(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075386
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】工具欠損の検出方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20240527BHJP
B23G 1/16 20060101ALI20240527BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B23Q17/09 C
B23G1/16 C
B23Q17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186801
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 清
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029DD08
3C029DD20
(57)【要約】
【課題】工作機械に用いる工具の欠損を、工具表面に付着した切削液の影響を受けずに、安定して検出可能とする。
【解決手段】エンドミル10の軸方向と交差する方向からレーザ光9をエンドミル10の刃端である切れ刃10aに照射し、レーザ光9で切れ刃10aをなぞるようにエンドミル10の回転とエンドミル10の軸方向の動きとを同期させて、レーザ光9の検出の有無から切れ刃10aの欠損を検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具の欠損を検出する方法であって、
前記工具の軸方向と交差する方向からレーザ光を前記工具の刃端である切れ刃に照射し、前記レーザ光で前記切れ刃をなぞるように前記工具の回転と前記工具の軸方向の動きとを同期させて、前記レーザ光の検出の有無から前記切れ刃の欠損を検出することを特徴とする工具欠損の検出方法。
【請求項2】
工具の欠損を検出する方法であって、
前記工具はタップであり、前記タップの軸方向と交差する方向からレーザ光を前記タップのねじ山に照射し、前記タップの回転動作と、前記タップの軸方向の動作と、前記レーザ光と前記タップの軸とが直交する方向の動作とを同期させて、前記タップの回転角度と前記レーザ光の検出との関係を表す波形を測定し、この測定波形を、予め測定した欠損のない基準波形と比較して前記ねじ山の欠損の有無を検出することを特徴とする工具欠損の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械により加工を行う際に用いる工具の欠損を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転する工具により被加工物を加工する際に、工具が折損したり、工具刃端で実際に被加工物と接触する部分である切れ刃の一部が欠損したりするトラブルがしばしば発生する。工具の使用時間が長くなると切れ刃が摩耗していくため、切削負荷が上昇していき、欠損や折損に至るものである。この工具の状態を検出する方法として、折損に関しては、工具の長さを測定する接触式の装置や、レーザ光を用いる非接触式の装置が普及しており、容易に検出することができる。他方、欠損に関しては検出が難しく、例えば特許文献1にその方法が提案されている。特許文献1では、工具をカメラにより撮影し、画像処理により検出する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の方法は、撮影した画像を用いるため、工具表面に付着している切削液の影響を受けやすく、反射による誤判定など安定性に問題を有している。
【0005】
そこで、本開示は、上記問題に鑑みなされたものであって、切削液の影響を受けず安定して工具の欠損を検出することができる方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、工具の欠損を検出する方法であって、
前記工具の軸方向と交差する方向からレーザ光を前記工具の刃端である切れ刃に照射し、前記レーザ光で前記切れ刃をなぞるように前記工具の回転と前記工具の軸方向の動きとを同期させて、前記レーザ光の検出の有無から前記切れ刃の欠損を検出することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、工具の欠損を検出する方法であって、
前記工具はタップであり、前記タップの軸方向と交差する方向からレーザ光を前記タップのねじ山に照射し、前記タップの回転動作と、前記タップの軸方向の動作と、前記レーザ光と前記タップの軸とが直交する方向の動作とを同期させて、前記タップの回転角度と前記レーザ光の検出との関係を表す波形を測定し、この測定波形を、予め測定した欠損のない基準波形と比較して前記ねじ山の欠損の有無を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、工具欠損の検出を、レーザ光が通過するか否かを検出して行うため、工具の反射の影響を受けず、工具表面の切削液の有無にかかわらず安定した工具欠損の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】レーザ光によるエンドミルの欠損の検出方法を示す図である。
【
図3】レーザ光によるタップの欠損の検出方法を示す図である。
【
図4】タップの回転角度とレーザ光検出装置によるレーザ光検出との関係を示す基準波形の図である。
【
図5】欠損がある場合のタップの回転角度とレーザ光検出装置によるレーザ光検出との関係を示す測定波形の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、工作機械の一例としてのマシニングセンタMを示して説明する。
図1で主軸2の軸方向をZ軸方向、紙面水平方向をX軸方向、紙面垂直方向をY軸方向とする。
