(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075350
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】コネクタ付きケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20240527BHJP
G06F 3/00 20060101ALI20240527BHJP
G02B 6/43 20060101ALI20240527BHJP
H01B 11/22 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G02B6/44 386
G06F3/00 E
G02B6/43
G06F3/00 V
H01B11/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186740
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207089
【氏名又は名称】大電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】林 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 充宏
(72)【発明者】
【氏名】木下 仙士
【テーマコード(参考)】
2H137
2H201
5G319
【Fターム(参考)】
2H137AB04
2H137BA06
2H137CA12A
2H137DA39
2H201BB14
2H201BB22
2H201BB41
2H201FF01
2H201FF06
2H201FF07
5G319HA08
5G319HB10
5G319HC01
5G319HE23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンパクトで低コストなコネクタ付きケーブルを提供する。
【解決手段】コネクタ付きケーブルは、光ケーブル及び電線からなる複合ケーブルから構成されるケーブルと、当該ケーブルの両端に配設されて当該光ケーブルからの光信号を電気信号に変換する光電変換部を備える光電変換コネクタと、から構成されるコネクタ付きケーブルであって、前記光電変換コネクタが、複合ケーブル側の一端縁に形成され、前記複合ケーブルの端部を固定するケーブル固定部と、当該ケーブル固定部に溝部として隣接して形成され、前記複合ケーブルの光ケーブルと電線とを分岐する分岐部と、前記光ケーブルを固定する固定ブロック部と、当該分岐部と前記光電変換部との間に凹溝状の嵌合部として形成され、前記固定ブロック部を収納固定する光ケーブル位置決め部と、前記コネクタ筐体の他端縁側に形成され、光電変換部により変換された電気信号を接続する接続端子部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブル及び電線からなる複合ケーブルから構成されるケーブルと、当該ケーブルの両端に配設されて当該光ケーブルからの光信号を電気信号に変換する光電変換部を備える光電変換コネクタと、から構成されるコネクタ付きケーブルであって、
前記光電変換コネクタが、
当該光電変換コネクタのコネクタ筐体における複合ケーブル側の一端縁に形成され、前記複合ケーブルの端部を固定するケーブル固定部と、
当該ケーブル固定部に溝部として隣接して形成され、前記複合ケーブルの光ケーブルと電線とを分岐する分岐部と、
当該分岐部により分岐された前記光ケーブルを固定する固定ブロック部と、
当該分岐部と前記光電変換部との間に凹溝状の嵌合部として形成され、前記固定ブロック部を収納固定する光ケーブル位置決め部と、
前記コネクタ筐体の他端縁側に形成され、光電変換部により変換された電気信号を電気的に接続する接続端子部と、を備えることを
特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記接続端子部から前記光電変換部に電力を供給する電力供給部を備え、
前記光電変換コネクタが、前記接続端子部または電線から電力を供給されることを
特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項3】
請求項1に記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記固定ブロック部が、前記光電変換部の光電変換素子の配置位置に対応して光ケーブルを固定し、
前記光ケーブル位置決め部が、前記固定ブロック部の外形寸法に適合した形態で形成されることを
特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項4】
