(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075384
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】塗装ブース用空調システム
(51)【国際特許分類】
F25B 30/06 20060101AFI20240527BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20240527BHJP
F24F 3/00 20060101ALI20240527BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
F25B30/06 T
F25B13/00 U
F24F3/00 B
F24F5/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186795
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 征弘
【テーマコード(参考)】
3L053
3L054
3L092
【Fターム(参考)】
3L053BA01
3L054BF03
3L054BF10
3L054BG08
3L092AA02
(57)【要約】
【課題】地中熱を利用して温熱及び冷熱を同時供給する場合に、効率的な熱供給が可能な塗装ブース用空調システムを提供すること。
【解決手段】本発明の塗装ブース用空調システム10は、ヒートポンプ80、地中熱交換器61及び塗装ブース用空調機21を備える。地中熱交換器61は、ヒートポンプ80との間で循環水が循環するように構成される。塗装ブース用空調機21は、空気を加熱する加熱手段22,25及び空気を冷却する冷却手段24を有する。さらに、ヒートポンプ80は、加熱手段22,25に温水を供給する温水用ヒートポンプ81と、冷却手段24に冷水を供給する冷水用ヒートポンプ82a~82cとにより構成される。そして、温水用ヒートポンプ81の一次側の熱源とすべく、冷水用ヒートポンプ82aの一次側の排熱を温水用ヒートポンプ81側に移送する排熱移送手段111が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヒートポンプと、
前記ヒートポンプの一次側流路に接続され、前記ヒートポンプとの間で循環水が循環するように構成された地中熱交換器と、
前記ヒートポンプの二次側流路に接続され、空気を取り込んでその温湿度を調節して塗装ブースへ送気する塗装ブース用空調機と
を備え、
前記塗装ブース用空調機は、前記空気を加熱して給気温度を上げる加熱手段及び前記空気を冷却して給気温度を下げる冷却手段を有しており、
複数の前記ヒートポンプは、前記加熱手段に温水を供給する温水用ヒートポンプと、前記冷却手段に冷水を供給する冷水用ヒートポンプとにより構成されており、
前記温水用ヒートポンプの一次側の熱源とすべく、前記冷水用ヒートポンプの一次側の排熱を前記温水用ヒートポンプ側に移送する排熱移送手段が設けられている
ことを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【請求項2】
前記排熱移送手段は、
前記冷水用ヒートポンプと前記温水用ヒートポンプとの間を繋ぐ排熱移送流路と、
前記排熱移送流路上に設けられた弁体と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項3】
前記排熱移送手段は、前記弁体を開閉制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項4】
複数の前記ヒートポンプは、前記温水用ヒートポンプ及び前記冷水用ヒートポンプのどちらにも使用可能であり、
外気温が地中温度よりも高い場合には、少なくとも1つの前記温水用ヒートポンプを含むようにして、前記冷水用ヒートポンプの数を前記温水用ヒートポンプの数よりも多くして使用し、
前記外気温が前記地中温度よりも低い場合には、前記温水用ヒートポンプの数を前記冷水用ヒートポンプの数よりも多くして使用する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項5】
前記加熱手段を経て温度が下がった前記温水を前記温水用ヒートポンプに供給する経路上に温水タンクが設けられ、
前記冷却手段を経て温度が上がった前記冷水を前記冷水用ヒートポンプに供給する経路上に冷水タンクが設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装ブース用空調システム。
【請求項6】
前記温水用ヒートポンプから前記加熱手段に供給される前記温水の加熱、及び、前記冷水用ヒートポンプから前記冷却手段に供給される前記冷水の冷却のうち少なくとも前記温水の加熱を行う空冷ヒートポンプを備えるとともに、
前記制御手段が、特定条件下であると判定したときに、前記空冷ヒートポンプを補助的に作動させる制御を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の塗装ブース用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用した塗装ブース用空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディ等の被塗物に塗料を塗布する塗装ブースに対して、塗装ブース用空調機によって温湿度を調整した空気を送気することが行われている。また、塗装ブース用空調機は、加熱装置、冷却装置、加湿装置(ワッシャ)、給気ファンなどの機器で構成されている。ところが、上記の各装置はエネルギー消費量が多い。近年では、二酸化炭素排出量低減の要求が高まっているため、エネルギー消費量をできるだけ小さくすることが望まれている。
【0003】
このような事情のもと、例えば、地中熱を利用して、加熱装置に用いられる温水や冷却装置に用いられる冷水を生成することが考えられている。なお、一般的に、地中熱は、冬季に温熱源として使用され、夏季に冷熱源として使用される。しかし、塗装ブース用空調機は、空気の温湿度を調節するものであるため、夏季においても冷熱源及び温熱源の両方が必要である。よって、温熱源としては別の熱源を用いる必要がある。例えば、夏季において、ヒートポンプの蒸発器(冷熱源)で冷やされた水を冷水コイル(冷温水コイル)に供給すると同時に、地中熱で冷やされた水をヒートポンプの凝縮器(温熱源)で加熱して再熱器に供給する除湿再熱空調システムが従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-150778号公報(
図3,
図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の従来技術では、再熱器に供給される温水が、ヒートポンプからの排熱による成り行きで温められている。このため、温水を効率良く温めることができず、空調システムの効率的な運転ができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、地中熱を利用して温熱及び冷熱を同時供給する場合に、効率的な熱供給が可能な塗装ブース用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のヒートポンプと、前記ヒートポンプの一次側流路に接続され、前記ヒートポンプとの間で循環水が循環するように構成された地中熱交換器と、前記ヒートポンプの二次側流路に接続され、空気を取り込んでその温湿度を調節して塗装ブースへ送気する塗装ブース用空調機とを備え、前記塗装ブース用空調機は、前記空気を加熱して給気温度を上げる加熱手段及び前記空気を冷却して給気温度を下げる冷却手段を有しており、複数の前記ヒートポンプは、前記加熱手段に温水を供給する温水用ヒートポンプと、前記冷却手段に冷水を供給する冷水用ヒートポンプとにより構成されており、前記温水用ヒートポンプの一次側の熱源とすべく、前記冷水用ヒートポンプの一次側の排熱を前記温水用ヒートポンプ側に移送する排熱移送手段が設けられていることを特徴とする塗装ブース用空調システムをその要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明によると、循環水を介して地中熱交換器から地中へ捨てられる冷水用ヒートポンプの一次側の排熱が、排熱移送手段によって温水用ヒートポンプ側に移送される。これにより、冷水用ヒートポンプの一次側の排熱を、温水用ヒートポンプの一次側の熱源として再利用することができる。即ち、温水用ヒートポンプにおいて、冷水用ヒートポンプを経て温度が上がった循環水からの吸熱を行うことにより、熱源(温水用ヒートポンプ)の温度が高くなるため、温水を効率良く温めて加熱手段に供給することができる。ゆえに、地中熱を利用して温熱及び冷熱を同時供給する場合に、効率的な熱供給が可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記排熱移送手段は、前記冷水用ヒートポンプと前記温水用ヒートポンプとの間を繋ぐ排熱移送流路と、前記排熱移送流路上に設けられた弁体とを備えることをその要旨とする。
