IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

特開2024-75351障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム
<>
  • 特開-障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム 図1
  • 特開-障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム 図2
  • 特開-障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム 図3
  • 特開-障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム 図4
  • 特開-障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム 図5
  • 特開-障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075351
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20240527BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240527BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G06T7/00 650Z
G01C21/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186741
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真也
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5L096
【Fターム(参考)】
2C032HB22
2C032HC08
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB19
2F129BB22
2F129BB26
2F129DD13
2F129DD21
2F129DD39
2F129DD53
2F129EE26
2F129EE78
2F129EE85
2F129EE94
2F129EE95
2F129GG18
2F129HH33
5L096AA02
5L096AA09
5L096BA04
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】簡易に小さな障害物をリアルタイムに検出可能とする「障害物マップ作成システム、障害物マップ作成方法及び障害物検知システム」を提供する。
【解決手段】3D面傾斜度マップ生成部31は、移動体の走行が想定される区域の3次元点群を表すオリジナル3Dマップの各点の色を、その点を含む面の傾きに応じた色に変更して3D面傾斜度マップを作成し、2D俯瞰画像生成部32は、3D面傾斜度マップを俯瞰した2D俯瞰画像を生成し、2D障害物マップ生成部33は、画像認識によって2D俯瞰画像中の各点が障害物の点であるか否かを識別し、2D俯瞰画像中の各点を識別結果に応じた色に変更して2D障害物マップを生成し、3D障害物マップ生成部34は、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点の色を、その点と水平方向についての座標が同じ2D障害物マップ上の点の色に変更して3D障害物マップ101を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各地点の障害物の有無を表す障害物マップを作成する障害物マップ作成システムであって、
前記障害物マップを作成する区域に存在する物体の3次元点群を表す、当該3次元点群の各点が属性値を持つ3Dマップの各点の属性値を、その点を含む面の水平方向に対する傾きの大きさに応じた値に変更して3D面傾斜度マップを作成する3D面傾斜度マップ作成手段と、
前記3D面傾斜度マップを俯瞰した2次元のマップである2D俯瞰マップを生成する2D俯瞰マップ作成手段と、
前記2D俯瞰マップ中の障害物に対応する点を識別し、2D俯瞰マップ中の各点の属性値を、当該点が障害物に対応する点であるか否かを少なくとも表す値に変更して、前記2次元で各地点の障害物の有無を表す2D障害物マップを生成する2D障害物マップ作成手段とを有することを特徴とする障害物マップ作成システム。
【請求項2】
請求項1記載の障害物マップ作成システムであって、
