(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075361
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20240527BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G03G9/08 384
G03G9/093
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186756
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兼房 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 祥雅
(72)【発明者】
【氏名】安野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】中根 隆太
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500BA11
2H500EA12B
2H500EA40B
2H500EA42B
2H500EA60A
2H500EA61A
(57)【要約】
【課題】光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーの製造方法の提供
【解決手段】ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する工程と、コア凝集粒子及びエステル構造を有するシェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する工程、並びに、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる工程と、を有する静電荷像現像用トナーの製造方法
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、前記コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する第1凝集工程と、
前記コア凝集粒子及び前記水系媒体を含むコア凝集粒子分散液と、エステル構造を有するシェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液と、を混合し、前記コア凝集粒子及び前記シェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、前記コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する第2凝集工程と、
前記コア用樹脂粒子及び前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、前記ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、前記シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる融合合一工程と、
を有する静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が、前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度よりも高い請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記シェル用樹脂粒子と前記コア用樹脂粒子とのガラス転移温度の差が1℃以上40℃以下である請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が40℃以上70℃以下である請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記コア用樹脂粒子に対する前記シェル用樹脂粒子の量が40質量%以下である請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
前記シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度が、前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度よりも高い請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
前記シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度と前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度との差が、2質量%以上40質量%以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度が2質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
前記コア用樹脂粒子と前記シェル用樹脂粒子との溶解度パラメーターの差が、絶対値で0以上1.5以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項10】
前記第1凝集工程において、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下で、前記コア用原料分散液Bを攪拌しながら、前記コア用樹脂粒子を凝集させる、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
攪拌中の、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項12】
前記第1凝集工程において、前記凝集温度が(前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度-15℃)以上(前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項13】
前記第2凝集工程において、前記凝集温度が(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-40℃)以上(前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項14】
前記コア用原料分散液Aは、前記コア用樹脂粒子、前記ノニオン性界面活性剤、及び前記水系媒体を含むコア用樹脂粒子分散液を使用して得られる請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項15】
前記融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%以下になるまで、前記シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項16】
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項17】
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である請求項4に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項18】
前記第1凝集工程において、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下で、前記コア用原料分散液Bを攪拌しながら、前記コア用樹脂粒子を凝集させる、請求項8に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項19】
前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下である請求項10に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項20】
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である請求項15に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、「コアシェル構造を有する静電潜像現像用トナーにおいて、コア部分は少なくともガラス転移温度(Tg)が10~30℃の疎水性樹脂と、ガラス転移温度(Tg)が40~50℃の親水性樹脂と着色剤を含有し、該コア部分の中心部に低Tgの疎水性樹脂が多く存在し、中心から外側にいくほど高Tgの親水性樹脂の比率が高くなり、シェル部分はTgが50~70℃の親水性樹脂からなることを特徴とする静電潜像現像用トナー。」が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、「複合樹脂(A)及び結晶性ポリエステル(B)を含む結着樹脂とワックスとをコア部分に含有し、ポリエステル樹脂(C)を含む結着樹脂をシェル部分に含有し、複合樹脂(A)が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル樹脂からなるセグメント(a1)と、スチレン系化合物由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメント(a2)とを含有する複合樹脂であり、結晶性ポリエステル(B)が、炭素数8以上16以下のα,ω-脂肪族ジオールを80モル%以上含有するアルコール成分と炭素数8以上16以下の脂肪族飽和ジカルボン酸を80モル%以上含有する多価カルボン酸成分とを重縮合して得られる結晶性ポリエステルであり、ポリエステル樹脂(C)が、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル樹脂である、静電荷像現像用トナー及びその製造方法」が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、「トナー組成物の製法において該製法が:(i)非イオン性界面活性剤,アニオン性界面活性剤,非極性オレフイン系第1モノマー,非極性ジオレフイン系第2モノマー,遊離ラジカル開始剤,および連鎖移動剤の各一種の混合物を水中で撹拌してラテックスエマルジョンを調製し;(ii)このラテックスエマルジョンを室温乃至約80℃に加熱して重合させ,体積平均粒径約5乃至約500ナノメーターの非極性オレフィン系エマルジョン重合樹脂粒子を形成させ;(iii)この非極性オレフィン系エマルジョン重合樹脂粒子混合物を水で希釈し;(iv)希釈済み非極性オレフィン系エマルジョン重合樹脂粒子混合物に対して着色剤または顔料粒子を添加し,必要に応じて生成混合物をホモジナイザーで分散させ;(v)カチオン性界面活性剤を添加して着色剤または顔料粒子をエマルジョン重合樹脂粒子の表面に凝集させ;(vi)この凝集混合物を高シエア下で均一化して体積平均粒径が約5ミクロンまたはそれ以下の,静電的に結合した集合複合粒子を形成させ;(vii)静電的に結合した該集合複合粒子を加熱して非極性トナーサイズド粒子を形成させ;(viii)静電的に結合した該非極性トナーサイズド粒子を任意にハロゲン化してハロゲン化ポリマー樹脂から成る外表面すなわちカプセル殻を有する非極性トナーサイズド粒子を形成させ;(ix)生成した非極性トナーサイズド粒子を分離する;工程から成る製法。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-99954号公報
【特許文献2】特許6018684号
【特許文献3】特開平6-95422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する第1凝集工程と、コア凝集粒子及び水系媒体を含むコア凝集粒子分散液、並びに、エステル構造を有するシェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液を混合し、コア凝集粒子及びシェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する第2凝集工程と、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる融合合一工程と、を有する静電荷像現像用トナーの製造方法において、第1凝集工程における凝集温度がコア用樹脂粒子のガラス転移点温度Tg超えである場合、第2凝集工程における凝集温度がシェル用樹脂粒子のガラス転移点温度Tg超えである場合、又は融合合一工程における凝集温度がノニオン性界面活性剤の曇点以上である場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
<1>
ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、前記コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する第1凝集工程と、
前記コア凝集粒子及び前記水系媒体を含むコア凝集粒子分散液と、エステル構造を有するシェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液と、を混合し、前記コア凝集粒子及び前記シェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、前記コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する第2凝集工程と、
前記コア用樹脂粒子及び前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、前記ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、前記シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる融合合一工程と、
を有する静電荷像現像用トナーの製造方法。
<2>
前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が、前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度よりも高い<1>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<3>
前記シェル用樹脂粒子と前記コア用樹脂粒子とのガラス転移温度の差が1℃以上40℃以下である<2>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<4>
前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が40℃以上70℃以下である<2>又は<3>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<5>
前記コア用樹脂粒子に対する前記シェル用樹脂粒子の量が40質量%以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<6>
前記シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度が、前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度よりも高い<1>~<5>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<7>
前記シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度と前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度との差が、2質量%以上40質量%以下である<1>~<6>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<8>