【0010】
従って、請求項2に記載の発明によると、弁体を開閉することにより、必要に応じて、冷水用ヒートポンプの排熱を温水用ヒートポンプに移送することができる。なお、弁体としては、三方弁や四方弁等を用いることができる。また、弁体として、複数の二方弁を組み合わせて用いることも可能である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記排熱移送手段は、前記弁体を開閉制御する制御手段をさらに備えることをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項3に記載の発明によると、制御手段によって弁体の開閉制御が自動的に行われるため、冷水用ヒートポンプの排熱の移送を、人手に頼らずに正確に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、複数の前記ヒートポンプは、前記温水用ヒートポンプ及び前記冷水用ヒートポンプのどちらにも使用可能であり、外気温が地中温度よりも高い場合には、少なくとも1つの前記温水用ヒートポンプを含むようにして、前記冷水用ヒートポンプの数を前記温水用ヒートポンプの数よりも多くして使用し、前記外気温が前記地中温度よりも低い場合には、前記温水用ヒートポンプの数を前記冷水用ヒートポンプの数よりも多くして使用することをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項4に記載の発明によると、外気温が地中温度よりも高い場合(夏季など)に、冷水用ヒートポンプの数を温水用ヒートポンプの数よりも多くして使用することで、冷却手段に多くの冷水が供給される。このため、塗装ブース用空調機に取り込んだ熱い空気を効率良く冷却することができる。また、外気温が地中温度よりも高い場合であっても、少なくとも1つの温水用ヒートポンプが含まれる。その結果、加熱手段に温水を供給できるため、加熱手段により、塗装ブース用空調機に取り込んだ空気の湿度調整を行うことができる。一方、外気温が地中温度よりも低い場合(冬季など)に、温水用ヒートポンプの数を冷水用ヒートポンプの数よりも多くして使用することで、加熱手段に多くの温水が供給される。このため、塗装ブース用空調機に取り込んだ冷たい空気を効率良く加熱することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記加熱手段を経て温度が下がった前記温水を前記温水用ヒートポンプに供給する経路上に温水タンクが設けられ、前記冷却手段を経て温度が上がった前記冷水を前記冷水用ヒートポンプに供給する経路上に冷水タンクが設けられていることをその要旨とする。
【0016】
従って、請求項5に記載の発明によると、加熱手段を経て温度が下がった温水を、バッファタンクである温水タンクに一時的に溜めておくことができるため、温水タンクに溜まった温水を用いて、温水用ヒートポンプを安定して作動させることができる。同様に、冷却手段を経て温度が上がった冷水を、バッファタンクである冷水タンクに一時的に溜めておくことができるため、冷水タンクに溜まった冷水を用いて、冷水用ヒートポンプを安定して作動させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項3において、前記温水用ヒートポンプから前記加熱手段に供給される前記温水の加熱、及び、前記冷水用ヒートポンプから前記冷却手段に供給される前記冷水の冷却のうち少なくとも前記温水の加熱を行う空冷ヒートポンプを備えるとともに、前記制御手段が、特定条件下であると判定したときに、前記空冷ヒートポンプを補助的に作動させる制御を行うことをその要旨とする。
【0018】
従って、請求項6に記載の発明によると、季節変動(外気温の変動)や負荷変動(外気温度の変動、例えば、冬季の朝など、最低気温が大きく下がったときの変動)が大きい特定条件下において、温水の加熱や冷水の冷却のベース分を地中熱ヒートポンプ(温水用ヒートポンプや冷水用ヒートポンプ)で賄い、上記した変動分を空冷ヒートポンプで賄うように分担することが可能である。なお、地中熱交換器は、設置費用が比較的高いため、温水の加熱や冷水の冷却を設置費用が比較的安い空冷ヒートポンプに分担させれば、全体のイニシャルコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、請求項1~6に記載の発明によると、地中熱を利用して温熱及び冷熱を同時供給する場合に、効率的な熱供給が可能な塗装ブース用空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態における塗装ブース用空調システムを示す概略構成図。
【
図4】塗装ブース用空調システムの電気的構成を示すブロック図。
【
図5】第2実施形態における塗装ブース用空調システムを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した第1実施形態の塗装ブース用空調システムを図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1に示されるように、塗装ブース用空調システム10は、塗装ブース用空調機21と、複数本の地中熱交換器61と、4台の水冷ヒートポンプ80とを備えている。塗装ブース用空調機21は、外部から取り入れた空気を所定温度及び所定湿度に調節して、塗装ブース(図示略)へ送気するための機器である。塗装ブースは、被塗物(例えば自動車ボディなど)を搬送する搬送ライン上に配置されている。
【0023】
なお、塗装ブースは、塗装室と、塗装室に空気を供給するための給気室と、塗装室内の空気を排気するための排気室とを備えている。本実施形態の塗装ブースでは、塗装ブース用空調機21から排出される空調空気が、給気室からダウンフローで塗装室内に供給される。塗装室では、図示しない塗装機から塗料ミストを噴射することで、被塗物の塗装が行われる。このとき、塗装機からオーバースプレーされて飛散した塗料ミストは、塗装室内に作用するダウンフローの空調空気によって塗装室から排気室に排出される。そして、排気室では、乾式フィルターを使用して空気中に含まれる塗料ミストが捕捉され、塗料が回収される。なお、排気室から排出される空気は、排気ファンによって大気に放出される。
【0024】
また、
図1に示されるように、塗装ブース用空調機21は、プレヒータ22、ワッシャ23、クーリングコイル24、レヒータ25及び給気ファン26を備えている。なお、塗装ブース用空調機21の出口側と塗装ブースとの間は、空調空気移送経路(図示略)を介して流路的に接続されている。
【0025】
プレヒータ22は、取り込んだ空気を加熱して給気温度を上げる加熱手段(前段側加熱手段)である。プレヒータ22は、各水冷ヒートポンプ80の二次側流路である温水供給流路31と、同じく二次側流路である温水戻り流路32とに接続されている。また、ワッシャ23は、プレヒータ22を経た空気に対する水の噴射により、空気の湿度を上げる加湿手段である。さらに、クーリングコイル24は、ワッシャ23を経た空気を冷却して給気温度を下げる冷却手段である。クーリングコイル24は、各水冷ヒートポンプ80の二次側流路である冷水供給流路33と、同じく二次側流路である冷水戻り流路34とに接続されている。また、レヒータ25は、クーリングコイル24を経た空気を再び加熱して給気温度を上げる加熱手段(後段側加熱手段)である。レヒータ25は、温水供給流路31及び温水戻り流路32に接続されている。そして、給気ファン26は、調温及び調湿された空気(即ち空調空気)を塗装ブースに圧送するための手段である。