請求項1に記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記分岐部で分岐された電線が、前記光電変換部を迂回して他端縁の接続端子部に接続されることを
特徴とするコネクタ付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端部にコネクタが付属するコネクタ付きケーブルに関し、特に、コンパクトで低コストなコネクタ付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボット産業の進展に伴い、産業用ロボットに利用できるケーブルの需要は高まっている。
【0003】
産業用ロボット(マニピュレータ)は、関節部にモータが入っており、モータ、アンプ、コントローラから構成される各部の組み合わせにより、関節部を介して伸長や屈曲の動作を実現している。例えば、アンプとモータ間を接続するケーブル(エンコーダケーブル)として専用の電線(メタル)による電気通信が行われ、産業用ロボットが可動する。
【0004】
しかし、電線を用いた電気通信では、通信中に外部から受けるノイズに弱いという欠点がある。この点において、光ケーブルであれば、通信中におけるノイズに比較的強い。
【0005】
ここで、光ケーブルを用いた通信を行えると同時に、従来の電線と同じフォーマットで電気通信を行えるという、アクティブ光ケーブル(AOC: Active Optical Cables)が知られている。
【0006】
アクティブ光ケーブル(AOC)は、光ケーブルとコネクタを一体型構造としたコネクタ付きケーブルとして市販されている。コネクタに光電気変換部が配設されることによって、光信号により通信できると共にコネクタの両端で電気信号に変換され、従来の電気ケーブルと同様な取り扱いができるという利点がある。一般に、光ケーブルとコネクタの固定には、接着剤が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このようなコネクタ付きケーブルは、差動信号を用いて半二重通信可能なRS485規格に対応可能であることから、産業用ロボットをはじめとした産業用機器間用通信としてのニーズが高く、様々な改良品が開発されている。
【0008】
従来のコネクタ付きケーブルとしては、配線の容易化を図るものがあり、例えば、筒状の保持部材と、前記保持部材の一端側に形成された収容部に収容されるレンズと、前記保持部材の他端側に保持される光ケーブルとを有する第1の光結合部材を備えた光ケーブルに着脱可能に接続される光コネクタであって、前記第1の光結合部材と同一の構成を有する第2の光結合部材と、前記第2の光結合部材を位置決めすると共に、前記光コネクタの接続動作に伴って前記第1の光結合部材を前記第2の光結合部材の所定位置に案内して位置決めする位置決め部と、前記第2の光結合部材に接続され、光信号又は電気信号を電気信号又は光信号に変換する光電気変換部と、前記光電気変換部に接続され、電気信号の入出力を行う入出力部と、を有するものが知られている(特許文献2参照)。
【0009】
また、従来のコネクタ付きケーブルとしては、コネクタの小型化を図るものもあり、例えば、前面と背面を少なくとも有する一体形成されたプラスチック光ポートであって、前記前面には、光ケーブルケーブルの端部を受けるための開口が形成されている、プラスチック光ポートと、複数の導電性リード線であって、各リード線が、前記プラスチック光ポートに封入された近位端と、前記プラスチック光ポートの背面から延びる遠位端を有する、複数の導電性リード線と、前記リード線のうちの1つのリード線の近位端に固定されて、前記プラスチック光ポートに封入された少なくとも1つの光電子デバイスと、前記リード線のうちの1つのリード線の近位端に固定されて、前記プラスチック光ポートに封入された少なくとも1つの集積回路(IC)チップと、少なくとも第1及び第2の導電性ボンドワイヤであって、該第1のボンドワイヤは、前記光電子デバイスと前記ICチップを相互接続し、該第2のボンドワイヤは、前記光電子デバイスと前記ICチップの少なくとも一方と1つ以上の前記リード線とを相互接続し、前記第1及び第2のボンドワイヤは前記プラスチック光ポートに封入される、少なくとも第1及び第2の導電性ボンドワイヤを備えるコネクタを用いたコネクタ付きケーブルが知られている(例えば、特許文献3)。
【0010】
