(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075342
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】紙パウチ及び内容物入り紙パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 77/12 20060101AFI20240527BHJP
B65D 30/16 20060101ALI20240527BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B65D77/12 D
B65D77/12 C
B65D30/16 C
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186723
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】上野 美樹
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AB26
3E064BA01
3E064BA05
3E064BA17
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA36
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA23
3E064FA04
3E064GA01
3E064HA06
3E064HB02
3E064HB03
3E064HN05
3E064HP02
3E064HP04
3E067AA03
3E067AB01
3E067AB26
3E067AB28
3E067AB81
3E067AB96
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BA38A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067EA09
3E067EB01
3E067EB02
3E067EB07
3E067EB32
3E067EE02
3E067EE40
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD10
(57)【要約】
【課題】注出部を切断して逆立てた際に内容物が漏れ出すのを抑制する。
【解決手段】紙パウチ1は、互いに対向されて横方向D2における両縁部において互いにシールされた一対の胴部2と、一対の胴部2の縦方向D1における一方側の端部から一対の胴部2の間に折り込まれて一対の胴部2とシールされた底部3と、を有し、少なくとも一対の胴部2が紙基材層4とシーラント層6とを有する積層シート7により形成される。胴部2は、収容領域12を形成する本体部15と、収容領域12に収容された内容物を注ぎ出すために収容領域12から延びる注出路14を形成する注出部16と、を有する。そして、注出路14を横切る切断予定線Lと平行な方向における胴部2のループスティフネス値Fと、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dとは、F/D
2≧4.0の関係を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向されて横方向における両縁部において互いにシールされた一対の胴部と、前記一対の胴部の前記横方向と直交する縦方向における一方側の端部から前記一対の胴部の間に折り込まれて前記一対の胴部とシールされた底部と、を有し、少なくとも前記一対の胴部が紙基材層とシーラント層とを有する積層シートにより形成され、内部に形成される収容領域に内容物が収容されることで自立可能となる紙パウチであって、
前記一対の胴部のそれぞれは、前記収容領域を形成する本体部と、前記収容領域に収容された前記内容物を注ぎ出すために前記収容領域から延びる注出路を形成する注出部と、を有し、
前記注出路を横切る切断予定線と平行な方向における前記胴部のループスティフネス値をFとし、前記切断予定線における前記注出路の幅をDとした場合、
F/D2≧4.0
の関係を満たす、
紙パウチ。
【請求項2】
前記紙基材層の坪量は、60g/m2以上120g/m2以下である、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項3】
前記切断予定線における前記注出路の幅は、8mm以上14mm以下である、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項4】
前記横方向における幅は、110mm以下であり、
前記横方向と直交する縦方向における高さは、160mm以下であり、
前記一対の胴部の間に折り込まれている前記底部の前記縦方向における往復長さは、70mm以下である、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項5】
前記一対の胴部は、前記注出部から前記本体部まで延びるエンボス線を有する、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項6】
前記一対の胴部が互いにシールされているシール部は、前記注出路を囲んで前記注出路を画成する注出シール部を有し、
前記注出シール部と前記注出路との境界線と前記切断予定線とが交差する一対の交差点のそれぞれにおける、前記境界線の前記本体部側の接線の成す角度は、20°以上60°以下である、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の紙パウチと、
前記紙パウチの前記収容領域に収容された内容物と、を備える、
内容物入り紙パウチ。
【請求項8】
前記内容物は、80g以下である、
請求項7に記載の内容物入り紙パウチ。
【請求項9】
前記内容物の粘度は、100mP・s(30℃)以上2000mP・s(30℃)以下である、
請求項7に記載の内容物入り紙パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材層とシーラント層とを有する積層シートを用いた紙パウチ及び内容物入り紙パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、詰め替え用ボトル等の容器に対して内容物を詰め替えるために、一対の胴部と一対の胴部の間に折り込まれた底部とを有するパウチ(スタンディングパウチ)が用いられている。近年、資源の有効な利用の促進に関する法律の改正に伴い、家庭から排出される紙製容器包装に紙マークを表示することが義務化され、紙の重量比が50%を超えることで、紙マークを表示することができるようになった。特許文献1には、紙の重量比が50%以上となる紙パウチが記載されている。