前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度が2質量%以上20質量%以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<9>
前記コア用樹脂粒子と前記シェル用樹脂粒子との溶解度パラメーターの差が、絶対値で0以上1.5以下である<1>~<8>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<10>
前記第1凝集工程において、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下で、前記コア用原料分散液Bを攪拌しながら、前記コア用樹脂粒子を凝集させる、<1>~<9>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<11>
攪拌中の、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下である<1>~<10>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<12>
前記第1凝集工程において、前記凝集温度が(前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度-15℃)以上(前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下である<1>~<11>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<13>
前記第2凝集工程において、前記凝集温度が(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-40℃)以上(前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下である<1>~<13>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<14>
前記コア用原料分散液Aは、前記コア用樹脂粒子、前記ノニオン性界面活性剤、及び前記水系媒体を含むコア用樹脂粒子分散液を使用して得られる<1>~<13>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<15>
前記融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%以下になるまで、前記シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる<1>~<14>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<16>
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である<1>~<15>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<17>
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である<4>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<18>
前記第1凝集工程において、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下で、前記コア用原料分散液Bを攪拌しながら、前記コア用樹脂粒子を凝集させる、<8>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<19>
前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下である<10>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<20>
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である<15>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
<1>、又は<14>に係る発明によれば、ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する第1凝集工程と、コア凝集粒子及び水系媒体を含むコア凝集粒子分散液、並びに、エステル構造を有するシェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液を混合し、コア凝集粒子及びシェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する第2凝集工程と、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる融合合一工程と、を有する静電荷像現像用トナーの製造方法において、第1凝集工程における凝集温度がコア用樹脂粒子のガラス転移点温度Tg超えである場合、第2凝集工程における凝集温度がシェル用樹脂粒子のガラス転移点温度Tg超えである場合、又は融合合一工程における凝集温度がノニオン性界面活性剤の曇点以上である場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0009】
<2>に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度がコア用樹脂粒子のガラス転移温度よりも低いである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<3>に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子とコア用樹脂粒子とのガラス転移温度の差が1℃未満又は40℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0010】
<4>に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が40℃未満又は70℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0011】
<5>に係る発明によれば、コア用樹脂粒子に対するシェル用樹脂粒子の量が40質量%超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0012】
<6>に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度が、コア凝集粒子分散液の固形分濃度よりも低い場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<7>に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度とコア凝集粒子分散液の固形分濃度との差が、2質量%未満又は40質量%超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<8>に係る発明によれば、コア凝集粒子分散液の固形分濃度が2質量%未満又は20質量%超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0013】
<9>に係る発明によれば、コア用樹脂粒子とシェル用樹脂粒子との溶解度パラメーターの差が、絶対値で1.5超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0014】
<10>に係る発明によれば、第1凝集工程において、コア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3未満又は9.0kW/m3超えで、コア用原料分散液Bを攪拌しながら、コア用樹脂粒子を凝集させる場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<11>に係る発明によれば、コア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s未満又は100Pa・s超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0015】
<12>に係る発明によれば、第1凝集工程において、凝集温度が(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-15℃)未満又は(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<13>に係る発明によれば、第2凝集工程において、凝集温度が(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-40℃)未満又は(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0016】
<15>に係る発明によれば、融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%超えで、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0017】
<16>に係る発明によれば、融合合一工程において、融合合一温度が75℃未満又は100℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0018】
<17>に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が40℃未満又は70℃超えである場合、又は融合合一工程において、融合合一温度が75℃未満又は100℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<18>に係る発明によれば、コア凝集粒子分散液の固形分濃度が2質量%未満又は20質量%超えである場合、又は第1凝集工程において、コア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3未満又は9.0kW/m3超えで、コア用原料分散液Bを攪拌しながら、コア用樹脂粒子を凝集させる場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<19>に係る発明によれば、第1凝集工程において、コア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3未満又は9.0kW/m3超えで、コア用原料分散液Bを攪拌しながら、コア用樹脂粒子を凝集させる場合、又はコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s未満又は100Pa・s超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
<20>に係る発明によれば、融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%超えで、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる場合、又は融合合一工程において、融合合一温度が75℃未満又は100℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明を制限するものではない。
【0021】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0022】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0023】
本明細書において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0024】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0025】
本明細書において、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいう。
【0026】
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
本実施形態に係るトナーの製造方法は、
ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する第1凝集工程と、
コア凝集粒子及び水系媒体を含む分散液と、エステル構造を有するシェル用樹脂粒及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液と、を混合し、コア凝集粒子及びシェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する第2凝集工程と、
コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる融合合一工程と、
を有する。
【0027】
本実施形態に係るトナーの製造方法では、上記工程により、光沢むらを抑制するトナーが得られる。その理由は、次の通り推測される。
【0028】
近年、省エネルギーを目的とした低温定着トナーを開発するために、ガラス転移温度Tgの低い樹脂(具体的には、ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有する樹脂)を用いたトナーが知られている。
それと同時に、透明フィルムなど様々な記録媒体に対応できる記録媒体汎用性も求められている。
しかし、光沢むらが生じることがある。特に、例えば、フィルム上にトナーの載せ量の多い(画像密度の高い)画像を、高温環境下で高速で形成したときに、部分的な光沢ムラが発生し易い。
光沢むらが発生した画像の表面及び断面を観察すると、画像表面に泡(いわゆるブリスター)が発生したような微細凹凸が観測された。また、光沢むらが発生するトナー粒子の断面を観察すると、トナー粒子内部に空隙が多く、界面活性剤が多いトナーほど内部空隙多い。
【0029】
この現象が生じる理由は、次の通り推測される。ガラス転移温度Tgの低いエステル構造を有する樹脂粒子を用いた、凝集合一法によるトナー粒子の製造方法において、2価や3価の金属凝集剤及びアニオン性界面活性剤を用いると、凝集温度が20℃以上30℃以下の室温レベルでも、粒子同士が急凝集しやすく、ホモ凝集の優位性が上がり、空隙(内包水又は泡)の多い凝集体が形成されてしまう。特に、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を使用すると、泡立ちが生じ易く、発生した泡を内包して樹脂粒子が凝集し、空隙の多い凝集体が形成されてしまう。
そして、特に、トナーを記録媒体として透明フィルムに定着させる工程で、トナーを加熱して溶融した際に、内部空隙部分の内包水又及び空気が画像から抜けていく。しかし、透明フィルムのように凹凸の少ない透明フィルムへの画像形成では普通紙と場合と比較して空気及び水分の逃げ場が少ない。そのため、画像表面側から選択的に抜け、発泡して微細凹凸が発生し、この微細凹凸の部分で可視光が屈折して光沢ムラが生じる。
【0030】
そこで、本実施形態に係るトナーの製造方法では、凝集機能も有する材料として、エステル構造を有する樹脂粒子と反応性が低く、凝集力が弱い1価のカチオンを有するイオン性化合物を適用する。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤と比較して、泡立ちの少ないノニオン性界面活性剤を適用する。ノニオン性界面活性剤は、1価のカチオンを有するイオン性化合物とも相互作用し難く、凝集力が高まり難い。