また、従来のコネクタ付きケーブルとしては、上記と同じくコネクタの小型化を図るものがあり、例えば、一方の機器に接続される第1コネクタ付きケーブルと、他方の機器に接続される第2コネクタ付きケーブルとを有し、前記第1コネクタ付きケーブルは、光ケーブルと電線を備えた第1光電気複合ケーブルの一端部に、前記一方の機器に接続される第1接続コネクタが設けられ、他端部に、第1中継コネクタが設けられ、前記第1接続コネクタに、前記一方の機器からの電気差動信号を光信号に変換して第1光電気複合ケーブルの光ケーブルに送る第1接続側光電変換部が設けられ、前記第1中継コネクタに、前記第1光電気複合ケーブルからの光信号を電気的なシングルエンド信号に変換する第1中継側光電変換部が設けられ、前記第2コネクタ付きケーブルは、光ケーブルと電線を備えた第2光電気複合ケーブルの一端部に、前記第1中継コネクタに電気的に接続可能な第2中継コネクタが設けられ、他端部に、前記他方の機器に接続される第2接続コネクタが設けられ、前記第2中継コネクタに、前記第1中継コネクタからのシングルエンド信号を光信号に変換して前記第2光電複合ケーブルの光ケーブルに送る第2中継側光電変換部が設けられ、前記第2接続コネクタに、前記第2光電複合ケーブルからの光信号を電気差動信号に変換する第2接続側光電変換部が設けられているコネクタ付きケーブルが知られている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2022-061168
【特許文献2】特開2020-071432
【特許文献3】特開2013-011890
【特許文献4】特開2011-112905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来のコネクタ付きケーブルは、上記特許文献1のように、光ケーブルをエポキシなどの樹脂や接着材などで固定するが、これには溶剤などの取扱いや作業に高度なスキルやノウハウを必要とし、また硬化や乾燥には時間がかかるため生産性を低下させる要因となっている。
【0013】
また、上記特許文献2~4のように、光電変換素子が実装された基板には、電力を供給するための外部電源が別途必要となるため、コネクタの大型化および煩雑化の要因となっている。
【0014】
本発明は、前記課題を解消するためになされたものであり、コンパクトで低コストなコネクタ付きケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願に開示するコネクタ付きケーブルは、光ケーブル及び電線からなる複合ケーブルから構成されるケーブルと、当該ケーブルの両端に配設されて当該光ケーブルからの光信号を電気信号に変換する光電変換部を備える光電変換コネクタと、から構成されるコネクタ付きケーブルであって、前記光電変換コネクタが、当該光電変換コネクタのコネクタ筐体の端縁に形成され、前記複合ケーブルの端部を固定するケーブル固定部と、当該ケーブル固定部に溝部として隣接して形成され、前記複合ケーブルの光ケーブルと電線とを分岐する分岐部と、当該分岐部により分岐された前記光ケーブルを固定する固定ブロック部と、当該分岐部と前記光電変換部との間に凹溝状の嵌合部として形成され、前記固定ブロック部を収納固定する光ケーブル位置決め部と、前記光電変換部により変換された電気信号を電気的に接続する接続端子部と、を備えるものである。
【0016】
このように、本願に開示するコネクタ付きケーブルは、前記光電変換コネクタが、当該光電変換コネクタのコネクタ筐体の端縁に形成され、前記複合ケーブルの端部を固定するケーブル固定部と、当該ケーブル固定部に溝部として隣接して形成され、前記複合ケーブルの光ケーブルと電線とを分岐する分岐部と、当該分岐部により分岐された前記光ケーブルを固定する固定ブロック部と、当該分岐部と前記光電変換部との間に凹溝状の嵌合部として形成され、前記固定ブロック部を収納固定する光ケーブル位置決め部と、前記光電変換部により変換された電気信号を電気的に接続する接続端子部と、を備えることから、前記分岐部により分岐された前記光ケーブルを固定する固定ブロック部を前記光ケーブル位置決め部に収納固定するのみによって、光ケーブルが固定されるとともに、前記光電変換部との接続の位置決めも同時になされることとなり、簡素な嵌め込みのみによって、接着剤などを使用することなく、光ケーブルの抜けを防止する十分な固定ができ、光ケーブルと光電変換部の位置合わせを容易にでき、作業の簡素化、高効率化を実現することができる。
【0017】
本願に開示するコネクタ付きケーブルは、必要に応じて、前記接続端子部から前記光電変換部に電力を供給する電力供給部を備え、前記光電変換コネクタが、前記接続端子部または電線から電力を供給されるものである。このように、本願に開示するコネクタ付きケーブルは、前記接続端子部から前記光電変換部に電力を供給する電力供給部を備え、前記光電変換コネクタが、前記接続端子部または電線から電力を供給されることから、コネクタ筐体内部で前記光電変換部の基板の駆動に必要な電源をその接続対象に関わらず確保できることとなり、外部電源(例えば、ACアダプタ)が不要となり、コネクタ付きケーブルの簡素化と低コスト化を実現できる。
【0018】
