硝酸カリウム含有量99.0質量%以上)を11kg及び硝酸銀(東洋化学工業株式会社製、試薬特級、融点212℃、硝酸銀含有量99.90質量%以上)を10g加えた。硝酸カリウム及び硝酸銀を加えた容器を化学強化炉(株式会社共栄電機製、エコホット-Mサイズ)内に入れ、化学強化炉内の雰囲気温度を400℃に設定して8時間かけて加熱して硝酸カリウム及び硝酸銀を含む溶融塩を調製した。
【0096】
次に、前記原料ガラス粒子Aを電気炉(株式会社GMEタナカ製、200V1φ、10KW)に入れ、雰囲気温度400℃で60分間熱処理(予備加熱処理)した。
【0097】
熱処理した前記原料ガラス粒子A30gを、目開き62μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)に入れた。そして、原料ガラス粒子Aが入った容器を、400℃の前記溶融塩中に6時間浸漬させてイオン交換を行った。なお、前記溶融塩の温度は、前記溶融塩の中に熱電対(株式会社モトヤマ製、Kシース熱電対)を入れて測定した。その後、前記溶融塩中から容器を引き上げ、ガラス粒子を放冷した。
【0098】
ガラスビーカーに精製水2Lと攪拌子を入れ、ホットスターラー(パソリナホットスターラーCT-5HA、アズワン株式会社製)で熱をかけながら攪拌し、前記溶融塩中から引き上げた容器を70℃で40分洗浄した。ガラス粒子を別のガラスビーカーに移して300mLの精製水を加え、超音波洗浄機(VSF-100、アズワン株式会社製)を用いて28kHzで10分間洗浄した。ガラスビーカー内の精製水を廃棄して、新たな精製水300ml加えて、再度、同条件で超音波洗浄を行った。次いで、精製水を廃棄して、ガラス粒子を吸引ろ過にて回収し、その後、定温恒温器(DK-43、ヤマト科学株式会社製)を用いて110℃で2時間乾燥し、球状のガラス粒子を得た。
【0099】
[実施例2]
溶融塩の調製において硝酸銀の配合量を10gから50gに変更し、溶融塩の温度を400℃から360℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で球状のガラス粒子を得た。
【0100】
[実施例3]
溶融塩の調製において硝酸銀の配合量を10gから50gに変更し、溶融塩中への浸漬時間を6時間から2時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で球状のガラス粒子を得た。
【0101】
[実施例4]
溶融塩の調製において硝酸銀の配合量を10gから50gに変更し、容器に入れる原料ガラス粒子Aの量を30gから300gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で球状のガラス粒子を得た。
【0102】
[比較例2]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、得られたガラス微粉末をガラスの軟化点以上に熱した回転しているSUSパイプ(傾斜回転筒)へカーボン粉末とともに投入することにより、球状の原料ガラス粒子を製造した。得られたガラス粒子を篩別し、粒子径が850~1250μmであり、平均粒子径が1090μmである原料ガラス粒子(以下、原料ガラス粒子B)を得た。原料ガラス粒子Bについて、前記測定方法Aにより測定した各成分含有量の結果を表3に、前記測定方法Bにより測定した各成分含有量の結果を表4に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
[実施例5]
SUS316製の円筒系容器(厚み3mm、内径200mm、容器内高さ500mm)に硝酸カリウム(大塚化学株式会社製、スーパータブレット、融点333℃、硝酸カリウム含有量99.0質量%以上)を11kg及び硝酸銀(東洋化学工業株式会社製、試薬特級、融点212℃、硝酸銀含有量99.90質量%以上)を50g加えた。硝酸カリウム及び硝酸銀を加えた容器を化学強化炉(株式会社共栄電機製、エコホット-Mサイズ)内に入れ、化学強化炉内の雰囲気温度を400℃に設定して8時間かけて加熱して硝酸カリウム及び硝酸銀を含む溶融塩を調製した。
【0106】
