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特開2024-7539工作機械および工作機械を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007539
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】工作機械および工作機械を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240111BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240111BHJP
   B23Q 5/36 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B23Q3/06 304K
B23Q17/00 B
B23Q5/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110149
(22)【出願日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】22183143
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596007164
【氏名又は名称】エスエムヴェー アウトブローク シュパンジステーメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SMW-Autoblok Spannsysteme GmbH
【住所又は居所原語表記】Wiesentalstrasse 28, D-88074 Meckenbeuren, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エックハート マウラー
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
【Fターム(参考)】
3C016CA07
3C029EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械制御部と緊締装置との間の結合を形成して、データ通信の安全性が従来技術よりも改善される工作機械を創出する。
【解決手段】緊締装置制御部が、緊締装置に対応付けられており、緊締装置制御部には、受信したプロセスデータセットを互いに依存せずに評価しかつエラー時には緊締装置を安全な状態に移行させる冗長な2つのマイクロプロセッサが含まれることによって解決される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定の機械制御部(10)と、回転する緊締装置(1)とを有する工作機械であって、
前記機械制御部(10)は、結合ユニット(7)が中間接続されて、前記緊締装置(1)と共に回転する緊締装置制御部(20)と通信し、前記結合ユニット(7)により、前記機械制御部(10)が非接触で前記緊締装置制御部(20)にデータ接続され、前記緊締装置制御部(20)は、前記緊締装置(1)の緊締手段(2,3)を作動させるための推進手段を駆動制御するための制御ユニット(21)を有し、前記制御ユニット(21)には、少なくとも2つの冗長なマイクロプロセッサ(22,23)が対応付けられており、前記マイクロプロセッサ(22,23)により、前記制御ユニット(21)を介して前記機械制御部(10)から受信したプロセスデータセットが互いに依存せずに検査可能であり、かつ/またはプロセスセンサから受信したプロセスデータは、互いに依存せずにプロセスデータセットに使用可能であり、また前記制御ユニット(21)を介して前記機械制御部(10)に伝送可能である、工作機械において
前記緊締手段(2,3)にそれぞれ少なくとも1つの力センサ(35,36)または緊締信号発生器が対応付けられており、前記力センサ(35,36)または前記緊締信号発生器はそれぞれ、前記マイクロプロセッサ(22,23)の1つだけにデータ接続されているか、または前記マイクロプロセッサ(22,23)には複数の緊締手段(2,3)の前記力センサ(35,36)または緊締信号発生器が対応付けられており、互いに対向する緊締手段(2,3)の前記力センサ(35,36)または緊締信号発生器は、異なるマイクロプロセッサ(22,23)に対応付けられている、ことを特徴とする、工作機械。
【請求項2】