本願に開示するコネクタ付きケーブルは、必要に応じて、前記固定ブロック部が、前記光電変換部の光電変換素子の配置位置に対応して光ケーブルを固定し、前記光ケーブル位置決め部が、前記固定ブロック部の外形寸法に適合した形態で形成されるものである。このように、本願に開示するコネクタ付きケーブルは、前記固定ブロック部が、前記光電変換部の光電変換素子の配置位置に対応して光ケーブルを固定し、前記光ケーブル位置決め部が、前記固定ブロック部の外形寸法に適合した形態で形成されることから、前記固定ブロック部を前記光ケーブル位置決め部に嵌め込むというワンステップのみの手順によって、光ケーブルが固定されると共に光電変換素子への位置決めが確定されることとなり、簡素な嵌め込みのみによって、接着剤などを使用することなく、より正確かつ効率的に光ケーブルと光電変換部の位置合わせと固定が容易になされ、作業の簡素化、高効率化を実現することができる。
【0019】
本願に開示するコネクタ付きケーブルは、必要に応じて、前記分岐部で分岐された電線が、前記光電変換部を迂回して他端縁の接続端子部に接続されるものである。このように、本願に開示するコネクタ付きケーブルは、前記分岐部で分岐された電線が、前記光電変換部を迂回して他端縁の接続端子部に接続されることから、前記電線の配置を意識することなく、容易に、前記固定ブロック部を前記光ケーブル位置決め部に嵌め込むというワンステップのみの手順によって、接着剤などを使用することなく、光ケーブルが効率的に固定されることとなり、簡素な嵌め込みのみによって、作業の簡素化、高効率化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの構成図を示す。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの複合ケーブル(光メタル複合ケーブル)のケーブル構成図を示す。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの光ケーブル位置決め部による固定ブロック部の収納固定についての説明図を示す。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの光ケーブル位置決め部による固定ブロック部の収納固定についての断面図を示す。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルを接続例を表す説明図を示す。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの光電変換部を構成するFPGAの構成ブロック図の一例(アンプ側)を示す。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの光電変換部を構成するFPGAの構成ブロック図の一例(モータ側)を示す。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの構成図を示す。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る固定ブロック部の構成図を示す。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの固定方法を示す。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブルの内部を開放した状態の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブルは、
図1に示すように、光ケーブル11及び電線12からなる複合ケーブル13から構成されるケーブル1と、このケーブル1の両端に配設されてこの光ケーブル11からの光信号を電気信号に変換する光電変換部21を備える光電変換コネクタ2と、から構成されるコネクタ付きケーブルであって、この光電変換コネクタ2が、この光電変換コネクタ2のコネクタ筐体における複合ケーブル13側の一端縁(A側)に形成され、この複合ケーブル13の端部を固定するケーブル固定部22と、このケーブル固定部22に溝部として隣接して形成され、この複合ケーブル13の光ケーブル11と電線12とを分岐する分岐部23と、この分岐部23により分岐されたこの光ケーブル11を固定する固定ブロック部24と、この分岐部23とこの光電変換部21との間に凹溝状の嵌合部として形成され、この固定ブロック部24を収納固定する光ケーブル位置決め部25と、このコネクタ筐体の他端縁側(B側)に形成され、光電変換部21により変換された電気信号を電気的に接続する接続端子部26と、を備える構成である。
【0022】
また、特に必須ではないが、