次に、前記原料ガラス粒子Bを電気炉(株式会社GMEタナカ製、200V1φ、10KW)にて雰囲気温度400℃で60分間熱処理(予備加熱処理)した。
【0107】
熱処理した前記原料ガラス粒子B30gを目開き283μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)に入れた。そして、原料ガラス粒子Bが入った容器を、400℃の前記溶融塩中に2時間浸漬させてイオン交換を行った。なお、前記溶融塩の温度は、前記溶融塩の中に熱電対(株式会社モトヤマ製、Kシース熱電対)を入れて測定した。その後、前記溶融塩から容器を引き上げ、ガラス粒子を放冷した。
【0108】
ガラスビーカーに精製水2Lと攪拌子を入れ、ホットスターラー(パソリナホットスターラーCT-5HA、アズワン株式会社製)で熱をかけながら攪拌し、前記溶融塩中から引き上げた容器を70℃で40分洗浄した。ガラス粒子を別のガラスビーカーに移して300mLの精製水を加え、超音波洗浄機(VSF-100、アズワン株式会社製)を用いて28kHzで10分間洗浄した。ガラスビーカー内の精製水を廃棄して、新たな精製水300ml加えて、再度、同条件で超音波洗浄を行った。次いで、精製水を廃棄して、ガラス粒子を吸引ろ過にて回収し、その後、定温恒温器(DK-43、ヤマト科学株式会社製)を用いて110℃で2時間乾燥し、球状のガラス粒子を得た。
【0109】
[実施例6]
溶融塩中への浸漬時間を2時間から6時間に変更した以外は、実施例5と同様の方法で球状のガラス粒子を得た。
【0110】
[実施例7]
溶融塩中への浸漬時間を2時間から30時間に変更した以外は、実施例5と同様の方法で球状のガラス粒子を得た。
【0111】
【0112】
表5から、実施例1~4のガラス粒子は、原料ガラス粒子A(平均粒子径105μm)を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が2.5以上になっており、ガラス粒子の表面にK2Oが顕著に偏在しているため、比較例1の質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.2である原料ガラス粒子Aに比べて、圧縮強度が大きく向上しており、また、弾性率は同等又は向上していることがわかる。同様に、実施例5~7のガラス粒子は、原料ガラス粒子B(平均粒子径1090μm)を、硝酸カリウムを含む溶融塩と接触させることにより、質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が7.0以上になっており、ガラス粒子の表面にK2Oが顕著に偏在しているため、比較例2の質量%比CS(K2O)/CW(K2O)が1.1である原料ガラス粒子Bに比べて、圧縮強度が大きく向上しており、また、弾性率も向上していることがわかる。
【0113】
また、実施例1~7のガラス粒子は、Ag2Oを多く含有しているため、ブラスト時にAg2Oをブラスト対象物に転写させることができ、また、水中へAgイオンを溶出させることができるため、ブラスト対象物や水に抗菌性や殺菌性を付与することができる。
【0114】
[比較例3]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、ガラス微粉末をガスバーナのフレーム内の加熱成形ゾーンに空気とともに吹き込むことにより、球状のガラス粒子を製造した。得られたガラス粒子を篩別し、粒子径が212~300μmの範囲内にあり、平均粒子径250μmである原料ガラス粒子(以下、原料ガラス粒子C)を得た。原料ガラス粒子Cについて、前記測定方法Aにより測定した各成分含有量の結果を表6に、前記測定方法Bにより測定した各成分含有量の結果を表7に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
[実施例8]
SUS316製の円筒系容器(厚み3mm、内径200mm、容器内高さ500mm)に硝酸カリウム(大塚化学株式会社製、スーパータブレット、融点333℃、硝酸カリウム含有量99.0質量%以上)を11kg加えた。硝酸カリウムを加えた容器を化学強化炉(株式会社共栄電機製、エコホット-Mサイズ)内に入れ、化学強化炉内の雰囲気温度を460℃に設定して8時間かけて加熱して硝酸カリウムを含む溶融塩を調製した。