その上で、第1凝集工程及び第2凝集工程で、各々、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以下の凝集温度で、各樹脂粒子を凝集させる。
それにより、ゆっくりと密に各樹脂粒子が凝集するため、空隙の少ないシェル付きコア凝集粒子が得られる。
そして、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させると、内部空隙が少なく、密なトナー粒子が得られる。これは、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上で融合合一することで、樹脂がゴム状態で分子運動が活発になり、樹脂粒子同士の間に内包した水などを排出し、樹脂粒子同士が充分に融着したトナー粒子が形成されると考えられるためである。また、ノニオン性界面活性剤の曇点以上で融合合一した場合、ノニオン性界面活性剤の水への溶解度が低下して析出する部分が発生し、白濁する。析出した部分は排出されづらく、白濁したままトナー粒子内部に残留しやすい。ノニオン性界面活性剤がトナー粒子内部に残留していると、画像形成の際に樹脂材料とノニオン性界面活性剤の界面で入射光が屈折し、光沢むらを引き起こすと考えられる。ノニオン性界面活性剤の水に溶解した部分は融合合一工程で水とともにトナー粒子の外側に排出されると考えられるため、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の凝集合一温度で融合合一する。
【0031】
以上から、光沢むらを抑制するトナーが得られると推測される。
【0032】
以下、本実施形態に係るトナーの製造方法の詳細について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、第1凝集工程と、第2凝集工程と、融合合一工程と、を経てトナー粒子を製造する。本実施形態に係るトナーの製造方法は、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添してもよい。
【0033】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、及び離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、及び離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0034】
(第1凝集工程)
第1凝集工程では、ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、凝集機能も有する材料として1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する。
【0035】
具体的には、第1凝集工程では、コア用樹脂粒子及び水系媒体を含むコア用樹脂粒子分散と、着色剤粒子及び水系媒体を含む着色剤粒子分散液と、離型剤粒子及び水系媒体を含む離型剤分散液と、ノニオン性界面活性剤と、を混合した後、各粒子及びノニオン性界面活性剤を含むコア用原料分散液Aに、凝集機能も有するイオン性化合物を添加する。それにより、コア用原料分散液B中で、各粒子をヘテロ凝集させ、コア凝集粒子を形成する。
なお、コア用原料分散液Aは、コア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア樹脂粒子分散液を使用して得ることが好ましい。
また、凝集機能も有するイオン性化合物は、5分以上かけてコア用原料分散液Bに添加することがよい。
【0036】
コア用樹脂粒子(具体的にはコア用樹脂粒子分散液)は、コア用樹脂粒子の凝集中に、凝集機能も有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bに、追加添加してもよい。コア用樹脂粒子の追加添加は、連続的に又は一括して凝集機能も有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bに添加しても、2回以上に分割してコア用原料分散液Bに添加してもよい。
イオン性化合物は、連続的に又は一括してコア用原料分散液Aに添加しても、2回以上に分割して分散液に添加してもよい。
コア用樹脂粒子、イオン性化合物を2回以上に分割して分散液に添加することで、ヘテロ凝集優位となる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
ノニオン性界面活性剤及びイオン性化合物を水系媒体に希釈又は溶解し、得られた溶液を使用してもよい。
【0037】
第1凝集工程において、コア用樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、40℃未満であるが、低温定着性の観点から、35℃以下が好ましく、30℃以下がさらに好ましい
コア樹脂粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0038】
第1凝集工程において、コア用樹脂粒子の体積平均粒径は、5nm以上500nm以下が好ましく、10nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上120nm以下がさらに好ましい。
コア用樹脂粒子の体積平均粒径を上記範囲にすると、ゆっくりと密にコア用樹脂粒子が凝集し易くなる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0039】
ここで、コア用樹脂粒子の体積平均粒径の測定方法は、次の通りである。
レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、(株)堀場製作所製、LA-700)の測定により粒度分布を得る。測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積を基準に小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vと定義する。
なお、粒径100nm以下の粒子が占める比率は、測定検出された粒子の内、0~100nmの粒度範囲(チャンネル)にカウントされた粒子の頻度を累積して求める。
【0040】
第1凝集工程において、コア用原料分散液A中のノニオン性界面活性剤の量は、コア用樹脂粒子に対して、0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上7質量%以下がより好ましい。
ただし、コア用原料分散液A中のノニオン性界面活性剤の量は、コア用樹脂粒子分散液に含むノニオン性界面活性剤の量を示し、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液、結晶性樹脂粒子分散液に含むノニオン性界面活性剤は除く。
【0041】
ノニオン性界面活性剤の量を上記範囲にすると、ゆっくりと密にコア用樹脂粒子が凝集し易くなる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0042】
第1凝集工程において、コア用原料分散液Aには、pH7.5以上のpH調整薬剤を含んでもよい。pH調整薬剤は、連続的に又は一括してコア原料分散液Aに添加してもよいが、2回以上に分割して分散液に添加してもよい。
pH調整薬剤を分散液に添加し、コア原料分散液AのpHを調整すること、また、pH調整剤を2回以上に分割して分散液に添加することで、ヘテロ凝集優位となる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0043】
第1凝集工程において、コア用原料分散液Aには、粘度調整剤を含んでもよい。粘度調整剤は、連続的に又は一括してコア用原料分散液Aに添加してもよいが、2回以上に分割して分散液に添加してもよい。
粘度調整剤を分散液に添加し、コア用原料分散液Aの粘度を調整することで、ゆっくりと密にコア用樹脂粒子が凝集し易くなる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0044】
第1凝集工程において、凝集温度は、コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下であるが、トナー粒子の内部空隙率の低下、及び光沢むらの抑制の観点から、(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-15℃)以上(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下であることが好ましい。
【0045】
第1凝集工程において、凝集機能も有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下(好ましくは0.1kW/m3以上6.0kW/m3以下、より好ましくは0.2kW/m3以上3.0kW/m3以下)で、コア用原料分散液Bを攪拌しながら、コア用樹脂粒子を凝集させることがよい。
そして、攪拌中の、凝集機能も有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度は、1Pa・s以上100Pa・s以下が好ましく、2Pa・s以上50Pa・s以下がより好ましく、5Pa・s以上30Pa・s以下がさらに好ましい。
【0046】
攪拌所要動力、及び粘度を上記範囲にすると、剪断力によるコア樹脂粒子の凝集と凝集粒子の解砕とのバランスが制御され、ヘテロ凝集優位な凝集粒子形成となる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0047】
単位体積当たりの攪拌所要動力は、次の通り算出される。
単位体積当たりの攪拌所要動力(kW/m3)=Np×n3d5/V
ただし、符号は、次の通りである。
Np:動力数(―)=P/(ρn3d5)
n:回転数(rad/sec)
d:攪拌翼径(m)
V:体積(m3)
P:動力(W)
ρ:液密度(kg/m3)
【0048】
攪拌中の、凝集機能も有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、剪断速度1/sにおける粘度は、コア用原料分散液Aに1価のカチオンを有するイオン性化合物の添加が完了した時点での分散液の粘度を示す。
剪断速度1/sにおける粘度の方法は、次の通りである。
まず、測定装置は、回転式粘度計を用いる。回転式粘度計の一例として、ブルックフィールド社製のR/Sプラスレオメーター(スピンドル:CP-75-1)が挙げられる。回転式粘度計を温度22℃25℃且つ相対湿度55%の環境下に設置する。攪拌中、測定に供する試料を複数分散液から回採取し、攪拌中の分散液の粘度を測定する。
具体的には、温度25℃に調整した分散液3gを試料に対して、剪断速度0.5/s以上12/s以下の範囲で、剪断速度(s-1)を毎秒0.2刻みで上昇させ次いで下降させ、2秒おきに剪断応力(Pa)の測定を行う。横軸に剪断速度(s-1)の常用対数をとり、縦軸に剪断応力(Pa)と剪断速度(s-1)から求まる粘度(Pa・s)の常用対数をとり、剪断速度に対する粘度をプロットして、上昇時及び下降時それぞれの直線を描く。
上昇時及び下降時の直線それぞれにおいて、1/s(剪断速度の常用対数=0)における粘度の常用対数の値(直線の切片)から1/sにおける粘度(Pa・s)を求め、2つの平均値を求める。測定を3回行い、さらに平均値を求め、剪断速度1/sにおける粘度(Pa・s)とする。
【0049】
第1凝集工程において、イオン性化合物の添加前(つまり凝集前)に、コア用原料分散液Aを、冷却設備を使用し、単位体積当たりの攪拌所要動力0.05(kW/m3)以上1.0(kW/m3)以下で、撹拌しながら、コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下に冷却する予備混合を実施してもよい。
【0050】
第1凝集工程において、得られるコア凝集粒子及び水系媒体を含むコア凝集粒子分散液の固形分濃度は、2質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上18質量%以下がより好ましく、10質量%以上17質量%以下がより好ましい。
コア凝集粒子分散液の固形分濃度上記範囲にすることで、ゆっくりと密にコア用樹脂粒子が凝集し易くなる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0051】
(第2凝集工程)
第2凝集工程では、コア凝集粒子及び水系媒体を含むコア凝集粒子分散液、及びエステル構造を有するシェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液と、を混合し、コア凝集粒子及びシェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する。
【0052】
具体的に、例えば、第2凝集工程では、第1凝集工程において、コア凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、コア凝集粒子及び水系媒体を含むコア凝集粒子分散液に、シェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加する。そして、コア凝集粒子及びシェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、シェル付きコア凝集粒子を形成してもよい。
【0053】
コア凝集粒子分散液には、シェル用樹脂粒子分散液と共に、離型剤粒子分散液を添加してもよい。また、予め、離型剤粒子分散液をシェル用樹脂粒子分散液に添加した分散液を、コア凝集粒子分散液に添加してもよい。それらにより、シェル用樹脂粒子及び離型剤粒子がコア凝集粒子に凝集した、シェル付きコア凝集粒子が得られる。
【0054】
第2凝集工程では、上記凝集操作を2回以上繰り返してもよい。つまり、第2凝集工程を複数回行ってもよい。2回以上の凝集操作のうち、最後の凝集操作を除いた、少なくとも1回の凝集操作で、コア凝集粒子分散液に、シェル用樹脂粒子分散液と共に離型剤粒子分散液を添加することがよい。
【0055】
コア凝集粒子及びシェル用樹脂粒子を含む混合分散液に、ノニオン性界面活性剤、及び凝集機能も有する材料として1価のカチオンを有するイオン性化合物の少なくとも一方をさらに添加してもよい。
第2凝集工程で用いるイオン性化合物は、第1凝集工程で用いるイオン性化合物よりも、ホフマイスター系列で同じ又は強い凝集力のイオン性化合物であることが好ましい。そして、凝集機能も有する材料としてのイオン性化合物は、5分以上かけて混合分散液に添加することがよい。
【0056】
シェル用樹脂粒子分散液は、連続的又は一括してコア凝集粒子分散液に添加しても、2回以上に分割して分散液に添加してもよい。
イオン性化合物は、連続的に又は一括して混合分散液に添加しても、2回以上に分割して分散液に添加してもよい。
シェル用樹脂粒子分散液、及びイオン性化合物を2回以上に分割して分散液に添加することで、ヘテロ凝集優位となる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
ノニオン性界面活性剤及びイオン性化合物を水系媒体に希釈又は溶解し、得られた溶液を使用してもよい。
【0057】
シェル用樹脂粒子のガラス転移温度は、コア用樹脂粒子のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、シェル用樹脂粒子とコア用樹脂粒子とのガラス転移温度の差は、1℃以上40℃以下が好ましく、5℃以上40℃以下がより好ましく、10℃以上40℃以下がさらに好ましい。