図1に示すように、この接続端子部26からこの光電変換部21に電力を供給する電力供給部27を備え、この光電変換コネクタ2が、この接続端子部26または電線12から電力を供給されることが好適である。例えば、この光電変換コネクタ2が、産業用ロボットのアンプ側に接続されるような場合には、この光電変換コネクタはアンプに接続した接続端子部26から電力が供給されることが可能である。また、例えば、この光電変換コネクタ2が、産業用ロボットのモータ側に接続されるような場合には、この光電変換コネクタはこの電線12から電力が供給されることが可能である。これにより、コネクタ筐体内部でこの光電変換部21の基板の駆動に必要な電源を確保できることとなり、外部電源(例えば、ACアダプタ)が不要となり、コネクタ付きケーブルの簡素化と低コスト化を実現できる。
【0023】
この光ケーブル11としては、特に限定されないが、プラスチック光ケーブル11(POF;Plastic Optical Fiber)を用いることが好適である。プラスチック光ケーブル11(POF)は、コア部とクラッド部の素材にプラスチックを用いた光ケーブル11であり、プラスチックを用いることによって柔軟性に優れると共に、ガラスファイバを用いる場合よりも低コストに製造できる。
【0024】
従来の対撚線の電線12(メタル)で差動通信を行う場合に比べて、光ケーブル11を使用することで耐ノイズ性向上や広帯域化、シールドが不要となる。また、シールドをなくすことができるため細径化・軽量化も可能となる。通信線として電線12(メタル)を使用しないため、従来行っていた通信線のインピーダンスコントロールが不要となる。
【0025】
この電線12は、特に限定されないが、銅製の撚線を用いることができる。
【0026】
光ケーブル11及び電線12からなる複合ケーブル13(光メタル複合ケーブル13)のケーブル構成は、特に限定されないが、例えば、
図2に示すように、介在16の中に保持される4心の電線12(メタル)と、2心の光ケーブル11からなる6心を、押えテープ15を介してシース14で被覆されたものを使用することができる。4心の電線12(メタル)の各用途としては、電源用、グランド用、及びバッテリー電源・位置記憶用の各電線12を用いることができる。この4心の電線12は、特に限定されないが、例えば、電源用とグランド用の2本の電線を用いて光電変換部21に電力を供給すると共に、バッテリー電源・位置記憶用の電線を2本用いる構成とすることができる。この他にも、光ケーブル11と電線12が含まれていれば、特にその配線構成や配線数は限定されない。
【0027】
この光電変換コネクタ2は、このケーブル1の両端に配置されるコネクタであり、光電変換部21を備える。この光電変換部21は、基板端子を有し、この光ケーブル11を伝搬する光信号を光電変換素子21aにより電気信号に変換する。この光電変換素子21aは、市販品を使用することができる。
【0028】
この接続端子部26は、光ケーブル11を介して光信号として通信するための電気信号を入出力するシリアルインタフェースの通信用端子部26aと、例えば産業用ロボットのアンプ等からの電力供給や電線12側の電力供給に用いる電線を接続する電源用端子部26bと、を備える。
【0029】
上述の電力供給部27は、この複合ケーブル13を構成する電線12から接続された接続端子部26の電源用端子部26bから、この光電変換部21の基板端子に電力を供給することで構成することができる。
【0030】
このケーブル固定部22は、この光電変換コネクタ2のコネクタ筐体における複合ケーブル13側の一端縁(A側)に形成され、複合ケーブル13を固定する形状として、例えばケーブルの外周に沿った円筒形状を有する。
【0031】
この分岐部23は、溝形状により形成された空間によって、この複合ケーブル13のシース14内に収容された光ケーブル11と電線12とを取り出して分離した状態を安定的に維持して固定できる。この分岐部23は、このケーブル固定部22に隣接することで、この光ケーブル11と電線12とを分離したケーブル固定に関してやや不安定な状態を安定化することができる。
【0032】
この固定ブロック部24は、この分岐部23により分岐されたケーブルのうち、この光ケーブル11を固定する。この固定により、この光ケーブル11と光電変換部21との接続を容易化し、安定化することができる。
【0033】
この光ケーブル位置決め部25は、この分岐部23とこの光電変換素子21aとの間に凹溝状の嵌合部として形成され、この固定ブロック部24を収納固定する。
【0034】
この固定ブロック部24は、その形状は特に限定されないが、例えば、
図3(a)に示すように、この光電変換部21の光電変換素子21aの配置位置に対応して光ケーブル11を固定し、この光ケーブル位置決め部25が、この固定ブロック部24の外形寸法に適合した形態で形成されることが好適である。
【0035】