前記3Dマップの各点の属性値を、当該点と位置が前記2次元について同じ前記2D障害物マップの点の属性値に変更して、3次元で各地点の障害物の有無を表す3D障害物マップを生成する3D障害物マップ作成手段を有することを特徴とする障害物マップ作成システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の障害物マップ作成システムであって、
前記2D障害物マップ作成手段は、前記2D俯瞰マップ中の、路面から上方に突出した障害物である凸障害物に対応する点と、路面から下方に窪んだ障害物である凹障害物に対応する点とを識別し、2D俯瞰マップ中の各点の属性値を、当該点が凸障害物に対応する点と当該点が凹障害物に対応する点と当該点が凸障害物にも凹障害物にも対応しない点とのうちのいずれであるかによって定まる値に変更して前記2D障害物マップを生成することを特徴とする障害物マップ作成システム。
【請求項4】
請求項1または2記載の障害物マップ作成システムであって、
前記属性値は色を表す値であることを特徴とする障害物マップ作成システム。
【請求項5】
請求項1記載の障害物マップ作成システムであって、
前記2D障害物マップ作成手段は、障害物に対応する点のクラスと障害物でない物体に対応する点のクラスとのクラス分類を行うようにディープラーニングで事前学習させた畳み込みニューラルネットワークを用いて2D俯瞰マップ中の障害物に対応する点を識別することを特徴とする障害物マップ作成システム。
【請求項6】
各地点の障害物の有無を表す障害物マップを作成する障害物マップ作成方法であって、
前記障害物マップを作成する区域に存在する物体の3次元点群を表す、当該3次元点群の各点が属性値を持つ3Dマップの各点の属性値を、その点を含む面の水平方向に対する傾きの大きさに応じた値に変更して3D面傾斜度マップを作成する3D面傾斜度マップ作成ステップと、
前記3D面傾斜度マップを俯瞰した2次元のマップである2D俯瞰マップを生成する2D俯瞰マップ作成ステップと、
前記2D俯瞰マップ中の障害物に対応する点を識別し、2D俯瞰マップ中の各点の属性値を、当該点が障害物に対応する点であるか否かを少なくとも表す値に変更して、2次元で各地点の障害物の有無を表す2D障害物マップを生成する2D障害物マップ作成ステップとを有することを特徴とする障害物マップ作成方法。
【請求項7】
請求項6記載の障害物マップ作成方法であって、
前記3Dマップの各点の属性値を、当該点と位置が前記2次元について同じ前記2D障害物マップの点の属性値に変更して、3次元で各地点の障害物の有無を表す3D障害物マップを生成する3D障害物マップ作成ステップを有することを特徴とする障害物マップ作成方法。
【請求項8】
請求項2記載の障害物マップ作成システムと、移動体とを備えた障害物検知システムであって、
前記移動体は、現在位置を算出する現在位置算出手段と、前記障害物マップ作成システムによって作成された3D障害物マップを参照して、前記現在位置が接近した障害物を検知する障害物検知手段とを有することを特徴とする障害物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体において障害物を検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体において障害物を検知する技術としては、自動車に搭載したLiDAR(light detection and ranging)で検出した三次元点群から、自動車前方の歩行者等の障害物を検知する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
また、本発明に関する技術としては、移動体に搭載されたLiDARで三次元点群を取得しながら、3D(3次元)マップの生成と移動体の位置の検出を行うLiDAR SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)の技術が知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-154611号公報
【特許文献2】特開2019-207220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体においてLiDARを用いて段差や溝などの小さな構造物を障害物として検出するためには、高性能の高価なLiDARが必要となると共に、障害物検出のための処理量も増大するためにリアルタイムな障害物検出が難しくなる。