この紙パウチでは、一対の胴部の上端隅部(角部)に位置する注出部の先端部をハサミ等で切り取り、注出部を指で押し込むことで注出部を開き、傾けるようにスタンディングパウチを持ち上げることで、内容物を詰め替え用ボトル等の容器へ注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような紙パウチを用いた容器への詰め替え方法として、注出部の先端部をハサミ等で切り取り、注出部の近傍を両手で持って紙パウチを逆立て、注出部を指で押し込むことにより注出部を開き、注出部から内容物を注ぎ出す方法が考えられる。しかしながら、本発明者らが当該方法によって容器への詰め替えを評価したところ、注出部の近傍を両手で持ってパウチを逆立てただけで注出部から内容物が漏れ出してしまう不具合が発生する場合があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、注出部を切断して逆立てた際に内容物が漏れ出すのを抑制することができる紙パウチ及び内容物入り紙パウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、注出部の切断位置における注出路の幅と、注出部の切断線と平行な方向におけるフィルムの腰強度と、が所定の関係を満たす場合に、注出部の先端部を切断して逆立てた際に内容物が漏れ出し難くなるとの知見を得た。本発明は、上記知見に基づきなされたものである。
【0007】
[1] 本発明に係る紙パウチは、互いに対向されて横方向における両縁部において互いにシールされた一対の胴部と、一対の胴部の横方向と直交する縦方向における一方側の端部から一対の胴部の間に折り込まれて一対の胴部とシールされた底部と、を有し、少なくとも一対の胴部が紙基材層とシーラント層とを有する積層シートにより形成され、内部に形成される収容領域に内容物が収容されることで自立可能となる紙パウチであって、一対の胴部のそれぞれは、収容領域を形成する本体部と、収容領域に収容された内容物を注ぎ出すために収容領域から延びる注出路を形成する注出部と、を有し、注出路を横切る切断予定線と平行な方向における胴部のループスティフネス値をFとし、切断予定線における注出路の幅をDとした場合、F/D2≧4.0の関係を満たす。
【0008】
この紙パウチでは、切断予定線と平行な方向における胴部のループスティフネス値Fと、切断予定線における注出路の幅Dとが、F/D2≧4.0の関係を満たす。このため、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断予定線で切断して逆立てた際に、内容物の自重により注出部が開いて内容物が漏れ出すのを抑制することができる。
【0009】
[2] [1]の紙パウチにおいて、紙基材層の坪量は、60g/m2以上120g/m2以下であってもよい。この紙パウチでは、紙基材層の坪量が60g/m2以上であることで、紙基材層の腰が強められている。これにより、F/D2≧4.0の関係を満たしやすくなる。一方、紙基材層の坪量が120g/m2以下であることで、紙基材層の腰が過度に強くなるのが抑制されている。これにより、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、切断した注出部を指で押し込んだ際に、注出部を容易に開くことができる。
【0010】
[3] [1]又は[2]の紙パウチにおいて、切断予定線における注出路の幅は、8mm以上14mm以下であってもよい。この紙パウチでは、切断予定線における注出路の幅が8mm以上であることで、紙パウチを容易に製造することができるとともに、注出部からの内容物の注ぎ性を向上することができる。一方、切断予定線における注出路の幅が14mm以下であることで、詰替口の細い容器にも容易に注ぐことができるとともに、注出部からの内容物の注ぎ性を向上することができる。
【0011】
[4] [1]~[3]の何れか一つに記載の紙パウチにおいて、横方向における幅は、110mm以下であり、横方向と直交する縦方向における高さは、160mm以下であり、一対の胴部の間に折り込まれている底部の縦方向における往復長さは、70mm以下であってもよい。この紙パウチでは、幅が110mm以下、高さが160mm以下、底部の往復長さが70mm以下であることで、内容物の収容量及び重量が過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断した後に、注出部の近傍を両手で持って内容物入り紙パウチを逆立てやすくなるとともに、内容物入り紙パウチを逆立てた際に内容物が自重で注出部から漏れ出すのを抑制することができる。
【0012】
[5] [1]~[4]の何れか一つに記載の紙パウチにおいて、一対の胴部は、注出部から本体部まで延びるエンボス線を有してもよい。この紙パウチでは、一対の胴部が注出部から本体部まで延びるエンボス線を有することで、切断された注出部を指で押し込んだ際に、注出部が開きやすくなる。また、開いた注出部が開いた状態で保持されやすくなるため、容易に内容物を注ぎ出すことができる。
【0013】
[6] [1]~[5]の何れか一つに記載の紙パウチにおいて、一対の胴部が互いにシールされているシール部は、注出路を囲んで注出路を画成する注出シール部を有し、注出シール部と注出路との境界線と切断予定線とが交差する一対の交差点のそれぞれにおける、境界線の本体部側の接線の成す角度は、20°以上60°以下であってもよい。この紙パウチでは、注出シール部と注出路との境界線と切断予定線とが交差する一対の交差点のそれぞれにおける境界線の本体部側の接線の成す角度が20°以上60°以下である。そして、この角度が60°以下であることで、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断予定線で切断して逆立てた際に、内容物の自重により注出部が開くのを抑制することができるとともに、注出部からの内容物の注ぎ性を向上することができる。一方、この角度が20°以上であることで、切断した注出部を指で押し込んだ際に、注出部を容易に開くことができる。
【0014】
[7] 本発明に係る内容物入り紙パウチは、[1]~[6]の何れか一つに記載の紙パウチと、紙パウチの収容領域に収容された内容物と、を備える。この内容物入り紙パウチでは、上述した紙パウチを備えるため、注出部を切断して逆立てた際に内容物が漏れ出すのを抑制することができる。
【0015】
[8] [7]に記載の内容物入り紙パウチにおいて、内容物は、80g以下であってもよい。この内容物入り紙パウチでは、内容物が80g以下であることで、注出部の近傍を両手で持って内容物入り紙パウチを逆立てやすくなるとともに、注出部を切断して内容物入り紙パウチを逆立てした際に内容物が自重で注出部から漏れ出すのを抑制することができる。
【0016】
[9] [7]又は[8]に記載の内容物入り紙パウチにおいて、内容物の粘度は、100mP・s(30℃)以上2000mP・s(30℃)以下であってもよい。この内容物入り紙パウチでは、内容物の粘度が100mP・s(30℃)以上であることで、注出部を切断して逆立てた際に、注出部を形成する一対の胴部の狭い隙間から内容物が漏れ出すのを抑制することができる。一方、内容物の粘度が2000mP・s(30℃)以下であることで、注出部から内容物を容易に注ぎ出すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、注出部を切断して逆立てた際に内容物が漏れ出すのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る紙パウチを示す正面図である。