シェル用樹脂粒子のガラス転移温度は、40℃以上70℃以下が好ましく、45℃以上65℃以下がより好ましく、50℃以上65℃以下がさらに好ましい。
シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が上記関係又は上記範囲を満たすと、第2凝集工程でシェル用樹脂粒子が充分に流動し、シェル用樹脂同士の間およびシェル用樹脂とコア用樹脂の間に存在する内包水などがトナー粒子の外側に排出され、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなる。また、画像形成の際に印刷機内での温度上昇に伴う粗大粒子形成が抑制されるため、画像層の凹凸の発生が抑制され、光沢むらの発生が抑制される。
【0058】
なお、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度は、コア用樹脂粒子のガラス転移温度と同様な方法で測定される。
【0059】
コア用樹脂粒子とシェル用樹脂粒子との溶解度パラメーターの差は、絶対値で0以上1.5以下が好ましく、0以上1.2以下がより好ましく、0以上0.9以下がより好ましい。
溶解度パラメーターの差を上記範囲にすると、密にシェル用樹脂粒子がコア凝集粒子に凝集し易くなる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0060】
樹脂粒子の溶解度パラメーター(SP値=δ)は、凝集エネルギー密度の関数として次の式で定義された値である。
δ=(ΔE/V)1/2
△E:分子間凝集エネルギー(蒸発熱)
V:混合液の全体質
△E/V:凝集エネルギー密度
また、樹脂のモノマー組成が判明している場合には以下のFedorらの方法(Polym.Eng.Sci.,14[2](1974)記載の方法)を用いて計算できる。
SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
Δei:原子または原子団の蒸発エネルギー
Δvi:原子または原子団のモル体積
なお、本明細書の記載のSP値としては、主にモノマー組成から計算により求めた値を用いる。
【0061】
第2凝集工程において、コア用樹脂粒子に対するシェル用樹脂粒子の量(つまり、コア用樹脂粒子に対してシェル用樹脂粒子を混合する割合)は、40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
シェル用樹脂粒子の量を上記範囲にすると、密にシェル用樹脂粒子がコア凝集粒子に凝集し易くなる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0062】
第2凝集工程において、シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度は、コア凝集粒子分散液の固形分濃度よりも高いことが好ましい。
シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度とコア凝集粒子分散液の固形分濃度との差(シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度-コア凝集粒子分散液の固形分濃度)は、2質量%以上40質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上25質量%以下が更に好ましい。
シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度は、3質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上35質量%以下が更に好ましい。
シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度を上記関係又は上記範囲にすると、ゆっくりと密にシェル用樹脂粒子がコア凝集粒子に凝集し易くなる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0063】
第2凝集工程において、凝集温度は、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下であるが、トナー粒子の内部空隙率の低下、及び光沢むらの抑制の観点から、(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-15℃)以上(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下であることが好ましい。
【0064】
第2凝集工程において、混合分散液の単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下(好ましくは0.1kW/m3以上6.0kW/m3以下、より好ましくは0.2kW/m3以上3.0kW/m3以下)で、混合原料分散液を攪拌しながら、コア凝集粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させることがよい。
そして、攪拌中の混合分散液の、25℃、剪断速度1/sにおける粘度は、1Pa・s以上100Pa・s以下が好ましく、2Pa・s以上50Pa・s以下がより好ましく、5Pa・s以上40Pa・s以下がさらに好ましい。
【0065】
攪拌所要動力、及び粘度を上記範囲にすると、剪断力によるシェル用樹脂粒子の凝集と凝集粒子の解砕とのバランスが制御され、ヘテロ凝集優位な凝集粒子形成となる。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0066】
第2凝集工程では、例えば、上記凝集操作を終了後、シェル付きコア凝集粒子の粒径が目的の粒径に達したときに、混合溶液に、凝集停止剤を添加し、シェル用樹脂粒子の凝集を停止する。凝集停止剤の添加は、混合溶液の液温が、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度未満の温度で実施することがよい。
【0067】
(融合合一工程)
融合合一工程では、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる。
【0068】
融合合一工程において、トナー粒子の内部空隙率の低下、及び光沢むらの抑制の観点から、融合合一温度は、(コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度+5℃)以上、(ノニオン性界面活性剤の曇点-3℃)以下が好ましく、具体的には、75℃以上100℃以下が好ましい。また、トナー粒子に離型剤を含んでもよく、その場合は(離型剤の融点―15℃)以上(ノニオン性界面活性剤の曇点-3℃)以下で融合合一することが好ましい。
【0069】
ここでノニオン性界面活性剤の曇点とシェル用樹脂粒子のガラス転移温度との差(ノニオン性界面活性剤の曇点-シェル用樹脂粒子のガラス転移温度)は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
ノニオン性界面活性剤の曇点は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0070】
なお、ノニオン性界面活性剤の曇点は、融合合一温度よりも高い温度であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤の曇点以上で融合合一した場合、ノニオン性界面活性剤の水への溶解度が低下して析出する部分が発生し、白濁する。析出した部分は排出されづらく、白濁したままトナー粒子内部に残留しやすい。ノニオン性界面活性剤がトナー粒子内部に残留していると、画像形成の際に樹脂材料とノニオン性界面活性剤の界面で入射光が屈折し、光沢むらを引き起こすと考えられる。ノニオン性界面活性剤の水に溶解した部分は融合合一工程で水とともにトナー粒子の外側に排出されると考えられるため、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の温度で融合合一することが好ましい。
【0071】
ノニオン性界面活性剤の曇点の測定方法は、次の通りである。
耐圧の試験管に脱イオン水20mLを入れ、ノニオン性界面活性剤を3質量%添加し蓋で密閉する。密閉した試験官を恒温槽に浸けて振とうさせながら1℃/10分の速度で、白濁が現れるまで昇温する。白濁が現れた温度+2℃の温度で昇温を止め、1℃/10分の速度で白濁が消失する温度-2℃まで冷却し、白濁の現れた温度と焼失した温度の中間の温度を曇点とする。
【0072】
融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%以下(好ましくは4%以下)になるまで、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させることがよい。
得られるトナー粒子の部空隙率が上記範囲になるまで、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させることで、内部空隙率が低いトナー粒子が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0073】
トナー粒子の内部空隙率は、次の通り測定される。
トナー粒子(又はトナー)を切削した断面を染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査電子顕微鏡 (SEM)による観察画像を解析することで測定する。具体的には、例えば、以下の通りであるが、限定されるものではなく、染色剤は、結着樹脂等の種類に応じて、材料ごとの染色具合に差がつくように、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム、リンタングステン酸、酢酸ウラニル、ヨウ素などから適するものを選択する。
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製)7gと硬化剤であるZENAMID250(ヘンケルジャパン社製)3gを静かに混合、調製した後、トナーを1g混合し24時間放置することで硬化物が得られる。この硬化物をダイヤモンドナイフ(型番Type Cryo、DIATOME社製)を備え付けた切削装置LEICAウルトラミクロトーム(型番ULTRACUT UCT、(株)日立ハイデクノロジーズ製)を用いて、-100℃下にて包埋した切削用サンプルを切削し、観察用サンプルを作成する。この観察用サンプルを四酸化ルテニウム(添川理化学(株)製)雰囲気下であるデシケータ内に放置し、染色する(染色具合の判断は、同時に放置したテープの染色具合より判断する)。染色した観察用サンプルより、透過電子検出器を備えた日立高分解能電解放出型走査電子顕微鏡(S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)にて染色したトナーの断面図を1万以上10万倍以下の拡大倍率で観察する。観察したTEMの画像を電子化した後、三谷商事株式会社製の画像解析ソフト(Win ROOF)に取り込み、包埋剤の中のトナー断面領域を選択対象として選択、「2値化処理」コマンドの「自動2値化-判別分析法」を用いて2値化処理を行い、トナー粒子1000個について、トナー粒子断面積に対する空隙部分の占める割合を算出する。
材料種の判断は、非晶性樹脂、結晶性樹脂、着色剤、離型剤など、それぞれの材料単体およびその混合物を染色したものと比較して行い、どの材料にも該当しない黒色部分を空隙部として扱った。
写真の撮影濃度、ノイズなどにより2値化が正常に行えない場合は「フィルタ-メディアン」処理又はエッジ抽出処理を行うことにより画像の鮮明化を行ったうえで、手動で境界を設定する。
【0074】
以上の工程を経て、トナー粒子が形成される。
融合合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
【0075】
洗浄工程は、帯電性の点から十分に洗浄水による置換洗浄を施すことがよい。
特に、ノニオン性界面活性剤を十分に除去する観点から、洗浄水温度は(コア用樹脂粒子のガラス転移温度)以上(コア用樹脂粒子のガラス転移温度+20℃)以下、トナー粒子に対する洗浄水量15L/kg以上、(トナー分散液pHを9以上13以下に調整、5分以上攪拌し濾過)および(トナー分散液pHを1以上5以下に調整、5分以上攪拌し濾過)を含む工程を繰り返して洗浄することが好ましい。
【0076】
固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。
【0077】
乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
特に、乾燥効率と粗大粒子発生抑制の観点から、5℃以上(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-10℃)以下の温度条件で、乾燥を実施することがよい。
【0078】
そして、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0079】
ここで、外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0080】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0081】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0082】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0083】
(トナー粒子の特性等)
本実施形態に係るトナーの製造方法により得られるトナー粒子の特性は、次の通りである。
【0084】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上15μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0085】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0086】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0087】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0088】
<静電荷像現像用トナーの製造方法で使用する各種材料>
以下、静電荷像現像用トナーの製造方法で使用する各種材料について説明する。
【0089】
(樹脂粒子分散液)
コア用樹脂粒子分散液及びシェル用樹脂粒子分散液(以下、まとめて「樹脂粒子分散液」とも称する)は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0090】
コア用樹脂粒子、及びシェル用樹脂粒子に適用される樹脂粒子は、エステル構造を有する樹脂粒子(具体的には非晶性樹脂粒子)が適用される。
コア用樹脂粒子、及びシェル用樹脂粒子に適用される非晶性樹脂粒子と共に、結晶性樹脂粒子を併用してもよい。つまり、コア用樹脂粒子、及びシェル用樹脂粒子以外に、結晶性樹脂粒子を使用してもよい。結晶性樹脂粒子は、コア用原料分散液Aに含むことがよい。
ただし、非晶性樹脂粒子と結晶性樹脂粒子とを併用する場合、トナー粒子中の非晶性樹脂と結晶性樹脂との質量比(結晶性樹脂/非晶性樹脂)が、3/97以上50/50以下となる量比で使用することが好ましく、7/93以上30/70以下となる量比で称することがより好ましい。
【0091】
ここで、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いた熱分析測定において、明確な吸熱ピークではなく、階段状の吸熱変化のみを有するものであり、常温固体で、ガラス転移温度以上の温度において熱可塑化するものを指す。