【0118】
熱処理した前記原料ガラス粒子C30gを目開き62μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)に入れた。そして、原料ガラス粒子Cが入った容器を、460℃の前記溶融塩中に3時間浸漬させてイオン交換を行った。なお、前記溶融塩の温度は、前記溶融塩の中に熱電対(株式会社モトヤマ製、Kシース熱電対)を入れて測定した。その後、前記溶融塩から容器を引き上げ、ガラス粒子を放冷した。
【0119】
ガラスビーカーに精製水2Lと攪拌子を入れ、ホットスターラー(パソリナホットスターラーCT-5HA、アズワン株式会社製)で熱をかけながら攪拌し、前記溶融塩中から引き上げた容器を70℃で40分洗浄した。ガラス粒子を別のガラスビーカーに移して300mLの精製水を加え、超音波洗浄機(VSF-100、アズワン株式会社製)を用いて28kHzで10分間洗浄した。ガラスビーカー内の精製水を廃棄して、新たな精製水300ml加えて、再度、同条件で超音波洗浄を行った。次いで、精製水を廃棄して、ガラス粒子を吸引ろ過にて回収し、その後、定温恒温器(DK-43、ヤマト科学株式会社製)を用いて110℃で2時間乾燥し、球状のガラス粒子を得た。
【0120】
[比較例4]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、得られたガラス微粉末をガラスの軟化点以上に熱した回転しているSUSパイプ(傾斜回転筒)へカーボン粉末とともに投入することにより、球状のガラス粒子を製造した。得られたガラス粒子を篩別し、粒子径が212~300μmの範囲内にあり、平均粒子径250μmである原料ガラス粒子(以下、原料ガラス粒子D)を得た。原料ガラス粒子Dについて、前記測定方法Aにより測定した各成分含有量の結果を表8に、前記測定方法Bにより測定した各成分含有量の結果を表9に示す。
【0121】
【0122】
【0123】
[実施例9]
SUS316製の円筒系容器(厚み3mm、内径200mm、容器内高さ500mm)に硝酸カリウム(大塚化学株式会社製、スーパータブレット、融点333℃、硝酸カリウム含有量99.0質量%以上)を11kg加えた。硝酸カリウムを加えた容器を化学強化炉(株式会社共栄電機製、エコホット-Mサイズ)内に入れ、化学強化炉内の雰囲気温度を460℃に設定して8時間かけて加熱して硝酸カリウムを含む溶融塩を調製した。
【0124】
熱処理した前記原料ガラス粒子D30gを目開き62μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)に入れた。そして、原料ガラス粒子Dが入った容器を、460℃の前記溶融塩中に3時間浸漬させてイオン交換を行った。なお、前記溶融塩の温度は、前記溶融塩の中に熱電対(株式会社モトヤマ製、Kシース熱電対)を入れて測定した。その後、前記溶融塩から容器を引き上げ、ガラス粒子を放冷した。
【0125】
ガラスビーカーに精製水2Lと攪拌子を入れ、ホットスターラー(パソリナホットスターラーCT-5HA、アズワン株式会社製)で熱をかけながら攪拌し、前記溶融塩中から引き上げた容器を70℃で40分洗浄した。ガラス粒子を別のガラスビーカーに移して300mLの精製水を加え、超音波洗浄機(VSF-100、アズワン株式会社製)を用いて28kHzで10分間洗浄した。ガラスビーカー内の精製水を廃棄して、新たな精製水300ml加えて、再度、同条件で超音波洗浄を行った。次いで、精製水を廃棄して、ガラス粒子を吸引ろ過にて回収し、その後、定温恒温器(DK-43、ヤマト科学株式会社製)を用いて110℃で2時間乾燥し、球状のガラス粒子を得た。
【0126】
[比較例5]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、ガラス微粉末をガスバーナのフレーム内の加熱成形ゾーンに空気とともに吹き込むことにより、球状のガラス粒子を製造した。得られたガラス粒子を篩別し、粒子径が600~850μmの範囲内にあり、平均粒子径710μmである原料ガラス粒子(以下、原料ガラス粒子E)を得た。原料ガラス粒子Eについて、前記測定方法Aにより測定した各成分含有量の結果を表10に、前記測定方法Bにより測定した各成分含有量の結果を表11に示す。