そこで、本発明は、移動体において比較的に簡易に小さな構造物を障害物としてリアルタイムに検出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、各地点の障害物の有無を表す障害物マップを作成する障害物マップ作成システムに、前記障害物マップを作成する区域に存在する物体の3次元点群を表す、当該3次元点群の各点が属性値を持つ3Dマップの各点の属性値を、その点を含む面の水平方向に対する傾きの大きさに応じた値に変更して3D面傾斜度マップを作成する3D面傾斜度マップ作成手段と、前記3D面傾斜度マップを俯瞰した2次元のマップである2D俯瞰マップを生成する2D俯瞰マップ作成手段と、前記2D俯瞰マップ中の障害物に対応する点を識別し、2D俯瞰マップ中の各点の属性値を、当該点が障害物に対応する点であるか否かを少なくとも表す値に変更して、前記2次元で各地点の障害物の有無を表す2D障害物マップを生成する2D障害物マップ作成手段とを備えたものである。
【0006】
ここで、この障害物マップ作成システムには、前記3Dマップの各点の属性値を、当該点と位置が前記2次元について同じ前記2D障害物マップの点の属性値に変更して、3次元で各地点の障害物の有無を表す3D障害物マップを生成する3D障害物マップ作成手段を備えてもよい。
【0007】
また、以上の障害物マップ作成システムは、前記2D障害物マップ作成手段において、前記2D俯瞰マップ中の、路面から上方に突出した障害物である凸障害物に対応する点と、路面から下方に窪んだ障害物である凹障害物に対応する点とを識別し、2D俯瞰マップ中の各点の属性値を、当該点が凸障害物に対応する点と当該点が凹障害物に対応する点と当該点が凸障害物にも凹障害物にも対応しない点とのうちのいずれであるかによって定まる値に変更して前記2D障害物マップを生成するように構成してもよい。
【0008】
また、以上の障害物マップ作成システムにおいて、前記属性値は色を表す値であってよい。
また、以上の障害物マップ作成システムは、前記2D障害物マップ作成手段は、障害物に対応する点のクラスと障害物でない物体に対応する点のクラスとのクラス分類を行うようにディープラーニングで事前学習させた畳み込みニューラルネットワークを用いて2D俯瞰マップ中の障害物に対応する点を識別するように構成してよい。
【0009】
このような障害物マップ作成システムによれば、各位置にある面の傾きの大きさを表す2次元の2D俯瞰マップを生成し、生成した2D俯瞰マップから障害物を識別するように構成したので、障害物の識別精度を保ったまま、障害物を識別するため処理の処理量を低減することができる。
【0010】
また、本発明は、上述した3D障害物マップを作成する障害物マップ作成システムと、移動体とを備えた障害物検知システムも提供する。ここで、前記移動体は、現在位置を算出する現在位置算出手段と、前記障害物マップ作成システムによって作成された3D障害物マップを参照して、前記現在位置が接近した障害物を検知する障害物検知手段とを備えている。
【0011】
このような障害物検知システムによれば、高解像度の3Dマップから3D障害物マップを作成しておくことにより、移動体において、3D障害物マップを参照するだけの簡易な処理で、小さな障害物についても、その接近を検知することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、移動体において比較的に簡易に小さな構造物を障害物としてリアルタイムに検出できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る移動体の機能構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るパーソナルモビリティを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る3D障害物マップ作成装置の機能構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る3D障害物マップの作成手順を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る3D障害物マップの作成手順を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るCNNがクラス分類の対象とする画像を示す図である。を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る移動体の機能構成を示す。
移動体は、パーソナルモビリティ、自走式車椅子、自動車、自走式ロボット、その他の自走式車両などの自走式の移動体であり、自動運転もしくは手動運転により走行する。