前記緊締手段(2,3)の前記推進手段は、サーボコントローラ(29,30)によって制御されるサーボモータ(26,27)である、ことを特徴とする、請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記緊締手段(2,3)にはそれぞれ少なくとも1つの力センサ(35,36)または緊締信号発生器が対応付けられており、前記マイクロプロセッサ(22,23)には複数の緊締手段(2,3)の前記力センサ(35,36)または緊締信号発生器が対応付けられており、反対方向に作用する力成分を有する緊締手段(2,3)の前記力センサ(35,36)または緊締信号発生器は、異なるマイクロプロセッサ(22,23)に対応付けられている、ことを特徴とする、請求項1または2記載の工作機械。
【請求項4】
前記緊締手段(2,3)には、前記制御ユニット(21)にデータ接続されている変位センサ(32,33)が対応付けられている、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項5】
前記結合装置(7)により、前記機械制御部(10)と前記緊締装置制御部(20)との間の誘導結合データ接続が形成される、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項6】
固定の機械制御部(10)と、回転する緊締装置(1)とを有する工作機械を制御する方法であって、前記機械制御部(10)は、結合ユニット(7)が中間接続されて、前記緊締装置(1)と共に回転する緊締装置制御部(20)と通信し、前記結合ユニット(7)により、前記機械制御部(10)が非接触で前記緊締装置制御部(20)にデータ接続され、前記緊締装置制御部(20)は、前記緊締装置(1)の緊締手段(2,3)を作動させるための推進手段を駆動制御するための制御ユニット(21)を有し、前記機械制御部(10)から前記緊締装置制御部(20)に送信されるプロセスデータセットを冗長な2つのマイクロプロセッサ(22,23)によって独立して検査し、かつ/または前記マイクロプロセッサ(22,23)により、プロセスセンサから受信したプロセスデータを互いに依存せずにプロセスデータセットに使用し、前記制御ユニット(21)を介して前記機械制御部(10)に伝送する、方法において、
前記緊締手段(2,3)にそれぞれ少なくとも1つの力センサ(35,36)もしくは緊締信号発生器が対応付けられており、前記力センサ(35,36)もしくは前記緊締信号発生器から送信されたプロセスデータセットをそれぞれ、前記マイクロプロセッサ(22,23)の1つだけによって検査するか、またはマイクロプロセッサ(22,23)には、複数の緊締手段(2,3)の前記力センサ(35,36)もしくは緊締信号発生器が、また互いに対向する緊締手段(2,3)の前記力センサ(35,36)もしくは緊締信号発生器が、送信した前記プロセスデータセットを検査するために、異なるマイクロプロセッサ(22,23)に対応付けられている、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
プロセスデータセットは、計算したシグネチャおよび/または連続する識別番号を有する、ことを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記機械制御部(10)によって出力された、それぞれの推進手段についてのプロセスデータセットには、STO信号(Safe-Torque-Off-Signal)が含まれており、前記信号がイネーブル信号に対応する場合にのみ該当する前記推進手段の運動をイネーブルする、ことを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
STO信号を受け取った場合、またはシグネチャにおける、または予想される識別番号との相違におけるエラーの場合に、前記マイクロプロセッサ(22,23)により、互いに依存せずに前記緊締手段(2,3)に停止信号を出力する、ことを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
力センサ(35,36)または緊締信号発生器から前記マイクロプロセッサ(22,23)にセンサデータを伝送し、プロセスデータセットにおいて前記機械制御部(10)に送信するために前記センサデータを使用する、ことを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
それぞれのマイクロプロセッサ(22,23)により、固有のプロセスデータセットを作成し、前記制御ユニット(21)を介して前記機械制御部(10)に伝送する、ことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