【0026】
図1に示されるように、温水供給流路31は、下流側(塗装ブース用空調機21側)においてプレヒータ側供給流路35とレヒータ側供給流路36とに分岐している。また、温水戻り流路32は、上流側(塗装ブース用空調機21側)においてプレヒータ側戻り流路37とレヒータ側戻り流路38とに分岐している。
【0027】
そして、プレヒータ側戻り流路37からは第1温水バイパス流路39が分岐し、第1温水バイパス流路39はプレヒータ側供給流路35に接続されている。プレヒータ側戻り流路37と第1温水バイパス流路39との接続部分には、第1バイパスバルブ40(三方弁)が設置されている。なお、第1バイパスバルブ40の開度が「全閉」である場合、温水は、温水用ヒートポンプ81→第1流路45→温水供給流路31→第1温水バイパス流路39→第1バイパスバルブ40→温水戻り流路32→温水タンク101→第2流路47→温水用ヒートポンプ81の順に流れる。一方、第1バイパスバルブ40の開度が「全開」である場合、温水は、温水用ヒートポンプ81→第1流路45→温水供給流路31→プレヒータ側供給流路35→プレヒータ22→プレヒータ側戻り流路37→第1バイパスバルブ40→温水戻り流路32→温水タンク101→第2流路47→温水用ヒートポンプ81の順に流れる。また、第1バイパスバルブ40が「中間開度」である場合、温水は、プレヒータ側戻り流路37及び第1温水バイパス流路39の両方から第1バイパスバルブ40に流入した後、温水戻り流路32に流れる。
【0028】
図1に示されるように、レヒータ側戻り流路38からは第2温水バイパス流路41が分岐し、第2温水バイパス流路41はレヒータ側供給流路36に接続されている。レヒータ側戻り流路38と第2温水バイパス流路41との接続部分には、第2バイパスバルブ42(三方弁)が設置されている。なお、第2バイパスバルブ42の開度が「全閉」である場合、温水は、温水用ヒートポンプ81→第1流路45→温水供給流路31→第2温水バイパス流路41→第2バイパスバルブ42→温水戻り流路32→温水タンク101→第2流路47→温水用ヒートポンプ81の順に流れる。一方、第2バイパスバルブ42の開度が「全開」である場合、温水は、温水用ヒートポンプ81→第1流路45→温水供給流路31→レヒータ側供給流路36→レヒータ25→レヒータ側戻り流路38→第2バイパスバルブ42→温水戻り流路32→温水タンク101→第2流路47→温水用ヒートポンプ81の順に流れる。また、第2バイパスバルブ42が「中間開度」である場合、温水は、レヒータ側戻り流路38及び第2温水バイパス流路41の両方から第2バイパスバルブ42に流入した後、温水戻り流路32に流れる。
【0029】
さらに、冷水戻り流路34からは冷水バイパス流路43が分岐し、冷水バイパス流路43は冷水供給流路33に接続されている。冷水戻り流路34と冷水バイパス流路43との接続部分には、第3バイパスバルブ44(三方弁)が設置されている。なお、第3バイパスバルブ44の開度が「全閉」である場合、冷水は、冷水用ヒートポンプ82a~82c→第3流路49→冷水供給流路33→冷水バイパス流路43→第3バイパスバルブ44→冷水戻り流路34→冷水タンク102→第4流路51→冷水用ヒートポンプ82a~82cの順に流れる。一方、第3バイパスバルブ44の開度が「全開」である場合、冷水は、冷水用ヒートポンプ82a~82c→第3流路49→冷水供給流路33→クーリングコイル24→冷水戻り流路34→第3バイパスバルブ44→冷水戻り流路34→冷水タンク102→第4流路51→冷水用ヒートポンプ82a~82cの順に流れる。また、第3バイパスバルブ44が「中間開度」である場合、冷水は、冷水戻り流路34及び冷水バイパス流路43の両方から第3バイパスバルブ44に流入した後、冷水戻り流路34に流れる。
【0030】
図1に示されるように、温水供給流路31は、上流側(水冷ヒートポンプ80側)において4つの第1流路45に分岐しており、各第1流路45は、各水冷ヒートポンプ80にそれぞれ接続されている。そして、各冷水用ヒートポンプ82a~82cに接続される3つの第1流路45には、それぞれ温水供給バルブ46が設置されている。温水供給バルブ46は、第1流路45を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。なお、本実施形態の温水供給バルブ46は、図示しないモーターにより作動する電動弁である。
【0031】
温水戻り流路32は、下流側(水冷ヒートポンプ80側)において4つの第2流路47に分岐しており、各第2流路47は、各水冷ヒートポンプ80にそれぞれ接続されている。そして、各冷水用ヒートポンプ82a~82cに接続される3つの第2流路47には、それぞれ温水戻りバルブ48が設置されている。温水戻りバルブ48は、第2流路47を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。なお、本実施形態の温水戻りバルブ48は、図示しないモーターにより作動する電動弁である。
【0032】
図1に示されるように、冷水供給流路33は、上流側(水冷ヒートポンプ80側)において3つの第3流路49に分岐しており、各第3流路49は、3台の冷水用ヒートポンプ82a~82cにそれぞれ接続されている。そして、各第3流路49には、それぞれ冷水供給バルブ50が設置されている。冷水供給バルブ50は、第3流路49を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。なお、本実施形態の冷水供給バルブ50は、図示しないモーターにより作動する電動弁である。
【0033】
冷水戻り流路34は、下流側(水冷ヒートポンプ80側)において3つの第4流路51に分岐しており、各第4流路51は、3台の冷水用ヒートポンプ82a~82cにそれぞれ接続されている。そして、各第4流路51には、それぞれ冷水戻りバルブ52が設置されている。冷水戻りバルブ52は、第4流路51を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。なお、本実施形態の冷水戻りバルブ52は、図示しないモーターにより作動する電動弁である。
【0034】
図1に示されるように、各地中熱交換器61は、深さ100m程度の地中から得られる10℃~20℃程度の地中熱を利用した機器である。各地中熱交換器61には、U字状をなす地中熱交換配管62が設けられている。なお、本実施形態の地中熱交換器61は、垂直埋設型の熱交換器である。また、各地中熱交換器61は、各水冷ヒートポンプ80との間で循環水が循環するように構成されている。具体的に言うと、各地中熱交換器61は、各水冷ヒートポンプ80の一次側流路である循環水排出流路71と、同じく一次側流路である循環水戻り流路72とに接続されている。従って、各水冷ヒートポンプ80から地中熱交換器61に供給された循環水は、地中熱によって加熱または冷却された後に、図示しないポンプにより、各水冷ヒートポンプ80に戻されて再利用されるようになる。
【0035】
また、各水冷ヒートポンプ80は、プレヒータ22及びレヒータ25に温水を供給する1台の温水用ヒートポンプ81と、クーリングコイル24に冷水を供給する3台の冷水用ヒートポンプ82a,82b,82cとにより構成されている。
図2に示されるように、温水用ヒートポンプ81は、熱媒体としての冷媒が流れる冷媒流路90を有している。冷媒流路90上には、第1熱交換器91、第2熱交換器92、圧縮機93、膨張弁94及び四方弁95が設置されている。第1熱交換器91は、冷媒流路90に接続される熱源コイル91aと冷温水流路96に接続される受熱コイル91bとの間で熱を交換する凝縮器であり、熱源コイル91a内を流れる冷媒の熱が受熱コイル91b内を流れる温水に伝達(放熱)されるようになっている。そして、この温水は、図示しないポンプにより、受熱コイル91bに接続された冷温水流路96及び温水供給流路31を介してプレヒータ22及びレヒータ25に供給される。なお、プレヒータ22及びレヒータ25を経て温度が下がった温水は、ポンプにより、温水戻り流路32を介して温水用ヒートポンプ81に戻され、再び加熱される。