一方、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものをいう。
具体的には、例えば、結晶性樹脂とは、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを意味し、非晶性樹脂とは、半値幅が10℃を超える樹脂、又は明確な吸熱ピークが認められない樹脂を意味する。
【0092】
エステル構造を有する非晶性樹脂粒子を構成するエステル構造を有する非晶性樹脂について説明する。
エステル構造を有する非晶性樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂セグメントとスチレンアクリル樹脂セグメントとを有するハイブリッド非晶性樹脂が挙げられる。
【0093】
ここで、ハイブリット非晶性樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂セグメントとスチレンアクリル樹脂セグメントとが化学結合している非晶性樹脂である。
ハイブリッド非晶性樹脂は、ポリエステル樹脂からなる主鎖と、該主鎖に化学結合したスチレンアクリル樹脂からなる側鎖とを有する樹脂;スチレンアクリル樹脂からなる主鎖と、該主鎖に化学結合したポリエステル樹脂からなる側鎖とを有する樹脂;ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂とが化学結合してなる主鎖を有する樹脂;ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂とが化学結合してなる主鎖と、該主鎖に化学結合したポリエステル樹脂からなる側鎖及び該主鎖に化学結合したスチレンアクリル樹脂からなる側鎖の少なくとも一方の側鎖とを有する樹脂;等が挙げられる。
【0094】
各セグメントの非晶性ポリエステル樹脂及びスチレンアクリル樹脂については、上述下通りであり、説明を省略する。
【0095】
ハイブリッド非晶性樹脂全体に占めるポリエステル樹脂セグメントとスチレンアクリル樹脂セグメントとの総量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
【0096】
ハイブリッド非晶性樹脂において、ポリエステル樹脂セグメントとスチレンアクリル樹脂セグメントとの合計量に占めるスチレンアクリル樹脂セグメントの割合は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。
【0097】
ハイブリッド非晶性樹脂は、以下の(i)~(iii)のいずれかの方法により製造することが好ましい。
(i)多価アルコールと多価カルボン酸との縮重合によってポリエステル樹脂セグメントを作製した後、スチレンアクリル樹脂セグメントを構成する単量体を付加重合させる。
(ii)付加重合性単量体の付加重合によってスチレンアクリル樹脂セグメントを作製した後、多価アルコールと多価カルボン酸とを縮重合させる。
(iii)多価アルコールと多価カルボン酸との縮重合と、付加重合性単量体の付加重合とを並行して行う。
【0098】
ハイブリッド非晶性樹脂は、全結着樹脂に占める割合が60質量%以上98質量%以下であることが好ましく、65質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
【0099】
以下、非晶性ポリエステル樹脂について説明する。
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0100】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、芳香族ジオールがより好ましい。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
非晶性ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0103】
非晶性ポリエステル樹脂としては、未変性の非晶性ポリエステル樹脂以外に、変性の非晶性ポリエステル樹脂も挙げられる。変性の非晶性ポリエステル樹脂とは、エステル結合以外の結合基が存在する非晶性ポリエステル樹脂、ポリエステルとは異なる樹脂成分が共有結合又はイオン結合等で結合された非晶性ポリエステル樹脂である。変性の非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、イソシアネート基等の官能基を末端に導入した非晶性ポリエステル樹脂と活性水素化合物とを反応させて末端を変性した樹脂が挙げられる。
【0104】
非晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に占める割合が60質量%以上98質量%以下であることが好ましく、65質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
【0105】
以下、スチレンアクリル樹脂について説明する。
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系単量体(スチレン骨格を有する単量体)と(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル基を有する単量体、好ましくは(メタ)アクリロキシ基を有する単量体)とを少なくとも共重合した共重合体である。スチレンアクリル樹脂は、例えば、スチレン類の単量体と(メタ)アクリル酸エステル類の単量体との共重合体を含む。
なお、スチレンアクリル樹脂におけるアクリル樹脂部分は、アクリル系単量体及びメタクリル系単量体のいずれか、又は、その両方を重合してなる部分構造である。また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現である。
【0106】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、メタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフルオロスチレン、パラメトキシスチレン、メタ-tert-ブトキシスチレン、パラ-tert-ブトキシスチレン、パラビニル安息香酸、パラメチル-α-メチルスチレン等が挙げられる。スチレン系単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との重合比は、質量基準で、スチレン系単量体:(メタ)アクリル系単量体=70:30~95:5が好ましい。
【0109】
スチレンアクリル樹脂は、架橋構造を有していてもよい。架橋構造を有するスチレンアクリル樹脂は、例えば、スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体と架橋性単量体とを共重合することで製造できる。架橋性単量体としては、特に制限されないが、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0110】
スチレンアクリル樹脂の作製方法は、特に制限はなく、例えば、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合が適用される。重合反応には、公知の操作(例えば、回分式、半連続式、連続式等)が適用される。
【0111】
非晶性樹脂の特性について説明する。
非晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0112】
結晶性樹脂粒子を構成する結晶性樹脂について説明する。
結晶性樹脂としては、エステル構造を有する結晶性樹脂、具体的には結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香環を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族の重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0113】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0116】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステル樹脂と同様に、公知の製造方法により得られる。
【0117】
結晶性ポリエステル樹脂としては、α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸とα,ω-直鎖脂肪族ジオールとの重合体が好ましい。
【0118】
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、2個のカルボキシ基をつなぐアルキレン基の炭素数が3以上14以下であるα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、前記アルキレン基の炭素数は4以上12以下がより好ましく、前記アルキレン基の炭素数は6以上10以下が更に好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸(慣用名スベリン酸)、1,7-ヘプタンジカルボン酸(慣用名アゼライン酸)、1,8-オクタンジカルボン酸(慣用名セバシン酸)、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸が好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
α,ω-直鎖脂肪族ジオールとしては、2個のヒドロキシ基をつなぐアルキレン基の炭素数が3以上14以下であるα,ω-直鎖脂肪族ジオールが好ましく、前記アルキレン基の炭素数は4以上12以下がより好ましく、前記アルキレン基の炭素数は6以上10以下が更に好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール等が挙げられ、中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
α,ω-直鎖脂肪族ジオールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0120】
α,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸とα,ω-直鎖脂肪族ジオールとの重合体としては、画像抜け抑制の観点から、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、及び1,10-デカンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種と、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種との重合体が好ましく、中でも、1,10-デカンジカルボン酸と1,6-ヘキサンジオールとの重合体がより好ましい。
【0121】
結晶性樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0122】
結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0123】
樹脂粒子分散液に用いる水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0124】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等のノニオン(非イオン)系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、トナー粒子の内部空隙率の低下、及び光沢むらの抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0126】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0127】
(着色剤粒子分散液)
着色剤粒子分散液は、少なくとも水系媒体に着色剤を分散させた分散液である。
着色剤粒子分散液は、界面活性剤により、水系媒体に着色剤を分散させてもよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0128】
着色剤粒子に用いる水系媒体については、後述する。
着色剤粒子に用いる界面活性剤としては、例えば、樹脂粒子分散液に使用する界面活性剤が挙げられる。
【0129】
着色剤は、水系媒体に公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。また、着色剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、ホモジナイザーを用いて水媒体中に分散し、着色剤粒子分散液を作製してもよい。
【0130】
着色剤の体積平均粒径としては、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上0.5μm以下であることが特に好ましい。
【0131】
(離型剤粒子分散液)
離型剤粒子分散液は、少なくとも水系媒体に離型剤を分散させた分散液である。
離型剤粒子分散液は、界面活性剤により、水系媒体に離型剤を分散させてもよい。
【0132】
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
離型剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0133】
離型剤粒子に用いる水系媒体については、後述する。
離型剤粒子に用いる界面活性剤としては、例えば、樹脂粒子分散液に使用する界面活性剤が挙げられる。
【0134】
離型剤は、水系媒体に公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。また、離型剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、ホモジナイザーを用いて水系媒体中に分散し、離型剤粒子分散液を作製してもよい。
離型剤粒子の体積平均粒径としては、1μm以下が好ましく、0.01μm以上1μm以下がより好ましい。
【0135】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;アルキルグリコシド;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、などが挙げられる。
これらの中でも、トナー粒子の内部空隙率の低下、及び光沢むらの抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤としては、曇点の高いポリオキシエチレンアルキルエーテル類が好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい
【0136】
(イオン性化合物)
凝集機能も有する材料として、1価のカチオンを有するイオン性化合物を適用する。
具体的には、イオン性化合物は、1価のカチオンとアニオンとを有するイオン性化合物が挙げられる。
1価のカチオンとしては、NH4
+、Rb+、K+、Na+、Li+、Cs+等が挙げられる。
アニオンとしては、クエン酸(3-)、SO4
(2-)、PO4
(3-)、HPO4
(2-)、NO3
-、Cl-、Br-、F-、I-、ClO4
-、酒石酸、酢酸、等が挙げられる。
これらの中でも、NH4
+、K+、Na+から選択される1価のカチオンと、SO4
(2-)、PO4
(3-)、NO3
-から選択されるアニオンと、を有するイオン性化合物が好ましい。これらイオン性化合物は、凝集力が弱く、ゆっくりと密に樹脂粒子が凝集し易い。その結果、内部空隙率が低い凝集粒子(つまりトナー粒子)が得られ易くなり、さらに光沢むらの発生が抑制される。
【0137】
