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  • 特開-海ぶどうの養殖装置および養殖方法 図1
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  • 特開-海ぶどうの養殖装置および養殖方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075367
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】海ぶどうの養殖装置および養殖方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 33/00 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
A01G33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186767
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】522457416
【氏名又は名称】勝山工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522457427
【氏名又は名称】松本 充
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】勝山 広幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 充
【テーマコード(参考)】
2B026
【Fターム(参考)】
2B026AA05
2B026AB08
2B026AC03
(57)【要約】
【課題】植物育成ランプからの照射が均一になる海ぶどうの養殖装置を提供する。
【解決手段】
支持ラック2の上部バー8には植物育成ランプ(LED)9を取付けている。植物育成ランプ9は水槽4の水面から約50cm上方の4隅に設けられている。植物育成ランプ9は支持ロッド10とジョイントを介して支持ロッド10に角度調整可能に取付けられるランプ本体11とからなり、ランプ本体11から照射される主光線の角度が水面に対して斜め(45°以下)になるようにする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物育成ランプを用いた海ぶどうの養殖装置であって、この養殖装置は海ぶどうを育成する水槽よりも上方に照射光線が水槽の水面に対し斜めとなるように植物育成ランプが設置され、且つ前記水槽の周囲には前記植物育成ランプからの光線を水槽の水面に向けて反射する反射面を形成した遮蔽体が設けられていることを特徴とする海ぶどうの養殖装置。
【請求項2】
請求項1に記載の海ぶどうの養殖装置において、前記植物育成ランプは首振り動作を行うことを特徴とする海ぶどうの養殖装置。
【請求項3】
請求項1に記載の養殖装置を用いた海ぶどうの養殖方法であって、前記植物育成ランプの照射時間として12時間よりも短いA時間を設定し、前記植物育成ランプの非照射時間として12時間よりも短いB時間を設定し、A時間の照射とB時間の非照射を繰り返すことを特徴とする海ぶどうの養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海ぶどう(学名:クビレヅタまたはクビレズタ)の養殖装置および当該養殖装置を用いた養殖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、陸上で海藻類、魚介類を養殖する装置として、陸上水槽中に養殖盤を設置して種苗を放流するため、種苗が稚貝に成長した時に基質に活着する習性を生かして、種苗を貝類養殖盤に活着させることが開示されている。
【0003】
特許文献2には、海ぶどうを含む藻類の栽培装置として、藻類の藻体を種苗として栽培する水槽と、水槽中の培養水に気体を溶解させるガス溶解拡散装置と、波長と照度を制御した光を水槽に照射する光照射装置と、水槽中の培養水の温度を一定範囲に制御する温度制御装置と、藻類の成長に不可欠な必須栄養源を含んだ栄養液を水槽に添加する栄養塩類添加装置と、水槽中の培養水の除菌濾過を行う浄化装置と、各装置の制御用計測装置とから構成されるものが提案されている。
【0004】
特許文献3には、海ぶどうの養殖装置として、海ぶどうの育成深さを調整するために、温室ハウス内に設置された水槽に満たされた海水が規定水位を越えた場合には、余剰海水がオーバーフロー管によってその取水口から排水口へと導出される構造が提案されている。
【0005】
特許文献4には、海ぶどうを含むイワズタ属緑藻の養殖方法として、特定領域の波長の光量を相対的に減少させる方法、具体的には、400~550nmの波長領域の光の透過率が30~60%であり、600~700nmの波長領域の光の透過率が75%以上である被覆資材で遮光することが提案されている。