この固定ブロック部24の外形寸法とは、この固定ブロック部24の外観形状を構成するサイズを表す。例えば、外観形状が直方体形状であれば、その縦、横、高さの各サイズが該当する。この固定ブロック部24の外形寸法に適合するとは、この固定ブロック部24の形状とほぼ一致するサイズ・形状であることを表す。
【0036】
この光ケーブル位置決め部25が、この固定ブロック部24の外形寸法に適合した形態で形成されることによって、
図3(b)に示すように、この固定ブロック部24がこの光ケーブル位置決め部25の凹溝状の嵌合部で形成される空間内に収容されることで、光ケーブル11の端部が光電変換素子21aに接する位置でしっかりと固定される。
【0037】
すなわち、この固定ブロック部24は、
図4(a)に示すように、光ケーブル11を側面から長さbの位置で、かつ光ケーブル11間隔cで保持する形状を有することができ、この固定ブロック部24が、断面図の幅dで示されるこの光ケーブル位置決め部25の空間内に収容されて固定されると同時に、光ケーブル11の端部が光電変換素子21aの中心位置にある高さaの位置に確実に接した状態でしっかりと固定される。
【0038】
図4に示す光電変換コネクタ2の下半分(底部)に相当するコネクタ下部2bに対して、光電変換コネクタ2の上半分(天井部)に相当するコネクタ上部2aを嵌合して一体化することで、簡易にコネクタ付きケーブルが完成する。
【0039】
このように、この固定ブロック部24をこの光ケーブル位置決め部25に嵌め込むというワンステップのみの手順によって、光ケーブル11が固定されると共に光電変換素子21aへの位置決めが確定されることとなり、簡素な嵌め込みのみによって、接着剤などを使用することなく、より正確かつ効率的に光ケーブル11と光電変換部21の位置合わせと固定が容易になされ、作業の簡素化、高効率化を実現することができる。
【0040】
この分岐部23で分岐された電線12については、
図3(b)に示したように、この光電変換部21を迂回して他端縁(B側)の接続端子部26に接続されることが好適である。このように、本願に開示するコネクタ付きケーブルは、この分岐部23で分岐された電線12が、この光電変換部21を迂回して他端縁の接続端子部26に接続されることから、この電線12の配置を意識することなく、容易に、この固定ブロック部24をこの光ケーブル位置決め部25に嵌め込むというワンステップのみの手順によって、接着剤などを使用することなく、光ケーブル11が効率的に固定されることとなり、作業の簡素化、高効率化を実現することができる。
【0041】
この接続端子部26は、光電変換部21により変換された電気信号を入出力する端子及びこの複合ケーブル13から分岐された電線12を接続する端子とを配設してなる。この接続端子部26は、このコネクタ筐体における複合ケーブル13側の一端縁側(A側)の光ケーブル11からこの光電変換部21により変換された電気信号を、このコネクタ筐体の他端縁側(B側)で外部と電気的に接続する。
【0042】
この外部と電気的に接続することに関しては、例えば、
図5に示すように、本実施形態に係るコネクタ付きケーブルを介して、産業用ロボットのアンプ300とモータ400とを接続することができる。アンプ側の光電変換コネクタ2であるアンプ側光電変換コネクタ210とアンプ300は、電源を供給する電源線301と通信信号を送受信する通信線302で電気的に接続される。この光電変換コネクタ2とモータ400の間には、モータ側ケーブル401で接続される。すなわち、この
図5の接続例においては、本実施形態に係るコネクタ付きケーブルは、アンプ300に接続されたアンプ側光電変換コネクタ210が、このアンプ300から、この電源線301により電源供給を受けると共に、この通信線302を経由して受信した制御情報をケーブル1を介してモータ400側に送信する。このケーブル1を介して送信された制御情報は、モータ400に接続されたモータ側光電変換コネクタ200が、モータ側ケーブル401を経由してモータ400に送信する。
【0043】
この接続端子部26を含む回路基板は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて実装可能である。FPGAは、設計者が現場で論理回路の構成を直接プログラム設計できるデバイスであり、柔軟に仕様変更にも対応でき、保守性が高い。
【0044】
例えば、本実施形態に係るコネクタ付きケーブルは、上記のアンプ300に接続されるアンプ側光電変換コネクタ210では、
図6に示すようなFPGAを含む回路ブロックを構築することができる。このアンプ側光電変換コネクタ210は、上記光電変換素子21aであるアンプ側光電変換素子211a、上記ケーブル固定部22であるアンプ側ケーブル固定部212、上記分岐部23であるアンプ側分岐部213、上記電力供給部27であるアンプ側電力供給部217、上記接続端子部26であるアンプ側接続端子部216、上記通信用端子部26aであるアンプ側通信用端子部216a、上記電源用端子部26bであるアンプ側電源用端子部216bから構成することができる。