【
図2】
図1に示すII-II線における断面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、切断予定線の例を示す模式図である。
【
図4】(a)及び(b)は、切断予定線の例を示す模式図である。
【
図5】(a)及び(b)は、切断予定線の例を示す模式図である。
【
図6】(a)及び(b)は、切断予定線の例を示す模式図である。
【
図7】
図1に示す紙パウチの注出部を拡大した正面図である。
【
図10】実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す正面図である。
【
図11】実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す斜視図である。
【
図15】F/D
2と評価2との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[紙パウチ]
図1は、実施形態に係る紙パウチを示す正面図である。
図1に示す紙パウチ1は、樹脂の使用量を削減して環境への負荷を抑制する上、資源の有効な利用の促進に関する法律に基づく紙マークを表示することが可能で、内容物が収容されることで自立するスタンディングパウチであり、詰め替え用ボトル等の容器(不図示)に対する内容物の詰め替え等に用いられる。紙パウチ1の上下等の方向は、紙パウチ1が自立した際の上下等の方向をいう。また、紙パウチ1の上下の方向を縦方向D1といい、縦方向D1と直交する方向を横方向D2という。
【0021】
図2は、
図1に示すII-II線における断面図である。
図1及び
図2に示すように、紙パウチ1は、互いに対向された横方向D2における両縁部において互いにシールされた一対の胴部である胴部2A及び胴部2Bと、胴部2Aと胴部2Bとの間に折り込まれた底部3と、を備える。そして、紙パウチ1は、その内部に、内容物を収容するための収容領域12が形成されている。収容領域12は、胴部2A、胴部2B、及び底部3により形成される。なお、胴部2Aと胴部2Bとは、互いに同じ形状、構造等を有しているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、胴部2A及び胴部2Bを胴部2として纏めて説明する。
【0022】
胴部2は、紙基材層4と、バリア層5と、シーラント層6と、が積層された積層シート7により形成されている。紙基材層4は、紙のシートにより形成された層である。紙基材層4の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、晒クラフト紙とすることができる。バリア層5は、気体及び液体の通過を阻止するバリア性を有する層である。バリア層5の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ蒸着フィルム(例えば、VM-PET)とすることができる。シーラント層6は、熱により溶融して他のシートに溶着可能な層である。つまり、シーラント層6は、ヒートシール可能な層である。シーラント層6の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とすることができる。紙基材層4、バリア層5、及びシーラント層6は、例えば、接着剤による接着により互いに積層されている。紙基材層4、バリア層5、及びシーラント層6を互い接着する接着剤の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、有機溶剤型エステル系接着剤、無溶剤型エステル系接着剤とすることができる。なお、積層シート7では、紙基材層4のシーラント層6とは反対側に、コート層等の他の層が積層されていてもよい。
【0023】
底部3は、基材層8と、バリア層9と、シーラント層10と、が積層された積層シート11により形成されている。バリア層9は、気体及び液体の通過を阻止するバリア性を有する層である。基材層8の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、紙、熱可塑性樹脂とすることができる。紙は、例えば、晒クラフト紙とすることができる。熱可塑性樹脂は、例えば、ナイロン(Ny)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)とすることができる。基材層8が熱可塑性樹脂である場合は延伸フィルムであってよく、一軸延伸フィルムもしくは二軸延伸フィルムであってよい。バリア層9の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ蒸着フィルム(例えば、VM-PET)とすることができる。シーラント層10は、熱により溶融して他のシートに溶着可能な層である。つまり、シーラント層10は、ヒートシール可能な層である。シーラント層10の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とすることができる。
【0024】
紙パウチ1における紙基材層4の重量割合は、50%超である。つまり、樹脂の使用量を削減して環境への負荷を抑制するため、紙パウチ1の全重量に対する紙の重量の割合が50%超となっている。
【0025】
紙基材層4の坪量は、特に限定されるものではないが、紙基材層4の腰を強める観点から、好ましくは60g/m2以上、より好ましくは70g/m2以上、さらに好ましくは90g/m2以上である。一方、紙基材層4の腰が過度に強くなるのを抑制する観点から、紙基材層4の坪量は、好ましくは120g/m2以下、より好ましくは110g/m2以下である。これらの観点から、紙基材層4の坪量は、好ましくは60g/m2以上120g/m2以下、より好ましく70g/m2以上110g/m2以下、さらに好ましくは90g/m2以上110g/m2以下である。
【0026】
胴部2A及び胴部2Bは、略矩形状に形成されて、それぞれのシーラント層6が対向するように互いに重ね合わされている。底部3は、略矩形状に形成されて、その下端が胴部2A及び胴部2Bの下端と合わさるとともに、そのシーラント層10が胴部2A及び胴部2Bのシーラント層6と対向するように、胴部2A及び胴部2Bの間に折り込まれている。つまり、底部3は、胴部2A側に位置する第一底部3aと胴部2B側に位置する第二底部3bとが折り畳まれた状態となっている。
【0027】
そして、紙パウチ1の内部に内容物を収容可能とするために、胴部2A及び胴部2Bが、その上端部の少なくとも一部を除き、その外縁部において互いに又は底部3とヒートシールされている。これにより、内容物を収容するための収容領域12と、収容領域12に内容物を注入するために収容領域12を開口する注入口13と、収容領域12に収容された内容物を注ぎ出すために収容領域12から延びる注出路14と、が形成されている。収容領域12に対して注出路14が延びる方向は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、縦方向D1及び横方向D2に対して傾斜した方向となっている。