【0006】
非特許文献1には、水深612mから取水した深層水(10℃)を混合して水温24℃にした混合水を水槽に供給し、1日1回のかけ流しを行う養殖法が記載されている。
【0007】
非特許文献2には、海洋深層水を利用することで、クビレヅタの成長への悪影響は観察されなかったことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-117628号公報
【特許文献2】WO2005/102031
【特許文献3】特開2007-330119号公報
【特許文献4】特開2017-147995号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】沖縄県久米島のクビレヅタ(海ぶどう)養殖水槽に出現した付着珪藻 鈴木秀和,山岡未季,城間一仁,仲道司,南雲保… 2010 -Jstage.jst.go.jp
【非特許文献2】Reports on the impact of Caulerpa lentillifera by alien free-living isopod Paracerceis sculpta(Crustacea,Isopoda,Sphaeromatidae)Y OTA- Japanese Journal of Benthology, 2014 - jstage.jst.go.jp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
グリーンキャビアとも呼ばれる海ぶどうは、もずくと比べカリウム、カルシウム、マグネシウムに富み、食感が好ましい。その一方、新鮮な状態での保存が難しいため、先行文献に示すような消費地に近いか輸送に便利な陸上での養殖がおこなわれている。
【0011】
陸上での養殖は天候に左右されず、作業性などを考慮して屋内に水槽を設置して行う場合、水質や温度管理の他に、植物の光合成に必要な波長(400nm~700nm)の光を発する植物育成ランプを必要な時間だけ、水槽内の海ぶどうに均一に照射する必要がある。
【0012】
図4(a)に示す海ぶどうは植物育成ランプの照射が適切になされた場合であり、茎に多くの粒が付いている。一方、(b)は照射量が強すぎたり或いは照射量が不足した場合であり、茎に僅かしか粒が付いていない。このような場合には商品として出荷することができない。
【0013】
植物育成ランプからの照射を均一にするには、水槽とランプとの距離を大きくすればよいが、屋内に養殖水槽を設置する場合、水槽と天井との距離が少なかったり、距離を大きくとれた場合でも、光量が不足するなどの問題が生じる。
上述したいずれの先行文献も、植物育成ランプを用いた海ぶどうの陸上養殖において、水槽内の海ぶどうに対する均一照射の工夫について何ら提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題を解決するため、本発明に係る海ぶどうの養殖装置は、植物育成ランプを用いることを前提とし、植物育成ランプ(LED)の設置角度を植物育成ランプからの光線が水槽内の水面に対し斜めになるようにし、且つ水槽の周囲を内面を反射面とした遮蔽体で囲むようにした。
【0015】
前記植物育成ランプの取付位置としては、水槽の四隅に4個配置したり、水槽の中央部上方に1個設けることが考えられる。
また、植物育成ランプに首振り動作を行なわせることで、更に均一照射を行うことができる。
【0016】
本発明に係る海ぶどうの養殖方法は上記の養殖装置を用いた養殖方法であり、前記植物育成ランプの照射時間として12時間よりも短いA時間を設定し、前記植物育成ランプの非照射時間として12時間よりも短いB時間を設定し、A時間の照射とB時間の非照射を繰り返す。
例えば照射時間及び非照射時間を何れも6時間とした場合、12時間で1サイクルとなり、1日2サイクルの照射及び非照射を行うことになり、海ぶどうの育成期間が短縮される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る海ぶどうの養殖装置によれば、屋内に設置した水槽に植物育成ランプを用いて光合成のための照射を行うにあたり、水槽の周囲に配置したカーテンなどの遮蔽体内面の反射面により、水槽内の海ぶどうの位置に拘わらず均等に光が当たるため、育成にバラツキがなく、図4(a)に示したような、茎に大量の粒が付いた海ぶどうを得ることができる。
【0018】
また、本発明に係る海ぶどうの養殖方法によれば、植物育成ランプの照射時間と非照射時間を適切な範囲に設定することで、海ぶどうの育成を自然環境での育成よりも早めることができ、経済的な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る養殖装置の全体正面図
図2】本発明に係る養殖装置の全体側面図