それぞれのマイクロプロセッサ(22,23)により、前記マイクロプロセッサ(22,23)によって受信したプロセスデータを循環式のプロセスデータセットに書き込み、前記制御ユニット(21)により、前記循環式のプロセスデータセットを前記機械制御部(10)に伝送する、ことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定の機械制御部と、回転する緊締装置とを有する工作機械に関しており、機械制御部は、結合ユニットが中間接続されて、緊締装置と共に回転する緊締装置制御部と通信し、結合ユニットにより、機械制御部が非接触で緊締装置制御部にデータ接続され、緊締装置制御部は、緊締装置の緊締手段を作動させるための推進手段を駆動制御するための制御ユニットを有し、制御ユニットには、少なくとも2つの冗長なマイクロプロセッサが対応付けられており、マイクロプロセッサにより、制御ユニットを介して機械制御部から受信したプロセスデータセットは、互いに依存せずに検査可能であり、かつ/またはプロセスセンサから受信したプロセスデータは互いに依存せずにプロセスデータセットに使用可能であり、制御ユニットを介して機械制御部に伝送可能であり、本発明はならびに、このような工作機械を制御する方法に関する。
【0002】
このように工作機械は既に、欧州特許出願公開第4015144号明細書から公知である。別の従来技術についてはまず、欧州特許出願公開第3620248号明細書を参照されたい。この文献では、工作機械用の結合装置が提供されており、この結合装置を介し、誘導作動チャックにより、顧客固有に設けられている工作機械のアセンブリには依存せずに可能な限りに容易に電気的に接続が実現され、またチャックおよびこれに取り付けられるチャックジョーの機能の監視が保証される。
【0003】
これは、結合器が中間接続されて、機械制御部の制御ユニットによって駆動制御可能なインタフェースがチャックに対応付けられるように、プログラマブルインタフェースを配置構成することによって実現される。
【0004】
しかしながら、ここからは、制御信号、特に安全にクリティカルな信号、例えば、STO信号(Safe-Torque-Off-Signal)等が、誘導結合器により、正しく伝送され、対応して受信されることを保証することができないという問題が生じる。
【0005】
この停止機能は、最もふつうに行われている安全機能であり、この安全機能により、駆動器には、回転または運動を生じさせるエネルギがもはや供給されない。駆動器は、トルクなしに惰性で停止する。意図しない再作動開始もこの停止機能によって阻止される。
【0006】
確かに従来技術では冗長な検査が設けられているが、冗長に設けられた2つの制御について、誘導結合器を介する伝送経路は同じであるため、第1の制御においてデータパケットが失われる際には、冗長な第2の制御において、対応するデータパケットも失われてしまうというリスクが高くなる。
【0007】
さらに、別の従来技術として米国特許出願公開第2006/176823号明細書を参照されたい。
【0008】
このような背景から、本発明の根底にある課題は、機械制御部と緊締装置との間の結合を形成して、データ通信の安全性が従来技術よりも改善される工作機械を創出することである。
【0009】
これは、独立請求項1の特徴的構成による工作機械によって、またこれと並列の請求項6の特徴的構成による、このような工作機械を制御する方法によって実現される。このような工作機械およびその制御についての対応する方法の有利な実施形態は、それぞれこれらに続く従属請求項から得ることができる。
【0010】
本発明によると、固定の機械制御部と、回転する緊締装置とを有する工作機械が設けられており、機械制御部は、結合ユニットが中間接続されて、緊締装置と共に回転する緊締装置制御部と通信する。このことの特徴は、結合ユニットにより、機械制御部が非接触で緊締装置制御部にデータ接続されることであり、緊締装置制御部は、緊締装置の緊締手段を作動させるための推進手段を駆動制御するための制御ユニットを有し、制御ユニットには少なくとも2つの冗長なマイクロプロセッサが対応付けられており、これらのマイクロプロセッサにより、制御ユニットを介して機械制御部から受信したプロセスデータセットは、互いに依存せずに検査可能であり、かつ/またはプロセスセンサから受信したプロセスデータは、互いに依存せずにプロセスデータセットに使用可能であり、また制御ユニットを介して機械制御部に伝送可能である。
【0011】
これにより、工作機械側に機械制御部が、また緊締装置側に緊締装置制御部が形成され、これらは、中間接続された結合ユニットを介して互いに通信する。緊締手段の推進を互いに可能にする推進手段は、コントローラによって制御可能である。この推進により、互いに対向する緊締手段では、これらの緊締手段は、緊締手段の個数が偶数である場合、被加工物を対向する側から囲い込む。3つの緊締手段を有する緊締装置の場合には、対応する側ではなく、120°のオフセットが選択され、5つの緊締手段では72°のオフセットが選択される等々である。これにより、被加工物は、緊締手段間でセンタリングされる。