イオン性化合物として具体的には、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウムが挙げられる。中でも水系媒体への溶解度等の観点で硫酸カリウムや硫酸アンモニウムが好適に挙げられる。
イオン性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい
【0138】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、および、硝酸、硫酸、炭酸、塩酸、リン酸、等の酸類が挙げられる。中でも、凝集工程(特に第1凝集工程)においては、2価以上の金属元素を含まない水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび硝酸、硫酸などを用いることが好ましい。
pH調整剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0139】
(粘度調整剤)
粘度調整剤としては、増粘剤、減粘剤のいずれも挙げられる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA))
減粘剤としては、各種界面活性剤が挙げられる。
粘度調整剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。粘度調整剤を使用せず、材料粒子分散液の粒径を調整して粘度調整を行ってもよい。
【0140】
(凝集停止剤)
凝集停止剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アルカリ金属塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
凝集停止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい
【0141】
(水系媒体)
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。
水系媒体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい
【0142】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーの製造方法より得られるトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0143】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0144】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0145】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0146】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0147】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0148】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0149】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0150】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0151】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0152】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0153】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0154】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0155】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0156】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0157】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0158】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0159】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0160】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0161】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0162】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0163】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0164】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0165】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0166】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0167】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0168】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0169】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0170】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0171】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例0172】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0173】
<ハイブリッド樹脂の合成、及び樹脂粒子分散液の調製>
(ハイブリッド非晶性樹脂(H1)、及び非晶性樹脂粒子分散液(H1))
-非晶性ポリエステル樹脂P1の合成-
窒素導入管、脱水管、攪拌機、及び熱電対を備えた四つ口フラスコの内部を窒素置換し、エチレングリコール150モル部、テレフタル酸84モル部、及びドデセニル無水コハク酸9モル部を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら、230℃に昇温し、4時間維持した。次にフラスコ内の圧力を下げ、9.0kPaにて1時間維持した。フラスコ内の圧力を大気圧に戻した後、190℃に冷却し、フマル酸5モル部及びトリメリット酸2モル部を加え、190℃の温度下で2時間維持した後に、2時間かけて205℃まで昇温した。次にフラスコ内の圧力を下げ、9.0kPaにて3時間維持した後、アルコールを留去して、非晶性ポリエステル樹脂P1を得た。
【0174】
-非晶性ポリエステル樹脂P1のスチレンアクリル変性、及び非晶性樹脂粒子分散液H1の調製-
冷却管、攪拌装置、及び熱電対を備えた内容積2リットルの4つ口フラスコに非晶性ポリエステル樹脂P1を70質量部入れ、窒素雰囲気下、攪拌速度200rpmにて攪拌を行った。その後、合計30質量部の付加重合性モノマーとしてスチレンとアクリル酸エチルを40モル部:60モル部の割合で添加し、溶媒として酢酸エチルを500質量部添加し、30分間混合した。
【0175】
さらに、非晶性ポリエステル樹脂P1及び付加重合性モノマーの合計量1000部に対して、日油社製「ノニオン K-230」を有効成分換算で12部、及び5%水酸化カリウム233部を入れ、攪拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物溶液を得た。
次に、攪拌しながら、1145部の脱イオン水を6部/分の速度で滴下し、乳化物を得た。次に、乳化物を15℃に冷却し、200メッシュの金網を通し、脱イオン水を加えて、固形分濃度を20%に調製して、体積平均粒径100nmのハイブリッド非晶性樹脂粒子が分散した非晶性樹脂粒子分散液(H1)を得た。ハイブリッド非晶性樹脂(H1)のガラス転移温度は30℃であった。樹脂粒子分散液の分散安定化のため、日油社製「ノニオン K-230」を有効成分換算で8部添加した。
【0176】
(ハイブリッド非晶性樹脂(H2)、及び非晶性樹脂粒子分散液(H2))
ハイブリッド非晶性樹脂(H1)、及び非晶性樹脂粒子分散液(H1)において、スチレンとアクリル酸エチルを50モル部:50モル部の割合とした以外は、同様にしてハイブリッド非晶性樹脂(H2)、及び非晶性樹脂粒子分散液(H2)を得た。
【0177】
<非晶性ポリエステル樹脂の合成、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製>
(非晶性ポリエステル樹脂(A1)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1))
-非晶性ポリエステル樹脂(A1)の合成-
・テレフタル酸 :65部
・フマル酸 :35部
・エチレングリコール :40部
・1,5-ペンタンジオール:45部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えた反応槽に上記の材料を入れ、窒素ガス気流下、1時間を要して温度を220℃まで上げ、上記の材料の合計100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら0.5時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。こうして、重量平均分子量60000、ガラス転移温度59℃の非晶性ポリエステル樹脂(A1)を得た。
【0178】
-非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)の調製-
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた槽に、酢酸エチル53部及び2-ブタノール25部を入れ混合溶剤とした後、非晶性ポリエステル樹脂(A1)100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間攪拌した。次いで、反応容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水200部を滴下し、乳化を行った。滴下終了後、乳化液を25℃に戻し、減圧下で溶剤を除去して、体積平均粒径170nmの樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。この樹脂粒子分散液にイオン交換水を加えて固形分量を50%に調製して、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)を得た。
【0179】
(非晶性ポリエステル樹脂(A2)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A2)
非晶性ポリエステル樹脂(A1)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)において、重量平均分子量80000、ガラス転移温度69℃となるまで脱水縮合反応を延長した以外は、同様にして非晶性ポリエステル樹脂(A2)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A2)を得た。
【0180】
(非晶性ポリエステル樹脂(A3)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A3)
非晶性ポリエステル樹脂(A1)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)において、重量平均分子量110000、ガラス転移温度72℃となるまで脱水縮合反応を延長した以外は、同様にして非晶性ポリエステル樹脂(A3)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A3)を得た。
【0181】
(非晶性ポリエステル樹脂(A4)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A4)
非晶性ポリエステル樹脂(A1)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)において、脱水縮合反応の温度を210℃に変更し、重量平均分子量50000、ガラス転移温度55℃となった時点で脱水縮合反応を停止した以外は、同様にして非晶性ポリエステル樹脂(A4)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A4)を得た。
【0182】
(非晶性ポリエステル樹脂(A5)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A5)
非晶性ポリエステル樹脂(A1)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)において、脱水縮合反応の温度を210℃に変更し、重量平均分子量40000、ガラス転移温度51℃となった時点で脱水縮合反応を停止した以外は、同様にして非晶性ポリエステル樹脂(A5)、及び非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A5)を得た。
【0183】
<結晶性ポリエステル樹脂の合成、及び結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製>
(結晶性ポリエステル樹脂(C1)、結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1))
-結晶性ポリエステル樹脂(C1)の合成-
・1,10-デカンジカルボン酸:2600部
・1,6-ヘキサンジオール :1670部
・ジブチル錫オキサイド(触媒):3部
加熱乾燥した反応槽に上記の材料を入れ、反応槽内の空気を窒素ガスで置換して不活性雰囲気とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌還流を行った。次いで、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させた。こうして、重量平均分子量12600、融解温度73℃の結晶性ポリエステル樹脂(C1)を得た。
【0184】
-結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1)の作製-
結晶性ポリエステル樹脂(C1)900部と日油社製「ノニオン K-230」:有効成分換算で18部とイオン交換水2100部とを混合し、120℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行い、体積平均粒径160nmの樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。この樹脂粒子分散液にイオン交換水を加えて固形分量を35%に調整して、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1)を得た。
【0185】
<シアン着色粒子分散液(PC1)の作製>