図示するように、移動体は、物体の三次元点群を検出する1つもしくは複数のLiDAR1(light detection and ranging)、衛星測位により現在位置を検出するGNSSモジュール2、加速度や角加速度等を検出するIMU3(Inertial Measurement Unit)、モニタ4、ユーザの操作を受け付ける操作装置5、移動体を自走させる走行機構6、移動体の移動速度や操舵角などの各種状態を検出する状態センサ7、LiDAR1が検出した三次元点群から3D(三次元)マップの生成と現在位置の算定を行うSLAM8(Simultaneous Localization and Mapping)、自動運転システム9、障害物検知システム10を備えている。
【0015】
また、自動運転システム9には、自動運転用のマップである自動運転マップ91が予め設定されている。
障害物検知システム10には、障害物の位置を示した3Dのマップである3D障害物マップ101が予め設定されている。
3D障害物マップ101は、移動体の走行が想定される区域の3次元点群であり、3D障害物マップ101の3次元点群を構成する各点は、その点が障害物の点であるか障害物でない物体の点であるかと、障害物の点である場合に障害物の種別を示す属性値が与えられている。具体的には、属性値としては色を表す値を用いており、段差などの路面から上に突出した凸形状の障害物の点は赤色の点、溝などの路面から下に凹んだ凹形状の障害物の点は青色の点、路面などの障害物でない物体の点は白色の点として、3D障害物マップ101に含められている。
【0016】
ここで、このような3D障害物マップ101の作成の手順については後に詳述する。
そして、自動運転システム9は、自動運転マップ91や、GNSSモジュール2やSLAM8で検出した現在位置や、SLAM8で生成した3Dマップや、IMU3の検出値を参照して、移動体の現在位置を算定する。
また、自動運転システム9は、自動運転マップ91と算定した現在位置に基づいて目的地までの経路を設定すると共に、自動運転マップ91と算定した現在位置に基づいた自動運転により走行機構6を制御して移動体を経路に沿って走行させる制御を行う。ここで、自動運転システム9は、操作装置5で受け付けた運転操作に応じて走行機構6を制御して移動体を走行させる運転制御も行うこともできる。
【0017】
状態センサ7で検出した各種状態は、自動運転システム9における運転制御に用いられる。また、状態センサ7で検出した各種状態を、自動運転システム9における現在位置の算出に用いるようにしてもよい。
障害物検知システム10は、LiDAR1が検出した三次元点群から、接近した障害物を検知する。
また、障害物検知システム10は、自動運転システム9が算定した現在位置から、3D障害物マップ101が示す障害物との接近を検知する。ここで、上述のように、3D障害物マップ101の3次元点群を構成する各点は、その点の色によって障害物の点であるか障害物でない物体の点であるかと、障害物の種別を示しているので、障害物検知システム10は、3D障害物マップ101の3次元点群の各点の色から障害物の有無や、障害物の種別を識別して、接近した障害物を検知する。
【0018】
ここで、この移動体において、LiDAR1やGNSSモジュール2やIMU3やSLAM8の全てを備えることは必須ではなく、自動運転システム9において現在位置を算出できる構成を備えていれば足りる。
また、LiDAR1を備える場合に、そのLiDAR1は、障害物検知システム10において歩行者や他の移動体などの比較的に大きい障害物を検出できる程度の性能を備えていれば足りる。なお、LiDAR1を備えない場合には、障害物検知システム10は、LiDAR1が検出した三次元点群からの接近した障害物の検知は行わず、自動運転システム9が算定した現在位置からの3D障害物マップ101が示す障害物の接近の検知のみを行うこととなる。
【0019】
そして、自動運転システム9は、障害物検知システム10が接近を検知した障害物を回避する運転制御を行う。
ここで、移動体がパーソナルモビリティである場合、図2aにパーソナルモビリティの側面を、図2bにパーソナルモビリティの上面を示すように、LiDAR1は、たとえば、パーソナルモビリティの前部の右側と左側に各々配置され、パーソナルモビリティの前方を走査範囲とする走査を行い、SLAM8は、左右のLiDAR1が検出した3次元点群を合成して3Dマップを作成する。
【0020】
以下、このような移動体の障害物検知システム10に予め設定される3D障害物マップ101の作成の手順について説明する。
この手順では、まず、移動体の走行が想定される区域の3次元点群である3Dマップを作成する。
3Dマップの作成は、図1に示した機能構成と同様の機能構成を備えた3Dマップ作成用の走行体を、自動運転もしくは手動運転により、移動体の走行が想定される区域内を走行させて、3Dマップ作成用移動体のSLAM8に、当該区域の3Dマップを作成させることにより行うことができる。