図3】水槽の下に配置される水循環機構の正面図
図4】(a)は良好な養殖状態を示す写真、(b)は不良な養殖状態を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0020】
図では比較的天井の高さが低い屋内に養殖装置を設置した例を示している。屋内の床面1には支持ラック2を固定し、この支持ラック2の中段3上に水槽4を設置し、中段3の下方の床面には海水循環部5を配置している。
【0021】
水槽4の深さは20cm~30cmとすることで、作業性とランプからの光が底部まで届くようにしている。また水槽4内には海ぶどうの種苗を挟み込むためのネット6(苗床)が2枚配置され、水槽4の一端隅部には自然な波を形成するウェーブポンプ7を設け、対角線上に位置する他端の隅部に向けて水流を形成するようにている。このウェーブポンプ7から噴出する水には微細気泡を含ませることで、アオサやコケ類がネット6に付着するのを防ぐことができる。
【0022】
支持ラック2の上部バー8には植物育成ランプ(LED)9を取付けている。植物育成ランプ9は水槽4の水面から約50cm上方の4隅に設けられている。植物育成ランプ9は支持ロッド10とジョイントを介して支持ロッド10に角度調整可能に取付けられるランプ本体11とからなり、ランプ本体11から照射される主光線の角度が水面に対して斜め(45°以下)になるようにする。
【0023】
図示例では植物育成ランプ9の数は4個としたが2個或いは1個としてもよい。1個の場合は、水槽4の中心部の上方とする。この位置に設けた場合には、ランプの9の真下に強い光が照射されるのを防ぐため、ランプ本体11の中心部に遮光体を設けることが好ましい。
【0024】
また、水槽4全体に均一な照射を行うために、ランプ本体11がジョイント部を中心として首振り動作を行うように構成することもできる。
【0025】
水槽4の周囲はカーテンなどの遮蔽体12で囲まれている。この遮蔽体12の内側面(水槽側面)は反射面とされ、植物育成ランプ9からの光を水槽4に向けて反射するようにしている。このように構成することで、水面と植物育成ランプ9との間隔が50cm以下と小さくても、水槽全体を均一に照射することができる。
【0026】
海水循環部5には、水槽4からの排水を受ける異物除去部13、この異物除去部13を透過した海水をろ過するろ過部14、ろ過部14から出てきた浄化された海水を加熱するヒータ15、浄化された海水をクーラー16に送り込む送水ポンプ17から構成される。
【0027】
前記異物除去部13にはゴミ取りマット18が配置されている。また、本実施例では養殖用のペレット状の餌を水槽4に直接入れずに、一旦水に溶かして水溶液状とした餌を異物除去部13に投入するようにしている。このように水溶液状とした餌であっても水槽4に直接せずに異物除去部13に投入することで、仮に未溶解の餌が残っていてもゴミ取りマット18で除去され、水槽内に入ることがなく水槽内が汚れる恐れがない。
【0028】
また、水槽内の水分は時間の経過とともに蒸発し海水濃度が高まる。このため、海水循環部5に隣接して真水タンク19を設け、この真水タンク内19の水をサイフォンの原理を利用して海水循環部5に供給するようにしている。サイフォンの原理を利用しているため、海水循環部5と真水タンク19の水面が等しくなるまで真水は供給され、常に海水濃度を一定に保つことができる。
【0029】
以上において、水槽4内の海水は海水循環部5の異物除去部13に排出され、この異物除去部13において水溶餌が足されてろ過部14でろ過され、ろ過された海水は必要な分だけ真水が足され且つ加熱され、送水ポンプ17によってクーラー16に送られる。
【0030】
クーラー16にて所定の温度に調整された海水はウェーブポンプ7から水槽4内に噴出する。このウェーブポンプ7では微細気泡を海水に混合するようにしているため、水中の溶存酸素量を高めるだけでなく、水流にのって微細気泡が海ぶどうの房の隅々まで行き渡り付着物を除去する。
【0031】
特に、水槽4を20cm~30cmと浅くし、更にウェーブポンプ5で水流を作ることで、水相4の底面にゴミや餌が溜まることがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る海ぶどうの養殖装置及び養殖方法は、実施場所の自由度が高く、養殖専用のハウス内に限らず、ビルの内部などにおいても養殖を行うことが可能でsある。
【符号の説明】
【0033】
1…床面、2…支持ラック、3…支持ラックの中段、4…水槽、5…海水循環部、6…ネット(苗床)、7…ウェーブポンプ、8…支持ラックの上部バー、9…植物育成ランプ(LED)、10…支持ロッド、11…ランプ本体、12…遮蔽体、13…異物除去部、14…ろ過部、15…ヒータ、16…クーラー、17…送水ポンプ、18…ゴミ取りマット、19…真水タンク。
図1
図2
図3
図4