【0127】
【0128】
【0129】
[実施例10]
SUS316製の円筒系容器(厚み3mm、内径200mm、容器内高さ500mm)に硝酸カリウム(大塚化学株式会社製、スーパータブレット、融点333℃、硝酸カリウム含有量99.0質量%以上)を11kg加えた。硝酸カリウムを加えた容器を化学強化炉(株式会社共栄電機製、エコホット-Mサイズ)内に入れ、化学強化炉内の雰囲気温度を460℃に設定して8時間かけて加熱して硝酸カリウムを含む溶融塩を調製した。
【0130】
熱処理した前記原料ガラス粒子E30gを目開き62μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)に入れた。そして、原料ガラス粒子Eが入った容器を、460℃の前記溶融塩中に3時間浸漬させてイオン交換を行った。なお、前記溶融塩の温度は、前記溶融塩の中に熱電対(株式会社モトヤマ製、Kシース熱電対)を入れて測定した。その後、前記溶融塩から容器を引き上げ、ガラス粒子を放冷した。
【0131】
ガラスビーカーに精製水2Lと攪拌子を入れ、ホットスターラー(パソリナホットスターラーCT-5HA、アズワン株式会社製)で熱をかけながら攪拌し、前記溶融塩中から引き上げた容器を70℃で40分洗浄した。ガラス粒子を別のガラスビーカーに移して300mLの精製水を加え、超音波洗浄機(VSF-100、アズワン株式会社製)を用いて28kHzで10分間洗浄した。ガラスビーカー内の精製水を廃棄して、新たな精製水300ml加えて、再度、同条件で超音波洗浄を行った。次いで、精製水を廃棄して、ガラス粒子を吸引ろ過にて回収し、その後、定温恒温器(DK-43、ヤマト科学株式会社製)を用いて110℃で2時間乾燥し、球状のガラス粒子を得た。
【0132】
[比較例6]
ソーダライム系組成のリサイクルガラスを粉砕・篩分し、得られたガラス微粉末をガラスの軟化点以上に熱した回転しているSUSパイプ(傾斜回転筒)へカーボン粉末とともに投入することにより、球状のガラス粒子を製造した。得られたガラス粒子を篩別し、粒子径が600~850μmの範囲内にあり、平均粒子径710μmである原料ガラス粒子(以下、原料ガラス粒子F)を得た。原料ガラス粒子Fについて、前記測定方法Aにより測定した各成分含有量の結果を表12に、前記測定方法Bにより測定した各成分含有量の結果を表13に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
[実施例11]
SUS316製の円筒系容器(厚み3mm、内径200mm、容器内高さ500mm)に硝酸カリウム(大塚化学株式会社製、スーパータブレット、融点333℃、硝酸カリウム含有量99.0質量%以上)を11kg加えた。硝酸カリウムを加えた容器を化学強化炉(株式会社共栄電機製、エコホット-Mサイズ)内に入れ、化学強化炉内の雰囲気温度を460℃に設定して8時間かけて加熱して硝酸カリウムを含む溶融塩を調製した。
【0136】
熱処理した前記原料ガラス粒子F30gを目開き62μmのSUS304製のメッシュで作製された容器(10mm×80mm×110mm)に入れた。そして、原料ガラス粒子Fが入った容器を、460℃の前記溶融塩中に3時間浸漬させてイオン交換を行った。なお、前記溶融塩の温度は、前記溶融塩の中に熱電対(株式会社モトヤマ製、Kシース熱電対)を入れて測定した。その後、前記溶融塩から容器を引き上げ、ガラス粒子を放冷した。
【0137】
ガラスビーカーに精製水2Lと攪拌子を入れ、ホットスターラー(パソリナホットスターラーCT-5HA、アズワン株式会社製)で熱をかけながら攪拌し、前記溶融塩中から引き上げた容器を70℃で40分洗浄した。ガラス粒子を別のガラスビーカーに移して300mLの精製水を加え、超音波洗浄機(VSF-100、アズワン株式会社製)を用いて28kHzで10分間洗浄した。ガラスビーカー内の精製水を廃棄して、新たな精製水300ml加えて、再度、同条件で超音波洗浄を行った。次いで、精製水を廃棄して、ガラス粒子を吸引ろ過にて回収し、その後、定温恒温器(DK-43、ヤマト科学株式会社製)を用いて110℃で2時間乾燥し、球状のガラス粒子を得た。
【0138】