【0028】
胴部2は、略矩形に形成されて収容領域12を形成する本体部15と、本体部15から突出して注出路14を形成する注出部16と、を有する。また、胴部2は、互いに縦方向D1に対向する上辺部15a及び底辺部15bと、互いに横方向D2に対向する第一側辺部15c及び第二側辺部15dと、を有する。上辺部15aは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の上辺に沿って横方向D2に延びる部分である。底辺部15bは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の底辺に沿って横方向D2に延びる部分である。第一側辺部15cは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の一方の側辺に沿って縦方向D1に延びる部分である。第二側辺部15dは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の他方の側辺に沿って縦方向D1に延びる部分である。
【0029】
注出部16は、胴部2の上辺部15aと第一側辺部15cとの間の隅部15eに位置している。隅部は、角部ともいう。注出部16は、例えば、隅部15eにおいて上辺部15a及び第一側辺部15cを切り欠くことにより形成することができる。つまり、上辺部15aの横方向D2における第一側辺部15c側の端部に第一切欠き18を形成するとともに、第一側辺部15cの縦方向D1における上辺部15a側の端部に第二切欠き19を形成することで、注出部16を形成することができる。
【0030】
胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分、及び胴部2A及び胴部2Bと底部3とがヒートシールされている部分を、シール部20という。シール部20は、第一サイドシール部21と、注出シール部22と、第二サイドシール部23と、底シール部24と、を有する。
【0031】
第一サイドシール部21は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。第一サイドシール部21は、第一側辺部15cに沿って縦方向D1に延びている。
【0032】
注出シール部22は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。注出シール部22は、第一サイドシール部21の上端部に接続されて、注出部16の外縁部を成しており、注出路14を囲んで注出路14を画成している。注出路14は、注出シール部22に挟まれて胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていない部分である。このため、注出シール部22により、胴部2Aと胴部2Bとの間に注出路14が画成される。
【0033】
第二サイドシール部23は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。第二サイドシール部23は、第二側辺部15dに沿って縦方向D1に延びている。
【0034】
底シール部24は、胴部2A及び胴部2Bと底部3とがヒートされている部分である。つまり、底シール部24は、胴部2Aと第一底部3aとがヒートシールされている部分、及び胴部2Bと第二底部3bとがヒートされている部分である。底シール部24は、第一サイドシール部21の下端と第二サイドシール部23の下端とに接続されている。
【0035】
注出シール部22の上端と第二サイドシール部23の上端との間に位置する上辺部15aは、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていない。この上辺部15aの胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていない部分が、注入口13となる。但し、上辺部15aの一部に注入口13が形成されていれば、上辺部15aの一部において胴部2A及び胴部2Bが互いにヒートシールされていてもよい。
【0036】
また、紙パウチ1では、内容物が収容された際に安定して自立するように、第一底部3a及び第二底部3bの横方向D2における両端部が半月状に切り取られて、胴部2Aと胴部2Bとが部分的にヒートシールされている。この第一底部3a及び第二底部3bが半月状に切り取られて胴部2Aと胴部2Bとが部分的にヒートシールされている部分を、ポイントシール部25という。
【0037】
注出部16には、注出部16をハサミ等で切断するためのガイドとなる切断予定線Lが形成されている。切断予定線Lは、ハサミ等による切断を予定している直線状の線又は仮想線である。切断予定線Lは、注出路14が延びる方向と交差する方向に延びて注出路14を横切っている。切断予定線Lは、如何なる形態で注出部16に形成されていてもよい。
【0038】
例えば、
図1に示すように、切断予定線Lは、注出部16に印刷された実線、破線等の線であってもよく、微細なエンボス等により脆性化(脆化処理)された線であってもよい。
【0039】
また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、切断予定線Lは、注出部16に印刷された複数のマークを通る仮想線であってもよい。
図3(a)及び
図3(b)は、注出部の他の例を示す正面図である。
図3(a)に示す切断予定線Lは、注出部16に印刷された2つの三角マークC1を通る仮想線であり、
図3(b)に示す切断予定線Lは、注出部16に印刷された2つのハサミマークC2を通る仮想線である。
【0040】
また、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、切断予定線Lは、注出部16に形成された複数の切欠き又は切込みを通る仮想線であってもよい。
図4(a)及び
図4(b)は、注出部の他の例を示す正面図である。
図4(a)に示す切断予定線Lは、注出部16の注出シール部22に形成された2つの切欠きC3を通る仮想線である。
図4(b)に示す切断予定線Lは、注出部16の注出シール部22に形成された2つの切込みC4を通る仮想線である。
【0041】
また、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、切断予定線Lは、注出部16に印刷された1つのマークを通り、この1つのマークが示す方向に延びる仮想線であってもよい。
図5(a)及び
図5(b)は、注出部の他の例を示す正面図である。
図5(a)に示す切断予定線Lは、注出部16に印刷された1つの三角マークC5を通り、この三角マークC5の示す方向に延びる仮想線である。三角マークC5の示す方向は、例えば、三角の一つの頂点が向く方向である。
図5(b)に示す切断予定線Lは、注出部16に印刷された1つのハサミマークC6を通り、このハサミマークC6の示す方向に延びる仮想線である。ハサミマークC6の示す方向は、例えば、ハサミを切り進んでいく方向である。