・C.I.Pigment Blue 15:3(フタロシアニン系顔料、大日精化製、シアニンブルー4937) :500部
・日油社製「ノニオン K-230」 :有効成分換算で50部
・イオン交換水: 1930部
上記成分を混合し、アルティマイザ(スギノマシン社製)により240MPaで10分処理し、シアン着色粒子分散液(PC1)(固形分濃度:20%)を調製した。
【0186】
<離型剤粒子分散液(W1)の作製>
・パラフィンワックス(日本精蝋社製、FNP92、融解温度92℃):1000部
・日油社製「ノニオン K-230」 :有効成分換算で10部
・イオン交換水 :3500部
上記の材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径220nmの離型剤粒子が分散した離型剤粒子分散液を得た。この離型剤粒子分散液にイオン交換水を加えて固形分量を20%に調整して、離型剤粒子分散液(W1)とした。
【0187】
<イオン性化合物溶液の調製>
(硫酸カリウム溶液(AG1))
硫酸カリウム4部をイオン交換水96部に溶解させ、水酸化カリウムでpH8に調整し、硫酸カリウム溶液(AG1)とした。
【0188】
(硫酸アンモニウム溶液(AG2))
硫酸アンモニウム4部をイオン交換水96部に溶解させ、水酸化カリウムでpH8に調整し、硫酸アンモニウム溶液(AG2)とした。
【0189】
(塩化マグネシウムム溶液(AG3))
塩化マグネシウム4部をイオン交換水96部に溶解させ、水酸化カリウムでpH8に調整し、塩化マグネシウム溶液(AG3)とした。
【0190】
<ノニオン性界面活性剤溶液の調製>
(ノニオン性界面活性剤溶液(SN1)
ノニオン性界面活性剤として、日油社製「ノニオン K-230」にイオン交換水を添加して、有効成分換算で10%に希釈し、ノニオン性界面活性剤溶液(SN1)とした。
【0191】
(ノニオン性界面活性剤溶液(SN2)
ノニオン性界面活性剤として、日油社製「ノニオン E-212」にイオン交換水を添加して、有効成分換算で10%に希釈し、ノニオン性界面活性剤溶液(SN2)とした。
【0192】
<アニオン性界面活性剤溶液の調製>
(アニオン性界面活性剤溶液SA1)
アニオン性界面活性剤として新日本理化株式会社製「シノリン SPE-1250」にイオン交換水を添加して、有効成分換算で10%に希釈し、アニオン性界面活性剤溶液(SA1)とした。
【0193】
<実施例1>
(トナー粒子の作製)
-第1凝集工程-
・コア用樹脂粒子分散液(ハイブリッド非晶性樹脂粒子分散液(H1)):600部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1):59.4部
・シアン着色粒子分散液(PC1):147部
・離型剤粒子分散液(W1):120部
・ノニオン性界面活性剤溶液(SN1):24部(有効成分で2.4部)
・イオン交換水:400部
上記原材料を温度計、pH計及び攪拌機を備えた反応容器に入れて、コア用原料分散液Aを調製した後、2枚パドルの攪拌翼を有する攪拌装置及び温度計を備えた重合釜1にコア用原料分散液Aを移し、氷浴とマントルヒーターで15℃に調節しながら、攪拌所要動力0.01(kW/m3)で攪拌混合した。
次いで、コア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物である硫酸カリウム溶液(AG1)800部を30分間かけて滴下した後、コア用原料分散液Bをマントルヒーターで1時間かけて凝集温度(凝集温度の最高値、以下同様)25℃まで昇温し、各粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成した。
なお、第1凝集工程においてコア用原料分散液Aにイオン性化合物を添加後、第2凝集工程でシェル用樹脂粒子分散液を入れるまでの間は、表1に示す撹拌所要動力で、表1に示す粘度となるコア用原料分散液Bを撹拌した。
【0194】
-第2凝集工程-
さらに、新しい2Lの円筒ステンレス容器Last(直径20cm)に、シェル用樹脂粒子分散液(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)):60部を入れた後、2枚パドルの攪拌翼を有する攪拌装置及び温度計を備えた重合釜2にシェル用樹脂粒子分散液を移し、表1の固形分濃度になるようにイオン交換水を加え、氷浴とマントルヒーターで20℃に調節しながら攪拌所要動力0.3(kW/m3)で攪拌混合した。
【0195】
次に、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を使用して、重合釜1内のコア凝集粒子の粒度分布を確認し、体積平均粒径D50vが5.4μmを超えたことを確認した後、重合釜2に入ったシェル用樹脂粒子分散液全てを重合釜1内に10分間かけて滴下した。混合分散液をマントルヒーターで凝集温度(つまり凝集温度の最高値)32℃まで昇温し、コア凝集粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成した。
また、第2凝集工程において、表1に示す撹拌所要動力で、混合分散液を撹拌した。
【0196】
-凝集停止工程-
コア凝集粒子にシェル用樹脂粒子が凝集し、シェル付き凝集粒子の体積平均粒径D50vが5.8μmを超えたことを確認した後、アニオン性界面活性剤溶液(SA1)を150部添加し、凝集を停止させた。
【0197】
-融合合一工程-
次に、融合合一温度85℃まで1.0時間かけて昇温し、その温度で保持し、シェル付き凝集粒子を溶融合一した。
そして、溶融合一粒子の平均円形度が0.960を超えたとことを確認した後、氷浴で30℃まで2分間で急速冷却した。
その後、溶融合一粒子を、15μmナイロンメッシュを用いた篩分で粗大粉を除去、固形分を濾別した後、繰り返し洗浄を実施した。
ここで、繰り返し洗浄は、次の通り実施した。温度37℃のイオン交換水2000部を添加、攪拌所要動力0.2(kW/m3)で攪拌して溶融合一粒子を再度分散させ、pHが9.5になるまで水酸化カリウム水溶液を添加し、そのままの回転数で10分間攪拌した。固形分を濾別した後、温度37℃のイオン交換水2000部を添加、攪拌所要動力0.2(kW/m3)で攪拌して溶融合一粒子を再度分散させ、pHが4.0になるまで硝酸を添加し、そのままの回転数で10分間攪拌した後、固形分を濾別した。
【0198】
次に、上記繰り返し洗浄をもう1度繰り返し実施した後、温度37℃のイオン交換水10000部を添加して洗浄し、真空乾燥機で温度25℃で乾燥してトナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)の体積平均粒径は6μmであった。
なお、実施例1のトナー粒子の製造条件の詳細を、表1に示す。
【0199】
(トナーの作製)
トナー粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジルのRY50)3部と、をサンプルミルにより回転速度10000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分し、トナー(1)を得た。
【0200】
(キャリアの作製)
球状マグネタイト粉末粒子(体積平均粒子径0.55μm)500部をヘンシェルミキサーで攪拌した後、チタネート系カップリング剤5部を添加し100℃まで昇温して30分間攪拌した。次いで、四つ口フラスコに、フェノール6.25部と、35%ホルマリン9.25部と、チタネート系カップリング剤で処理したマグネタイト粒子500部と、25%アンモニア水6.25部と、水425部とを入れて攪拌し、攪拌しながら85℃で120分間反応させた。次いで、25℃まで冷却し、水500部を添加後、上澄み液を除去して沈殿物を水洗した。水洗した沈殿物を減圧下で加熱して乾燥し、平均粒径35μmのキャリア(CA)を得た。
【0201】
(現像剤の作製)
トナー(1)とキャリア(CA)とをトナー(1):キャリア(CA)=5:95(質量比)の割合でVブレンダーに入れ20分間攪拌し、現像剤(1)を得た。
【0202】
<実施例2>
コア用原料分散液Aのコア用樹脂粒子分散液をH1からH2に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0203】
<実施例3~6>
第1凝集工程での凝集温度を表1の温度にした以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0204】
<実施例7~10>
第1凝集工程及び第2凝集工程での凝集温度を表1の温度にした以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0205】
<実施例11~13>
融合合一工程の融合合一温度を表1の温度にした以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0206】
<実施例14~17、28~29>
シェル用樹脂粒子分散液を表1の種類に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0207】
<実施例18>
シェル用樹脂粒子分散液の添加量を60部から96部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0208】
<実施例19>
シェル用樹脂粒子分散液の添加量を60部から108部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0209】
<実施例20~25>
コア凝集粒子分散液Aおよびシェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度が表1の値になるようにイオン交換水の量を変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0210】
<実施例26>
コア用原料分散液Aのイオン交換水を400部から35部に変更し、イオン性化合物溶液AG1の添加後、コア用原料分散液Bの粘度が表1の粘度になるまで増粘剤「カルボキシメチルセルロース(CMC)」を加えた以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0211】
<実施例27>
コア用原料分散液Aのイオン交換水を400部から5部に変更し、イオン性化合物溶液AG1の添加後、コア用原料分散液Bの粘度が表1の粘度になるまで増粘剤「カルボキシメチルセルロース(CMC)」を加えた以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0212】
<実施例30~33>
第1凝集工程でのコア用原料分散液Bを撹拌において、撹拌所要動力が表1の値になるように攪拌回転数を制御した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0213】
<実施例34>
表1の条件になるように実施例2~33同様の手法で原材料の種類と量、および工程条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0214】
<実施例35>
第1凝集工程で添加するイオン性化合物を硫酸カリウム溶液AG1(800部)から硫酸アンモニウム溶液AG2(600部)に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0215】
<比較例1>
第1凝集工程での凝集温度を表1の温度にした以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0216】
<比較例2>
融合合一工程の融合合一温度を表1の温度にした以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0217】
<比較例3>
非晶性樹脂粒子分散液(H1)の分散安定化のために添加する「ノニオン K-230(有効成分換算で8部)を日油社製「ノニオン E-212(効成分換算で8部)」に変更し、第1凝集工程で添加するノニオン性界面活性剤溶液(SN1)24部をノニオン性界面活性剤溶液(SN2)24部に、融合合一工程の融合合一温度を表1の温度にした以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0218】
<比較例4>
非晶性樹脂粒子分散液(H1)の分散安定化のために添加する「ノニオン K-230(有効成分換算で8部)を新日本理化株式会社製「シノリン SPE-1250」に変更し、第1凝集工程で添加するノニオン性界面活性剤溶液(SN1)24部をアニオン性界面活性剤溶液(SA1)24部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0219】
<比較例5>
第1凝集工程で添加するイオン性化合物を硫酸カリウム溶液(AG1)800部から塩化マグネシウム溶液(AG3)150部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、トナー、及び現像剤を得た。
【0220】
<光沢むら評価>
各例の現像剤を、画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション(株)製「Revoria Press PC1120」)の6エンジン全ての現像機に充填した。
この画像形成装置を用いて、OHPフィルム(富士フイルムビジネスイノベーション(株)製のPPCレーザー用OHPフィルムクリアA4)の上に、各エンジン4.0g/m2を6層重ねた24g/mのベタ画像を形成した。
15℃湿度95℃RH、定着温度180℃(プレッシャーロール温度100℃)、120枚/分の速度で、10万枚連続印刷した。印刷したベタ画像の光沢(以下グロスとも称する)をグロスメーターGM-26D((株)村上色彩技術研究所製)を用い、画像への入射光角度60度の条件で測定した。
グロスの測定箇所は、OHPフィルムの短手方向と平行でありOHPフィルムの長手方向の一方の端部から5cm、15cm及び25cmの箇所に位置する3本線と、OHPフィルムの長手方向と平行でありOHPフィルムの短手方向の一方の端部から4cm、10.5cm及び17cmの箇所に位置する3本の線とが互いに直交する9箇所とした。
9箇所について測定したグロスの標準偏差を求めた。標準偏差が小さいほど、光沢ムラが少ないことを意味する。そして、下記基準で評価した。
A:標準偏差が0.3未満(光沢むら無し)
B:0.3以上0.6未満(光沢ムラはほぼわからない)
C:0.6以上1.0以下(光沢ムラは詳細に観察すればわかる程度)
D:1.0以上1.5未満(光沢むらは目視では気にならない程度)
E:1.5以上2.0未満(光沢むらは実使用上問題のない程度)
F:2.0超え(光沢むらははっきりと認識)
【0221】
表1中の記載の詳細は、次の通りである。
・コア用樹脂粒子分散液欄の樹脂粒子Tgc:コア用樹脂粒子のガラス転移温度
・シェル用樹脂粒子分散液欄の樹脂粒子Tgs:シェル用樹脂粒子のガラス転移温度
・コア用樹脂粒子分散液欄の樹脂粒子SP値c:コア用樹脂粒子の溶解度パラメーター
・シェル用樹脂粒子分散液欄の樹脂粒子SP値s:シェル用樹脂粒子の溶解度パラメーター
・コア用原料分散液Bの粘度:コア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度
・第1凝集工程欄の撹拌所要動力:コア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力
・第2凝集工程欄の撹拌所要動力:混合分散液の単位体積当たりの攪拌所要動力
・シェル用樹脂粒子分散液欄の樹脂粒子量:コア用樹脂粒子に対するシェル用樹脂粒子の外掛けの比率(ここで、外掛けの比率=シェル用樹脂粒子/コア用樹脂粒子量×100)
【0222】
ここで、ノニオン性界面活性剤としての日油社製「ノニオン K-230」の露点は、「>100℃」である。