【0021】
ただし、この走行体のLiDAR1としては、cmレベルの分解能を備えた高高性能のLiDAR1を用いる。また、この走行体の障害物検知システム10には3D障害物マップ101は設定されておらず、障害物検知システム10は3D障害物マップ101を用いた接近した障害物の検知は行わない。
【0022】
そして、走行体のSLAM8によって作成された3Dマップをオリジナル3Dマップとして、3D障害物マップ作成装置を用いて、オリジナル3Dマップから3D障害物マップを作成する。
ただし、オリジナル3Dマップは、LiDAR SLAMによって生成しなくてもよく、オリジナル3Dマップは、cmレベルの分解能を備えたレーダスキャナを用いた手法などの他の手法によって生成されたものを用いてもよい。
3D障害物マップ作成装置はコンピュータであり、図3に示す機能構成を、プログラムの実行により実現される機能構成として備えている。
すなわち、図示するように、3D障害物マップ作成装置は、3D面傾斜度マップ生成部31、2D俯瞰画像生成部32、2D障害物マップ生成部33、3D障害物マップ生成部34を備えている。
以下、このような3D障害物マップ作成装置の動作を説明する。
まず、3D面傾斜度マップ生成部31において、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点の色を、その点を含む各点によって形成されている面の水平方向に対する傾きの大きさに応じた色に変更して3D面傾斜度マップを作成する。
ここで、鉛直方向に対応する方向をZ軸の方向とするXYZの3次元直交座標が3D面傾斜度マップには設定されている。また、3D面傾斜度マップの3次元点群の各点には属性値として色を表す値が設定されている。
そして、3D面傾斜度マップ生成部31は、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点について、図4aに示す、その点Pを含む各点によって形成されている面Sの法線Nの方向がXY平面と平行な方向に近づくほど赤に近づき、法線Nの方向がZ軸方向に近づくほど白に近づくように、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点の色を変更して3D面傾斜度マップを作成する。
【0023】
すなわち、たとえば、オリジナル3Dマップが図4bに示すものであれば、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点の色を、その点を含む各点によって形成されている面の法線の方向がXY平面と平行な方向に近づくほど赤に近づき、法線Nの方向がZ軸方向に近づくほど白に近づくように変更して、図4cに示す3D面傾斜度マップを作成する。
【0024】
なお、図4cにおいて、”Red"で示した位置の灰色が実際には赤色に対応する。また、図4cにおいて、黒色の部分は、オリジナル3Dマップにおける点の不在部分に相当する。
ただし、3D面傾斜度マップは、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点の色を、その点Pを含む各点によって形成されている面Sの法線NがXY平面の法線と成す角が所定のしきい値以上である場合に赤とし、しきい値未満である場合に白に変更することにより作成してもよい。
【0025】
次に、2D俯瞰画像生成部32は、作成された3D面傾斜度マップをZ方向にXY平面と平行なスクリーンに投影すること等により、3D面傾斜度マップを真上(Z方向)より俯瞰した2Dのマップである画像であって、XY座標系を持つ画像を2D俯瞰画像として生成する。
【0026】
すなわち、たとえば、3D面傾斜度マップが図4cに示すものであれば、これを真上(Z方向)より俯瞰したようすを表す、XY座標系を持つ2D俯瞰画像を図5aに示すように生成する。
次に、2D障害物マップ生成部33は、2D俯瞰画像の各部の障害物の有無や障害物の種別を画像認識して、2D俯瞰画像中の各点を、凸形状の障害物の点と凹形状の障害物の点と、障害物でない物体の点にクラス分類し、2D俯瞰画像中の凸形状の障害物の点の色を赤色に、2D俯瞰画像中の凹形状の障害物の点の色を青色に、2D俯瞰画像中の障害物ではない物体の点の色を白色に変更し、XY座標系を持つ2D障害物マップを生成する。
【0027】
すなわち、たとえば、2D俯瞰画像が図5aに示すものであれば、2D俯瞰画像中の凸形状の障害物の点の色を赤色に、2D俯瞰画像中の凹形状の障害物の点の色を青色に、2D俯瞰画像中の障害物ではない物体の点の色を白色に変更した3D障害物マップを図5bに示すように生成する。