【0012】
改善されたデータ安全性を形成するために、緊締装置制御部の制御ユニットから受信したプロセスデータセットであって、ひいては機械制御部の出力信号を表すプロセスデータセットが、互いに冗長に設けられた同じタイプの2つのマイクロプロセッサによって評価される。受信対象のプロセスデータセットには、とりわけSTO信号が含まれるのに対し、すべてのプロセスデータには、計算したシグネチャおよび連続する識別番号が含まれる。STO信号の値により、安全な動作モードが指示されることがマイクロプロセッサによって決定される場合、マイクロプロセッサにより、このことが、それらにそれぞれ対応付けられた、緊締手段のコントローラに伝送され、ひいては、緊締手段を開き、したがって、STO信号により、安全モードが再び解除されるまで、推進手段もしくはサーボモータは動作できない。具体的にはSTO信号の値1は、安全な動作状態を指示し、STO信号の値0により、安全な動作状態を解除することができる。これにより、全体として短いメッセージにおけるコーディングであっても、極めて簡単なインフラストラクチャによって伝送可能なコーディングが可能になる。
【0013】
エラーのあるCRCコード、ハフマンコード、誤ったチェックデジットまたはこれに類するものを含む無効なシグネチャが受信される場合、このことは、誤動作を示しており、通信はもはや安全ではない。したがってマイクロプロセッサは、このことを緊締装置制御部の制御ユニットに転送し、この制御ユニットにより、機械は安全に停止される。受け取った識別番号が、予想される連続した識別番号と一致しない場合、同じことが行われる。というのは、場合によって通信は、循環しているかまたは全体として妨げられているからである。
【0014】
マイクロプロセッサの冗長性により、エラーが発見されかつそれとして識別される安全性を向上させることができる。2つよりも多くのマイクロプロセッサを使用することも可能であるが、動作はつねに、2つのマイクロプロセッサでも可能である。
【0015】
プロセスデータセットが、機械制御部用の入力信号としてまとめられて送信される場合であっても、マイクロプロセッサの冗長性は有利である。例えばゼロ点緊締システムに緊締状態を知らせる、安全にクリティカルなあらゆるセンサ、特に力センサまたは緊締信号発生器は、それぞれ1つのマイクロプロセッサと通信し、この際にマイクロプロセッサは逆に、複数の異なるセンサと通信することができる。
【0016】
通信の枠内ではこの際に、これらのマイクロプロセッサの異なる信号を扱うことができ、これにより、それぞれのマイクロプロセッサが、制御ユニットにその固有の信号を伝送して、この制御ユニットが機械制御部への信号を形成するか、または循環式のプロセスデータセットが形成されて、マイクロプロセッサは、これらのマイクロプロセッサによって処理された信号をそこに挿入し、この点においてプロセスデータセットを補足する。
【0017】
若干の利点を伴って、緊締手段の推進手段は、サーボコントローラによって制御されるサーボモータであってよい。サーボモータは、被加工物があらかじめ設定された力で保持されて、その推進が終了するまで、センタリング対象の被加工物の方向に、緊締装置における緊締手段を移動させる。この場合に摩擦結合制動によって保証されるのは、開信号までは一度取った位置から元のように離れてしまわないことである。変速機を介する機械的なセルフロックも行われる。
【0018】
第1の実施形態では、緊締手段にはさらにそれぞれ少なくとも1つの力センサまたは緊締信号発生器を対応付けることができ、これにより、力センサまたは緊締信号発生器はそれぞれ、1つのマイクロプロセッサだけにデータ接続される。この場合、緊締手段と同数の複数のマイクロプロセッサが使用される。多数のマイクロプロセッサの使用および連係は、コストがかかりかつ煩雑であるため、この実施形態は好ましくはない。
【0019】
好ましいのは、緊締手段にそれぞれ少なくとも1つの力センサまたは緊締信号発生器が対応付けられておりかつ複数の緊締手段の力センサまたは緊締信号発生器がマイクロプロセッサに対応付けられている実施形態であり、互いに対向する緊締手段の力センサまたは緊締信号発生器が、異なるマイクロプロセッサに対応付けられている。ここでは、互いに対で対向する緊締手段がそれぞれ、異なるマイクロプロセッサによって監視され、これにより、それぞれの対の監視が2つのマイクロプロセッサによって行われるように結合が行われる。このことが意味するのは、この実施形態では、結局のところいくつの緊締手段が使用されているかには依存せずに、つねに2つのマイクロプロセッサが必要であることである。