【0045】
また、例えば、本実施形態に係るコネクタ付きケーブルは、上記のモータ400に接続されるモータ側光電変換コネクタ200では、
図7に示すようなFPGAを含む回路ブロックを構築することができる。このモータ側光電変換コネクタ200は、上記光電変換素子20aであるモータ側光電変換素子201a、上記ケーブル固定部22であるモータ側ケーブル固定部202、上記分岐部23であるモータ側分岐部203、上記電力供給部27であるモータ側電力供給部207、上記接続端子部26であるモータ側接続端子部206、上記通信用端子部26aであるモータ側通信用端子部206a、上記電源用端子部26bであるモータ側電源用端子部206bから構成することができる。FPGAでは、二重制御機能や、光ケーブル11の光信号による通信がアンプ側かモータ側かのスイッチング機能も含めて構成することができる。
【0046】
この光電変換部21は、
図6及び
図7に示すように、光ケーブル11を介して通信された光信号を電気信号に変換する光電変換素子21a(モータ側光電変換素子201a、アンプ側光電変換素子211a)を組み込む。これにより、光信号が電気信号に変換されることで、例えば産業用ロボットのモータ側からアンプ側に向かって従来の電線ではなく光ケーブル11を介した通信が可能となる。
【0047】
この光電変換素子21aで変換された電気信号が、FPGAにより、電気信号の通信モードと光信号の光通信モードとを適合制御され、半二重通信としてRS485規格に準拠する485ドライバを経由して、シリアルインタフェースとしての通信用端子部26aから送信される。このシリアルインタフェースとしての通信用端子部26aから例えば産業用ロボットのアンプとの電気信号での通信が実現される。
【0048】
なお、
図6及び
図7では、コネクタ付きケーブルの一例として、産業用ロボットのアンプとモーター間を接続するエンコーダケーブルとしてのケースを例示したが、これに限定されず、これ以外にも例えば、産業用ロボットのアンプとコントローラ間等、幅広く適用可能である。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るコネクタ付きケーブルは、この光電変換コネクタ2が、この光電変換コネクタ2のコネクタ筐体の端縁に形成され、この複合ケーブル13の端部を固定するケーブル固定部22と、このケーブル固定部22に溝部として隣接して形成され、この複合ケーブル13の光ケーブル11と電線12とを分岐する分岐部23と、この分岐部23により分岐されたこの光ケーブル11を固定する固定ブロック部24と、この分岐部23とこの光電変換部21との間に凹溝状の嵌合部として形成され、この固定ブロック部24を収納固定する光ケーブル位置決め部25と、この光電変換部21により変換された電気信号を電気的に接続する接続端子部26と、を備えることから、この分岐部23により分岐されたこの光ケーブル11を固定する固定ブロック部24をこの光ケーブル位置決め部25に収納固定するのみによって、光ケーブル11が固定されるとともに、この光電変換部21との接続の位置決めも同時になされることとなり、簡素な嵌め込みのみによって、接着剤などを使用することなく、光ケーブル11の抜けを防止する十分な固定ができ、光ケーブル11と光電変換部21の位置合わせを容易にでき、作業の簡素化、高効率化を実現することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブルは、第1の実施形態と同様に、前記ケーブル1と、前記光電変換コネクタ2と、前記ケーブル固定部22と、前記分岐部23と、前記固定ブロック部24と、前記光ケーブル位置決め部25と、前記光ケーブル位置決め部25と、前記接続端子部26と、前記電力供給部27と、を備え、さらに、
図8に示すように、前記固定ブロック部24の構成を上下嵌合構造とする構成である。
【0051】
この固定ブロック部24は、
図8に示すように、この固定ブロック部24の上半分(天井側)を構成する上部固定ブロック部24aと、この固定ブロック部24の下半分(底側)を構成する下部固定ブロック部24bと、から構成することができる。この上部固定ブロック部24aと下部固定ブロック部24bによって、この複合ケーブル13のうち分岐部23により分岐された光ケーブル11を上下に挟み込むことにより、このコネクタ筐体とこの光ケーブル11を簡易かつ強固に固定することができる。
【0052】
この上部固定ブロック部24aと下部固定ブロック部24bによる光ケーブル11の固定は、特に限定されない。例えば、この上部固定ブロック24aは、