【0042】
また、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、切断予定線Lは、注出部16に印刷された1つの切欠き又は切込みを通り、この1つの切欠き又は切込みが示す方向に延びる仮想線であってもよい。
図6(a)及び
図6(b)は、注出部の他の例を示す正面図である。
図6(a)に示す切断予定線Lは、注出部16の注出シール部22に形成された1つの三角状の切欠きC7を通り、この三角状の切欠きC7の示す方向に延びる仮想線である。三角状の切欠きC7の示す方向は、例えば、三角状の切欠きC7の先端(頂点)が向く方向である。
図6(b)に示す切断予定線Lは、注出部16の注出シール部22に形成された1つの線状の切込みC8を通り、この線状の切込みC8の示す方向に延びる仮想線である。線状の切込みC8の示す方向は、例えば、線状の切込みC8が延びる方向であるである。
【0043】
図1に示すように、横方向D2における紙パウチ1の幅Wは、特に限定されるものではないが、例えば、110mm以下、100mm以下、又は90mm以下となっている。また、縦方向D1における紙パウチ1の高さHは、特に限定されるものではないが、例えば、160mm以下、150mm以下、又は140mm以下となっている。また、胴部2Aと胴部2Bとの間に折り込まれている底部3の縦方向D1における往復長さRLは、特に限定されるものではないが、例えば、70mm以下、60mm以下、又は50mm以下となっている。
【0044】
図7は、
図1に示す紙パウチの注出部を拡大した正面図である。
図1及び
図7に示すように、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dは、特に限定されるものではないが、例えば、紙パウチ1を容易に製造するとともに、注出部16からの内容物の注ぎ性を向上する観点から、好ましくは8mm以上、より好ましくは9mm以上、さらに好ましくは10mm以上となっている。一方、詰替口の細い容器にも注ぎやすくするとともに、注出部16からの内容物の注ぎ性を向上する観点から、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dは、好ましくは14mm以下、より好ましくは13mm以下、さらに好ましくは12mm以下となっている。これらの観点から、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dは、好ましくはは8mm以上14mm以下、より好ましくは9mm以上13mm以下、さらに好ましくは10mm以上12mm以下となっている。
【0045】
ここで、注出シール部22と注出路14との境界線L1と切断予定線Lとが交差する第一交差点P1及び第二交差点P2のそれぞれにおける、境界線L1の本体部15側の第一接線L21及び第二接線L22の成す角度を、角度θとする。詳しく説明すると、注出シール部22と注出路14との境界線を、境界線L1とする。境界線L1と切断予定線Lとが交差する一対の交差点を、第一交差点P1及び第二交差点P2とする。境界線L1のうちの第一交差点P1から本体部15側に延びる部分を、第一境界線L11とする。境界線L1のうちの第二交差点P2から本体部15側に延びる部分を、第二境界線L12とする。第一交差点P1における第一境界線L11の接線を、第一接線L21とする。第二交差点P2における第二境界線L12の接線を、第二接線L22とする。第一接線L21と第二接線L22とのなす角度を、角度θとする。
【0046】
角度θは、特に限定されるものではないが、注出部を切断予定線で切断して逆立てた際に、内容物の自重により注出部が開くのを抑制する観点から、好ましくは60°以下、より好ましくは55°以下、さらに好ましくは45°以下である。一方、切断した注出部を指で押し込んだ際に注出部16を開きやすくする観点から、角度θは、好ましくは20°以上、より好ましくは30°以上、さらに好ましくは35°以上である。これらの観点から、角度θは、好ましくは20°以上60°以下、より好ましくは30°以上55°以下、さらに好ましくは35°以上45°以下である。
【0047】
境界線L1は、第一交差点P1及び第二交差点P2を凹状に湾曲しながら通る線であってもよく、第一交差点P1及び第二交差点P2を凸状に湾曲しながら通る線であってもよく、第一交差点P1及び第二交差点P2を直線状に通る線であってもよく、第一交差点P1及び第二交差点P2を屈曲して通る線であってもよい。
図1及び
図7に示す境界線L1は、第一交差点P1を凸状に湾曲しながら通るとともに第二交差点P2を凹状に湾曲しながら通る線である。
図8及び
図9は、注出部の例を示す正面図である。
図8に示す境界線L1は、第一交差点P1及び第二交差点P2を凹状に湾曲しながら通る線である。
図9に示す境界線L1は、第一交差点P1及び第二交差点P2を屈曲して通る線である。
【0048】
図1に示すように、注出路14を横切る切断予定線Lと平行な方向における胴部2のループスティフネス値をFとし、切断予定線Lにおける注出路14の幅をDとした場合、紙パウチ1は、次の式(1)の関係を満たしている。
F/D
2≧4.0 …(1)
【0049】
すなわち、紙パウチ1は、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dの二乗に対する、切断予定線Lと平行な方向における胴部2のループスティフネス値Fの割合が、4.0以上となっている。この場合、紙パウチ1は、F/D2≧4.8の関係を満たしてもよく、F/D2≧5.0の関係を満たしていてもよい。
【0050】
ループスティフネス値Fは、胴部2の腰強度を示す指標の一つであり、次のように定義される。まず、胴部2から、切断予定線Lと平行な方向に延びるサンプル片Sを切り出す。サンプル片Sは、切断予定線Lと平行な方向の長辺の長さを100mmとし、切断予定線Lと直交する方向の短辺の長さを15mmとする。サンプル片Sの切り出し位置は、シール部20以外の任意の位置とすることができる。次に、このサンプル片Sを中央部から曲げて両端部をクリップで固定し、ループ長が60mmの円形ループを作製する。次に、ループスティフネス測定器(例えば、東洋精機製作所製、商品名:No.581ループステフネステスタ(登録商標) LOOP STIFFNESS TESTER DA型)を用いて、作製した円形ループを、その頂部(クリップと反対側)から圧縮時間1s、圧縮距離10mmの条件で押し込んだ場合の荷重を測定する。この測定結果である荷重をループスティフネス値Fとする。胴部2から複数のサンプル片Sを切り出した場合は、この複数のサンプル片Sの計測結果である荷重の平均値を、ループスティフネス値Fとする。胴部2から複数のサンプル片Sを切り出す場合、胴部2から切り出すサンプル片Sの数は、特に限定されるものではないが、例えば、6とすることができる。
【0051】
[内容物入り紙パウチ]
図10は、実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す正面図である。