また、ノニオン性界面活性剤としての日油社製「ノニオン E-212」の露点は、92℃である。
なお、界面活性剤の露点において、「>100℃」の表記は、曇点測定時に100℃まで昇温しても白濁が発生しなかったことを示す。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、光沢むらを抑制するトナーが得られることがわかる。
【0228】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、前記コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する第1凝集工程と、
前記コア凝集粒子及び前記水系媒体を含むコア凝集粒子分散液と、エステル構造を有するシェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液と、を混合し、前記コア凝集粒子及び前記シェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、前記コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する第2凝集工程と、
前記コア用樹脂粒子及び前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、前記ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、前記シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる融合合一工程と、
を有する静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((2)))
前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が、前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度よりも高い(((1)))に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((3)))
前記シェル用樹脂粒子と前記コア用樹脂粒子とのガラス転移温度の差が1℃以上40℃以下である(((2)))に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((4)))
前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が40℃以上70℃以下である(((2))))))又は(((3)))に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((5)))
前記コア用樹脂粒子に対する前記シェル用樹脂粒子の量が40質量%以下である(((1)))~(((4)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((6)))
前記シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度が、前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度よりも高い(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((7)))
前記シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度と前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度との差が、2質量%以上40質量%以下である(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((8)))
前記コア凝集粒子分散液の固形分濃度が2質量%以上20質量%以下である(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((9)))
前記コア用樹脂粒子と前記シェル用樹脂粒子との溶解度パラメーターの差が、絶対値で0以上1.5以下である(((1)))~(((8)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((10)))
前記第1凝集工程において、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下で、前記コア用原料分散液Bを攪拌しながら、前記コア用樹脂粒子を凝集させる、(((1)))~(((9)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((11)))
攪拌中の、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下である(((1)))~(((10)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((12)))
前記第1凝集工程において、前記凝集温度が(前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度-15℃)以上(前記コア用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下である(((1)))~(((11)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((13)))
前記第2凝集工程において、前記凝集温度が(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-40℃)以上(前記シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)以下である(((1)))~(((13)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((14)))
前記コア用原料分散液Aは、前記コア用樹脂粒子、前記ノニオン性界面活性剤、及び前記水系媒体を含むコア用樹脂粒子分散液を使用して得られる(((1)))~(((13)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((15)))
前記融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%以下になるまで、前記シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる(((1)))~(((14)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((16)))
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である(((1)))~(((15)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((17)))
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である(((4)))に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((18)))
前記第1凝集工程において、前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3以上9.0kW/m3以下で、前記コア用原料分散液Bを攪拌しながら、前記コア用樹脂粒子を凝集させる、(((8)))に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((19)))
前記1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下である(((10)))に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(((20)))
前記融合合一工程において、融合合一温度が75℃以上100℃以下である(((15)))に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0229】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))、又は(((14)))に係る発明によれば、ガラス転移温度40℃未満でエステル構造を有するコア用樹脂粒子、ノニオン性界面活性剤、及び水系媒体を含むコア用原料分散液Aに、1価のカチオンを有するイオン性化合物を添加したコア用原料分散液B中で、コア用樹脂粒子を凝集させ、コア凝集粒子を形成する第1凝集工程と、コア凝集粒子及び水系媒体を含むコア凝集粒子分散液、並びに、エステル構造を有するシェル用樹脂粒子及び水系媒体を含むシェル用樹脂粒子分散液を混合し、コア凝集粒子及びシェル用樹脂粒子を含む混合分散液中で、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度Tg以下の凝集温度で、コア用樹脂粒子にシェル用樹脂粒子を凝集させ、シェル付きコア凝集粒子を形成する第2凝集工程と、コア用樹脂粒子及びシェル用樹脂粒子のガラス転移温度以上、ノニオン性界面活性剤の曇点未満の融合合一温度で、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる融合合一工程と、を有する静電荷像現像用トナーの製造方法において、第1凝集工程における凝集温度がコア用樹脂粒子のガラス転移点温度Tg超えである場合、第2凝集工程における凝集温度がシェル用樹脂粒子のガラス転移点温度Tg超えである場合、又は融合合一工程における凝集温度がノニオン性界面活性剤の曇点以上である場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0230】
(((2)))に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度がコア用樹脂粒子のガラス転移温度よりも低いである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子とコア用樹脂粒子とのガラス転移温度の差が1℃未満又は40℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0231】
(((4)))に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が40℃未満又は70℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0232】
(((5)))に係る発明によれば、コア用樹脂粒子に対するシェル用樹脂粒子の量が40質量%超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0233】
(((6)))に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度が、コア凝集粒子分散液の固形分濃度よりも低い場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子分散液の固形分濃度とコア凝集粒子分散液の固形分濃度との差が、2質量%未満又は40質量%超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、コア凝集粒子分散液の固形分濃度が2質量%未満又は20質量%超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0234】
(((9)))に係る発明によれば、コア用樹脂粒子とシェル用樹脂粒子との溶解度パラメーターの差が、絶対値で1.5超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0235】
(((10)))に係る発明によれば、第1凝集工程において、コア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3未満又は9.0kW/m3超えで、コア用原料分散液Bを攪拌しながら、コア用樹脂粒子を凝集させる場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((11)))に係る発明によれば、コア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s未満又は100Pa・s超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0236】
(((12)))に係る発明によれば、第1凝集工程において、凝集温度が(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-15℃)未満又は(コア用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((13)))に係る発明によれば、第2凝集工程において、凝集温度が(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-40℃)未満又は(シェル用樹脂粒子のガラス転移温度-3℃)超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0237】
(((15)))に係る発明によれば、融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%超えで、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0238】
(((16)))に係る発明によれば、融合合一工程において、融合合一温度が75℃未満又は100℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【0239】
(((17)))に係る発明によれば、シェル用樹脂粒子のガラス転移温度が40℃未満又は70℃超えである場合、又は融合合一工程において、融合合一温度が75℃未満又は100℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((18)))に係る発明によれば、コア凝集粒子分散液の固形分濃度が2質量%未満又は20質量%超えである場合、又は第1凝集工程において、コア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3未満又は9.0kW/m3超えで、コア用原料分散液Bを攪拌しながら、コア用樹脂粒子を凝集させる場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((19)))に係る発明によれば、第1凝集工程において、コア用原料分散液Bの単位体積当たりの攪拌所要動力0.01kW/m3未満又は9.0kW/m3超えで、コア用原料分散液Bを攪拌しながら、コア用樹脂粒子を凝集させる場合、又はコア用原料分散液Bの、25℃、剪断速度1/sにおける粘度が、1Pa・s未満又は100Pa・s超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
(((20)))に係る発明によれば、融合合一工程において、得られるトナー粒子の内部空隙率が5%超えで、シェル付きコア凝集粒子を融合合一させる場合、又は融合合一工程において、融合合一温度が75℃未満又は100℃超えである場合に比べ、光沢むらを抑制する静電荷像現像用トナーが得られる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。