図9(a)に示すように、光ケーブル11を上部から固定するケーブル固定用上部突起部24cと、この下部固定ブロック部24bと嵌合する凹んだ形状の上部嵌合用凹部24dを備えることができる。
【0053】
また、例えば、この下部固定ブロック部24bは、
図9(b)に示すように、光ケーブル11を下部から固定するケーブル固定用下部突起部24eと、この上部固定ブロック24aと嵌合する凸形状の下部嵌合用凸部24fを備えることができる。
【0054】
図9(c)に示すように、この上部固定ブロック24aと下部固定ブロック部24bとを重ね合わせるのみによって、
図9(d)に示すように、この上部嵌合用凹部24dと、この下部嵌合用凸部24fとが嵌め込まれて簡素かつ強固に固定される。
【0055】
なお、
図9で示す長さa~dは、上述の第1の実施形態に係る
図4で示した長さa~dに対応しており、この固定ブロック部24をこの光ケーブル位置決め部25に嵌め込むというワンステップのみの手順によって、光ケーブル11が固定されると共に光電変換素子21aへの位置決めが確定されることとなり、簡素な嵌め込みのみによって、接着剤などを使用することなく、より正確かつ効率的に光ケーブル11と光電変換部21の位置合わせと固定が容易になされ、作業の簡素化、高効率化を実現することができる。
【0056】
この固定ブロック部24を用いたコネクタ付きケーブルの固定方法を
図10に示す。
【0057】
まず、
図10(a)に示すコネクタ下部2bに対して、
図10(b)に示すように、光電変換部21を上から嵌め込む。この嵌め込まれた光電変換部21の光電変換素子21aの隣接位置(光ケーブル11を収納する側)に、
図10(c)に示すように、この下部固定ブロック部24bを上から嵌め込む。
【0058】
図10(d)に示すように、光ケーブル11を下部固定ブロック部24b内の溝に固定した状態で、ケーブル1を上から嵌め込む。この状態の下部固定ブロック部24bに対して、
図10(e)に示すように、上部固定ブロック24aを上から嵌め込む。これにより、上部固定ブロック24aと下部固定ブロック部24bが嵌合して固定ブロック部24が形成され、光ケーブル11が固定ブロック部24の内部に収容した状態で固定される。
【0059】
図10(f)に示すように、このコネクタ下部2bに対して、コネクタ上部2aを上から嵌め込む。これにより、このコネクタ下部2bとコネクタ上部2aとが嵌合してケーブル固定部22が形成される。
【0060】
図11に示すように、この光電変換コネクタ2の内部の様子に関して、この分岐部23で分岐された電線12が、この光電変換部21を迂回して他端縁の接続端子部26に接続される。例えば、この光電変換コネクタ2が産業用ロボットのモータ側に接続される場合には、この電線12から、この接続端子部26を介して光電変換部21(例えば、FPGA)に電力が供給される。また、例えば、この光電変換コネクタ2が産業用ロボットのアンプ側に接続される場合には、アンプ側からの電源線の接続によって、直接、接続端子部26から光電変換部21(例えば、FPGA)に電力が供給される。
【0061】
このように簡素な構成で、この上部固定ブロック24aと下部固定ブロック部24bを用いることによって、この光電変換コネクタ2が確実かつ強固に形成されることとなり、光ケーブル11の固定について、接着剤などを不要として、さらに固定精度が高まり、作業効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ケーブル
11 光ケーブル
12 電線
13 複合ケーブル
14 シース
15 押えテープ
16 介在
2 光電変換コネクタ
2a コネクタ上部
2b コネクタ下部
200 モータ側光電変換コネクタ
210 アンプ側光電変換コネクタ
21 光電変換部
21a 光電変換素子
201a モータ側光電変換素子
211a アンプ側光電変換素子
22 ケーブル固定部
202 モータ側ケーブル固定部
212 アンプ側ケーブル固定部
23 分岐部
203 モータ側分岐部
213 アンプ側分岐部
24 固定ブロック部
24a 上部固定ブロック部
24b 下部固定ブロック部
24c ケーブル固定用上部突起部
24d 上部嵌合用凹部
24e ケーブル固定用下部突起部
24f 下部嵌合用凸部
25 光ケーブル位置決め部
26 接続端子部
206 モータ側接続端子部
216 アンプ側接続端子部
26a 通信用端子部
206a モータ側通信用端子部
216a アンプ側通信用端子部
26b 電源用端子部
206b モータ側電源用端子部
216b アンプ側接続用端子部
27 電力供給部
207 モータ側電力供給部
217 アンプ側電力供給部
300 アンプ
301 電源線
302 通信線
400 モータ
401 モータ側ケーブル