【0036】
また、第2熱交換器92は、冷媒流路90に接続される熱源コイル92aと再熱流路97に接続される受熱コイル92bとの間で熱を交換する蒸発器であり、熱源コイル92a内を流れる冷媒に受熱コイル92b内を流れる循環水の熱が伝達(吸熱)されるようになっている。そして、この循環水は、図示しないポンプにより、受熱コイル92bに接続された再熱流路97及び循環水排出流路71を介して地中熱交換器61に供給される。なお、地中熱交換器61を経て温度が下がった循環水は、ポンプにより、循環水戻り流路72を介して温水用ヒートポンプ81に戻され、再び冷却される。
【0037】
図2に示されるように、圧縮機93は、第1熱交換器91の上流側(及び第2熱交換器92の下流側)に配置されており、冷媒流路90内を流れる冷媒を圧縮して第1熱交換器91の熱源コイル91aに送るようになっている。また、膨張弁94は、第1熱交換器91の下流側(及び第2熱交換器92の上流側)に配置されており、開度を調整することにより、冷媒流路90内を流れる冷媒の流量を調整するようになっている。膨張弁94は、開度に応じた量の冷媒を、第2熱交換器92の熱源コイル92aに供給可能となっている。
【0038】
なお、冷温水流路96及び温水供給流路31内を流れる温水の加熱は、以下の順序で行われる。まず、圧縮機93を駆動し、冷媒を四方弁95を介して第1熱交換器91(凝縮器)の熱源コイル91aに送る。この時点では、冷媒の温度は低く、膨張弁94の開度も小さい。つまり、冷媒は膨張弁94を通過しにくくなっているため、冷媒が熱源コイル91aに送られるのに伴って冷媒が圧縮され、熱源コイル91a付近の冷媒が高温となる。その結果、第1熱交換器91において、熱源コイル91a内の冷媒の熱が受熱コイル91b内の温水に伝達され、受熱コイル91b及び冷温水流路96内を流れる温水の温度が高くなる。即ち、温水用ヒートポンプ81は、出口において温水の温度を所定値(例えば45℃)にする。なお、熱源コイル91a付近の冷媒が高温になるのに伴って、膨張弁94の開度が大きくなり、膨張弁94を通過する冷媒の流量が増加する。
【0039】
また、第1熱交換器91の熱源コイル91a付近の冷媒が圧縮されるのに伴って、第2熱交換器92の熱源コイル92a付近の冷媒が膨張されて低温となる。その結果、第2熱交換器92において、受熱コイル92b内の循環水の熱が熱源コイル92a内の冷媒に伝達され、受熱コイル92b及び再熱流路97内を流れる循環水の温度が低くなる。
【0040】
図3に示されるように、本実施形態の各冷水用ヒートポンプ82a~82cは、温水用ヒートポンプ81と略同じ構造を有している。具体的に言うと、冷水用ヒートポンプ82a~82cの第1熱交換器91は、冷媒流路90に接続される熱源コイル91aと冷温水流路96に接続される受熱コイル91bとの間で熱を交換する蒸発器であり、熱源コイル91a内を流れる冷媒に受熱コイル91b内を流れる冷水の熱が伝達(吸熱)されるようになっている。なお、第1熱交換器91は、温水用ヒートポンプ81の四方弁95を切り替えることにより、蒸発器として作動するものであると言うことができる。そして、この冷水は、図示しないポンプにより、受熱コイル91bに接続された冷温水流路96及び冷水供給流路33を介してクーリングコイル24に供給される。なお、クーリングコイル24を経て温度が上がった冷水は、ポンプにより、冷水戻り流路34を介して冷水用ヒートポンプ82a~82cに戻され、再び冷却される。
【0041】
また、冷水用ヒートポンプ82a~82cの第2熱交換器92は、冷媒流路90に接続される熱源コイル92aと再熱流路97に接続される受熱コイル92bとの間で熱を交換する凝縮器であり、熱源コイル92a内を流れる冷媒の熱が受熱コイル92b内を流れる循環水に伝達(放熱)されるようになっている。なお、第2熱交換器92は、温水用ヒートポンプ81の四方弁95を切り替えることにより、凝縮器として作動するものであると言うことができる。そして、この循環水は、図示しないポンプにより、受熱コイル92bに接続された再熱流路97及び循環水排出流路71を介して地中熱交換器61に供給される。なお、地中熱交換器61を経て温度が下がった循環水は、ポンプにより、循環水戻り流路72を介して冷水用ヒートポンプ82a~82cに戻され、再び加熱される。
【0042】
図3に示されるように、冷水用ヒートポンプ82a~82cの圧縮機93は、第2熱交換器92の上流側(及び第1熱交換器91の下流側)に配置されており、冷媒流路90内を流れる冷媒を圧縮して第2熱交換器92の熱源コイル92aに送るようになっている。また、膨張弁94は、第2熱交換器92の下流側(及び第1熱交換器91の上流側)に配置されており、開度を調整することにより、冷媒流路90内を流れる冷媒の流量を調整するようになっている。膨張弁94は、開度に応じた量の冷媒を、第1熱交換器91の熱源コイル91aに供給可能となっている。
【0043】
なお、冷温水流路96及び冷水供給流路33内を流れる冷水の冷却は、以下の順序で行われる。まず、圧縮機93を駆動し、冷媒を四方弁95を介して第2熱交換器92(凝縮器)の熱源コイル92aに送る。この時点では、冷媒の温度は低く、膨張弁94の開度も小さい。つまり、冷媒は膨張弁94を通過しにくくなっているため、冷媒が熱源コイル92aに送られるのに伴って冷媒が圧縮され、熱源コイル92a付近の冷媒が高温となる。その結果、第2熱交換器92において、熱源コイル92a内の冷媒の熱が受熱コイル92b内の循環水に伝達され、受熱コイル92b及び再熱流路97内を流れる循環水の温度が高くなる。なお、熱源コイル92a付近の冷媒が高温になるのに伴って、膨張弁94の開度が大きくなり、膨張弁94を通過する冷媒の流量が増加する。
【0044】
また、第2熱交換器92の熱源コイル92a付近の冷媒が圧縮されるのに伴って、第1熱交換器91の熱源コイル91a付近の冷媒が膨張されて低温となる。その結果、第1熱交換器91において、受熱コイル91b内の冷水の熱が熱源コイル91a内の冷媒に伝達され、受熱コイル91b及び冷温水流路96内を流れる冷水の温度が低くなる。即ち、冷水用ヒートポンプ82a~82cは、出口において冷水の温度を所定値(例えば7℃)にする。
【0045】
図1に示されるように、プレヒータ22及びレヒータ25を経て温度が下がった温水を温水用ヒートポンプ81に供給する経路、即ち、温水戻り流路32上には、温水タンク101が設けられている。また、クーリングコイル24を経て温度が上がった冷水を冷水用ヒートポンプ82a~82cに供給する経路、即ち、冷水戻り流路34上には、冷水タンク102が設けられている。
【0046】
さらに、塗装ブース用空調システム10には排熱移送手段111が設けられている。排熱移送手段111は、温水用ヒートポンプ81の一次側の熱源とすべく、同温水用ヒートポンプ81に隣接する冷水用ヒートポンプ82aの一次側の排熱を、温水用ヒートポンプ81側に移送する機能を有している。また、排熱移送手段111は、排熱移送流路112と、2つの三方弁113,114(弁体)とを備えている。排熱移送流路112は、冷水用ヒートポンプ82aと温水用ヒートポンプ81との間を繋ぐ流路である。具体的に言うと、排熱移送流路112は、供給流路115、排出流路116及び接続流路117からなっている。供給流路115は、地中熱交換器61から温水用ヒートポンプ81に循環水を供給する流路であり、排出流路116は、冷水用ヒートポンプ82aから地中熱交換器61に循環水を排出する流路である。接続流路117は、供給流路115と排出流路116とを繋ぐ流路である。また、各三方弁113,114は排熱移送流路112上に設けられている。具体的に言うと、供給流路115と接続流路117との接続部分に三方弁113が設けられ、排出流路116と接続流路117との接続部分に三方弁114が設けられている。
【0047】