【0028】
なお、図5cにおいて、”Blue"で示した位置の薄灰色が実際には青色に対応する。
2D障害物マップ生成部33は、ディープラーニング(深層学習)で事前学習済みのCNN:Convolutional Neural Network(畳み込みニューラルネットワーク)を用いて構成されており、このCNNは、図6aに示す48×48ピクセルの画像である処理単位画像PIが与えられると、処理画像PIの中央の16×16ピクセルの領域である中央領域CAの画像が、凸形状の障害物の画像であるか、凹形状の障害物の画像であるか、障害物でない物体の画像であるかのクラス分類を行う。ここで、2D俯瞰画像の1ピクセルは、おおよそ、実空間の1×1cmに対応する。
【0029】
すなわち、このCNNは、図6b1の、中央領域CAの画像が凸形状の障害物の画像であることが正解である多数の処理単位画像PI、図6b2の中央領域CAの画像が凹形状の障害物の画像であることが正解である多数の処理単位画像PI、図6b3の中央領域CAの画像が障害物でない物体の画像であることが正解である多数の処理単位画像PIを、教師データとして事前に学習させたCNNである。なお、教師データとして用いる処理単位画像PIは、2D俯瞰画像と同様の手順で生成した画像や当該画像に相当するように生成した画像から抽出した画像を用いる。
【0030】
なお、このCNNの学習の一環として、既存の学習済みCNNに対する転移学習を行うようにしてもよい。
2D障害物マップ生成部33は、2D俯瞰画像の16ピクセル幅の縁の領域を除く領域を、16×16ピクセルの領域に分割し、分割した各領域に対して、当該領域を中央領域CAとする処理単位画像PIを設定し、設定した各処理単位画像PIについて、CNNに中央領域CAの画像をクラス分類させる。なお、2D俯瞰画像の16ピクセル幅の縁の領域を、中央領域CAを設定する領域から除くのは、その領域内に中央領域CAを設定しても、2D俯瞰画像内に処理単位画像PIを設定できないからである。
【0031】
そして、2D障害物マップ生成部33は、2D俯瞰画像の凸形状の障害物の画像であるとクラス分類された中央領域CAに対応する領域中の点の色を赤色に、2D俯瞰画像の凹形状の障害物の画像であるとクラス分類された中央領域CAに対応する領域中の点の色を青色に、2D俯瞰画像の障害物でない物体の画像であるとクラス分類された中央領域CAに対応する領域中の点の色を白色に変更して2D障害物マップを生成する。
【0032】
次に、3D障害物マップ生成部34は、2D障害物マップが作成されたならば、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点の色を、その点とXY座標が同じ2D障害物マップ上の点の色に変更することにより3D障害物マップを生成する。
すなわち、たとえば、3D面傾斜度マップが図5bに示すものであれば、オリジナル3Dマップの3次元点群の各点の色を、その点とXY座標が同じ2D障害物マップ上の点の色に変更して、3D障害物マップを図5cに示すように生成する。
そして、以上のように3D障害物マップ作成装置によって作成された3D障害物マップが、3D障害物マップ101として移動体の障害物検知システム10に設定され、上述のように接近した障害物の検知に用いられる。
以上、3D障害物マップ101の作成の手順について説明した。
このような3D障害物マップ101の作成手順によれば、XY座標系上の各位置にある面の傾斜の強さを表す2D俯瞰画像を生成し、生成した2次元の2D俯瞰画像から障害物を識別するように構成したので、障害物の識別精度を保ったまま、障害物を識別するためのCNNの学習処理や、2D俯瞰画像からの障害物の識別の処理の処理量や処理時間を、これらの処理を3次元のマップに対して行う場合よりも、大幅に低減することができる。
【0033】
以上、本実施形態によれば、比較的に少ない処理量で障害物の位置を示す3Dのマップである3D障害物マップ101を生成することができると共に、移動体において、3D障害物マップ101を参照するだけの簡易な処理で、小さな構造物も障害物としてリアルタイムに検出できるようになる。
【符号の説明】
【0034】
1…LiDAR、2…GNSSモジュール、3…IMU、4…モニタ、5…操作装置、6…走行機構、7…状態センサ、8…SLAM、9…自動運転システム、10…障害物検知システム、31…3D面傾斜度マップ生成部、32…2D俯瞰画像生成部、33…2D障害物マップ生成部、34…3D障害物マップ生成部、91…自動運転マップ、101…3D障害物マップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6