図11は、実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す斜視図である。
図10及び
図11に示す内容物入り紙パウチ101は、上述した紙パウチ1に内容物102を収容したものである。
図10及び
図11に示すように、内容物入り紙パウチ101は、紙パウチ1と、紙パウチ1の収容領域12に収容された内容物102と、を備える。
【0052】
内容物102は、特に限定されるものではないが、液体であることが好ましい。内容物102としては、例えば、液体洗剤、洗浄剤、薬品、化粧品、シャンプー、リンス等の日用品、液体調味料、スープ、ヨーグルト、清涼飲料、食用油等の食品、及び潤滑油、工業用油等の工業製品が挙げられる。
【0053】
内容物102の粘度は、特に限定されるものではないが、注出部16を切断して逆立てた際に胴部2Aと胴部2Bとの狭い隙間から内容物102が漏れ出すのを抑制する観点から、内容物102の粘度は、好ましくは100mP・s(30℃)以上、より好ましくは200mP・s(30℃)以上である。一方、注出部16から内容物102を注ぎ出しやすくする観点から、内容物102の粘度は、好ましくは2000mP・s(30℃)以下、より好ましくは1500mP・s(30℃)以下である。これらの観点から、内容物102の粘度は、好ましくは100mP・s(30℃)以上2000mP・s(30℃)以下、より好ましくは200mP・s(30℃)以上1500mP・s(30℃)以下である。粘度は、例えば、粘度計(BROOKFIELD社製、商品名:LVDV-II+P又はHADV-II+P)を用いて、30℃の環境下で測定した値である。
【0054】
収容領域12に収容されている内容物102の重量は、特に限定されるものではないが、注出部16の近傍を両手で持って内容物入り紙パウチ101を逆立てやすくするとともに、内容物入り紙パウチ101を逆立てした際に内容物102が自重で注出部16から漏れ出すのを抑制する観点から、好ましくは80g以下、より好ましくは75g以下、さらに好ましくは70g以下である。一方、注出部16から内容物が注ぎ出されやすくする観点から、収容領域12に収容されている内容物102の重量は、好ましくは30g以上、より好ましくは40g以上、さらに好ましくは50g以上である。これらの観点から、収容領域12に収容されている内容物102の重量は、好ましくは30g以上80g以下、より好ましくは40g以上75g以下、さらに好ましくは50g以上70g以下である。
【0055】
内容物入り紙パウチ101では、紙パウチ1は、収容領域12に内容物102が収容された状態で、注入口13(
図1参照)が封止されている。つまり、注入口13において胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていることで、上辺部15aに沿って横方向D2に延びる上シール部103が形成されている。上シール部103は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。これにより、内容物102が紙パウチ1に密封された状態となっている。
【0056】
このように構成される内容物入り紙パウチ101では、紙パウチ1の収容領域12に収容された内容物102が胴部2A、胴部2B、及び底部3を開き、胴部2A及び胴部2Bの底辺部15bが円弧状に広がることで、自立可能な状態となる。
【0057】
[内容物の詰替手順]
内容物入り紙パウチ101を用いて詰め替え用ボトル等の容器(不図示)に内容物102を詰め替える場合は、まず、ハサミ等で切断予定線Lに沿って注出部16を切断する。次に、注出部16の近傍を両手で持って内容物入り紙パウチ101を逆立てる。内容物入り紙パウチ101を逆立てるとは、切断された注出部16が下方を向くように、内容物入り紙パウチ101を上下方向に逆さにすることをいう。そして、注出部16を容器の詰替口に合わせ、注出部16を指で押し込むことにより注出部16を開く。これにより、注出部16に注ぎ口が開かれて注出部16から内容物102が注ぎ出され、内容物102が容器に注入される。その後、紙パウチ1内の内容物102のほぼ全てが容器に注入されると、内容物102の詰め替えが終了する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る紙パウチ1では、切断予定線Lと平行な方向における胴部2のループスティフネス値Fと、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dとが、F/D2≧4.0の関係を満たす。このため、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断予定線Lで切断して逆立てた際に、内容物102の自重により注出部16が開いて内容物102が漏れ出すのを抑制することができる。
【0059】
また、この紙パウチ1では、紙基材層4の坪量が60g/m2以上であることで、紙基材層4の腰が強められている。これにより、F/D2≧4.0の関係を満たしやすくなる。一方、紙基材層4の坪量が120g/m2以下であることで、紙基材層4の腰が過度に強くなるのが抑制されている。これにより、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、切断した注出部16を指で押し込んだ際に、注出部16を容易に開くことができる。
【0060】
また、この紙パウチ1では、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dが8mm以上であることで、紙パウチ1を容易に製造することができるとともに、注出部16からの内容物の注ぎ性を向上することができる。一方、切断予定線Lにおける注出路14の幅Dが14mm以下であることで、詰替口の細い容器にも容易に注ぐことができるとともに、注出部16からの内容物の注ぎ性を向上することができる。
【0061】
また、この紙パウチ1では、幅Wが110mm以下、高さHが150mm以下、底部3の往復長さRLが60mm以下であることで、内容物の収容量及び重量が過度に大きくなるのを抑制することができる。これにより、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断した後に、注出部16の近傍を両手で持って内容物入り紙パウチ101を逆立てやすくなるとともに、内容物入り紙パウチ101を逆立てた際に内容物102が自重で注出部16から漏れ出すのを抑制することができる。
【0062】
また、この紙パウチ1では、注出シール部22と注出路14との境界線L1と切断予定線Lとが交差する第一交差点P1及び第二交差点P2のそれぞれにおける境界線L1の本体部15側の第一接線L21及び第二接線L22の成す角度θが20°以上60°以下である。そして、角度θが60°以下であることで、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断予定線Lで切断して逆立てた際に、内容物102の自重により注出部16が開くのを抑制することができるとともに、注出部16からの内容物102の注ぎ性を向上することができる。一方、角度θが20°以上であることで、切断した注出部16を指で押し込んだ際に、注出部16を容易に開くことができる。