図1に示されるように、この塗装ブース用空調システム10には、幾つかの箇所にセンシング手段が設けられている。具体的に言うと、塗装ブース用空調機21は、第1の温度センサーT1(第1の温度測定手段)、第2の温度センサーT2(第2の温度測定手段)、第3の温度センサーT3(第3の温度測定手段)、第1の湿度センサーH1(第1の湿度測定手段)及び第2の湿度センサーH2(第2の湿度測定手段)を備えている。詳述すると、塗装ブース用空調機21の給気入口には、空気の温度を測定する第1の温度センサーT1と、空気の湿度を測定する第1の湿度センサーH1とが設置されている。第1の温度センサーT1は、空気(外気)の温度を計測して、CPU122に第1温度測定信号を出力するようになっている。第1の湿度センサーH1は、空気(外気)の湿度を測定して、CPU122に第1湿度測定信号を出力するようになっている。また、プレヒータ22の下流側には、空気(具体的には、プレヒータ22において加熱された空気)の温度を測定する第2の温度センサーT2が設置されている。第2の温度センサーT2は、プレヒータ22の中央付近における空気の温度を計測して、CPU122に第2温度測定信号を出力するようになっている。さらに、給気ファン26の下流側には、空気の温度を測定する第3の温度センサーT3と、空気の湿度を測定する第2の湿度センサーH2とが設置されている。第3の温度センサーT3は、給気ファン26の下流側における空気の温度を測定して、CPU122に第3温度測定信号を出力するようになっている。第2の湿度センサーH2は、給気ファン26の下流側における空気の湿度を測定して、CPU122に第2湿度測定信号を出力するようになっている。なお、空気は、給気ファン26を通過する際に1℃程度加熱されるため、本実施形態の第3の温度センサーT3及び第2の湿度センサーH2を、給気ファン26の下流側に設置している。
【0048】
また、各水冷ヒートポンプ80内の二次側(塗装ブース用空調機21側)の入口及び出口には、温水または冷水の温度を測定する水温センサー(図示略)が設置されている。そして、各水温センサーからの温度測定信号が示す温水または冷水の温度に基づいて、水冷ヒートポンプ80の温水または冷水の温度が設定水温になるように制御される。
【0049】
次に、塗装ブース用空調システム10の電気的構成について説明する。
【0050】
図4に示されるように、塗装ブース用空調システム10は、システム全体を統括的に制御するための制御装置121を備えている。制御装置121は、CPU122(制御手段)、ROM123、RAM124、入出力回路等により構成されている。CPU122には、ワッシャ23、給気ファン26、温水用ヒートポンプ81及び冷水用ヒートポンプ82a~82cが各々のドライバ回路(図示略)を介して電気的に接続されている。また、CPU122には、第1の温度センサーT1、第2の温度センサーT2、第3の温度センサーT3、第1の湿度センサーH1及び第2の湿度センサーH2が電気的に接続されている。さらに、CPU122には、第1バイパスバルブ40、第2バイパスバルブ42、第3バイパスバルブ44、温水供給バルブ46、温水戻りバルブ48、冷水供給バルブ50、冷水戻りバルブ52及び三方弁113,114が電気的に接続されている。このように構成された制御装置121では、各センサーT1~T3,H1,H2から出力される温度や湿度の測定結果に基づいて、塗装ブース用空調機21における制御対象が可変制御される。その結果、所定の温度や湿度に調整された空調空気が生成されるようになっている。
【0051】
次に、塗装ブース用空調システム10の温湿度制御方法を説明する。
【0052】
まず、CPU122(
図4参照)は、第1の温度センサーT1からの第1温度測定信号が示す空気(外気)の温度(温度情報)及び第1の湿度センサーH1からの第1湿度測定信号が示す空気(外気)の湿度(湿度情報)と、予めROM123に記憶(設定)されている塗装ブース設定給気温湿度とを比較し、制御モードを夏季モードにするか冬季モードにするかを判定する。なお、夏季モードは、外気温が地中温度よりも高い場合に設定される制御モードであり、冬季モードは、外気温が地中温度よりも低い場合に設定される制御モードである。
【0053】
制御モードを夏季モードにすると判定した場合、1台の温水用ヒートポンプ81を含むようにして、冷水用ヒートポンプ82a~82cの数(本実施形態では3)を温水用ヒートポンプ81の数(本実施形態では1)よりも多くした状態で、塗装ブース用空調システム10を使用する(
図1参照)。このとき、各冷水用ヒートポンプ82a~82cに接続された冷水供給バルブ50(第3流路49)及び冷水戻りバルブ52(第4流路51)は開状態に切り替えられ、同じく各冷水用ヒートポンプ82a~82cに接続された温水供給バルブ46(第1流路45)及び温水戻りバルブ48(第2流路47)は閉状態に切り替えられる。
【0054】
そして、冷水用ヒートポンプ82a~82cによる冷水の冷却を、以下の順序で行う。
図3に示されるように、圧縮機93を駆動し、冷媒を四方弁95を介して第2熱交換器92の熱源コイル92aに送る。この時点では、冷媒の温度は低く、膨張弁94の開度も小さい。つまり、冷媒は膨張弁94を通過しにくくなっているため、冷媒が熱源コイル92aに送られるのに伴って冷媒が圧縮され、熱源コイル92a付近の冷媒が高温となる。その結果、第2熱交換器92において、熱源コイル92a内の冷媒の熱が受熱コイル92b内の循環水に伝達され、受熱コイル92b及び再熱流路97内を流れる循環水の温度が高くなる。なお、熱源コイル92a付近の冷媒が高温になると、膨張弁94の開度が大きくなるため、膨張弁94を通過する冷媒の流量は増加するようになる。
【0055】
また、第2熱交換器92の熱源コイル92a付近の冷媒が圧縮されるのに伴って、第1熱交換器91の熱源コイル91a付近の冷媒が膨張されて低温となる。その結果、第1熱交換器91において、受熱コイル91b内の冷水の熱が熱源コイル91a内の冷媒に伝達され、受熱コイル91b及び冷温水流路96内を流れる冷水の温度が低くなる。その後、冷温水流路96内を流れる冷水は、図示しないポンプにより、冷水供給流路33を介してクーリングコイル24に供給される。
【0056】
そして、供給された冷水を用いてクーリングコイル24で空気を冷却した結果、温度が上がった冷水が、クーリングコイル24から排出される。その後、クーリングコイル24から排出された冷水は、冷水タンク102に一時的に貯留され、ポンプにより冷水用ヒートポンプ82a~82cに供給される。
【0057】
なお、クーリングコイル24に流入する冷水の流量は、以下のようにして調整される。即ち、CPU122(
図4参照)は、予めROM123に記憶(設定)されている塗装ブース設定給気温湿度に基づいて、空気の第1露点温度を目標値として算出する。また、CPU122は、第3の温度センサーT3からの第3温度測定信号が示す空気の温度(温度情報)と、第2の湿度センサーH2からの第2湿度測定信号が示す空気の湿度(湿度情報)とに基づいて、空気の第2露点温度を算出する。そして、CPU122は、目標値を第2露点温度と比較しながら、クーリングコイル24に供給される冷水の流量を、クーリングコイル24の表面に結露が生じる程度の範囲内で調整する制御を行う。具体的に言うと、CPU122は、第3バイパスバルブ44(三方弁)の開度を調整することにより、クーリングコイル24に供給される冷水の流量を調整する制御を行う。その結果、クーリングコイル24の表面で空気が結露して除去され、空気(外気)が除湿される。なお、本実施形態のクーリングコイル24は、レヒータ25との組み合わせで再熱除湿を行うようになっている。また、CPU122は、冷水の流量を制御する『冷水流量制御手段』としての機能を有している。
【0058】
さらに、レヒータ25に流入する温水の流量は、以下のようにして調整される。即ち、CPU122は、目標値(設定温度)と、第3の温度センサーT3からの第3温度測定信号が示す空気の温度(温度情報)とを比較しながら、レヒータ25に供給される温水の流量を調整する制御を行う。具体的に言うと、CPU122は、第2バイパスバルブ42(三方弁)の開度を調整することにより、レヒータ25に供給される温水の流量を調整する制御を行う。この場合、温水の流量が増加することにより、加熱が行われる。即ち、CPU122は、温水の流量を制御する『温水流量制御手段』としての機能を有している。