直交3軸動作が可能なマシニングセンタMの主軸頭1は、回転可能な主軸2を具備している。主軸2の先端部には、工具ホルダ3が装着されている。工具ホルダ3は、工具4を把持している。
マシニングセンタMでは、図示しない制御装置により、主軸2の回転と主軸頭1の送り動作とをコントロールして、テーブル5の上に固定された被加工物6に対して、工具4で切削加工を行うものである。制御装置は、CPU及びCPUに接続されたメモリを含んで構成され、それらにより運転制御が実現される。
【0010】
テーブル5には、X軸方向にレーザ光9を放射するレーザ光放射装置7と、対向する位置にレーザ光検出装置8とが設置されている。レーザ光検出装置8は、レーザ光放射装置7から放射されるレーザ光9の有無を検出する装置で、両装置間にレーザ光9を遮断する物体の存在を検出することができる。レーザ光放射装置7及びレーザ光検出装置8は、制御装置に接続されており、マシニングセンタMと同期した制御が可能である。この
図1は、全体図を示す概略図であるため、レーザ光9により工具4の測定を行う位置ではないが、本開示の工具欠損の検出のための測定を行うときは、レーザ光9が工具4の切れ刃に当たる位置に主軸頭1を移動する。なお、制御装置は、工具4の回転角度とレーザ光9の検出との関係を記録、演算する機能も有している。
【0011】
工具4がエンドミル10である場合を例に、
図2を用いて工具欠損の検出の詳細を説明する。
図2は、欠損を検出するときのエンドミル10及びレーザ光9を拡大した鳥瞰図である。この例では、エンドミル10の刃数が4枚であり、軸方向にねじれた形状をしている。欠損の検出は、レーザ光9を切れ刃10aに照射し、ねじれた切れ刃10aをなぞり、常にレーザ光9が当たるように、エンドミル10の回転と、エンドミル10の軸方向(Z軸方向)の動きとを同期させる。切れ刃10aに欠損がなければ、レーザ光9は常に遮断されているが、欠損があるとレーザ光9が通過し、レーザ光検出装置8で検知されるため、欠損を検出できる。エンドミル10の刃数が4枚であるため、同様の動作を各切れ刃10aに対して合計4回行うことで、すべての切れ刃10aで欠損の有無を確認できる。
【0012】
このように、第1の構成に係る工具欠損の検出方法では、エンドミル10(工具の一例)の軸方向と交差する方向からレーザ光9をエンドミル10の刃端である切れ刃10aに照射し、レーザ光9で切れ刃10aをなぞるようにエンドミル10の回転とエンドミル10の軸方向の動きとを同期させて、レーザ光9の検出の有無から切れ刃10aの欠損を検出する。
この構成によれば、エンドミル10の切れ刃10aの欠損の検出を、レーザ光9が通過するか否かを検知して行うため、エンドミル10の反射の影響を受けず、エンドミル10表面の切削液の有無にかかわらず安定した切れ刃10aの欠損の検出が可能となる。
【0013】
なお、第1の構成において、エンドミルの刃数や形状は上記例に限定しない。エンドミル以外の工具も適用可能である。
レーザ光放射装置とレーザ光検出装置との位置関係は逆であってもよいし、両装置を設置する位置や向きも適宜変更可能である。
工具を動作させる工作機械もマシニングセンタに限定しない。
【0014】
次に工具4が、雌ねじを加工する工具であるタップ11の場合の例を
図3に示し説明する。レーザ光9をタップ11のねじ山11aに照射し、ねじ山11aに常にレーザ光9が当たるように、タップ11の回転と、タップ11の軸方向(Z軸方向)の動きとを同期させる。ただし、タップ11は、規定のタップ外径になるまで、先端から徐々に外径が大きくなっているため、レーザ光9をタップ11先端のねじ山11aから始めて、常にタップ11のねじ山11aにレーザ光9を当てるためには、回転とZ軸方向の動作に加え、Y軸方向の動作も同期させる必要がある。
また、タップ11には、切屑を排出するために軸方向に溝12が切られており、本実施例では、等分に4本の溝12がある。そのため、レーザ光9は、この溝12を通過するため、レーザ光検出装置8の測定波形をタップ11の回転角度に対して示すと、
図4に示すグラフが得られる。すなわち、ねじ山11aでレーザ光9が遮断されている状態と、溝12でレーザ光9が通過する状態とが交互に表れており、この波形をねじ山11aに折損のないタップ11の基準波形とする。ここでタップ11のねじ山11aの一部に欠損があると、レーザ光9が通過するため、
図5に示すように、欠損部(430°~440°付近)でレーザ光9が検出される波形となる。この測定波形を
図4の基準波形と比較することで、波形の違いが明確となり、欠損を検出することができる。
【0015】
このように、第2の構成に係る工具欠損の検出方法では、工具はタップ11であり、タップ11の軸方向と交差する方向からレーザ光9をタップ11のねじ山11aに照射し、タップ11の回転動作と、タップ11の軸方向の動作と、レーザ光9とタップ11の軸とが直交する方向の動作とを同期させて、タップ11の回転角度とレーザ光9の検出との関係を表す波形を測定し、この測定波形を、予め測定した欠損のない基準波形と比較して欠損の有無を検出する。
この構成によれば、タップ11のねじ山11aの欠損の検出を、レーザ光9が通過するか否かを検知して行うため、タップ11の反射の影響を受けず、タップ11表面の切削液の有無にかかわらず安定したねじ山11aの欠損の検出が可能となる。
【0016】
なお、第2の構成において、タップのねじ山の数及び形態、溝の数及び形態は、上記例に限定しない。
レーザ光放射装置とレーザ光検出装置との位置関係は逆であってもよいし、両装置を設置する位置や向きも適宜変更可能である。
工具を動作させる工作機械もマシニングセンタに限定しない。
【符号の説明】
【0017】
1・・主軸頭、2・・主軸、3・・工具ホルダ、4・・工具、5・・テーブル、6・・被加工物、7・・レーザ光放射装置、8・・レーザ光検出装置、9・・レーザ光、10・・エンドミル、10a・・切れ刃、11・・タップ、11a・・ねじ山、12・・溝、M・・マシニングセンタ。