【0063】
本実施形態に係る内容物入り紙パウチ101では、上述した紙パウチ1を備えるため、注出部16を切断して逆立てた際に内容物102が漏れ出すのを抑制することができる。
【0064】
また、この内容物入り紙パウチ101では、内容物102が80g以下であることで、注出部16の近傍を両手で持って内容物入り紙パウチ101を逆立てやすくなるとともに、注出部16を切断して内容物入り紙パウチ101を逆立てした際に内容物102が自重で注出部16から漏れ出すのを抑制することができる。
【0065】
また、この内容物入り紙パウチ101では、内容物102の粘度が100mP・s(30℃)以上であることで、注出部16を切断して逆立てた際に、注出部16を形成する胴部2Aと胴部2Bとの狭い隙間から内容物102が漏れ出すのを抑制することができる。一方、内容物102の粘度が2000mP・s(30℃)以下であることで、注出部から内容物102を容易に注ぎ出すことができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0067】
例えば、上記実施形態では、一対の胴部のそれぞれ及び底部は、バリア層を有する積層シートにより形成されるものとして説明したが、紙パウチにバリア性が求められない場合は、バリア層を有しない積層シートにより形成されていてもよい。また、上記実施形態では、底部は、紙基材層を有しない積層シートにより形成されているものとして説明したが、紙基材層を有する積層シートにより形成されていてもよい。また、これらの積層シートは、他の層を有していてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、注出部及び注出路が、縦方向D1及び横方向D2に対して傾斜した方向に延びるものとして説明したが、注出部及び注出路が延びる向きは、特に限定されるものではなく、縦方向D1に延びていてもよく、横方向D2に延びていてもよい。
図12は、変形例の紙パウチを示す正面図である。
図12に示す紙パウチ1Aでは、注出部16A及び注出路14Aが、縦方向D1における上方に延びている。そして、注出路14Aを横切る切断予定線Lが、横方向D2に延びている。このため、紙パウチ1Aのループスティフネス値Fを計測する際は、胴部2から、切断予定線Lと平行な方向である横方向D2に延びるサンプル片Sを切り出す。
【0069】
また、
図13に示す紙パウチ1Bのように、一対の胴部には、エンボス線が形成されていてもよい。
図13は、変形例の紙パウチを示す正面図である。
図13に示す紙パウチ1Bは、胴部2に、注出部16から本体部15まで延びるエンボス線17が形成されている。エンボス線17は、胴部2をエンボス加工することにより胴部2に形成された線である。このように、胴部2が注出部16から本体部15まで延びるエンボス線17を有することで、切断された注出部16を指で押し込んだ際に、注出部16が開きやすくなる。また、開いた注出部16が開いた状態で保持されやすくなるため、容易に内容物102を注ぎ出すことができる。
【実施例0070】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
(サンプル1~4)
坪量が100g/m2の未晒しの紙基材と、厚みが12μmのアルミ蒸着バリアフィルム(VM-PET、東レフィルム加工株式会社製)と、厚みが60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、タマポリ株式会社製)と、を積層し、これらを有機溶剤型エステル系接着剤(LX500,DICグラフィックス株式会社製)により接着することで、三層構造の胴部用積層フィルムを得た。また、厚みが15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ボニールRX,興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)と、厚みが60μmの低密度ポリエチレンフィルム(SE602F,タマポリ株式会社製)と、を積層し、これらを有機溶剤型エステル系接着剤(LX500,DICグラフィックス株式会社製)により接着することで、二層構造の底部用積層フィルムを得た。
【0072】
次に、2枚の胴部用積層シートを、それぞれの低密度ポリエチレンフィルムが対向するように互いに重ね合わせるとともに、底部用積層シートを、その低密度ポリエチレンフィルムが2枚の胴部用積層シートのそれぞれの低密度ポリエチレンフィルムと対向するように、2枚の胴部用積層シートの間に折り込んだ。次に、2枚の胴部用積層シートと底部用積層シートとをヒートシールして底シール部を形成し、その後、底シール部を冷却した。次に、2枚の胴部用積層シートの間で折り畳まれている底部用積層シートを互いにヒートシールしてスポットシール部を形成し、2枚の胴部用積層シートを互いにヒートシールすることで、第一サイドシール部、注出シール部、及び第二サイドシール部を形成し、その後、スポットシール部、第一サイドシール部、注出シール部、及び第二サイドシール部を冷却した。そして、得られた中間体を、トムソン刃を用いて紙パウチの外形に沿って打抜くことで、サンプル1~4の紙パウチをそれぞれ8個製造した。
【0073】
各サンプルの紙パウチは、横方向の幅を110mmとし、縦方向の高さを150mmとし、2枚の胴部に折り込まれている底部の往復長さを60mmとした。そして、サンプル1の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを14mmとし、サンプル2の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを12mmとし、サンプル3の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを10mmとし、サンプル4の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを8mmとした。
【0074】
その後、製造された各サンプルの6個の紙パウチの胴部から、切断予定線と平行に延びるサンプル片をそれぞれ切り出し、切り出したサンプル片のループスティフネス値Fを計測した。サンプル片は、切断予定線と平行な方向の長辺の長さを100mmとし、切断予定線と直交する方向の短辺の長さを15mmとした。ループスティフネス値Fの計測では、切り出したサンプル片を中央部から曲げて両端部をクリップで固定し、ループ長が60mmの円形ループを作製した。次に、ループスティフネス測定器(東洋精機製作所製、商品名:No.581ループステフネステスタ(登録商標) LOOP STIFFNESS TESTER DA型)を用いて、作製した円形ループを、その頂部(クリップと反対側)から圧縮時間1s、圧縮距離10mmの条件で押し込んだ場合の荷重を測定した。そして、測定した6個のサンプル片の荷重の平均値をループスティフネス値Fとした。