【0059】
また、温水用ヒートポンプ81による温水の加熱を、以下の順序で行う。
図2に示されるように、圧縮機93を駆動し、冷媒を四方弁95を介して第1熱交換器91の熱源コイル91aに送る。この時点では、冷媒の温度は低く、膨張弁94の開度も小さい。つまり、冷媒は膨張弁94を通過しにくくなっているため、冷媒が熱源コイル91aに送られるのに伴って冷媒が圧縮され、熱源コイル91a付近の冷媒が高温となる。その結果、第1熱交換器91において、熱源コイル91a内の冷媒の熱が受熱コイル91b内の温水に伝達され、受熱コイル91b及び冷温水流路96内を流れる温水の温度が高くなる。その後、冷温水流路96内を流れる温水は、図示しないポンプにより、温水供給流路31を介してプレヒータ22及びレヒータ25に供給される。なお、熱源コイル91a付近の冷媒が高温になると、膨張弁94の開度が大きくなるため、膨張弁94を通過する冷媒の流量が増加するようになる。
【0060】
そして、供給された温水を用いてプレヒータ22及びレヒータ25で空気を加熱した結果、温度が下がった温水が、図示しないポンプにより、プレヒータ22及びレヒータ25からそれぞれ排出される。その後、プレヒータ22及びレヒータ25から排出された温水は、温水タンク101に一時的に貯留され、ポンプにより温水用ヒートポンプ81に供給される。
【0061】
なお、
図2に示される温水用ヒートポンプ81においては、第1熱交換器91の熱源コイル91a付近の冷媒が圧縮されるのに伴い、第2熱交換器92の熱源コイル92a付近の冷媒が膨張されて低温となる。その結果、第2熱交換器92において、受熱コイル92b内の循環水の熱が熱源コイル92a内の冷媒に伝達され、受熱コイル92b及び再熱流路97内を流れる循環水の温度が低くなる。その後、再熱流路97内を流れる循環水は、図示しないポンプにより、循環水排出流路71を介して地中熱交換器61に供給され、地中熱によってさらに温度が低くなる。なお、地中熱交換器61を経て温度が下がった循環水は、ポンプにより、循環水戻り流路72を介して温水用ヒートポンプ81に戻され、再び冷却される。
【0062】
しかしながら、温水用ヒートポンプ81の第2熱交換器92では、地中熱交換器61で冷やされた循環水がポンプにより受熱コイル92bに供給され、循環水の熱が、温度が低くなった熱源コイル92a内の冷媒に伝達される。即ち、温水用ヒートポンプ81は、プレヒータ22及びレヒータ25に供給する温水を、地中熱交換器61で冷やされた循環水からの吸熱により温める必要がある。この場合、温水を効率良く温めることができないという問題がある。
【0063】
そこで、本実施形態では、CPU122(
図4参照)が、排熱移送流路112の三方弁113,114を開状態に切り替える制御を行う。なお、CPU122は、三方弁113,114を開閉制御する機能を有している。これにより、冷水用ヒートポンプ82aから排出される温められた循環水(即ち、循環水を介して地中熱交換器61から地中へ捨てられる冷水用ヒートポンプ82aの一次側の排熱)が、ポンプにより、排熱移送流路112を通過して温水用ヒートポンプ81側に移送される。その結果、温水用ヒートポンプ81において、冷水用ヒートポンプ82aを経て温度が上がった循環水からの吸熱を行うことにより、温水用ヒートポンプ81内を流れる冷媒の温度が高くなるため、プレヒータ22及びレヒータ25に供給する温水を効率良く温めることができる。
【0064】
また、制御モードを冬季モードにすると判定した場合、温水用ヒートポンプ81の数(本実施形態では4)を冷水用ヒートポンプ82a~82cの数(本実施形態では0)よりも多くした状態で、塗装ブース用空調システム10を使用する。具体的には、冷水用ヒートポンプ82a~82cの四方弁95を切り替えることにより、第1熱交換器91を凝縮器として作動させ、第2熱交換器92を蒸発器として作動させる。また、CPU122は、冷水用ヒートポンプ82a~82cに接続された冷水供給バルブ50(第3流路49)及び冷水戻りバルブ52(第4流路51)を閉状態に切り替える制御を行うとともに、同じく冷水用ヒートポンプ82a~82cに接続された温水供給バルブ46(第1流路45)及び温水戻りバルブ48(第2流路47)を開状態に切り替える制御を行う。これにより、冷水用ヒートポンプ82a~82cが温水用ヒートポンプ81に切り替えられる。即ち、本実施形態の各水冷ヒートポンプ80は、温水用ヒートポンプ81及び冷水用ヒートポンプ82a~82cのどちらにも使用可能となっている。
【0065】
そして、冬季モードにおいては、各冷水用ヒートポンプ82a~82cが全て温水用ヒートポンプ81に切り替わっているため、温水用ヒートポンプ81による温水の加熱のみが行われる。詳述すると、
図2に示されるように、圧縮機93を駆動し、冷媒を四方弁95を介して第1熱交換器91の熱源コイル91aに送る。この時点では、冷媒の温度は低く、膨張弁94の開度も小さい。つまり、冷媒は膨張弁94を通過しにくくなっているため、冷媒が熱源コイル91aに送られるのに伴って冷媒が圧縮され、熱源コイル91a付近の冷媒が高温となる。その結果、第1熱交換器91において、熱源コイル91a内の冷媒の熱が受熱コイル91b内の温水に伝達され、受熱コイル91b及び冷温水流路96内を流れる温水の温度が高くなる。その後、冷温水流路96内を流れる温水は、図示しないポンプにより、温水供給流路31を介してプレヒータ22に供給される。また、外気温が特に低い場合、温水は、ポンプにより、温水供給流路31を介してプレヒータ22及びレヒータ25の両方に供給される。
【0066】
なお、プレヒータ22に流入する温水の流量は、以下のようにして調整される。即ち、CPU122は、予めROM123に記憶(設定)された塗装ブース設定給気温湿度に基づいて、プレヒータ22での加熱後の空気の温度を第1の目標値として算出する。そして、CPU122は、第1の目標値を、第2の温度センサーT2からの第2温度測定信号が示す空気の温度(温度情報)と比較しながら、プレヒータ22に供給される温水の流量を調整する制御を行う。具体的に言うと、CPU122は、第1バイパスバルブ40(三方弁)の開度を調整することにより、プレヒータ22に供給される温水の流量を調整する制御を行う。この場合、温水の流量が増加することにより、加熱が行われる。
【0067】
さらに、塗装ブース用空調機21内の空気の湿度は、以下のようにして調整される。即ち、CPU122は、塗装ブース設定給気温湿度に基づいて算出された第1露点温度と、第3温度測定信号(第3の温度センサーT3)が示す空気の温度(温度情報)及び第2湿度測定信号(第2の湿度センサーH2)が示す空気の湿度(湿度情報)に基づいて算出された第2露点温度とを比較して、ワッシャ23による加湿量を調整する制御を行う。即ち、CPU122は、空気の湿度を制御する『湿度制御手段』としての機能を有している。
【0068】
また、レヒータ25に流入する温水の流量は、以下のようにして調整される。即ち、CPU122は、予めROM123に記憶(設定)された塗装ブース設定給気温湿度に基づいて、レヒータ25の下流側における空気の温度を第2の目標値として算出する。そして、CPU122は、第2の目標値を、第3の温度センサーT3からの第3温度測定信号が示す空気の温度(温度情報)と比較しながら、レヒータ25に供給される温水の流量を調整する制御を行う。具体的に言うと、CPU122は、第2バイパスバルブ42(三方弁)の開度を調整することにより、レヒータ25に供給される温水の流量を調整する制御を行う。この場合、温水の流量が増加することにより、加熱が行われる。
【0069】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0070】