【0020】
別の変形形態では、緊締手段にそれぞれ少なくとも1つの力センサまたは緊締信号発生器を対応付けることが可能であり、同時にマイクロプロセッサには複数の緊締手段の力センサまたは緊締信号発生器を対応付けることが可能であり、反対方向に作用する力成分を有する緊締手段の力センサまたは緊締信号発生器は、異なるマイクロプロセッサに対応付けられている。したがって具体的には、例えば、チャックに3つのチャックジョーが設けられている場合、それらのうちの2つが1つのマイクロプロセッサにより、第3のチャックジョーが別の1つのマイクロプロセッサによって監視されてもよい。
【0021】
さらに、制御ユニットにデータ接続されている変位センサが、緊締手段に対応付けられるように構成することができる。ここでこれは、安全関連の測定値ではない。というのは、緊締手段の単なる位置からは、クリティカルな状態を算出することはできないからである。したがってこれらの測定値は、マイクロプロセッサには伝送されず、緊締装置制御部の制御ユニットだけに伝送される。
【0022】
具体的な実施形態では、結合装置により、機械制御部と緊締装置制御部との間に誘導結合データ接続を形成することができる。誘導結合により、エネルギ結合も信号結合も可能になるため、誘導結合は有利である。しかしながら本発明では、例えば、液圧式結合を設けることも可能であり、その一方で信号結合は誘導式に行うことが可能である。固定の工作機械から回転する緊締装置への信号伝送およびエネルギ伝送を達成しなければならないという状況に起因して、非接触の結合がそもそも必要である。
【0023】
若干の利点を伴って構成されるのは、緊締装置制御部が、イーサネットプロトコルに基づいて機械制御部と通信することである。これは、無線でも通信可能な高速かつ頑強なプロトコルである。ここでは、例えば、PROFINET接続が使用可能であるのに対し、緊締装置制御部および/または機械制御部内では、バスシステム、例えばCANBUS等も使用可能である。
【0024】
以下では実施例に基づき、上で説明した本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】緊締装置と、この緊締装置に対応付けられている緊締装置制御部に結合器を介して接続されている機械制御部とを有する工作機械の概略図である。
図2】緊締装置制御部および機械制御部の詳細を示す、工作機械のより詳細な概略図である。
【0026】
図1には、周囲にそれぞれ90°ずれて被加工物4が保持される、緊締手段2,3の2つの対を有する緊締装置1の概略図が示されている。緊締装置1の緊締装置制御部20は、誘導結合器7を介して、工作機械の機械制御部10と通信し、この実施例ではこの工作機械には、制御ユニット11と、安全制御ユニット12と、電力供給部5とが個別に示されている。制御ユニット11および12は、また緊締装置制御部20の制御ユニット21も、特にメモリプログラマブル制御部(SPS:Speicherprogrammierbare Steuerung)として実施可能である。
【0027】
制御ユニット11からは、例えば、実行中のプログラムにより、またはこの図に示していないインタフェースにおけるユーザ設定により、緊締装置制御部20に制御信号が出力されるのに対し、安全制御ユニット12は主に安全関連信号の通信に、またはこのためだけに利用される。これに属するのは特に、緊締手段2,3が被加工物を把持する力を示す力信号の伝送である。誘導結合器7を介するデータ伝送の安全性を改善させるために本発明では、緊締装置制御部20において冗長に実施されるマイクロプロセッサ22,23を用いて、緊締装置制御部20の制御ユニット21に伝送される信号の冗長な監視を行うように構成される。誘導結合器7を介する伝送は、通常の簡単な通信チャネルであり、最初には保護されていない。したがって、独立した2つのマイクロプロセッサ22,23による、誘導結合器7を通過する信号の評価は、データ伝送の安全性を改善するのに有効である。
【0028】
図1の大まかな区分に対する補足として、この状況は、図2ではより詳細に描画されているが、個々の副次的な様相は省略されている。
【0029】