【0075】
また、製造された残り2個のサンプル1~4の紙パウチに、粘度630mP・s(30℃)の化粧水を内容物として注入口から収容領域に収容し、その後、注入口において一対の胴部を互いにヒートシールして内容物を密封することで、サンプル1~4の内容物入り紙パウチをそれぞれ2個製造した。1個目の各サンプルの内容物入り紙パウチは、収容領域に収容した内容物の内容量を60gとし、2個目の各サンプルの内容物入り紙パウチは、収容領域に収容した内容物の内容量を150gとした。
【0076】
その後、製造した各サンプルの内容物入り紙パウチについて、ハサミで切断予定線に沿って注出部を切断し、注出部の近傍を指で持って各サンプルの内容物入り紙パウチを逆立てた。そして、注出部からの内容物の漏れ出しを目視により評価した。評価1では、注出部から内容物が漏れ出さなかった場合をAとし、注出部から内容物が漏れ出した場合をBとした。また、評価2では、内容物の内容量が60g及び150gの双方の場合において注出部から内容物が漏れ出さなかった場合を2点とし、内容物の内容量が60gの場合にのみ注出部から内容物が漏れ出さなかった場合を1点とした。評価結果を
図14及び
図15に示す。
図14は、評価結果を示す表である。
図15は、F/D
2と評価2との関係を示すグラフである。
【0077】
(サンプル5~8)
晒の紙基材を用いたことを除き、サンプル1~4と同じ条件でサンプル5~8の紙パウチ及び内容物入り紙パウチを作製した。すなわち、サンプル5の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを14mmとし、サンプル6の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを12mmとし、サンプル7の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを10mmとし、サンプル8の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを8mmとした。また、各サンプルの内容物入り紙パウチにおいて、収容領域に収容した内容物の内容量を60g及び150gの二種類とした。そして、サンプル1~4と同じ評価を行った。評価結果を
図14及び
図15に示す。
【0078】
(サンプル9~12)
坪量が80g/m
2の晒の紙基材と、厚みが12μmのアルミ蒸着バリアフィルム(VM-PET、東レフィルム加工株式会社製)と、厚みが40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、タマポリ株式会社製)と、を積層し、これらを有機溶剤型エステル系接着剤(LX500,DICグラフィックス株式会社製)により接着することで、三層構造の胴部用積層フィルムを得た。その他は、サンプル1~4と同じ条件でサンプル9~12の紙パウチ及び内容物入り紙パウチを作製した。すなわち、サンプル9の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを14mmとし、サンプル10の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを12mmとし、サンプル11の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを10mmとし、サンプル12の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを8mmとした。また、各サンプルの内容物入り紙パウチにおいて、収容領域に収容した内容物の内容量を60g及び150gの二種類とした。そして、サンプル1~4と同じ評価を行った。評価結果を
図14及び
図15に示す。
【0079】
(サンプル13~16)
坪量が60g/m
2の晒の紙基材と、厚みが12μmのアルミ蒸着バリアフィルム(VM-PET、東レフィルム加工株式会社製)と、厚みが80μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、タマポリ株式会社製)と、を積層し、これらを有機溶剤型エステル系接着剤(LX500,DICグラフィックス株式会社製)により接着することで、三層構造の胴部用積層フィルムを得た。その他は、サンプル1~4と同じ条件でサンプル13~16の紙パウチ及び内容物入り紙パウチを作製した。すなわち、サンプル13の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを14mmとし、サンプル14の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを12mmとし、サンプル15の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを10mmとし、サンプル16の紙パウチは、切断予定線における注入路の幅Dを8mmとした。また、各サンプルの内容物入り紙パウチにおいて、収容領域に収容した内容物の内容量を60g及び150gの二種類とした。そして、サンプル1~4と同じ評価を行った。評価結果を
図14及び
図15に示す。
【0080】
(評価)
図14及び
図15に示すように、F/D
2が4.0未満となるサンプル1,4,7~9,11~13では、内容物の内容量が60g及び150gの双方の場合において注出部から内容物が漏れ出したが、F/D
2が4.0以上となるサンプル2~4,6~8,12,16では、内容物の内容量が60g及び150gの双方の場合において注出部から内容物が漏れ出さなかった。この結果から、F/D
2が4.0以上であることで、内容物入り紙パウチの注出部を切断予定線に沿って切断し、注出部の近傍を指で持って内容物入り紙パウチを逆立てた際に、注出部から内容物が漏れ出すのが抑制されるものと推察される。
1…紙パウチ、1A…紙パウチ、1B…紙パウチ、2…胴部(一対の胴部)、2A…胴部、2B…胴部、3…底部、3a…第一底部、3b…第二底部、4…紙基材層、5…バリア層、6…シーラント層、7…積層シート、8…基材層、9…バリア層、10…シーラント層、11…積層シート、12…収容領域、13…注入口、14…注出路、14A…注出路、15…本体部、15a…上辺部、15b…底辺部、15c…第一側辺部、15d…第二側辺部、15e…隅部、16…注出部、16A…注出部、17…エンボス線、18…第一切欠き、19…第二切欠き、20…シール部、21…第一サイドシール部、22…注出シール部、23…第二サイドシール部、24…底シール部、25…ポイントシール部、101…内容物入り紙パウチ、102…内容物、103…上シール部、C1…三角マーク、C2…ハサミマーク、C3…切欠き、C4…切込み、C5…三角マーク、C6…ハサミマーク、C7…切欠き、C8…切込み、D…切断予定線における注出路の幅、D1…縦方向、D2…横方向、L…切断予定線、L1…境界線、L11…第一境界線、L12…第二境界線、L21…第一接線、L22…第二接線、P1…第一交差点、P2…第二交差点、S…サンプル片。