(1)本実施形態の塗装ブース用空調システム10では、夏季モードにおいて、循環水を介して地中熱交換器61から地中へ捨てられる冷水用ヒートポンプ82aの一次側の排熱が、排熱移送手段111によって温水用ヒートポンプ81側に移送される。このため、冷水用ヒートポンプ82aの一次側の排熱、即ち、地中熱よりもエクセルギが高い熱を、温水用ヒートポンプ81の一次側の熱源として再利用することができる。従って、温水用ヒートポンプ81において、冷水用ヒートポンプ82aを経て温度が上がった循環水からの吸熱を行うことにより、温水用ヒートポンプ81内を流れる冷媒の温度が高くなるため、温水を効率良く温めてプレヒータ22及びレヒータ25に供給することができる。ゆえに、地中熱交換器61と水冷ヒートポンプ80とを組み合わせて、地中熱を利用して温熱及び冷熱を同時供給する場合に、年間を通して、効率的な熱供給が可能となる。
【0071】
(2)本実施形態では、温水用ヒートポンプ81を用いることにより、より高い温度でプレヒータ22及びレヒータ25に温水を供給することができる。その結果、塗装ブース用空調機21内の空気をより高い温度に加熱することができ、空気の湿度もより適正な湿度にすることができる。よって、塗装ブース用空調機21の供給温湿度範囲を広げることができる。
【0072】
(3)本実施形態の塗装ブース用空調システム10は、水冷ヒートポンプ80との間で循環水を循環させる地中熱交換器61を備えている。なお、循環水を加熱または冷却する地中熱は、熱量の変動が小さい。このため、地中熱を用いて、塗装ブース用空調システム10の安定した運転が可能となる。
【0073】
(4)特許文献1に記載の従来技術は、再熱器(レヒータ)に供給される温水を、ヒートポンプから出て地中熱で冷やされた水の“成り行きの熱”により、温めるようになっている。一方、本実施形態の塗装ブース用空調システム10は、レヒータ25に供給される温水を、温水用ヒートポンプ81により温めている。この場合、温水を温める熱が、“成り行きの熱”よりもエクセルギが高い状態となるため、効率的な熱供給を行うことができる。
【0074】
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に基づき説明する。ここでは、上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0075】
図5に示されるように、本実施形態の塗装ブース用空調システム130は、4台の水冷ヒートポンプ80に加えて2台の空冷ヒートポンプ131,132を備えている。空冷ヒートポンプ131,132は、塗装ブース用空調機21の近傍において互いに隣接して配置されている。空冷ヒートポンプ131,132は、温水用ヒートポンプ81からプレヒータ22及びレヒータ25に供給される温水の加熱、及び、冷水用ヒートポンプ82a~82cからクーリングコイル24に供給される冷水の冷却を行う。なお、各空冷ヒートポンプ131,132は、温水供給路133を介して温水タンク101に接続され、温水排出路134を介して温水タンク101に接続されている。また、各空冷ヒートポンプ131,132は、冷水供給路135を介して冷水タンク102に接続され、冷水排出路136を介して冷水タンク102に接続されている。
【0076】
また、空冷ヒートポンプ131,132は、熱媒体としての冷媒が流れる冷媒流路(図示略)を有している。冷媒流路は環状をなす閉じられた流路であり、冷媒流路上には、凝縮器(放熱部)、蒸発器(吸熱部)、コンプレッサ及び膨張弁が設置されている。凝縮器は、冷媒流路と温水供給路133との間で熱を交換する機器である。
【0077】
冷媒流路内を流れる冷媒の熱(温熱)は、温水供給路133内を流れる温水に伝達されるようになっている。この温水は、温水タンク101内を通過した後、図示しないポンプにより、温水戻り流路32(第2流路47)を介して水冷ヒートポンプ80(温水用ヒートポンプ81)に供給される。そして、温水用ヒートポンプ81で加熱された温水は、ポンプにより、温水供給流路31を介してプレヒータ22及びレヒータ25に供給される。なお、プレヒータ22及びレヒータ25を経て温度が下がった温水は、ポンプにより、温水戻り流路32及び温水排出路134を介して空冷ヒートポンプ131,132に戻され、再び加熱される。
【0078】
一方、冷媒流路内を流れる冷媒の熱(冷熱)は、冷水供給路135内を流れる冷水に伝達されるようになっている。この冷水は、冷水タンク102内を通過した後、図示しないポンプにより、冷水戻り流路34(第4流路51)を介して冷水用ヒートポンプ82a~82cに供給される。そして、冷水用ヒートポンプ82a~82cで冷却された冷水は、ポンプにより、冷水供給流路33を介してクーリングコイル24に供給される。なお、クーリングコイル24を経て温度が上がった冷水は、ポンプにより、冷水戻り流路34及び冷水排出路136を介して空冷ヒートポンプ131,132に戻され、再び冷却される。
【0079】
図5に示されるように、温水供給路133には、同温水供給路133を開状態または閉状態に切り替える温水供給バルブ137が設置され、冷水供給路135には、同冷水供給路135を開状態または閉状態に切り替える冷水供給バルブ138が設置されている。また、温水排出路134には、同温水排出路134を開状態または閉状態に切り替える温水戻りバルブ139が設置され、冷水排出路136には、同冷水排出路136を開状態または閉状態に切り替える冷水戻りバルブ140が設置されている。なお、本実施形態のバルブ137~140は、図示しないモーターにより作動する電動弁である。
【0080】
なお、制御装置121のCPU122(
図4参照)は、季節変動(外気温の変動)や負荷変動(外気温度の変動、例えば、冬季の朝など、最低気温が大きく下がったときの変動)が大きい特定条件下であると判定したときに、空冷ヒートポンプ131,132を補助的に作動させる制御を行う。具体的に言うと、CPU122は、温水を加熱する場合に、温水供給バルブ137及び温水戻りバルブ139を開状態に切り替える制御を行うとともに、冷水供給バルブ138及び冷水戻りバルブ140を閉状態に切り替える制御を行う。また、CPU122は、冷水を冷却する場合に、冷水供給バルブ138及び冷水戻りバルブ140を開状態に切り替える制御を行うとともに、温水供給バルブ137及び温水戻りバルブ139を閉状態に切り替える制御を行う。
【0081】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0082】
(6)本実施形態では、上記した特定条件下において、温水の加熱や冷水の冷却のベース分を地中熱ヒートポンプ(温水用ヒートポンプ81及び冷水用ヒートポンプ82a~82c)で賄い、上記した変動分を空冷ヒートポンプ131,132で賄うように分担することが可能である。なお、地中熱交換器61は、設置費用が比較的高いため、本実施形態のように、温水の加熱や冷水の冷却を設置費用が比較的安い空冷ヒートポンプ131,132に分担させれば、全体のイニシャルコストを抑えることができる。
【0083】
(7)ところで、外気温が地中温度よりも低い冬季においては、大気から熱を吸収した際に、空冷ヒートポンプ131,132に霜が付着し、空冷ヒートポンプ131,132が機能しなくなるおそれがある。一方、本実施形態では、塗装ブース用空調システム130が2台の空冷ヒートポンプ131,132を備えているため、一方の空冷ヒートポンプ131(132)の霜取りを行いつつ、もう一方の空冷ヒートポンプ132(131)を運転させるようにすることができる。
【0084】
なお、上記各実施形態を以下のように変更してもよい。
【0085】
・上記各実施形態では、外気温が地中温度よりも高い夏季モードにおいて、1台の温水用ヒートポンプ81を含むようにして、冷水用ヒートポンプ82a~82cを3台にした状態で、塗装ブース用空調システム10,130を使用していた。しかし、冷水用ヒートポンプの数が温水用ヒートポンプの数よりも多くなる範囲内であれば、2台以上の温水用ヒートポンプを含むようにしてもよい。また、冷水用ヒートポンプの数が温水用ヒートポンプの数よりも多くなる範囲内であれば、冷水用ヒートポンプを2台にしてもよいし、4台以上にしてもよい。
【0086】
・上記各実施形態では、外気温が地中温度よりも低い冬季モードにおいて、温水用ヒートポンプ81を4台にし、冷水用ヒートポンプ82a~82cを0台にした状態で、塗装ブース用空調システム10,130を使用していた。しかし、温水用ヒートポンプを5台以上に増やしてもよい。また、温水用ヒートポンプの数が冷水用ヒートポンプの数よりも多くなる範囲内であれば、冷水用ヒートポンプを増やしてもよい。