2つの緊締手段2,3の例で示されているのは、これらの緊締手段2,3によって被加工物4をセンタリングできることである。このためにサーボモータ26,27を用いて緊締手段2,3を移動させることができ、これは、変位センサ32,33によって監視される。この制御は、CANバスを介し、緊締装置制御部20の制御ユニット21を用いて行われる。このCANバスを介して、サーボコントローラ29,30は制御ユニット21にデータ接続されている。制御設定値は、機械制御部10から、詳細には機械制御部10における制御ユニット11から得られるのに対し、サーボコントローラ29,30の直接の駆動制御が行われ、これを介して、サーボモータ26,27の駆動制御が、緊締装置制御部20内で行われる。緊締装置制御部20と機械制御部10とは、図1に既に示したように、誘導結合器7を介してデータ接続されている。
【0030】
具体的には制御命令は、対応するプログラミングにより、まず機械制御部10の制御ユニット11に伝送される。制御ユニット11それ自体は、誘導結合器7を介して、緊締装置制御部20の制御ユニット21に制御命令を送信する。これにしたがい、制御ユニット21は、例えば、緊締手段2,3を閉じさせる、すなわち被加工物4の方に移動させる。対応する制御信号28は、2つのサーボコントローラ29,30に伝送され、ここでもサーボコントローラ29,30それ自体により、サーボモータ26,27が、対応して駆動制御される。変位センサ32,33により、それぞれ対応付けられている緊締手段2,3の位置が監視され、それらの位置が制御ユニット21にフィードバックされる。
【0031】
しかしながら同時に、緊締手段2,3に作用する力も検出される。このためにそれぞれの緊締手段2,3には力センサ35,36が対応付けられており、この力センサ35,36は、マイクロプロセッサ22,23と通信してこれに状態信号31を伝送する。データ取得において十分な冗長性を実現するために、第1の緊締手段2に対応付けられた第1の力センサ35は、第1マイクロプロセッサ22と通信するのに対し、別の緊締手段3に対応付けられた別の力センサ36は、第2マイクロプロセッサ23と通信する。マイクロプロセッサ22,23は、力信号を受信し、プロセスデータセットにこれを書き込み、このプロセスデータセットは、循環式にマイクロプロセッサ22,23によって充填され、次いで制御ユニット21により、機械制御部10に伝送される。機械制御部10において、特に安全制御ユニット12により、力センサの信号が受信されて処理される。この際にエラーが発生すると、すなわち特に力が弱まる場合、機械制御部10はこれに反応して、機械をより安全な状態に制御することができる。緊締手段が緩んではならずかつ被加工物が目標緊締力で緊締された状態に維持されるという2つの判定基準がつねに満たされなければならない。
【0032】
十分な冗長性のために十分であるのは、それぞれの力平衡時に複数のマイクロプロセッサ22,23が制御に関与する場合であり、これにより、緊締手段2,3の個数がより多い場合であっても、2つよりも多くのマイクロプロセッサ22,23が必ずしも関与する必要はない。しかしながらそれにもかかわらずこれは、次のように実行可能である。緊締手段の個数が奇数の場合であっても、例えば、1つの緊締手段を、1つのマイクロプロセッサによって、別の2つの緊締手段を別の1つのマイクロプロセッサによって制御することができる。というのは、それぞれの緊締手段における力の総和の制御に少なくとも2つのマイクロプロセッサが関与しているからである。
【0033】
動作時にマイクロプロセッサ22,23により、誤った力、特に1つの力センサ35,36において過剰な力が確認されるか、または別のクリティカルなエラー時、すなわち、マイクロプロセッサ22,23によって冗長に検査される、プロセスデータセットのシグネチャまたは識別番号においてエラーが発生する場合、マイクロプロセッサ22,23は、機械制御部10の安全制御ユニット12にこのことを通知し、安全制御ユニット12は、特に、機械を停止させる停止信号により、より安全な状態に機械を制御し、これにより、高速に回転しているが、不利な状況では緩んでしまっている被加工物による負傷または損傷が回避される。
【0034】
したがって、上で説明したのは、従来技術に対してデータ通信の安全性が改善されるように、機械と被加工物のとの間の結合が形成されている工作機械である。
【符号の説明】
【0035】
1 緊締装置
2 第1の緊締手段
3 別の緊締手段
4 被加工物
5 電力供給部
6 監視信号
7 誘導結合器
10 機械制御部
11 制御ユニット
12 安全制御ユニット
20 緊締装置制御部
21 制御ユニット
22 第1マイクロプロセッサ
23 第2マイクロプロセッサ
24 第1停止信号
25 第2停止信号
26 第1のサーボモータ
27 別のサーボモータ
28 制御信号
29 第1のサーボコントローラ
30 別のサーボコントローラ
29 状態信号
32 第1の変位センサ
33 別の変位センサ
34 変位信号
35 第1の力センサ
36 別の力センサ
図1
図2
【外国語明細書】