【0087】
・上記各実施形態の排熱移送手段111は、3台の冷水用ヒートポンプ82a~82cのうち、温水用ヒートポンプ81に隣接する冷水用ヒートポンプ82aの一次側の排熱を、温水用ヒートポンプ81側に移送する機能を有していた。しかし、排熱移送手段111は、冷水用ヒートポンプ82bの一次側の排熱を温水用ヒートポンプ81側に移送する機能を有していてもよいし、冷水用ヒートポンプ82cの一次側の排熱を温水用ヒートポンプ81側に移送する機能を有していてもよい。
【0088】
・上記各実施形態の排熱移送手段111では、供給流路115と接続流路117との接続部分、及び、排出流路116と接続流路117との接続部分の両方に三方弁113,114が設けられていた。しかし、三方弁は、供給流路115と接続流路117との接続部分のみ、または、排出流路116と接続流路117との接続部分のみに設けられていてもよい。
【0089】
・上記各実施形態の地中熱交換器61は、垂直埋設型の熱交換器であったが、水平埋設型の熱交換器であってもよい。
【0090】
・上記第2実施形態の空冷ヒートポンプ131,132は、温水用ヒートポンプ81からプレヒータ22及びレヒータ25に供給される温水の加熱、及び、冷水用ヒートポンプ82a~82cからクーリングコイル24に供給される冷水の冷却を行っていた。しかし、空冷ヒートポンプ131,132は、温水の加熱のみを行ってもよい。
【0091】
・上記第2実施形態の塗装ブース用空調システム130は、2台の空冷ヒートポンプ131,132を備えていたが、3台以上の空冷ヒートポンプを備えていてもよいし、空冷ヒートポンプを1台のみ備えていてもよい。
【0092】
・上記各実施形態では、塗装ブース用空調機21の各熱交換器(プレヒータ22、レヒータ25、クーリングコイル24)への流量調整を、バイパス流路39,41,43を用いて行っていた。しかし、バイパス流路39,41,43を用いずに、ポンプの回転数を調整することにより、流量調整を行ってもよい。
【0093】
・上記各実施形態では、温水用ヒートポンプ81、冷水用ヒートポンプ82a~82c、給気ファン26、バルブ40,42,44,46,48,50,52及び三方弁113,114等の制御を1つのCPU122で行っていたが、各制御を別々のCPUで行うように構成してもよい。
【0094】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0095】
(1)請求項2または3において、前記排熱移送流路は、前記地中熱交換器から前記温水用ヒートポンプに前記循環水を供給する供給流路と、前記冷水用ヒートポンプから前記地中熱交換器に前記循環水を排出する排出流路と、前記供給流路と前記排出流路とを繋ぐ接続流路とからなり、前記供給流路と前記接続流路との接続部分、及び、前記排出流路と前記接続流路との接続部分の少なくとも一方に、前記弁体である三方弁が設けられていることを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【0096】
(2)請求項1乃至3のいずれか1項において、前記塗装ブース用空調機は、取り込んだ前記空気を加熱して給気温度を上げる前記加熱手段である前段側加熱手段と、前記前段側加熱手段を経た前記空気の湿度を上げる加湿手段と、前記加湿手段を経た前記空気を冷却して給気温度を下げる前記冷却手段と、前記冷却手段を経た前記空気を再び加熱して給気温度を上げる前記加熱手段である後段側加熱手段とを備えることを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【0097】
(3)技術的思想(2)において、前記前段側加熱手段の上流側に、前記温水の温度を測定する第1の温度測定手段と、前記空気の湿度を測定する第1の湿度測定手段とが設置され、前記前段側加熱手段の下流側に、前記空気の温度を測定する第2の温度測定手段が設置されるとともに、前記後段側加熱手段の下流側に、前記温水の温度を測定する第3の温度測定手段と、前記空気の湿度を測定する第2の湿度測定手段とが設置されていることを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【0098】
(4)技術的思想(3)において、前記温水の流量を制御する温水流量制御手段を備え、外気温が地中温度よりも低い場合に、前記温水流量制御手段は、予め設定された塗装ブース設定給気温湿度に基づいて、前記前段側加熱手段での加熱後の前記空気の温度を第1の目標値として算出し、前記第1の目標値を、前記第2の温度測定手段が測定して得た温度情報と比較しながら、前記前段側加熱手段に供給される前記温水の流量を調整する制御を行うことを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【0099】
(5)技術的思想(4)において、外気温が地中温度よりも低い場合に、前記温水流量制御手段は、前記塗装ブース設定給気温湿度に基づいて、前記後段側加熱手段の下流側における前記空気の温度を第2の目標値として算出し、前記第2の目標値を、前記第3の温度測定手段が測定して得た温度情報と比較しながら、前記後段側加熱手段に供給される前記温水の流量を調整する制御を行うことを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【0100】
(6)技術的思想(3)乃至(5)のいずれか1つにおいて、前記空気の湿度を制御する湿度制御手段を備え、外気温が地中温度よりも低い場合に、前記湿度制御手段は、予め設定された塗装ブース設定給気温湿度に基づいて、前記空気の第1露点温度を算出し、前記第3の温度測定手段が測定して得た温度情報と、前記第2の湿度測定手段が測定して得た湿度情報とに基づいて、前記空気の第2露点温度を算出し、前記第1露点温度と前記第2露点温度とを比較しながら、前記加湿手段による加湿量を調整する制御を行うことを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【0101】
(7)技術的思想(3)において、前記冷水の流量を制御する冷水流量制御手段を備え、外気温が地中温度よりも高い場合に、前記冷水流量制御手段は、予め設定された塗装ブース設定給気温湿度に基づいて、前記空気の第1露点温度を目標値として算出し、前記第3の温度測定手段が測定して得た温度情報と、前記第2の湿度測定手段が測定して得た湿度情報とに基づいて、前記空気の第2露点温度を算出し、前記目標値を前記第2露点温度と比較しながら、前記冷却手段に供給される前記冷水の流量を調整する制御を行うことを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【0102】
(8)技術的思想(7)において、前記温水の流量を制御する温水流量制御手段を備え、外気温が地中温度よりも高い場合に、前記温水流量制御手段は、前記目標値と、前記第3の温度測定手段が測定して得た温度情報とを比較しながら、前記後段側加熱手段に供給される前記温水の流量を調整する制御を行うことを特徴とする塗装ブース用空調システム。
【符号の説明】
【0103】
10,130…塗装ブース用空調システム
21…塗装ブース用空調機
22…加熱手段としてのプレヒータ
24…冷却手段としてのクーリングコイル
25…加熱手段としてのレヒータ
31…二次側流路としての温水供給流路
32…二次側流路、及び、加熱手段を経て温度が下がった温水を温水用ヒートポンプに供給する経路としての温水戻り流路
33…二次側流路としての冷水供給流路
34…二次側流路、及び、冷却手段を経て温度が上がった冷水を冷水用ヒートポンプに供給する経路としての冷水戻り流路
61…地中熱交換器
71…一次側流路としての循環水排出流路
72…一次側流路としての循環水戻り流路
80…ヒートポンプとしての水冷ヒートポンプ
81…温水用ヒートポンプ
82a,82b,82c…冷水用ヒートポンプ
101…温水タンク
102…冷水タンク
111…排熱移送手段
112…排熱移送流路
113,114…弁体としての三方弁
122…制御手段としてのCPU
131,132…空冷ヒートポンプ